以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明のつや出し清掃物品1の一実施形態が示されている。図2は、図1におけるII−II線断面図である。図1に示す清掃物品1は、床面等の硬質表面のつや出しに好適に用いられるものである。清掃物品1は、液保持シート2に、つや出し剤が含浸されて構成されている。清掃物品1は、これを密封収容する液不透過性の扁平な収容体3に収容されている。
収容体3は液不透過性のフィルムから構成されている。収容体3は平面視して矩形状をした扁平な袋状をしており、第1の面3a及び第2の面3bを有している。収容体3は矩形をした2枚の液不透過性シートの四辺を接合することで形成されている。収容体3は、その一部、具体的には第1の面3aに、長手方向に延びる長孔からなる2列の開孔31を有している。開孔31は、第1の面3aが液保持シート2と対向する領域の全体に亘って形成されている。液不透過性シートとしては、或る程度柔軟であり液不透過性のものであればその種類に特に制限はない。例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、該フィルムにアルミニウムなどの金属薄膜をラミネートしたものなどを液不透過性シートとして用いることができる。
図1に示すように、収容体3は、その使用前においては開孔31が封止手段としてのシール32によって封止状態となっており、液保持シート2に含浸されているつや出し剤組成物が使用前に収容体3の外に漏出しないようになっている。使用に際してはシール32を引き剥がして封止状態を解く。
液保持シート2は繊維材料から構成されており、袋状をした収容体3内に収容されている。液保持シート2は、収容体3よりも若干小さな矩形状をしている。液保持シート2にはつや出し剤組成物が高含浸率で含浸されている。先に述べた開孔31は、該開孔31を通じて液保持シート2から後述する液徐放シート全体に対して適量の洗浄剤等を移行させ得る大きさ及び/又は開孔率を有している。具体的には、各開孔31の面積は、洗浄剤等の放出を妨げないようにする観点から、5〜13,000mm2、特に5〜8,700mm2であることが好ましい。同様の理由により、第1の面3aにおける液保持シート2との対向面積に対する開孔31の面積の総和の割合、つまり開孔率は1〜50%、特に3〜33%、とりわけ3〜25%であることが好ましい。
液保持シート2は、多量のつや出し剤組成物を含浸でき且つ該組成物の徐放性に優れていることが望ましい。また多量のつや出し剤組成物を含浸させた場合に、ヘタリが生じないことも望ましい。その詳細については後述する。
液保持シート2に含浸されているつや出し剤組成物は、主としてフローリングなどの床を始めとする硬質表面のつや出し、保護を目的とした剤である。つや出し剤組成物は、(a)アクリル系ポリマー、(b)グリコール系溶剤及び(c)界面活性剤を含有している。本実施形態の清掃物品1は、(イ)つや出し剤組成物が高含浸率で液保持シート2に含浸されていること、及び(ロ)組成物中における(a)のアクリル系ポリマーが、最低造膜温度の異なる2種以上のアクリル系ポリマーを含むこと、(ハ)2種以上の該アクリル系ポリマーの固形分比が特定の範囲にあること、及び(ニ)つや出し剤組成物の不揮発分の量が特定の範囲内にあることが特徴となっている。
(a)のアクリル系ポリマーは、フローリング等の床を始めとするつや出し対象面に被膜を形成することにより、つやを付与する主成分である。(a)のアクリル系ポリマーは、(a)−1:最低造膜温度が10℃以上50℃未満のアクリル系ポリマーと、(a)−2:最低造膜温度が50℃以上90℃以下のアクリル系ポリマーとを含んでいる。これら最低造膜温度の異なる2種以上のアクリル系ポリマーを用いることで、つや出し剤組成物の塗布量が低下した場合であっても、良好な延展性を維持することができる。
(a)−1と(a)−2の配合割合は、つや出し剤組成物の延展性を良好にする観点から重要である。詳細には、(a)−1の固形分と(a)−2の固形分との重量比(前者:後者)を1:9〜6:4とし、好ましくは3:7〜5:5とする。(a)−1の配合量が少なすぎる場合、又は(a)−2の配合量が多すぎる場合には、つや出し剤組成物の塗布量が低下したときに、良好な延展性を維持することができなくなり、乾燥時の被膜の仕上がりが悪くなってしまう。逆に(a)−1の配合量が多すぎる場合、又は(a)−2の配合量が少なすぎる場合には、ファンヒーターやストーブの熱にさらされて表面温度が高くなった場合に、被膜がガラス状態から転移して、ベタつく可能性が高くなる。
