JP4655444B2 - 内燃機関の吸気制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関のシリンダ内へ吸入される吸気量を制御する吸気制御装置、特に、吸気弁のバルブリフト特性の可変制御により吸気量の制御を達成するようにした内燃機関の吸気制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガソリン機関においては、一般に吸気通路中に設けたスロットル弁の開度制御によって吸気量を制御しているが、良く知られているように、この種の方式では、特にスロットル弁開度の小さな低負荷時におけるポンピングロスが大きい、という問題がある。これに対し、吸気弁の開閉時期(特に閉時期)やリフト量を変化させることで、スロットル弁に依存せずに吸気量を制御しようとする試みが以前からなされており、この技術を利用して、ディーゼル機関と同様に吸気系にスロットル弁を具備しないいわゆるスロットルレスの構成を実現することが提案されている。
【0003】
例えば、特開平11−117777号公報には、吸気弁および排気弁を、電気信号によって開閉する電磁式の構成とし、低中負荷領域において、吸気弁の閉時期あるいはリフト量の可変制御によって吸気量を負荷に応じて制御するようにした発明が開示されている。
【0004】
しかし、この種のバルブリフトによって吸気量を制御するものにおいても、スロットルレス化に伴って吸気系に負圧が発生しなくなると、例えば、ブローバイガスやエバポレータからのパージガスなどを吸気系に還流させる既存のシステムが利用できなくなったり、種々のアクチュエータなどの駆動源としても利用されている負圧が容易に得られない、といった新たな課題が派生することから、単純に負圧を発生させるための絞弁などからなる圧力調整機構を設けることが検討されている。
【0005】
この圧力調整機構としては、例えばオン−オフ的に切換動作するものであっても十分であるが、少なくとも、内燃機関の全負荷時には、全開状態となって、コレクタ内部をほぼ大気圧に維持し得る構成とする必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように圧力調整機構を設けた場合に、例えば全負荷域から減速したときに、圧力調整機構が流路面積を絞るように切り換えられ、コレクタ内部の圧力が、略大気圧状態から所定の負圧状態へと変化することになるが、コレクタの容積によって実際の圧力はステップ状には変化し得ず、徐々に低下(つまり負圧となる)する特性となる。従って、過渡的に、コレクタ内部の圧力が所定圧力よりも高く(つまり所定負圧よりも大気圧に近い状態)なり、その結果、過大なトルクが発生する、という問題がある。
【0007】
なお、特開平7−203248号公報には、複数のカムを切り換えて使用するようにした可変動弁機構を備える内燃機関において、カム切換時に発生するトルク段差を点火時期補正により低減する技術が開示されているが、このような方法では、最適点火時期を外れるので、本質的に燃費悪化を伴う、という不具合がある。
【0008】
本発明の目的は、吸気弁の可変制御によって、ポンピングロスの大幅な低減が可能なスロットル弁に依存しない吸気量制御を実現するとともに、負圧生成用の圧力調整機構の切換時におけるトルク段差を抑制するようにした内燃機関の吸気制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る内燃機関の吸気制御装置は、吸気弁のバルブリフト特性を可変制御することにより内燃機関の吸気量を連続的に変化させることが可能な可変動弁機構と、複数の気筒の吸気通路が接続するコレクタと、このコレクタの入口通路に設けられ、内燃機関の全開域に近い所定の高負荷域では全開となるとともに、これよりも低負荷側の第2の運転領域ではコレクタ内部の圧力を所定の負圧に調整するように所定開度まで閉じ、上記高負荷域と上記第2の運転領域との境界で不連続なコレクタ内部圧力を与える負圧調整弁と、上記負圧調整弁によるコレクタ内部圧力を前提として所望の吸気量が得られるように内燃機関の負荷および機関回転速度に対応する基本バルブリフト特性が予め設定されており、実際の負荷および機関回転速度に基づいて上記基本バルブリフト特性を目標として上記可変動弁機構を制御する制御手段と、を備え、機関運転条件が上記高負荷域から第2の運転領域へ移行したときに、コレクタ内部圧力が所定の負圧となるまでの間、そのときの負荷および機関回転速度に対応する基本バルブリフト特性よりも小リフト側のバルブリフト特性となるように補正を行うことを特徴とする。
