以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施例の液圧供給装置を装備した四輪駆動車両1は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式の車両をベースにしたパートタイム式の四輪駆動車両であり、車両前方に形成されたエンジンルーム2内に配設された車両の駆動源としてのエンジン3と、エンジン3からの回転駆動力を前後輪4,5に伝達するためのプロペラシャフト22、ドライブシャフト、液圧を受けて係脱作動することによりエンジン3の駆動力を断接可能な多板クラッチ41,42を装備する動力伝達装置(デフ機構40)等からなる動力伝達機構20と、各車輪4,4,5,5に設けられ液圧を受けて作動して各車輪4,4,5,5を制動するブレーキキャリパピストン7と、配管Tを介して多板クラッチ41,42もしくはブレーキキャリパピストン7に作動液の液圧を供給する液圧供給装置50と、多板クラッチ41,42もしくはブレーキキャリパピストン7に対する液圧の供給を制御する液圧制御装置30を有して構成される。液圧供給装置50内には、複数のアキュムレータ61,62,63(図4参照)が設けられ、作動液を高圧状態で貯蔵する高圧アキュムレータ61、中圧状態で貯蔵する中圧アキュムレータ62および低圧状態で貯蔵する低圧アキュムレータ63で構成されている。
また、エンジンルーム2の上部には、所定の容量の作動液を大気圧で貯蔵可能な大気開放式のリザーバタンク51が配設されており、図2の車両1のように、液圧供給装置50をこのリザーバタンク51の近傍に設置してもよいし、図2の車両1´のように、液圧供給装置50をリザーバタンク51から離してデフ機構40の近傍に設置させることも可能である。
動力伝達機構20は変速機構(いわゆるトランスミッション)21を備えており、エンジン3からの回転駆動力がこの変速機構21により変速されて前後輪4,5に伝達される。また、動力伝達機構20は、後輪5,5の近傍に配設された動力伝達装置(デフ機構40)を有しており、このデフ機構40を介して左右の後輪5,5の側にエンジン3の回転駆動力が伝達されるようになっている。デフ機構40には、エンジン3の駆動力を断接可能な多板クラッチ41,42が設けられており、液圧を受けて係脱作動するこの多板クラッチの係合力に応じてエンジン3に繋がる多板クラッチの入力側の回転駆動力が後輪5,5に繋がる出力側に伝達されるように構成されている。
図3に示すように、この多板クラッチは、エンジン3の回転駆動力をデフ機構40内に設けられた差動装置43(傘歯歯車、遊星歯車等を有して構成される)に対して断接するための4WD用多板クラッチ41と、差動装置43に伝達された駆動力を左後輪5もしくは右後輪5に対して断接するための差動制限用多板クラッチ42とから構成される。
4WD用多板クラッチ41は液圧を受ける受圧面積の小さい小受圧面積液圧ピストン44および液圧を受ける受圧面積の大きい大受圧面積液圧ピストン45のうちのいずれかの作動により係脱可能に構成されている。具体的には、これら小受圧面積液圧ピストン44および大受圧面積液圧ピストン45は各々駆動系用液路TD,TDを介して液圧供給装置50に通じており、液圧制御装置30から液圧供給装置50に向けて出力される制御信号に基づいて、液圧供給装置50を構成するリザーバタンク51に貯蔵されている作動液の液圧の小受圧面積液圧ピストン44および大受圧面積液圧ピストン45のうちいずれかへの供給制御が行われ、小受圧面積液圧ピストン44もしくは大受圧面積液圧ピストン45の作動が行われて、4WD用多板クラッチ41の係合力が制御される。
同様に、差動制限用多板クラッチ42は液圧を受ける受圧面積の小さい小受圧面積液圧ピストン46および液圧を受ける受圧面積の大きい大受圧面積液圧ピストン47のうちのいずれかの作動により係脱可能に構成されている。具体的には、これら小受圧面積液圧ピストン46および大受圧面積液圧ピストン47は各々駆動系用配管TD,TDを介して液圧供給装置50に通じており、液圧制御装置30から液圧供給装置50に向けて出力される制御信号に基づいて、リザーバタンク51に貯蔵されている作動液の液圧の小受圧面積液圧ピストン46および大受圧面積液圧ピストン47のうちいずれかへの供給制御が行われ、小受圧面積液圧ピストン46もしくは大受圧面積液圧ピストン47の作動が行われて、差動制限用多板クラッチ42の係合力が制御される。
また、前後輪4,4,5,5を制動制御するため各車輪に配設されたブレーキキャリパピストン7は各々ブレーキ用配管TB,TB,…を介して液圧供給装置50に通じており、液圧制御装置30から液圧供給装置50に向けて出力される制御信号に基づいて、リザーバタンク51に貯蔵されている作動液の液圧がブレーキキャリパピストン7に供給されることによってブレーキキャリパピストン7の作動が行われる。
図4に示すように、液圧供給装置50は、作動液を大気圧で貯蔵する大気開放式のリザーバタンク51、電気駆動式の液圧ポンプ52のほか、設定圧の異なる3種類のアキュムレータ(高圧アキュムレータ61、中圧アキュムレータ62および低圧アキュムレータ63)、リザーバタンク51に繋がりブレーキペダル54の操作に応じてリザーバタンク51に貯蔵されている作動液をブレーキキャリパピストン7に加圧して供給するためのマスタシリンダ54、調圧バルブREGを含み液圧制御装置30からの制御信号に基づいて開閉制御されるな23個のソレノイドバルブ、これらを繋ぐ液路、液路に設けられた9個の液圧センサ81,82,83等を有している。
液圧ポンプ52は、図示しない電動モータにより一方向にのみ回転駆動されるように構成されており、液圧ポンプ52に繋がる吸入ライン71からの作動液が吐出ライン72に所定の吐出圧で吐出される。なお、吸入ライン71には作動液の逆流を防止するチェック弁91が、吐出ライン72には同じくチェック弁92が設けられていて、作動液は吸入ライン71から液圧ポンプ52を介して吐出ライン72に向う方向のみ流れるようになっている。
