本発明に係るレゾルバは、固定子と、回転子とを備える。固定子は、複数の巻線磁芯と、それぞれが各巻線磁芯に巻回するように設けられた複数の巻線部材とを有し、回転子は、固定子に対して回転自在に配設される。そして、複数の巻線部材の少なくとも1つは、シートに導電体が渦巻き状に形成されたシート状コイルであり、シートの導電体形成面又はその裏面の少なくとも一部と当該巻線磁芯の側面とが対向するように配置されている。このような構成を有することで、磁芯の磁束効率を低下させることなく巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくでき、下記のように回転子の軸振れに関係なく安定した高精度な検出精度を得るレゾルバに容易に適用することができるようになる。
以下、本発明に係るレゾルバ及びこれを用いた角度検出装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
〔実施形態1〕
図1に、本発明に係る実施形態1におけるレゾルバの構成例の斜視図を示す。図1では、固定子枠の一部を切り欠いて実施形態1におけるレゾルバの構造を示している。
図2に、図1の磁性体固定子の構成例の斜視図を示す。図2では、図1の磁性体固定子5Aの構成を示すが、他の磁性体固定子5B、5C、5Dも同様の構成を有している。
実施形態1におけるレゾルバ100は、非磁性体で輪状に形成された固定子枠1と、この固定子枠1内にその円周方向に沿って周期的あるいは非周期的に独立して分割配置された複数の磁性固定子5A、5B、5C、5Dとを含む。複数の磁性体固定子5A〜5Dを構成する各磁性体固定子は、それぞれ同様の構成を有し、各磁性体固定子の全体形状は弧状をなしており、各磁性体固定子が固定子枠1の円周方向に分割配置されている。
各磁性固定子は、図2に示されるように、一対の第1及び第2の固定子片5a、5bを備える。第1及び第2の固定子片5a、5bは、検出巻線4aと励磁巻線4bとを有する巻線部材としてのステータ巻線4が巻回するように設けられる巻線磁芯を狭持する状態で互いに対向配置される。
各巻線磁芯に設けられる第1及び第2の固定子片5a、5bは、それぞれ、図2に示すように、全体形状が弧状の板形状よりなると共に、磁性体で形成され、セクター形状の内側の一部を切除した残りの部分で形成された形状をなしている。
図3に、図1又は図2の磁性体固定子5Aのステータ巻線4の説明図を示す。図3では、磁性体固定子5Aのステータ巻線を図示するが、他の磁性体固定子5B、5C、5Dもほぼ同様の構成を有する。図3において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明する。
各磁性固定子の巻線部材としてのステータ巻線4は、全体形状が弧状をなす板状に形成されると共に、板状で弧状に形成された巻線磁芯4Aの周囲に巻回するように設けられる。磁性体固定子5A〜5Dの巻線磁芯に巻装されるステータ巻線4は、1相の励磁巻線と2相の検出巻線(Cos検出巻線及びSin検出巻線)とから構成されている。
図4(A)、図4(B)に、実施形態1におけるレゾルバ100における励磁巻線及び検出巻線の説明図を示す。図4(A)は、磁性体固定子5A〜5Dの巻線磁芯4A〜4Dに巻装される励磁巻線を模式的に表したものである。図4(B)は、磁性体固定子5A〜5Dの巻線磁芯4A〜4Dに巻装される検出巻線を模式的に表したものである。図4(A)、図4(B)において、磁性体固定子5Aが巻線磁芯4Aを有し、磁性体固定子5Bが巻線磁芯4Bを有し、磁性体固定子5Cが巻線磁芯4Cを有し、磁性体固定子5Dが巻線磁芯4Dを有するものとする。
励磁巻線は、巻線磁芯4A〜4Dにそれぞれ巻装される。一方、Cos相の検出巻線は、巻線磁芯4A及び巻線磁芯4Cにそれぞれ巻装され、Sin相の検出巻線は、巻線磁芯4B及び巻線磁芯4Dにそれぞれ巻装される。実施形態1では、図4(A)、図4(B)に示すように結線されたシート状コイルが巻線磁芯に巻装され、あるいは各巻線磁芯に巻装されたシート状コイルが図4(A)、図4(B)に示すように図示しない配線で結線される。
