JP4666332B2 - 多層プリント配線板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層プリント配線板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
いわゆる多層ビルドアップ配線基板と呼ばれる多層プリント配線板は、セミアディティブ法等により製造されており、コアと呼ばれる0.5〜1.5mm程度のガラスクロス等で補強された樹脂基板の上に、銅等による導体回路と層間樹脂絶縁層とを交互に積層することにより作製される。この多層プリント配線板の層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の接続は、バイアホールにより行われている。
【0003】
従来、ビルドアップ多層プリント配線板は、例えば、特開平9−130050号公報等に開示された方法により製造されている。
すなわち、まず、銅箔が貼り付けられた銅張積層板に貫通孔を形成し、続いて無電解銅めっき処理を施すことによりスルーホールを形成する。続いて、基板の表面を導体パターン状にエッチング処理して導体回路を形成し、この導体回路の表面に、無電解めっきやエッチング等により粗化面を形成する。そして、この粗化面を有する導体回路上に樹脂絶縁層を形成した後、バイアホール用開口を形成し、その後、UV硬化、本硬化を経て層間樹脂絶縁層を形成する。
【0004】
さらに、層間樹脂絶縁層に酸や酸化剤などにより粗化処理を施した後、薄い金属層を形成し、この金属層上にめっきレジストを形成した後、電解めっきにより厚付けを行い、めっきレジスト剥離後にエッチングを行って、下層の導体回路とバイアホールにより接続された導体回路とを形成する。
この工程を繰り返した後、最後に導体回路を保護するためのソルダーレジスト層を形成し、ついで、半田ハンプ用開口を形成した後、該開口内に半田ペーストを印刷して、ICチップ等の電子部品やマザーボード等との接続のための半田バンプを形成することにより、ビルドアップ多層プリント配線板の製造を完了する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような多層プリント配線板の製造において、バイアホール用開口や半田パッド用開口の形成は、露光・現像処理やレーザ処理により形成されていた。
しかしながら、露光・現像処理によりバイアホール用開口等を形成する場合、開口径の大きさが制限され、あまり径の小さい開口は形成することができず、このような開口を形成しようとした場合には、未開口の部分が発生したり、開口部の底部に樹脂残りが発生したりすることがあった。
【0006】
また、レーザ処理は、炭酸ガスレーザやUVレーザ等を用いて行われていた。
炭酸ガスレーザを用いたバイアホール用開口の形成は、熱分解プロセスで進行し、エネルギの吸収と爆発(熱分解)とを繰り返すことにより樹脂層が除去されることとなり開口が形成されると考えられている。このような炭酸ガスレーザを用いたバイアホール用開口の形成では、炭酸ガスレーザの照射によりバイアホール用開口形成部下の導体回路が蓄熱することがあり、この熱により導体回路表面付近の樹脂が炭化変質することがあった。この場合、この炭化変質した樹脂は除去することができず、バイアホール用開口底部に樹脂残りが発生することがあった。
また、マスクを介して複数のバイアホール用開口を形成しようとした場合、マスクを介して照射されたレーザ光は、そのエネルギー密度が低下しており、バイアホール用開口を形成することができないことがあった。
【0007】
また、355nmより長い波長のUVレーザを用いてバイアホール用開口を形成する場合には、大きな出力が必要となり、出力が不充分な場合には、未開口の部分が生じたり、所望の形状の開口を形成することができないことがあった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、所望の形状のバイアホール用開口等を形成するのに適した層間樹脂絶縁層やソルダーレジスト層の材料と使用するレーザとの組み合わせについて鋭意検討した結果、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂を材料とし、波長355nm以下のUVレーザを用いて開口を形成することにより、所望の形状の開口を形成することができることを見いだし、以下に示す内容を要旨構成とする発明に到達した。
【0009】
即ち、第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、基板上に導体回路と層間樹脂絶縁層とが順次形成され、これらの導体回路がバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板の製造方法であって、
少なくとも下記(A)および(B)の工程を含むことを特徴とする。
(A)355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成する工程、
(B)上記樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いてバイアホール用開口を形成する工程。
【0010】
また、第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法の上記(B)の工程においては、複数のバイアホール用開口を一括形成することが望ましい。
【0011】
また、第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、基板上に導体回路と層間樹脂絶縁層とが順次形成され、最外層にソルダーレジスト層と半田バンプとが形成された多層プリント配線板の製造方法であって、
少なくとも下記(a)および(b)の工程を含むことを特徴とする。
(a)355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、ソルダーレジスト層用の樹脂層を形成する工程、
(b)上記樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いて半田バンプ用開口を形成する工程。
【0012】
また、第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法の上記(b)の工程においては、複数の半田バンプ用開口を一括形成することが望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、基板上に導体回路と層間樹脂絶縁層とが順次形成され、これらの導体回路がバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板の製造方法であって、
少なくとも下記(A)および(B)の工程を含むことを特徴とする。
(A)355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成する工程、
(B)上記樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いてバイアホール用開口を形成する工程。
【0014】
第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成し、上記樹脂層に、波長355nm以下と波長の短いUVレーザを用いてバイアホール用開口を形成するため、このレーザ光の特性に起因して、レーザ処理時にレーザ光が乱反射しにくく、照射時にレーザ光が拡張することもないため、開口径の小さいバイアホール用開口であっても所望の形状に形成することができる。また、波長355nm以下のUVレーザを用いてバイアホール用開口を形成する場合には、さほど大きな出力を必要としない。
【0015】
第一の本発明の製造方法は、上記(A)および(B)の工程を含むことを特徴とするものである。
従って、ここでは、上記(A)および(B)の工程についてまず説明し、多層プリント配線板を製造する全製造工程については、後述することとする。
【0016】
第一の本発明の製造方法は、上記(A)の工程、即ち、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成する工程を含む。
上記樹脂組成物は、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有するものであれば特に限定されず、上記波長領域に吸収ピークを有する熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との樹脂複合体等の樹脂成分のみからなるものであってもよいし、上記波長領域に吸収ピークを有するように、吸収波長を調製するための添加剤等の樹脂成分以外の成分が配合されたものであってもよい。
【0017】
上記熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。
【0018】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