【0010】
この発明では、吸気弁のリフト特性の可変制御によって吸気量が制御される。つまり、負荷制御のためのスロットル弁は具備していない。上記圧力調整機構は、例えば、バタフライバルブ、あるいは他の適宜な形式の弁機構によって構成され得るが、所定の高負荷域以外の運転領域で、通路断面積を部分的に絞ることによって、コレクタ内に適宜な負圧を発生させる。この負圧は、例えば、ブローバイガスの還流やエバポレータからのパージガスの還流、あるいは種々のアクチュエータのための負圧源などとして、利用される。これらの目的の上で必要な負圧の値は、例えば、−50〜−200mmHg程度であるが、これに限定されるものではない。また圧力調整機構は、負圧の大きさを可変とすべく外部から積極的に制御可能な構成であっても良く、あるいは、外部から制御されることなく適宜な負圧を与える構成であっても良い。
【0011】
一方、上記可変動弁機構を制御する制御手段では、この圧力調整機構による負圧を予め考慮したものとして、基本バルブリフト特性が定められている。従って、高負荷域から他の運転領域へ移行した過渡時に、コレクタ内部の圧力の低下が緩慢であると、基本バルブリフト特性のままでは吸気量が過大となってしまう。これに対し、本発明では、基本バルブリフト特性よりもリフトが小さくなるように補正されるため、適正な吸気量となり、過大なトルク発生が回避される。
【0012】
また、請求項2の発明では、上記高負荷域から第2の運転領域へ移行する機関減速時に、燃料供給が停止される場合には、上記補正を行わずに基本バルブリフト特性を目標として制御するようになっている。
【0013】
さらに請求項3の発明では、上記高負荷域から第2の運転領域へ移行する機関減速時に、燃料供給が停止される場合には、小リフト側への補正を行わずに基本バルブリフト特性よりも大リフト側へ補正するようになっている。
【0014】
すなわち、減速時に燃料供給停止いわゆるフューエルカットが行われる場合には、吸気量の増加による過大なトルクの発生という問題がないので、小リフト側への補正は行わない。基本バルブリフト特性ないしはこれよりも大きなリフトとすることで、コレクタ内部の圧力低下が早まる。つまり、圧力調整機構が負圧生成状態に切り換わってから所定の負圧に達するまでの時間が短縮される。
【0015】
但し、運転者により操作されるアクセル開度の減少率が閾値よりも大である場合には、請求項4のように、燃料供給停止に拘わらず上記の小リフト側への補正を実行することが望ましい。これにより、ポンプ損失によるエンジンブレーキが一層強く作用し、運転性が向上する。
【0016】
この過渡時におけるバルブリフトの補正量は、請求項5のように、コレクタ内部の負圧に基づいて決定することが望ましい。あるいは、機関運転条件と上記圧力調整機構の開度とに基づいてバルブリフトの補正量を決定するようにしてもよい。
【0018】
請求項6の発明では、バルブリフトの補正量は、第2の運転領域へ移行してからの時間の経過に伴って減少するものとなっている。つまり、時間経過に伴ってコレクタ内部の圧力が所定の負圧に近付くので、これに対応して、リフトの補正量が小さくなっていく。
【0019】
請求項7の発明では、高負荷域からの機関減速時に、減速開始時の機関回転数および負荷に基づいてバルブリフトの補正時間および補正量が決定される。従って、コレクタ内部の実際の負圧の検出は不要である。
【0020】
請求項8の発明は、機関回転数が低速域である場合にのみバルブリフトの補正を行うことを特徴としている。高速回転であれば、運転領域が移行したときのコレクタ内部の圧力変化は急激なものとなり、過大なトルクが発生する期間は非常に短くなる。