ソレノイドバルブは、常時閉状態であるノーマルクローズタイプのバルブNCT11〜NCT42からなる8個のバルブと、同じくノーマルクローズタイプのバルブNCP1〜NCP3からなる3個のバルブと、ノーマルクローズタイプのバルブNCA1〜NCA6からなる6個のバルブと、ノーマルクローズタイプのバルブNCB1およびバルブNCB2からなる2個のバルブと、常時開状態であるノーマルオープンタイプのバルブNOB1およびバルブNOB2からなる2個のバルブと、ノーマルオープンタイプのバルブNOPからなる1個のバルブと、1個の調圧バルブREGとから構成される。そして、これらのバルブは、液路を開放する開放位置および液路を閉鎖する閉鎖位置の2つの切換位置を有した、2ポート2位置のスプリングオフセット式の電磁開閉弁であり、液圧制御装置30から入力される制御信号に応じてソレノイドを励磁もしくは消磁させることで、それらのバルブスプールを移動させて、開放状態もしくは閉鎖状態にさせることが可能である。
本発明に係る液圧供給装置50は上記のように構成されており、液圧制御装置30から入力される制御信号に応じて複数のバルブの開閉を制御することで、4WD用多板クラッチ41、差動制限用多板クラッチ42もしくはブレーキキャリパピストン7への液圧ポンプ52による液圧の供給と、4WD用多板クラッチ41、差動制限用多板クラッチ42もしくはブレーキキャリパピストン7へのアキュムレータ61〜63からの加圧状態の液圧の供給とを選択する制御が可能である。
ここで、上記のように構成される液圧供給装置50を用いた4WD用多板クラッチ41および差動制限用多板クラッチ42の作動について説明する。ここでは、4WD用多板クラッチ41を係脱させるために小受圧面積液圧ピストン44に供給される液圧を制御する場合を例に説明する。バルブNCT11は一方が小受圧面積液圧ピストン44の側に繋がり、他方が駆動系用配管TDを構成する加圧側液路73を介して液圧ポンプ52の吐出ライン72側に繋がっている。また、バルブNCT12は一方が小受圧面積液圧ピストン44の側に繋がり、他方が駆動系用配管TDを構成する減圧側液路74を介して液圧ポンプ52の吸入ライン71側に繋がっている。
ここで、4WD用多板クラッチ41を係合作動させるために、小受圧面積液圧ピストン44を加圧する場合には、液圧制御装置30からの制御信号がバルブNCT11に入力され、バルブNCT11のソレノイドコイルが励磁されることでバルブNCT11が開放される。一方、このときバルブNCT12にはそのソレノイドコイルを励磁させるための制御信号が入力されず、バルブNCT12は閉鎖された状態である(下記表1参照)。このため、液圧ポンプ52から吐出された作動液は、加圧側液路73を通ってバルブNCT11を通過し、小受圧面積液圧ピストン44を加圧することが可能である。そして、NCT12が閉鎖されているため、小受圧面積液圧ピストン44の側に供給されている作動液が減圧側液路74を通って液圧ポンプ52に戻ることはない。また、バルブNOB1およびバルブNOB2は閉鎖されているため、液圧ポンプ52から吐出された液圧がブレーキキャリパピストン7に供給されることはない。
一方、4WD用多板クラッチ41の係合を解除させるために小受圧面積液圧ピストン44に印加されている作動液の液圧を減圧する場合には、液圧制御装置30からの制御信号がバルブNCT12に入力されてバルブNCT12のソレノイドコイルが励磁されることでバルブNCT12が開放される。一方NCT11にはそのソレノイドコイルを励磁させるための制御信号が入力されず、バルブNCT11は閉鎖される。このため、小受圧面積液圧ピストン44に対して液圧を印加していた作動液は、減圧側液路74を通って液圧ポンプ52の側に戻される。このとき、バルブNCP3が開放されるため、作動液をリザーバタンク51に戻すことも可能である。また、バルブNOB1、バルブNOB2および調圧バルブREGは開放されているため、リザーバタンク51からの作動液を調圧しつつブレーキキャリパピストン7に供給することも可能である。
さらに、小受圧面積液圧ピストン44に印加される作動液の液圧を減圧せずに保持する場合には、液圧制御装置30からの制御信号によりバルブNCT11およびバルブNCT12がいずれも閉鎖される。また、このときバルブNOB1、バルブNOB2および調圧バルブREGは開放されているため、リザーバタンク51からの作動液を調圧しつつブレーキキャリパピストン7に供給することも可能である。
以上、4WD用多板クラッチ41を係脱させるため小受圧面積液圧ピストン44に供給される液圧を制御する場合を例に説明したが、4WD用多板クラッチ41を係脱させるため大受圧面積液圧ピストン45に供給される液圧を制御する場合や、差動制限用多板クラッチ42を係脱させるため小受圧面積液圧ピストン46および大受圧面積液圧ピストン47に供給される液圧を制御する場合も、上記の小受圧面積液圧ピストン44に供給される液圧を制御する場合と同様である。
次に、上記のように構成される液圧供給装置50において、通常のブレーキ制御が行われる場合やABS(Anti-lock Brake System)の作動もしくはVSA(Vehicle
Stability Assist)制御が行われる場合について説明する。通常の車両に設けられているブレーキ液路75と同様に、リザーバタンク51からマスタシリンダ54を介してブレーキ液路75に入り、ブレーキ液路75に設けられた調圧バルブREGを通過する液圧は、ノーマルオープンタイプのバルブNOB1およびバルブNOB2を介してブレーキキャリパピストン7に供給される。また、バルブNOB1とブレーキキャリパピストン7との間にはブレーキ液路75から分岐する分岐液路76が設けられ、この分岐液路76には減圧のためのノーマルクローズタイプの減圧バルブNCB1が配設されている。同様にバルブNOB2とブレーキキャリパピストン7との間にはブレーキ液路75から分岐する分岐液路76が設けられ、分岐液路76にはノーマルクローズタイプの減圧バルブNCB2が配設されている。