本発明者らの結果、最低造膜温度の異なる2種以上の前記アクリル系ポリマーを用いることで、つや出し剤組成物の延展性が向上することに加え、つや出し剤組成物によって形成される被膜の剥離性が良好になることが判明した。つや出し剤組成物を用いる場合には、一般に、先に形成された被膜の上につや出し剤組成物を重ねて塗布する場合と、先に形成された被膜を一旦剥離除去した後に改めてつや出し剤組成物を塗布する場合とがある。後者の場合、被膜の剥離性が良好でない場合は、例えば強アルカリを含む剥離剤を用いポリッシャー等で被膜を剥離除去する必要がある。しかし、pH11.5以上の強アルカリはつや出し対象面に損傷を与える可能性があることから、pH11.0以下の穏和な剥離剤を用いて被膜を剥離除去し得ることが求められる。本実施形態に係るつや出し剤組成物は被膜の剥離性が良好なので、つや出し対象面が損傷を受けにくい穏和な剥離剤を用いて被膜を剥離し得るという観点から有利なものである。
(a)−1のアクリル系ポリマーとして用いられるものは、前述の通り最低造膜温度が30℃以上50℃未満のものである。(a)−2のアクリル系ポリマーとして用いられるものは、前述の通り最低造膜温度が50℃以上90℃以下、好ましくは60℃以上85℃以下のものである。最低造膜温度とは、ポリマーエマルジョンから被膜が形成され得る最低の温度をいう。最低造膜温度よりも低い温度条件で造膜をしようとすると、連続した被膜が形成できず、粉化現象を起こす場合がある。最低造膜温度はJIS K6828−2に従い測定される。最低造膜温度はアクリル系ポリマーのガラス転移温度や、アクリル系ポリマーのエマルジョンの粒径と密接な関係がある。
(a)−1及び(a)−2のアクリル系ポリマーは通常ラテックスないしエマルジョンの状態のものが用いられる。そのようなエマルジョンは合成によって得てもよいし、或いは市販品を用いてもよい。市販品としては、例えばローム・アンド・ハース(株)製のプライマルNT−2624(商品名)や同社製のプライマル3188(商品名)等を用いることができる。(a)−1及び(a)−2のアクリル系ポリマーはそれぞれ少なくとも一種ずつ用いることができる。つや出し剤組成物における(a)のアクリル系ポリマーの配合量は固形分として3〜50重量%、特に5〜20重量%であることが好ましい。
(b)のグリコール系溶剤は、(a)のアクリル系ポリマーの造膜助剤として用いられるものである。グリコール系溶剤は、他の有機溶剤や水に比較して一般に揮発速度が遅い。このことを利用して、(a)のアクリル系ポリマーによる被膜とつや出し対象面との密着性を高める。(b)のグリコール系溶剤としては、その種類に特に制限はないが、アルキレングリコールアルキルエーテルを用いることが好ましい。特に、R1O(C2H4O)a(C3H6O)bR2(式中、R1及びR2は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示し、いずれか一方が水素原子の時は他方は別の基を示す。a及びbは、それぞれ0〜3までの整数を示し、いずれか一方が0の時は他方は1以上の整数を示す)で表されるアルキレングリコールアルキルエーテルを用いることが好ましい。
前記のアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル又はポリオキシエチレン(前記式中、a=1)ポリオキシプロピレン(前記式中、b=3)グリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。これらは2種以上を組み合わせて使用することができる。
先に述べた通り、(b)のグリコール系溶剤を用いることで、(a)のアクリル系ポリマーによる被膜とつや出し対象面との密着性が高まる。しかし、グリコール系溶剤の配合量を多くしすぎると被膜の乾燥時間が長くなってしまう。これらの観点から、(b)のグリコール系溶剤は、つや出し剤組成物中に0.5〜4重量%、特に1〜2.5重量%配合されることが好ましい。
