JP4670218B2 - 光ファイバーケーブル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グレーテッドインデックス型樹脂光ファイバー(以下GI−POFと称す)とこのGI−POFを包含する樹脂ケーブル本体とを有する通信用光ファイバーケーブルに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、通信分野では、大容量の情報を高速かつ確実に伝送するために、光ファイバーが一般的に用いられている。
光ファイバーには、石英系シングルモード光ファイバー等の石英系光ファイバーや樹脂系光ファイバー(プラスチック系光ファイバー)があるが、特に、プラスチック系光ファイバーは、石英系シングルモード光ファイバーに比べて直径が大きく、かつ可撓性に優れていることより、光ケーブルの布設の際の端面処理や接続処理等の作業性や安全性に優れ有用である。
特に、GI−POFは、高速大容量の伝送能力を備えることより、次世代通信における光ファイバーとして期待されている。
【0003】
GIーPOFとは、断面方向における屈折率に分布を持たせたプラスチック系光ファイバーである。すなわち、GI−POFは、断面方向の中心部で屈折率が高く、徐々に屈折率が低くなる屈折率分布によって構成されるので、GI−POF内を長手方向に進行する光は、屈折率の影響を受けて、GI−POFの中心部近傍に集中する。これによって、高速大容量の伝送能力を実現している。
従って、GI−POFの高速大容量の伝送能力は、GI−POFの屈折率分布に大きく依存し、GI−POFの伝送能力を確保するためには、屈折率分布を所定の分布に維持することが必要である。
【0004】
ところで、GI−POFの光ファイバーケーブルの製造方法は、基本的に、GI−POFを、引っ張りに対して抗するテンションメンバ等の構成素材とともに熱可塑性樹脂等で押し出して被覆成形することによって行われる。この被覆成型の際、GI−POFは高温に溶融した熱可塑性樹脂等の熱の影響を受けやすい。このため、熱の影響によりGI−POFの物性が低下するおそれが生じる。従って、GI−POFが熱の影響を受けないようにケーブルを製造する必要がある。GI−POFの代表的製法として、樹脂材料中に屈折率の異なる低分子化合物材料を熱拡散させて屈折率分布を形成し、GI−POFとする製造方法がある。
このようなGI−POFは、ケーブル化する被覆成形の際の熱の影響により、GI−POF内で低分子化合物材料が熱拡散を起こし、屈折率分布が変化するおそれがある。
【0005】
例えば、特開平11−211954号公報では、溶融する被覆樹脂材の熱によってGI−POFの伝送損失が増加しないように、ポリエチレン等の比較的低温度で溶融押し出しが可能な樹脂を用い、あらかじめGI−POFの表面に押し出し被覆層を引き落としにて成形して、GI−POFを1次被覆し、いわゆるジャケットファイバーとする。その後、テンションメンバ等の構成素材とともに熱可塑性樹脂等で押し出して2次被覆成形することによってGI−POFの光ファイバーケーブルを製造する。
このような方法で製造される光ファイバーケーブルの構造は、図4(a)に光ファイバーケーブル50が示されるように、GI−POF51aおよび51bと、ポリエチレン等によって形成される1次被覆層56と、熱可塑性樹脂等で押し出して最外層を形成する樹脂ケーブル本体である2次被膜層53とから構成される。
【0006】
また、一方において、実開昭60−60714号公報や特開平7−72356号公報では、樹脂ケーブル本体である被覆樹脂材と光ファイバー間に空隙を設けた図4(b)に示す構造や、ジャケットファイバーと被覆樹脂材との間に空隙を設けた図4(c)に示す構造が提案されている。図4(b)では、光ファイバーケーブル60は、テンションメンバ62aおよび62bと、樹脂ケーブル本体である被覆樹脂材63と、2本の光ファイバー67aおよび67bが配置される空隙64とによって構成される。図4(c)に示される光ファイバーケーブル70は、熱可塑性樹脂等で押し出して最外層を形成する樹脂ケーブル本体である被膜層73と、この被膜層73に設けられた空隙74と、この空隙内に配置された1次被覆され被膜層76を備えた光ファイバー78とによって構成される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−211954号公報で述べられている製造方法で得られるGI−POFの光ファイバーケーブルは、以下のような問題があった。
