JP4662732B2 - 石鹸の製造方法 - Google Patents
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特許文献1の製造方法は、循環経路を流れる溶融石鹸を注入バルブからその流動圧力により成形型内に注入してその中で固化させるものである。
この製造方法においては、循環経路の圧力が高いと溶融石鹸が成形型内に噴出するため、循環経路の圧力を低くして運転する必要があると説明している。つまり溶融石鹸の粘度が低いと噴出がより起こりやすいため、外観のきれいな石鹸を製造することは困難である。
この製造方法においては、流動石鹸の温度が40℃から70℃未満と比較的低温に維持するような比較的高粘度の流動石鹸を対象とし、流動石鹸を成形型内に注入する際に発生する“ジェッティグ”や“スネーキング”を防止する長いノズルを必要とするため装置が巨大化するという問題がある。また充填時に成形型内を真空化する技術の記載があるが、流動石鹸の温度が70℃以上である場合には、成形型内に溶融石鹸を供給開始する際、不連続な初期噴出が起こり、固化石鹸の外観が悪くなるという問題がある。
また加熱流動体の温度は、融点より1〜20℃、特に2〜10℃高い温度であることが好ましい。1℃より低い温度では、充分な流動性が得られなかったり、冷却固化体の結晶状態が一様でなくなったりするため、20℃より高い温度では加熱流動体の酸化や臭い劣化の面さらには冷却設備が大掛かりになる点で好ましくない。ここで融点とは、DSC(セイコーインスツルメンツ(株)社製、DSC220)において毎分2℃で室温から98℃ま
で昇温させた後、毎分2℃で室温まで降温測定した際に得られる熱分析パターンを解析して、最大の発熱ピークを示す温度のことである。ここで、冷却固化体を20mg採取して固体用アルミニウムセルに入れ、蓋をしてクランパーでクランプしたものを試料セルとした。
ここで「気体含有率」は、気体を含有する前の加熱流動体の体積V1、導入した気体の体積V2より次式によって算出する。
式: 気体含有率(%)=V2÷(V1+V2)×100
ここに、「平均気泡径」は、冷却固化体をカッターで薄く切り出した試料にバックライトで透過光を当てながらマイクロスコープで観察して画像データを採取した後、画像処理ソフトImage-Pro Plus上でランダムに300気泡以上の気泡径(円相当径)の測定を行い、算術平均することで算出する。
図1〜図4に示すように、本実施形態の固化石鹸(冷却固化体)の製造方法は、流動石鹸(加熱流動体)2を循環経路3から流入口4を介して供給経路5内に流入し、この流動石鹸2を供給経路5の吐出口6から成形型7に吐出することにより、キャビティ33内で流動石鹸2を冷却固化させて固化石鹸を製造する方法であって、次の工程を具備している。
流入工程では、流入口4を開き吐出口6を閉じた状態で、供給経路5内に所定量の流動石鹸2を流入させる。
供給経路内減圧工程では、流入口4及び吐出口6を閉じた状態で、供給経路5の容積を増加させることにより、供給経路5内にある流動石鹸2の圧力を低下させる。吐出工程では、流入口4を閉じ吐出口6を開いた状態で、供給経路5の容積を減少させることにより、流動石鹸2を成形型7に吐出させる。まず、かかる製造方法を実現する本実施形態のための固化石鹸の製造システム1の一例を示す。
循環系装置10は、導入管11、循環管12、貯蔵タンク13等から構成されている。
導入管11は、この下流口が貯蔵タンク13に接続され、製造システム1の上流側で発泡させた流動石鹸2を貯蔵タンク13に導入するように配設されている。貯蔵タンク13は、導入管11から導入された流動石鹸2及び循環管12の下流口から流入した流動石鹸2を、モータ14の動力により回転翼15で攪拌しつつ、循環管12の上流口に流出するように構成されている。循環管12は、この上流口及び下流口が貯蔵タンク13に接続され、上流口から折り返し部まで延びる往路経路3aと、折り返し部から下流口まで延びる復路経路3bとからループ状に形成された循環経路3に沿って、貯蔵タンク13内の流動石鹸2をポンプ15の作動により循環するようになっている。循環管3の往路経路3aには、複数の供給系装置20及び成形装置30が連通可能に接続されている。
