JP4662732B2 - 石鹸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、室温下で固体であるチョコレートや石鹸等、水分を含有する加熱流動体を冷却固化させて冷却固化体を製造する方法に関し、例えば、加熱溶融した石鹸組成物を成形型に注入し、冷却固化することにより固化石鹸を製造する際、その加熱溶融した石鹸組成物を供給経路から成形型に供給する技術に関する。
この種の冷却固化体の製造方法には、例えば、以下に示す従来技術が知られている。
特許文献1の製造方法は、循環経路を流れる溶融石鹸を注入バルブからその流動圧力により成形型内に注入してその中で固化させるものである。
この製造方法においては、循環経路の圧力が高いと溶融石鹸が成形型内に噴出するため、循環経路の圧力を低くして運転する必要があると説明している。つまり溶融石鹸の粘度が低いと噴出がより起こりやすいため、外観のきれいな石鹸を製造することは困難である。
また、特許文献2の製造方法は、流動石鹸を注入ノズルから成形型の上部に注入する際、その注入ノズルが常に液面直上に位置するように、流動石鹸の充填量に応じて成形型を下降させる方法である。
この製造方法においては、流動石鹸の温度が40℃から70℃未満と比較的低温に維持するような比較的高粘度の流動石鹸を対象とし、流動石鹸を成形型内に注入する際に発生する“ジェッティグ”や“スネーキング”を防止する長いノズルを必要とするため装置が巨大化するという問題がある。また充填時に成形型内を真空化する技術の記載があるが、流動石鹸の温度が70℃以上である場合には、成形型内に溶融石鹸を供給開始する際、不連続な初期噴出が起こり、固化石鹸の外観が悪くなるという問題がある。
特許文献3の製造方法では、溶融石鹸を成形型内に供給する初期段階で低い速度で供給することにより、固化石鹸中に大きな気泡が存在しない技術が記載されている。しかしながら、成形型への溶融石鹸を供給する際に初期噴出が起こり、固化石鹸の外観が悪くなるという問題があった。
米国特許第2987484号明細書 国際公開第98/53039号パンフレット 特開2003−277798号公報
ところで、上記特許文献3の製造方法においては、加熱流動石鹸を循環経路から供給経路内に流入した後、その流入側を閉塞して供給経路を閉じた系にし、成形型内に加熱流動石鹸を吐出する段階で、成形型のバルブを開放してから、吐出側を開放して供給経路を開いた系にした直後に、ピストンにより、供給経路内の加熱流動石鹸を押し出すことにより、ノズルやバルブを介して成形型内に加熱流動石鹸を充填するようにしている。
しかしながら、この場合において、供給経路内には加熱流動石鹸を供給経路内に供給するための圧力がかかっている。一方成形型内は大気圧であるため、供給経路内の圧力と成形型内の気圧との差が大きくなっている。そのため、成形型のバルブを開放してから、吐出側を開放して供給経路を開いた系にした直後、ピストンを作動する前に、加熱流動石鹸がノズルから少量噴出することがあった。このような不連続な初期噴出は、加熱流動石鹸が噴出直後に成形型内面に接触することで直ちに冷却固化し、その少量の固化体が、その後に形成される固化石鹸の表面に現れ、固化石鹸の外観に悪影響を及ぼすおそれがあった。
従って、本発明の目的は、室温下で固体であるチョコレートや石鹸等、水分を含有する加熱流動体を成形型内に吐出する際、不連続な初期噴出を抑え、外観を損なわない冷却固化体を製造し得る製造方法を提供することにある。
本発明は、加熱流動体を流入口を介して供給経路内に流入し、該加熱流動体を該供給経路の吐出口から成形型内に吐出することにより、該成形型内で該加熱流動体を冷却固化させて冷却固化体を製造する方法であって、前記流入口を開き前記吐出口を閉じた状態で、前記供給経路内に所定量の前記加熱流動体を流入させる流入工程と、前記流入口及び前記吐出口を閉じた状態で、前記供給経路の容積を増加させることにより、前記加熱流動体の圧力を低下させる供給経路内減圧工程と、前記流入口を閉じ前記吐出口を開いた状態で、前記供給経路の容積を減少させることにより、前記加熱流動体を前記成形型に吐出させる吐出工程とを具備する冷却固化体の製造方法を提供することにより上記目的を達成したものである。
