JP4657539B2 - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体の製造方法に関するものであり、詳しくは特定の濾材のフィルターで濾過された顔料分散液を塗布して得られる電子写真感光体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機電荷発生物質や有機電荷輸送物質等の有機光導電性物質を主成分とする感光層を有する電子写真感光体は、製造が比較的容易であること、安価であること、取扱が容易であること、熱安定性が優れている等多くの利点を有することから現在では電子写真感光体の主流となっており、大量に生産されている。これらの電子写真感光体は複写機やレーザープリンタ等に利用されている。
【0003】
有機光導電性物質を用いた電子写真感光体の中では、電荷発生機能と電荷輸送機能とを異なる物質に分担させた機能分離型感光体が主流となり、広く利用されている。機能分離型感光体の特徴はそれぞれの機能に適した材料を広い範囲から選択できることであり、任意の性能を有する感光体を容易に作製し得ることから多くの研究が進められてきた。
【0004】
このうち、電荷発生機能を担当する物質としては、フタロシアニン顔料、スクエアリウム系染料、アゾ顔料、ペリレン系顔料等の多種の物質が検討され、中でもフタロシアニン顔料は近赤外光に対して高感度な特性が期待できることからレーザープリンター用感光体材料としての実用化も進んでいる。フタロシアニン顔料は、中心金属の種類により吸収スペクトルや光導電性が異なるだけでなく、同じ中心金属を有するフタロシアニンでも、結晶形によってこれらの諸特性に差が生じ、特定の結晶形が電子写真感光体に選択されていることが報告されている。
【0005】
有機光導電性物質を用いた電子写真感光体の製造方法としては、多くの場合、有機光導電性物質等を含有する塗布液中に導電性支持体を浸漬させる手段が採用されている。電荷発生層と電荷輸送層を積層した機能分離型感光体の場合、顔料とバインダー溶液(結着樹脂溶液)を混合分散して得られる電荷発生層塗布液(顔料分散液)、電荷輸送物質とバインダー溶液(結着樹脂溶液)を混合して得られる電荷輸送層塗布液をこの順に、あるいはこの順序を逆にして塗布することにより製造される。
【0006】
顔料分散液を塗布する場合、凝集した顔料粒子や分散液製造時または塗布時に混入する不純物などを除去するために、濾過用のフィルターがよく使われる。フィルターで濾過しない顔料分散液を塗布してしまうと、塗布面にピンホールや濃度ムラが発生するなど、顔料分散液の塗布性が悪化することが多くなる。一方、フィルターで濾過した顔料分散液を塗布することによってこれらの問題点が多少は改善される。
【0007】
特開2001−194809号公報には、化学繊維を濾材とする濾過装置を用いた手法が開示されている。しかし、化学繊維を濾材とする濾過装置で顔料分散液を濾過しても、塗布面にピンホールや濃度ムラが発生するなどの問題点が生じてしまい、良好な塗布面を有する電子写真感光体を得ることはできない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、良好な塗布面を有し、電子写真プロセスにより画像形成を行う際に、白ポチ、黒ポチ、濃度ムラ等の画像故障のない電子写真感光体の製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために種々の検討をした結果、導電性支持体上に少なくとも電子写真感光体製造用顔料分散液を塗布する電子写真感光体の製造方法において、顔料分散液の製造直後から塗布するまでの間に少なくとも1回は綿を濾材とするフィルターで顔料分散液を濾過することが有効であることを見いだし、本発明に至ったものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各構成要素について詳細に説明する。
【0011】
本発明で使用される電荷発生物質用顔料としては、モノアゾ顔料、ポリアゾ顔料、金属錯塩アゾ顔料、ピラゾロンアゾ顔料、スチルベン顔料及びチアゾールアゾ顔料などに代表されるアゾ系顔料、ペリレン酸無水物及びペリレン酸イミドなどに代表されるペリレン系顔料、アントラキノン誘導体、アントアニトロン誘導体、ジベンズピレンキノン誘導体、ピラントロン誘導体、ビオラントロン誘導体及びイソビオラントロン誘導体などに代表されるアントラキノン系または多環キノン系顔料、金属フタロシアニン、金属ナフタロシアニン、無金属フタロシアニン、無金属ナフタロシアニンなどに代表されるフタロシアニン系顔料などが挙げられる。これらの中で、フタロシアニン系顔料を用いると、本発明の製造方法により、特に良好な塗布面を有する電子写真感光体が得られるため好ましい。
【0012】
フタロシアニン系顔料の中でもチタニルオキシフタロシアニンまたはチタニルオキシフタロシアニンと無金属フタロシアニンを含有するフタロシアニン組成物が特に感度、繰り返し特性、画像特性の優れた電子写真感光体を与えるため好ましい。チタニルオキシフタロシアニンの中ではCuKα1.541オングストロームのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が27.2°にピークを示すチタニルオキシフタロシアニンが好ましく、前記ブラッグ角が9.5°、13.5°、14.2°、18.0°、24.0°、27.2°にピークを有するチタニルオキシフタロシアニンが特に好ましい。チタニルオキシフタロシアニンと無金属フタロシアニンを含有するフタロシアニン組成物の中ではCuKα1.541オングストロームのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が27.3°にピークを示すフタロシアニン組成物が好ましく、前記ブラッグ角が7.0°、9.0°、14.1°、18.0°、23.7°、27.3°にピークを有するフタロシアニン組成物が特に好ましい。
【0013】
本発明で用いられるチタニルオキシフタロシアニンは、既に提案した特開平11−349841号公報等に記載されている方法で製造することができる。また、本発明で用いられるフタロシアニン組成物は、既に提案した特開2000−313819号公報等に記載されている方法で製造することができる。
【0014】