すなわち、直径(線径)が1mm未満のGI−POFにポリエチレン等によって1次被覆されたジャケットファイバーでは、耐高温テスト(70℃×24時間)において、被覆材であるポリエチレン等の樹脂が加熱収縮することによってGI−POFの表面にマイクロベントが発生し、その結果、光の伝送損失が増加するといった熱的耐久性の問題があった。
【0008】
さらに、実開昭60−60714号公報に示される被覆樹脂材と光ファイバー間に空隙を設ける構造のGI−POFの光ファイバーケーブルでは、1つの空隙に複数のGI−POFが存在するので、人間等の踏みつけ等によって光ファイバーケーブルに外力が加わった場合、1つの空隙にある複数のGI−POF同士が接触し、さらには押し圧を互いに加え合い、最悪の場合、お互いに潰し合い、また、塑性変形が生じて光の伝送損失が増加するといった耐圧特性の問題があった。
【0009】
さらに、特開平7−72356号公報では、光ファイバーケーブルの空隙率を2〜30%とすることで、折り曲げ時の屈曲動作に対して通常起きる伝送損失の増加を抑制することができるものの、光コネクタを光ファイバーケーブルに取り付ける際の光コネクタ取り付け性の点から空隙率の上限が規制されるため、高速大容量の伝送能力が要求されるGI−POFでは、折り曲げ時の屈曲動作に対する伝送損失の増加を皆無にすることはできないといった機械的特性の問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するために、複数本のGI−POFと、このGI−POFを包含する樹脂ケーブル本体とを有し、熱的耐久性、耐圧特性、さらには、屈曲による機械的特性に優れ、光の伝送損失が増加することのない光ファイバーケーブルを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、本のGI−POFとこのGI−POFを包含する樹脂ケーブル本体とを有する光ファイバーケーブルであって、
前記樹脂ケーブル本体は、前記GI−POFの本数と同数の、長手方向に貫通した2本の空隙孔を有し、
前記GI−POFは、前記空隙孔内に自在に可動する状態で1本ずつ分散配置されたことを特徴とする光ファイバーケーブルを提供するものである。
【0012】
ここで、前記GI−POFの前記空隙孔内の可動範囲は、前記GI−POFの直径の2倍以上であり、前記本の空隙孔によって形成される樹脂ケーブルの肉厚寸法は、前記GI−POFの直径と同等あるいはそれより大きく、前記樹脂ケーブルの肉厚は、0.5mm以上であるのが好ましい。
また、前記本の空隙孔は、並列配置され、前記樹脂ケーブル本体の中央部の前記肉厚が、前記並列配置され空隙孔の端部における肉厚に比べて厚いことを特徴とし、前記樹脂ケーブル本体の硬度は、ショアD硬度で50以下である
さらに、前記GI−POFは、全フッ素型あるいはポリメチルメタクリレート(PMMA)型であるのが好ましく、前記樹脂ケーブル本体には、テンションメンバが埋設されるのが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光ファイバーケーブルについて、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
以下で説明する光ファイバーケーブルは2本のGI−POFを並列配置し、その外側に引っ張りに対して抗する2本の鋼線からなるテンションメンバを配置して構成される2心型平型光ファイバーケーブルである。