バルブNCB1およびバルブNCB2からアキュムレータ61〜63側に向けて延びる分岐液路76は途中で減圧側液路74と合流し、帰還液路77としてアキュムレータ61〜63の側および液圧ポンプ52の側およびリザーバタンク51の側に各々繋がっている。
このような構成の下、運転者によりブレーキペダル6が踏まれて通常のブレーキ制御が行われている場合には、NOB1等の各バルブは下記表2に示すような状態であり、リザーバタンク51からマスタシリンダ54を介して加圧された液圧がブレーキキャリパピストン7に供給され、ブレーキが作動する。このとき、8個のバルブNCT11〜NCT42はすべて閉鎖されているため、4WD用多板クラッチ41および差動制限用多板クラッチ42の側へは液圧が供給されることはなく、4WD用多板クラッチ41および差動制限用多板クラッチ42が係合作動することはない。
また、上記のような通常のブレーキ制御ではなく、ABSの作動もしくはVSA制御がなされている場合にブレーキキャリパピストン7を加圧させる場合には、液圧制御装置30からの制御信号がバルブNCP1およびバルブNCP2に入力されることで、表2に示すようにバルブNCP1およびバルブNCP2が開放され、一方、バルブREGが閉鎖されることで、リザーバタンク51からマスタシリンダ54を介して供給される作動液は液圧ポンプ52を通過して、液圧ポンプ52の駆動力によりブレーキキャリパピストン7に向けて圧送される。
一方、ABSの作動もしくはVSA制御がなされている場合にブレーキキャリパピストン7を減圧させる場合には、液圧制御装置30からの制御信号がバルブNCB1およびバルブNCB2に入力されることで、表2に示すようにバルブNCB1およびバルブNCB2が開放される。一方、バルブNOB1およびバルブNOB2が閉鎖されることで、液圧ポンプ52からはブレーキ液路75を介してブレーキキャリパピストン7に向けて液圧の供給がなされず、ブレーキキャリパピストン7を加圧させていた作動液は、バルブNCB1およびバルブNCB2を通過し帰還液路77を通って液圧ポンプ52の側に戻される。
さらに、ABSの作動もしくはVSA制御がなされている場合にブレーキキャリパピストン7を作動させている作動液の液圧を保持する液圧保持状態においては、バルブNOB1およびバルブNOB2並びにバルブNCB1およびバルブNCB2が閉鎖されるため、液圧ポンプ52からブレーキキャリパピストン7に向けた液圧の供給がなされない上に、ブレーキキャリパピストン7から帰還液路77に向けて作動液が流出しないため、ブレーキキャリパピストン7は作動液によって所定の圧力に保持される。
続いて、上記のように構成される液圧供給装置50において、液圧ポンプ52やアキュムレータ61〜63周辺の構成について説明する。液圧ポンプ52の吐出ライン72は、加圧側液路73、ブレーキ液路75(バルブNCP1を介して)およびバルブNCA5を介してアキュムレータ61〜63の側に通じる蓄圧液路78に各々接続されており、バルブの開閉を制御することで液圧ポンプ52から吐出される作動液を上記の液路に選択的に供給することが可能である。
また、液圧供給装置50を構成する3基のアキュムレータ61〜63は、高圧アキュムレータ61、中圧アキュムレータ62および低圧アキュムレータ63からなり、これらが高圧用液路64、中圧用液路65および低圧用液路66を介して並列に接続されている。そして、高圧アキュムレータ61の吸入吐出口はバルブNCA1に接続され、中圧アキュムレータ62の吸入吐出口はバルブNCA2に接続され、さらに、低圧アキュムレータ63の吸入吐出口はバルブNCA3に接続されている。これら3基のアキュムレータ61〜63からの液路(高圧用液路64、中圧用液路65および低圧用液路66)は各々上記バルブNCA1〜NCA3を通過後、一本に合流して、さらにバルブNCA4を介して液圧ポンプ52の吸入ライン71側に繋がっている。
さらに、高圧用液路64、中圧用液路65および低圧用液路66には、蓄圧液路78上のバルブNCA5を介して液圧ポンプ52からの吐出ライン72に繋がり、液圧ポンプ52から吐出する作動液を各アキュムレータ61〜63に供給して作動液を各々所定の設定圧で蓄圧することが可能である。また、高圧用液路64、中圧用液路65および低圧用液路66には、帰還液路77がバルブNCA6を介して接続されており、4WD用多板クラッチ41および差動制限用多板クラッチ42における液圧ピストンからの戻り液や、ブレーキキャリパピストン7からの戻り液を各々のアキュムレータ61〜63に供給して作動液を蓄圧することが可能である。
リザーバタンク51から液圧ポンプ52に向けて作動液を吸引する場合は、下記表3に示すように、液圧制御装置30からの制御信号の入力によりバルブNCP2のソレノイドコイルが励磁されバルブNCP2が開放される。これにより、液圧ポンプ52の吸入側ライン71とマスタシリンダ54とが連通し、液圧ポンプ52の駆動力によりリザーバタンク51からマスタシリンダ54を介して液圧ポンプ52に向けて作動液が吸引される。
一方、3種類のアキュムレータ61〜63のうち、低圧アキュムレータ63から液圧ポンプ52に向けて作動液を吸引する場合は、表3に示すように、バルブNCP2およびバルブNOPを閉鎖することで、リザーバタンク51側および帰還液路77の側からの吸入側ライン71への作動液の流入を遮断し、液圧制御装置30からの制御信号によりバルブNCA3およびバルブNCA4のソレノイドコイルが励磁されバルブNCA3およびNCA4が開放される。これにより、低圧アキュムレータ63から液圧ポンプ52に向けて作動液が吸引される。