【0019】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、下記化学式(1)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリフェニレンエーテル樹脂や下記化学式(2)で表される繰り返し単位を有する熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
(式中、nは、2以上の整数を表す。)
【0022】
【化2】
【0023】
(式中、mは、2以上の整数を表す。また、R1 、R2 は、メチレン基、エチレン基または−CH2 −O−CH2 −を表し、両者は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0024】
また、上記化学式(1)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリフェニレンエーテル樹脂は、ベンゼン環にメチル基が結合した構造を有しているが、本発明で用いることのできるポリフェニレンエーテル樹脂としては、上記メチル基が、エチル基等の他のアルキル基等で置換された誘導体や、メチル基の水素がフッ素で置換された誘導体等であってもよい。
【0025】
また、上記熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン等が挙げられる。
また、樹脂複合体としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含むものであれば特に限定されず、その具体例としては、例えば、粗化面形成用樹脂組成物等が挙げられる。
【0026】
上記粗化面形成用樹脂組成物としては、例えば、酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して難溶性の未硬化の耐熱性樹脂マトリックス中に、酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して可溶性の物質が分散されたもの等が挙げられる。
なお、上記「難溶性」および「可溶性」という語は、同一の粗化液に同一時間浸漬した場合に、相対的に溶解速度の早いものを便宜上「可溶性」といい、相対的に溶解速度の遅いものを便宜上「難溶性」と呼ぶ。
【0027】
上記耐熱性樹脂マトリックスとしては、層間樹脂絶縁層に上記粗化液を用いて粗化面を形成する際に、粗化面の形状を保持できるものが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、これらの複合体等が挙げられる。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0028】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0029】
上記酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して可溶性の物質は、無機粒子、樹脂粒子、金属粒子、ゴム粒子、液相樹脂および液相ゴムから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0030】
上記無機粒子としては、例えば、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物、ケイ素化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0031】
上記アルミニウム化合物としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム等が挙げられ、上記カルシウム化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、上記カリウム化合物としては、例えば、炭酸カリウム等が挙げられ、上記マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシア、ドロマイト、塩基性炭酸マグネシウム、タルク等が挙げられ、上記ケイ素化合物としては、例えば、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0032】
上記アルミナ粒子は、ふっ酸で溶解除去することができ、炭酸カルシウムは塩酸で溶解除去することができる。また、ナトリウム含有シリカやドロマイトはアルカリ水溶液で溶解除去することができる。
【0033】
上記樹脂粒子としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等からなるものが挙げられ、酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に浸漬した場合に、上記耐熱性樹脂マトリックスよりも溶解速度の早いものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、アミノ樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂等)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0034】
なお、上記エポキシ樹脂は、酸や酸化剤に溶解するものや、これらに難溶性のものを、オリゴマーの種類や硬化剤を選択することにより任意に製造することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂をアミン系硬化剤で硬化させた樹脂はクロム酸に非常によく溶けるが、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をイミダゾール硬化剤で硬化させた樹脂は、クロム酸には溶解しにくい。
【0035】
上記樹脂粒子は予め硬化処理されていることが必要である。硬化させておかないと上記樹脂粒子が樹脂マトリックスを溶解させる溶剤に溶解してしまうため、均一に混合されてしまい、酸や酸化剤で樹脂粒子のみを選択的に溶解除去することができないからである。
【0036】
上記金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、スズ、亜鉛、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、鉛等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
また、上記金属粒子は、絶縁性を確保するために、表層が樹脂等により被覆されていてもよい。
【0037】
上記ゴム粒子としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、多硫系剛性ゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ABS樹脂等が挙げられる。
【0038】
また、上記ゴム粒子として、例えば、ポリブタジエンゴム、エポキシ変性、ウレタン変性、(メタ)アクリロニトリル変性等の各種変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基を含有した(メタ)アクリロニトリル・ブタジエンゴム等を使用することもできる。これらのゴム粒子を使用することにより、該ゴム粒子が酸あるいは酸化剤に溶解しやすくなる。つまり、酸を用いてゴム粒子を溶解する際には、強酸以外の酸でも溶解することができ、酸化剤を用いてゴム粒子を溶解する際には、比較的酸化力の弱い過マンガン酸でも溶解することができる。また、クロム酸を用いた場合でも、低濃度で溶解することができる。そのため、酸や酸化剤が層間樹脂絶縁層表面に残留することがなく、後述するように、粗化面形成後、塩化パラジウム等の触媒を付与する際に、触媒が付与されなかったり、触媒が酸化されたりすることがない。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0039】
上記可溶性の物質を、2種以上混合して用いる場合、混合する2種の可溶性の物質の組み合わせとしては、樹脂粒子と無機粒子との組み合わせが望ましい。両者とも導電性が低くいため、層間樹脂絶縁層の絶縁性を確保することができるとともに、難溶性樹脂との間で熱膨張の調整が図りやすく、粗化面形成用樹脂組成物からなる層間樹脂絶縁層にクラックが発生せず、層間樹脂絶縁層と導体回路との間で剥離が発生しないからである。
【0040】
上記液相樹脂としては、上記熱硬化性樹脂の未硬化溶液を使用することができ、このような液相樹脂の具体例としては、例えば、未硬化のエポキシオリゴマーとアミン系硬化剤の混合液等が挙げられる。
上記液相ゴムとしては、例えば、上記したポリブタジエンゴム、エポキシ変性、ウレタン変性、(メタ)アクリロニトリル変性等の各種変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基を含有した(メタ)アクリロニトリル・ブタジエンゴム等の未硬化溶液等を使用することができる。
【0041】
上記液相樹脂や液相ゴムを用いて上記粗化面形成用樹脂組成物を調製する場合には、耐熱性樹脂マトリックスと可溶性の物質とが均一に相溶しない(つまり相分離するように)ように、これらの物質を選択する必要がある。
