JP2015119073A - 多層プリント配線板および、その製造方法 - Google Patents

多層プリント配線板および、その製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】化学処理による開口領域を制御容易なプリント配線板の提供。【解決手段】同一層に厚みの異なる配線パターンを備えたプリント配線板Pであり、絶縁基材1の一方の面に形成された凹部を有する金属導体3bと、当該絶縁基材上に金属導体側面を覆い金属導体の凹部エッジ5よりも低い絶縁樹脂層4bと、金属導体と絶縁樹脂層との段差を埋めた金属導体に対応する部分に開口部を有すると共に絶縁樹脂層より薄い絶縁接着シート6bと、絶縁接着シート上に形成された金属導体よりも薄い金属箔7と、金属箔上に形成された金属膜9からなる薄導体配線パターン10と、金属導体と金属導体上に形成された薄導体配線パターンを、絶縁接着シートの開口と薄導体配線パターンにおける金属箔の絶縁接着シートの開口に対応する位置に形成し窓部を通して形成された金属膜により接続してなる厚導体配線パターン11とを有するプリント配線板。【選択図】図7

Description

本発明は、大電流対応の厚導体配線パターンを有するプリント配線板において、小型化、軽量化および、絶縁信頼性、生産性に優れるプリント配線板とその製造方法に関する。
近年、自動車分野においては、急速に電子化が進んでおり、これに伴い、搭載されるプリント配線板も増加している。なかでも、普及が著しいハイブリッドカーや電気自動車においては、制御系だけでなく、モーターなど駆動系にも電装部品が使用されている。
これらの部品が搭載されるプリント配線板は、制御素子系の信号が流れる通常の配線パターンのほかに、大電流が流れる断面積の大きな配線パターンも必要になる。
このため、これまでは制御素子系と大電流系の配線パターンをそれぞれ擁した複数のプリント配線板を用意し、これらを接続する、あるいは、導体層を多層構造にして、大電流が流れる配線パターンを厚い金属層、通常の配線パターンはこれより薄い金属層となるように、それぞれ配線層を分けることで対応してきた。
しかし、前者の方法では、プリント配線板の数が増加してしまい、結果として、電子部品が占有する割合が増えてしまうことになる(その分、車室空間は狭くなる)。一方、後者の方法では、プリント配線板の数は減少するが、配線の設計自由度が低下するため、プリント配線板は大型化してしまう。また、大電流対応の配線パターンがある層では、厚い金属層が層全体に含まれているため、プリント配線板自体が重くなっていた(つまり、配線パターンが不要な箇所にも厚い金属層が含まれてしまう)。
これは、近年自動車搭載部品に求められている電子部品の小型化(広い車室空間の確保)、また、軽量化(燃費向上)の実現の阻害要因の一つとなっていた。
そこで、特許文献1には、図21に示したプリント配線板Q1が提案されている。
このプリント配線板Q1は、大電流が流れる厚導体配線パターン11と、制御系信号が流れる薄導体配線パターン10が同一層で混成した構造となっている。
この構造であれば、各配線パターンを効率良く配置でき、プリント配線板の小型化・軽量化が可能となる。
このプリント配線板の概略製造方法を図22に示す。まず、絶縁基材1上に大電流が流れる厚導体配線パターンの構成要素の一つとなる金属導体3をエッチングにより形成する。次に、金属導体3を埋めるように、絶縁樹脂を全面に塗布し、絶縁樹脂層4を形成する。この際、塗布される絶縁樹脂は、金属導体3の側面および、表層部を被覆するように形成される(図22(a)参照)。
次に、物理研磨等の平滑化処理により、上面が同一面で平滑な金属導体3aと絶縁樹脂層4aを形成する。その後、表裏を接続するスルーホール(以降これをTHと表記する)となる貫通孔を設け、めっき等の導電化処理により金属膜9を形成する(図22(b)参照)。
これを回路形成することで、THを有した厚導体配線パターン11と、薄導体配線パターン10が、同一層で混成したプリント配線板Q1が得られる(図22(c)参照)。
このプリント配線板Q1を拡大したものを図23に示す。これより、厚導体配線パターン11は、金属導体3aと金属膜9、薄導体配線パターン10は、金属膜9から形成されていることがわかる。
このうち、薄導体配線パターン10を構成している金属膜9は、絶縁樹脂層4aの表面に直接めっき等の導電化処理により形成されるが、このような工法で使用される絶縁樹脂は、めっき析出性を考慮したものに限るため、絶縁樹脂の選択肢が限られてしまう。
また、このような絶縁樹脂は、一般的に表面をアルカリ処理等で粗化面とすることで、アンカー効果により、絶縁樹脂層4aと金属膜9との密着性を高めている。よって、安定して高い密着性を得るには、絶縁樹脂層表面を比較的大きな粗度にする必要がある。
しかし、密着性を上げるため粗度を大きくすると、回路形成性が悪くなるため、薄導体配線パターン10で要望される高密度配線化が困難となってしまう。しかも、絶縁樹脂層の表面粗度が大きいと、その凹みに潜り込んだ金属膜がエッチングで除去され難くなるため、絶縁信頼性も悪化させてしまう可能性がある。
そこで、特許文献2には、図24(a)に示したような構成のプリント配線板Q2が提案されている。これは、平滑化処理された平滑面上に、絶縁接着シート6を介して、薄導体配線パターン10を形成している。
このプリント配線板Q2を拡大したものを図24(b)に示す。これより、厚導体配線パターン11は、金属導体3aと絶縁接着シートと同時に積層された金属箔7と金属膜9、薄導体配線パターン10は、金属箔7と金属膜9から形成されていることがわかる。
この構成であれば、絶縁樹脂層4aには、直接金属膜9が形成されないため、材料の選択肢の幅が広がる。また、薄導体配線パターン10の密着性は、絶縁接着シート6と同時に積層した金属箔7により確保されるため、特許文献1のように、絶縁樹脂層表面を大きく粗化する必要がない。このため、薄導体配線パターン10の微細配線化も可能となり、絶縁信頼性も向上する(絶縁樹脂粗化面の凹みに金属膜残渣が発生する可能性が低下するため)。
このプリント配線板の概略製造工程を図25に示す。平滑化処理までは、特許文献1と同様で、この平滑面に絶縁接着シート6と金属箔7を積層により設ける。次に、内層の金属導体3aの金属導体トップ幅PTよりも狭い範囲で、ウィンドウエッチング部W1を形成する(図25(a)参照)。
そして、このウィンドウエッチング部W1から露出した絶縁接着シート6をレーザ加工により除去することで、絶縁接着シート開口部V2を形成する(図25(b)参照)。
その後、めっき等の導電化処理により金属膜9を設けることで、金属導体3aと金属箔7を導通接続することができ、これを回路形成することで、厚導体配線パターン11と、薄導体配線パターン10とが同一層で混成したプリント配線板Q2が得られる(図25(c)及び、図24参照)。
