JP4660909B2 - 成形用二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属、木材、紙、樹脂などからなる物品(成形品)の表面に密着して貼合される加工用シートとして好適に用いられるポリエステルフィルムに関するものである。さらに詳しくは、家具、建材(壁材など)、住宅機器、家電機器、電子機器などの表面材料として、また印刷基材として好適な成形用二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の加工用シートとしては、ポリ塩化ビニルフィルムが代表的であり、加工性に優れる点などから好ましく使用されてきた。一方、ポリ塩化ビニルフィルムは火災などによりフィルムが燃焼した際の有毒ガス発生の問題、可塑剤のブリードアウトなどの問題があり、近年の耐環境性のニーズにより新しい素材が求められてきている。
【0003】
これらの要求を解決するためには、透明なポリエステルフィルムを用いる方法が有効であるが、従来のポリエステルフィルムでは、耐熱性は良いものの成形加工に必要な伸びが不十分であるので成形加工用途には適さず、改良が望まれていた。
【0004】
また、例えば特公平6−4276号公報では、ポリエチレンナフタレートフィルムを用いたメンブレンスイッチフィルムが提案され、寸法安定性の良好なフィルムが得られている。しかしながら、これらの技術では成形加工性が不十分であり、押し込み深さの必要な、いわゆるクリック感のあるスイッチ用としては適さないものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的とするところは、従来技術の問題点を解消し、環境性の面に優れるだけでなく、インモールド成形、エンボス成形などの成形加工性が優れ、しかも、透明性にも優れ、成形用フィルムとして好適な二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、エチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルからなるポリエステルフィルムであって、 該ポリエステルフィルムの融点が245℃以上であり、フィルムの全ヘイズ{Ht(%)}、厚み{d(μm)}、面配向係数(fn)が下記式I及びIIを満足し、フィルム全ヘイズHtが0.6〜1.9%である成形用二軸延伸ポリエステルフィルムとすることによって達成することができる。
0.01≦Ht/d≦0.25 ・・・式I
0.02≦fn≦0.15 ・・・式II
【0008】
(b)25℃でのフィルム長手方向の破断伸度およびフィルム幅方向の破断伸度がともに170%以上であること。
(c)ヒートセット温度(Tmeta)が180〜240℃であること。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
本発明におけるポリエステルとは、エステル結合により構成される高分子量体の総称である。このエステル結合に用いられるジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を使用することができる。 このうち本発明におけるポリエステルでは、テレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸のしめる割合が95モル%以上であることが耐熱性、生産性の点から必要である。
【0011】
一方、グリコール成分としては例えばエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール等を使用することができる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。このとき、グリコール成分としてエチレングリコールを20モル%以上、好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上含むと、耐熱性などの点から特に好ましい。
【0012】
さらに、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、共重合ポリエステルにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合したものを使用することもできる。
【0013】
また、上記ポリマーを2種以上ブレンドして使用することは加工性を向上させる上で好ましい。中でもポリエチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルが耐熱性および加工性の点から特に好ましい。
【0014】
本発明におけるポリエステルフィルムの融点(Tm)は、耐熱性及び加工性の点から245℃以上であり、好ましくは245〜270℃、特に好ましくは248℃〜270℃である。特に融点がかかる範囲未満であると耐熱性に劣るため、加工工程や使用時に高温にさらされる場合に問題となる場合があり好ましくない。ここでポリエステルフィルムの融点とは、いわゆる示差走査熱量計測定法(DSC)の1次昇温(1st Run)時に検出される融解時の吸熱ピーク温度のことである。
