JP4655590B2 - 発光剤およびその製造方法、発光性組成物並びに有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Description
このような有機EL素子としては、陽極と陰極との間に有機材料よりなる発光層が形成された単層構造のもの、陽極と発光層との間に正孔輸送層を有する構造のもの、陰極と発光層との間に電子輸送層を有するものなどの多層構造のものが知られている。これらの有機EL素子は、いずれも、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが、発光層において再結合することによって発光するものである。
具体的には、このような構成を有する有機EL素子によれば、従来から有機EL素子の外部量子効率の限界値と考えられていた5%を超え、8%の外部量子効率が得られることが報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、この有機EL素子は低分子量の材料で構成されており、また、例えば蒸着法などの乾式法によって形成されるものであることから、物理的耐久性および熱的耐久性が小さい、という問題がある。
しかしながら、この有機EL素子においては、発光層を構成する組成物がイリジウム錯体化合物の含有割合が大きいものである場合、具体的にはホスト材料に対して7質量%の割合で分散されてなるものである場合には、イリジウム錯体化合物が凝集することによって濃度消光が生じるために蛍光量子収率が小さくなることが報告されており(例えば、非特許文献2参照。)、このような理由から、連続駆動中においては、イリジウム錯体化合物が凝集することに起因して発光効率が低下するおそれがあり、これにより、安定的な発光を得ることができない、という問題がある。
本発明の他の目的は、湿式法によって薄膜を容易に形成することができ、しかも高い発光輝度を有すると共に、発光剤が高い割合で含有されてなる場合にも安定した発光特性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることのできる発光性組成物を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、高い発光輝度が得られると共に、優れた発光安定性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
下記一般式(2)で表される化合物と、ヒドロキシフェニルピリジンとを反応させることによって下記一般式(3)で表される化合物を得、この化合物と、イリジウムアセチルアセトナートとを反応させる工程を有することを特徴とする。
<発光剤>
本発明の発光剤は、上記一般式(1)で表されるイリジウム錯体化合物(以下、「特定のイリジウム錯体化合物」ともいう。)よりなるものである。
カルバゾール誘導体に由来の基としては、例えばカルバゾリル基、3,6−ジフェニルカルバゾールなどの3,6−アリール置換カルバゾールに由来の基、3,6−ビス(ジフェニルアミノ)カルバゾールなどの3,6−アミノ置換カルバゾールに由来の基などが挙げられる。
アリール化合物に由来の基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基、p−(1−ナフチル)フェニル基、p−(2−ナフチル)フェニル基、p−(1−ピレニル)フェニル基、フルオロビフェニル基、ジフルオロビフェニル基、トリフルオロビフェニル基、トリフルオロメチルビフェニル基などが挙げられる。
ここに、極性溶媒としては、例えばグリセリン、エチレングリコール誘導体および適宜の沸点(例えば150〜250℃)を有するプロピレングリコール誘導体が挙げられる。
エチレングリコール誘導体の具体例としては、エチレングリコールモノメトキシエーテル、エチレングリコールモノエトキシエーテル、エチレングリコールモノブトキシエーテルなどを挙げることができる。
本発明の発光性組成物は、上記の発光剤よりなる発光剤成分を含有すると共に、電荷輸送能を有する高分子物質(以下、「特定の高分子物質」ともいう。)よりなる高分子物質成分を含有してなるものである。
発光剤成分の含有割合が過小である場合には、十分な発光を得ることが困難となるおそれがある。一方、発光剤成分の含有割合が過大である場合には、濃度消光を生じるおそれがあるため、好ましくない。