(c)の界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の何れもが用いられる。特に洗浄性と仕上がり性の両立の面から、炭素数8〜22の直鎖または分岐脂肪族アルコールのポリアルコキシレート(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)、炭素数8〜22の第2級アルコールのポリアルコキシレート(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)、アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)グリコシド(平均糖縮合度1〜5)、ソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エステル、及びアルキル(炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖)グリセリルエーテル等の非イオン活性剤並びにアルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン等のアルキル炭素数8〜24の両性界面活性剤が好適に用いられる。これら界面活性剤の中で、炭素数8〜22の直鎖または分岐脂肪族アルコールのポリアルコキシレート(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)、炭素数8〜22の第2級アルコールのポリアルコキシレート(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)が、つや出し剤組成物の塗布量が低下したときにおいても、より良好な延展性を維持することができる点で特に好ましい。つや出し剤組成物中における界面活性剤の配合量は、つや出し対象面の仕上がり性の観点から決定される。また界面活性剤の配合量は、(a)のアクリル系ポリマーによる被膜の耐水性や剥離性とも関係している。具体的には、界面活性剤の配合量が少なすぎると耐水性は向上するが被膜の剥離性が低下する傾向にある。逆に界面活性剤の配合量が多すぎると被膜が容易に剥離しやすいが耐水性が悪くなる傾向にある。これらを勘案すると、つや出し剤組成物中における界面活性剤の配合量は、( a )のアクリル系ポリマーの固形分に対する重量比で、( a )のアクリル系ポリマーの固形分:界面活性剤量=333:1〜50:1であることが好ましい。
つや出し剤組成物には、前述の(a)〜(c)の成分に加えて、更に(d)1種類以上のポリオレフィンワックスが含有されていてもよい。ポリオレフィンワックスは、水不溶性ポリマーとして作用して、(a)のアクリル系ポリマーによる被膜の滑り性を高めるものである。この観点から、(d)のポリオレフィンワックスの固形分の総重量と、(a)のアクリル系ポリマーの固形分の総重量との比(前者:後者)は1:20〜1:3、特に1:10〜3:10であることが、つや出し対象面の仕上がりが良好になる点、及び乾燥後にから拭きしてつやを上げる作業が不要な点から好ましい。
(d)のポリオレフィンワックスとしては、例えばポリエチレンワックスやポリプロピレンワックス又はそれらの誘導体等を用いることが好ましい。
ポリエチレンワックスは、一般のエチレンの重合によって得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリエチレンを熱分解して得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリエチレンの製造時に副生成される低分子量のポリエチレンを分離生成する方法又は乳化重合方法等により入手可能である。ポリエチレンワックスの誘導体としては、例えば酸化ポリエチレンワックス、即ち空気酸化等の方法によりポリエチレンワックス骨格にカルボキシル基や水酸基等を付与したものの他に、マレイン酸変性、フマル酸変性、イタコン酸変性、又はスチレン変性等の変性体が挙げられる。特に、ポリエチレンワックス及び/又は酸化ポリエチレンワックスが好ましく用いられる。