【0015】
本発明のポリエステルフィルムは、耐熱性、寸法安定性、耐傷性、防汚性の点から、ポリエステルを二軸延伸化したものが望ましく使用される。かかる二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよい。このとき、厚み斑の抑制の点からは、特に同時二軸延伸が好ましい。
【0016】
本発明のポリエステルフィルムは、種類の異なるポリエステルを用いてたとえば特開平9−24588号公報に示されるような積層構造とすることができる。かかる積層フィルムの形態は、特に限定されないが、例えばA/B、B/A/B、C/A/Bの積層があげられる。
【0017】
本発明の成形用二軸延伸ポリエステルフィルムの全厚みは、成形性、基材に対する被覆性、基材表面の保護性、意匠性の点で、10〜500μmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜300μmであり、特に好ましくは20〜200μmである。
【0018】
本発明においては、成形性、印刷性、美麗性、寸法安定性を向上させる点から、フィルムの全ヘイズ{Ht(%)}、厚み{d(μm)}、面配向係数(fn)が下記式I及びIIを満足することが必要である。
0.01≦Ht/d≦0.25 ・・・式I
0.02≦fn≦0.15 ・・・式II
【0019】
式Iにおいて、Ht/dの範囲は、さらに好ましくは、0.01〜0.20であり、特に好ましくは0.01〜0.15である。特に、全ヘイズ(Ht)がかかる範囲未満であると成形性が悪化する傾向にあり、また、かかる範囲よりも大きいと印刷性、美麗性が悪化する傾向にあるので好ましくない。また該フィルムに蒸着を施す場合には、蒸着膜の光沢度の点から、全ヘイズ(Ht)がこの範囲内でより小さいことが好ましい。
【0020】
さらに、フィルム内部ヘイズは3%以下であることが同様に成形品の美麗性の点から好ましい。また、特に好ましくは1%以下である。内部ヘイズがかかる範囲を超えると、成形品として使用される際に、絵柄、着色が鮮明でななくなるため好ましくない。また好ましい内部ヘイズの値には特に下限はないが例えば厚み50μm程度のポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、低い場合では0.5%程度である。
【0021】
さらに190℃×30分熱処理後の内部ヘイズの上昇率が少ないことが好ましく、好ましくはこの上昇率が40%以下、特に好ましくは20%以下である。40%を超えると加工時の白化が顕著となり好ましくない。
【0022】
式IIにおいて、成形性の点から、面配向係数(fn)の範囲は、さらに好ましくは0.05〜0.15、特に好ましくは0.10〜0.15である。面配向係数(fn)とは、アッベ屈折計などを用いて測定されるフィルムの長手方向屈折率(Nx),幅方向屈折率(Ny),厚み方向屈折率(Nz)により次式から算出される値である。
fn=(Nx+Ny)/2−Nz
このときフィルムの長手方向および幅方向が明らかでない場合は、配向の主軸方向、配向の主軸方向に対して垂直な方向、厚み方向の屈折率をそれぞれNx,Ny,Nzとして面配向係数を求めることができる。
【0025】
また、加工性の点からは25℃でのフィルム長手方向の破断伸度および幅方向の破断伸度は、好ましくは170%以上、さらに好ましくは200%以上、特に好ましくは250%以上である。
【0026】
また、フィルムのヒートセット温度(Tmeta)は、180〜240℃の範囲が好ましい。特に好ましくは200〜240℃である。ヒートセット温度がかかる範囲未満であると寸法安定性が悪化しやすく、またかかる範囲よりも高いとフィルム破れなどが生じ易く生産性の点から好ましくない。ヒートセット温度(Tmeta)は、示差走査熱量分析計測定法(DSC)の1次昇温(1st Run)時に検出される吸熱融解曲線において、ピーク温度(融点)までの近傍に存在する、熱処理に起因するサブ吸熱ピークの温度である。
【0027】
また、フィルムの厚み斑は好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下であることが、印刷性、加工性などの点から好ましい。
【0028】
本発明のフィルムでは、フィルムへの印刷性、加工性、接着性などの点から、表面ぬれ張力が50mN/m以上であることが好ましく、さらに好ましくは56mN/m以上である。
【0029】
ぬれ表面張力が50mN/m以上のフィルムは、適切な表面処理を施すことにより達成可能であり、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、化学薬品処理、物理的粗面化処理、表面塗布処理などの表面処理により達成することができるが、本発明の効果を損なわない範囲であれば任意の表面処理を採用することができ、特に限定されない。中でも、コロナ放電処理は簡便かつ有効な手法であるので好ましい。
