JP4660887B2 - バーアンテナをもつドアハンドル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バーアンテナをもつ特に自動車のドアハンドルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車のドアやトランクにキーシリンダをもたない電子キー方式の乗降車システムが開発されようとしている。
【0003】
上記乗降車システムは、乗車時、車室外発信エリヤに電子キーを携帯した乗車者が近づくと、受信待機状態となり、電子キーからのIDコードを着信すると、ドアハンドル等への人体の接触と同時にドアロックを解除し、降車時、発信サーチモードが設定されるものである。
【0004】
このような乗降車システムにおいては、送受信エリアを確保するため、樹脂製のドアハンドル等にアンテナを内蔵する方式が考えられている。ドアハンドルに内蔵されるアンテナは、配設スペースが狭いため、透磁率の高いフェライト等の強磁性セラミックをコアとするバーアンテナが検討されている。
【0005】
図4は自動車のドアハンドルにフェライトバーアンテナを内蔵した状態を示す。
【0006】
しかし、自動車のドアは、開閉時にドアにかかる荷重が極めて大きいため、バーアンテナの特にコアには強度が要求されるが、コアはセラミックであり、脆いため、荷重や振動が加わる機器に搭載する場合には、ひび割れや折損による実効長の減少が送受能力を減少させてしまう。ある種の乗用車は、ドア強閉時に200G以上の大きなGを受けることが実測データで分っている。
【0007】
従来、フェライトバーアンテナの対衝撃性を考慮した提案として、例えば特開平9−307327号公報には、複数本の棒状のフェライトコアと、該フェライトコアを直列接続して成るフェライトコア列が収納されるボビンとしてのパイプと、該パイプに巻かれたコイルを具備した棒状アンテナが開示されている。
【0008】
上記公報のフェライトバーアンテナは、初めから必要な実効長をもつ棒状のフェライトコアが分割され、個々のコアが荷重によってひび割れしない大きさとする考えである。
【0009】
この考えのバーアンテナには、コア間に隙間があり、単一のバーアンテナの場合の実効長のものに対して送受能力が低くなるし、コアの隙間がひらくことにより、要求特性が経時的あるいは時々変化するという問題がある。
【0010】
また、特開平2−58404号公報には、複数の棒状フェライトからなるが、自動車ボディ等の曲面に沿って貼設されたバーアンテナであって、個々のフェライトコアを弾性コイルで巻いたものが開示されている。
【0011】
上記公報のフェライトバーアンテナは、個々のコアと剛体であるボディとの間にコイルを兼ねた弾性部材が介在することとなって、部品点数を増加することなくコアを弾性的に保持しひび割れを防止しようとするものである。
【0012】
上記弾性コイルを用いたフェライトバーアンテナでも、コア間の隙間を零にする対策はなされていないとともに、弾性コイルとフェライトとの間に隙間が生じたときは、自動車の振動により両部材が衝突してフェライトが破損することが考えられる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
従来のバーアンテナは、衝撃対策のために複数のコア片に分割されている。しかし、この対策はコアのひび割れ破損を十分に回避していないばかりか、コア間隔がひらきその長さ分だけの送受能力を引出せない。
【0014】
それより問題となるのは、個々のフェライトの接続状態が、常に安定に確保されにくいため、ときに送受信能力が変動したり、通信エリアが変化したり、通信不能領域が増減したりして、信頼性に問題を生じることである。
【0015】
そして、このような従来のバーアンテナを電子キーシステムに用いた場合、開閉部の開閉が全くできないことになる。
【0016】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、内部に収納したセラミック製のバーアンテナを分割しない単一構成として送受能力を確保し、かつ衝撃Gにも耐えうるバーアンテナをもつドアハンドルを提供することを解決すべき課題とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく本発明の発明者等は種々検討を重ね、コアを絶縁材製のボビンで保持し、該ボビンとコアとの間に柔軟性の高いゴム質材が隙間なく充填されるようにして、ハンドル本体の衝撃からコアを絶縁する構造を考え、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明のバーアンテナをもつドアハンドルは、ハンドル本体と、該ハンドル本体に収納された薄型棒状の強磁性セラミックで作られた単一のコア部と、該コア部に絶縁状態で巻かれる巻線導体を保持し該コア部をくるんだボビンと、該コア部及び該ボビンを収納するケースと、該コア部及び該ボビンを該ケース内に封止した柔軟性をもつゴム質材で構成されたポッティング材とからなるバーアンテナとから構成され、