特開2011−91308号公報 特開平6−97617号公報
上記の製造方法では、絶縁接着シート開口部V2の形成をレーザ加工により行うため、座切れによる絶縁樹脂層4aへのダメージを避けるべく、絶縁接着シート開口部V2は金属導体トップ幅PTよりも、狭く形成する必要がある。つまり、金属導体トップ幅PTから絶縁接着シート開口部V2を引いた領域には、絶縁接着シート6が存在することになる。
このため、厚導体配線パターン11は、絶縁接着シート6の存在により、断面積が小さくなってしまう。厚導体配線パターン11には、大電流が流れるため、断面積は少しでも大きいことが望まれるが、レーザ加工により開口部を形成する限りは、金属導体3a上の全ての絶縁接着シート6を無くすことは困難である。
また、大電流が流れる厚導体配線パターン11は、通常の配線パターンより、発熱量が大きい。このため、厚導体配線パターン11の周辺は、熱の影響を受けることになり、金属導体3a上にある絶縁接着シート6は、熱の影響を大きく受けて膨張する。このため、厚導体配線パターン11を成す、金属導体3aと金属箔7を引き剥がす力がより大きくなり、導通接続信頼性が低下する可能性がある。
さらに、レーザ加工は、小さな領域の加工には最適であるが、本構成のように配線パターン全体を露出するように開口部を設ける大面積加工では、多くの時間を要するため、生産効率が悪い。
そこで、レーザ加工の代わりに、化学処理により開口部を設ける方法が考えられる(図26(a)参照)。この方法であれば、ウィンドウエッチング部W1から露出した絶縁接着シート6を一括除去できるため、レーザ加工と比較すると、生産効率が極めて高い加工法といえる。また、ウィンドウエッチング部W1から露出していない金属導体3a上の絶縁接着シート6も、化学処理液が入り込むことで除去できる可能性があり、大電流を流すのに有利な大きな断面積の配線パターンが得られる可能性がある。
実際に化学処理により開口部を形成した際のイメージを図26(b)及び、図26(c)に示す。特許文献2の構成で化学処理による開口部形成は、時間制御により開口サイズをコントロールすることになる。このため、加工時間が短すぎると、図26(b)に示したように、開口部V3が狭くなってしまう。つまり、厚導体配線パターンにおいて、大きな断面積が確保できなくなってしまう。
また、逆に加工時間が長すぎると、図26(c)に示したように、金属導体3a上を化学処理液が通過して、本来除去したい領域よりも広い範囲に化学処理液が浸透し、金属導体3aの側壁を保護している絶縁樹脂層4aも除去された開口部V4が形成される。この開口部V4は、絶縁樹脂層が除去された領域Xが形成されたことで、絶縁信頼性低下等が懸念される。
このように、化学処理による加工方法では、生産効率は高いが、開口領域の制御が困難になるという課題が残ってしまう。
本発明は上記の如き従来の問題に鑑みてなされたものであり、生産効率の高い化学処理による開口部形成において、開口領域の制御が容易な構造であるプリント配線板とその製造方法を提供することを課題としている。
本発明は、同一層に厚みの異なる配線パターンを備えたプリント配線板であって、
少なくとも、絶縁基材の一方の面に形成された上面にすり鉢状の凹部を有する金属導体と、
当該絶縁基材上の金属導体非形成部に、当該金属導体の側面を覆い、かつ、当該金属導体のすり鉢状の凹部エッジ部よりも低い位置で形成された絶縁樹脂層と、
当該金属導体と絶縁樹脂層との間に生じた段差部を埋めるように形成された、当該金属導体に対応する部分に開口部を有すると共に当該絶縁樹脂層よりも厚みの薄い絶縁接着シートと、
当該絶縁接着シート上に形成された、当該金属導体よりも厚みの薄い金属箔と、当該金属箔の上面に導電化処理により形成された金属膜からなる薄導体配線パターンと、
当該金属導体と、当該金属導体の上面側に位置する部分に形成された薄導体配線パターンとを、当該絶縁接着シートの開口部と、当該薄導体配線パターンにおける金属箔の当該絶縁接着シートの開口部に対応する位置に形成されたウィンドウ部を通して形成された金属膜により接続してなる厚導体配線パターンと、
を有することを特徴とするプリント配線板により上記課題を解決したものである。
これにより、化学処理で絶縁接着シートの開口部を形成しても、金属導体上面のすり鉢状の凹部のエッジ部と、この上に積層された金属箔とが近接しているため、化学処理液がエッジ部より外側へ浸入し難くなる。その結果、精密な時間制御を行わなくても、絶縁樹脂層にダメージを与えることなく、金属導体の上面に位置する絶縁接着シートを効率よく除去することができる。よって、大電流が流れるのに有利な大きな断面積の厚導体配線パターンを有したプリント配線板が得られる。
また、本発明は、同一層に厚みの異なる配線パターンを備えたプリント配線板の製造方法であって、
少なくとも、絶縁基材の一方の面に金属導体を形成する工程と、
当該絶縁基材上の金属導体非形成部に、当該金属導体の側面を覆うように絶縁樹脂層を形成する工程と、
当該金属導体と、当該絶縁樹脂層の表層が同一面となるように平滑化処理する工程と、
当該平滑化処理することによって露出した金属導体にソフトエッチング処理を行うことで、当該金属導体の上面をすり鉢状の凹部とする工程と、
当該金属導体の上面にすり鉢状の凹部を形成した後、絶縁樹脂層の薄膜化処理を行うことによって、当該金属導体と当該絶縁樹脂層との境界部に段差部を形成し、当該金属導体のすり鉢状の凹部エッジ部を突出させる工程と、
当該金属導体と、当該絶縁樹脂層上に、当該絶縁樹脂層よりも厚みの薄い絶縁接着シートと、当該金属導体よりも厚みの薄い金属箔を順次積層することで、当該金属導体のすり鉢状の凹部エッジ部にある絶縁接着シートの厚みを薄くし、当該金属導体のすり鉢状の凹部内にある絶縁接着シートと、薄膜化された当該絶縁樹脂層上にある絶縁接着シートとを、区画化する工程と、
当該金属導体上にある当該金属箔を除去し、ウィンドウ部を形成することで、当該すり鉢状の凹部内にある絶縁接着シートの表層を露出させる工程と、
当該金属箔に形成したウィンドウ部を介して露出した、当該金属導体上面のすり鉢状の凹部内にある当該絶縁接着シートを、化学処理により一括除去することで開口部を形成する工程と、
導電化処理することで当該絶縁接着シート上の当該金属箔上に金属膜を形成するとともに、当該開口部内に金属膜を充填し、当該金属導体と当該金属箔を当該金属膜により接続する工程と、
当該絶縁接着シート上に積層された金属箔と金属膜とをエッチング処理することで、
当該金属箔と金属膜からなる薄導体配線パターンと、
当該金属導体と当該金属導体の上面側に位置する部分に形成された薄導体配線パターン及び、当該開口部に充填された金属膜からなる厚導体配線パターンを同時に形成する工程と、
を有することを特徴とするプリント配線板の製造方法により上記課題を解決したものである。