更に本発明は、加熱流動体を流入口を介して供給経路内に流入し、該供給経路の吐出口から成形型に吐出することにより、該成形型内で該加熱流動体を冷却固化させて冷却固化体を製造する方法であって、前記流入口を開き前記吐出口を閉じた状態で、前記供給経路内に所定量の前記加熱流動体を流入させる流入工程と、前記成形型内を密閉にした状態で、前記成形型内に気体を導入することにより、前記成形型内の圧力を増加させる成形型内加圧工程と、前記流入口を閉じ前記吐出口を開いた状態で、前記供給経路の容積を減少させることにより、前記加熱流動体を前記成形型に吐出させる吐出工程とを具備する冷却固化体の製造方法を提供することにより上記目的を達成したものである。
加熱流動体が含有している水分は、0.5〜80%、好ましくは1〜70%、更に好ましくは3〜50%であることが好ましい。ここで加熱流動体が含有する水分が0.5%より少ないと該加熱流動体の粘度が高く初期噴出が起こらない。80%より多いと得られる冷却固化体の硬度が低く、実使用に耐えるものが得られない。
水分を含有する加熱流動体の粘度は、20〜1900mPa・s、好ましくは50〜1500mPa・s、より好ましくは75〜1500mPa・sであることが好ましい。ここで粘度が1900mPa・sを超えると粘度が高いため、また20mPa・sより低いと供給経路内にかかる初期圧力が低いため、初期噴出がおこらない。ここで粘度の測定は、特開2002−167599号公報記載の方式に従う。
加熱流動体の温度は、20〜99℃、好ましく25〜95℃、更に好ましくは30〜90℃であることが好ましい。ここで流動体2の温度が40℃より低いと成形型内に流入した冷却固化体にフローマークが残り、99℃を超えると流動体に含まれる水分が気化するために冷却固化体の表面性を損なったり、匂いの劣化を起こしやすくなる為に好ましくない。
また加熱流動体の温度は、融点より1〜20℃、特に2〜10℃高い温度であることが好ましい。1℃より低い温度では、充分な流動性が得られなかったり、冷却固化体の結晶状態が一様でなくなったりするため、20℃より高い温度では加熱流動体の酸化や臭い劣化の面さらには冷却設備が大掛かりになる点で好ましくない。ここで融点とは、DSC(セイコーインスツルメンツ(株)社製、DSC220)において毎分2℃で室温から98℃ま
で昇温させた後、毎分2℃で室温まで降温測定した際に得られる熱分析パターンを解析して、最大の発熱ピークを示す温度のことである。ここで、冷却固化体を20mg採取して固体用アルミニウムセルに入れ、蓋をしてクランパーでクランプしたものを試料セルとした。
加熱流動体に10〜80%の気体を含有する場合、加圧された状態の加熱流動体の体積が大気圧状態の体積と比べ小さくなるため、本発明の効果が特に顕著になる。
ここで「気体含有率」は、気体を含有する前の加熱流動体の体積V1、導入した気体の体積V2より次式によって算出する。
式: 気体含有率(%)=V2÷(V1+V2)×100
加熱流動体に導入された気体は、微細な気泡(平均気泡径10〜2000μm)が一様に存在している状態である場合、特に本発明が有効に作用する。微細な気泡が一様に存在していないと、得られる冷却固化体の外観が損なわれたり、気泡を導入させた目的が充分に発揮できない場合がある。
ここに、「平均気泡径」は、冷却固化体をカッターで薄く切り出した試料にバックライトで透過光を当てながらマイクロスコープで観察して画像データを採取した後、画像処理ソフトImage-Pro Plus上でランダムに300気泡以上の気泡径(円相当径)の測定を行い、算術平均することで算出する。
成形型の温度は、室温またはそれ以下である。当然ながら温度が低いほど冷却速度が速くなる傾向がある。ただし−50℃以下では、冷却固化体内部と表面との冷却固化速度の差が大きくなり、冷却固化体内での硬度等の性能差が大きくなってしまうので好ましくない。
本願における圧力はゲージ圧、すなわち、大気圧をゼロとしたときの値である。