【0030】
また本発明のフィルムには、各種コーティングを施してもよく、その塗布化合物、方法、厚みは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されない。
【0031】
本発明では、印刷性または成形後の美麗性の点から、フィルムの60度鏡面光沢度が、好ましくは60%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0032】
本発明のフィルムを構成するポリエステルは、フィルムと基材との接着性及び加工性を向上させる点から、カルボキシル末端基量が、好ましくは20〜60当量/トン、さらに好ましくは30〜50当量/トンであるものがよい。
【0033】
本発明では、接着性、製膜安定性をより向上させるために、ポリエステルの固有粘度が、好ましくは0.50dl/g以上、さらに好ましくは0.55dl/g以上、特に好ましくは0.60dl/g以上であるものが使用される。固有粘度が0.50dl/g未満では、接着性が低下するため好ましくない。
【0034】
本発明で用いるポリエステルを製造する際の触媒としては特に限定されないが、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。中でもチタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物が、触媒活性、味特性、上記触媒金属量を最適化する上で好ましい。
【0035】
例えば、ポリエステル製造のための重合工程において触媒としてチタン/ケイ素触媒を添加する場合には、テレフタル酸成分とエチレングリコール成分を反応させ、次にチタン/ケイ素複合酸化物、リン化合物を添加し、引き続き高温、減圧下で一定のジエチレングリコール含有量になるまで重縮合反応させ、特定の触媒金属量、リン量を有するポリエステルを得る方法などが好ましく採用される。
【0036】
熱安定剤として添加されるリン化合物は特に限定されないが、リン酸、亜リン酸などが好ましい。
【0037】
本発明のポリエステルフィルムでは、成形品の美麗性、耐候性、印刷の耐変色性を極めて良好とする上で、フィルム中の触媒金属残存量(M:単位ミリモル%)と、リン元素残存量(P:単位ミリモル%)の関係が次式を満足することが好ましい。 0.3≦M/P≦5
さらにM/Pの値は3以下であるとフィルムの生産性・熱安定性が共に良好となり、特に好ましい。
【0038】
本発明のポリエステルフィルムを製造する方法としては、特に限定されないが、例えばポリエステルを必要に応じて減圧乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸シートを得た後、かかる未延伸シートを延伸するものである。かかる延伸方式としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれでもよいが、要するに該未延伸シートをフィルムの長手方向及び幅方向に延伸、熱処理し、目的とする面配向度を有するフィルムを得る方法が採用される。これらの方式の中でも、好ましくはフィルムの品質の点で、テンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方式、又は、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。
【0039】
かかる二軸延伸の延伸倍率としては、それぞれの方向に1.6〜4.2倍、好ましくは1.7〜4.0倍である。この場合、長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。また、延伸速度は1000%/分〜200000%/分であることが望ましく、延伸温度はポリエステルのガラス転移温度以上、[ガラス転移温度+100℃]以下であれば任意の温度とすることができるが、好ましくは80〜170℃の範囲で延伸することがよい。更に、二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行うが、この熱処理は、オーブン中、あるいは、加熱されたロール上等、従来公知の任意の方法で行うことができる。熱処理温度は120℃以上250℃以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは120〜250℃である。また熱処理時間は任意とすることができるが、好ましくは1〜60秒間行うのがよい。なお、かかる熱処理はフィルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行ってもよい。
【0040】