これより、前記構成のプリント配線板を適切に製造し得るプリント配線板の製造方法が提供される。
本発明によれば、厚導体配線パターンを構成している金属導体の上面端部に、周囲から突出したエッジ部を形成したことで、この上に積層される絶縁接着シートを、エッジ部を境界にして、金属導体上にあるものと、それ以外にあるものに区画化することができる。また、エッジ部は他の箇所よりも、絶縁接着シート上に形成された金属箔と近接することになる。このため、金属導体上の絶縁接着シートを選択的に除去する方法に、化学処理を使用しても、エッジ部外へは化学処理液が侵入しにくくなるため、区画化された金属導体上の絶縁接着シートを集中的に除去することが可能となる。その結果、金属導体上の絶縁接着シートが殆ど除去された厚導体配線パターンを形成できる。また、薄導体配線パターンにおいては、絶縁接着シートと同時に積層された金属箔をベースに形成されるため、界面の粗度を大きくしなくても、薄導体配線パターンの密着性を確保することができ、微細配線パターン形成が可能となる。
本発明の第一の実施形態に係るプリント配線板の製造方法を示す概略断面工程説明図(部分拡大図付き)。 図1に引き続く概略断面工程説明図(部分拡大図付き)。 図2に引き続く概略断面工程説明図(部分拡大図付き)。 本発明の第一の実施形態に係るプリント配線板の製造方法を示す概略平面工程説明図。 図4に引き続く概略平面工程説明図。 図5に引き続く概略平面工程説明図。 本発明のプリント配線板の第一の実施形態を示す概略断面説明図。 従来のプリント配線板の製造方法と本発明のプリント配線板の製造方法における化学処理工程時の現象を示した概略断面説明図。 本発明のプリント配線板の第二の実施形態を示す概略断面説明図(部分拡大図付き)。 本発明の第二の実施形態のプリント配線板の製造方法における化学処理工程時の現象を示した概略断面説明図。 本発明の第二の実施形態に係るプリント配線板の製造方法における積層工程を示す概略断面説明図。 本発明の第二の実施形態のプリント配線板における絶縁接着シート厚違いの積層状態を示す概略断面説明図。 本発明の第二の実施形態に係るプリント配線板の製造方法における他の積層工程を示す概略断面工程説明図。 従来のプリント配線板の製造方法における積層工程を示す概略断面工程説明図。 本発明のプリント配線板の第一の実施形態を示す拡大断面説明図。 本発明のプリント配線板の第三の実施形態を示す拡大断面説明図。 本発明のプリント配線板の第四の実施形態を示す拡大断面説明図。 本発明の第四の実施形態に係るプリント配線板の製造方法における金属膜形成工程を示す概略断面工程説明図。 本発明のプリント配線板において金属導体と金属箔とTHが接続した形態を示す概略断面説明図。 本発明のプリント配線板において金属導体とTHが接続した他の形態を示す概略断面説明図。 従来の第一のプリント配線板例を示す概略断面説明図。 図21のプリント配線板の製造方法を示す概略断面工程説明図。 図21のプリント配線板の要部拡大断面説明図。 従来の第二のプリント配線板例を示す概略断面説明図。 図24のプリント配線板の製造方法を示す概略断面及び平面工程説明図。 従来の第二のプリント配線板において、開口部を化学処理により形成したときの概略断面説明図。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
本発明の第一の実施形態に係るプリント配線板の製造方法の概略断面工程図を図1から図3に示すと共に、その概略平面工程図を図4から図6に示す。
まず、図1(a)及び、図4(a)に示したように、コアとなる絶縁基材1の表裏に、金属導体材2を熱圧着により貼り合わせる。
絶縁基材1としては、絶縁性を有する樹脂であれば特に制限はないが、耐熱性・電気特性に優れたエポキシ系樹脂を使用することが好ましい。
また、ガラス織布やガラス不織布の有無についても問わないが、大電流が流れる厚導体配線パターンを安定して形成するには、電気的・機械的に向上するため、これらが含まれている方が好ましいと言える。
金属導体材2は、エッチングにより回路形成できる金属であれば、特に制限はないが、導電性、熱伝導性および、コストメリットを考慮すると、銅箔を使用することが好ましい。
また、銅箔の種類としては、電解銅箔、圧延銅箔どちらでも良く、厚みによってコストメリットが出せるものを使用すれば良い。ちなみに、200μm以上の厚みであれば、銅箔製造上の点から、圧延銅箔の方がコスト的に有利になりやすい。
金属導体2の厚みについては、特に制限はないが、エッチング性を考慮すると、500μm以下であることが好ましい。また、下限の厚みについては、大電流が流れることを考慮すると、35μm以上であることが好ましい。
よって、銅箔の厚みが、35μm以上200μm未満であれば電解銅箔、200μm以上500μm以下であれば圧延銅箔を、それぞれ使用することが、生産性および、コストメリットが出せるので好ましいと言える。
次に、図1(b)及び、図4(b)に示したようにエッチングにより、金属導体3を形成する。
エッチングは通常のエッチング装置を使用しても良いが、本発明構成のように、金属導体材2が比較的厚いときは、バキュームエッチング装置等を使用することで、金属導体3のトップ幅と、ボトム幅の差を小さく出来るため、より配線密度を向上させることができるので好ましい。
次に、図1(c)及び、図4(c)に示したように、絶縁樹脂層4を形成するが、その前に、金属導体3との密着性を上げるため、金属導体3の表面を粗化処理する。
粗化処理には、ブラスト処理や研磨等の物理的エッチングもあるが、立体的な配線パターンにおいては、酸やアルカリを用いた化学的エッチングの方が、効率的に処理できるので、より好ましい。
このうち、金属導体3に電解銅箔を使用したケースでは、化学的エッチングとして、蟻酸やアミン系錯化剤を主成分とするソフトエッチング等で行えば良い。
但し、圧延銅箔で形成したケースでは、電解銅箔よりも粗化されにくいため、上記のソフトエッチングでは十分な粗化がされず、密着性を確保できない可能性がある。このため、圧延銅箔を使用したケースでは、前処理として黒化処理等で行うことが好ましい。もちろん、電解銅箔を黒化処理等で粗化処理しても良い。
絶縁樹脂層4を形成する絶縁樹脂としては、金属導体間の絶縁性を確保できるものであれば、プリプレグのようなシート状態でもワニス状態のものでも特に制限はないが、本構成では大電流が流れることで発熱することを考えると、耐熱性に優れたエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂の材料を使用することがより好ましい。
また、絶縁樹脂中には、ガラス織布やシリカ系フィラー、アルミナ等を含むことで、機械特性・電気特性が向上するだけでなく、大電流から発生する熱を効率よく放熱することができるため、より好ましい。