ポリプロピレンワックスは、一般のプロピレンの重合によって得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリプロピレンを熱分解して得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリプロピレンの製造時に副生成される低分子量のポリプロピレンを分離生成する方法等により入手可能である。ポリプロピレンワックスの誘導体としては、上記のポリエチレンワックスの場合と同様に、ポリプロピレンワックス骨格にカルボキシル基や水酸基等を付与した酸化ポリプロピレンワックスの他に、マレイン酸変性、フマル酸変性、イタコン酸変性、又はスチレン変性等の変性体が挙げられる。特に、ポリプロピレンワックス及び/又はマレイン酸変性ポリプロピレンワックスが好ましく用いられる。
特に(d)のポリオレフィンワックスは、(d)−1:ポリエチレンワックス又はその誘導体と、(d)−2:ポリプロピレンワックス又はその誘導体とを含むことが、つや出し対象面の仕上がり性や、歩行時の滑り易さを低減化できる点で好ましい。この効果を一層顕著なものとする観点から、(d)−1の固形分と(d)−2の固形分との重量比(前者:後者)を9:1〜1:1、特に9:1.5〜2:1とすることが好ましい。
(d)のポリオレフィンワックスはラテックスないしエマルジョンの形態で配合されることが好ましい。
つや出し剤組成物には、前述の(a)〜(d)成分に加えて他の成分を配合してもよい。例えば組成物の延展性を一層高めたり、被膜の光沢を高める観点から、各種シリコーン化合物を配合することができる。シリコーン化合物としては、シリコーンオイル、シリコーンレジンエマルション、アミノ変成シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、シリコーンゴムエマルション、エチレン性不飽和モノマー重合体変性シリコーン等が挙げられる。シリコーン化合物は、つや出し剤組成物中に、好ましくは0.01〜1.6重量%程度配合することができる。
更につや出し剤組成物には、アルカリ剤、エタノール、香料、色素、抗菌・抗かび剤などを配合することもできる。アルカリ剤としてはアンモニア、またはモノエタノールアミン等のアルカノールアミンを選択するのが、被膜を形成する助剤としても機能し得る点から好ましい。但し、これらアルカリ剤を配合する際には、つや出し剤組成物のpHが8以下になるような配合量にとどめることが、塗布後の乾燥被膜の耐水性を損なわない点、および重ね塗り性を良好にする点で好ましい。また、つや出し剤組成物のpHについては少なくとも6.5以上であることが、つや出し剤組成物の安定性の点で好ましい。pHは(株)堀場製作所製f−52 pHメーターにより、測定温度を25℃として測定する。
つや出し剤組成物は水を主体とするものである。水は組成物中に好ましくは70〜96重量%配合される。
つや出し剤組成物中の不揮発分の量は、優れた乾燥速度を得るために3〜20重量%であることが必要であり、好ましくは6〜16重量%である。この範囲とすることで、乾燥被膜の光沢が増し、またつや出し対象面に傷がつきにくくなる。
不揮発分濃度は、海砂につや出し剤組成物を添加し、加熱後の重量低下量から求める。詳細には、十分に乾燥させた後に、20〜35メッシュ(420〜840μm)に調整された海砂20gを耐熱性容器に入れ、つや出し剤組成物2gを加えて撹拌したものを、熱風循環式乾燥器内で105℃にて3時間放置する。その後デシケーター内で23℃の環境下で徐冷する。徐冷後、秤量を行い次の式から不揮発分の量W(%)を求める。
W(%)={(W1−W0)/S}×100
式中、W0は秤量皿の重さ(耐熱容器+海砂)、W1は乾燥後の重さ(不揮発分+耐熱容器+海砂)、Sは採取したつや出し剤組成物の重さである。測定に用いる海砂とは、一般に化学用試薬として市販されているものを指す。不揮発分の量は、水不溶性ポリマー以外に、界面活性剤、シリコーン化合物等に由来する。
つや出し剤組成物は、20℃における粘度が1.2〜8mPa・s、特に2.0〜5mPa・sであることが、良好な塗り延ばし性及び仕上がり性の点から好ましい。粘度は、(株)東京計器のBL型粘度計(回転数:60rpm)を用いて測定する。つや出し剤組成物は、つや出し対象面に1.5〜8g/畳、特に2〜6g/畳放出されることが好ましい。なお、ここに言う1畳とは1.6m2に相当する。