図5に、図1の磁性体回転子6の構成例の斜視図を示す。図5において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
各磁性固定子5Aよりなる固定子体5の内側には、磁性体回転子6が軸6Aを介して回転自在に設けられている。磁性体回転子6の外周面6aは、その半径方向に周期的に変化し、図5では4つの山形部(突極、磁極)を有している。また、他の形態としては、真円からなる磁性体回転子6を軸6Aを介して固定子体5に対して偏心して設けることもできる。
図2に示すように各固定子片5a、5b間には、弧状をなす弧状空隙10が形成されており、この弧状空隙10は各固定子片5a、5b及び巻線磁芯4Aと同様に弧状に形成されている。磁性体回転子6の外周面6aは、磁性体回転子6が回転する際に、各固定子片5a、5bの内周面30とは非接触状態であると共に、常に非重合状態となるように構成されている。
さらに、磁性固定子5A〜5Dの各磁性体固定子の軸方向固定子厚さT1(図2参照)と、磁性体回転子6の軸方向厚さT2(図5参照)とは、等しくなるように構成され、各磁性固定子と磁性体回転子6とのギャップパーミアンスの変化に伴う磁気的変化による検出巻線4aへの誘起電圧を効率よく検出することができるように構成されている。
従って、実施形態1によれば、各固定子片5a、5b間の弧状空隙10が固定されているため、従来構成のように、各固定子片5a、5bと磁性体回転子6の鎖交する量に依存して回転角度を検出していた構成に比較すると、磁性体回転子6に設けた軸6Aの軸振れに依存することのない高精度の回転検出を行うことができる。
なお、磁性固定子の数(極数m)及び磁性体回転子6の外周面6aの形状変化の周期の数(周期n)は、レゾルバの用途等に応じて設定できる。また、前述の図1のレゾルバの軸方向の厚さは、実験によるプロトタイプにおいても4mmであり、従来構成に比較すると、約1/4であり、超薄型の回転角度検出器を得ることができる。
すなわち、実施形態1によれば、固定子枠に分割配置された各磁性固定子の一対の固定子片間の空隙に対して非重合状態として設けた磁性体回転子を回転自在に設けることにより、超薄型のインナーロータ型のレゾルバを得ることができる。
また、一つの各固定子片間の空隙が固定されているため、磁性体回転子に軸振れがある場合でも、回転に伴う角度信号は安定しており、高精度の回転角度信号(レゾルバ信号)を得ることができる。
また、固定子枠に設けられた各磁性固定子が分割して配置されることによって固定子体が互いに独立して分割されているため、隣接するステータ巻線との磁気的干渉も少なく、高精度の回転角度信号を得ることができる。
また、固定子の構造を従来よりも大幅に薄く、かつ、小径化することができるため、極めて小空間での高精度の角度検出が可能となる。
また、実施形態1に係るレゾルバ100では、各磁性体固定子の巻線磁芯に設けられる巻線部材としてのステータ巻線4は、シート状コイルにより構成される。より具体的には、ステータ巻線4は、励磁巻線用のシート状コイルと、検出巻線用のシート状コイルとを備える。各シート状コイルは、非導電性のフィルム(例えばポリイミドシート)や基板等からなるシートの平面に、導電体が渦巻き状に形成されたものである。
図6(A)〜図6(C)に、シート状コイルの説明図を示す。図6(A)は、シートに導電体が形成される前の状態を模式的に表したものである。図6(B)は、シートにコイルとしての導電体が形成される様子を模式的に表したものである。図6(C)は、シートに形成された導電体を模式的に表したものである。
まず、図6(A)に示すように、ポリイミドシート等のシート42の表面上に、導電性の金属層44を形成する。続いて、図6(B)に示すように、レーザ光Lを渦巻き状の所定パターンで金属層44の上から照射して、照射部分の金属層44を除去する。この結果、金属線46の幅を例えば30μm、配線ピッチを例えば50μmとするシート状コイルが形成される(図6(C))。