上記基準により選択された耐熱性樹脂マトリックスと可溶性の物質とを混合することにより、上記耐熱性樹脂マトリックスの「海」の中に液相樹脂または液相ゴムの「島」が分散している状態、または、液相樹脂または液相ゴムの「海」の中に、耐熱性樹脂マトリックスの「島」が分散している状態の粗化面形成用樹脂組成物を調製することができる。
【0042】
そして、このような状態の粗化面形成用樹脂組成物を硬化させた後、「海」または「島」の液相樹脂または液相ゴムを除去することにより粗化面を形成することができる。
【0043】
上記粗化液として用いる酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸や、蟻酸、酢酸等の有機酸等が挙げられるが、これらのなかでは有機酸を用いることが望ましい。粗化処理した場合に、バイアホールから露出する金属導体層を腐食させにくいからである。
上記酸化剤としては、例えば、クロム酸、クロム硫酸、アルカリ性過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム等)の水溶液等を用いることが望ましい。
また、上記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液が望ましい。
【0044】
上記可溶性の物質の平均粒径は、10μm以下が望ましい。
また、平均粒径が2μm以下の平均粒径の相対的に大きな粗粒子と平均粒径が相対的に小さな微粒子とを組み合わせて使用してもよい。即ち、平均粒径が0.1〜0.5μmの可溶性の物質と平均粒径が1〜2μmの可溶性の物質とを組み合わせる等である。
【0045】
このように、平均粒子と相対的に大きな粗粒子と平均粒径が相対的に小さな微粒子とを組み合わせることにより、無電解めっき膜の溶解残渣をなくし、めっきレジスト下のパラジウム触媒量を少なくし、さらに、浅くて複雑な粗化面を形成することができる。
さらに、複雑な粗化面を形成することにより、粗化面の凹凸が小さくても実用的なピール強度を維持することができる。
上記粗粒子は平均粒径が0.8μmを超え2.0μm未満であり、微粒子は平均粒径が0.1〜0.8μmであることが望ましい。
【0046】
上記粗粒子と微粒子とを組み合わせることにより、浅くて複雑な粗化面を形成することができるのは、使用する粒子径が粗粒子で平均粒径2μm未満であると、これらの粒子が溶解除去されても形成されるアンカーは浅くなり、また、除去される粒子は、相対的に粒子径の大きな粗粒子と相対的に粒子径の小さな微粒子の混合粒子であるから、形成される粗化面が複雑になるのである。このような複雑な粗化面を形成することにより、浅い粗化面でも実用的なピール強度を維持することができる。
【0047】
また、この場合、使用する粒子径が、粗粒子で平均粒径2μm未満であると、粗化が進行しすぎて空隙を発生させることはなく、形成した層間樹脂絶縁層は層間絶縁性に優れている。
なお、上記層間面形成用樹脂組成物において、可溶性の物質の粒径とは、可溶性の物質の一番長い部分の長さである。
【0048】
また、粗粒子は平均粒径が0.8μmを超え2.0μm未満であり、微粒子は平均粒径が0.1〜0.8μmであると、粗化面の深さは概ねRmax=3μm程度となり、セミアディテイブ法では、無電解めっき膜をエッチング除去しやすいだけではなく、無電解めっき膜下のPd触媒をも簡単に除去することができ、また、実用的なピール強度1.0〜1.3kg/cmを維持することができる。
【0049】
上記可溶性の物質の形状は特に限定されず、球状、破砕状等が挙げられる。また、上記可溶性の物質の形状は、一様な形状であることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができるからである。
【0050】
上記粗化面形成用樹脂組成物は基板上等に塗布することができるように有機溶剤を含有するものであってもよいし、基板上等に圧着することができるようにフィルム状に成形されたもの(以下、粗化面形成用樹脂フィルムともいう)でもよい。
上記粗化面形成用樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、その含有量は、10重量%以下であることが望ましい。
【0051】
上記粗化面形成用樹脂フィルムにおいて、上記可溶性の物質は、上記耐熱性樹脂マトリックス中にほぼ均一に分散されていることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができ、樹脂フィルムにバイアホールやスルーホールを形成しても、その上に形成する導体回路の金属層の密着性を確保することができるからである。また、上記粗化面形成用樹脂フィルムは、粗化面を形成する表層部だけに可溶性の物質を含有するよう形成されていてもよい。それによって、粗化面形成用樹脂フィルムの表層部以外は酸または酸化剤にさらされることがないため、層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性が確実に保たれる。
【0052】
上記粗化面形成用樹脂フィルムにおいて、難溶性樹脂中に分散している可溶性の物質の配合量は、粗化面形成用樹脂フィルムに対して、3〜40重量%が望ましい。可溶性の物質の配合量が3重量%未満では、所望の凹凸を有する粗化面を形成することができない場合があり、40重量%を超えると、酸または酸化剤を用いて可溶性の物質を溶解した際に、樹脂フィルムの深部まで溶解してしまい、樹脂フィルムからなる層間樹脂絶縁層を介した導体回路間の絶縁性を維持できず、短絡の原因となる場合がある。
【0053】
上記粗化面形成用樹脂フィルムは、上記可溶性の物質、上記耐熱性樹脂マトリックス以外に、硬化剤、その他の成分等を含有していることが望ましい。
上記硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、これらの硬化剤のエポキシアダクトやこれらの硬化剤をマイクロカプセル化したもの、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物等が挙げられる。
【0054】
上記硬化剤の含有量は、粗化面形成用樹脂フィルムに対して0.05〜10重量%であることが望ましい。0.05重量%未満では、粗化面形成用樹脂フィルムの硬化が不充分であるため、酸や酸化剤が粗化面形成用樹脂フィルムに侵入する度合いが大きくなり、粗化面形成用樹脂フィルムの絶縁性が損なわれることがある。一方、10重量%を超えると、過剰な硬化剤成分が樹脂の組成を変性させることがあり、信頼性の低下を招いたりしてしまうことがある。
【0055】
上記その他の成分としては、例えば、粗化面の形成に影響しない無機化合物あるいは樹脂等のフィラーが挙げられる。上記無機化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ドロマイト等が挙げられ、上記樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、メラニン樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。これらのフィラーを含有させることによって、熱膨脹係数の整合や耐熱性、耐薬品性の向上等を図りプリント配線板の性能を向上させることができる。
【0056】
また、上記粗化面形成用樹脂フィルムは、溶剤を含有していてもよい。上記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートやトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0057】
上記吸収波長を調製するための添加剤としては、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物とすることができるものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、シアニン系色素、クマリン系色素、フルオレセイン等の着色剤が挙げられる。
【0058】
上記樹脂組成物の吸収波長を測定する方法としては特に限定されず、従来公知の測定方法を用いることができる。
例えば、樹脂組成物が未硬化の流動体である場合には、これをMEK(メチルエチルケトン)等の溶剤に溶解させた後、分光光度計を用いて測定すればよい。このとき、無機フィラー等のその他の成分は、濾過処理等の前処理を施し除去しておくことが望ましい。
また、樹脂フィルムや樹脂成形体を圧着して、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成する場合には、この樹脂フィルム等の薄片を切り出し、この薄片を測定試料として、分光光度計用いて吸収波長を測定してもよい。
【0059】
上記(A)の工程においては、このような樹脂組成物を用いて、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成する。
【0060】
