JP4659237B2 - 液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクターに関する。
【0002】
【従来の技術】
移動相として液体の溶媒(溶離液)を用いる液体クロマトグラフにおいては、固定相の充填剤が充填されたカラム内に、試料(サンプル)液と溶媒とをインジェクターと称される容器から順次送出するのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の液体クロマトグラフィでは、カラムのほかにインジェクターを用いているために、サンプル液や溶媒によって汚染されたインジェクターを洗浄するのが煩雑になる、カラム内においてサンプルと溶媒とが混ざってしまいサンプルの濃度が低下してしまう、クロマトグラフィを開始するまでに比較的長時間を要するなどの不利益がある。そこで、インジェクター中に充填剤を充填してインジェクター内でサンプルを吸着させた後、液体クロマトグラフィを行うことも考えられる。
【0004】
この場合、ピストンとシリンダとからなるインジェクターであれば、シリンダ中に充填剤を充填し、さらに充填剤上にサンプル液を直載せしてからピストンをシリンダ内に挿入することになるが、その際にシリンダとピストンとの間の閉鎖空間に空気が残っていると、カラムに空気が送り込まれてカラム内の充填剤が乾燥したり、サンプルの結晶化が起こってしまう恐れがある。しかしながら、現状の液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクターでは、シリンダとピストンとの間の閉鎖空間に空気が残ってしまうのを防止することができない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、シリンダとピストンとの間の閉鎖空間に空気が残ってしまうことを効率よく防止することができる液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクターを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクターは、充填剤が充填されるシリンダと、前記シリンダに挿入された状態において前記シリンダとの間に形成される閉鎖空間と外部空間とを連通する孔が設けられたピストンと、前記孔が閉じた状態と開いた状態とを切り替えるための切替部材としての前記孔に螺合可能なボルトとを備えている。
【0007】
請求項1によると、切替部材を設けることによって、孔が開いた状態でピストンを押し下げて閉鎖空間内の空気を孔を介して外部に追い出してから孔が閉じた状態にすることができる。これにより、シリンダとピストンとの間の閉鎖空間に空気が残ってしまうのを効率よく防止することができるので、カラム内の充填剤が乾燥したり、サンプルの結晶化が起こってしまうのを抑制することが可能となる。また、サンプル液や溶媒によって汚染されたインジェクターを洗浄することなくインジェクターを使い捨てにすることができ、さらに、カラムを用いた場合であってもカラム内においてサンプルと溶媒とが混ざってしまいサンプルの濃度が低下してしまうこともなく、予めサンプルを充填剤に吸着させておくことができるためにクロマトグラフィを開始するまでに長時間を要しなくなる。
また、孔に螺合可能なボルトを切替部材として用いることにより、孔が閉じた状態と開いた状態とを簡単な構造により簡易に切り替えることが可能となる。
【0012】
また、請求項2の液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクターは、前記孔が、前記シリンダへの挿入方向について前記ピストンを貫通するように設けられていることを特徴としている。
【0013】
請求項2によると、ピストンの後端(シリンダとは反対側の端部)に切替部材が配置されることになるので、切替部材の操作が容易になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクターの分解側面図である。図1に示すように、本実施の形態の液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクター(以下、「インジェクター」と称する)1は、ほぼ円筒型のシリンダ2と、一部分がシリンダ2内に挿入されるピストン3と、ピストン3に螺合されるボルト4とから構成されている。これらの各部材2〜4は、樹脂材料から射出成形などの方法によってそれぞれ一体成形されている。
【0016】
シリンダ2の内側空洞は、一端側において鍔2aが設けられた開口部2cを介して外部と連通していると共に、他端側において先細の突起部2bに設けられた孔を介して外部と連通している。この内側空洞は、突起部2bを除いて、ピストン3の外径とほぼ同じ内径を有している。また、シリンダ2の内側空洞の突起部2b側から全長の7〜8割程度までの領域にはシリカゲルなどの充填剤21が充填されており、内側空洞の開口部2c側から全長の2〜3割程度の領域は空洞のままとなっている。
【0017】