【0021】
本発明は、請求項9のように、上記コレクタの内部にエアクリーナエレメントが配設されている場合に好適である。このようにエアクリーナエレメントを収容した構成では、一般にコレクタの容積が大となり、その圧力変化が一層緩慢となり易い。
【0022】
また請求項10の発明では、上記可変動弁装置は、吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ連続的に拡大,縮小制御可能なリフト・作動角可変機構と、吸気弁のリフト中心角の位相を遅進させる位相可変機構と、から構成されており、上記高負荷域から第2の運転領域へ移行したときに、燃料供給が停止されかつ上記減少率が上記閾値よりも大である場合には、下死点前にある吸気弁閉時期が下死点に近付きかつ吸気弁開時期が上死点後となるように、上記位相可変機構を遅角側に補正することを特徴としている。このように遅角させることで、吸気弁開時期が上死点から遅れ、ポンプ損失ひいてはエンジンブレーキ作用が増大する。また、下死点前にある吸気弁閉時期が下死点に近付くことから、充填効率が向上する。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、基本的に吸気弁の可変制御によって吸気量を制御するので、ポンピングロスの大幅な低減が達成でき、また圧力調整機構によって負荷制御に関係なく適宜な負圧がコレクタ内に確保されるため、実用機関として必要なブローバイガスの還流などの負圧を利用した種々のシステムを、大幅な変更を要さずにそのまま適用することが可能となる。そして、運転領域の移行に伴う圧力調整機構の切換時に、コレクタ内部の緩慢な圧力変化に起因する過大なトルクの発生を防止することができる。
【0024】
さらに、請求項2,3の発明によれば、過大なトルク発生の問題がないフューエルカット時には、基本バルブリフト特性もしくは比較的大きなリフトとすることで、コレクタ内部の圧力変化が促進され、その後に定常運転に移行したときに適正な制御が可能となる。
【0025】
また、請求項4および請求項10の発明によれば、減速時に十分なエンジンブレーキ作用が得られ、運転性が向上する。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を、自動車用火花点火式ガソリン機関に適用した実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、内燃機関の吸気弁側可変動弁機構の構成を示す構成説明図であり、この可変動弁機構は、吸気弁のリフト・作動角を変化させるリフト・作動角可変機構1と、そのリフトの中心角の位相(図示せぬクランクシャフトに対する位相)を進角もしくは遅角させる位相可変機構21と、が組み合わされて構成されている。
【0028】
まず、リフト・作動角可変機構1を説明する。なお、このリフト・作動角可変機構1は、本出願人が先に提案したものであるが、例えば特開平11−107725号公報等によって公知となっているので、その概要のみを説明する。
【0029】
リフト・作動角可変機構1は、シリンダヘッド(図示せず)に摺動自在に設けられた吸気弁11と、シリンダヘッド上部のカムブラケット(図示せず)に回転自在に支持された駆動軸2と、この駆動軸2に、圧入等により固定された偏心カム3と、上記駆動軸2の上方位置に同じカムブラケットによって回転自在に支持されるとともに駆動軸2と平行に配置された制御軸12と、この制御軸12の偏心カム部18に揺動自在に支持されたロッカアーム6と、各吸気弁11の上端部に配置されたタペット10に当接する揺動カム9と、を備えている。上記偏心カム3とロッカアーム6とはリンクアーム4によって連係されており、ロッカアーム6と揺動カム9とは、リンク部材8によって連係されている。
【0030】
上記駆動軸2は、後述するように、タイミングチェーンないしはタイミングベルトを介して機関のクランクシャフトによって駆動されるものである。
【0031】