本発明によれば、供給経路の吐出口から加熱流動体を吐出する前に、供給経路内に流入した加熱流動体の圧力を、供給経路に流入した場合の初期状態の圧力より小さい圧力にし、成形型内の気圧との差を小さくすることにより、供給経路の吐出口を開放した際、加熱流動体の不連続な初期噴出を抑えることができる。その結果、連続吐出した加熱流動体により冷却固化体を成形でき、外観を損なわずに固化石鹸を成形することができる。
更に本発明によれば、供給経路の吐出口から加熱流動体を吐出する前に、成形型内に気体を導入し、成形型内の気圧を上げることで、供給経路内に流入した流動体の圧力との差を小さくすることにより、供給経路の吐出口を開放した際、加熱流動体の不連続な初期噴出を抑えることができる。その結果、連続吐出した加熱流動体により冷却固化体を成形でき、外観を損なわずに固化石鹸を成形することができる。
以下、本発明の冷却固化体の製造方法の最も好ましい一実施形態(第1実施形態)を詳細に説明する。
図1〜図4に示すように、本実施形態の固化石鹸(冷却固化体)の製造方法は、流動石鹸(加熱流動体)2を循環経路3から流入口4を介して供給経路5内に流入し、この流動石鹸2を供給経路5の吐出口6から成形型7に吐出することにより、キャビティ33内で流動石鹸2を冷却固化させて固化石鹸を製造する方法であって、次の工程を具備している。
流入工程では、流入口4を開き吐出口6を閉じた状態で、供給経路5内に所定量の流動石鹸2を流入させる。
供給経路内減圧工程では、流入口4及び吐出口6を閉じた状態で、供給経路5の容積を増加させることにより、供給経路5内にある流動石鹸2の圧力を低下させる。吐出工程では、流入口4を閉じ吐出口6を開いた状態で、供給経路5の容積を減少させることにより、流動石鹸2を成形型7に吐出させる。まず、かかる製造方法を実現する本実施形態のための固化石鹸の製造システム1の一例を示す。
図1又は図2に示すように、本実施形態の製造システム1は、循環系装置10と、供給系装置20と、成形装置30等からなる。
循環系装置10は、導入管11、循環管12、貯蔵タンク13等から構成されている。
導入管11は、この下流口が貯蔵タンク13に接続され、製造システム1の上流側で発泡させた流動石鹸2を貯蔵タンク13に導入するように配設されている。貯蔵タンク13は、導入管11から導入された流動石鹸2及び循環管12の下流口から流入した流動石鹸2を、モータ14の動力により回転翼15で攪拌しつつ、循環管12の上流口に流出するように構成されている。循環管12は、この上流口及び下流口が貯蔵タンク13に接続され、上流口から折り返し部まで延びる往路経路3aと、折り返し部から下流口まで延びる復路経路3bとからループ状に形成された循環経路3に沿って、貯蔵タンク13内の流動石鹸2をポンプ15の作動により循環するようになっている。循環管3の往路経路3aには、複数の供給系装置20及び成形装置30が連通可能に接続されている。
図2に示すように、供給系装置20は、循環経路3から成形型7内に供給される流動石鹸2の供給経路5を定めるもので、第1供給管21、第2供給管22、第1弁機構23、第2弁機構24等からなる。
第1供給管21は、循環管12と第1弁機構23とを接続しこれらを連通する管である。第2供給管22は、第1弁機構23と第2弁機構24とを接続しこれらを連通する管である。
第1弁機構23は、供給経路5の流入口4を開閉し、供給経路5内の流動石鹸2の容積を制御する機構で、シリンダ23a、ピストン23b、ロータリバルブ23c等から構成されている。
ロータリバルブ23cは、第2供給管22への供給を遮断した状態で供給経路5の流入口4を開く位置(図2参照)と、供給経路5の流入口4を閉じた状態で第2供給管22への供給を可能にする位置(図3、図4参照)とに、回転動力を受けて交互に選択するように構成されている。シリンダ23aは、一定量の流動石鹸2を貯蔵する中空円筒に形成されており、この内部に、ピストン23bがぴったり嵌合している。ピストン23bは、水平方向の動力を受けてシリンダ23a内を摺動することにより、シリンダ23a内の容積を増減させ、第2供給管22への流動石鹸2の供給量を制御するようになっている。
