JP3953257B2 - 皮革用洗浄艶だし剤組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、靴や鞄等の種々革製品のメンテナンスに有用であり、光沢付与性、光沢維持性、耐水性(撥水性)及び再汚染防止性に優れ、処理後の皮革の触感も向上させることができる皮革用洗浄艶だし剤組成物及びこれを用いた皮革用洗浄艶だし材に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
皮革用の洗浄艶だし剤としては、シリコーンオイル系の他、シリコーンオイル、ワックス、界面活性剤等からなるエマルジョン系のものや、ワックス、溶剤等からなる固型やペースト状のもの、更には、シリコーンワニス/ゴム/レジンを用いた系等が知られている。
【0003】
しかし、従来提案されている前記のシリコーンオイル系やエマルジョン系のものは、清掃面のべたつき(ドライダストの再汚染性)や、ウェットな艶感(テカテカ感)及び皮への浸透性が高く、艶維持性が低く、また、エマルジョン系のものは界面活性剤による撥水性低下(ウェット汚れの再汚染性)等の問題があった。
また、前記のシリコーンワニス/ゴム/レジンを用いた系は、洗浄剤の粘度が非常に高く、均一な拭き延ばしが困難であり、その結果、洗浄面のべたつき、汚れの再汚染性の悪化及び低光沢性といった問題がある。
【0004】
要するに、従来提案されている皮革用の洗浄艶だし剤では、光沢付与性、光沢維持性、耐水性(撥水性)及び再汚染防止性の全てを満足することができず、更に、処理後の皮革の触感も必ずしも向上させることはできておらず、このような効果の全てを奏する皮革用の洗浄艶だし材の開発が要望されている。
【0005】
従って、本発明の目的は、光沢付与性、光沢維持性、耐水性(撥水性)及び再汚染防止性に優れ、更に処理後の皮革の触感も向上させることができる洗浄艶だしに優れた皮革用洗浄艶だし剤組成物及びこれを用いた皮革用洗浄艶だし材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シリコ−ンガム、ワックス成分及びこれらのいずれかに相溶性を有する溶剤を含有してなり、シリコ−ンガム及びワックス成分の配合率が、シリコ−ンガム1〜50重量%及びワックス成分1〜30重量%であり、シリコ−ンガムは、粘度が100万mm 2 /s以上のポリシロキサンである皮革用洗浄艶だし剤組成物を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0007】
また、本発明は、シート状の基体に前記皮革用洗浄艶だし剤組成物を含浸させてなる皮革用洗浄艶だし材を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい一実施形態について説明する。
本発明の皮革用洗浄艶だし剤組成物は、シリコ−ンガム、ワックス成分及びこれらのいずれかに相溶性を有する溶剤を含有してなり、シリコ−ンガムとワックス成分とが特定の配合割合で配合されてなることを特徴とする。
【0009】
本発明において用いられる前記シリコーンガムは、以下に示す粘度測定方法により求められる粘度が100万mm 2 /s(25℃における粘度、以下同じ。)以上であり、好ましくは500万〜8000万mm 2 /sであり、更に好ましくは1000万〜7000万mm 2 /sである。粘度が100万mm 2 /s未満であると、皮革面への被膜形成能が低下し、安定な光沢維持性が得られない。また、8000万mm 2 /sを超えると、ワックス等の他の剤との相溶性が低下し、安定な組成物が得られないことがあり、また、組成物の展延性が低下し、均一な被膜が形成されないことがある。
【0010】
〔粘度測定方法〕(信越化学工業株式会社 技術資料、信越シリコーンKF96性能試験結果,p.3(1995)参照)
先ず、濃度1g/100mlのシリコーンガムのトルエン溶液を調製し、次式(イ)より25℃における比粘度ηsp(25℃)を求める。
ηsp=(η1/η0)−1 (イ)
ここで、η0はトルエンの粘度、η1は溶液の粘度である。
次に、求めたηspを次式(ロ)のHugginsの関係式(日化,77,p.588(1956)参照)に代入し、固有粘度[η]を求める。
ηsp=[η]+K’[η]2 (ロ)
ここで、K’はHuggins定数(=0.3)である。
次に、求めた[η]を次式(ハ)のA.Kolorlov等の式(Doklady Akad.Nauk. U.S.S.R.,89,p,65(1953)参照)に代入して分子量Mを求める。
[η]=2.15×10-40.65 (ハ)
最後に、求めた分子量Mを次式(ニ)のA.J.Barryの式(J.Appl.Physics.,17, p.1020(1946)参照)に代入し、シリコーンガム粘度を求める。