上記偏心カム3は、円形外周面を有し、該外周面の中心が駆動軸2の軸心から所定量だけオフセットしているとともに、この外周面に、リンクアーム4の環状部が回転可能に嵌合している。
【0032】
上記ロッカアーム6は、略中央部が上記偏心カム部18によって揺動可能に支持されており、その一端部に、連結ピン5を介して上記リンクアーム4のアーム部が連係しているとともに、他端部に、連結ピン7を介して上記リンク部材8の上端部が連係している。上記偏心カム部18は、制御軸12の軸心から偏心しており、従って、制御軸12の角度位置に応じてロッカアーム6の揺動中心は変化する。
【0033】
上記揺動カム9は、駆動軸2の外周に嵌合して回転自在に支持されており、側方へ延びた端部に、連結ピン17を介して上記リンク部材8の下端部が連係している。この揺動カム9の下面には、駆動軸2と同心状の円弧をなす基円面と、該基円面から所定の曲線を描いて延びるカム面と、が連続して形成されており、これらの基円面ならびにカム面が、揺動カム9の揺動位置に応じてタペット10の上面に当接するようになっている。
【0034】
すなわち、上記基円面はベースサークル区間として、リフト量が0となる区間であり、揺動カム9が揺動してカム面がタペット10に接触すると、徐々にリフトしていくことになる。なお、ベースサークル区間とリフト区間との間には若干のランプ区間が設けられている。
【0035】
上記制御軸12は、図1に示すように、一端部に設けられたリフト・作動角制御用アクチュエータ13によって所定角度範囲内で回転するように構成されている。このリフト・作動角制御用アクチュエータ13は、例えばウォームギア15を介して制御軸12を駆動するサーボモータ等からなり、エンジンコントロールユニット19からの制御信号によって制御されている。なお、制御軸12の回転角度は、制御軸センサ14によって検出される。
【0036】
このリフト・作動角可変機構1の作用を説明すると、駆動軸2が回転すると、偏心カム3のカム作用によってリンクアーム4が上下動し、これに伴ってロッカアーム6が揺動する。このロッカアーム6の揺動は、リンク部材8を介して揺動カム9へ伝達され、該揺動カム9が揺動する。この揺動カム9のカム作用によって、タペット10が押圧され、吸気弁11がリフトする。
【0037】
ここで、リフト・作動角制御用アクチュエータ13を介して制御軸12の角度が変化すると、ロッカアーム6の初期位置が変化し、ひいては揺動カム9の初期揺動位置が変化する。
【0038】
例えば偏心カム部18が図の上方へ位置しているとすると、ロッカアーム6は全体として上方へ位置し、揺動カム9の連結ピン17側の端部が相対的に上方へ引き上げられた状態となる。つまり、揺動カム9の初期位置は、そのカム面がタペット10から離れる方向に傾く。従って、駆動軸2の回転に伴って揺動カム9が揺動した際に、基円面が長くタペット10に接触し続け、カム面がタペット10に接触する期間は短い。従って、リフト量が全体として小さくなり、かつその開時期から閉時期までの角度範囲つまり作動角も縮小する。
【0039】
逆に、偏心カム部18が図の下方へ位置しているとすると、ロッカアーム6は全体として下方へ位置し、揺動カム9の連結ピン17側の端部が相対的に下方へ押し下げられた状態となる。つまり、揺動カム9の初期位置は、そのカム面がタペット10に近付く方向に傾く。従って、駆動軸2の回転に伴って揺動カム9が揺動した際に、タペット10と接触する部位が基円面からカム面へと直ちに移行する。従って、リフト量が全体として大きくなり、かつその作動角も拡大する。
【0040】
上記の偏心カム部18の初期位置は連続的に変化させ得るので、これに伴って、バルブリフト特性は、連続的に変化する。つまり、リフトならびに作動角を、両者同時に、連続的に拡大,縮小させることができる。各部のレイアウトによるが、例えば、リフト・作動角の大小変化に伴い、吸気弁11の開時期と閉時期とがほぼ対称に変化する。
【0041】