また、帰還液路77から液圧ポンプ52に向けて作動液を吸引する場合は、表3に示すように、バルブNCP2、バルブNCA3およびバルブNCA4を閉鎖することで、リザーバタンク51側および低圧アキュムレータ63側からの作動液の流入を遮断する。そして、液圧制御装置30からの制御信号によりバルブNOPを開放させことで、4WD用多板クラッチ41および差動制限用多板クラッチ42における液圧ピストンからの戻り液や、ブレーキキャリパピストン7からの戻り液が液圧ポンプ52に向けて吸引される。
さらに、液圧ポンプ52の駆動力により低圧アキュムレータ63に低圧状態で蓄圧する場合には、下記表4に示すように、液圧制御装置30からの制御信号によりバルブNCA3およびバルブNCA5のソレノイドコイルが励磁されバルブNCA3およびバルブNCA5が開放される。このときバルブNCA1、バルブNCA2、バルブNCA4およびバルブNCA6はいずれも閉鎖されている。これにより、液圧ポンプ52の吐出側と低圧アキュムレータ63とが連通し、液圧ポンプ52から吐出された作動液の液圧が低圧アキュムレータ63に所定の設定圧で蓄圧される。
また、液圧ポンプ52の駆動力により中圧アキュムレータ62に中圧状態(上記低圧アキュムレータ63に蓄圧される場合よりも高い圧力)で蓄圧する場合には、液圧制御装置30からの制御信号によりバルブNCA2およびバルブNCA5のソレノイドコイルを励磁させバルブNCA2およびバルブNCA5を開放させ、バルブNCA1、バルブNCA3、バルブNCA4およびバルブNCA6をいずれも閉鎖させるようにする。一方、液圧ポンプ52の駆動力により高圧アキュムレータ61に高圧状態(上記中圧アキュムレータ62に蓄圧される場合よりも高い圧力)で蓄圧する場合には、液圧制御装置30からの制御信号によりバルブNCA1およびバルブNCA5のソレノイドコイルを励磁させバルブNCA1およびバルブNCA5を開放させ、バルブNCA2、バルブNCA3、バルブNCA4およびバルブNCA6をいずれも閉鎖させるようにする。
ここで、上記のように、大受圧面積液圧ピストン45等およびブレーキキャリパピストン7への液圧の供給源として、リザーバタンク51およびアキュムレータ61〜63のいずれかに切換可能に構成された液圧供給装置50の各種機能について説明する。
本液圧供給装置50は、液圧制御装置30に入力される図示しない指令信号発生部からの指令信号の大きさによりデフ機構40に設けられた液圧ピストン44〜47のうち液圧を印加するピストンを選択するようになっている。液圧制御装置30への指令信号が小さく閾値S0以下(図5参照)である場合には、小受圧面積液圧ピストン44を作動させて4WD用多板クラッチ41を係合作動させるために、下記表5に示すようなバルブの制御がなされる。すなわち、バルブNCT11を開放させバルブNCT21を閉鎖させることによって、例えば車輪の回転速度を検出する図示しない速度センサによる検出値に基づいて上記指令信号発生部から出力される指令信号が閾値S0以下である場合は4WD用多板クラッチ41を係合させるために小受圧面積液圧ピストン44のみに液圧が印加される。これは、差動制限用多板クラッチ42を係合させる場合も同様であり、指令信号が閾値S0以下である場合は差動制限用多板クラッチ42を係合させるために小受圧面積液圧ピストン46のみに液圧が印加される。
一方、液圧制御装置30への上記指令信号が閾値S0よりも大きい場合には、小受圧面積液圧ピストン44および大受圧面積液圧ピストン45をいずれも作動させて4WD用多板クラッチ41を係合作動させるようなバルブの制御がなされる。すなわち、表5に示すように、バルブNCT11だけではなく、バルブNCT21をも開放させることで、大受圧面積液圧ピストン45の側にも作用液が流れて小受圧面積液圧ピストン44および大受圧面積液圧ピストン45がいずれも作動する。そして、従来はABSもしくはVSA動作のためにブレーキ液路75の調圧を行っていた調圧バルブREGを用いて、加圧側液路73に供給される作動液の液圧を微妙に制御する。このような制御により、液圧制御装置30への指令信号の大きさが閾値S0以下の場合は、小受圧面積液圧ピストン44のみ作動させてエンジン3からの後輪5,5側への駆動力の伝達量を小さく抑え(図5のラインL1で示すように動力伝達量をT0以下に抑える)、液圧制御装置30への指令信号の大きさが閾値S0よりも大きい場合には、図5のラインL2で示すように指令信号が大きくなるにつれてエンジン3からの後輪5,5側への駆動力の伝達量を急激に増加させるような微妙な制御を行うことが可能である。
続いて、本液圧供給装置50による、ABSもしくはVSA動作後における作動液のアキュムレータ61〜63への蓄圧について説明する。前後輪4,5に作用したブレーキキャリパピストン7の作動による車両の制動をVSA制御により解除する場合や、ABSの作動中にブレーキキャリパピストン7による前後輪4,5の制動を解除する場合には、ブレーキキャリパピストン7に印加されていた液圧を減圧する必要がある。
従来においては、ブレーキキャリパピストンに印加されていた作動液の液圧を減圧する場合、ブレーキキャリパピストン7からの戻り液をバルブの無いアキュムレータに一旦貯蔵させた後、直ぐに液圧ポンプによりリザーバタンクに戻していた。これに対し本実施例では、液圧センサSC,SH,SM,SLによる液圧の検出およびバルブNCA1,バルブNCA2,バルブNCA3の開閉制御によりブレーキキャリパピストン7からの戻り液の液圧に応じて作動液をアキュムレータ61〜63のいずれかに蓄圧できるようになっている。具体的には、バルブNOP、バルブNCP3およびバルブNCA4を閉鎖状態にしてブレーキキャリパピストン7と、液圧ポンプ52の吸入側およびリザーバタンク51とを遮断状態にした上で、下記表6に示すようなバルブの制御を行う。なお、液圧供給装置50は、液圧センサSCによる検出値が低圧側の範囲(例えばP1MPa〜P2MPa)、中圧側の範囲(例えばP2MPa〜P3MPa)および高圧側(例えばP3MPa〜P4MPa)の範囲のうちのいずれかの範囲にあるのかを判断できるようになっている。