具体的には、上記波長領域に吸収ピークを有する熱硬化性樹脂や、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との樹脂複合体を用いて樹脂層を形成する場合には、未硬化の樹脂をロールコーター、カーテンコーター等により塗布して成形すればよく、また、未硬化(半硬化)の樹脂フィルムを熱圧着して形成してもよい。さらに、未硬化の樹脂フィルムの片面に銅箔等の金属層が形成された樹脂フィルムを貼付してもよい。
また、上記波長領域に吸収ピークを有する熱可塑性樹脂を用いて樹脂層を形成する場合には、フィルム状に成形した樹脂成形体を熱圧着することにより形成することが望ましい。
【0061】
上記未硬化の樹脂を塗布する場合には、樹脂を塗布した後、加熱処理を施す。
上記加熱処理を施すことにより、未硬化の樹脂を熱硬化させることができる。
なお、上記熱硬化は、後述するバイアホール用開口を形成した後に行ってもよい。
【0062】
また、上記樹脂フィルムを貼り付けることにより層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成する場合、該樹脂層の形成は、真空ラミネーター等の装置を用い、減圧下または真空下で樹脂フィルムを圧着し、その後、樹脂フィルムを熱硬化することにより行う。
なお、上記熱硬化は、後述するバイアホール用開口を形成した後に行ってもよい。
【0063】
また、フィルム状に成形した熱可塑性樹脂を熱圧着して導体回路上に張り付ける場合も、真空ラミネーター等の装置を用い、減圧下または真空下でフィルム状に成形した熱可塑性樹脂を圧着することが望ましい。
【0064】
また、第一の本発明の製造方法は、上記(B)の工程、即ち、上記(A)の工程で形成した樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いてバイアホール用開口を形成する工程を含む。
上記レーザは、波長355nm以下のUVレーザであれば特に限定されず、例えば、LD(Laser Diode )励起のYAGを基本波にした第三高調波(波長355nm)や第四高調波、エキシマレーザ(264nm)等を用いることができる。
なお、本明細書において、UVレーザとは100〜400nmの発振波長を有するレーザのことをいう。
【0065】
このような波長355nm以下のUVレーザを用いて、上記層間樹脂絶縁層用の樹脂層にバイアホール用開口を形成することにより、バイアホール用開口の形状がアンダーカット形状になったり、バイアホール用開口の底部に樹脂残りが発生したりすることがなく、所望の形状のバイアホール用開口を形成することができる。
【0066】
また、上記(B)の工程でバイアホール用開口を形成する場合には、複数のバイアホール用開口を一括形成することが望ましい。
具体的には、例えば、光学系レンズとマスクとを介してレーザ光を照射することにより、一度に多数のバイアホール用開口を形成することができる。
光学系レンズとマスクとを介することにより、同一強度で、かつ、照射角度が同一のレーザ光を複数の部分に同時に照射することができるからである。
【0067】
また、バイアホール用開口を形成した後には、デスミア処理を行うことが望ましい。上記デスミア処理は、クロム酸、過マンガン酸塩等の水溶液からなる酸化剤を使用して行うことができる。また、酸素プラズマ、CF4 と酸素の混合プラズマやコロナ放電等で処理してもよい。また、低圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することにより、表面改質することもできる。
【0068】
以下、第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法について、工程順に説明する。
(1)まず、絶縁性基板の表面に導体回路が形成された基板を作製する。
また、基板を挟んだ導体回路間の接続をスルーホールにより行う場合には、レーザの照射により、または、ドリル等を用いて絶縁性基板にスルーホール用貫通孔を設ける。
上記絶縁性基板としては、樹脂基板が望ましく、具体的には、ガラスエポキシ基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂基板、熱硬化性ポリフェニレンエーテル基板、フッ素樹脂基板、銅貼積層板、RCC基板等が挙げられる。
また、レーザを用いて絶縁性基板に貫通孔を形成する際に、レーザとして波長355nm以下のUVレーザを用いる場合には、該絶縁性基板として、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有するものを用いることが望ましい。
【0069】
(2)次に、スルーホール用貫通孔を形成した場合には、上記絶縁性基板に粗化処理を施した後に無電解めっきを施し、該貫通孔の壁面および銅箔等の表面に表面導電膜およびスルーホールを形成する。無電解めっきとしては銅めっきが好ましい。
その後、無電解めっきが施された絶縁性基板上に下層導体回路等のパターン形状のエッチングレジストを形成し、エッチングを行うことにより下層導体回路等を形成する。
【0070】
(3)次に、必要に応じて、スルーホールの内壁および下層導体回路の表面の粗化処理を行う。粗化処理方法としては、例えば、黒化(酸化)−還元処理、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液によるスプレー処理、Cu−Ni−P針状合金めっきによる処理などが挙げられる。
【0071】
上記黒化(酸化)−還元処理の具体的な方法としては、NaOH(10〜20g/l)、NaClO2 (40〜50g/l)、Na3 PO4 (6〜15g/l)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(2.7〜10g/l)、NaBH4 (1.0〜6.0g/l)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行う方法等が挙げられる。
【0072】
上記エッチング処理に用いるエッチング液としては、有機酸と第二銅錯体との混合溶液が望ましい。上記有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、スルファミン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。上記エッチング液において、上記有機酸の含有量は、0.1〜30重量%が望ましい。酸化された銅の溶解性を維持し、かつ触媒安定性を確保することができるからである。
【0073】
上記第二銅錯体としては、アゾール類の第二銅錯体が望ましい。このアゾール類の第二銅錯体は、金属銅等を酸化する酸化剤として作用する。アゾール類としては、例えば、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾール等が挙げられる。これらのなかでも、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾールが望ましい。上記エッチング液において、上記第二銅錯体の含有量は、1〜15重量%が望ましい。溶解性および安定性に優れ、また、触媒核を構成するPd等の貴金属をも溶解させることができるからである。
【0074】
上記めっき処理としては、例えば、硫酸銅(1〜40g/l)、硫酸ニッケル(0.1〜6.0g/l)、クエン酸(10〜20g/l)、次亜リン酸ナトリウム(10〜100g/l)、ホウ酸(10〜40g/l)および界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール465)(0.01〜10g/l)を含むpH=9の無電解めっき浴にて無電解めっきを施し、Cu−Ni−P合金からなる粗化層を形成する方法等が挙げられる。
この範囲で析出するめっき被膜の結晶構造は、針状構造となるため、アンカー効果に優れるからである。上記無電解めっき浴には、上記化合物を加えて錯化剤や添加剤を加えてもよい。
【0075】
(4)上記工程の後、スルーホールを形成した場合には、樹脂充填材をスルーホールに充填する。また、必要に応じて、絶縁性基板表面の下層導体回路が形成されていない凹部に樹脂充填材を充填し、その後、研磨等を行って絶縁性基板表面を平坦化してもよい。
【0076】
(5)スルーホール内に樹脂充填材を充填した場合には、該樹脂充填材を、例えば、100℃/20分の条件で乾燥させた後、硬化させる。
硬化は、温度50〜250℃の間で行うのが望ましい。その硬化条件の一例としては、100℃で1時間加熱した後、150℃で1時間加熱する方法が挙げられる。必要に応じて、順次低い温度から高い温度と温度を変化させて硬化させるステップ硬化を行ってもよい。
【0077】
研磨を行って導体層の表面を平坦化した場合には、必要に応じて、もう一度、下層導体回路の粗化処理を行ってもよい。粗化処理方法としては、例えば、黒化(酸化)−還元処理、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液によるスプレー処理、Cu−Ni−P合金めっきによる処理等が挙げられる。
【0078】
(6)次に、上述したように、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成する。
【0079】
