JP4660096B2 - 工作機械に主軸を支持するための構造およびその製造方法 - Google Patents

Description

本発明は、工作機械、特に、数値制御工作機械の主軸を支持するために使用される、“スリーブ”の名称で一般的に呼ばれる構造に関するものである。

往復台に普通に取り付けられるスリーブは、３つの座標軸に沿った直線運動を一般に行うと共に、その端部に取り付けられた加工工具を有している。数値制御工作機械の形状に基づいて、スリーブは、垂直または水平にすることができる。（例えば、特許文献１参照。）。

イタリア特許第１，０５６，３８８号 イタリア特許第１，２０４，２７６号

所謂、ガントリー盤として特徴付けられる第１の形状において、工作機械は、横ばりを支持する２つの垂直な壁または肩部を有するベッドまたは台を有しており、スリーブが一体的に接合されて垂直方向に移動できる往復台と呼ばれる支持構造を横ばりに沿って移動するように有している。第２の形式の工作機械において、ベッドに滑動可能に、または固着された垂直柱は、ベッドまたは台から上方に延びている。主軸支持往復台は、前述の直立柱に取り付けられていて、垂直方向の滑動が可能であり、水平に配置されていて往復台と関連しているスリーブは、水平方向に移動可能である。

スリーブは、溶接された鋼で一般的に作られた、それ自体は概ね管状構造であり、工作機械の主要部材または所謂主軸が内部に取り付けられている。２つの型の主軸があり、第１の型は、電気主軸と呼ばれるもので、スリーブの自由端部に配置され、工作機械のためのアタッチメントを有している。第２の型は、電動主軸と呼ばれて、スリーブ自体の中に収納されている。簡略のために、本発明においては、本発明を形成するスリーブが、電気主軸と電動主軸の両方を支持するように使用できるので、用語“主軸”が単独で使用されるであろう。

工作機械は相当な応力を受けて、幾つかの部材、特に、スリーブに変形を生じることがあり、このような変形は、仕上げられた製品の公差が非常に小さくされねばならない、例えば型の機械加工のような加工の際に要求される精度に逆に影響を与えてしまう。特に、スリーブを考慮する場合に、相互に対向する性質であって、以下に主に約言できる変化する要求を満たさなければならない。
a)上述した変形を妨げることによって、加工中の精度のための要件が満足されるのを確実にする剛性。
b)加工精度と、所要の公差を達成する能力とに不都合に作用する、加工に起因する振動の減衰。
c)工作機械の運転中に主軸によって生じられ、摩擦（例えば、軸受とスライドガイド）と、ジュール効果の結果としての電気部品（例えばモータのような）の種々な摩擦との両方に基づく熱の消散。

剛性のための要求を満たすために、スリーブは、相当な厚さを有する溶接される鋼または鋳鉄から一般に作られるが、相当な重量の原因となる。後者の鋳鉄は、特に強化されねばならない工作機械の残りの構成部分に影響を与えてしまう。これらの事項（いずれの場合にも、工作機械の設計と製造に影響する欠点を構成する）から離れて、より強力で、従って、最終的に相当に高価になるスリーブ作動モータが使用されないのであれば、包含される質量と、そのためのスリーブ移動時間とが増大される。

いずれの場合のスリーブの構造における鋼の使用は、良好な値の振動の減衰を確実にすることができないし、振動を減衰するようにできるノジュラー鋳鉄の使用は、この材料の低弾性係数の欠点を有している。

終りに、工作機械の運転中に発生する熱を消散する未解決の問題が残っている。

本発明は、上述した問題と欠点とを全体として解決すると共に、工作機械の運転中に発生する熱を、大きな度合で正確かつ適切に消散するように機械加工することを確実にするように、適切な振動減衰能力と、非常に強固で、かつ比較的に軽量とを組合せた工作機械スリーブを主に提供することを目的とするものである。