【0014】
図1には、本発明の光ファイバーケーブルを適用した、線径が500μmの全フッ素樹脂型GI−POFを用いた光ファイバーケーブル(以降において、単にケーブルという)10が示されている。ここで、全フッ素樹脂型GI−POFは特開平8−5848号公報に記されている。なお、本発明においては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を樹脂材料とするPMMA型光ファイバーケーブルであってもよい。
ここで、ケーブル10は、一対のGI−POF11aおよび11b比べ引っ張り剛性の大きいテンションメンバ12aおよび12bと、樹脂ケーブル本体13とから構成される。
樹脂ケーブル本体13には、2本のGI−POF11aおよび11bと同数の長手方向に貫通した空隙孔14aおよび14bが設けられ、この空隙孔14aおよび14b内に、樹脂ケーブル本体13の長手方向と直交する2方向に自在に可動する状態でGI−POF11aおよび11bが1本ずつ分散配置されている。
なお、空隙孔14aおよび14bは、図1に示されるように、矩形形状であり、矩形形状の四隅を円弧状に丸くしているが、本発明においては、矩形形状に制限されず、円形状や楕円形状等いずれの形状であってもよく、GI−POF11aおよび11bが1本ずつ分散配置されていればよい。
【0015】
一方、テンションメンバ12aおよび12bは、空隙孔14aおよび14bの外側の樹脂ケーブル13内に埋設され、GI−POF11aおよび11bと略平行に配置される。
なお、本実施例のケーブル10では、熱拡散等によって伝送損失が増加しないように、通常樹脂材で行われる一次被覆は行われないが、本発明においては、一次被覆の有無については特に制限されない。テンションメンバ12aおよび12bとして、材料は特に制限されず、例えば、金属線やアラミド繊維やFRP等による線材が挙げられるが、作業性や経済性の点から亜鉛メッキした硬鋼線が好ましい。
【0016】
樹脂ケーブル本体13は、熱可塑性樹脂材によって形成され、硬度がショアD硬度で50以下、より好ましくは40以下である。このような樹脂材として、例えば、軟質塩化ビニルや塩素化ポリエチレン、軟質ポリエチレンが用いられるが、本発明ではこれらに制限されない。少なくとも溶融温度が押し出し成型時のダイ出口温度で135℃以下である樹脂材であればいずれであってもよく、好ましくは、130℃以下であるのがよい。溶融温度が140℃以上の場合、熱によりGI−POF11aや11bの屈折率分布が変動し、光の伝送損失の著しい増加の原因となる。
【0017】
ここで、空隙孔14aおよび14bによって形成される樹脂ケーブル13の肉厚、すなわち、図1中の肉厚15a、15b、15c、15d、15e、15fおよび15gの寸法は、GI−POF11aおよび11bの直径の寸法以上であり、GI−POF11aおよび11bの直径が、例えば0.5mmの場合、肉厚は0.5mm以上であり、実用上、0.5以上0.8mm以下であるのが好ましい。このように、肉厚15a、15b、15c、15d、15e、15fおよび15gを規定するのは、ケーブル10に外力として図1中上下方向に圧縮荷重が加えられ、空隙孔14aや14bは押しつぶされ、GI−POF11aおよび11bが空隙孔14aや14bの内壁面間に挟まれた場合の伝送損失の増加を抑制するためである。すなわち、樹脂ケーブル13の硬度はショアD硬度で50以下で、GI−POF11aや11bに比べて十分に柔らかく、さらに、樹脂ケーブル13本体の肉厚の寸法がGI−POF11aや11bの直径の寸法より大きいため、GI−POF11aや11bが樹脂ケーブル13内に埋没する形となり、GI−POF11aや11bに加わる圧縮荷重が緩和され、その結果、著しい伝送損失の増加は見られない。当然、樹脂ケーブル13によってGI−POF11aおよび11bは分離されているので、ファイバー同士の接触による永久変形をおこすことはなく、従って永久変形による伝送損失の増加は見られない。
【0018】