形成方法としては、シート状態の材料は真空積層プレスにて加工すれば、ボイドなく形成できるので好ましい。また、ワニス状態の材料であれば、スクリーン印刷法、カーテンコート法、ロールコータ法等により行うことができるが、両面を効率よく塗布できることを考慮すると、ロールコータ法を使用することがより好ましい。
この際、塗布方法によって、絶縁樹脂層にボイドを含まず、なおかつ、塗布した絶縁樹脂が流れ落ちずに基板上に多く留まるために、絶縁樹脂の粘度をそれぞれ最適なものに調整する必要がある。
例えば、塗布方法はロールコータ法を採用し、絶縁樹脂にシリカ系フィラー入りのエポキシ樹脂を使用した場合、絶縁樹脂の粘度は50dPa・sから120dPa・sに粘度調整したものを使用することが好ましい。
また、金属導体3が35μm以上の厚みになると、一回の塗布では金属導体間において、金属導体3の高さまで埋めることができないことがある。
この場合は、十分な樹脂量になるまで塗布を繰り返すことで対応することができる。複数回塗布を繰り返す場合は、一回目に形成した絶縁樹脂の表面が乾いていない状態で塗布しても効率よく厚くすることはできない。よって、一回目の絶縁樹脂の表面が、乾いた状態で塗布することで効率よく、絶縁樹脂層4を厚くすることができる。
また、一回目の塗布した絶縁樹脂が、完全に硬化した状態よりも、半硬化の状態(樹脂の反応率が30〜50%程度)、いわゆるBステージの状態の方が、この上に塗布する絶縁樹脂との密着性は向上するため、この状態で塗布することがより好ましい。
塗布する絶縁樹脂量としては、金属導体3間をボイドなく埋め、さらに金属導体3の高さよりも、絶縁樹脂層4が高くなるように樹脂が塗布されていることが望ましい。つまり、金属導体3の表層も、絶縁樹脂で覆われていることになる。
但し、金属導体3上の絶縁樹脂量が多いと、例えば、平滑化処理をバフ研磨のような物理研磨で行う場合、金属導体3の表層を露出させるために、研磨を多くしなければならない。これは、基板の歪みが大きくなることになるので、製造上の問題が生じやすくなる。よって、金属導体3上を僅かに覆う程度である方が、望ましい。
具体的には、3〜20μm、好ましくは3〜10μm、より好ましくは3〜5μmであれば、研磨回数も少なく、歪みも小さくなるので、望ましい。
また、絶縁樹脂を塗布した後、積層プレス等の熱圧着を行うことで、金属導体3上の樹脂量を減らし、非金属導体部の樹脂厚と同じにすることができ、効率的に平滑面を得ることができる。しかも、真空状態で熱圧着することで、例えば、樹脂中にボイドが含まれていたとしても、これを除去することもできるので、より好ましい。
次に、図1(d)及び、図4(d)に示したように、平滑化処理を行うことで、上面が平滑でほぼ同じ高さの金属導体3a及び、絶縁樹脂層4aを得る。
平滑化する方法としては、特に制限はないが、金属と樹脂をほぼ同じように研磨できるバフ研磨やベルト研磨等の物理研磨により行うことが好ましい。
次に、図2(e)及び、図5(e)に示したように、ソフトエッチングを行うことで、上面がすり鉢状の凹部となった金属導体3bを得る。これは金属導体の側壁は絶縁樹脂層4aに接着しているため、金属導体の中央付近よりもエッジ部周辺のエッチング速度が遅くなり、その結果、得られる形状である。
エッチング量としては、すり鉢状の凹部が形成できれば特に制限はないが、凹部の最深部Gとエッジ部5の段差D1が、この上に積層する絶縁接着シートの厚みよりも薄くなるようにエッチングすることが好ましい。
これは、後の化学処理工程において、絶縁接着シート開口部を形成する際、すり鉢状凹部内の絶縁接着シート量が少ないほど、化学処理時間を短くすることができるためである。
ソフトエッチング液には、金属をエッチングできるものであれば、特に制限はないが、金属に銅を使用した場合、本工程においては、上面がすり鉢状の凹部としたいので、塩化第二鉄溶液や塩化第二銅溶液等の拡散律速タイプのエッチング液を使用することが望ましい。
ちなみに、ソフトエッチングにより、金属導体3bの表面は多少粗化されることになるが、この上に積層形成される絶縁接着シートは、最終的に除去されることになるため、表面の粗化程度は小さいことが望まれる(絶縁接着シートの接着性が低くなるため、より短時間で除去することが可能)。このため、本構成においては、金属導体に圧延銅箔を使用することで、表面の粗化程度は小さくなるので、より好ましい(圧延銅箔は、電解銅箔と比べて、表面が粗化されにくい傾向があるため)。
次に、図2(f)及び、図5(f)に示したように、絶縁樹脂層4aの薄膜化処理を行うことで絶縁樹脂層4bとし、金属導体3bのエッジ部5を突出させる。
この時、絶縁樹脂層の薄膜化する程度については、エッジ部5を突出させることができれば特に制限はないが、エッジ部5と絶縁樹脂層4bとの段差部D2が、この上に積層する絶縁接着シート6の厚みよりも薄ければ、積層時にボイドが発生しにくくなるため、より好ましい。
また、先に形成した段差部D1よりも、段差部D2は大きく形成することが好ましい。それは、後述でも詳しく説明するが、絶縁樹脂層上の絶縁接着シートの方が厚いことで、化学処理液がエッジ外部へ浸入しても、絶縁樹脂層に到達するまでの時間が長くなるため、ダメージを与えるリスクを低減させることができるためである。
薄膜化処理については、絶縁樹脂層を選択的に除去できれば、特に制限はないが、アルカリ性過マンガン酸溶液で湿式処理することで、短時間に薄膜化できるので好ましい。
次に、図2(g)及び、図5(g)に示したように、絶縁接着シート6と金属箔7を順次積層する。この時、金属導体3bのエッジ部5を境界に、上面がすり鉢状の凹部内にある絶縁接着シート6aと、薄膜化された絶縁樹脂層4b上にある絶縁接着シート6bとに区画化される。
積層する材料の形態としては、絶縁接着シート6と金属箔7がそれぞれ分かれていても、一体化したRCCタイプのものでも良い。
絶縁接着シート6は、後工程の化学処理にて開口部を形成できるものであれば、特に制限はないが、厚みについては薄い方が、短時間で効率よく開口部を形成できるので、より好ましい。
具体的には、金属導体3b上における積層後の厚みが、2μmから20μm、より好ましくは2μmから10μm、さらに好ましくは2μmから5μmのものを使用することが好ましい。但し、先にも記載したが、エッジ部5と絶縁樹脂層4bとの段差D2よりも薄いと、絶縁樹脂層4b上でボイド等が発生するリスクがあるので、段差部D2よりは厚い方が好ましい。
樹脂の種類としては、化学処理により開口部を形成できるものであれば、特に制限はないが、絶縁樹脂層4bとの密着性を考慮すると、同一系統の樹脂(主に、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂)を含んでいることが好ましい。