第2弁機構24は、供給経路5の吐出口6を開閉する機構で、ノズル24a、プラグ24b等から構成されている。ノズル24aは、先端に吐出口6を有する円錐筒状に形成されており、この内部に、円錐状のプラグ24bが嵌合可能に配置されている。プラグ24bは、水平方向の動力を受けて水平移動することにより、ノズル24aの吐出口6を内側から閉じる位置(図2、図3参照)と、流動石鹸2の吐出量を制御しつつノズル24aの吐出口6を開く位置(図4参照)とに選択するように構成されている。なお、供給系装置20には、加熱装置(図示しない)が設けられている。
成形装置30は、供給系装置20と連通した状態でこの内部に供給された流動石鹸2を冷却固化させて固化石鹸を成形するもので、一組の第1割型7a及び第2割型7bからなる成形型7、ゲート31、第3弁機構32等からなり、供給系装置20に対し接近又は離間した位置に移動するように構成されている。
第1割型7a及び第2割型7bは、互いに接近又は離間するように構成され、パーティングライン上で接合したこれらの内部には、固化石鹸の立体形状を形成するためのキャビティ33が形成されている。また、キャビティ33の上方位置のパーティングライン上には、エアベント用スリット(図示せず)が設けられている。なお、第1、第2割型7a、7bには、冷却装置(図示しない)が内蔵されている。
エアベント用スリットは、連続吐出された流動石鹸2が流出しないながらも、連続吐出にともない上昇したキャビティ33内圧力に応じ不要な気体を排出するに充分なものである。これにより、本発明の効果を充分に発揮するばかりか、流動石鹸2を冷却固化した後、不要部を処理する工程を必要としない。そのギャップは、50〜800μm、好ましくは100〜750μm、さらには125〜600μmである。同様の効果を得られるならばエアベント用スリットに限らず、金型の一部に多孔質材料を用いる等することも可能である。
ゲート31は、ノズル24aがぴったり嵌まるように、第1割型7aに形成されている。第1、第2割型7a、7bのパーティングラインの下部には、貫通孔34が形成されている。そして、ゲート31は、貫通孔34を介してキャビティ33に連通するようになっている。
第3弁機構32は、ノズル24aの吐出口6とキャビティ33とを開閉する機構で、シリンダ32bから動力を受けることにより、ゲートシャッター32aが貫通孔34内を上下動し、ノズル24aの吐出口6とキャビティ33とを遮断し、所定のキャビティ形状をなす位置(図2、図3参照)と、ノズル24aの吐出口6とキャビティ33とを連通する位置(図4参照)とに選択するように構成されている。
次に、本第1実施形態の固化石鹸の製造方法を説明する。
流入工程では、図2に示すように、まず、成形装置30を供給系装置20に接近させ、ゲート31にノズル24aを嵌める。この時、第2弁機構24の作動により、ノズル24aの内部にプラグ24bを嵌めてノズル24aの吐出口6を内側から閉じると共に、第3弁機構32の作動により、ゲートシャッター32aでノズル24aの吐出口6とキャビティ33とを遮断しておく。
次いで、シリンダ23a内に一定量の流動石鹸2を貯蔵させるため、第1弁機構23の作動により、ロータリバルブ23cを回転させ、供給経路5の流入口4を開き、ピストン23bを所定の位置に移動させる。これにより、循環管12内の流動石鹸2が、第1供給管21を通してシリンダ23a内に流入される。
供給経路内減圧工程では、図3に示すように、ノズル24aの吐出口6を閉じた状態のまま、第1弁機構23の作動により、ロータリバルブ23cを回転させ、供給経路5の流入口4を閉じた状態で、シリンダ23aと第2供給管22とを連通させる。これにより、流動石鹸2は、シリンダ23a、及び第2供給管22で一定の体積を占める。この時、供給経路5内にある流動石鹸2の圧力P1は、0.08〜1.5MPaであり、循環経路3内の圧力とほぼ同じになっている。
そして、ピストン23bを一定量だけ牽引することにより、シリンダ23aの容積の増加に伴い、流動石鹸2の体積増加させ、これにより、供給経路5内にある流動石鹸2の圧力P1を、P2(0.04〜0.3MPa)まで低下させる。