該ポッティング材は、該バーアンテナを構成する該コア部と該ボビンとの間隙及び該ボビンと該ケースとの間隙に充填されていることを特徴とする。
【0019】
【作用】
本発明のバーアンテナをもつドアハンドルにおいては、コア部がボビンの中央位置にポッティング材中にくるまれた状態で保持されるので、コア部に対してハンドル本体から伝わる衝撃を柔軟性のあるポッティング材によって絶縁することができる。また、コア部は十分な実効長を有する単一品のため、安定した送受能力を維持し信頼性の高いシステムとすることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のバーアンテナをもつドアハンドルにおいて、ポッティング材は、コア部とボビンとの間隙及びボビンとケースとの間隙に十分充填されるように、注型粘度を加熱により低粘度化したものあるいは常温で低粘度のものを使用することが好ましい。ポッティング材の封止前の粘度としては、40ポイズ以下、特に20ポイズ以下にしたものが好ましい。また、硬化したとき、比重が1より小さく、ヤング率がコア部より極めて小さくかつポアソン比がコア部より若干大きいものがよい。
【0021】
また、ポッティング材は、硬化時にJISA硬さが50以下、さらに好ましくは30以下の軟かく柔軟性に富んだものが良い。柔軟性のあることが、コア部の受ける荷重を軽減できるものである。
【0022】
上記条件を備えたポッティング材としては、シリコーン系ゴム、ウレタン系ゴム等のゴム質材が好ましい。
【0023】
上記ゴム質材を用いたポッティング材は、真空脱法して気泡を除去する方がよい。真空脱法の時期は、製品形状により混合前、注型時、注型後の各時期を選択することができる。あるいはこれら各時期のうち二時期、さらには各時期全てに行っても良い。
【0024】
コア部は、高強度、高透磁率のMn/Zn系フェライト、Ni/Zn系フェライトやアモルファス磁性体等を用いることが好ましい。コア部は、実装スペース上、丸形棒状でなく、薄型棒状が好ましい。
【0025】
ボビン及びケースのうち少なくともボビンは、強化された樹脂で製造することが好ましい。強化樹脂は、繊維の混合、二以上の樹脂の混合により強化できる。
【0026】
【実施例】
以下、更に本発明のバーアンテナをもつドアハンドルを具体的実施例により説明する。
【0027】
図2に示す本実施例のバーアンテナをもつドアハンドルは、自動車のサイドドアのものである。ドアハンドルは、両端部が車体Bに固定された樹脂製のハンドル本体1と、該ハンドル本体1に内蔵されたアンテナ部2とから構成されている。アンテナ部2は、ハンドル本体1内において、その両端がハンドル本体1に固定された両持ち梁状態のものである。
【0028】
しかして、アンテナ部2は、図1に示すように、薄型棒状の強磁性セラミックで作られたコア部3と、該コア部3をくるんだボビン4と、該コア部3及び該ボビン4を収納したケース5と、該コア部3及び該ボビン4を該ケース5内に封止したポッティング材6とから構成されている。
【0029】
コア部3は、複数片に分割されない強磁性セラミック製の単一部材である。
【0030】
ケース5とボビン4は、繊維が分散された強化樹脂で作られている。ボビン4は、図3に示すように、コア部3の二つの腹面を囲むようにボビン4のほぼ中央に巻かれた主コイル11と、コア部3の側面に沿うようにボビン4の幅方向に巻かれた側面コイル12と、主コイル11に隣接して巻かれた結合コイル13とを担持している。ケース5は、一側面が開口した凹部7をもつものであり、一端側が前記基端部2aを構成するようにコア部3より延びている。
【0031】
ポッティング材6はケース5の内壁とボビン4の周囲との広い空間のみならず、図1の円内に拡大して示すように、ボビン4とコア部3との間隙Sにも充填されている。ポッティング材6は、硬化した状態で柔軟性をもつウレタンゴムを用いた。ウレタンゴムは、前行程で気泡が十分に除去されている。
【0032】
なお、基端部2aには、ハンドル本体1の内側の金属部分とボディBあるいは大地間の人体接触検知用静電容量を定めるキャパシタ14がポッティング材6に埋設されたかたちで配設されている。
【0033】
次に実施例におけるアンテナ部2の具体的寸法を表1に示す。単位はすべてmmである。
【0034】
【表1】
Figure 0004660887
【0035】
本実施例におけるアンテナ部2は、厚みが6.5mmであり、薄手のドアハンドルにも十分に内蔵することができる。
【0036】
次にポッティング材6(ウレタンゴム)の充填方法を説明する。
【0037】