明白に、本発明の目的は、工業的水準の製造と使用とに好適な具合に適合する上述した結果を得ることを包含している。

本発明のこれらの目的と他の目的は、往復台と関連するようにでき、かつ主軸が取り付けられる管状本体を有する型の主軸支持構造またはスリーブによって達成されるもので、前記管状本体は、強固な材料、好適には鋼板で作られて、その内側に、粒状の石および／またはセラミックおよび／または膨張された粘土材料とから成る混合物の硬化する手段、および硬化型の樹脂によって形成された凝集体の層と組み合わせられたケーシングを有し、前記凝集体の層が、前記主軸を収容する空所を形成していることを特徴としている。

本発明の実質的な実施例において、上述した鋼板ケーシングと、軽量鋼板または予備成形できるプラスチック材料で作られる内ケーシングとの間に、上述した凝集体の層を包囲するように考慮することがまたできる。

本発明の推奨実施例に従う詳細な説明から明らかになるように、例えば、鋼のような所要される強度を有した材料で作られて電気溶接によって作ることができる外ケーシングと、優れた機械的強度と特に高振動減衰能力を組み合わせた、外ケーシングの内側に形成された凝集体の層との組み合わせに基づいて、本発明の主要な目的を達成するようにできる。

さらに、もし、冷却流体を搬送するためのダクトが、凝集体の層の適宜な位置に収納または埋設されていれば、工作機械の運転中に部分的に発生される所要しない熱の制御された消散を行うようにまた出来る。

本発明の特徴付けられた特色と利点を良好に説明するために、本発明の非独占的な実施例が添付図面を参照して以下に説明されよう。

先ず、第１に、図１を参照するに、以下に外ケーシングと呼ばれる第１の管状ケーシング１０と、以下に説明されるように凝集体が充填される空間３０を形成するように第１ケーシングと同軸に、かつ第１ケーシングの内側に配置された、以下に内ケーシングと呼ばれる第２の管状ケーシング２０とを有する、本発明に従ったスリーブの推奨実施例が同図に示されている。

外ケーシング１０は、例えば、曲げと、それに続く電気溶接の周知の作業によって鋼板から作られる。外ケーシングの形成は、当業者周知の方法と装置を用いて、主軸支持往復台への取付けと、一般的な方法を用いる往復台に対するスリーブの滑動とを許すようにしているので、より詳細な説明は必要でない。

短い円筒状の管５０は、外ケーシング１０の底端部１９に外ケーシングと同一軸心に沿って溶接され、該外ケーシングの内面は、取り外し可能な工具が取り付けできる主軸を受けるように適切に機械加工されている。管５０と、この管に関連した工作機械の部品は、当業者に良く知られており、本発明の目的に直接に関連していないので、考慮して図示しない。

また、内ケーシング２０は、外ケーシング１０に用いられるよりも薄くできる鋼板で好適に作られ、多角形または円形断面を有しており、いずれの場合にも、外ケーシング１０に空間３０を形成するように作られる。図面に示される実施例において、内ケーシング２０は、八角形の断面を有しており、外ケーシング１０は、ほぼ四角形の断面を有している。好適には、内ケーシング２０の断面形状は、外ケーシング１０の内部断面形状に従って選ばれるので、空間３０は、２つのケーシング１０、２０の相互的に平行な壁によって決められる。

既に上述したように、内ケーシング２０は、実質的な構造的作用を有していないので、成形されたプラスチック材料で作ることがまたできる。

内ケーシング２０の少なくとも２つの対向する側部２１ａ、２１ｂに沿って、等間隔に隔たった直径Ｄ₁の一定の数の円形の孔２２が設けられており、主軸や工作機械の他の部分の作動部材（また図示しない）に関連したケーブルおよび／または管（図示しない）を受ける作用を有している。各孔２２は、直径Ｄ₁よりも大きな直径Ｄ₂を有したリング２３によって囲まれている（図５参照）。空間３０の幅と等しい高さＨを有するリング２３は、鋼で作られて内ケーシング２０の外面と外ケーシング１０の内面に突合せ溶接され、２つの管状ケーシングを一緒に連接する間隔部材の作用を行うようになしている。図３に示される横断面図から、本発明の実施例において、内ケーシング２０の横断面を形成する８つの側辺部の４つに、リング２３が配置されるので、これらリングが外ケーシング１０の４つの壁の全てと接触している。