圧力P2が0.04MPaより低くするにはピストン23bの容量が大きくなり装置が巨大化してしまう。さらに圧力P2が0.3MPaより高いと圧力を低下させた効果が発現しない。
ここで、ピストン23bの牽引速度は、流入工程で移動させた際の速度の25〜300%であることが好ましい。25%より小さいと移動時間が長くかかりサイクル時間が長くなってしまい、300%を超えるとピストンを駆動させる装置が高価となってしまう為に好ましくない。
吐出工程では、図4に示すように、供給経路5の流入口4を閉じた状態のまま、第3弁機構32の作動により、ゲートシャッター32aを下方に退避させて、ノズル24aの吐出口6とキャビティ33とを連通する。その後、第2弁機構24の作動により、プラグ24bを一定量だけ牽引して、ノズル24aの吐出口6を開く。
この場合、ノズル24aの吐出口6が開いた瞬間において、流動石鹸2は、ノズル24a内の界面でキャビティ内気圧p1(ほぼ0MPa)を受けるが、第2工程で流動石鹸2の圧力がP1からP2まで低下し、流動石鹸2のキャビティ内気圧p1に対する吐出力が小さくなっているため、ノズル23aの吐出口6から不連続は初期噴出はしない。
その直後、ピストン23bを固化石鹸中に大きな気泡を生じさせない程度の速度で一定量だけ押し出すことにより、供給経路5の容積を減少させて、流動石鹸2をノズル24aの吐出口6から連続して吐出し、冷却された第1、第2割型7a、7bのキャビティ33に下部から徐々に充填する。そして、キャビティ33の内部で、流動石鹸2は、冷却固化し、固化石鹸に成形される。ここでピストン23bの押し出し速度は特開2003−277798号公報にあるようにすることが好ましい。
ここで、不連続に少量吐出した流動石鹸2が冷却固化するのを防止するという本来の目的から、流動石鹸2として、脂肪酸ナトリウムを10〜75重量%、好ましくは15〜70重量%、より好ましくは20〜50重量%含み、水分を10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%含む溶融石鹸組成物を用いた場合、本発明が有効に作用する。
以上述べたように、本実施形態によれば、ノズル24aの吐出口6から流動石鹸2を吐出する前に、流動石鹸2の圧力を、シリンダ23a及び第2供給管22に流入した場合の初期状態の圧力P1より小さい圧力P2にし、キャビティ33内の圧力(ほぼ0MPa)との差を小さくしたため、ノズル24aの吐出口6とキャビティ33とを連通した際、流動石鹸2の不連続な初期噴出を抑えることができる。その結果、連続吐出した流動石鹸2のみで固化石鹸を成形でき、外観を損なわずに固化石鹸を成形することができる。
本実施形態では、新たな装置を必要としないため、シンプルな設備とすることが可能である。さらに、微細気泡を含有した成形固化体を得る場合には、該微細気泡を小さく維持したまま成形固化体を得ることができ、微細気泡を含有する目的を高く維持できるので、より好ましい。
〔実施例1〕
以下に示す配合成分を用いて、特開平11−43699号公報に記載の方法に従い、無数の気泡が分散含有された流動石鹸を調整した。発泡には窒素ガスを用いた。得られた気泡入り流動石鹸の気体含有率は35.2%、粘度は158mPa・s(80℃)、平均気泡径は17μm、融点は72.9℃であった。
パーム核脂肪酸 27.5%
ミリスチン酸 3.0%
NaOH 5.3%
グリセリン 27.0%
ソルビトール(70%) 5.0%
ノニオン活性剤 2.0%
塩化ナトリウム 1.8%
硫酸ナトリウム 3.0%
水 25.4%
調整された気泡入り流動石鹸を用い、上述の工程に従い冷却固化体を製造した。流動石鹸の温度は78℃、各割型は10℃の冷却水で冷却しておいた。流動石鹸の冷却時間は2分とした。供給経路5内にある流動石鹸2の圧力P1は0.32MPa、シリンダ23aの容積を増加させた後の流動石鹸2の圧力P2は0.08MPaであった。
この様にして得られた冷却固化体の外観は良好なものであった。
以下、本発明の冷却固化体の製造方法の最も好ましい他の実施形態(第2実施形態)を詳細に説明する。