ピストン3は、開口部2cからシリンダ2の内側空洞に挿入される円柱形状の挿入部3aと、挿入部3aの一端側にこれよりも大径に形成されたストッパ部3bと、ストッパ部3bから挿入部3aとは反対側に突出した首部3cと、首部3cの一端側に形成された操作部3dとから構成されている。挿入部3aの先端近傍は環状の凹部(図示せず)となっており、この凹部には、ピストン3をシリンダ2に挿入する際の挿入部3a周辺からの漏れ防止のためのOリング3fが取り付けられている。
【0018】
ピストン3には、挿入部3aから操作部3dにかけて、シリンダ2への挿入方向についてピストン3を貫通するような孔3eが形成されている。孔3eの操作部3d側の部分には、ボルト4を螺合するための雌ねじが形成されている。
【0019】
ボルト4は、挿入部3d側から孔3eに挿入される挿入部4aと、挿入部4aの一端側にこれよりも大径に形成された操作部4bとから構成されている。挿入部4aの外周面には、雄ねじが形成されている。ボルト4の挿入部4aが孔3eに螺合されているときには孔3eが閉塞されて閉じた状態となり、ボルト4の挿入部4aが孔3eに螺合されていないときには孔3eは貫通した開いた状態となる。このように、本実施の形態では、ボルト4をピストン3の孔3eに螺合させるか否かによって、孔3eが閉じた状態と開いた状態とを操作者が任意に切り替えることが可能となっている。
【0020】
次に、上述のように構成された本実施の形態のインジェクター1の使用方法について、図2をさらに参照して説明する。図2は、図1に示すインジェクターの使用方法を工程順に描いた模式図である。
【0021】
まず、図2(a)に示すように、下方から充填剤21が充填されたシリンダ2内に、上方からサンプル液22を流し込む。流し込まれるサンプル液22は、その上面と開口部2cとの間に十分な距離が確保される分量とする。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、シリンダ2の開口部2cから内側空洞へとピストン3の挿入部3aをゆっくりと挿入していく。このとき、ボルト4を取り外しておくか或いは緩めておくことで、孔3eを開いた状態としておく。これにより、ピストン3とシリンダ2とで囲まれた閉鎖空間31は、孔3eを介して外部空間と連通していることになる。そのため、ピストン3の挿入部3aが下方へと移動すると、それに応じて閉鎖空間31内の空気が孔3eから外部へと流れ出す。
【0023】
このようにピストン3の挿入部3aが下方へと移動していくと、やがて挿入部3aの下面がサンプル液22と隙間なく密着することになって、ピストン3とシリンダ2との間には空気が存在しなくなる。このような状態となってから、図2(c)に示すように、ボルト4を孔3eに対して強固に螺合させることにより、孔3eを閉じた状態にする。
【0024】
しかる後、ピストン3を押し下げると、孔3eが閉じた状態になっているために、サンプル液22には大きな圧力が加えられることになり、ピストン3は充填剤21が充填された領域内にサンプル液22を徐々に押し込んでいく。そして、図2(d)に示すように、ピストン3の挿入部3aの下面が充填剤21の上面に接する状態では、充填剤21が充填された領域内にサンプル液22の全量が押し込まれている。この後、ボルト4がピストン3から取り外されて、孔3e内に溶媒が流し込まれる。これによって、充填剤21に溶媒が与えられて、サンプル液22の成分が分離されるので、これを突起部2bから分取することが可能になる。なお、インジェクター1が短い長さしか有していない場合などには、インジェクター1の突起部2bから取り出された液体をさらにカラム(図示せず)に送液し、カラムから取り出された液体を分取してもよい。
【0025】
上述したように、本実施の形態のインジェクター1によると、ピストン3に螺合されるボルト4を有しているために、孔3eが開いた状態でピストン3を押し下げて閉鎖空間31内の空気を孔3eを介して外部に追い出してから孔3eが閉じた状態にすることができる。これにより、シリンダ2とピストン3との間の閉鎖空間31に空気が残ってしまうのを効率よく防止することができるので、カラム内の充填剤21が乾燥したり、サンプルの結晶化が起こってしまうのを抑制することが可能となる。また、サンプル液や溶媒によって汚染されたインジェクターを洗浄することなくインジェクターを使い捨てにすることができ、さらに、カラムを用いた場合であってもカラム内においてサンプルと溶媒とが混ざってしまいサンプルの濃度が低下してしまうこともなく、予めサンプルを充填剤に吸着させておくことができるためにクロマトグラフィを開始するまでに長時間を要しなくなる。
【0026】
また、本実施の形態のインジェクター1によると、ピストン3の孔3eに螺合可能なボルト4によって孔3eが閉じた状態と開いた状態とを切り替えることができるので、この切替を簡単な構造により簡易に行うことが可能である。
【0027】
また、本実施の形態のインジェクター1によると、孔3eの閉じた状態と開いた状態とを切り替えるためのボルト4がピストン3の後端(シリンダ2とは反対側の端部)に配置されることになるので、操作者がボルト4を容易に操作することができるという利点がある。