つや出し剤組成物は液保持シート2に高含浸率で含浸される。高含浸率で含浸されることで、広い面積に亘ってつや出し剤組成物を塗り延ばすことができる。しかも、つや出し剤組成物の配合が前述の通りになっているので、該組成物の放出量が低下してきても良好な延展性を維持できて、つや出し対象面に均一な被膜を形成することができる。液保持シート2に含浸されるつや出し剤組成物の含浸量は、液保持シートの乾燥重量に対して300〜3000重量%であり、好ましくは500〜2500重量%である。
つや出し剤組成物が含浸される液保持シート2としては、繊維集合体やフォーム材が好ましく用いられる。液保持シート2は、多量のつや出し剤組成物を含浸でき且つ該組成物の放出性に優れていることが望ましい。そのような材料としては、繊維材料の場合、嵩高な紙や不織布などの繊維集合体が適しており、特にエアレイド不織布、ニードルパンチ不織布などが好ましい。繊維の具体例としては、天然繊維及び化学繊維の何れか一方又は両方の繊維を使用することができる。天然繊維としては木材パルプ等が挙げられる。化学繊維としては、再生繊維であるレーヨンやアセテート、合成繊維であるポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維等が挙げられる。フォーム材の場合、化学反応に伴う発生ガスを利用したり、フロンガス等の低融点溶剤注入または空気注入等によって発泡または多孔質化してなるものが挙げられ、具体的にはポリウレタンフォーム、ポリオレフィンフォーム等が用いられる。
液保持シート2は、つや出し剤組成物の保持容量を高め、またつや出し時におけるつや出し剤組成物の放出を良好にする点から、その密度が0.02〜0.2g/cm3、特に0.03〜0.15g/cm3であることが好ましい。また、液保持シート2は、その坪量が20〜400g/m2、特に60〜200g/m2であることが好ましい。坪量がこの範囲であることにより、保持容量を十分に大きなものとすることができ、また液保持シート2の加工性も良好となる。
本実施形態の清掃物品1は、図1及び図2に示す形態でつや出し対象面のつや出しに用いることができる。また、本実施形態の清掃物品1を、図3に示す形態で用いることも好ましい。図3に示す形態では、清掃物品1は液徐放シート4と組み合わせて使用される。液徐放シート4は、清掃物品1から放出されたつや出し剤組成物を一旦液徐放シート全体に拡散させて、つや出し剤組成物が清掃物品1から放出される際の速度よりも低速度でこれらを放出させることによって、広い面積のつや出し対象面に対して、使用の初期から終期にいたるまで、つや出し剤組成物を徐々に放出する目的で用いられる。液徐放シート4は、前述した液保持シート2と同様に繊維材料からなることが好ましい。
つや出し剤組成物の平面方向への拡散が良好なシート材料としては、湿式抄造紙、スパンレース不織布、メルトブローン不織布などの繊維シートが挙げられる。湿式抄造紙の場合、その拡散性の制御は繊維の種類、叩解度、湿圧(乾燥前の加圧)、カレンダー処理(乾燥後の加圧)、填料添加などで調整できる。繊維の種類としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプの他、各種改質パルプ、レーヨン繊維、熱可塑性繊維等が挙げられる。これらのうち繊維径が細い繊維や繊維長が短い繊維を用いると、繊維間で形成されるシートの空隙の大きさ(孔径)が小さくなり、拡散性が所望のものとなる。また叩解を強くする、カレンダー処理圧力を高くすることで同様に拡散性が所望のものとなる。填料の増量も有効である。スパンレース不織布の場合は、コットンやレーヨンなどの親水性繊維を用いる、繊維径が細い繊維を用いる、交絡状態を高交絡にすること等で、拡散性が所望のものとなる。液徐放シート4に前述のエンボス加工によって凹凸賦形する場合、熱可塑性繊維を好ましくは5〜95重量%、更に好ましくは10〜75重量%含有させて、加熱エンボス加工を行うことで、湿潤時でも凸部形状を維持することが容易となる。