内ケーシング２０の壁２４と、外ケーシング１０の対応する壁のような壁の１つには、内側に収納される工作機械部品の組立および／または維持を含む作業のために、スリーブ内側への接近を許す作用を有する一対の幅広の開口部２５、２６が設けられている。

孔２２は、リング２３よりも小さな多数の孔から成るようにでき、その配置は、これらの孔の意図される作用的な要求に基づいていることが理解されるべきである。

同じことが開口部２５、２６に当てはめることができ、これら開口部が多数から成り、２つのケーシング１０、２０の他方の壁に配置できる。

終りに、熱消散に係わるように、この要求は、空間３０の内側に、図４に符号３２、３４によって示されるような管を配置することによって満たされるもので、このような管は、粒状物および樹脂の混合物によって空間３０が充填される前に、空間３０内に配置されるので、樹脂の硬化後には、管は埋設された状態であり、従って、凝集体の厚さの中に固着されるようになる。

これらの状態で、良好な熱伝導性をもった金属材料で好適に作られた管３２、３４は、例えば、往復台上のスリーブを滑動するためにガイドの付近の主軸支持往復台に隣接した外ケーシング１０の部分のような、スリーブの特別な部分の効果的な熱変換（すなわち、冷却のために）のための所要される適切な配置をもって構成できることが明らかである。

２つの内外ケーシング１０、２０の隣接する金属面に対して凝集体を良好に握持するために、外ケーシング１０の内面および／または内ケーシング２０の外面は、これらケーシングが作られる鋼板を、例えばサンドブラストによって粗い面にすることができる。

代わりに、スリーブの軸心に対して平行および垂直にするようにできる小さなリブを考えることができ、該リブは、スリーブの強度を付加的に改善する。

本発明に従えば、スリーブを製造する方法は、管状ケーシング１０の内側に管状ケーシング２０を挿入して、空間３０の内側に、冷却循環路を形成するように意図される、管３２、３４の配置の後に、空間３０の内側に混合物を注入して、該混合物が硬化した後に、２つのケーシング１０、２０と接触する凝集物４０の層を形成することを考慮している。

使用される混合物は、凝集体材料、または“ブレットストーンシステム”の名で知られている製品製造技術を用いて作られる“合成石材料”と一緒の注目される類似性を有しており、特許文献１と特許文献２とによって開始される、ここ２０年以上の間に研究、開発された主要な改善に関する多数の特許の主題を形成している。

本発明の場合には、混合物は、特に、エポキシまたはポリエステル樹脂のような少なくとも１つの硬化性樹脂と一緒の、大理石、花崗岩、斑岩等のような少なくとも１つの石材料、および／または、セラミック材料から成る粒状物で実質的に構成されている。粒状物に加えて、あるいは代わりに、比較的低重量に良好な振動減衰容量を組み合わせられる膨張された粘土のような他の材料を用いることがまたできる。

本発明の目的のために、ケーシング１０、２０が作られる鋼の線熱膨張係数とできるだけ近い線熱膨張係数をもった凝集体を空間３０内に形成するために、樹脂の量ができるだけ小さくなった混合物（石材料の粒と一緒に結合する作用が無い）を使用することが優先される。

真の単一部材のスリーブを得るために、空間３０の内側を成形した後に、樹脂の交差結合の結果としての硬化に続いて、凝集体またはこの凝集体を含む全体構造に、振動運動を与えることによって、混合物が圧縮工程を受けることが必要とされる。