本発明で用いられるバインダー(結着樹脂)としては、アセタール樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニル系共重合樹脂、シリコン樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アセタール樹脂、ブチラール樹脂を用いることにより、顔料分散液が非常に高い分散性を示し、塗布性も良好になる。さらに、その分散液を用いて電子写真感光体を作製することにより、帯電性、感度、繰り返し安定性、画像特性が良好になる。そのため、本発明においてはバインダーとしてアセタール樹脂またはブチラール樹脂を用いるのが特に好ましい。これらの樹脂は単独、あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0015】
顔料分散液中では電荷発生物質用顔料100質量部に対し、バインダーは10〜500質量部、好ましくは50〜150質量部の範囲で用いられる。樹脂の比率が高くなりすぎると電子写真感光体の電荷発生効率が低下し、また樹脂の比率が低くなりすぎると成膜性に問題が生じる。
【0016】
本発明において電荷発生物質用顔料の分散に使用される溶媒としては、水または有機溶媒が挙げられ、単独、あるいは2種以上の混合溶媒として使用される。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、α−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。特にその中でも、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が好ましい。
【0017】
本発明においてフタロシアニンを分散する際には、水を含有する有機溶媒中で分散するのが好ましい。水の添加量が少なすぎると他の結晶形への転移を生じてしまい、添加量が多すぎると分散不良や塗液から水の分離、更に分散溶媒からのバインダーの析出が生じてしまい、感光体の作製に好ましくない。したがって、本発明で使用する水の量はフタロシアニン1質量部に対して0.1〜0.95質量部が好ましく、0.3〜0.9質量部がより好ましく、さらに0.5〜0.85質量部が特に好ましい。
【0018】
本発明においてフタロシアニン分散液製造の際に水を使用する場合、有機溶媒としては水溶性の有機溶媒を使用するのが好ましい。水溶性有機溶媒の具体例としては、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
【0019】
電荷発生物質用顔料の分散に使用する装置は、ボールミル、ペイントコンディショナー、縦型ビーズミル、水平型ビーズミル、アトライター等の分散メディアを用いる分散機である。分散メディアの材質としては、ソーダガラス、低アルカリガラス、イットリア含有ジルコニアが好ましく、直径数mmのビーズ状のものがよく使われる。
【0020】
本発明において顔料分散液を塗布する方法としては、回転塗布、ブレード塗布、ナイフ塗布、リバースロール塗布、ロッドバー塗布、スプレー塗布等の様な公知の方法が使われる。また、特にドラムに塗布する場合には、浸漬(ディップ)塗布方法等が用いられる。
【0021】
本発明では顔料分散液の製造直後から塗布するまでの間に少なくとも1回は綿を濾材とするフィルターで濾過する。綿を濾材とするフィルターで濾過された顔料分散液を塗布することにより、凝集した顔料粒子等が除去されやすくなり、塗布面にピンホールや濃度ムラが発生しなくなる。その結果、電子写真プロセスにより画像形成を行う際に、白ポチ、黒ポチ、濃度ムラなどの画像故障のない電子写真感光体を得ることができる。顔料分散液を塗布する直前に綿を濾材とするフィルターで濾過することにより、特に良好な塗布面を有する電子写真感光体が得られるため好ましい。
【0022】
本発明では顔料分散液の濾過に綿を濾材とするフィルターが使用されるが、濾材が綿以外であるフィルターを併用することもできる。使用してもよい濾材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、セルロースアセテート、ポリエーテルサルホン、四フッ化エチレン樹脂、アクリル樹脂、ガラス繊維、ステンレス、活性炭等が挙げられる。しかし、綿以外のこれらの濾材を有するフィルターを使用しても凝集した顔料粒子等の除去率が高くならないため、良好な塗布面を有する電子写真感光体を得るのには効果的でない。
【0023】
本発明で使用される濾過装置としてはフィルターカートリッジ式の濾過装置が好ましいが、これに限定されるものではない。また、本発明では濾過装置(フィルター)を有する循環式塗布装置を用いるのが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明の電子写真感光体の形態は、その何れを用いることもできる。例えば、導電性支持体上に電荷発生物質、電荷輸送物質、及びバインダーからなる感光層を設けたものがある。また、導電性支持体上に、電荷発生物質とバインダーからなる電荷発生層と、電荷輸送物質とバインダーからなる電荷輸送層を設けた積層型の感光体も知られている。電荷発生層と電荷輸送層はどちらが上層となっても構わない。
【0025】
本発明の電子写真感光体の構成中には、感光層と導電性支持体の間に、感光層から導電性支持体への電荷の注入をコントロールするための下引き層(ブロッキング層)を必要に応じ設け、また感光層表面には感光体の耐久性を向上させるために表面保護層を設けても構わない。また、積層型感光体の場合は電荷発生層と電荷輸送層との間に中間層を設けることもできる。
【0026】
本発明に係わる導電性支持体としては、周知の電子写真感光体に採用されているものをはじめ種々のものが使用できる。具体的には、例えば金、銀、白金、チタン、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、導電処理をした金属酸化物等のドラム、シート、ベルト、あるいはこれらの薄膜のラミネート物、蒸着物等が挙げられる。
【0027】
さらに、金属粉末、金属酸化物、カーボンブラック、炭素繊維、ヨウ化銅、電荷移動錯体、無機塩、イオン伝導性の高分子電解質等の導電性物質を適当なバインダーと共に塗布しポリマーマトリックス中に埋め込んで導電処理を施したプラスチックやセラミック、紙等で構成されるドラム、シート、ベルト等、またこのような導電性物質を含有し導電性となったプラスチック、セラミック、紙等のドラム、シート、ベルト等が挙げられる。
【0028】
下引き層は、バインダー樹脂単独、あるいはバインダー樹脂と無機顔料等との混合で構成される。バインダー樹脂としては、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。また、無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0029】
下引き層は導電性支持体の表面化度や、低温低湿時の電子写真特性に従ってその膜厚が決定されるが、0.1から30μmで用いられる。
【0030】