例えば、液圧センサSCによりブレーキキャリパピストン7からの戻り液の液圧が上記P2MPaよりも低い低圧側の範囲(P2MPa未満)にあると検出された場合には、これに応じた液圧供給装置50からの制御信号によりバルブNCA1およびバルブNCA2を閉鎖させバルブNCA3のソレノイドコイルが励磁させてバルブNCA3を開放させる。これにより、ブレーキキャリパピストン7からの戻り液は、バルブNCA6およびバルブNCA3を通って低圧アキュムレータ63に入り、作動液が蓄圧される。そして、液圧センサSLによる液圧の検出値が液圧センサSCによる検出値とほぼ等しくなるまで蓄圧された時点でバルブNCA3が閉鎖され低圧アキュムレータ63への蓄圧動作が終了する。
一方、液圧センサSCによりブレーキキャリパピストン7からの戻り液の液圧が上記P3MPaよりも高い高圧側の範囲(P3MPa以上)であると検出された場合には、液圧供給装置50は、表6に示すようにバルブNCA1を開放し、バルブNCA2およびバルブNCA3を閉鎖する。これにより、ブレーキキャリパピストン7からの戻り液が高圧アキュムレータ61内に供給され、液圧センサSHによる液圧の検出値が液圧センサSCによる液圧の検出値とほぼ等しくなるまで蓄圧され、その時点でバルブNCA1が閉鎖され高圧アキュムレータ61への蓄圧動作が終了する。
また、液圧センサSCによりブレーキキャリパピストン7からの戻り液の液圧がP2MPaとP3MPaとの間の値(P2MPa以上P3MPa未満)であると検出された場合には中圧アキュムレータ62に蓄圧されるが、中圧アキュムレータ62への蓄圧動作についても、高圧アキュムレータ61および低圧アキュムレータ63への蓄圧動作と同様である。このように、複数のアキュムレータ61〜63を設けて、ブレーキキャリパピストン7からの戻り液の液圧に応じてこれらのアキュムレータ61〜63のうちのいずれかに作動液を供給して蓄圧することで、戻り液の液圧が低い場合であっても蓄圧可能となる。
次に、液圧供給装置50による、アキュムレータに蓄圧されている作動液の液圧を用いたデフ機構40における駆動力の制御について説明する。本発明に係る液圧供給装置50では、上記のようにしてブレーキキャリパピストン7からアキュムレータ61〜63のうちいずれかに蓄えられた作動液の液圧を直接的に多板クラッチ41,42の作動用ピストン44〜47に供給することが可能である。具体的には、液圧制御装置30への上記指令信号発生部からの指令信号に応じて、液圧の供給側のアキュムレータ61〜63と、エンジン3の駆動力を伝達させる作動を行うピストン44〜47との組み合わせを選択することが可能である。例えば、デフ機構40内のLSD(差動制限機構)に向けてエンジン3から小さい駆動力を伝達させる場合には、下記表7に示すように、バルブNCA1およびバルブNCA2を閉鎖しバルブNCA3を開放することで、低圧アキュムレータ63に蓄えられていた作動液の液圧が差動制限用多板クラッチ42の側に供給される。そして、バルブNCT31を開放することで(バルブNCT11、バルブNCT21、バルブNCT41はいずれも閉鎖されている)、低圧アキュムレータ63に蓄えられていた圧力の低い作動液の液圧を、差動制限用多板クラッチ42を係脱作動させるための小受圧面積液圧ピストン46の側に供給させることができる。このようにして差動制限用多板クラッチ42にエンジン3からの小さい駆動力を伝達させることが可能である。
一方、4WDを作動させるために、エンジン3からの大きい駆動力をデフ機構40に作用させる場合には、表7に示すように、バルブNCA2およびバルブNCA3を閉鎖し、バルブNCA1を開放する。これにより、高圧アキュムレータ61に蓄えられていた作動液の液圧が4WD用多板クラッチ41の側に供給される。そして、バルブNCT21を開放することで(バルブNCT11、バルブNCT31、バルブNCT41はいずれも閉鎖されている)、高圧アキュムレータ61に蓄えられていた圧力の高い作動液の液圧を、4WD用多板クラッチ41を係脱作動させるための大受圧面積液圧ピストン45の側に供給させることができる。このようにして4WD用多板クラッチ41にエンジン3からの大きな駆動力を伝達させることが可能である。
また、上記のようにして、4WD用多板クラッチ41もしくは差動制限用多板クラッチ42を係脱作動させるための液圧ピストン45,46に印加された液圧を調圧することもできる。具体的には、表7に示すように、バルブNOB1およびバルブNOB2を閉鎖して、アキュムレータ61〜63の側からブレーキキャリパピストン7に液圧が供給されないようにした上で、バルブNCP1を開放することによって、アキュムレータ61〜63の側から調圧バルブREGに作動液が流れるようにし、4WD用多板クラッチ41もしくは差動制限用多板クラッチ42を係脱作動させるために液圧ピストン45,46に印加された液圧を調圧バルブREGにより調圧することが可能である。
ブレーキキャリパピストン7、4WD用多板クラッチ41および差動制限用多板クラッチ42を係脱作動させる各ピストンに液圧を印加する場合、従来は調圧バルブREGのみでその液圧が調圧されるようになっている。しかしながら、これらに液圧を急激に加える場合、液圧供給装置50内の液圧変動が大きくなり、これが原因で車両の挙動に影響を及ぼす場合がある。一方、急激な液圧変動を抑えようとすると、4WD用多板クラッチ41等を係合作動させるための制御信号に対する4WD用多板クラッチ41等の係合作動の応答性が低下し、液圧変動の抑制と係合作動の応答性とを考慮した最適な制御が難しい。このため、本実施例では、液圧変動の抑制と係合作動の応答性とを両立させるために、液圧制御装置30による以下のような制御がなされる。