例えば図6(A)〜図6(C)に示すような工程で形成されたシート状コイルを、巻線部材として採用することで、予め所定の導電体パターンが形成されたものを採用するため、巻線を規格通りに精度良く形成することが可能となり、巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくすることができるようになる。
更に、実施形態1に係るレゾルバ100では、シート状コイルからなるステータ巻線4を巻線磁芯に設置する方法についても工夫し、ステータ巻線4にシート状コイルを採用することに起因する巻線磁芯の磁束効率を向上させている。
図7(A)、図7(B)に、実施形態1の比較例における巻線磁芯とシート状コイルとの構成例を模式的に示す。図7(A)は、シート状コイル80の導電体形成面82が磁性体固定子の巻線磁芯90の側面92とほぼ垂直に配置された状態を模式的に表している。図7(B)は、巻線磁芯90の側面92と平行な断面図の例を模式的に表したものである。
実施形態1の比較例では、図7(A)に示すようなシート状コイル80の導電体に励磁信号を印加することで磁界が形成され、巻線磁芯90の磁束が発生する。或いは、巻線磁芯90の磁束を変化させることで、図7(A)に示すようなシート状コイル80の導電体に流れる検出信号を変化させる。このとき、図7(B)に示すように、導電体形成面82に形成された導電体のうち、巻線磁芯90の側面92からの距離が遠い導電体ほど巻線磁芯90との電磁気的な結合度が弱くなる。そのため、シート状コイル80のすべての導電体が等しく電磁誘導に寄与できず、巻線磁芯90の磁束効率を低下させてしまう。
図8(A)、図8(B)に、実施形態1における巻線磁芯4Aとシート状コイルとの構成例を模式的に示す。図8(A)は、シート状コイル60の導電体形成面62又はその裏面が磁性体固定子の巻線磁芯4Aの側面50と対向するように配置された状態を模式的に表している。図8(B)は、巻線磁芯4Aの側面50と平行な断面図の例を模式的に表したものである。
実施形態1では、図8(A)、図8(B)に示すように巻線磁芯4Aの側面50とシート状コイル60の導電体形成面62又はその裏面とを平行になるように配置、又は対向配置させることで、シート状コイル60の導電体形成面62の導電体と巻線磁芯4Aの側面50との距離をほぼ均一にできる。このように、実施形態1に係るレゾルバ100では、シート状コイルのシートの導電体形成面又はその裏面の少なくとも一部と巻線磁芯の側面と対向するように配置することで、巻線磁芯4Aの側面50と対向している導電体形成面又はその裏面に形成された導電体の電磁誘導に寄与する電磁気的な結合度を弱めることがなく、巻線磁芯4Aの磁束効率を向上させることができるようになる。
以下、実施形態1に係るレゾルバ100におけるステータ巻線4について詳細に説明する。以下では、主に磁性体固定子5Aの巻線磁芯4Aに巻装される巻線部材としてのステータ巻線について説明するが、磁性体固定子5Bの巻線磁芯4B、磁性体固定子5Cの巻線磁芯4C及び磁性体固定子5Dの巻線磁芯4Dのそれぞれに巻装される巻線部材としてのステータ巻線も同様である。
実施形態1における巻線部材としてのステータ巻線4は、シートの両面に導電体が渦巻き状に形成されたシート状コイルである。両面に導電体を形成することで、巻線磁芯に巻線部材が巻装された磁性体固定子を小型化できるようになる。ここで、シートの導電体形成面又はその裏面が巻線磁芯4Aの側面と平行となるように配置(或いは対向配置)するために、簡素な工程で該シートの両面に導電体を形成できることが望ましい。そこで、実施形態1におけるステータ巻線4は、シートに渦巻き状に形成された導電体の中心領域内に設けられた切込部を開くことにより形成される開口部を有し、巻線磁芯4Aがこの開口部に挿入されるようになっている。
図9に、実施形態1におけるステータ巻線4としてのシート状コイル60の構成例の斜視図を示す。図9は、シート状コイル60に形成される切込部と、シートの両面に形成される導電体パターンとを表している。