本発明において電荷輸送物質を使用する場合、用いられる電荷輸送物質には正孔移動物質と電子移動物質がある。正孔移動物質としては、オキサジアゾール類、トリフェニルメタン類、ピラゾリン類、ヒドラゾン類、オキサジアゾール類、トリアリールアミン類、スチルベン類等が挙げられる。一方、電子移動物質としては、クロラニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド等が挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0031】
積層型感光体では少なくともこれら電荷輸送物質とバインダーとの混合で電荷輸送層が構成される。電荷輸送層に用いられるバインダーとしては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル樹脂、ビスフェノールAやZに代表される骨格を持つポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド、ポリイミド等を用いることができる。これらのバインダーは単独、あるいは2種以上用いることができる。
【0032】
電荷輸送層に含有されるこれらのバインダーは、電荷輸送物質100質量部に対して0.1〜2000質量部が好ましく、1〜500質量部がより好ましい。バインダーの比率が高すぎると感度が低下し、また、バインダーの比率が低くなりすぎると繰り返し特性の悪化や塗膜の欠損を招くおそれがある。
【0033】
本発明において、電子写真感光体に電荷輸送層を有する場合、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質及びバインダーは溶媒に溶解させて使用する。使用される溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、α−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。特にその中でも、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒が好ましい。
【0034】
本発明の電子写真感光体は、構成材料の有機化合物の酸化による劣化を防止するために、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、DL−α−トコフェロール等の酸化防止剤を感光層に添加するのが好ましい。これらの酸化防止剤を添加することによって、繰り返し特性の優れた電子写真感光体が得られる。
【0035】
本発明において下引き層塗布液、電荷輸送層塗布液を塗布する方法としては、回転塗布、ブレード塗布、ナイフ塗布、リバースロール塗布、ロッドバー塗布、スプレー塗布等の様な公知の方法が使われる。また、特にドラムに塗布する場合には、浸漬(ディップ)塗布方法等が用いられる。
【0036】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0037】
実施例1
アルコール可溶性ナイロン(東レ製;CM−8000)0.2kgをメタノール5.5kgと1,3−ジオキソラン3.6kgの混合溶剤中に溶解した。これに微粒子酸化チタン(石原産業製;TTO−55(D))1.3kgを加えて、直径2mmのイットリア含有ジルコニアビーズを分散メディアとしてダイノ−ミル(シンマルエンタープライゼス製;KD−5型)で10時間分散して一次分散液を得た。次に、この一次分散液にアルコール可溶性ナイロン(東レ製;CM−8000)2.2kgをメタノール29.5kgと1,3−ジオキソラン19.7kgの混合溶剤中に溶解した溶液を加え、さらにダイノ−ミル(シンマルエンタープライゼス製;KD−5型)で2時間分散して得られた二次分散液を、ポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−10N−PPS)で濾過して下引き層塗布液を作製した。この塗布液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−10N−PPD)を有する循環式浸漬塗布装置にてアルミ素管上に塗布して乾燥し、膜厚0.5μmの下引き層を形成した。
【0038】
水0.17kgを溶解させた1,3−ジオキソラン2.6kgにブチラール樹脂(積水化学製;BL−2)0.02kgを溶解し、この溶液中に、既に提案した特開2000−313819号公報に記載されている方法に従って製造して得られたフタロシアニン組成物0.21kgを加えて、直径1mmの低アルカリガラスビーズを分散メディアとしてダイノ−ミル(シンマルエンタープライゼス製;KD−5型)で4時間分散して一次分散液を得た。次に、この一次分散液にブチラール樹脂(積水化学製;BL−2)0.12kgを1,3−ジオキソラン10.8kgに溶解して得られた溶液を加え、さらにダイノ−ミル(シンマルエンタープライゼス製;KD−5型)で20分間分散して得られた二次分散液を、綿を濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1−CSS)で濾過して電荷発生層塗布液を作製した。この塗布液を綿を濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1−CSD)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。
【0039】
次に、(1)で示されるスチルベン化合物18kg、ポリカーボネート(三菱ガス化学製;Z−400)18kg、DL−α−トコフェロール(理研ビタミン製;E1000)0.4kgを、テトラヒドロフラン110kgに溶解させて得られた電荷輸送物質溶液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−10N−PPS)で濾過して、電荷輸送層塗布液を作製した。この塗布液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−10N−PPD)を有する循環式浸漬塗布装置にて前期電荷発生層上に塗布して乾燥し、乾燥膜厚25μmの電荷輸送層を形成した。
【0040】
【化1】
Figure 0004657539
【0041】
このように作製した電子写真感光体を、室温暗所で一昼夜保管した後、市販の事務用複写機に装着し、画像を形成させ、その画像に故障がないか調査した。得られた複写画像の様子を表2に示す。
【0042】
実施例2