例えば、エポキシ樹脂とエラストマーからなる熱硬化性樹脂(例えば、三井金属社製の「プライマーレジン」)等が、積層時の凹凸にも柔軟に追従でき、破れ等も発生しないので、厚みの薄いものが採用できる。
この絶縁接着シート6は、弾性率が3GPa以下であれば、絶縁接着シート6が薄くなっても、冷熱サイクル試験のような過酷な試験においても、絶縁信頼性を低下させるクラックが発生し難いため、より好ましい。
次に、図2(h)及び、図5(h)に示したように、金属導体3b上の金属箔7をエッチングにより除去し、ウィンドウエッチング部W1を形成する。
ウィンドウエッチング部W1の幅としては、内層にある金属導体3bのエッジ部5よりも内側に形成されていれば特に制限はないが、後工程における開口部形成時の化学処理液や導電化処理時のめっき液の供給等を考慮すると、なるべく広い幅であることが好ましい。
具体的には、金属導体3bのエッジ部間よりも、200μm、好ましくは150μm、より好ましくは100μm小さく開口することで、ウィンドウエッチング部W1の幅は大きく確保することができ、化学処理液による絶縁接着シート6aの除去等を効率良く行うことができる。
次に、図3(i)及び、図6(i)に示したように、ウィンドウエッチング部W1から露出した金属導体3b上にある絶縁接着シート6aを化学処理により除去し、絶縁接着シート開口部V1を形成する。
この時、化学処理液は、金属導体3bのエッジ部5が金属箔7に近接しているため、エッジ部5から外側へは浸入し難くなっている。その結果、薄膜化された絶縁樹脂層4b上にある絶縁接着シート6bが過剰に除去され難くなるため、絶縁樹脂層4bが化学処理液によりダメージを受けることを回避することができる。
つまり、化学処理時間を精密に制御しなくても、エッジ部5を境界にしてすり鉢状凹部内の絶縁接着シート6aを集中的に除去できる構造となっている。
化学処理としては、絶縁接着シート6aが除去できれば、特に制限はないが、アルカリ性過マンガン酸溶液を使用した湿式処理であれば、効率よく絶縁接着シート6aを除去できるので、より好ましい。
これにより、絶縁接着シート開口部V1を化学処理により一括形成することが可能となるため、1穴毎にレーザやドリルで加工する方法と比較して、飛躍的に生産効率を向上させることができる。
ちなみに、開口部をレーザやドリルで加工した場合、熱による樹脂の溶出や衝撃による樹脂の飛散があり(特に、本構成のような配線パターン上の大面積範囲の樹脂を除去する場合、レーザ出力も大きくなる傾向であり、樹脂の飛散量が多くなりやすい)、これらを除去する工程が追加される。また、飛散した樹脂は、炭化等しており除去し難いため、導体上に残りやすく、この場合、導通信頼性を低下させる要因となり得る(例えば、レーザにより飛散したポリイミド樹脂は、ウェット処理では除去できず、乾式法であるプラズマ処理で除去する必要がある)。しかし、本発明の方法であれば、このような懸念も払拭することができる。
次に、図3(j)及び、図6(j)に示したように、表裏を接続するためのTHとなる貫通孔8を形成し、その後、ソフトエッチングを行うことで、絶縁接着シートの開口部V1上にある金属箔7の端部形状を曲面にし、ウィンドウエッチング部W1より開口幅が大きなウィンドウエッチング部W2を得る。
このように端部形状を曲面にすることで、後の金属膜を形成する際、例えば、めっき液の流入や金属ペーストの充填がされ易くなるため、金属膜中にボイドが発生し難くなる。
ソフトエッチング液としては、金属をエッチングできるものであれば特に制限はないが、本工程においては、開口部V1内部からも均一にエッチングされることが好ましいので、ペルオキソ二硫酸ナトリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウム等の水溶液や、硫酸に過酸化水素を加えた水溶液等の反応律速タイプのエッチング液を使用することが望ましい。
次に、図3(k)及び、図6(k)に示したように、導電化処理により、全表面に金属膜9を形成する。導電化処理としては、特に制限はないが、めっきにより行えば、絶縁接着シートの開口部V1のような複雑な形状にも効率よく、金属膜9を充填することができるので、より好ましい。
この場合、貫通孔8内や開口部V1壁面に、非導体である絶縁樹脂が露出しているので、化学めっきと、電解めっきにより、金属膜9を厚く形成することになる。
形成する金属膜9としては、特に制限はないが、導電化処理にめっきを使用することを考慮し、かつ、高い導電率で、コストメリットもある銅を選択することが好ましい。
この場合、析出する金属膜9の厚みとしては、特に制限はないが、板厚と貫通孔の導通信頼性の関係から、板厚が0.8mm未満であれば、表層部で20μm以上、0.8mm以上であれば、25μm以上であることが好ましい。
上限についても、特に制限はないが、その後の薄導体配線パターンで、微細配線パターンを形成する場合は、35μm以下であることが好ましい。
最後に、図3(l)及び、図6(l)に示したように、エッチングにより回路形成を行い、図示しないソルダーレジストを塗布することで、表裏を接続するTH及び、厚導体配線パターン11と薄導体配線パターン10が同一層で混成したプリント配線板Pが得られる。
上記により作製された本発明の第一の実施形態に係るプリント配線板Pの概略断面説明図を図7(a)に示すと共に、その要部拡大図を図7(b)に示す。また、従来のプリント配線板の製造方法と上記の本発明方法における化学処理工程時の現象を示した概略断面説明図を図8に示す。
図7(b)より、厚導体配線パターン11は、金属導体3b、金属箔7及び、金属膜9からなり、薄導体配線パターン10は、絶縁接着シート6b上にある金属箔7と、金属膜9からなることが確認できる。このうち、厚導体配線パターン11においては、金属導体3bのすり鉢状の凹部内に、金属膜9が充填されているため、従来と比較して、大電流に有利な大きな断面積の配線パターン構造となっている。しかも、その周辺にある絶縁樹脂層4bにはダメージがない。
これは、本発明プリント配線板Pの厚導体配線パターン11における金属導体3bの上面を、すり鉢状の凹部とし、エッジ部5を形成したことで実現可能となる。これについて、図8を用いてより詳細に説明する。
まず、従来のプリント配線板の製造方法において、化学処理により絶縁接着シート6に開口部を設けようとすると、ウィンドウエッチング部W1から供給される化学処理液は、金属導体3a上の絶縁接着シート6を除去し始める。しかし、金属導体3a上の上面を全て露出するために処理を継続していくと、化学処理液が金属導体3a上を通過し、本来除去したくない箇所まで到達して、さらに絶縁樹脂層4aを除去し始めてしまう。これは、化学処理工程時における従来プリント配線板の金属導体3aの上面が平滑構造となっていたため、化学処理液が容易に浸入してしまうからである。このため、精密な時間管理のもと処理を行うことになるが、上記のようなリスクを考慮すると、処理時間は短く設定することになり、金属導体3a上には絶縁接着シート6が多く残ってしまうことになる。これでは、レーザ等で開口部を設ける場合と大差がない構成となってしまう。よって、従来の構成では、金属導体3a上の絶縁接着シート6を選択的に除去した構成を得ることは、かなり困難である。