またポリエステル中には平均粒子径0.01〜10μmの公知の内部粒子、無機粒子および/または有機粒子などの外部粒子の中から任意に選定される粒子を含有させることができる。ここで平均粒子径が10μmを越える粒子を使用すると、透明性を損なったり、フィルムの欠陥が生じ易くなり、意匠性などの点からも好ましくない。かかる粒子としては、例えば湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー、ヒドロキシアパタイト等の無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を使用することができる。なかでも、湿式および乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等が、好ましく使用される。これらの内部粒子、無機粒子および/または有機粒子は二種以上を、特性を損ねない範囲内で併用してもよい。
【0041】
さらにこれら粒子の添加量は0.01重量%〜50重量%の範囲であることが好ましい。0.01重量%以下であれば、フィルム巻き取りが困難となり取り扱い上好ましくない。また50重量%を越えると粒子凝集による粗大突起の生成や製膜性の悪化、透明性の悪化などを引き起こし易いので好ましくない。
【0042】
本発明の成形用二軸延伸ポリエステルフィルムは、樹脂等の素材を成形する際にその素材と密着して存在するフィルム用途、即ち、成形用フィルムとして用いられる。この成形用としては、例えば、金属、木材、紙、樹脂などの素材と密着させて一体成形させる用途や、射出成形時の金型内に配置されて射出成形時にその表面に貼合される用途があり、具体的には、射出成形用や転写インモールド成形用で代表される。
【0043】
樹脂等の素材とともに成形されたフィルムが、樹脂等からなる成形品の表面に貼り付けられたまま製品化される場合もあるし、また、離型材や転写材としてフィルムが用いられ、製品化される前に剥がされる場合もある。後者の場合としては、例えば、インキで印刷を行ったフィルムの印刷面側に素材を貼合せて一体成形し、UV照射等でインキを硬化させて素材成形品側に印刷を転写させた後に、フィルムを剥がして製品とする方法があげられる。また、転写インモールド成形としては、例えば、フィルム/離型層/トップ層(ハードコート層)/印刷層/接着層などの構成に加工したシートの上に樹脂を流し込んで、シートが密着した成形品を製造した後にフィルム/離型層を剥離することにより、印刷と部材成型を同時に行って印刷された成形品を製造する方法があげられる。
【0044】
また、同様にインジェクションモールドデコレーションなどの成型用途にも好適である。ここで転写インモールド、またはインジェクションモールドデコレーションなどに用いる樹脂としては、ABS、アクリル、ポリカーボネートなどの樹脂がフィルムとの接着性および密着性が良好であるため好ましく用いられる。
【0045】
また、表面に印刷等による絵柄層や着色層(印刷層という)が設けられた成形品を製造する場合には、その印刷層を成形品側に形成した後にフィルムを貼り合せてもよいし、また、フィルム側に印刷層を形成した後に貼り合せてもよい。その貼り合せは熱接着でもよいし接着剤を介した接着でもよい。
【0046】
ここで用いる接着剤としては、例えば、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、α−オレフィン樹脂接着剤、ポリエステル系接着剤、水性高分子とイソシアネートの混合物による接着剤、エポキシ系接着剤、溶液型酢酸ビニル樹脂系接着剤、エマルジョン型酢酸ビニル樹脂系接着剤、アクリルエマルジョン系接着剤、ホットメルト接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリウレタン系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、SBR系接着剤、変性ゴムエマルジョン系接着剤、エチレン共重合樹脂系接着剤、レゾルシン系接着剤、天然ゴム系接着剤、セルロース系接着剤、でんぷん質糊料、デキストリン等が挙げられる。
【0047】
本発明の成形用二軸延伸ポリエステルフィルムはエンボス加工、印刷などの各種表面加工を施した後に成型に使用することができ、例えば、フィルムに印刷した後、鋼板に貼り合わせ、折り曲げ加工、圧縮加工など目的に応じた成形を行い、家具、建材(壁材など)、住宅機器、家電機器、電子機器の透明な表面材料、また印刷基材として好適に使用することができる。
【0048】
【実施例】
次に、本発明の効果を実施例により説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。まず、特性値の測定方法および評価方法を以下に示す。
【0049】
[特性値の測定方法・評価方法]
本発明における特性値は次の測定法による。
【0050】
(1)融点(Tm)、ヒートセット温度(Tmeta)
Seiko Instrment(株)製示差走査熱量分析装置DSCII型を用い、試料5mgを室温より10℃/分の昇温速度で昇温していった際の吸熱融解曲線のピーク温度を融点(Tm)とした。また熱処理に起因するサブ吸熱ピーク温度をヒートセット温度(Tmeta)とした。