下記表8に、4WD用多板クラッチ41を係脱させる大受圧面積液圧ピストン45に液圧を印加する場合の各バルブの状態を示す。表8に示すように、バルブNCT21を開放することで液圧ポンプ52から供給される作動液の液圧が大受圧面積液圧ピストン45に印加され、バルブNCP1を開放させて液圧を調圧バルブREGの側にも供給することで、この調圧バルブREGにより大受圧面積液圧ピストン45に印加される液圧が調圧制御される。また、本実施例では、調圧バルブREGの側に液圧が供給されるほかに、液圧ポンプ52から吐出され吐出ライン72を流れる作動液の液圧が、蓄圧ライン78を介してアキュムレータ61〜63の側にも供給されるようになっている。このような構成のため、大受圧面積液圧ピストン45への液圧の印加に伴う急激な液圧変動は、アキュムレータ61〜63の側に作動液が供給されることによって吸収されることができる。
具体的には、液圧ポンプ52から蓄圧ライン78を介してアキュムレータ61〜63の側に供給される液圧を液圧センサSCが検出し、この検出値に応じた液圧制御装置30からの制御信号がバルブNCA1、バルブNCA2およびバルブNCA3のうちのいずれかに出力され、この制御信号に応じてバルブNCA1、バルブNCA2およびバルブNCA3のうちのいずれかが開放される。表8の例では、バルブNCA3が開放されることで低圧アキュムレータ63に作動液が供給され、これにより大受圧面積液圧ピストン45への液圧の印加に伴う急激な液圧変動を吸収することができる。
例えば、液圧センサSCにより液圧ポンプ52から蓄圧ライン78を介してアキュムレータ61〜63の側に供給される液圧が、P2MPaよりも低い低圧側の範囲(P2MPa未満)にあると検出された場合には、これに応じた液圧供給装置50からの制御信号によりバルブNCA1およびバルブNCA2を閉鎖させバルブNCA3を開放させる。これにより、液圧ポンプ52から吐出された作動液は、バルブNCA6およびバルブNCA3を通って低圧アキュムレータ63に入り蓄圧される。そして、液圧センサSLによる検出値が液圧センサSCによる検出値とほぼ等しくなるまで蓄圧された時点でバルブNCA3が閉鎖され低圧アキュムレータ63への蓄圧動作が終了する。なお、低圧アキュムレータ63に加圧状態で貯蔵された作動液は、大受圧面積液圧ピストン45に液圧を引加する制御信号に応じて、液圧ポンプ52を介さずに素早く大受圧面積液圧ピストン45の側に供給されることが可能であるため、4WD用多板クラッチ41を係合作動させるための制御信号に対する応答性も確保することができる。
一方、液圧センサSCにより液圧ポンプ52から蓄圧ライン78を介してアキュムレータ61〜63の側に供給される液圧が、P3MPaよりも高い高圧側の範囲(P3MPa以上)であると検出された場合には、液圧供給装置50は、表6に示すようにバルブNCA1を開放し、バルブNCA2およびバルブNCA3を閉鎖する。これにより、液圧ポンプ52から吐出された作動液は高圧アキュムレータ61内に供給され、液圧センサSHによる液圧の検出値が液圧センサSCによる液圧の検出値とほぼ等しくなるまで蓄圧され、その時点でバルブNCA1が閉鎖されて高圧アキュムレータ61への蓄圧動作が終了する。また、高圧アキュムレータ61に加圧状態で貯蔵された作動液が、液圧ポンプ52を介さずに素早く大受圧面積液圧ピストン45の側に供給されることが可能であるため、4WD用多板クラッチ41を係合作動させるための制御信号に対する応答性も確保することができる。
さらに、液圧センサSCにより液圧ポンプ52から蓄圧ライン78を介してアキュムレータ61〜63の側に供給される液圧が、P2MPaとP3MPaとの間の値(P2MPa以上P3MPa未満)であると検出された場合には中圧アキュムレータ62に蓄圧されるが、中圧アキュムレータ62への蓄圧動作についても、高圧アキュムレータ61および低圧アキュムレータ63への蓄圧動作と同様である。このように、複数のアキュムレータ61〜63を設けて、液圧ポンプ52から蓄圧ライン78を介してアキュムレータ61〜63の側に供給される液圧に応じてこれらのアキュムレータ61〜63のうちのいずれかに作動液を供給して蓄圧することで、大受圧面積液圧ピストン45への液圧の印加に伴う急激な液圧変動を吸収することが可能である。
なお、表8は、4WD用多板クラッチ41を係脱作動させる大受圧面積液圧ピストン45に液圧を印加する場合を示しているが、これに限らず、小受圧面積液圧ピストン44に液圧を印加する場合、差動制限用多板クラッチ42を係脱させる液圧ピストン46,47に印加する作動液の液圧を制御する場合、あるいは、ブレーキキャリパピストン7に印加する作動液の液圧を制御する場合であっても、同じようにして、液圧センサSCの検出による液圧ポンプ52からアキュムレータ61〜63の側に供給される液圧に応じて、作動液を加圧状態に貯蔵するアキュムレータ61〜63が選択されるように構成されている。
ブレーキキャリパピストン7に印加されている液圧を低下させる場合や、4WD用多板クラッチ41および差動制限用多板クラッチ42を係脱作動させる各ピストン44〜47に印加されている液圧を低下させる場合、従来は、液圧ポンプ52の駆動力にて作動液を吸引しこれをリザーバタンク51に戻している。一方、本実施例では、ピストン44〜47に印加されている液圧を従来よりも急速に低下させるために、液圧制御装置30による以下のような制御がなされる。