一方、本発明のプリント配線板の製造方法においては、化学処理工程時に、上面がすり鉢状の凹部の金属導体3b構造となっているので、ウィンドウエッチング部W1から供給される化学処理液が、金属導体3b上から外側に向かう箇所は、エッジ部5と金属箔7が近接しているため、狭くなっており、容易に化学処理液は浸入できない。また、すり鉢状の凹部としたことで、エッジ部5に向けて徐々に化学処理液が入り難くなっているため、必然的に化学処理液の供給量は少なくなる(また、供給量が少なくなる箇所にある絶縁接着シートも少ない)。このため、化学処理工程において精密な時間制御をしなくても、化学処理液が金属導体3b上から外側に浸入して、絶縁樹脂層4bを溶出するリスクを低減することができる。
よって、接着シート開口部V1形成に、生産効率の高い、化学処理工程を採用でき、金属導体上に不要な絶縁接着シートを集中的に除去できるため、従来よりも大きな断面積の厚導体配線パターン11を効率よく形成することが可能となった。
また、本発明のプリント配線板においては、薄導体配線パターン10の密着性は、加工条件ではなく、絶縁接着シート6と金属箔7との積層による接着性によりなされるため、最適な材料を選択することで、十分な密着性を確保することが出来る。よって、薄導体配線パターン10と絶縁接着シート6bとの界面凹凸も小さくでき、より微細な配線パターン形成が可能となる。
さらに、絶縁接着シート6bを設けたことで、裾引きの大きな厚導体配線パターン11と、薄導体配線パターン10を従来よりも近づけられる点からも高密度化を図ることができる。
続いて本発明のプリント配線板の第二の実施形態を図9から図12により説明する。
この構成のポイントは、図9に示したように、エッジ部5が金属箔7に接触している点である。第一の実施形態では、エッジ部5と金属箔7の間は近接している状態であった。つまり、化学処理液が浸入する余地のある構成なため、絶縁接着シート6bも一部除去されることがあった。
しかし、この構成とすることで、金属導体3bのすり鉢状凹部内にある絶縁接着シートと、薄膜化された絶縁樹脂層4b上にある絶縁接着シート6bを完全に分離することができる。その結果、図10に示したように、化学処理工程時において、化学処理液がエッジ部5から外側に浸入することを完全に抑制することができる。
つまり、絶縁樹脂層4bはもちろん、絶縁接着シート6bも全く除去されることなく、金属導体3b上の絶縁接着シートのみを完全に除去できるようになる。よって、大きな断面積の厚導体配線パターン11を、より確実に安定して製造することが可能となる。
この第二の実施形態に係るプリント配線板の製造方法としては、第一の実施形態に係るプリント配線板の製造方法とほぼ同じであるが、金属箔7と絶縁接着シート6を積層する際に、エッジ部5と金属箔7とを接触するように加工する必要がある。
これを実現するためのポイントは、絶縁接着シート6の厚みtの設定にある。図11に示したように、エッジ部5を突出したことで、エッジ部5と絶縁樹脂層4bとの段差部D2が形成される。この上に絶縁接着シート6と、金属箔7を積層することになるが、その際、絶縁接着シート6の厚みtを段差部D2と同等の厚みのものを選択する。
具体的には、段差部D2との厚みの差が、+10μm以内、好ましくは+5μm以内、より好ましく+3μm以内であることが望ましい。これは、図12(a)に示すように、例えば、絶縁接着シートの厚みtが、段差部D2よりも極端に薄い場合(t<<D2)、積層前からエッジ部5と金属箔7が接触し、この状態で更に積層を行うと、エッジ部5は容易に潰れて平坦化されてしまい、絶縁接着シートを区画化できなくなってしまう。つまり、選択的に絶縁接着シートを除去できない構成となってしまう。
また、図12(b)に示したように、段差部D2より極端に厚い場合は(t>>D2)、エッジ部5と金属箔7を接触させることができない可能性があり、また、これを接触させようとすると、積層条件を精密に制御しなければならない。
よって、第二の実施形態に係るプリント配線板を得ようとする場合は、図12(c)に示したように、絶縁接着シート6の厚みtをエッジ部5と絶縁樹脂層4bとの段差部D2に、近い厚み材料を選択することが好ましい(t≒D2)。これを満たす材料を選択することで、エッジ部5と金属箔7は最初から近接した状態にすることができ、積層条件もエッジ部5が金属箔7に接触する程度の圧力で加圧すれば、第二の実施形態のプリント配線板を容易に得ることができるので好ましい。
また、第二の実施形態に係るプリント配線板とすることで、金属導体上の絶縁接着シートを、更に、容易に除去できる構成をとることが可能になる。それは、図13に示したように、絶縁樹脂層4cを半硬化状態(Bステージ)とし、この上に、硬化剤を含まない絶縁接着シート6cと金属箔7を用意し、積層加工を行う方法である(図13(a)参照)。
これにより、絶縁樹脂層4cに含まれている硬化剤Hが、硬化剤を含まない絶縁接着シート6cに供給され、積層後には硬化した絶縁接着シート6dとなる。このとき、金属導体3b上には、エッジ部5と金属箔7が接触し、硬化剤が供給されないため、金属導体3b上には未硬化状態の絶縁接着シート6cが配置されることになる(図13(b)参照)。
つまり、絶縁樹脂層4d上の領域Aの絶縁接着シート6dは硬化状態となり、金属導体3b上の領域Cの絶縁接着シート6cは、未硬化状態となっている(図13(b)、(c)参照)。
この状態で化学処理にて絶縁接着シート開口部を形成すると、除去される箇所の絶縁接着シート6cは、未硬化状態であるため、短時間で容易に選択除去することができる。よって、更に生産性を向上させることができる。
上記のような絶縁樹脂層4cから硬化剤をもらって絶縁接着シート6cを硬化させる方法では、硬化剤が十分に供給される厚みにする必要がある。この構成での絶縁接着シート6cの厚みは、2μm以上10μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以上5μm以下であることがより好ましい。
硬化剤Hの種類としては、特に制限はないが、例えば、絶縁樹脂にエポキシ樹脂系を使用した場合、ジシアンジアミドやノボラック型フェノール樹脂等を適用することが可能である。このうち、ノボラック型フェノール樹脂は、窒素原子を含んでおらず、マイグレーションの発生要因となるアンモニウムイオンの発生源を有していないため、絶縁信頼性を向上することができるのでより好ましい。