logη=1.00+0.0123M0.5(ニ)
【0011】
このような粘度を満足する前記シリコーンガムの具体例としては、ポリシロキサン、特に、下記一般式(1)で示される直鎖状ポリオルガノシロキサンが挙げられる。
3SiO(R2SiO)nSiR3 (1)
式(1)中、Rは、水素、炭素数1〜100のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、N−(2−アミノアルキル)アミノアルキル基、アミノアルキル基、アミノ基、エポキシアルキル基、エポキシ基、メチルポリオキシエチレンアルキル基、ヒドロキシポリオキシエチレンアルキル基、メチルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン基、ヒドロキシポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン基、アルキルポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン基、フェニル基又はフッ化アルキル基を示す。Rで示される置換基のうち、アルコキシ基の炭素数及びアルキル置換基中のアルキル基の炭素数は、1〜100であることが好ましい。また式(1)中、nは繰り返し数を示し、前記シリコーンガムが前記粘度範囲を満たすように選択される。これらシリコーンガムは、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0012】
本発明において用いられる前記ワックス成分は、その融点が、20〜100℃であるのが好ましく、50〜80℃であるのが更に好ましい。融点が100℃を超えると、シリコーンガム等の他の剤との相溶性が低下し、安定な組成物が得られないことがある。また、100℃を超えて加熱溶解させてシリコーンガムと混合させると、熱によってシリコーンガムの構造が壊れる恐れがある。また、融点が20℃未満であると、皮革面への被膜形成能が低下し、安定な撥水(維持)性が得られないことがある。
【0013】
このような融点を満足する前記ワックス成分としては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、エステル、ケトン等の合成ワックスの他、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックス等の天然ワックスや、配合ワックス、シリコーン系ワックス等が挙げられ、中でも、パラフィンワックス等の石油ワックス、ポリオレフィンワックス等の合成炭化水素ワックス及びシリコーン系ワックス等が好適に用いられる。これらワックス成分は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0014】
本発明において用いられる前記溶剤としては、前記シリコーンガム及び前記ワックス成分のいずれかに相溶性を有するもの、即ち、いずれか一方又は両方を溶かすことができる溶剤であれば特に制限なく用いることができる。特に前記シリコーンガム及び前記ワックス成分の双方に対して相溶性を有するものが好ましい。前記溶剤の例としては、n−パラフィン、イソパラフィン等の炭化水素系溶剤や、ジメチルシリコーン、各種変成シリコーン等のシリコーンオイル等が挙げられる。前記溶剤としてシリコーンオイルを用いる場合、その粘度(25℃)は、1〜1000mm 2 /s、特に10〜500mm 2 /sであることが、前記シリコーンガム及び前記ワックス成分に対する溶解性の高さ、並びに得られた組成物の展延性の高さ及び経時安定性の高さの点から好ましい。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0015】
前記シリコーンガム及び前記ワックス成分の前記特定の配合率は、シリコ−ンガム1〜50重量%及びワックス成分1〜30重量%、好ましくはシリコーンガム5〜40重量%及びワックス成分1〜20重量%である。前記シリコーンガムの配合率が1重量%未満であると、十分な光沢付与性、光沢維持性が得られないことがあり、また、ワックス成分の配合組成物中での相溶性が低下することがある。また50重量%を超えると、ワックス成分等の他の剤と安定な組成物を得ることが困難となったり、得られた組成物の展延性が低下し、均一な仕上がり性が得られないことがある。また、ワックス成分の配合率が1重量%未満であると、安定な撥水性が得られないことがあり、30重量%を超えると、シリコーンガム等の他の剤と安定な組成物が得られなかったり、シリコーンガムによる光沢性の付与を阻害してしまう恐れがある。
【0016】