下記表9に差動制限用多板クラッチ42を係脱作動させる小受圧面積液圧ピストン46に印加されていた液圧を急速に低下させる場合の各バルブの状態を示す。表9に示すように、液圧制御装置30からの制御信号に応じてバルブNCT32を開放しバルブNOPを開放することで、小受圧面積液圧ピストン46側の作動液が液圧ポンプ52により吸引され、液圧制御装置30からの制御信号を受けてバルブNCA5が開放され液圧ポンプ52から吐出された作動液が蓄圧液路78を通ってアキュムレータ61〜63の側に送られる。そして、液圧センサSCの検出による作動液の液圧に応じた液圧制御装置30からの制御信号がバルブNCA1、バルブNCA2およびバルブNCA3のうちのいずれかに出力され、この制御信号に応じてバルブNCA1、バルブNCA2およびバルブNCA3のうちのいずれかが開放される。表9の例では、バルブNCA3が開放されることで低圧アキュムレータ63に作動液が供給され、作動液が蓄圧されるようになっている。このように、リザーバタンク51と比較して小受圧面積液圧ピストン46に近い位置に設置されているアキュムレータ61〜63に作動液を戻すことで、小受圧面積液圧ピストン46に印加されていた液圧を従来よりも急速に低下させることが可能である。
アキュムレータ61〜63への選択的な貯蔵の制御は、具体的には、以下のようにして行われる。例えば、液圧センサSCにより小受圧面積液圧ピストン46の側からの戻り液の液圧がP2MPaよりも低い低圧側の範囲(P2MPa未満)にあると検出された場合には、これに応じた液圧供給装置50からの制御信号によりバルブNCA1およびバルブNCA2を閉鎖させバルブNCA3を開放させる。これにより、小受圧面積液圧ピストン46の側からの戻り液は、バルブNCA6およびバルブNCA3を通って低圧アキュムレータ63に入り、作動液が蓄圧される。そして、液圧センサSLによる液圧の検出値が液圧センサSCによる検出値とほぼ等しくなるまで蓄圧された時点でバルブNCA3が閉鎖され低圧アキュムレータ63への蓄圧動作が終了する。
一方、液圧センサSCにより小受圧面積液圧ピストン46の側からの戻り液の液圧が上記P3MPaよりも高い高圧側の範囲(P3MPa以上)であると検出された場合には、液圧供給装置50は、表6に示すようにバルブNCA1を開放し、バルブNCA2およびバルブNCA3を閉鎖する。これにより、小受圧面積液圧ピストン46の側からの戻り液が高圧アキュムレータ61内に供給され、液圧センサSHによる液圧の検出値が液圧センサSCによる液圧の検出値とほぼ等しくなるまで蓄圧され、その時点でバルブNCA1が閉鎖され高圧アキュムレータ61への蓄圧動作が終了する。
また、液圧センサSCにより小受圧面積液圧ピストン46の側からの戻り液の液圧がP2MPaとP3MPaとの間の値(P2MPa以上P3MPa未満)であると検出された場合には中圧アキュムレータ62に蓄圧されるが、中圧アキュムレータ62への蓄圧動作についても、高圧アキュムレータ61および低圧アキュムレータ63への蓄圧動作と同様である。このように、複数のアキュムレータ61〜63を設けて、小受圧面積液圧ピストン46の側からの戻り液の液圧に応じてこれらのアキュムレータ61〜63のうちのいずれかに作動液を供給して蓄圧することで、戻り液の液圧が低い場合であっても蓄圧可能となる。
なお、表9は、差動制限用多板クラッチ42を係脱させる小受圧面積液圧ピストン46に印加されていた液圧を急速に低下させる場合を示しているが、これに限らず、大受圧面積液圧ピストン47に印加されていた液圧を急速に低下させる場合、4WD用多板クラッチ41を係脱作動させる液圧ピストン44,45に印加されていた液圧を急速に低下させる場合、あるいは、ブレーキキャリパピストン7に印加されていた液圧を急速に低下させる場合であっても、同じようにして、アキュムレータ61〜63のいずれかに作動液が加圧状態で貯蔵されるようになっている。
ブレーキキャリパピストン7、あるいは、4WD用多板クラッチ41および差動制限用多板クラッチ42を係脱作動させる各液圧ピストン44〜47に液圧を印加する場合、液圧ポンプ52を駆動させてリザーバタンク51から送られてくる作動液をこれらに送る場合、従来においては以下のような課題点がある。すなわち、液圧ポンプ52の吐出性能は、液圧ポンプ52の吸入側の液圧に左右される、という点である。特に、液圧ポンプ52の吸入側の液路の管路抵抗が大きい場合には、液圧ポンプ52の吐出性能が大きく低下して、例えば差動制限用多板クラッチ42を係脱作動させる液圧ピストン46,47へ充分な作動液の液圧が印加されない場合や、大きな管路抵抗により液圧ポンプ52に大きな負荷が掛かることで液圧ポンプ52に異常音が発生する場合がある。しかしながら、これを防止するため、液圧ポンプ52の吸入側の液路の管路抵抗を小さく抑えることを目的として、液圧ポンプ52とリザーバタンク51との間の管路の距離を短くすると、液圧ポンプ52およびリザーバタンク51を互いに近くに設置せざるをえず、これらの設置の自由度が低い。
このため、本実施例では、液圧供給装置50により以下のような制御が行われる。すなわち、例えば差動制限用多板クラッチ42を係脱作動させる小受圧面積液圧ピストン46に液圧を急速に印加する場合と、これに作動液の液圧を徐々に印加する場合とで、下記表10に示すような各バルブの選択制御が行われる。まず、小受圧面積液圧ピストン46に液圧を急速に印加する場合には、液圧供給装置50からの制御信号によりバルブNCT31を開放して小受圧面積液圧ピストン46に液圧を印加できるようにした上で、バルブNCP2を閉鎖しNCA1およびNCA4を開放する。このため、高圧アキュムレータ61に蓄えられていた作動液の液圧が液圧ポンプ52を介して急速に小受圧面積液圧ピストン46に印加される。このとき、リザーバタンク51に蓄えられていた作動液は小受圧面積液圧ピストン46に供給されない。
一方、小受圧面積液圧ピストン46に液圧を徐々に印加する場合には、バルブNCT31を開放した上で、NCA1およびNCA4を閉鎖しバルブNCP2を開放する。このため、リザーバタンク51に蓄えられていた作動液が液圧ポンプ52を介して小受圧面積液圧ピストン46に供給されて小受圧面積液圧ピストン46には徐々に液圧が印加される。このとき、高圧アキュムレータ61に蓄えられていた作動液は小受圧面積液圧ピストン46に供給されない。