第1供給管21は、循環管12と第1弁機構23とを接続しこれらを連通する管である。第2供給管22は、第1弁機構23と第2弁機構24とを接続しこれらを連通する管である。
ロータリバルブ23cは、第2供給管22への供給を遮断した状態で供給経路5の流入口4を開く位置(図2参照)と、供給経路5の流入口4を閉じた状態で第2供給管22への供給を可能にする位置(図3、図4参照)とに、回転動力を受けて交互に選択するように構成されている。シリンダ23aは、一定量の流動石鹸2を貯蔵する中空円筒に形成されており、この内部に、ピストン23bがぴったり嵌合している。ピストン23bは、水平方向の動力を受けてシリンダ23a内を摺動することにより、シリンダ23a内の容積を増減させ、第2供給管22への流動石鹸2の供給量を制御するようになっている。
エアベント用スリットは、連続吐出された流動石鹸2が流出しないながらも、連続吐出にともない上昇したキャビティ33内圧力に応じ不要な気体を排出するに充分なものである。これにより、本発明の効果を充分に発揮するばかりか、流動石鹸2を冷却固化した後、不要部を処理する工程を必要としない。そのギャップは、50〜800μm、好ましくは100〜750μm、さらには125〜600μmである。同様の効果を得られるならばエアベント用スリットに限らず、金型の一部に多孔質材料を用いる等することも可能である。
流入工程では、図2に示すように、まず、成形装置30を供給系装置20に接近させ、ゲート31にノズル24aを嵌める。この時、第2弁機構24の作動により、ノズル24aの内部にプラグ24bを嵌めてノズル24aの吐出口6を内側から閉じると共に、第3弁機構32の作動により、ゲートシャッター32aでノズル24aの吐出口6とキャビティ33とを遮断しておく。
次いで、シリンダ23a内に一定量の流動石鹸2を貯蔵させるため、第1弁機構23の作動により、ロータリバルブ23cを回転させ、供給経路5の流入口4を開き、ピストン23bを所定の位置に移動させる。これにより、循環管12内の流動石鹸2が、第1供給管21を通してシリンダ23a内に流入される。
圧力P2が0.04MPaより低くするにはピストン23bの容量が大きくなり装置が巨大化してしまう。さらに圧力P2が0.3MPaより高いと圧力を低下させた効果が発現しない。
ここで、ピストン23bの牽引速度は、流入工程で移動させた際の速度の25〜300%であることが好ましい。25%より小さいと移動時間が長くかかりサイクル時間が長くなってしまい、300%を超えるとピストンを駆動させる装置が高価となってしまう為に好ましくない。
以下に示す配合成分を用いて、特開平11−43699号公報に記載の方法に従い、無数の気泡が分散含有された流動石鹸を調整した。発泡には窒素ガスを用いた。得られた気泡入り流動石鹸の気体含有率は35.2%、粘度は158mPa・s(80℃)、平均気泡径は17μm、融点は72.9℃であった。
パーム核脂肪酸 27.5%
ミリスチン酸 3.0%
NaOH 5.3%
グリセリン 27.0%
ソルビトール(70%) 5.0%
ノニオン活性剤 2.0%
塩化ナトリウム 1.8%
硫酸ナトリウム 3.0%
水 25.4%
この様にして得られた冷却固化体の外観は良好なものであった。
本第2実施形態の固化石鹸(冷却固化体)の製造方法は、上記第1実施形態と同様の工程を具備しているが、成形型内加圧工程のみが上記第1実施形態と異なる。本第2実施形態では、成形型内加圧工程で用いる成形装置30Aのみが上記第1実施形態と異なり、循環系装置10及び供給系装置20は上記第1実施形態と同様である。本実施形態の成形装置30Aの一例を示す。
エアベント用スリットは、連続吐出された流動石鹸2が流出しないながらも、キャビティ33内と給気系統33と排気系統39との間とでは気体の出入りが容易な様になっている。これにより、本発明の効果を充分に発揮するばかりか、流動石鹸2を冷却固化した後、不要部を処理する工程を必要としない。そのギャップは、50〜800μm、好ましくは100〜750μm、さらには125〜600μmである。同様の効果を得られるならばエアベント用スリットに限らず、金型の一部に多孔質材料を用いる等することも可能である。