次に、位相可変機構21は、図1に示すように、上記駆動軸2の前端部に設けられたスプロケット22と、このスプロケット22と上記駆動軸2とを、所定の角度範囲内において相対的に回転させる位相制御用アクチュエータ23と、から構成されている。上記スプロケット22は、図示せぬタイミングチェーンもしくはタイミングベルトを介して、クランクシャフトに連動している。上記位相制御用アクチュエータ23は、例えば油圧式、電磁式などの回転型アクチュエータからなり、エンジンコントロールユニット19からの制御信号によって制御されている。この位相制御用アクチュエータ23の作用によって、スプロケット22と駆動軸2とが相対的に回転し、バルブリフトにおけるリフト中心角が遅進する。つまり、リフト特性の曲線自体は変わらずに、全体が進角もしくは遅角する。また、この変化も、連続的に得ることができる。この位相可変機構21の制御状態は、駆動軸2の回転位置に応答する駆動軸センサ16によって検出される。
【0042】
なお、リフト・作動角可変機構1ならびに位相可変機構21の制御としては、各センサ14,16の検出に基づくクローズドループ制御に限らず、運転条件に応じて単にオープンループ制御するようにしても良い。
【0043】
このような可変動弁機構を吸気弁側に備えた本発明の内燃機関は、スロットル弁に依存せず、吸気弁11の可変制御によって吸気量が制御される。なお、実用機関では、ブローバイガスの還流等のために吸気系に若干の負圧が存在していることが好ましいので、後述するように、吸気通路の上流側に、スロットル弁に代えて、負圧生成用の適宜な圧力調整機構が設けられている。
【0044】
次に、図2に基づいて、バルブリフト特性の具体的な制御について説明する。
【0045】
図2は、代表的な運転条件における吸気弁のバルブリフト特性を示したもので、図示するように、アイドル等の極低負荷域においては、リフト量が極小リフトとなる。これは特に、リフト中心角の位相が吸気量に影響しない程度にまで小さなリフト量となる。そして、位相可変機構21によるリフト中心角の位相は、最も遅角した位置となり、これによって、閉時期は、下死点直前位置となる。
【0046】
このように極小リフトとすることによって、吸気流が吸気弁11の間隙においてチョークした状態となり、極低負荷域で必要な微小流量が安定的に得られる。そして、閉時期が下死点近傍となることから、有効圧縮比は十分に高くなり、極小リフトによるガス流動の向上と相俟って、比較的良好な燃焼を確保できる。
【0047】
一方、アイドル等の極低負荷域よりも負荷の大きな低負荷領域(補機負荷が加わっているアイドル状態を含む)においては、リフト・作動角が大きくなり、かつリフト中心角は進角した位置となる。このときには、上述したように、バルブタイミングをも考慮して吸気量制御が行われることになり、吸気弁閉時期を早めることで、吸気量が比較的少量に制御される。この結果、リフト・作動角はある程度大きなものとなり、吸気弁11によるポンピングロスが低減する。
【0048】
なお、アイドル等の極低負荷域における極小リフトでは、前述したように、位相を変更しても吸気量は殆ど変化しないので、極低負荷域から低負荷域へと移行する場合には、位相変更よりも優先して、リフト・作動角を拡大する必要がある。空調用コンプレッサ等の補機の負荷が加わった場合も同様である。
【0049】
一方、さらに負荷が増加し、燃焼が安定してくる中負荷域では、図2に示すように、リフト・作動角をさらに拡大しつつ、リフト中心角の位相を進角させる。リフト中心角の位相は、中負荷域のある点で、最も進角した状態となる。これにより、内部EGRが利用され、一層のポンピングロス低減が図れる。
【0050】
また、最大負荷時には、さらにリフト・作動角を拡大し、かつ最適なバルブタイミングとなるように位相可変機構21を制御する。なお、図示するように、機関回転数によっても最適なバルブリフト特性は異なるものとなる。
【0051】
上記のようにアイドル等の極低負荷域では、バルブリフト制御域として主にリフト量による微小流量の制御が行われるのであるが、主にバルブ開閉時期によるバルブタイミング制御域となる低負荷域との境界つまり制御の切換点は、実際の燃焼安定状態に応じて補正することが好ましい。あるいは、制御の簡略化のために、機関温度を検出し、これに応じて補正することも可能である。このように補正することで、燃焼の悪化を来さない範囲でバルブタイミング制御域を拡大することができ、ポンピングロス低減の上で有利となる。