【0028】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図3を参照して説明する。本実施の形態のインジェクターは、切替部材として第1の実施の形態で用いたボルト4の代わりに三方バルブを用いるようにしたものである。なお、本実施の形態のインジェクターは、三方バルブを用いている点以外は図1で説明した第1の実施の形態のものと同様に構成されているので、図3において図1と共通の部材について同じ符号を用いることとし、ここではその説明を省略する。
【0029】
図3に示すように、本実施の形態のインジェクター51は、ピストン3の操作部3dにおいて孔3eと三方バルブ41の1つの開口41aとが接続されたものである。また、三方バルブ41は、孔3eと接続された開口41aの他に、大気解放された開口41b、および、サンプルや溶媒が供給されるチューブ42に接続された開口41cを有している。そして、図示しないレバーを操作することによって、開口41aと開口41bとが接続された状態と、開口41aと開口41cとが接続された状態とを切り替えることができるようになっている。
【0030】
本実施の形態のインジェクター51を使用する場合には、まず、三方バルブ41を開口41aと開口41cとが接続された状態にしてサンプル液をシリンダ2内に供給してから、三方バルブ41を開口41aと開口41bとが接続された状態に切り替える。それから、ピストン3を押し込んで閉鎖空間31内の空気を三方バルブ41を介して外部に追い出す。
【0031】
そして、再び三方バルブ41を開口41aと開口41cとが接続された状態にしてピストン3を押し込み、サンプル液を充填剤に吸着させる。サンプル液の全量を押し込んだ後、三方バルブ41を介してシリンダ2内に溶媒を供給する。このように、本実施の形態のインジェクター51は、三方バルブ41を用いることによって孔3eが閉じた状態と開いた状態とサンプル液が供給される状態とを簡易な操作で切り替えることができるという点で利便性が高い。
【0032】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述の実施の形態では、切替部材としてボルトまたは三方バルブを用いたが、切替部材としては、孔の閉じた状態と開いた状態とを切り替えることができるものであれば他の部材を用いることもできる。ただし、上述の実施の形態のようにピストンの孔に螺合可能なボルトや三方バルブを用いることで、孔が閉じた状態と開いた状態とを簡易に、簡単な構造でしかも確実に切り替えることができるという利点がある。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1によると、切替部材を設けることによって、孔が開いた状態でピストンを押し下げて閉鎖空間内の空気を孔を介して外部に追い出してから孔が閉じた状態にすることができる。これにより、シリンダとピストンとの間の閉鎖空間に空気が残ってしまうのを効率よく防止することができるので、カラム内の充填剤が乾燥したり、サンプルの結晶化が起こってしまうのを抑制することが可能となる。また、サンプル液や溶媒によって汚染されたインジェクターを洗浄することなくインジェクターを使い捨てにすることができ、さらに、カラムを用いた場合であってもカラム内においてサンプルと溶媒とが混ざってしまいサンプルの濃度が低下してしまうこともなく、予めサンプルを充填剤に吸着させておくことができるためにクロマトグラフィを開始するまでに長時間を要しなくなる。
【0034】
さらに、請求項1によると、孔に螺合可能なボルトを切替部材として用いることにより、孔が閉じた状態と開いた状態とを簡単な構造により簡易に切り替えることが可能となる。
【0035】
請求項2によると、ピストンの後端(シリンダとは反対側の端部)に切替部材が配置されることになるので、切替部材の操作が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクターの分解側面図である。
【図2】図1に示すインジェクターの使用方法を工程順に描いた模式図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態にかかる液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクターの分解側面図である。
【符号の説明】
1 インジェクター
2 シリンダ
2a 鍔
2b 突起部
2c 開口部
3 ピストン
3a 挿入部
3b ストッパ部
3c 首部
3d 操作部
3e 孔
3f Oリング
4 ボルト
4a 挿入部
4b 操作部
21 充填剤
22 サンプル液
31 閉鎖空間
Claims (2)
- 充填剤が充填されるシリンダと、
前記シリンダに挿入された状態において前記シリンダとの間に形成される閉鎖空間と外部空間とを連通する孔が設けられたピストンと、
前記孔が閉じた状態と開いた状態とを切り替えるための切替部材としての前記孔に螺合可能なボルトとを備えていることを特徴とする液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクター。 - 前記孔が、前記シリンダへの挿入方向について前記ピストンを貫通するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体クロマトグラフィの直載せ用インジェクター。
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