流入工程では、図5に示すように、上記第1実施形態と同様、ノズル24aの吐出口6とゲートシャッター32共に閉じた状態で、供給経路5の流入口4を開き、循環管12内の流動石鹸2を、シリンダ23a内に供給する。この場合、キャビティ33の内部気圧は、ほぼ大気圧(0MPa)になっている。
ここでキャビティ33内の気圧p1は、供給経路5内の流動石鹸2の圧力P1と同じかそれ以下であることが好ましい。具体的には25%〜100%、好ましくは35〜98%、より好ましくは40〜95%であることが、本発明の効果を顕著にする。25%より低いと不連続は初期噴出が発生し、100%より高いと吐出工程でキャビティ33内の空気が供給経路5内に流入してしまうのでよくない。
その直後、ピストン23bの押し出しにより、流動石鹸2をノズル24aの吐出口6から連続して吐出し、キャビティ33の内部で固化石鹸を成形する。この時、ピストン23bの押し出しにより、キャビティ33の内部の気圧は上昇するが、排気系統39の作動により、気圧p1に維持される。
その他の構成及び作用・効果については、上記第1実施形態と同様である。
さらに、微細気泡を含有した成形固化体を得る場合には、該微細気泡を小さく維持したまま成形固化体を得ることができ、微細気泡を含有する目的を高く維持できるので、より好ましい。
前述の気泡入り流動石鹸を用い、上述の工程に従い冷却固化体を製造した。流動石鹸の温度は78℃、各割型は10℃の冷却水で冷却しておいた。流動石鹸の冷却時間は2分とした。供給経路5内にある流動石鹸2の圧力P1は0.32MPa、キャビティ33を加圧した後の気圧p2は0.25MPaであった。
この様にして得られた冷却固化体の外観は良好なものであった。
上記第1実施形態のように、供給経路内の流動体の圧力を低下させることと併せて、上記第2実施形態のように、成形型内の圧力を増加させることにより、流動体の圧力と成形型内の圧力との差を小さくすることもできる。
本発明において、供給経路の吐出口を開閉する機構は、上記第1、第2実施形態のような、第2、第3弁機構に限られない。
3 循環経路
4 流入口
5 供給経路
6 吐出口
7 成形型
Claims (2)
- 加熱溶融した10〜80%の気体を含有する石鹸組成物を流入口を介して供給経路内に流入し、該石鹸組成物を該供給経路の吐出口から成形型内に吐出することにより、該成形型内で該石鹸組成物を冷却固化させて石鹸を製造する方法であって、
前記流入口を開き前記吐出口を閉じた状態で、前記供給経路内に所定量の前記石鹸組成物を流入させる流入工程と、
前記流入口及び前記吐出口を閉じた状態で、前記供給経路の容積を増加させることにより、前記石鹸組成物の圧力を低下させる供給経路内減圧工程と、
前記流入口を閉じ前記吐出口を開いた状態で、前記供給経路の容積を減少させることにより、前記石鹸組成物を前記成形型に吐出させる吐出工程とを具備し、
前記供給経路内減圧工程では、前記供給経路における前記石鹸組成物の圧力を、0.04〜0.3MPaにすることで、大気圧となっている前記成形型内の圧力との差を小さくする石鹸の製造方法。 - 加熱溶融した10〜80%の気体を含有する石鹸組成物を流入口を介して供給経路内に流入し、該石鹸組成物を該供給経路の吐出口から成形型内に吐出することにより、該成形型内で該石鹸組成物を冷却固化させて石鹸を製造する方法であって、
前記流入口を開き前記吐出口を閉じた状態で、前記供給経路内に所定量の前記石鹸組成物を流入させる流入工程と、
前記成形型内を密閉にした状態で、前記成形型内に気体を導入することにより、前記成形型内の圧力を増加させる成形型内加圧工程と、
前記流入口を閉じ前記吐出口を開いた状態で、前記供給経路の容積を減少させることにより、前記石鹸組成物を前記成形型に吐出させる吐出工程とを具備し、
前記成形型内加圧工程では、前記成形型内の圧力を、大気圧から前記供給経路内の前記石鹸組成物の圧力に対し25〜100%の圧力に増加させることで、前記供給経路内の0.08〜1.5MPaとなっている前記石鹸組成物の圧力との差を小さくする石鹸の製造方法。
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