この方法をもし従来のプリント配線板に適用すると、図14(a)から(c)に示したように、硬化剤Hは、上面が平滑な金属導体3a上へ容易に浸透していき、金属導体3a上に硬化した絶縁接着シート6dが形成されてしまう。しかも硬化剤Hの浸透領域をコントロールすることは難しく、絶縁接着シートは、完全硬化しているA領域、硬化している部分と未硬化の部分が混成したB領域、未硬化のC領域が、毎回同じ配分で形成されることはなく、再現性に乏しい生産方法となってしまう。
続いて本発明のプリント配線板の第三の実施形態について図15及び、図16を用いて説明する。この構成のポイントは、特徴の異なるめっきを組み合わせて金属膜を形成した点である。
貫通孔がある基板において、金属膜をめっきにより形成する場合、めっきの種類としては、通常スローイングパワーに優れるハイスローめっきを選択することになる。これは、ハイスローめっきが、均一電着性に優れるため、貫通孔内にも均一に金属膜を形成することが可能なためである。この場合、絶縁接着シート開口部V1の表層部の金属膜9aには大きな凹みd1が生じることになる(図15参照)。このため、厚導体配線パターン11の断面積は、凹みd1の分だけ小さくなってしまうことになる。また、このような凹みd1がある箇所に部品を実装するような場合は、はんだボイド等が発生する可能性が高くなる。
そこで、表層部の凹みを低減するために、フィルドビアめっきを活用する。フィルドビアめっきは、ビアを優先的に埋めるように金属膜が析出する特徴がある。このため、本発明構成においては、絶縁接着シート開口部V1を優先的に埋めるように金属膜が析出することになる。よって、絶縁接着シート開口部V1上の表層部の凹みを低減することが可能となる。
しかし、フィルドビアめっきは、スローイングパワーが劣るため、貫通孔に対するめっき付き回り性は悪い。そこで、貫通孔がある基板においては、フィルドビアめっきにて金属膜9bを形成後に、ハイスローめっきを行い、金属膜9aを形成させる(図16参照)。
上記のように、異なる特徴を持つめっきを組み合わせて金属膜を析出させることで、表層部の凹みd2が小さく、かつ、貫通孔へのめっき付き回りも良好なプリント配線板が得られる。
めっきにより析出する金属膜としては、特に制限はないが、銅であれば、高い導電率で、コストメリットもあるので好ましい。
続いて本発明のプリント配線板の第四の実施形態を図17により説明する。この構成のポイントは、絶縁接着シート開口部を金属ペースト12aで充填した点である。
前記第三の実施形態では、表面の凹みを低減するため、特徴の異なるめっきを組み合わせることで対応していた。しかし、この方法では、全面にめっき膜が形成されるため、表層部の金属膜が厚くなってしまう。これは、薄導体配線パターン10の導体厚h2が厚くなることを意味しており、結果として微細配線パターン形成には不利な状態となってしまう(図16参照)。
そこで、図17に示したような絶縁接着シート開口部を金属ペースト12aで充填した構成とする。
この構成であれば、金属ペースト12aは絶縁接着シート開口部にのみ充填されるため、薄導体配線パターン10の導体厚みh3は、金属箔7と金属膜9のみで構成される。よって、微細配線パターン形成も可能であり、しかも、表層の凹みd3も低減することができる。
この構成の製造方法を図18に示す。まず、図18(a)に示すように、絶縁接着シート開口部V1を形成し、ウィンドウエッチング部W2とした後、図18(b)に示すように金属ペースト12を充填する。金属ペースト12を充填する方法としては、特に制限はないが、スクリーン印刷やディスペンサー等で行えば良い。
金属ペースト12としては、導通が確保できるものであれば特に制限はないが、銅または銀を含むものであれば、導電率も高いため、大電流が流れる厚導体配線パターン11の一部を形成する材料として好ましい。
次に、金属ペースト12をベーキング等により硬化した後、図18(c)に示したように、研磨により平滑化処理を行い、表面が平滑な金属ペースト12aとする。研磨方法としては、特に制限はないが、バフ研磨であれば、比較的面内を平滑で均一に処理できるので好ましい。その際、金属箔も同時に研磨されるように調整することで、薄導体配線パターンの導体厚をより薄型化できるため、微細配線パターン形成には有利な構成となる。
次に、図18(d)に示したように全面にめっきを行い、その後、回路形成することで、表層の凹みd3が小さく、かつ、薄導体配線パターンにおいて、微細配線パターン化が容易なプリント配線板が得られる。
本発明構成におけるTHについては、これまで金属導体と接続していない構成で説明してきたが、THが金属導体と接続されていても当然構わない。この場合も、図19(a)に示すように金属導体3b上の絶縁接着シートは除去された構成をとり、THは金属導体3bと、金属箔7と、金属膜9が接続された構造となる。また、この上にプリプレグ13を積層した多層構成において、内層位置に金属導体3bを配置する構成については、図19(b)に示したような構成となる。
また、図20(a)に示したように、金属箔を含まず、金属導体3bと金属膜9からなるTHを構成することもできる。これは、回路形成時にTH周辺の金属箔をエッチング除去することで形成可能となる。もちろん、プリプレグ13を積層した多層構成においても、同様の構成とすることができる(図20(b)参照)。
なお、図20(a)に示したような表層に金属導体を形成した構成については、金属箔7がない分だけ、他の配線パターンから低い位置にTHの表層が存在することになる。これは例えば、THに高さのある部品を挿入するようなケースにおいては、低背化することができる。
本発明を説明するに当たって、主に両面構成のプリント配線板を例にして説明したが、本発明の構成から逸脱しない範囲であれば、他の構成を利用することはもちろん可能である。
1:絶縁基材
2:金属導体材
3:金属導体
3a:上面が平滑な金属導体
3b:上面がすり鉢状凹部の金属導体
4:絶縁樹脂層
4a:上面が平滑な絶縁樹脂層
4b:薄膜化した絶縁樹脂層
4c:半硬化状の絶縁樹脂層
4d:硬化した絶縁樹脂層
5:エッジ部
6:絶縁接着シート
6a:上面がすり鉢状凹部の金属導体上にある絶縁接着シート
6b:薄膜化した絶縁樹脂層上にある絶縁接着シート
6c:硬化剤を含まない絶縁接着シート(未硬化状態)
6d:絶縁樹脂層の硬化剤が供給されたことで硬化した絶縁接着シート
7:金属箔
7a:研磨後の金属箔
8:貫通孔
9:金属膜
9a:ハイスローめっきにより形成された金属膜
9b:フィルドビアめっきにより形成された金属膜
10:薄導体配線パターン
11:厚導体配線パターン
12:金属ペースト
12a:研磨後の金属ペースト
13:プリプレグ
d1、d2、d3:厚導体配線パターン表層の凹み量
h1、h2、h3:薄導体配線パターン厚
t:絶縁接着シート厚
A:絶縁接着シート硬化部領域
B: 絶縁接着シート硬化部未硬化部混成領域
C:絶縁接着シート未硬化部領域