本実施形態の液徐放シート4は、内層シート41と表面シート42とから構成されている。液徐放シート4はこのようにシート積層体(マルチプライ)であってもよく或いは1枚のシート(シングルプライ)であってもよい。図4に示すように両シート41,42は重ね合わされて接合一体化している。内層シート41は、平面視での収容体3とほぼ同寸の矩形状をしている。表面シート42は、内層シート41の長さと同寸となっている。表面シート42は、内層シート41の長手方向両側部から側方に延出しており、液徐放シート4において一対のフラップ43,43を形成している。このフラップ43の使用目的については後述する。内層シート41と表面シート42とは、図4に示すように内層シート41の四辺が表面シート42と接合することによって一体化している。つまり液徐放シート4は2プライとなっている。
本実施形態のように液徐放シート4が内層シート41及び表面シート42の積層体から構成されると、清掃物品1の使用時の操作性が一層向上し、また内層シート41が保護されるという利点がある。また、つや出し剤組成物の放出が更に制御されるという利点もある。表面シート42に用いられる構成繊維は、特開平9−131288号公報に記載されている内容と同様とすることができる。
液徐放シートが1枚のシート(シングルプライ)からなるか、シート積層体(マルチプライ)からなるかを問わず、多量のつや出し剤組成物を均一に放出する徐放性能を発現するためには、液徐放シート4によるつや出し剤組成物の過剰な保持を防止する必要がある。この観点から、液徐放シート4はその坪量が20〜350g/m2、特に40〜200g/m2であることが好ましい。
内層シート41及び表面シート42は、それぞれ同種素材から形成されていても良く、或いは異種素材から形成されていてもよい。液徐放シートの坪量が前述の範囲内となる限りにおいて、表面シート42はその坪量が10〜100g/m2、特に20〜80g/m2であることが、つや出し操作に必要なシート強度を満たすと共に不必要なコストがかからない点から好ましい。
内層シート41は表面に多数の凸部を有している。これによって内層シート41はその上下面に位置する他のシートとの接触面積が低下する。その結果、清掃物品1の使用初期に生じ易いつや出し剤組成物の過放出を低下させることができ、更に徐放性能を高めることができる。この凸部はシート全体に亘って形成されていることが好ましく、例えばエンボス加工等によって形成される。特に、湿潤状態での形状の維持の点からスチールマッチエンボス加工による形成が好ましい。凸部としては、例えばリブ状やドット状の形状のものが用いられる。本実施形態の内層シート41は、凸部の間が凹部となっており、シート全体に亘って凹凸賦形されている。凹部と凸部とはシートの長手方向及び幅方向それぞれにおいて交互に配されている。凹部の形状は凸部を反転させた形状となっている。
図4に示すように、内層シート41と同様に、表面シート42も多数の凸部を有していることが好ましい。これによって、つや出し対象面との接触面積が低下して、清掃物品1の使用時の摩擦が低下し、操作性を向上させることができる。表面シート42に形成された凸部の形状等は、内層シート41に形成された凸部と同様とすることができる。
本実施形態の清掃物品1及び液徐放シート4を使用するに際しては、図3に示すように、液徐放シート4における内層シート41が、収容体3における開孔31が形成されている第1の面3aに対向するように配する。この状態下に、図5に示す清掃具5に装着して使用する。図5に示す清掃具5は、本実施形態の清掃物品1が装着可能である平坦なヘッド部51、及び該ヘッド部51と自在継手52を介して連結した棒状の柄53から構成されている。ヘッド部51は、平面視での収容体3とほぼ同寸の矩形状をしている。清掃物品1は、収容体3における第2の面3b(図2参照)が、ヘッド部51の下面に対向するように該ヘッド部51に装着される。このとき、液徐放シート4におけるフラップ43,43をヘッド部51の上面側に折り返す。更に該フラップを、ヘッド部51に設けられた放射状のスリットを形成する可撓性の複数の片部54内に押し込む。これによって清掃物品1をヘッド部51に固定する。そして、この状態でフローリング等のつや出しをする。