【0052】
次に図3は、この内燃機関における吸気系および排気系の全体的な構成を示している。図示するように、この内燃機関は、例えば直列4気筒機関であって、各シリンダ51の吸気ポートにそれぞれブランチ通路52が接続され、かつこの4本のブランチ通路52の上流端が、コレクタ53にそれぞれ接続されている。上記コレクタ53は、気筒列方向に沿って細長い形状をなし、その一端に吸気入口通路54が設けられているとともに、この吸気入口通路54に、負圧生成用の圧力調整機構つまり負圧調整弁55が配設されている。この負圧調整弁55は、バタフライバルブ型の弁体を、DCモータあるいはダイヤフラム型アクチュエータなどのアクチュエータ56によって開閉するようにしたものであって、内燃機関の全開域に近い所定の高負荷域では、弁体は全開位置に保持され、かつ、これよりも低負荷側の運転領域では、適宜な負圧を生成するように、所定開度まで閉じられるようになっている。なお、単純なオン−オフ的に開閉制御するようにしてもよく、あるいは、運転条件に応じてより適した開度となるように例えば数段階に開度制御するようにしてもよい。
【0053】
上記コレクタ53には、コレクタ53内部の圧力を検出する圧力センサ57と、吸気温度を検出する温度センサ58と、が設けられており、また、排気マニホルド59には、排気空燃比を検出する空燃比センサ(リニア型空燃比センサあるいは酸素センサ)60が設けられている。また、機関回転速度ならびにクランク角位置を検出するために、クランク角センサ61が設けられている。さらに、運転者により操作されるアクセルペダル開度(踏込量)を検出するアクセル開度センサ62を備えている。これらの検出信号は、前述したエンジンコントロールユニット19にそれぞれ入力され、これに基づいて、前述したリフト・作動角可変機構1および位相可変機構21の制御ならびに負圧調整弁55の制御が行われる。
【0054】
図4は、過渡時の補正を含むバルブリフト特性の制御の流れを示すフローチャートであり、まずステップ1において、主にアクセルペダル開度および機関回転速度から、要求トルク・出力を算出する。そして、ステップ2で、さらに機関回転速度、負荷、機関温度等の機関運転条件を読み込み、ステップ3で所定の高速域からの減速状態であるか否かを判定する。この減速状態は、主にアクセルペダル開度の変化率に基づいて判断される。なお、この運転領域の移行に伴い、負圧調整弁55は、全開位置から所定開度まで閉じられることになる。
【0055】
減速状態でなければ、ステップ3からステップ4へ進み、通常のバルブリフト制御を行う。つまり、各運転条件に対応して設定された基本バルブリフト特性に沿ってリフト・作動角可変機構および位相可変機構21が制御される。
【0056】
ステップ3で減速状態であると判定した場合には、ステップ5で、圧力センサ57の検出に基づいて、コレクタ53内部の圧力が所定の負圧になっているか判定する。減速中であっても、コレクタ53内部の圧力が所定の負圧にまで変化していれば、やはり通常のバルブリフト制御を行う(ステップ6)。これに対し、所定の負圧になっていない場合、つまり過渡時に圧力変化が遅れている場合には、ステップ7へ進んで、減速時の燃料カットが行われる条件であるか否かを判定する。
【0057】
燃料カットを伴わない減速である場合には、ステップ9へ進み、バルブリフトを基本バルブリフト特性よりも小さく補正する。このときのリフトの補正量は、例えば、コレクタ53内部の圧力、あるいは、コレクタ53内部の実際の圧力と所定圧力との圧力差、に基づいて決定されるが、基本的には、コレクタ53内部の圧力が所定の負圧に近付くにつれて、徐々に補正量は減少する。
【0058】
減速時に燃料カットが行われる場合には、ステップ7からさらにステップ8へ進んで、減速度の判定を行う。減速度が大である場合、つまり、アクセルペダル開度の変化率が大である場合には、ステップ10へ進み、同様に、バルブリフトを基本バルブリフト特性よりも小さく補正する。これにより、エンジンブレーキ作用が増大する。なお、この場合のリフト補正量は、ステップ9の場合よりも大きく与えることが可能である。