前記溶剤の使用量は、シリコーンガム又は/及びワックス成分を均一に溶解、混合ないしは分散できる量であれば特に限定されないが、一般的な範囲として20〜98重量%、特に40〜85重量%であることが好ましい。
【0017】
本発明の皮革用洗浄艶だし剤組成物には、更に、界面活性剤、水、アルコール、上記以外の溶剤、アルカリ剤、キレート剤、顔料、染料、香料、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、増粘剤、各種皮革保湿剤、皮革保護剤、皮革栄養剤等の他の添加剤を添加してもよい。
【0018】
このような配合割合で上述の各成分が配合されてなる本発明の皮革用洗浄艶だし剤組成物は、洗浄艶だし成分を被洗浄艶だし面に必要量均一に塗り延ばすことができ、高い光沢性を付与するのみならず、光沢維持性、耐水性(撥水性)及び再汚染防止性を付与する。また、洗浄面の手触り感もべとつかず、サラッとした感触が得られるものである。このため、本発明の皮革用洗浄艶だし剤組成物は、靴、鞄や衣料品等各種皮革製品の洗浄艶だしに有用である。そして、その使用に際しては、前記溶剤に前記シリコーンガム及び前記ワックス成分を溶解、混合又は分散させ、必要に応じて他の添加剤を配合させた組成物として使用することができ、更には、該組成物を各種シート材等に含浸させた形態としても使用することができる。
【0019】
次に、本発明の皮革用洗浄艶だし剤組成物の好ましい使用形態である皮革用洗浄艶だし材の好ましい一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の皮革用洗浄艶だし材1は、図1及び図2に示すように、シート状の基体10に前記の本発明の皮革用洗浄艶だし剤組成物を塗工・含浸させてなるものである。更に詳述すると、基体10は、図1及び2に示すように、皮革用洗浄艶だし剤組成物を含浸させる外層シート12と、皮革用洗浄艶だし剤組成物を浸透させない非浸透シート13との2枚のシート材を重ね合わせてなる複合シート11により、外層シート12が外面に位置し且つ開口部14を有するように、袋状に形成されている。具体的には、基体10は、図1及び2に示すように、ほぼ半楕円形状の複合シート11を2枚重ね合わせて、複合シート11の直線状部11aが開口部14を形成するように2枚の複合シート11の楕円周縁部11bがヒートシールによって接合され、袋状に形成されている。複合シート11を構成する外層シート12と非浸透シート13とは、いずれも、ほぼ半楕円形状で、ほぼ同形状である。
【0021】
基体10は、非浸透シート13が内面を形成するように非浸透シート13同士を当接させて、封止して形成されている。そして、皮革用洗浄艶だし剤組成物は、基体10の頂部10aから所定長さの含浸部15に局在して含浸されている。具体的には、本実施形態においては、図2に示すように、基体の頂部10aから長さL(0.5〜10cm)の部位に含浸されて、含浸部15及び非含浸部16が形成されている。このように構成することにより、皮革用洗浄艶だし剤組成物が含浸された含浸部15で艶だし洗浄を行うと共に、含浸されていない非含浸部16で乾拭き作業を自然に行うことができ、簡便な艶だし洗浄が可能となる。含浸部15及び非含浸部16は皮革用洗浄艶だし材1の表と裏に形成されている。
【0022】
基体10に対する皮革用洗浄艶だし剤組成物の含浸量は、基体含浸部1m2に対して皮革用洗浄艶だし剤組成物5〜800gとするのが好ましく、10〜500gとするのが更に好ましい。皮革用洗浄艶だし剤組成物が800gを超えると、過剰の洗浄艶だし剤のため、皮革面に均一にムラなく洗浄艶だし剤を塗り延ばすことが困難となるか、又は/及び非含浸部での乾拭きが困難となり、光沢付与性が低下することがある。また5g未満とすると、十分な面積の皮革面を洗浄艶だしすることが困難となったり、十分な光沢付与や撥水性付与ができないことがある。
【0023】
本発明の皮革用洗浄艶だし材に用いられる前記外層シートとしては、不織布、紙、織布、編布、スポンジ、及び他の可撓性基体等を用いることができるが、ゴミや汚れの付着性ないし保持性、前記洗浄艶だし剤の含浸性、保持性、放出性、拭き延ばし性、及び乾拭き性、コスト等の観点から不織布が好ましい。不織布は、その製造方法に特に制限はなく、疎水性繊維とパルプとから抄紙方式で製造される湿式不織布の他、例えば、自己接着または接着繊維で結合させたサーマルボンド不織布(例えばエアースルー不織布、エアーレイド不織布、ヒートロールボンド不織布)、繊維ウエブを接着剤で結合させたケミカルボンド不織布、特殊針でウエブをニードリングして交絡させたニードルパンチ不織布、高圧水流で繊維を絡み合わせたスパンレース不織布、ノーバインディングの超極細繊維を用いたメルトブローン不織布、紡糸直結で、主に自己接着で結合させたスパンボンド不織布、フラッシュ紡糸不織布等の乾式不織布等を用いることができ、凹凸清掃面への追従性、柔軟性等の観点から、特にスパンレース不織布、エアースルー不織布、スパンボンド不織布等が好ましい。また、外層シートとして、前記非浸透シートとしての後述の合成樹脂製フィルム等を一体化させたラミネート不織布、フィルム貼り合わせ不織布、ラミネート紙等を用いることもできる。