なお、樹脂ケーブル本体13は、空隙孔14aや14bが並列配置されて形成される中央部の肉厚15bおよび15eが、空隙孔14aや14bの両端部における肉厚15a、15c、15dおよび15fに比べて厚い
中央部の肉厚15bや15eを肉厚15aや15cや15dや15fに比べて薄く成形した場合、図1中の横方向に圧縮荷重Fがかかると、樹脂ケーブル本体13は肉厚15bや15eの部分を中心に肉厚15aの部分と肉厚15cの部分、あるいは肉厚15dの部分と肉厚15fの部分が重なるように略くの字状に屈曲し挫屈する。そのため、空隙孔14aや14bに加わる圧縮応力は不均一となり、圧縮応力が大きい部分では空隙孔14aや14bの空隙は部分的に押しつぶされる。ここで、光ファイバーケーブル11aや11bが空隙の押しつぶされた壁面に挟まった場合、光ファイバーケーブル11aや11bは大きな圧縮応力を受け、その結果、屈折率が変化して伝送損失は増加することになる。
しかし、樹脂ケーブル13の肉厚15bや15eを肉厚15a、15c、15dおよび15fより厚くすることで、図1中の水平方向に圧縮荷重Fが加えられても、光ファイバーケーブル13は略くの字状に屈曲せず、空隙孔14aや14bの内面に圧縮応力が均一にかかり空隙孔14aおよび14bが略一様に収縮する。これによって、GI−POF11aや11bは樹脂ケーブル本体13に埋没して応力緩衝を受けることはなく、その結果、伝送損失は増加することはない。
【0019】
また、GI−POF11aおよび11bが空隙孔14aおよび14b内を各々自由に移動する可動範囲は、GI−POF11aや11bの直径の2倍以上、より好ましくは、2倍以上4倍以下である。ここで、GI−POFの可動範囲がGI−POFの直径の2倍以上とは、GI−POFの可動範囲が、GI−POFの直径の2倍の円弧で作られる円形状を包含することのできる関係をいう。例えば、図1におけるケーブル10では、空隙孔14aの略矩形形状の断面形状内で自在に移動する可動範囲P(図1中1点鎖線で囲まれる範囲)が、GI−POF11aや11bの直径の2倍の円弧で作られる円形状の範囲Q(図1中点線で囲まれる範囲)を包含する関係にある。
また、空隙率、すなわち、図1に示すケーブル10の断面図において、空隙孔14aや14bの面積の、GI−POF11aや11bの断面積に対する比が4倍以上25倍以下、より好ましくは9倍以上16倍以下であるのが好ましい。可動範囲や空隙率を大きくするには、光ファイバーケーブルの外形寸法を大きくするか、外形寸法を一定に維持して肉厚を薄くしなければならないが、外形寸法を一定に維持して肉厚を薄くすると、上述したように光ファイバーケーブル10の屈曲が起こり易くなり、また、肉厚を一定にすると、外形寸法を大きくしなければならず実用上問題が生じる。そのため、可動範囲や空隙率の上限は実用上、上記のように制限される。
【0020】
このように、上記範囲内において、GI−POF11aおよび11bは、空隙孔14aおよび14b内を自由に移動することができるので、ケーブル10を折り曲げても、GI−POF11aや11bは、空隙孔14aや14bの内壁面との摩擦抵抗がほとんどなく、折り曲げに対する伝送損失の増加はほとんど見られない。また、高温・低温の熱サイクル試験においても、GI−POF11aや11bの空隙孔14aや14b内での可動範囲が、GI−POF11aや11bの直径の2倍以上あると、たとえ、テンションメンバ12aや12bや樹脂ケーブル13とGI−POF11aや11bの線膨張係数の違いにより膨張量や収縮量が異なったとしても、GI−POF11aや11bは、空隙孔14aや14b内を移動することができるので、膨張量や収縮量に基づくGI−POF11aや11bへの圧縮、引っ張り応力は緩和され、その結果伝送損失の増加が抑制される。
ケーブル10は以上のように構成される。
【0021】
次に、このようなケーブル10の製造方法を図2に基づいて説明する。