これらの中では、均一な厚みを有する薄膜が得られる点で、適当な蒸発速度を有するもの、具体的には沸点が70〜200℃以上の有機溶剤を用いることが好ましい。
また、組成物溶液を塗布する手段としては、例えばスピンコート法、ディッピング法、ロールコート法、インクジェット法および印刷法などを利用することができる。
図1は、本発明の有機EL素子の構成の一例を示す説明用断面図である。
この例の有機EL素子は、透明基板1上に、正孔を供給する電極である陽極2が例えば透明導電膜により設けられ、この陽極2上に正孔注入輸送層3が設けられ、この正孔注入輸送層3上に発光層4が設けられ、この発光層4上にホールブロック層8が設けられ、このホールブロック層8上に電子注入層5が設けられ、この電子注入層5上に電子を供給する電極である陰極6が設けられている。そして、陽極2および陰極6は、直流電源7に電気的に接続される。
陽極2を構成する材料としては、好ましくは、仕事関数の大きい例えば4eV以上の透明性材料が用いられる。ここで、仕事関数とは、固体から真空中に電子を取り出すのに要する最小限の仕事の大きさをいう。陽極2としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)膜、酸化スズ(SnO2 )膜、酸化銅(CuO)膜、酸化亜鉛(ZnO)膜などを用いることができる。
また、正孔注入輸送層3の厚みは、例えば10〜200nmである。
また、発光層4の厚みは、特に限定されるものではないが、通常、5〜200nmの範囲で選択される。
また、ホールブロック層8の厚みは、例えば10〜30nmである。
陰極6の厚みは、材料の種類によって異なるが、通常、10〜1000nm、好ましくは50〜200nmである。
先ず、透明基板1上に、陽極2を形成する。
陽極2を形成する方法としては、真空蒸着法またはスパッタ法などを利用することができる。また、ガラス基板などの透明基板の表面に例えばITO膜などの透明導電膜が形成されてなる市販の材料を用いることもできる。
正孔注入輸送層3を形成する方法としては、具体的に、電荷注入輸送材料を適宜の溶剤に溶解することによって正孔注入輸送層形成液を調製し、この正孔注入輸送層形成液を、陽極2の表面に塗布し、得られた塗布膜に対して溶剤の除去処理を行うことによって正孔注入輸送層3を形成する手法を用いることができる。
このような構成の有機EL素子によれば、発光層4が上記の有機EL素子用重合体組成物によって形成されているため、高い発光輝度が得られる。
(原料トリアジン化合物の合成例1)
窒素雰囲気下において、カルバゾール27.3g(0. 163mol)−ジエチルエーテル180ml溶液を氷浴状態とし、濃度1.6mol/lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液を101ml滴下した後、氷浴状態のまま2時間撹拌することによりリチオ化カルバゾールのジエチルエーテル溶液を調製した。このジエチルエーテル溶液を、窒素雰囲気下において、塩化シアヌル15g(0.081mol)を溶解したジエチルエーテル溶液に滴下して還流させながら反応させ、還流が収まった後に反応溶液を60℃に加熱し、6時間撹拌した。得られた反応溶液を水1Lに注ぐことによって析出した固体をろ別し、クロロベンゼンで再結晶することにより、一般式(2)において、R1 およびR2 がカルバゾリル基であるトリアジン化合物(以下、「原料トリアジン化合物(1)」ともいう。)28.2gを得た。
原料トリアジン化合物(1)15g(0.011mol)と、p−ヒドロキシフェニルピリジン1.92g(0.011mol)とをクロロホルム125mlに溶解した溶液に、水酸化ナトリウム0.45gを溶解した水溶液25mlを注いだ後、2時間撹拌した。得られた反応溶液を分液抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥してクロロホルムを留去することにより、一般式(3)において、R1 およびR2 がカルバゾリル基であり、トリアジンエーテル基がベンゼン環における位置番号4の炭素原子に結合されたフェニルピリジン化合物(以下、「中間原料フェニルピリジン化合物(1)」ともいう。)6.2gを得た。