実施例1と同様に下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして得られたフタロシアニン組成物の二次分散液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1N−PPS)で濾過して電荷発生層塗布液を作製して、この塗布液を綿を濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1−CSD)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。電荷輸送層の形成は実施例1と同様に行い、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0043】
実施例3
実施例1と同様に下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして得られたフタロシアニン組成物の二次分散液をステンレスを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TSC−3−STCB)で濾過して電荷発生層塗布液を作製して、この塗布液を綿を濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1−CSD)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。電荷輸送層の形成は実施例1と同様に行い、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0044】
実施例4
実施例1と同様に下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして得られたフタロシアニン組成物の二次分散液を綿を濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1−CSS)で濾過して電荷発生層塗布液を作製して、この塗布液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1N−PPD)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。電荷輸送層の形成は実施例1と同様に行い、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0045】
実施例5
実施例1と同様に下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして得られたフタロシアニン組成物の二次分散液を綿を濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1−CSS)で濾過して電荷発生層塗布液を作製して、この塗布液をステンレスを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TSC−3−DTCB)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。電荷輸送層の形成は実施例1と同様に行い、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0046】
比較例1
実施例1と同様に下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして得られたフタロシアニン組成物の二次分散液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1N−PPS)で濾過して電荷発生層塗布液を作製して、この塗布液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1N−PPD)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。電荷輸送層の形成は実施例1と同様に行い、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0047】
比較例2
実施例1と同様に下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして得られたフタロシアニン組成物の二次分散液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1N−PPS)で濾過して電荷発生層塗布液を作製して、この塗布液をポリエステルを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1−EPD)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。電荷輸送層の形成は実施例1と同様に行い、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0048】
比較例3
実施例1と同様に下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして得られたフタロシアニン組成物の二次分散液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1N−PPS)で濾過して電荷発生層塗布液を作製して、この塗布液をセルロースアセテートを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCR−080−DBFE)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。電荷輸送層の形成は実施例1と同様に行い、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0049】
比較例4
実施例1と同様に下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして得られたフタロシアニン組成物の二次分散液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1N−PPS)で濾過して電荷発生層塗布液を作製して、この塗布液を四フッ化エチレン樹脂を濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCF−100−D1FE)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。電荷輸送層の形成は実施例1と同様に行い、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0050】
比較例5