シート状コイル60のシートの両面には、渦巻き状に導電体64が形成されると共に、電極66、68、スルーホール70が形成され、導電体64と電極66、68とは電気的に接続されている。スルーホール70は、シートの表面(第1の面)に形成された導電体と、該シートの裏面(第2の面)に形成された導電体とを電気的に接続する。また、シートに渦巻き状に形成された導電体の中心領域内には切込部72が形成されている。すなわち、シートには、切込部72が形成された領域を中心に、導電体が渦巻き状に形成されている。
シートの表面に、図9に示すような向きで導電体が形成されている場合、シートの裏面に、図9に示すような向きで導電体が形成される。これにより、電極66から電流が印加されたとき、スルーホール70を介して裏面の導電体には図9に示すように電流が流れる。この結果、表面の導電体パターンで発生する磁束の向きと、裏面の導電体パターンで発生する磁束の向きとが同一となる。
図10(A)〜図10(C)に、シート状コイル60に形成される切込部72により形成される実施形態1におけるステータ巻線4の模式的な説明図を示す。図10(A)〜図10(C)において、図9と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
まず、図10(A)に示すようにシート状コイル60に形成された切込部72を通る山折り線74に沿って、シート状コイル60を2つ折りにする。その結果、シート状コイル60は、図10(B)に示すような形状になる。そこで、図10(B)に示す状態から切込部72を開くと、図10(C)に示すように開口部76が形成される。
図11に、巻線磁芯4Aにステータ巻線4が巻装されている状態の説明図を示す。図11は、図10(C)の開口部76に、巻線磁芯4Aの端面から挿入した様子を表している。こうすることで、巻線磁芯4Aの側面に対し、シート状コイル60の導電体形成面又はその裏面を簡単に対向配置することができる。しかも、シート状コイル60の導電体形成面には、図6(A)〜図6(C)に示すように、規格通りに精度良く巻線が形成されるので、巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくし、且つ巻線磁芯4Aの磁束効率を向上させることができる。
また、ステータ巻線4は、励磁巻線用のシート状コイルと、検出巻線用のシート状コイルとを含むが、シート状コイルを複数枚積層させることで、励磁巻線と検出巻線との巻線比を任意の巻線比にすることができる。すなわち、励磁巻線用のシート状コイルと、検出巻線用のシート状コイルとを、それぞれ複数枚積層されたシート状積層コイルとすることで、任意の巻線比を実現しつつ、巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくし、且つ巻線磁芯4Aの磁束効率を向上させることができる。
図12に、実施形態1におけるシート状積層コイルの説明図を示す。
図13に、実施形態1におけるシート状積層コイルの他の説明図を示す。図12又は図13において、図11と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
シート状積層コイルは、複数枚のシート状コイル60が積層されている。そして、例えばシート状コイル60の電極68と、その下層のシート状コイル60の電極66とが電気的に接続される。これにより、励磁巻線の巻線数と検出巻線の巻線数とをそれぞれ所望の枚数だけ積層させることで、任意の巻線比の巻線部材を形成することができる。
図14(A)〜図14(C)に、図1の磁性体固定子5A〜5Dに設けられるステータ巻線に採用されるシート状コイルの説明図を示す。図14(A)は、励磁巻線用のシート状コイルの平面パターンの一例を模式的に表したものである。図14(B)は、Cos相の検出巻線用のシート状コイルの平面パターンの一例を模式的に表したものである。図14(C)は、Sin相の検出巻線用のシート状コイルの平面パターンの一例を模式的に表したものである。