(7)次に、上記層間樹脂絶縁層用の樹脂層に、上述したように波長355nm以下のUVレーザを用いてバイアホール用開口を形成し、層間樹脂絶縁層とする。また、熱可塑性樹脂や樹脂複合体を樹脂成分とする樹脂組成物として、上記層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成した場合には、該樹脂層に硬化処理を施す必要があるが、該硬化処理は、上記バイアホール用開口を形成する前に行ってもよいし、後に行ってもよい。
【0080】
上記層間樹脂絶縁層の厚さは特に限定されないが、5〜50μmが望ましい。
上記厚さが5μm未満であると、上下に隣合う導体回路間の絶縁性が維持できない場合があり、一方、50μmを超えると、バイアホール用開口等を形成した際に、その底部に樹脂残りが発生したり、そのバイアホール用開口等の形状が底部に向かって先細り形状になることがある。
【0081】
また、この工程では、必要に応じて、貫通孔を形成してもよい。
貫通孔を形成する場合には、直径50〜300μmのドリル、レーザ光等を用いて貫通孔を形成する。なお、上記貫通孔の形成は、上記バイアホール用開口の形成と同様、樹脂層に硬化処理を施す前に行ってもよいし、硬化処理を施した後に行ってもよい。
上記貫通孔を形成した場合、後述する工程において、貫通孔の内壁面に導体層を形成することにより、スルーホールとすることができ、該スルーホールを形成することにより、上記基板および上記層間樹脂絶縁層を介した導体回路間を電気的に接続することができる。
【0082】
(8)次に、バイアホール用開口の内壁を含む層間樹脂絶縁層の表面と上記工程で貫通孔を形成した場合には貫通孔の内壁とに、必要に応じて、酸や酸化剤等を用いて粗化面を形成する。
上記酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、蟻酸等が挙げられ、上記酸化剤としては、クロム酸、クロム硫酸、過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸塩等が挙げられる。
また、上記粗化面の形成は、プラズマ処理等を用いて行ってもよい。
【0083】
この粗化面は、層間樹脂絶縁層とその上に形成する薄膜導体層との密着性を高めるために形成するものであり、上記層間樹脂絶縁層と上記薄膜導体層との間に充分な密着性がある場合には形成しなくてもよい。
【0084】
その後、酸を用いて粗化面を形成した場合はアルカリ等の水溶液を用い、酸化剤を用いて粗化面を形成した場合は中和液を用いて、バイアホール用開口内や貫通孔内を中和する。この操作により酸や酸化剤を除去し、次工程に影響を与えないようにする。
【0085】
(9)次に、形成された粗化面に、必要により、触媒を付与する。上記触媒としては、例えば、塩化パラジウム等が挙げられる。
このとき、触媒を確実に付与するために、酸素、窒素等のプラズマ処理やコロナ処理等のドライ処理を施すことにより、酸または酸化剤の残渣を除去するとともに層間樹脂絶縁層の表面を改質することにより、触媒を確実に付与し、無電解めっき時の金属の析出、および、無電解めっき層の層間樹脂絶縁層への密着性を向上させることができ、特に、バイアホール用開口の底面において、大きな効果が得られる。
【0086】
(10)次に、バイアホール用開口の内壁面を含む層間樹脂絶縁層の表面に薄膜導体層を形成する。
上記薄膜導体層は、無電解めっき、スパッタリング、蒸着等の方法を用いて形成することができる。
また、上記層間樹脂絶縁層に粗化面を形成しなかった場合は、上記薄膜導体層をスパッタリングにより形成することが望ましい。
【0087】
上記薄膜導体層の形成方法は、層間樹脂絶縁層の材質に応じて選択することが望ましい。
具体的には、粗化面形成用樹脂組成物を用いた層間樹脂絶縁層に薄膜導体層を形成する場合は、無電解めっきにより形成することが望ましく、その厚さは0.6〜1.2μmが望ましい。
また、ポリフェニレンエーテル樹脂等を用いた層間樹脂絶縁層に薄膜導体層を形成する場合は、スパッタリングや蒸着により形成することが望ましく、その厚さは0.1〜1.0μmが望ましい。また、このとき形成する薄膜導体層は、ニッケルと銅との二層からなるものが望ましい。また、スパッタリング等により形成した薄膜導体層の上に無電解めっきからなる層を形成してもよい。
【0088】
また、上記(7)の工程で貫通孔を形成した場合は、この工程で貫通孔の内壁面にも金属からなる薄膜導体層を形成することにより、スルーホールとしてもよい。
【0089】
上記(10)の工程で、スルーホールを形成した場合には、以下のような処理工程を行うことが望ましい。即ち、無電解めっき層表面とスルーホール内壁とを黒化(酸化)−還元処理、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液によるスプレー処理、Cu−Ni−P針状合金めっきによる処理等を用いて粗化形成処理を行う。この後、さらに、樹脂充填材等を用いてスルーホール内を充填し、ついで、樹脂充填材の表層部と無電解めっき層表面とをバフ研磨等の研磨処理方法を用いて、平坦化する。
さらに、無電解めっきを行い、既に形成した金属からなる薄膜導体層と樹脂充填材の表層部とに無電解めっき層を形成することにより、スルーホールの上に蓋めっき層を形成する。
【0090】
(11)次に、上記層間樹脂絶縁層上の一部にドライフィルムを用いてめっきレジストを形成し、その後、上記薄膜導体層をめっきリードとして電気めっきを行い、上記めっきレジスト非形成部に電気めっき層を形成する。
このとき、バイアホール用開口を電気めっきで充填してフィールドビア構造としてもよく、バイアホール用開口に導電性ペースト等を充填した後、その上の蓋めっき層を形成してフィルードビア構造としてもよい。フィルードビア構造を形成することにより、バイアホールの直上にバイアホールを設けることができる。
【0091】
(12)電気めっき層を形成した後、めっきレジストを剥離し、めっきレジストの下に存在していた金属からなる薄膜導体層をエッチングにより除去し、独立した導体回路とする。
エッチング液としては、例えば、硫酸−過酸化水素水溶液、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩の水溶液、塩化第二鉄、塩化第二銅の水溶液、塩酸、硝酸、熱希硫酸等が挙げられる。
さらに、必要により、酸または酸化剤を用いて層間樹脂絶縁層上の触媒を除去してもよい。触媒を除去することにより、触媒に用いたパラジウム等の金属がなくなるため、電気特性の低下を防止することができる。
【0092】
(13)この後、上記(3)〜(12)の工程を繰り返し、その後、最外層の導体回路に粗化面を形成する必要がある場合には、上述した粗化面形成処理方法を用いて、粗化面を有する導体回路を形成する。
【0093】
(13)次に、最外層の導体回路を含む基板面にソルダーレジスト層を形成し、さらに、該ソルダーレジスト層を開口して半田バンプ用開口を形成した後、該開口内に半田ペーストを充填し、リフローすることにより半田バンプを形成する。
その後、外部基板接続面に、ピンを配設したり、半田ボールを形成したりすることにより、PGA(Pin Grid Array)やBGA(Ball Grid Array) とする。
【0094】
上記ソルダーレジスト層は、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなるソルダーレジスト組成物を用いて形成することができ、これらの樹脂の具体例としては、例えば、層間樹脂絶縁層に用いた樹脂と同様の樹脂等が挙げられる。
【0095】
また、上記以外のソルダーレジスト組成物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、イミダゾール硬化剤、2官能性(メタ)アクリル酸エステルモノマー、分子量500〜5000程度の(メタ)アクリル酸エステルの重合体、ビスフェノール型エポキシ樹脂等からなる熱硬化性樹脂、多価アクリル系モノマー等の感光性モノマー、グリコールエーテル系溶剤などを含むペースト状の流動体が挙げられ、その粘度は25℃で1〜10Pa・sに調整されていることが望ましい。
上記ノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェノールノボラックやクレゾールノボラックのグリシジルエーテルをアクリル酸やメタクリル酸等と反応させたエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0096】
上記2官能性(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては特に限定されず、例えば、各種ジオール類のアクリル酸やメタクリル酸のエステル等が挙げられ、市販品としては、日本化薬社製のR−604、PM2、PM21等が挙げられる。
【0097】
また、上記ソルダーレジスト組成物はエラストマーや無機フィラーが配合されていてもよい。
エラストマーが配合されていることにより、形成されるソルダーレジスト層は、エラストマーの有する柔軟性および反発弾性により、ソルダーレジスト層に応力が作用した場合でも、該応力を吸収したり緩和したりすることができ、その結果、多層プリント配線板の製造工程や製造した多層プリント配線板にICチップ等の電子部品を搭載した後のソルダーレジスト層にクラックや剥離が発生することを抑制でき、さらに、クラックが発生した場合でも該クラックが大きく成長することがない。