ケーブル10の製造方法は、まず、GI−POF繰り出し機20を介して繰り出されたGI−POF11a、11bとテンションメンバ繰り出し機21を介して繰り出されたテンションメンバ12a、12bとが被覆ダイ22のニップル導管(図示せず)に挿入され、樹脂押し出し機23で押し出された熱可塑性の樹脂ケーブル本体13の樹脂材と被覆ダイ22の先端のニップル34(図3参照)で合流し被覆ダイ22の出口でケーブル形状に賦形され、冷却水槽24で冷却される。
【0022】
ここで、GI−POF11a、11bの繰り出し時に掛けるテンションは5g〜100gであるのが好ましく、100g以上ではGI−POF11a、11bの著しい伸長が発生し伝送増加を招く。また、5g以下ではGI−POF11a、11bに振動ぶれが発生し、被覆ダイ22本体及び被覆ダイ22の出口直後の樹脂に接触し、熱ダメージを受けて著しい伝送損失増加を招く。より伝送損失の増加を少なくするにはテンションは20g〜60gが好適であり、且つGI−POF11a、11bが被覆ダイ22及び成形直後の樹脂に接触しない位置にGI−POF11a、11bの挿入位置を調節することが好ましい。
【0023】
成形速度は引取り速度によって調整され、被覆ダイ22の出口でのケーブル10の空隙孔14a、14b内に位置するGI−POF11a、11bの温度が許容耐熱温度の70℃を超えない速度に調節される。許容耐熱温度以上の樹脂温度で成形すると、GI−POFの熱伸び及び伝送損失の著しい低下を招くこととなる。ダイ出口でのGI−POF11a、11bの温度は許容耐熱温度より20℃以上低い温度で制御するのが好ましく、この実施形態では40〜50℃がより好適である。
冷却温度は水道水で伝送損失の増加は抑制するが5℃〜−20℃で急速冷却すれば伝送損失の増加はより安定的に抑制できる。
【0024】
図3に被覆ダイ22の先端のニップル34の構造を示す。ニップル先端穴37a、37bからGI−POF11a、11bが、ニップル先端穴39a、39bからテンションメンバ12a、12bが通過する。樹脂ケーブル本体13の樹脂材は、ニップル34の外周を取り囲むようにして押し出され、所定のケーブル形状に賦形される。
ここで、ニップル先端穴37a、37bの穴径はGI−POF11a、11bの直径の1.5倍以上であることが望ましく、1.5倍未満の穴寸法では、GI−POF11a、11bがニップル穴内壁に接触し著しい伝送損失の増加を招いてしまう。ニップル34の先端部の肉厚38a〜38dは、例えば、GI−POF11a、11bの直径が0.5mmの場合、0.35mm以上であるのが望ましく、0.50mmが好適である。肉厚38a〜38dが薄いと、GI−POF11a、11bは、ケーブル10の空隙孔14a、14bの樹脂内面壁と接触しやすくなるとともに、成形直後の樹脂との距離が短くなることで放射による熱ダメージも受けやすくなり伝送損失の増加を招く。
ケーブル10の外形形状及び空隙孔14a、14bの孔形状は、ダイ外形形状及びニップル先端形状に相似するが、ケーブル10の外形寸法及び空隙孔14a、14bの孔形状寸法は、樹脂の押し出し量と引取り速度の調整により所望の寸法に調整することができる。
【0025】
このような本発明の光ファイバーケーブルについて、一対のGI−POFとテンションメンバを有する光ファイバーケーブルの光伝送損失を調べた。
なお、以降で述べる例のうち特段記載のないものは下記材料を使用した。
GI−POF:全フッ素型GI−POF、線径500μm、旭硝子株式会社製「ルキナ」。
テンションメンバ:亜鉛メッキ硬鋼線、線径0.4mm。
樹脂ケーブル材:軟質塩化ビニル、ショアD硬度:30(ショアA硬度:80)、理研ビニル工業社製。
製造方法は図3および図4に示されるような押し出しによる製造方法に順じた。例4及び例6を除き光ファイバーケーブル製造によるGI−POFの伝送損失増加はほぼ0dBであった。また、光ファイバーケーブルの評価については、圧壊テスト、繰り返し曲げ、コード曲げについてはJISC6836全プラスチックマルチモード光ファイバーコードに記載のある方法に順じて評価した。熱サイクル試験は−20℃〜70℃を1サイクル4時間のサイクルで10サイクル実施した後の評価である。GI−POFの伝送損失の測定は850nmLD2mカットバック法を用いて測定した。圧壊テスト時の伝送損失は850nmLDの連続測定にて行った。