本実施形態の清掃物品1を液徐放シート4と併用することによって以下の有利な効果が奏される。先ず、収容体3と液徐放シート4とが別体になっており、清掃物品1が袋状の収容体3内に密封収容されているので、清掃物品1に多量のつや出し剤組成物を含浸させておくことが出来る。清掃物品1が収容体3内に密封収容されていることで、清掃物品1を清掃具5に装着させるときに手が汚れないという利点もある。勿論、清掃具5も汚れない。しかも使用前の保存状態においてつや出し剤組成物が漏出することも無い。使用に際してシール32を引き剥がして開孔31を露出させると、つや出し剤組成物は、開孔31に阻害されることなく収容体3の外へ放出される。つや出し剤組成物は、液保持シート2から徐々に放出されるので、使用初期に過剰放出されることがない。その上、液保持シート2から放出されたつや出し剤組成物は、液徐放シート4に一旦トラップされて、そこからつや出し対象面に放出されるので、その放出量は使用の初期から終期に亘って一層均一となる。しかも、液徐放シート4を構成する内層シート41及び表面シート42が何れも凹凸賦形されているので、つや出し対象面との接触面積が低減され、これによってもつや出し剤組成物が徐々に放出されるようになる。そして先に述べた通り液保持シート2には多量のつや出し剤組成物が含浸されているので、フローリングのような広面積のつや出し対象面につや出し組成物を十分に塗り延ばすことができる。要するに本実施形態においては、開孔31の大きさ及び/又は(開孔率)をコントロールすることで洗浄剤等の放出をコントロールするのではなく、清掃物品1と液徐放シート4との組み合わせを用いることで、つや出し剤組成物の放出をコントロールしている。
本発明のつや出し清掃物品の好ましい実施形態として、つや出し剤組成物を含浸する液保持シートとして図1に示す清掃用物1に用いる液保持シート2を示したが、液保持シートの形態はこれに限定されるものではなく、つや出し剤組成物が含浸できることが重要であり、つや出し剤組成物を含浸した液保持シートを図5に示す清掃具5に装着して、直接、つや出し対象面を清拭してつや出し剤組成物を塗布してもよい。この際の液保持シートとしては繊維集合体が好ましく、特にスパンレース不織布が好ましい。繊維の具体例としては、パルプ、コットン繊維、レーヨン繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維等が挙げられる。特にパルプ、コットン繊維、レーヨン繊維、親水性ポリエステル繊維などの親水性繊維が、繊維全体の40重量%以上、特に50重量%以上配合されていることが好ましい。この際の液保持シートの坪量は30〜200g/m2、特に60〜100g/m2であることが好ましい。また、つや出し剤組成物の含浸量は、液保持シートの乾燥重量に対して300〜800重量%、特に300〜600重量%であることが、ある程度の広さの対象面をつや出ししながら、過剰の液の放出による塗りムラが生じ難く、清拭時の操作性が重くなり過ぎない点から好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は斯かる実施例に制限されるものではない。特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。
〔実施例1ないし3及び比較例1ないし6〕
表1に示す配合のつや出し剤組成物を調製した。
液保持シートとしてエアレイド不織布〔パルプ/熱可塑性繊維(熱融着性ポリエステル繊維)/バインダー樹脂=33/57/10(重量比)、225mm×75mm、坪量210g/m2(105g/m2、2枚重ね)、密度0.05g/cm3〕を用いた。各組成物を液保持シートの乾燥重量に対し1100%含浸して清掃物品を得た。
次に、液不透過性シートとして、液不透過性のアルミラミネートシート(厚さ70μm)を用いた。このアルミラミネートシートに加えて、アルミラミネートシートに幅8.0mm×長さ210mmの大きさの長孔を2本開け、この長孔を粘着剤付きアルミラミネートシートで予めシールしたシートを用いた。これら2枚のラミネートシート間に、清掃物品を配し、更に2枚のラミネートシートの四辺をヒートシールによって密封した。これによって、270mm×95mmの大きさの開孔包装体を得た(長孔の開孔率13.0%)。