本第2実施形態の固化石鹸(冷却固化体)の製造方法は、上記第1実施形態と同様の工程を具備しているが、成形型内加圧工程のみが上記第1実施形態と異なる。本第2実施形態では、成形型内加圧工程で用いる成形装置30Aのみが上記第1実施形態と異なり、循環系装置10及び供給系装置20は上記第1実施形態と同様である。本実施形態の成形装置30Aの一例を示す。
図5及び図7(a)(b)に示すように、成形装置30Aは、第1割型7a及び第2割型7bからなる成形型7、ゲート31、第3弁機構32等から構成される点では上記同様であるが、第1、第2割型7a、7bの上半分が、Oリング36等を介在したシールド35で覆われ、第1、第2割型7a、7bのキャビティ33が密閉に保たれるようになっている。また、シールド35の上部には、三又状の管継手37が取り付けられており、この管継手37は、第1、第2割型7a、7bのパーティングライン上に形成されたエアベント用スリット(図示せず)を介してその内部に通じる内部経路と、給気弁を介して空気(気体)の給気系統38と、解放弁を介して空気の排気系統39とを形成している。
エアベント用スリットは、連続吐出された流動石鹸2が流出しないながらも、キャビティ33内と給気系統33と排気系統39との間とでは気体の出入りが容易な様になっている。これにより、本発明の効果を充分に発揮するばかりか、流動石鹸2を冷却固化した後、不要部を処理する工程を必要としない。そのギャップは、50〜800μm、好ましくは100〜750μm、さらには125〜600μmである。同様の効果を得られるならばエアベント用スリットに限らず、金型の一部に多孔質材料を用いる等することも可能である。
給気系統38は、給気弁の開放により、内部経路を通してキャビティ33の内部に空気を給気するようになっている。また、排気系統39は、キャビティ33の内部気圧が任意に設定された気圧(p1)を超えた場合、解放弁の作動により、キャビティ33の内部から内部経路を通して空気を排気するようになっている。
次に、本実施形態の固化石鹸の製造方法を説明する。
流入工程では、図5に示すように、上記第1実施形態と同様、ノズル24aの吐出口6とゲートシャッター32共に閉じた状態で、供給経路5の流入口4を開き、循環管12内の流動石鹸2を、シリンダ23a内に供給する。この場合、キャビティ33の内部気圧は、ほぼ大気圧(0MPa)になっている。
成形型内加圧工程では、図5又は図6に示すように、ノズル24aの吐出口6を閉じた状態のまま、供給経路5の流入口4を閉じて、シリンダ23aと第2供給管22とを連通させた状態にしておく。この場合、供給経路5内の流動石鹸2の圧力は、上記第1実施形態と同様、P1である。そして、給気系統38の作動により、キャビティ33内の気圧をp1にする。
ここでキャビティ33内の気圧p1は、供給経路5内の流動石鹸2の圧力P1と同じかそれ以下であることが好ましい。具体的には25%〜100%、好ましくは35〜98%、より好ましくは40〜95%であることが、本発明の効果を顕著にする。25%より低いと不連続は初期噴出が発生し、100%より高いと吐出工程でキャビティ33内の空気が供給経路5内に流入してしまうのでよくない。
吐出工程では、図6に示すように、上記第1実施形態と同様、ノズル24aの吐出口6とキャビティ33とを連通する。この瞬間において、流動石鹸2は、ノズル24a内の界面でキャビティの内の気圧p1を受けるが、キャビティに対する吐出圧が成形型内加圧工程を行うことでp1だけ小さくなっているため、ノズル24aの吐出口6から不連続な初期噴出しない。
その直後、ピストン23bの押し出しにより、流動石鹸2をノズル24aの吐出口6から連続して吐出し、キャビティ33の内部で固化石鹸を成形する。この時、ピストン23bの押し出しにより、キャビティ33の内部の気圧は上昇するが、排気系統39の作動により、気圧p1に維持される。
以上述べたように、本第2実施形態によれば、ノズル24aの吐出口6から流動石鹸2を吐出する前に、キャビティ33の内部の気圧を、初期状態の気圧p0より大きい気圧p1にし、供給経路5内の流動石鹸2の圧力P1との差を小さくしたため、ノズル24aの吐出口6を開放した際、流動石鹸2の不連続な初期噴射を抑えることができる。