【0026】
(例1)
空隙孔の断面形状を略正方形形状とし、この空隙孔内でのGI−POFの可動距離を縦方向、横方向ともGI−POFの直径の3.8倍の1.9mmとし、樹脂ケーブル本体13の中央部の肉厚15bおよび15eを0.8mm、両端に位置する空隙孔14aや14bの端部の肉厚15a、15c、15dおよび15fを0.6mm、空隙孔14aや14b間の肉厚15gを0.6mmとするケーブル10を製造した。
(例2)
空隙孔の断面形状を略正方形形状とし、この空隙内でのGI−POFの可動距離を縦方向、横方向ともGI−POFの直径の3.8倍の1.9mmとし、樹脂ケーブル本体13の中央部の肉厚15bおよび15eを0.5mm、両端に位置する空隙孔14aや14bの端部の肉厚15a、15c、15dおよび15fを0.6mm、空隙孔14aや14b間の肉厚15gを0.6mmとするケーブル10を製造した。
(例3)
例2と同寸法のケーブルで被覆樹脂をショアD硬度43(ショアA硬度95)の軟質塩化ビニルを用いてケーブル10を製造した。
(例4)
空隙孔の断面形状を略正方形形状とし、この空隙孔内でのGI−POFの可動距離を縦方向、横方向ともGI−POFの直径の約2.4倍の1.2mmとし、樹脂ケーブル本体13の中央部の肉厚15bおよび15eを0.5mm、両端に位置する空隙孔14aおよび14bの端部の肉厚15a、15c、15dおよび15fを0.6mm、空隙孔間の肉厚15gを0.6mmとするケーブル10を製造した。製造によるGI−POFの伝送損失増加が10〜20dBみられた。
【0027】
(例5)(比較例)
空隙孔の断面形状を略正方形形状とし、この空隙内でのGI−POFの可動距離を縦方向、横方向ともGI−POFの直径の約1.6倍の0.8mmとし、樹脂ケーブル本体の肉厚をケーブル中央部が0.5mm、ケーブル端部が0.6mm、空隙間の肉厚が0.6mmとなるようにケーブルを製造した。製造によるGI−POFの伝送損失の増加は50〜100dBであった。
(例6)(比較例)
例2と同寸法のケーブルをショアD硬度55の軟質塩化ビニルを用いてケーブルを製造した。
(例7)(比較例)
図4(b)に示す構成のように、GI−POFの光ファイバー67aおよび67bの可動距離をGI−POFの直径の4倍の2mmとした空隙に、GI−POFを2本まとめて配置し、樹脂ケーブル本体の肉厚を中央部が0.5mm、端部が0.6mmとなるようにケーブル60を製造した。
【0028】
耐圧壊性評価の判定基準は荷重解放1分後(荷重解放後)での伝送損失増加量が試験前の0.2dB以下であることが基準である。表1に示したように例1、例2および例3のケーブルは基準をクリアする。さらに、例1の樹脂ケーブル本体13のように肉厚の調整をおこなうことで、荷重時の伝送損失値の増加が抑制され、耐圧壊性はより改善される。樹脂ケーブル本体13のショアD硬度は例3の43は許容値であり、例6の55では基準をオーバーしてしまう。
表2にGI−POFの空隙内の可動距離(括弧内に、可動距離をGI−POFの直径で除算した値を示す)と各種性能を示す。例1および例では繰り返し曲げ、及びコード曲げ性での評価基準である試験前後の伝送損失量0.2dB以下をクリアーしている。冷熱サイクルも許容範囲であるが、例5では、曲げ性の評価基準をクリアせず、また製造時の伝送損失も著しく増加している。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
以上の結果より、樹脂ケーブル本体13内に設けられた複数の空隙孔14aおよび14bにGI−POF11aおよび11bを空隙内で自在に移動する状態で分散配置することにより、耐圧壊性が向上した。さらに、樹脂ケーブル本体13の肉厚を中央部を両端部より厚くし、ショア硬度Dを50以下とすることによって、耐圧壊性が向上することがわかった。