D1:金属導体上面におけるすり鉢状凹部の最深部とエッジ部位置との段差
D2:薄膜化した絶縁樹脂層表面と金属導体上面のエッジ部位置との段差
G:すり鉢状の凹部の最深部
H:硬化剤
P:本発明のプリント配線板
PT:金属導体トップ幅
Q1:従来のプリント配線板(特許文献1構成)
Q2:従来のプリント配線板(特許文献2構成)
TH:スルーホール
V1、V2、V3、V4:絶縁接着シート開口部
W1、W3:ウィンドウエッチング部
W2、W4:ソフトエッチング後のウィンドウエッチング部
X:過剰エッチング部

Claims (14)

  1. 同一層に厚みの異なる配線パターンを備えたプリント配線板であって、
    少なくとも、絶縁基材の一方の面に形成された上面にすり鉢状の凹部を有する金属導体と、
    当該絶縁基材上の金属導体非形成部に、当該金属導体の側面を覆い、かつ、当該金属導体のすり鉢状の凹部エッジ部よりも低い位置で形成された絶縁樹脂層と、
    当該金属導体と絶縁樹脂層との間に生じた段差部を埋めるように形成された、当該金属導体に対応する部分に開口部を有すると共に当該絶縁樹脂層よりも厚みの薄い絶縁接着シートと、
    当該絶縁接着シート上に形成された、当該金属導体よりも厚みの薄い金属箔と、当該金属箔の上面に導電化処理により形成された金属膜からなる薄導体配線パターンと、
    当該金属導体と、当該金属導体の上面側に位置する部分に形成された薄導体配線パターンとを、当該絶縁接着シートの開口部と、当該薄導体配線パターンにおける金属箔の当該絶縁接着シートの開口部に対応する位置に形成されたウィンドウ部を通して形成された金属膜により接続してなる厚導体配線パターンと、
    を有することを特徴とするプリント配線板。
  2. 当該絶縁接着シートの開口部が、当該絶縁接着シートの積層の際に同時に積層される回路形成前の金属箔と、当該金属導体のすり鉢状の凹部エッジ部とにより区画化された、当該すり鉢状の凹部内にある当該絶縁接着シートを、化学処理にて選択的に一括除去することによって形成されたものであることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
  3. 当該金属膜が、金属導体のすり鉢状の凹部を埋め込むための導電化処理によって形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載のプリント配線板。
  4. 当該金属箔に設けられたウィンドウ部の端面が、曲面となっていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載のプリント配線板。
  5. 当該金属導体のすり鉢状の凹部エッジ部に、積層により設けられた金属箔が接触していることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載のプリント配線板。
  6. 当該金属導体が、圧延銅箔からなることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載のプリント配線板。
  7. 当該導電化処理により形成される金属膜が、めっきからなることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載のプリント配線板。
  8. 当該導電化処理により形成される金属膜が、金属ペースト及び、めっきからなることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載のプリント配線板。
  9. 同一層に厚みの異なる配線パターンを備えたプリント配線板の製造方法であって、
    少なくとも、絶縁基材の一方の面に金属導体を形成する工程と、
    当該絶縁基材上の金属導体非形成部に、当該金属導体の側面を覆うように絶縁樹脂層を形成する工程と、
    当該金属導体と、当該絶縁樹脂層の表層が同一面となるように平滑化処理する工程と、
    当該平滑化処理することによって露出した金属導体にソフトエッチング処理を行うことで、当該金属導体の上面をすり鉢状の凹部とする工程と、
    当該金属導体の上面にすり鉢状の凹部を形成した後、絶縁樹脂層の薄膜化処理を行うことによって、当該金属導体と当該絶縁樹脂層との境界部に段差部を形成し、当該金属導体のすり鉢状の凹部エッジ部を突出させる工程と、
    当該金属導体と、当該絶縁樹脂層上に、当該絶縁樹脂層よりも厚みの薄い絶縁接着シートと、当該金属導体よりも厚みの薄い金属箔を順次積層することで、当該金属導体のすり鉢状の凹部エッジ部にある絶縁接着シートの厚みを薄くし、当該金属導体のすり鉢状の凹部内にある絶縁接着シートと、薄膜化された当該絶縁樹脂層上にある絶縁接着シートとを、区画化する工程と、
    当該金属導体上にある当該金属箔を除去し、ウィンドウ部を形成することで、当該すり鉢状の凹部内にある絶縁接着シートの表層を露出させる工程と、
    当該金属箔に形成したウィンドウ部を介して露出した、当該金属導体上面のすり鉢状の凹部内にある当該絶縁接着シートを、化学処理により一括除去することで開口部を形成する工程と、
    導電化処理することで当該絶縁接着シート上の当該金属箔上に金属膜を形成するとともに、当該開口部内に金属膜を充填し、当該金属導体と当該金属箔を当該金属膜により接続する工程と、
    当該絶縁接着シート上に積層された金属箔と金属膜とをエッチング処理することで、
    当該金属箔と金属膜からなる薄導体配線パターンと、
    当該金属導体と当該金属導体の上面側に位置する部分に形成された薄導体配線パターン及び、当該開口部に充填された金属膜からなる厚導体配線パターンを同時に形成する工程と、
    を有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
  10. 当該金属箔に設けられたウィンドウ部の端面を、ソフトエッチングにより曲面とする工程を有することを特徴とする請求項9記載のプリント配線板の製造方法。
  11. 当該金属導体のすり鉢状の凹部エッジ部が、当該エッジ部の上部に設けられる当該金属箔に接触するように積層する工程を有することを特徴とする請求項9又は10記載のプリント配線板の製造方法。
  12. 当該金属導体として、圧延銅箔を使用することを特徴とする請求項9〜11の何れか1項記載のプリント配線板の製造方法。
  13. 当該導電化処理を、めっき処理により行うことを特徴とする請求項9〜12の何れか1項記載のプリント配線板の製造方法。
  14. 当該導電化処理を、金属ペースト塗布及び、めっき処理の組み合わせにより行うことを特徴とする請求項9〜12の何れか1項記載のプリント配線板の製造方法。
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