【0059】
ステップ8で減速度が小である場合には、急激なエンジンブレーキは好ましくなく、また小リフトとすることでコレクタ53内部の負圧の発達が遅れるので、小リフトへの補正は行わない(ステップ11)。なお、この場合、コレクタ53内部の負圧の発達をさらに促進するために、基本バルブリフト特性よりもバルブリフトが大となるように補正を行うようにしてもよい。
【0060】
図5および図6は、実際の減速時の各部の変化を示したタイムチャートであり、図5は、ステップ9へ進む場合、つまり燃料カットを伴わない減速の場合の状態変化を示し、図6は、ステップ11へ進む場合、つまり燃料カットを伴う比較的減速度の小さな減速の場合の状態変化を示している。なお、この例では、負圧調整弁55は、オン−オフ的に動作し、オフ時に、例えば−50mmHgの負圧が生成される。
【0061】
図5に示すように、減速に伴って負圧調整弁55がオフとなっても、コレクタ53内部の圧力はステップ的には変化し得ない。そのため、バルブリフトは一時的に小さく補正され、その結果、シリンダ内に流入する吸入空気量は、図示するようにアクセルペダル開度に対応した適正量となり、最終的に、要求に応じた適正なトルクが得られる。
【0062】
図6の例では、実線で示すように、バルブリフトは、基本バルブリフト特性に沿って制御される。これにより、過度のエンジンブレーキの発生が防止され、かつコレクタ53内部の圧力が速やかに所定の負圧となる。なお、この際、上述したように基本バルブリフト特性よりもバルブリフトが大となるように補正すると、仮想線で示すように、コレクタ53内部の圧力が一層速やかに負圧となる。
【0063】
次に、図7のフローチャートは、この発明の異なる実施例を示しており、特に、負圧の検出を省略するようにしたものである。この場合、補正開始からの経過時間を積算するカウンタを有し、ステップ21〜ステップ23の処理によって、減速状態となったときからカウンタ1,2の値をインクリメントしていく。そして、ステップ9Aおよびステップ10Aにおいては、そのカウンタ1,2の値に応じて、バルブリフト補正量を徐々に減少させる。所定時間経過した段階では、補正量は0となる。
【0064】
次に、図8は、減速時に、位相可変機構21による位相を併せて補正するようにした実施例を示している。なお、位相可変機構21を内燃機関自体で発生する油圧によって駆動する場合には、低回転時には油圧が低くなり切換応答性が悪化することから、減速時に位相を補正制御しても効果は少ないが、例えば別の電動式油圧ポンプを備えるような場合には、低回転時にも応答性良く位相切換が可能である。ステップ9Bおよびステップ10Bに示すように、この実施例では、所定の減速時に、バルブリフト特性を小さく補正すると同時に、位相可変機構21によって位相を遅角させる。これにより、吸気弁開時期が上死点から遅れ、ポンプ損失がさらに増大してエンジンブレーキ作用が得られる。また吸気弁閉時期が下死点に近付くため、充填効率が向上し、燃費の向上が図れる。なお、この減速時以外は、ステップ4B、ステップ6Bのように、通常の特性に沿った可変制御が行われる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る吸気制御装置における可変動弁機構を示す斜視図。
【図2】代表的な運転条件でのバルブリフト特性を示す特性図。
【図3】この内燃機関における吸気系および排気系の全体的な構成を示す構成説明図。
【図4】過渡時の補正を含むバルブリフト特性の制御の流れを示すフローチャート。
【図5】燃料カットを伴わない減速時の各部の変化を示したタイムチャート。
【図6】燃料カットを伴う減速時の各部の変化を示したタイムチャート。
【図7】他の実施例を示すフローチャート。
【図8】さらに他の実施例を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…リフト・作動角可変機構
2…駆動軸
3…偏心カム