上記に示される目的は、本発明の以下の特徴によって達成される。
(a)管状本体１０、２０を製作するように用いられる鋼の高弾性係数と、空間３０を充填する凝集体の著しい厚さとに起因した高慣性モーメントによって確実にされること。
(b)構造体の全体重量が、鋼の約７.８kg/cm³の比重量に比べて、凝集体が２.４kg/cm³の範囲の比質量を一般的に有しているので、比較的に小さいこと。
(c)加工中の被加工物への振動の伝達が最小であり、もし現存しなければ、従って、形成された複合構造体が溶接された鋼板で独占的に作られた構造体で得られるよりも約１０倍もの大きさの値となる振動減衰係数を有していること。
(d)工作機械の運転中に主軸の内側に発生される部分的な熱の適切な消散を確実にするようにできること。

ここに行われた説明は推奨実施例に係わるものであるが、本発明の他の形態および変更が、添付の請求の範囲内においてまた可能であることが理解される。

特に、スリーブが小さな直径を有し、および／または減少された応力を受ける場合に、内管状ケーシング２０が、凝集体の成形および硬化の際に、省くようにできても、この場合に、所要される幾何学的な寸法特性の外ケーシング１０だけと接触するようになる凝集体に与えられるように、例えばポリエチレンのような、少なくとも表面的に非接着の材料を用いて作られる取り外し可能な枠体を用いるよう所要される。

本実施例において、リング２３と同等である部材が、外管状ケーシングの内面に、この場合に、固着して設けることができる。

上述の説明と図面が、内外ケーシング１０、２０間に形成される空間３０を凝集体４０が完全に充填している構造的解決を説明し、図示しているが、振動の十分な減衰を確実にして、同時に、冷却管の配置を容易にすると共にスリーブの寸法と重量を減少するように、凝集体４０の層が部分的にだけあることが考えられるようにできる。

より明確にするために、他の図面に示される詳細な部分が省略された、本発明に従ったスリーブの斜視図である。 図１のII―II線に沿ったスリーブの長手方向の断面図である。 図２のIII―III線に沿ったスリーブの横断面図である。 図２のIV―IV線に沿ったスリーブの横断面図である。 図４のV―V線に沿ったスリーブの長手方向の断面図である。

Claims (20)