【0051】
(2)固有粘度
ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解し、25℃において測定した。
【0052】
(3)面配向係数(fn)
アタゴ(株)製アッベ屈折計を用い、ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、フィルムの屈折率の測定を行った。フィルム面内の長手方向の屈折率nγ、それに直行する横方向の屈折率nβおよび厚み方向の屈折率nαを求め、下記式
fn=(nγ+nβ)/nα
により面配向係数(fn)を求めた。
【0053】
(4)透明性(全ヘイズ)
JIS・K6714に従い、20℃、65%RH雰囲気で測定した。
【0054】
(5)破断伸度、100%伸張時応力
フィルムから、長さ150mm、幅10mmの試料(試料長さ方向がフィルム長手方向又は幅方向)を切り出し、この試料をオリエンテック社製引張試験機を用い、初期長50mm、引張速度300mm/分、25℃の条件で測定し、得られた荷重−歪曲線から、フィルム長手方向(MD)および幅方向(TD)の破断伸度および100%伸張時応力を求めた。
【0055】
(6)印刷性
フィルムを100℃×30分の熱処理した後、4色のシルク印刷を行った。各色の印刷後には80℃×30分の乾燥を行った。このときの印刷精度、鮮明さにより、以下の基準で印刷性の判定を行った。(○、△:合格、×:不合格、以下の特性でも同様)
○:鮮明であり、各色の印刷ズレは目視レベルで見受けられない。
△:約20cmの距離に目を近づけて目視にて観察したレベルでは印刷のズレなどが若干見受けられるが、20cm以上離れて観察したレベルでは概ね外観は良好である。
×:各色での印刷ズレが見受けられ、また印刷に斑が生じて著しく外観が悪い。
【0056】
(7)成形性
フィルムの片面に印刷を施した後、フィルムに245℃に加熱したABS樹脂を流し込み(射出成型)、表面がフィルムで覆われた高さ2mmのキートップを作製した。このときのフィルムの成型状態を目視で観察し、下記基準により判定を行った。
○:外観が極めて良好である。
△:若干のシワが観察できるが、実用上問題ないレベルである。
×:フィルムに破断が観察される。または、大きなシワが入り著しく外観が悪い。
【0057】
(8)美麗性
フィルムにアルミニウムを蒸着後、蒸着面の反対面から観察し、蒸着光沢の鮮明さを以下の基準により美麗性の判定を行った。
○:蒸着光沢が極めて鮮明である。
△:蒸着光沢が鮮明さにやや欠けるが外観上問題ない。
×:蒸着光沢が曇っており、著しく外観が悪い。
【0058】
なお、アルミニウム蒸着は、フィルムをフィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させる。この時、アルミニウム金属を加熱蒸発させながら、蒸着を行う。走行フィルム面にアルミニウム金属を凝集堆積させ、アルミニウム蒸着層を形成して巻き取る。蒸着後、真空蒸着装置内を常圧に戻して巻き取ったフィルムをスリットし蒸着フィルムとした。この蒸着フィルムのアルミニウム蒸着膜層の厚みは45nmであった。この蒸着膜層の厚みは、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて下記の条件で写真撮影して測定した。
装 置 :日本電子(株)製JEM-1200EX
観察倍率:40万倍
加速電子:100kV。
【0059】
(9)総合評価
透明性、印刷性、成形性、美麗性を成型用フィルムとしての実用性について、優れるものを○、やや劣るものを△、劣るものを×として評価した。
【0060】
次に、本発明の効果を実施例により説明する。
【0061】
(実施例1)
重合触媒として、マグネシウム化合物およびアンチモン化合物を用い、リン酸、粒径1.0μmの酸化珪素粒子(0.04重量%)を添加してポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65dl/g、融点257℃)を重合した。得られたポリエステルを180℃で4時間減圧乾燥した。乾燥後、溶融押出機に供給した。ポリエステルは、スリット状のダイからシート状に押出され、静電印加(3.0kV)により鏡面冷却ドラムに密着させ、冷却固化して未延伸シートとした。この未延伸シートを、まず105℃で7秒間予熱後、115℃に加熱したロールにて長手方向に2.8倍の延伸を行い、さらに温度95℃で6秒間予熱後、120℃加熱ゾーンで幅方向に2.9倍延伸した後、245℃にて、幅方向に5%の弛緩、5秒間の熱処理を行い、厚み100μmの成形用二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの片面にコロナ放電処理を行い評価を行った。
【0062】
(実施例2)