また、空隙孔14aおよび14b内で自在に移動するGI−POF11aおよび11bの可動範囲を、GI−POF11aおよび11bの直径の2倍以上とすることにより、製造時の伝送損失の増加が抑制された他、繰り返し曲げ、コード曲げや冷熱サイクルによる伝送損失の増加も抑制された。
【0032】
以上、本発明の光ファイバーケーブルについて詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0033】
【産業上の利用の可能性】
以上、詳細に説明したように、複数本のGI−POFとこのGI−POFを包含する樹脂ケーブル本体とを有する光ファイバーケーブルのGI−POFが樹脂ケーブル本体に形成された空隙内に各々分散され、空隙内で自在に移動することができるので、GI−POFになんら樹脂の1次被覆をすることなく、耐圧壊性や機械特性や熱的耐久性に優れた光ファイバーケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光ファイバーケーブルの一実施形態における断面模式図である。
【図2】 本発明の光ファイバーケーブルの一実施形態を製造する製造ラインの模式図である。
【図3】 本発明の光ファイバーケーブルの一実施形態の製造に用いられる被覆ダイのニップル先端部の模式図である。
【図4】 (a)〜(c)は、従来技術の光ファイバーケーブルの断面模式図である。
【符号の説明】
11a,11b GI−POF
12a,12b テンションメンバ
13 樹脂ケーブル
14a,14b 空隙孔
15a〜g 肉厚
20 GI−POF繰り出し機
21 テンションメンバ繰り出し機
22 被覆ダイ
23 樹脂押し出し機
24 冷却水槽
25 引取り機
34 ニップル
37a,37b,39a,39b ニップル先端穴
38a〜d 肉厚
56 1次被覆層
67a、67b、78 光ファイバー

Claims (4)

  1. 本のグレーテッドインデックス型樹脂光ファイバー(以下GI−POFと称す)とこのGI−POFを包含する樹脂ケーブル本体とを有する光ファイバーケーブルであって、
    前記樹脂ケーブル本体の硬度は、ショアD硬度で50以下であり、
    前記樹脂ケーブル本体は、前記GI−POFの本数と同数の、長手方向に貫通した本の空隙孔を有し、
    本の空隙孔は並列配置されており、
    前記本の空隙孔によって形成される樹脂ケーブルの肉厚寸法(前記空隙孔を並列配置する方向に対して垂直方向における前記樹脂ケーブル本体の肉厚、若しくは、前記並列配置された空隙孔間における前記樹脂ケーブル本体の肉厚として定義される)に関して、
    前記空隙孔を並列配置する方向に対して垂直方向における、前記樹脂ケーブル本体の中央部の肉厚(前記並列配置された空隙孔の外縁同士を結ぶ仮想線と前記樹脂ケーブル本体の外縁との距離として定義される)が、前記並列配置されて両端に位置する空隙孔の両端における前記樹脂ケーブル本体の肉厚(前記空隙孔の外縁と前記樹脂ケーブル本体の外縁との距離として定義される)に比べて厚く、
    前記2本の空隙孔によって形成される樹脂ケーブルの肉厚寸法は、前記GI−POFの直径と同等あるいはそれより大きく、
    前記GI−POFは、前記空隙孔内を自在に可動する状態で1本ずつ分散配置されており、前記GI−POFの前記空隙孔内の可動範囲は、前記GI−POFの直径の2倍以上であることを特徴とする光ファイバーケーブル。
  2. 前記樹脂ケーブルの肉厚は、0.5mm以上である請求項1に記載の光ファイバーケーブル。
  3. 前記GI−POFは、全フッ素型あるいはポリメチルメタクリレート(PMMA)型である請求項1または2に記載の光ファイバーケーブル。
  4. 前記樹脂ケーブル本体には、テンションメンバが埋設される請求項1〜3のいずれかに記載の光ファイバーケーブル。
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