1. 主軸が取り付けられる管状本体を有する型の、工作機械に使用するための、支持構造において、強固な材料で作られたケーシング(10)と、該ケーシング(10)の内面の少なくとも一部と接触し、粒状の石および／またはセラミック、および／または膨張された粘土材料、および、硬化型の樹脂から成る混合物の硬化によって形成される凝集体(40)から成る層とを有し、前記凝集体の層が、前記主軸を収納する空所を形成しており、該凝集体(40)は、該ケーシング(10)の熱膨張係数と近い熱膨張係数を有していることを特徴とする支持構造。
2. 凝集体(40)の前記層は、前記ケーシング(10)と、同軸をなし前記第１ケーシング(10)の内側に収納された第２の管状ケーシング(20)との両部材によって形成される空間(30)を少なくとも部分的に充填するように作られるので、結果的な構造が単一部片から成ることを特徴とする請求項１に記載の支持構造。
3. 前記凝集体(40)は、前記第２の管状ケーシング(20)の熱膨張係数と近い熱膨張係数を有していることを特徴とする請求項２に記載の支持構造。
4. 前記空間(30)の内側に、外ケーシング(10)の内面と内ケーシング(20)の外面とを一緒に接続するための手段が配置されることを特徴とする請求項２に記載の支持構造。
5. 前記接続手段は、外ケーシング(10)および内ケーシング(20)の前記面に固着されるリング部材(23)からなり、前記リング部材(23)は前記空間(30)の厚さに等しい高さ(Ｈ)を有することを特徴とする請求項４に記載の支持構造。
6. 前記リング部材(23)の各々は、リング部材の直径(Ｄ2)よりも大きくない直径(Ｄ1)を有する同軸の孔(22)を囲んでおり、前記孔(22)は、少なくとも内ケーシング(20)の面に設けられていることを特徴とする請求項５に記載の支持構造。
7. 前記外ケーシング(10)の内面および／または前記内ケーシング(20)の外面は、凝集体の層の固着を良好にするために、粗くされていることを特徴とする請求項１または２に記載の支持構造。
8. 前記外ケーシング(10)の内面および／または前記内ケーシング(20)の外面は、凝集体の握持を良好にするために、前記構造の軸心に平行および／または垂直な握持手段が設けられていることを特徴とする請求項１または２に記載の支持構造。
9. 前記外ケーシング(10)が鋼板で作られることを特徴とする請求項１または２に記載の支持構造。
10. 前記内ケーシング(20)が鋼板で作られることを特徴とする請求項２に記載の支持構造。
11. 前記内ケーシング(20)が作られる鋼板は、前記外ケーシング(10)が作られる鋼板よりも薄いことを特徴とする請求項１０に記載の支持構造。
12. 前記内ケーシング(20)は、成形されるプラスチック材料から作られることを特徴とする請求項２に記載の支持構造。
13. 冷却流体の循環のための管(32,34)が、前記凝集体の層内に埋設されていることを特徴とする請求項１または２に記載の支持構造。
14. 上記請求項１ないし１３に規定される工作機械の主軸支持構造を製造する方法において、
    高弾性係数を有する材料で作られて、少なくとも１つの主軸の挿入および固着を許すようにできる一端部(50)を有する第１管状ケーシング(10)を準備する工程、
    前記第１ケーシング(10)の断面寸法よりも小さい断面寸法を有する強固な第２管状ケーシング(20)を準備する工程、
    前記２つのケーシング(10,20)間に空間(30)を生じるように、前記第１ケーシング(10)の内側に、かつ同一軸心に沿って前記第２ケーシング(20)を挿入する工程、
    少なくとも１つの粒状の石および／またはセラミック、および／または膨張した粘土材料、および、硬化型の合成樹脂から成る混合物を準備する工程、
    予定された量によって前記空間(30)を充填するように前記混合物を注型する工程、
    こうして製造された構造に振動運動の適用手段によって圧密する工程、
    少なくとも第１管状ケーシング(10)およびこれと接触される凝集体(40)の層によって形成され、該凝集体(40)は、該第１ケーシング(10)の熱膨張係数と近い熱膨張係数を有している、単一部片構造を得るように前記樹脂を硬化する工程、
    から成ることを特徴とする方法。
15. 前記凝集体(40)は、前記第２ケーシング(20)の熱膨張係数と近い熱膨張係数を有していることを特徴とする請求項１４に記載の方法。
16. 前記外ケーシング(10)は鋼板から作られて、前記内ケーシング(20)は薄い鋼板から成り、前記外ケーシング(10)の内面および前記内ケーシング(20)の外面を一緒に接続するための手段が前記空間(30)内に設けられていることを特徴とする請求項１４に記載の方法。
17. 前記接続手段は、前記ケーシング(10),(20)間に配置されて少なくとも１つの前記ケーシング(10,20)の隣接面に強固に接合されるリング部材(23)であり、前記リング部材(23)は、前記空間(30)の厚さに等しい高さを有していることを特徴とする請求項１６に記載の方法。
18. 前記空間(30)を設定する前記ケーシング(10,20)の少なくとも１つの面が、粗くされる際の予備工程を有することを特徴とする請求項１４に記載の方法。
19. 前記予備工程は、少なくとも１つの前記ケーシング(10,20)の面をサンドブラストすることから成ることを特徴とする請求項１８に記載の方法。
20. 冷却流体の循環のための管(32,34)は、前記混合物を注型するための工程(e)の前に、前記空間(30)内に設けられることを特徴とする請求項１４に記載の方法。

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