【0024】
前記外層シートの坪量は好ましくは5〜200g/m2、更に好ましくは10〜100g/m2である。坪量が200g/m2を超えると、前記含浸洗浄艶だし剤の放出性、拭き延ばし性の低下や操作性の低下が促されることがあり、5g/m2未満であると、前記洗浄艶だし剤の含浸性、保持性、放出性、拭き延ばし性の低下や、ゴミや汚れの付着性、保持性の低下、乾拭き操作性の低下等が促されることがある。
【0025】
本発明の皮革用洗浄艶だし材に用いられる前記非浸透シートとしては、合成樹脂製フィルム、ラミネートフィルム、蒸着フィルム、ラミネート不織布、フィルム貼り合わせ不織布、ラミネート紙、アルミ箔等が好ましく、特にコスト、加工性の観点から、合成樹脂製フィルムが好ましい。
【0026】
本実施形態の皮革用洗浄艶だし材1は、例えば、靴の洗浄艶だしを行う場合には、図3に示すように、開口部14に指を挿入し、靴Aの表面を基体10全体を用いて拭くことにより、使用することができる。そして、本実施形態の皮革用洗浄艶だし材1は、上述のように構成されているので、上述の本発明の皮革用洗浄艶だし剤組成物の奏する効果、即ち、洗浄艶だし成分を対象皮革面に必要量均一に塗り延ばすことができ、高い光沢性を付与するのみならず、光沢維持性、耐水性(撥水性)及び再汚染防止性を付与し、更には、洗浄面の手触り感もべとつかず、サラッとした感触が得られるという効果を奏する。また、このような効果を奏する洗浄艶だし処理を簡便に行うことができ、しかも、本実施形態のように洗浄艶だし剤を基体10に局在させた場合には、洗浄艶だし剤組成物の塗布と乾拭きとを同時に行うことができるので、汚れ落とし、洗浄艶だし剤の塗布、乾拭きによる艶だし作業をワンアクションで行うことが可能となり、乾拭きが不要の、より簡便かつ的確な洗浄艶だしを行うことが可能である。
【0027】
なお、本発明の皮革用洗浄艶だし材は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。例えば、皮革用洗浄艶だし剤組成物の塗布部分を、局在させるのではなく、基体の全面にわたるようにしても良い。また、洗浄艶だし材1の表又は裏の一方のみに洗浄艶だし剤組成物を塗布し、反対面を乾拭き専用面とすることもできる。
また、基体の形態も袋状の他、両側から手指を挿入自在の二つの開口部を有する筒状の形態、一枚のシート状或いはそのロール状の形態とすることもできる。また、基材を構成するシートの形態も半楕円形状の他、矩形形状の形態とすることもできる。
【0028】
【実施例】
〔実施例1〜5及び比較例1〜5〕
以下の表1に示す成分を混合して組成物を調製した。尚、各実施例における溶剤成分は、シリコーンガム及びワックス成分の何れに対しても相溶性を有していた。また、表1におけるシリコーンガムは、前記式(1)においてRがメチル基である直鎖状ポリオルガノシロキサンであった。調製された組成物について、以下の方法で艶出し性能、撥水付与性能、艶耐久性能、撥水耐久性能、及び汚水等に対する防汚性を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0029】
<艶出し性能>
評価用皮革片(サイズ:6×6cm、品名:GNブローバー若しくは同等品で光沢度測定角85゜における初期表面光沢度が30のもの)に、実施例及び比較例で得られた組成物を均一に0.1g塗布し、次いで過剰の組成物をティッシュペーパーで拭き取り試験片を調製した。そのまま30分放置後、該試験片表面の光沢度をミノルタ製光沢度計(商品名「9M−268」)により、測定角度85゜の条件で測定した。光沢度はその数値が大きいほど、艶出し性能が高いことを意味する。
【0030】
<撥水付与性能>
前述の方法で調整された試験片をそのまま30分放置後、該試験片表面の水に対する接触角を協和界面科学製接触角計(商品名「CA−A型」)により測定した。接触角はその数値が大きいほど撥水付与性が高いことを意味し、雨水等に対する皮革保護性が高いことを示す。
【0031】
<艶耐久性能及び撥水耐久性能>
前述の方法で調整された試験片をそのまま30分放置後、該試験片の表面にイオン交換水を1g散布し、ティッシュペーパーで拭き取った。この操作を5回繰り返した(繰り返し水洗)後、試験片の表面の測定角度85゜における光沢度と水に対する接触角を測定した。繰り返し水洗前の試験片の表面の光沢度及び接触角との対比により、艶耐久性及び撥水耐久性能を評価した。繰り返し水洗前後で光沢度及び接触角の変化(減少)が小さいほど、艶耐久性及び撥水耐久性が高いことを意味する。