イリジウムアセチルアセトナート0.5g(1.02mmol)と、中間原料フェニルピリジン化合物(1)1.96g(3.37mmol)とをグリセリン50mlに溶解した溶液を窒素雰囲気下において250℃で10時間撹拌した。得られた反応溶液を1Nの塩酸に注ぐことによって析出した固体をろ別回収し、この固体を塩化メチレンに溶解させ、カラムクロマトグラフ処理を行うことにより、イリジウム錯体化合物0.38gを得た。
得られたイリジウム錯体化合物は、TOF−MS測定により、式(1−1)で表されるイリジウム錯体化合物(以下、「発光剤(1)」ともいう。)であることが確認された。
(原料トリアジン化合物の合成例2)
実施例1において、カルバゾールに代えてジフェニルアミンを用いたこと以外は実施例1における原料トリアジン化合物の合成例1と同様にして一般式(2)において、R1 およびR2 がフェニルアミノ基であるトリアジン化合物(以下、「原料トリアジン化合物(2)」ともいう。)を得た。
、得られた原料トリアジン化合物(2)を原料トリアジン化合物(1)に代えて用いたこと以外は実施例1における第1反応工程例1と同様にして一般式(3)において、R1 およびR2 がフェニルアミノ基であり、トリアジンエーテル基がベンゼン環における位置番号4の炭素原子に結合されたフェニルピリジン化合物(以下、「中間原料フェニルピリジン化合物(2)」ともいう。)を得た。
得られた中間原料フェニルピリジン化合物(2)を用いたこと以外は実施例1における第2反応工程例1と同様にしてイリジウム錯体化合物を得た。
得られたイリジウム錯体化合物は、TOF−MS測定により、式(1−2)で表されるイリジウム錯体化合物(以下、「発光剤(2)」ともいう。)であることが確認された。
(原料トリアジン化合物の合成例3)
先ず、ジブロモベンゼン25g(0.106mol)を溶解したジエチルエーテル溶液を氷浴状態とし、この溶液に濃度1.6mol/lのn−ブチルリチウムヘキサン溶液を66ml滴下した後、氷浴状態で2時間撹拌することによりp−ブロモリチオベンゼン溶液を調製した。このp−ブロモリチオベンゼン溶液を、塩化シアヌル9.8g(0.053mol)を溶解したジエチルエーテル溶液に滴下して還流させながら反応させ、還流が収まった後に反応溶液を60℃に加熱し、6時間撹拌した。得られた反応溶液を水1Lに注ぐことによって析出した固体をろ別し、クロロベンゼンで再結晶することにより、ビス(p−ブロモフェニル)クロロトリアジン25gを得た。
原料トリアジン化合物(3)16g(0.031mol)と、p−ヒドロキシフェニルピリジン5.27g(0.031mol)とをクロロホルム150mlに溶解した溶液に、水酸化ナトリウム1.24gを溶解した水溶液25mlを注いだ後、2時間撹拌した。得られた反応溶液を分液抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥してクロロホルムを留去することにより、一般式(3)において、R1 およびR2 がp−(1−ナフチル)フェニル基であり、トリアジンエーテル基がベンゼン環における位置番号4の炭素原子に結合されたフェニルピリジン化合物(以下、「中間原料フェニルピリジン化合物(3)」ともいう。)18.3gを得た。
イリジウムアセチルアセトナート0.5g(1.02mmol)と、中間原料フェニルピリジン化合物(3)2.2g(3.37mmol)とを溶解したグリセリン50ml溶液を窒素雰囲気下において、250℃で10時間撹拌した。得られた反応溶液を1Nの塩酸に注ぐことによって析出した固体をろ別回収し、この固体を塩化メチレンに溶解させ、フラッシュクロマトグラフ処理を行うことにより、イリジウム錯体化合物0.45gを得た。
得られたイリジウム錯体化合物は、TOF−MS測定により、式(1−3)で表されるイリジウム錯体化合物(以下、「発光剤(3)」ともいう。)であることが確認された。
透明基板上にITO膜が形成されてなるITO基板を用意し、このITO基板を、中性洗剤、超純水、イソプロピルアルコール、超純水、アセトンをこの順に用いて超音波洗浄した後、更に紫外線−オゾン(UV/O3 )洗浄した。
洗浄を行ったITO基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS)溶液をスピンコート法によって塗布し、その後、得られた厚さ65nmの塗布膜を窒素雰囲気下において250℃で30分間乾燥することにより、正孔注入輸送層を形成した。