その他の構成及び作用・効果については、上記第1実施形態と同様である。
本第2実施形態では、供給経路5内の体積を増やすことなく前記加熱流動体を前記成形型に吐出させるため、該吐出に要する時間を短く維持することが可能である。
さらに、微細気泡を含有した成形固化体を得る場合には、該微細気泡を小さく維持したまま成形固化体を得ることができ、微細気泡を含有する目的を高く維持できるので、より好ましい。
〔実施例2〕
前述の気泡入り流動石鹸を用い、上述の工程に従い冷却固化体を製造した。流動石鹸の温度は78℃、各割型は10℃の冷却水で冷却しておいた。流動石鹸の冷却時間は2分とした。供給経路5内にある流動石鹸2の圧力P1は0.32MPa、キャビティ33を加圧した後の気圧p2は0.25MPaであった。
この様にして得られた冷却固化体の外観は良好なものであった。
本発明は、上記実施形態に限られることなく、種々の変更等を行うことができる。
上記第1実施形態のように、供給経路内の流動体の圧力を低下させることと併せて、上記第2実施形態のように、成形型内の圧力を増加させることにより、流動体の圧力と成形型内の圧力との差を小さくすることもできる。
本発明において、供給経路の吐出口を開閉する機構は、上記第1、第2実施形態のような、第2、第3弁機構に限られない。
第1、第2実施形態の循環系装置の概略構成を示す図である。 第1実施形態の第1工程における供給系装置を示す図である。 第1実施形態の第2工程における供給系装置を示す図である。 第1実施形態の第3工程における供給系装置を示す図である。 第2実施形態の第1工程における供給系装置を示す図である。 第2実施形態の第2、第3工程における供給系装置を示す図である。 (a)は、第2実施形態の成形型の概略構成を示す側方断面図、(b)は、第2実施形態の成形型の概略構成を示す正面図である。
符号の説明
2 流動石鹸(加熱流動体)
3 循環経路
4 流入口
5 供給経路
6 吐出口
7 成形型

Claims (2)

  1. 加熱溶融した10〜80%の気体を含有する石鹸組成物を流入口を介して供給経路内に流入し、該石鹸組成物を該供給経路の吐出口から成形型内に吐出することにより、該成形型内で該石鹸組成物を冷却固化させて石鹸を製造する方法であって、
    前記流入口を開き前記吐出口を閉じた状態で、前記供給経路内に所定量の前記石鹸組成物を流入させる流入工程と、
    前記流入口及び前記吐出口を閉じた状態で、前記供給経路の容積を増加させることにより、前記石鹸組成物の圧力を低下させる供給経路内減圧工程と、
    前記流入口を閉じ前記吐出口を開いた状態で、前記供給経路の容積を減少させることにより、前記石鹸組成物を前記成形型に吐出させる吐出工程とを具備し、
    前記供給経路内減圧工程では、前記供給経路における前記石鹸組成物の圧力を、0.04〜0.3MPaにすることで、大気圧となっている前記成形型内の圧力との差を小さくする石鹸の製造方法。
  2. 加熱溶融した10〜80%の気体を含有する石鹸組成物を流入口を介して供給経路内に流入し、該石鹸組成物を該供給経路の吐出口から成形型に吐出することにより、該成形型内で該石鹸組成物を冷却固化させて石鹸を製造する方法であって、
    前記流入口を開き前記吐出口を閉じた状態で、前記供給経路内に所定量の前記石鹸組成物を流入させる流入工程と、
    前記成形型内を密閉にした状態で、前記成形型内に気体を導入することにより、前記成形型内の圧力を増加させる成形型内加圧工程と、
    前記流入口を閉じ前記吐出口を開いた状態で、前記供給経路の容積を減少させることにより、前記石鹸組成物を前記成形型に吐出させる吐出工程とを具備し、
    前記成形型内加圧工程では、前記成形型内の圧力を、大気圧から前記供給経路内の前記石鹸組成物の圧力に対し25〜100%の圧力に増加させることで、前記供給経路内の0.08〜1.5MPaとなっている前記石鹸組成物の圧力との差を小さくする石鹸の製造方法。
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