内層シートとして、針葉樹クラフトパルプ/広葉樹クラフトパルプ/熱可塑性繊維(ポリプロピレン(芯)/ポリエチレン(鞘)からなる複合繊維)=35/40/25(重量比)の混合繊維原料を用い、通常の湿式抄造法によって得られた坪量30g/m2の紙を2枚重ね、更にスチールマッチによるエンボス加工によって凹凸賦形して貼り合わせたものを用いた。更に表面シートとして、針葉樹クラフトパルプ/熱収縮性繊維(ポロプロピレン(芯)/ポリエチレン(鞘)の複合繊維)/熱可塑性繊維(熱融着性ポリエステル繊維)=30/60/10(重量比)からなる混合繊維原料を用い、湿式抄造の乾燥工程で親水化剤を賦与した坪量18g/m2の紙をヒートロール不織布(ポリエステル(芯)/ポリエチレン(鞘)の複合繊維)と貼り合わせて坪量46g/m2のシートとし、更にスチールマッチヒートエンボス加工によって凹凸賦形したものを用いた。そして表面シートと内層シートとを図4に示すように一体化して液徐放シートを得た。
液徐放シートにおける内層シートに対向するように前記開孔包装体を重ね合わせて、図5に示す清掃具に取り付けた。このとき、前記開孔包装体における長孔が形成された面が液徐放シートに対向するようにした。
フローリング上につや出し剤組成物を1畳あたり1.7〜2.0gの量で放出させ、そのときの組成物の延展性を以下の基準で評価した。評価は、温度20〜25℃、相対湿度40〜60%の無風の部屋で行った。更に被膜の剥離性、組成物のべたつき防止性及び乾燥時間を以下に示す方法および基準で評価した。これらの結果を表1に示す。
〔つや出し剤組成物の延展性〕
○:塗布面において、かすれが生じることなく、均一な被膜が形成された。
△:塗布面において、部分的にかすれが見られた。
×:塗布面全体に亘って、かすれが見られムラになった。
〔被膜の剥離性〕
フローリング上につや出し組成物を1畳あたり、3.0〜4.0gの量で塗布した。20℃/相対湿度65%環境下で24時間乾燥させた後、乾燥被膜の上に再びつや出し剤組成物を1畳あたり、3.0〜4.0gの量で塗布した。更に20℃/相対湿度65%環境下で24時間乾燥させた。また更にその上から同様につや出し剤組成物を塗布し、同様の環境下で24時間乾燥させた。更に同様にしてつや出し剤組成物の上塗りを行い、合計して10回上塗りされて蓄積された乾燥被膜を形成させた。その後、20℃/相対湿度65%環境下で168時間乾燥させ、更に50℃/相対湿度15%環境下で168時間乾燥させた後、再び20℃/相対湿度65%環境下で2時間放置した。次にこの蓄積された被膜の所定箇所に、花王(株)製のかんたんマイペット洗浄液(pH10.6〜11.0/25℃環境)を、トリガーを2回引いてスプレー散布した。10秒後に布雑巾で5往復こすることで洗浄液を拭き取り、残留洗浄液が乾燥した後のスプレー散布箇所の被膜の状態を目視観察した。更に、この作業を同じ箇所において、フローリング上から被膜が完全に除去されるまで行った。被膜がフローリング上から完全に除去されるまでの作業回数で被膜の剥離性を評価した。
◎:1〜2回の作業回数で剥離した。
○:3〜4回の作業回数で剥離した。
△:5〜6回の作業回数で剥離した。
×:剥離するのに7回以上の作業回数を要した。
〔つや出し剤組成物のべたつき防止性〕
フローリング上につや出し組成物を1畳あたり、3.0〜4.0gの量で塗布した。20℃/相対湿度65%環境下で24時間乾燥後、乾燥被膜の上に再びつや出し剤組成物を1畳あたり、3.0〜4.0gの量で塗布した。20℃/相対湿度65%環境下で24時間乾燥させ、また更にその上から同様につや出し剤組成物を塗布し、同様の環境下で24時間乾燥させ、蓄積被膜を形成させた。このフローリングを50℃/相対湿度15%環境下に24時間置いた。同環境下において被膜表面を手で直接触ることでタック性(べたつき性)を評価した。
○:べたつきは感じられなかった。
×:べたつきが感じられた。
〔つや出し剤組成物の乾燥時間〕
フローリング上につや出し組成物を1畳あたり、3.0〜4.0gの量で塗布した。そのときの被膜の乾燥時間を、被膜の表面上を靴で踏んで歩いても靴跡が付かなくなるまでの所要時間として評価した。評価は、温度20〜25℃、相対湿度40〜60%の無風の部屋で行った。
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の清掃物品(本発明品)はつや出し剤組成物の延展性及び被膜の剥離性が良好であることが判る。またつや出し剤組成物がべたつかず、更に被膜の乾燥時間が短いことも判る。