上記ウレタンゴムは、予め低粘度化した。粘度は、40ポイズ以下とした。なお、注型しろが小さい場合は、20ポイズ以下とすることが好ましい。
【0038】
低粘度化したウレタンゴムの充填は、ボビン4及びコア部3をセットしたケース5の開口より注入する通常の方法と、ボビン4及びコア部3をセットしたケース5を収納できる型を用い、該型を真空引きして、ケース5の凹部7内の気圧を低下させた状態でウレタンゴムを充填してもよい。特に前者の方法においては、図2および図3に示すように、ボビン4の適所に孔8を設けた。この孔8によってポッティング材6はボビン4とコア部3との狭い間隙に容易に浸入充填させることができた。ポッティング材6を充填したアンテナ部2は、ポッティング材6を硬化させるため、80℃雰囲気で加熱硬化した。硬化後のJISA硬さは30であった。
【0039】
次にドアハンドルに加わる衝撃Gに対しコア部3に必要な破壊強度を計算した。
コア部3とボビン4間にポッティング材6が完全に充填された場合のアンテナ部2の応力を2次元有限要素法(FEM)により解析した。ポッティング材6が完全に充填された場合のアンテナ部2とは、コア部3がポッティング材6を弾性材としてボビン4の中央部に位置し、コア部3がケース5に当接していない状態のものをいう。
【0040】
試料としたコア部3の各部寸法及び自重を表2に示す。
【0041】
【表2】
Figure 0004660887
【0042】
ドアを強閉したは場合の加速度は200Gの加速度ががかかるものとした。コア部3とボビン4間にポッティング材6を完全に充填されたアンテナ部2は、表2の形状寸法より、200Gの加速度でドアが強閉された場合、実施例のコア部3が受ける最大応力は、2DFEMにより0.72kgf/mm2と計算された。したがって、コア部3はこの値より破壊強度の高いものを使用する必要がある。
【0043】
一方、ポッティング材6の充填が十分でなくコア部3がケース5に当接している場合にコア部3が受ける最大応力は、両持ち梁の力学計算より、200Gの加速度でドアが強閉された場合、2.28kgf/mm2と計算された。
【0044】
上記計算結果より、コア部3は、ポッティング材6がボビン4とコア部3との間隙に完全に充填された場合に必要な破壊強度の約10倍の大きさ、すなわち7kgf/mm2以上の破壊強度をもつ強磁性セラミックを選定してもちいた。これにより、ポッティング材6の充填が十分でなく、コア部3がケース5に当接している場合にコア部3に発生する応力2.28kgf/mm2に対しても3倍の強度が確保された。
【0045】
また、図1において、アンテナ部2から延びた部材9は電気配線である。この電気配線に給出される電気信号としては、実施例の場合、アンテナ部2で送受した高周波信号としてもよいし、ボビン3あるいはケース7にアンテナ部2で送受した高周波信号を検波する送受信回路を印刷配線等で組込むことにより、内蔵コンピュータへの指令信号としてもよい。
【0046】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、単一のコア部を用いることにより、送受信能力としてその実効長分が確保されるとともに、ドアハンドルにかかる荷重によってもコア部のひび割れ損傷を防止する確率が高く、アンテナとしての信頼性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のバーアンテナをもつドアハンドルのアンテナ部を示す断面図である。
【図2】 本発明のバーアンテナをもつドアハンドルを示す断面図である。
【図3】 本発明のバーアンテナをもつドアハンドルのアンテナ部を示す平面図である。
【図4】 自動車のドアハンドルに配設された一般的なバーアンテナを示す説明図である。
【符号の説明】
1…ハンドル本体 2…アンテナ部
3…コア部 4…ボビン
5…ケース 6…ポッティング材
7…凹部 8…孔。

Claims (3)

  1. ハンドル本体と、
    該ハンドル本体に収納された薄型棒状の強磁性セラミックで作られた単一のコア部と、該コア部に絶縁状態で巻かれる巻線導体を保持し該コア部をくるんだボビンと、該コア部及び該ボビンを収納するケースと、該コア部及び該ボビンを該ケース内に封止した柔軟性をもつゴム質材で構成されたポッティング材とからなるバーアンテナとから構成され、
    該ポッティング材は、該バーアンテナを構成する該コア部と該ボビンとの間隙及び該ボビンと該ケースとの間隙に充填されていることを特徴とするバーアンテナをもつドアハンドル。
  2. 前記ボビン及びケースのうち少なくともボビンは、強化された樹脂で作られている請求項1記載のバーアンテナをもつドアハンドル。
  3. 前記ポッティング材の封止前粘度は、40ポイズ以下の低粘度化した請求項1記載のバーアンテナをもつドアハンドル。
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