【0032】
<泥水等に対する防汚性評価>
前述の方法で調整された試験片をそのまま30分放置後、該試験片を垂直に保持させた。この状態下に、JIS標準ダスト8種をイオン交換水に0.05%分散させたモデル汚れを、試験片の表面に0.3g散布した。モデル汚れ散布時におけるモデル汚れの試験片表面への付着性、及び試験片表面の乾燥後に該表面に残存するダストの様子を観察し、以下に示す5段階で防汚性を評価した。
1:モデル汚れ散布時にモデル汚れが試験片表面に多量に付着し、乾燥後多量のダストが残留する。
2:モデル汚れ散布時にモデル汚れが試験片表面から流れ落ちにくく、乾燥後やや多量にダストが残留する。
3:モデル汚れ散布時にモデル汚れが試験片表面からやや流れ落ちにくく、乾燥後に僅かにダストが残留する。
4:モデル汚れ散布時にモデル汚れが試験片表面から流れ落ち易く、試験片の被清掃面にダストが残留しない。
5:モデル汚れ散布時にモデル汚れが試験片表面から直ちに流れ落ち、試験片の被清掃面にダストが全く残留しない。
【0033】
【表1】
Figure 0003953257
【0034】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の組成物(本発明品)は、高い艶出し性及び撥水付与性を有し、且つこれらの性能が繰り返し水洗後も維持されることが判る。更に、泥水等に対する防汚性も高いことが判る。
【0035】
【発明の効果】
本発明の皮革用洗浄艶だし剤組成物は、光沢付与性、光沢維持性、耐水性(撥水性)及び再汚染防止性に優れ、更に処理後の皮革の触感も向上させることができるものである。
また、本発明の皮革用洗浄艶だし材は、本発明の皮革用洗浄艶だし剤組成物を手軽に各種皮革製品に適用できるもので、特に、皮革用洗浄艶だし剤組成物の塗布と乾拭きとを同時に行うことも可能で、利便性及び清掃効率の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の皮革用洗浄艶だし材の1実施形態を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のX−X断面図である。
【図3】図3は、図1に示す皮革用洗浄艶だし材の使用形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 皮革用洗浄艶だし材
10 基体
11 複合シート
12 外層シート
13 非浸透シート
14 開口部
15 含浸部
16 非含浸部

Claims (5)

  1. シリコ−ンガム、ワックス成分及びこれらのいずれかに相溶性を有する溶剤を含有してなり、シリコ−ンガム及びワックス成分の配合率が、シリコ−ンガム1〜50重量%及びワックス成分1〜30重量%であり、シリコ−ンガムは、粘度が100万mm 2 /s以上のポリシロキサンである皮革用洗浄艶だし剤組成物。
  2. 前記シリコ−ンガムは、下記一般式(1)で示される直鎖状ポリオルガノシロキサンである請求項1記載の皮革用洗浄艶だし剤組成物。
    3SiO(R2SiO)nSiR3 (1)
    式(1)中、Rは、水素、炭素数1〜100のアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、N−(2−アミノアルキル)アミノアルキル基、アミノアルキル基、アミノ基、エポキシアルキル基、エポキシ基、メチルポリオキシエチレンアルキル基、ヒドロキシポリオキシエチレンアルキル基、メチルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン基、ヒドロキシポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン基、アルキルポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン基、フェニル基又はフッ化アルキル基を示し、nは繰り返し数を示す。
  3. 前記ワックス成分は、融点が、20〜100℃である請求項1記載の皮革用洗浄艶だし剤組成物。
  4. シート状の基体に請求項1記載の皮革用洗浄艶だし剤組成物を含浸させてなる皮革用洗浄艶だし材。
  5. 前記基体は、前記皮革用洗浄艶だし剤組成物を含浸させる外層シートと、該皮革用洗浄艶だし剤組成物を浸透させない非浸透シートとの2枚のシート材を重ね合わせてなる複合シートにより、該外層シートが外面に位置し且つ開口部を有するように、袋状に形成されている請求項4記載の皮革用洗浄艶だし材。
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