図14(A)〜図14(C)のシート状コイルは、シートに複数の導電体がそれぞれ渦巻き状に形成されたシート状コイルであり、該シートに渦巻き状に形成された各導電体の中心領域内に設けられた切込部を開くことにより形成される複数の開口部を有する。そして、各開口部に各巻線磁芯が挿入される。
図14(A)では、シート状コイル150に、図9に示すような導電体パターンが表面とその裏面とが形成される導電体パターン形成領域152が、磁性体固定子5A〜5Dのそれぞれに対応する位置に形成される。各導電体パターン形成領域152間は、図4(A)の励磁巻線の巻線パターンとなるように配線154、156、158により電気的に接続され、この導電体パターンに励磁信号が印加される。
図14(B)では、シート状コイル160に、図9に示すような導電体パターンが表面とその裏面とが形成される導電体パターン形成領域162が、磁性体固定子5A、5Cのそれぞれに対応する位置に形成される。各導電体パターン形成領域162間は、図4(B)のCos相の検出巻線の巻線パターンとなるように配線164により電気的に接続され、この導電体パターンにCos相の検出信号が流れる。
図14(C)では、シート状コイル170に、図9に示すような導電体パターンが表面とその裏面とが形成される導電体パターン形成領域172が、磁性体固定子5B、5Dのそれぞれに対応する位置に形成される。各導電体パターン形成領域172間は、図4(B)のSin相の検出巻線の巻線パターンとなるように配線174により電気的に接続され、この導電体パターンにSin相の検出信号が流れる。
そして、図14(A)〜図14(C)のいずれかのシート状コイルを所定の枚数だけ積層させることで、励磁巻線と検出巻線の巻線比を任意の比に設定することができる。
図15に、図14(A)のシート状コイル150の斜視図を示す。図15は、図14(A)のシート状コイル150を2つ折りにして開口部を形成した後、その両端部を接着することで環状に形成される。なお、図14(B)のシート状コイル160、図14(C)のシート状コイル170も同様に形成することができる。
すなわち、図14(A)の各導電体パターン形成領域152に渦巻き状に形成された導電体の中央領域の切込部を通る山折り線159に沿って2つ折りにすることで生成される開口部に、図1の磁性体固定子5Aの巻線磁芯4A、磁性体固定子5Bの巻線磁芯4B、磁性体固定子5Cの巻線磁芯4C及び磁性体固定子5Dの巻線磁芯4Dがそれぞれ挿入される。
また図15と同様に、図14(B)の各導電体パターン形成領域162に渦巻き状に形成された導電体の中央領域の切込部を通る山折り線165に沿って2つ折りにすることで生成される開口部に、図1の磁性体固定子5Aの巻線磁芯4A及び磁性体固定子5Cの巻線磁芯4Cがそれぞれ挿入される。
更に図15と同様に、図14(C)の各導電体パターン形成領域172に渦巻き状に形成された導電体の中央領域の切込部を通る山折り線175に沿って2つ折りにすることで生成される開口部に、図1の磁性体固定子5Bの巻線磁芯4B及び磁性体固定子5Dの巻線磁芯4Dがそれぞれ挿入される。
以上のように、実施形態1において、巻線部材としてのステータ巻線4は、シートに複数の導電体がそれぞれ渦巻き状に形成されたシート状コイルであり、該シートに渦巻き状に形成された各導電体の中心領域内に設けられた切込部を開くことにより形成される複数の開口部を有するシート状コイルを採用でき、このシート状コイルの各開口部に各巻線磁芯が挿入される。こうすることで、各磁性体固定子の巻線部材の配線パターンも予めシートに形成しておけばよいため、巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくでき、且つ巻線磁芯の磁束効率を向上させると共に、巻線部材の配置工程を大幅に簡素化できるようになる。