【0098】
上記半田バンプ用開口を形成する方法としては、例えば、バイアホール用開口を形成する方法と同様に、レーザ光を照射する方法等が挙げられる。
また、半田バンプ用開口を形成した際に露出した導体回路部分は、通常、ニッケル、パラジウム、金、銀、白金等の耐食性金属により被覆することが望ましい。具体的には、ニッケル−金、ニッケル−銀、ニッケル−パラジウム、ニッケル−パラジウム−金等の金属により被覆層を形成することが望ましい。
上記被覆層は、例えば、めっき、蒸着、電着等により形成することができるが、これらのなかでは、被覆層の均一性に優れるという点からめっきが望ましい。
【0099】
なお、製品認識文字などを形成するための文字印刷工程やソルダーレジスト層の改質のために、酸素や四塩化炭素などのプラズマ処理を適時行ってもよい。
以上の方法は、セミアディティブ法によるものであるが、フルアディティブ法を採用してもよい。
【0100】
次に、第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法について説明する。
第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法は、基板上に導体回路と層間樹脂絶縁層とが順次形成され、最外層にソルダーレジスト層と半田バンプとが形成された多層プリント配線板の製造方法であって、
少なくとも下記(a)および(b)の工程を含むことを特徴とする。
(a)355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、ソルダーレジスト層用の樹脂層を形成する工程、
(b)上記樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いて半田バンプ用開口を形成する工程。
【0101】
第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法によれば、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、ソルダーレジスト層用の樹脂層を形成し、上記樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いて半田バンプ用開口を形成するため、このレーザ光の特性に起因して、レーザ処理時にレーザ光が乱反射しにくく、照射時にレーザ光が拡張することもないため、開口径の小さい半田バンプ用開口であっても所望の形状に形成することができる。また、波長355nm以下のUVレーザを用いて半田バンプ用開口を形成する場合には、さほど大きな出力を必要としない。
【0102】
第二の本発明の製造方法は、上記(a)および(b)の工程を含むことを特徴とするものである。
従って、ここでは、上記(a)および(b)の工程についてまず説明し、多層プリント配線板を製造する全製造工程については、後述することとする。
【0103】
第二の本発明の製造方法は、上記(a)の工程、即ち、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、ソルダーレジスト層用の樹脂層を形成する工程を含む。
上記樹脂組成物は、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有するものであれば特に限定されず、上記波長領域に吸収ピークを有するポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂成分のみからなるものであってもよいし、これらの樹脂成分に加えて、上記波長領域に吸収ピークを有するように、吸収波長を調整するための添加剤等の樹脂成分以外の成分が配合されたものであってもよい。
また、これらの樹脂成分の具体例としては、第一の本発明の製造方法で用いた樹脂と同様のもの等が挙げられる。
【0104】
また、第一の本発明の製造方法で用いたソルダーレジスト組成物のうち、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有するものや、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有するように、吸収波長を調整するための添加剤等の樹脂成分以外の成分を配合したものを用いてもよい。
【0105】
上記(a)の工程においては、このような樹脂組成物を用いてソルダーレジスト層用の樹脂層を形成する。
具体的には、未硬化の樹脂組成物をロールコータや、カーテンコーター等を用いて塗布することにより形成すればよく、また、未硬化(半硬化)の樹脂フィルムを熱圧着して形成してもよい。また、この後、必要に応じて、加熱処理等の硬化処理を施す。なお、上記硬化処理は、後述する半田バンプ用開口を形成した後に行ってもよい。
また、熱可塑性樹脂を樹脂成分とする樹脂組成物を用いる場合には、フィルム状に成形した樹脂成形体を熱圧着することにより形成すればよい。
【0106】
また、第二の本発明の製造方法は、上記(b)の工程、即ち、上記(a)の工程で形成した樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いて半田バンプ用開口を形成する工程を含む。
上記レーザとしては、第一の本発明の製造方法で用いたものと同様のものを用いることができる。
また、上記(b)の工程で、半田バンプ用開口を形成する場合には、複数の半田バンプ用開口を一括形成することが望ましい。
なお、半田バンプ用開口の一括形成は、第二の本発明の製造方法同様、光学系レンズとマスクとを介してレーザ光を照射することにより行うことができる。
【0107】
次に、第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法について、工程順に説明する。
(1)まず、第一の本発明の製造方法の(1)〜(5)と同様にして、導体回路が形成され、さらに必要に応じて、スルーホールが形成された基板を作製する。
【0108】
(2)次に、この導体回路が形成された基板上に、樹脂組成物を用いて、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成する
上記樹脂層を形成する方法としては、第一の本発明の製造方法と同様の方法を用いることができる。なお、第一の本発明の製造方法では、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成していたが、第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法で用いる樹脂組成物はこのようなものには限定されない。
ただし、第一の本発明の製造方法と同様、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いることが望ましい。
【0109】
(3)次に、上記層間樹脂絶縁層用の樹脂層に、バイアホール用開口を形成し、層間樹脂絶縁層とする。
上記バイアホール用開口の成形は、例えば、レーザを用いて行うことができる。特に、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成した場合には、発振波長355nm以下のUVレーザを用いてバイアホール用開口を形成することが望ましい。
また、この工程では、第一の本発明の製造方法同様、必要に応じて、貫通孔を形成してもよい。
【0110】
(4)次に、第一の本発明の製造方法の(8)〜(12)と同様にして、層間樹脂絶縁層上に独立した導体回路の形成された基板を作製する。
(5)続いて、上記(2)〜(4)の工程を繰り返し、最外層に導体回路の形成された多層配線板を製造する。
【0111】
(6)次に、最外層の導体回路を含む基板面にソルダーレジスト層を形成し、さらに、該ソルダーレジスト層を開口して半田バンプ用開口を形成した後、該開口内に半田ペーストを充填し、リフローすることにより半田バンプを形成する。その後、外部基板接続面にピンを配設したり、半田ボールを形成したりすることによりPGA(Pin Grid Array)やBGA(Ball Grid Array )とする。
なお、この工程は、上記(a)および(b)の工程を以外は、第一の本発明の製造方法と同様の方法を用いて行えばよい。
【0112】
【実施例】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