実施例1と同じポリエチレンテレフタレート50重量部およびポリエチレンナフタレート(マグネシウム化合物およびアンチモン化合物を触媒として、リン酸を添加して重合、固有粘度0.69dl/g、融点270℃)をブレンドして乾燥し、押出機に供給し製膜した。110℃で6秒間予熱後、長手方向に120℃で2.5倍に延伸し、100℃で6秒予熱後、横方向に130℃で2.9倍に延伸した以外は、実施例1と同様にして厚み50μmの成形用二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0063】
(実施例3)
実施例1と同じポリエチレンテレフタレートを用い、97℃で4秒間予熱後、長手方向に98℃で3.0倍に延伸した以外は、実施例1と同様にして厚み25μmの成形用二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0064】
(実施例4)
実施例1で用いたポリエチレンテレフタレート80重量部およびポリプロピレンテレフタレート(チタン化合物を触媒として、リン酸を添加して重合、固有粘度0.9dl/g、カルボキシル末端基10当量/トン、M/P=5)20重量部をブレンドして140℃で5時間減圧乾燥し、押出機に供給し製膜した。85℃で4秒間予熱後、85℃に加熱したロールにて長手方向に3.1倍の延伸を行った以外は、実施例と同様にして厚み50μmの成形用二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0065】
(比較例1)
延伸条件を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、厚み50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0066】
(比較例2)
マグネシウム化合物およびアンチモン化合物を触媒として、リン酸、酸化珪素粒子(0.2重量%)を添加してイソフタル酸11モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.62dl/g、カルボキシル末端基25当量/トン、M/P=6)を重合した。90℃で6秒間予熱後、長手方向に95℃で3.3倍に延伸し、110℃で6秒予熱後、幅方向に125℃で3.4倍に延伸後、195℃にて、幅方向に3%の弛緩、5秒間の熱処理を行った以外は、実施例1と同様にして、厚み50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
【0067】
以上の成形用二軸延伸ポリエステルフィルムの品質評価結果をまとめたのが表1である。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
なお、表中の記号は次の通りである。
PET:ポリエチレンテレフタレート
PEN:ポリエチレンナフタレート
PPT:ポリプロピレンテレフタレート
TPA:テレフタル酸
NPA:ナフタレンジカルボン酸
IPA:イソフタル酸
EG:エチレングリコール
PG:1,3-プロパンジオール
Tmeta:ヒートセット温度
F100応力:100%伸張時応力(25℃)
MD:フィルム長手方向
TD:フィルム幅方向
【0070】
表1の結果からわかるように、実施例1〜4で得られた成形用二軸延伸ポリエステルフィルムは、透明性、印刷性、成形性、美麗性のいずれにも優れたフィルムであった。
一方、比較例1〜2で得られたポリエステルフィルムは、透明性、印刷性、成形性、美麗性のいずれかが劣るフィルムであり、いずれのフィルムも成形用二軸延伸ポリエステルフィルムとしては好ましくなかった。
【0071】
【発明の効果】
本発明の成形用二軸延伸ポリエステルフィルムは、耐環境性、透明性、印刷性、成形性、美麗性に優れ、成形用に用いる二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適なものである。
Claims (3)
- エチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルからなるポリエステルフィルムであって、 該ポリエステルフィルムの融点が245℃以上であり、フィルムの全ヘイズ{Ht(%)}、厚み{d(μm)}、面配向係数(fn)が下記式I及びIIを満足し、フィルム全ヘイズHtが0.6〜1.9%であることを特徴とする成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
0.01≦Ht/d≦0.25 ・・・式I
0.02≦fn≦0.15 ・・・式II - 25℃でのフィルム長手方向の破断伸度およびフィルム幅方向の破断伸度がともに170%以上である請求項1に記載の成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
- ヒートセット温度(Tmeta)が180〜240℃である請求項1または2に記載の成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
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