次いで、ITO基板上に正孔注入輸送層および発光層がこの順に積層されてなる積層体を真空装置内に固定し、その後、当該真空装置内を1×10-4Pa以下にまで減圧し、バソクプロイン30nmを蒸着し、ホールブロック層を形成した。次いで、バソクプロインとセシウムを20nm共蒸着し、電子注入層を形成した後、アルミニウム100nmを蒸着することにより陰極を形成した。その後、ガラス材料によって封止することにより、有機EL素子(以下、「有機EL素子(1A)」ともいう。)を製造した。
図2において、有機EL素子(1A)の発光スペクトルを曲線(A)(一点鎖線)、有機EL素子(1B)の発光スペクトルを曲線(B)(二点鎖線)、有機EL素子(1C)の発光スペクトルを曲線(C)(破線)、および有機EL素子(1D)の発光スペクトルを曲線(D)(実線)で示した。
実施例4において、発光剤(1)に代えてトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム〔Ir(ppy)3 〕(以下、「比較用発光剤」ともいう。)を用いたこと以外は実施例1と同様にして比較用有機EL素子(1A)〜比較用有機EL素子(1D)を製造した。 作製した比較用有機EL素子(1A)〜比較用有機EL素子(1D)の各々に対し、直流電圧を印加することによって発光層を発光させ、その最高発光輝度を測定したところ、比較用イリジウム錯体化合物の含有割合が大きくなると発光効率および発光輝度が低下することが確認された。
具体的には、比較用発光剤の含有割合が6mol%の比較用有機EL素子(1A)の最大発光輝度は12200cd/m2 であったが、比較用発光剤の含有割合が10mol%の比較用有機EL素子(1B)の最大発光輝度は11000cd/m2 となり、その輝度が比較用有機EL素子(1A)に比して10%程度小さくなった。
そして、実施例4に係る有機EL素子によれば、高い発光輝度が得られ、また、発光層を構成する発光性組成物を構成する発光剤であるイリジウム錯体化合物が高い割合で含有されてなるものであっても発光輝度および発光効率が低下することがなく、優れた発光安定性が得られることが確認された。
一方、比較例1に係る比較用有機EL素子においては、発光剤の含有割合が高い場合においては、濃度消光が生じやすく、安定的な発光を得ることができないことが確認された。
2 陽極
3 正孔注入輸送層
4 発光層
5 電子注入層
6 陰極
7 直流電源
8 ホールブロック層
Claims (8)
- イリジウム錯体化合物を表す一般式(1)において、R1 およびR2 が芳香族基であることを特徴とする請求項1に記載の発光剤。
- R1 およびR2 を示す芳香族基が、ジフェニルアミノ基、1−ナフチルフェニルアミノ基、2−ナフチルフェニルアミノ基、m−トリルフェニルアミノ基、n−ブトキシフェニル−m−トリルアミノ基、4,4’−ジメトキシジフェニルアミノ基、3−メトキシジフェニルアミノ基、(4−メトキシフェニル)ジフェニルアミノ基、カルバゾリル基、3,6−アリール置換カルバゾリル基、3,6−アミノ置換カルバゾリル基、フェニル基、ビフェニル基、p−(1−ナフチル)フェニル基、p−(2−ナフチル)フェニル基、p−(1−ピレニル)フェニル基、フルオロビフェニル基、ジフルオロビフェニル基、トリフルオロビフェニル基およびトリフルオロメチルビフェニル基よりなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項2に記載の発光剤。
- 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発光剤と、電荷輸送能を有する高分子物質とを含有してなることを特徴とする発光性組成物。
- 請求項5または請求項6に記載の発光性組成物により形成された発光層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
- ホールブロック層を備えてなることを特徴とする請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
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