このようにして、特に小受圧面積液圧ピストン46側に急速に液圧を印加させたい場合には、液圧ポンプ52との管路の距離が短い高圧アキュムレータ61に蓄えられていた作動液を供給することで液圧ポンプ52の吸入側の液路の管路抵抗が小さく抑えられ、小受圧面積液圧ピストン46に充分な液圧が印加されることから、液圧ポンプ52とリザーバタンク51との間の管路の距離を短く設定する必要がない。なお、小受圧面積液圧ピストン46側に急速に液圧を印加させたい場合、上記のように高圧アキュムレータ61からの作動液の供給に限れられず、中圧アキュムレータ62からの作動液の供給や、低圧アキュムレータ63からの作動液の供給を行ってもよい。
ここで、本発明において達成される効果をまとめると下記のようになる。すなわち、本発明に係る液圧供給装置においては、液圧ポンプから吐出される作動液の液圧が液圧クラッチ機構もしくはブレーキ装置に供給される構成になっている。すなわち、液圧クラッチ機構およびブレーキ装置に液圧を供給する液圧ポンプが共有された構成になっているため、車両に液圧ポンプを1つ装備するだけでよいので車両全体を軽量化させることが可能で、また、車両の製造コストを下げることが可能である。さらに、第2作動液貯蔵手段からの作動液の液圧が液圧クラッチ機構もしくはブレーキ装置に供給される構成になっている。このため、液圧クラッチ機構に液圧を供給する場合に、従来はブレーキ装置に液圧を供給するために用いられていた吐出圧の高い液圧ポンプから液圧を供給させないで、第2作動液貯蔵手段から液圧を供給させることで、液圧クラッチ機構が要求する低圧(ブレーキ装置に供給される液圧と比較して)の液圧を液圧クラッチ機構を係合作動させるために供給することが可能である。さらにまた、液圧クラッチ機構に液圧を供給するための作動液は、ブレーキ装置に液圧を供給するための低温でも粘性の低い作動液であるため、液圧クラッチ機構に供給される作動液が低温で流量不足になることがなく、低温での液圧クラッチ機構の係脱作動の制御性が向上する。
また、上記のような従来にはない制御、すなわち、液圧クラッチ機構もしくはブレーキ装置への液圧ポンプによる液圧の供給と、液圧クラッチ機構もしくはブレーキ装置への第2作動液貯蔵手段からの加圧状態の液圧の供給とを選択する制御が可能な上、通常のブレーキ制御、すなわち、第1作動液貯蔵手段(リザーバタンク)からの作動液をマスタシリンダを介して加圧して供給するブレーキ制御を行うことが可能である。
また、液圧制御装置により受圧面積が異なる液圧ピストンへの液圧の供給を選択する制御が可能であるため、受圧面積が小さい第1液圧ピストンに液圧を供給することで液圧クラッチ機構に対する微妙な押圧力を精度良く制御したり、受圧面積が大きい第2液圧ピストンに液圧を供給して、液圧クラッチ機構を第1液圧ピストンに液圧を供給する場合よりも高い押圧力で押圧することでエンジンからの大きな伝達力を車輪側に伝達させることが可能である。
さらに、ブレーキ装置の側から設定圧の異なる複数の第2作動液貯蔵手段(低圧作動液貯蔵部および高圧作動液貯蔵部)の側に戻される作動液の液圧に応じて、この作動液が複数の第2作動液貯蔵手段に加圧状態で貯蔵されるため、ブレーキ装置の制動状態の変化によりブレーキ装置の側から第2作動液貯蔵手段に戻される作動液の液圧が変化しても効率よく作動液を貯蔵できる。
また、液圧ポンプを使用するのではなく、設定圧の低い低圧作動液貯蔵部に加圧状態で貯蔵されていた作動液の液圧を受圧面積が小さい第1液圧ピストンに直接供給することで、液圧クラッチ機構を低い押圧力で押圧し、また、設定圧の高い高圧作動液貯蔵部に加圧状態で貯蔵されていた作動液の液圧を受圧面積が大きい第2液圧ピストンに直接供給することで、液圧クラッチ機構を高い押圧力で押圧することが可能である。このように、液圧ピストンに液圧を供給する第2作動液貯蔵手段を使い分けることで、エンジンから車輪に伝達される伝達力を制御することが可能であり、しかも、液圧ポンプを使用しないことから、液圧ポンプを駆動させる頻度が減少して、液圧供給装置全体の耐久性を向上させることが可能である。
また、液圧クラッチ機構への液圧の供給に伴う液圧変動を、液圧ポンプから吐出される作動液をその液圧に応じた第2の作動液貯蔵手段に加圧状態で貯蔵することで、抑制することが可能である。また、このようにして第2の作動液貯蔵手段に加圧状態で貯蔵された作動液の液圧を液圧クラッチ機構に供給することで、液圧クラッチ機構を係合作動させるための制御信号に対して素早く応答することが可能であるため、液圧変動の抑制と係合作動の応答性とを両立させることができる。
さらに、液圧クラッチ機構を係合作動させていた液圧やブレーキ装置を作動させていた液圧を第2作動液貯蔵手段に供給して加圧状態で貯蔵することで、液圧クラッチ機構を係合作動させていた液圧を急速に低減させることが可能で、液圧クラッチ機構による駆動力の伝達の解除を急速に行うことが可能である。
また、液圧ポンプに急速に液圧を供給させたい場合には、第2作動液貯蔵手段に加圧状態で貯蔵されている液圧を液圧ポンプに供給し、液圧ポンプに徐々に液圧を供給させたい場合には、第1作動液貯蔵手段に貯蔵されている液圧を液圧ポンプに供給するような構成になっているため、特に、液圧ポンプに急速に液圧を供給させたい場合に、第2作動液貯蔵手段から素早く液圧を供給することで液圧ポンプの性能を充分に発揮させることが可能である。また、第2作動液貯蔵手段は液圧ポンプの近傍に設置されているため第2作動液貯蔵手段と液圧ポンプとの間の管路を短くすることが可能で、これにより、液圧ポンプに急速に液圧を供給させたい場合に、管路抵抗が低いことから液圧ポンプに大きな負荷を掛けないようにすることが可能である。