A.層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムの作製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量469、油化シェルエポキシ社製 エピコート1001)30重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215、大日本インキ化学工業社製 エピクロンN−673)40重量部、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量120、大日本インキ化学工業社製 フェノライトKA−7052)30重量部をエチレングリコールアセテート20重量部、ソルベントナフサ20重量部に攪拌しながら加熱溶解させ、そこへ末端エポキシ化ポリブタジエンゴム(ナガセ化成工業社製 デナレックスR−45EPT)15重量部と2−フェニル−4、5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール粉砕品1.5重量部、微粉砕シリカ2重量部、シリコン系消泡剤0.5重量部、着色剤として、フルオレセイン(和光純薬社製)0.1重量部を添加しエポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物を厚さ38μmのPETフィルム上に乾燥後の厚さが50μmとなるようにロールコーターを用いて塗布した後、80〜120℃で10分間乾燥させることにより、層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムを作製した。
【0113】
なお、上記エポキシ樹脂組成物を層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムの一部を切り出して吸光光度測定用の試料とし、上記フィルムの吸収波長を測定した。
なお、上記吸光光度測定は、ダブルビーム分光光度計(日立製作所社製、U−2000)を用いて行った。
その結果、上記層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムは、480nm付近に吸収ピークを有していた。
【0114】
B.樹脂充填材の調製
ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル社製、分子量:310、YL983U)100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径が1.6μmで、最大粒子の直径が15μm以下のSiO2 球状粒子(アドテック社製、CRS 1101−CE)170重量部およびレベリング剤(サンノプコ社製 ペレノールS4)1.5重量部を容器にとり、攪拌混合することにより、その粘度が23±1℃で45〜49Pa・sの樹脂充填材を調製した。なお、硬化剤として、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)6.5重量部を用いた。
【0115】
C.プリント配線板の製造方法
(1)厚さ0.8mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる絶縁性基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅貼積層板を出発材料とした(図1(a)参照)。まず、この銅貼積層板をドリル削孔し、無電解めっき処理を施し、パターン状にエッチングすることにより、基板の両面に下層導体回路4とスルーホール9を形成した。
【0116】
(2)スルーホール9および下層導体回路4を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、NaOH(10g/l)、NaClO2 (40g/l)、Na3 PO4 (6g/l)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(10g/l)、NaBH4 (6g/l)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行い、そのスルーホール9を含む下層導体回路4の全表面に粗化面4a、9aを形成した(図1(b)参照)。
【0117】
(3)上記Bに記載した樹脂充填材を調製した後、調製後24時間以内に、スルーホール9内に樹脂充填材を充填し、続いて、基板の片面の導体回路非形成部に樹脂充填材10の層を形成し、100℃、20分の条件で乾燥させた(図1(c)参照)。
【0118】
(4)上記(3)の処理を終えた基板の片面を、#600のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層銅パターン4の表面やスルーホール9のランド表面に樹脂充填材10が残らないように研磨し、次いで、上記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。
次いで、100℃で1時間、150℃で1時間の加熱処理を行って樹脂充填材10を硬化した。
【0119】
このようにして、スルーホール9や導体回路非形成部に形成された樹脂充填材10の表層部および下層導体回路4の表面を平坦化し、樹脂充填材10と下層導体回路4の側面4aとが粗化面を介して強固に密着し、またスルーホール9の内壁面9aと樹脂充填材10とが粗化面を介して強固に密着した基板を得た(図1(d)参照)。すなわち、この工程により、樹脂充填材10の表面と下層導体回路4の表面とが同一平面となる。
【0120】
(5)上記基板を水洗、酸性脱脂した後、ソフトエッチングし、次いで、エッチング液を基板の両面にスプレイで吹きつけて、下層導体回路4の表面とスルーホール9のランド表面と内壁とをエッチングすることにより、下層導体回路4の全表面に粗化面4a、9aを形成した(図2(a)参照)。
エッチング液としては、イミダゾール銅(II)錯体10重量部、グリコール酸7重量部、塩化カリウム5重量部からなるエッチング液(メック社製、メックエッチボンド)を使用した。
【0121】
(6)基板の両面に、Aで作製した基板より少し大きめの層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムを基板上に載置し、圧力4kgf/cm2 、温度80℃、圧着時間10秒の条件で仮圧着して裁断した後、さらに、以下の方法により真空ラミネーター装置を用いて貼り付けることにより層間樹脂絶縁層を形成した(図2(b)参照)。すなわち、層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムを基板上に、真空度0.5Torr、圧力4kgf/cm2 、温度80℃、圧着時間60秒の条件で本圧着し、その後、170℃で30分間熱硬化させた。
【0122】
(7)次に、層間樹脂絶縁層2に、波長355nmのUVレーザ(E.S.I社製、7200型)を用いて、直径80μmのバイアホール用開口6を形成した(図2(c)参照)。
【0123】
(8)バイアホール用開口6を形成した基板を、60g/lの過マンガン酸を含む80℃の溶液に10分間浸漬し、層間樹脂絶縁層2の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去することにより、バイアホール用開口6の内壁を含む層間樹脂絶縁層2の表面を粗面とした(図2(d)参照)。
【0124】
(9)次に、上記処理を終えた基板を、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いした。
さらに、粗面化処理(粗化深さ3μm)した該基板の表面に、パラジウム触媒を付与することにより、層間樹脂絶縁層2の表面およびバイアホール用開口6の内壁面に触媒核を付着させた。
【0125】
(10)次に、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ0.6〜3.0μmの無電解銅めっき膜12を形成し、バイアホール用開口の内壁を含む層間樹脂絶縁層の表面に無電解銅めっき膜12が形成された基板を得た(図3(a)参照)。
〔無電解めっき水溶液〕
NiSO4 0.003 mol/l
酒石酸 0.200 mol/l
硫酸銅 0.030 mol/l
HCHO 0.050 mol/l
NaOH 0.100 mol/l
α、α′−ビピリジル 40 mg/l
ポリエチレングリコール(PEG) 0.10 g/l
〔無電解めっき条件〕
35℃の液温度で40分
【0126】
(11)無電解銅めっき膜12が形成された基板に市販の感光性ドライフィルムを張り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光し、0.8%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理することにより、厚さ20μmのめっきレジスト3を設けた(図3(b)参照)。
【0127】
(12)ついで、基板を50℃の水で洗浄して脱脂し、25℃の水で水洗後、さらに硫酸で洗浄してから、下記の条件で電解めっきを施し、めっきレジスト3非形成部に、厚さ20μmの電解銅めっき膜13を形成した(図3(c)参照)。
〔電解めっき液〕
硫酸 2.24 mol/l
硫酸銅 0.26 mol/l
添加剤 19.5 ml/l
(アトテックジャパン社製、カパラシドGL)
〔電解めっき条件〕
電流密度 0.8 A/dm2
時間 30 分
温度 25 ℃
【0128】
(13)めっきレジスト3を5%NaOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト3下の無電解めっき膜12を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、無電解銅めっき膜12と電解銅めっき膜13からなる厚さ18μmの導体回路(バイアホール7を含む)5を形成した(図3(d)参照)。
【0129】