6…ロッカアーム
8…リンク部材
9…揺動カム
11…吸気弁
12…制御軸
19…エンジンコントロールユニット
21…位相可変機構
Claims (10)
- 吸気弁のバルブリフト特性を可変制御することにより内燃機関の吸気量を連続的に変化させることが可能な可変動弁機構と、
複数の気筒の吸気通路が接続するコレクタと、
このコレクタの入口通路に設けられ、内燃機関の全開域に近い所定の高負荷域では全開となるとともに、これよりも低負荷側の第2の運転領域ではコレクタ内部の圧力を所定の負圧に調整するように所定開度まで閉じ、上記高負荷域と上記第2の運転領域との境界で不連続なコレクタ内部圧力を与える負圧調整弁と、
上記負圧調整弁によるコレクタ内部圧力を前提として所望の吸気量が得られるように内燃機関の負荷および機関回転速度に対応する基本バルブリフト特性が予め設定されており、実際の負荷および機関回転速度に基づいて上記基本バルブリフト特性を目標として上記可変動弁機構を制御する制御手段と、
を備え、
機関運転条件が上記高負荷域から第2の運転領域へ移行したときに、コレクタ内部圧力が所定の負圧となるまでの間、そのときの負荷および機関回転速度に対応する基本バルブリフト特性よりも小リフト側のバルブリフト特性となるように補正を行うことを特徴とする内燃機関の吸気制御装置。 - 上記高負荷域から第2の運転領域へ移行する機関減速時に、燃料供給が停止される場合には、上記補正を行わずに基本バルブリフト特性を目標として制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
- 上記高負荷域から第2の運転領域へ移行する機関減速時に、燃料供給が停止される場合には、小リフト側への補正を行わずに基本バルブリフト特性よりも大リフト側へ補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気制御装置。
- 運転者により操作されるアクセル開度の減少率が閾値よりも大である場合には、燃料供給停止に拘わらず上記の小リフト側への補正を実行することを特徴とする請求項2または3に記載の内燃機関の吸気制御装置。
- コレクタ内部の負圧、あるいは、機関運転条件と上記負圧調整弁の開度、に基づいてバルブリフトの補正量が決定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
- バルブリフトの補正量は、第2の運転領域へ移行してからの時間の経過に伴って減少することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
- 高負荷域からの機関減速時に、減速開始時の機関回転数および負荷に基づいてバルブリフトの補正時間および補正量が決定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
- 機関回転数が低速域である場合にのみバルブリフトの補正を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
- 上記コレクタの内部にエアクリーナエレメントが配設されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関の吸気制御装置。
- 上記可変動弁装置は、吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ連続的に拡大,縮小制御可能なリフト・作動角可変機構と、吸気弁のリフト中心角の位相を遅進させる位相可変機構と、から構成されており、上記高負荷域から第2の運転領域へ移行したときに、燃料供給が停止されかつ上記減少率が上記閾値よりも大である場合には、下死点前にある吸気弁閉時期が下死点に近付きかつ吸気弁開時期が上死点後となるように、上記位相可変機構を遅角側に補正することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の吸気制御装置。
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