実施例1と同様に下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして得られたフタロシアニン組成物の二次分散液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1N−PPS)で濾過して電荷発生層塗布液を作製して、この塗布液を活性炭を濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCC−W1−D0C0)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。電荷輸送層の形成は実施例1と同様に行い、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0051】
比較例6
実施例1と同様に下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして得られたフタロシアニン組成物の二次分散液をポリプロピレンを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TCW−1N−PPS)で濾過して電荷発生層塗布液を作製して、この塗布液をステンレスを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TSC−3−DTCB)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。電荷輸送層の形成は実施例1と同様に行い、実施例1と同様の画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0052】
比較例7
実施例1と同様に下引き層を形成した。次に、実施例1と同様にして得られたフタロシアニン組成物の二次分散液をステンレスを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TSC−3−STCB)で濾過して電荷発生層塗布液を作製して、この塗布液をステンレスを濾材とするフィルター(アドバンテック東洋製;TSC−3−DTCB)を有する循環式浸漬塗布装置にて前記下引き層上に塗布して乾燥し、膜厚約0.2μmの電荷発生層を形成した。電荷発生層の塗布面のピンホール及び濃度ムラの発生の有無について観測した結果を表1に示す。電荷輸送層の形成は実施例1と同様に行い、実施例1と同様の画像評価を行った。
結果を表2に示す。
【0053】
【表1】
Figure 0004657539
【0054】
【表2】
Figure 0004657539
【0055】
比較例1〜7では、電荷発生層の塗布面にピンホールや濃度ムラが発生した。
さらに、電子写真感光体を複写機に装着し、画像を形成させた際に、濃度ムラの他にも多数の白ポチ、黒ポチが発生するなど、画像故障が見られた。それに対して、実施例1〜5では、顔料分散液の濾過の際に凝集した顔料粒子等が除去されやすくなり、電荷発生層の塗布面にピンホールも濃度ムラもほとんど見られず、良好な塗布面を有する電子写真感光体が得られた。さらに、電子写真感光体を複写機に装着して画像を形成させた際の画像故障もほとんど見られなかった。これらの中でも、顔料分散液を塗布する直前に綿を濾材とするフィルターで濾過した実施例1〜3では特に良好な塗布面を有する電子写真感光体が得られ、画像特性も極めて良好であった。
【0056】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明によれば、良好な塗布面を有し、電子写真プロセスにより画像形成を行う際に、白ポチ、黒ポチ、濃度ムラ等の画像故障のない電子写真感光体の製造方法を提供することができる。

Claims (8)

  1. 導電性支持体上に少なくとも電子写真感光体製造用顔料分散液を塗布する電子写真感光体の製造方法において、顔料分散液の製造直後から塗布するまでの間に少なくとも1回は綿を濾材とするフィルターで顔料分散液を濾過することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  2. 前記顔料分散液がフタロシアニンの分散液であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体の製造方法。
  3. 前記顔料分散液がチタニルオキシフタロシアニンの分散液であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体の製造方法。
  4. 前記顔料分散液がCuKα1.541オングストロームのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が27.2°にピークを有するチタニルオキシフタロシアニンの分散液であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体の製造方法。
  5. 前記顔料分散液がCuKα1.541オングストロームのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が更に9.5°、13.5°、14.2°、18.0°、24.0°、27.2°にピークを有するチタニルオキシフタロシアニンの分散液であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体の製造方法。
  6. 前記顔料分散液がチタニルオキシフタロシアニンと無金属フタロシアニンを含有するフタロシアニン組成物の分散液であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体の製造方法。
  7. 前記顔料分散液がチタニルオキシフタロシアニンと無金属フタロシアニンを含有するフタロシアニン組成物の分散液であり、かつ該組成物がCuKα1.541オングストロームのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が27.3°にピークを有することを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体の製造方法。
  8. 前記顔料分散液がチタニルオキシフタロシアニンと無金属フタロシアニンを含有するフタロシアニン組成物の分散液であり、かつ該組成物がCuKα1.541オングストロームのX線に対するブラッグ角(2θ±0.2°)が7.0°、9.0°、14.1°、18.0°、23.7°、27.3°にピークを有することを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体の製造方法。
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