(14)ついで、上記(5)と同様の処理を行い、第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液によって、粗化面を形成した(図4(a)参照)。
(15)上記(6)〜(14)の工程を繰り返すことにより、さらに上層の導体回路を形成し、多層配線板を得た(図4(b)〜図5(b)参照)。
【0130】
(16)次に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に60重量%の濃度になるように溶解させた、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量:4000)46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名:エピコート1001)15.0重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、商品名:2E4MZ−CN)1.6重量部、感光性モノマーである2官能アクリルモノマー(日本化薬社製、商品名:R604)4.5重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:DPE6A)1.5重量部、分散系消泡剤(サンノプコ社製、S−65)0.71重量部を容器にとり、攪拌、混合して混合組成物を調製し、この混合組成物に対して光重合開始剤としてベンゾフェノン(関東化学社製)2.0重量部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学社製)0.2重量部、着色剤としてのフタロシアニンG(アルドリッチ社製)0.3重量部を加えることにより、粘度を25℃で2.0Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得た。
なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器社製、DVL−B型)で60rpmの場合はローターNo.4、6rpmの場合はローターNo.3によった。
【0131】
また、得られたソルダーレジスト組成物の一部を取り、以下の方法で、吸光光度測定用試料を調製し、その吸収波長を測定した。
即ち、まず、上記ソルダーレジスト組成物をメチルエチルケトンに溶解し、その後、得られた溶液を吸光光度測定用セル(石英製)に入れ、ダブルビーム分光光度計 U−2000を用いて吸光光度を測定した。
その結果、上記層間樹脂絶縁層用樹脂フィルムは、波長450nm付近と600nm付近とに吸収ピークを有していた。
【0132】
(17)次に、多層配線基板の両面に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布し、70℃で20分間、70℃で30分間の条件で乾燥処理を行った後、波長355nmのUVレーザ(E.S.I社製、7200型)を用いて、直径200μmの開口を形成した。
そして、さらに、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の条件でそれぞれ加熱処理を行ってソルダーレジスト層を硬化させ、開口を有し、その厚さが20μmのソルダーレジストパターン層14を形成した。上記ソルダーレジスト組成物としては、市販のソルダーレジスト組成物を使用することもできる。
【0133】
(18)次に、ソルダーレジスト層14を形成した基板を、塩化ニッケル(2.3×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(2.8×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.6×10-1mol/l)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層15を形成した。さらに、その基板をシアン化金カリウム(7.6×10-3mol/l)、塩化アンモニウム(1.9×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.2×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10-1mol/l)を含む無電解金めっき液に80℃の条件で7.5分間浸漬して、ニッケルめっき層15上に、厚さ0.03μmの金めっき層16を形成した。
【0134】
(19)この後、基板のICチップを載置する面のソルダーレジスト層14の開口に、スズ−鉛を含有するはんだペーストを印刷し、さらに他方の面のソルダーレジスト層14の開口にスズ−アンチモンを含有するはんだペーストを印刷した後、200℃でリフローすることによりはんだバンプ(はんだ体)17を形成し、はんだバンプ17を有する多層プリント配線板を製造した(図5(c)参照)。
【0135】
多層プリント配線板を製造後、得られた多層プリント配線板を刃物で切断し、バイアホール用開口、および、半田バンプ用開口の形状を観察した。
その結果、バイアホール用開口、半田バンプ用開口ともに、アンダーカット形状でなく、また、その底部に樹脂残りのない所望の形状を有していた。
【0136】
【発明の効果】
以上説明したように、第一の本発明の多層プリント配線板の製造方法では、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成し、上記樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いてバイアホール用開口を形成するため、アンダーカット形状でなく、また、その底部に樹脂残りのない所望の形状のバイアホール用開口を形成することができる。
【0137】
また、第二の本発明の多層プリント配線板の製造方法では、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、ソルダーレジスト層用の樹脂層を形成し、上記樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いて半田バンプ用開口を形成するため、アンダーカット形状でなく、また、その底部に樹脂残りのない所望の形状の半田バンプ用開口を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 層間樹脂絶縁層
3 めっきレジスト
4 下層導体回路
4a 粗化面
5 導体回路
6 バイアホール用開口
7 バイアホール
8 銅箔
9 スルーホール
9a 粗化面
10 樹脂充填材
12 無電解銅めっき層
12a Ni金属層
12b Cu金属層
13 電気めっき層
14 ソルダーレジスト層
15 ニッケルめっき層
16 金めっき層
17 はんだバンプ
Claims (5)
- 基板上に導体回路と層間樹脂絶縁層とが順次形成され、これらの導体回路がバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板の製造方法であって、
少なくとも下記(A)および(B)の工程を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
(A)シアニン系色素、クマリン系色素、または、フルオレセインを含み、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成する工程、
(B)前記樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いてバイアホール用開口を形成する工程。 - 前記(B)の工程において、複数のバイアホール用開口を一括形成する請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法。
- 基板上に導体回路と層間樹脂絶縁層とが順次形成され、最外層にソルダーレジスト層と半田バンプとが形成された多層プリント配線板の製造方法であって、
少なくとも下記(a)および(b)の工程を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
(a)シアニン系色素、クマリン系色素、または、フルオレセインを含み、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、ソルダーレジスト層用の樹脂層を形成する工程、
(b)前記樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いて半田バンプ用開口を形成する工程。 - 前記(b)の工程において、複数の半田バンプ用開口を一括形成する請求項3に記載の多層プリント配線板の製造方法。
- 下記(A)および(B)の工程をさらに含む請求項3または4に記載の多層プリント配線板の製造方法。
(A)シアニン系色素、クマリン系色素、または、フルオレセインを含み、355nm以上の波長領域に吸収ピークを有する樹脂組成物を用いて、層間樹脂絶縁層用の樹脂層を形成する工程、
(B)前記層間樹脂絶縁層用の樹脂層に、波長355nm以下のUVレーザを用いてバイアホール用開口を形成する工程。
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