以上のように、実施形態1によれば、固定子枠にステータ巻線を有する磁性固定子を複数設け、各磁性固定子の内側に磁性体固定子を各磁性固定子と非重合状態で回転自在に配設することにより、回転子の軸振れにより空隙変動の影響をなくすようにしている。
更に、実施形態1によれば、巻線部材をシート状コイルとしたので、巻線部材として予め所定の導電体パターンが形成されているため、巻線を規格通りに精度良く形成することが可能となり、巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくすることができるようになる。
更に、実施形態1によれば、シート状コイルのシートの導電体形成面又はその裏面の少なくとも一部と巻線磁芯の側面とが平行になるように(或いは対向するように)配置するようにしたので、巻線磁芯の側面と対向している導電体形成面に形成された導電体の電磁誘導に寄与する電磁気的な結合度を弱めることがなく、巻線磁芯の磁束効率を向上させることができるようになる。
更に、実施形態1によれば、シート状コイルのシートに渦巻き状に形成された導電体の中心領域内に設けられた切込部を開くことにより形成される開口部に、巻線磁芯を挿入することで、巻線部材としてのステータ巻線4を巻線磁芯に巻装するようにしたので、巻線を規格通りに精度良く形成し、且つ導電体形成面と巻線磁芯の側面とを対向させる配置を容易に実現できるようになる。
更に、実施形態1によれば、シート状コイルを複数枚積層したシート状積層コイルを巻線部材として採用したので、励磁巻線と検出巻線との巻線比として任意の巻線比を実現しつつ、巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくし、且つ巻線磁芯の磁束効率を向上させることができる。
〔実施形態2〕
なお、本発明に係るレゾルバは図1に示す構成に限定されるものではない。本発明に係る実施形態2におけるレゾルバは、回転軸の軸振れに起因する検出精度の低下をより一層抑えることを可能にする構成を有しており、実施形態2におけるレゾルバにおいても、実施形態1と同様のシート状コイルからなる巻線部材を設けることができる。
図16に、本発明に係る実施形態2におけるレゾルバの構成例の斜視図を示す。
実施形態2におけるレゾルバ200は、複数の固定子(図16では固定子204A、204B、204C、204D)を固定保持する環状の固定子枠201と、固定子枠201の内側に回転中心Oを中心として回転可能な回転子206とを有する。固定子枠201は、上側固定子枠202と下側固定子枠203とを備え、上側固定子枠202及び下側固定子枠203は、非磁性材料、例えばステンレス鋼やプラスチック材料で構成することが好ましい。上側固定子枠202及び下側固定子枠203は、同一形状及び同一寸法に形成されている。
図17に、図16の下側固定子枠203の斜視図を示す。図17において、図16と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略するが、4個の固定子204A〜204Dの一部が仮想線で図示されている。なお、図17では、下側固定子枠203の構造を示すが、上側固定子枠202も同様の構造を有するため、説明を省略する。
下側固定子枠203は環状の形態を有し、その内側には4個の矩形状の凹所205A、205B、205C、205Dが円周方向に例えば等間隔を置いて形成されている。すなわち、これらの凹所205A〜205Dは、互いに円周方向に90度の位相角を置いて配置されている。
図16に示すように、回転子206は、複数枚の電磁鋼板を積層することによって構成することが好ましい。この回転子206は、円周方向に例えば等しい間隔を置いて形成された4個の山形部207a、207b、207c、207dを有する。これらの山形部207a〜207dは、円周方向に等間隔を置いて配置されているため位相角は90度である。4個の山形部207a〜207dは、回転子206の突極(磁極)として機能する。
なお、実施形態2では、山形部が4個であるものとして説明するが、本発明は山形部が4個のものに限定されるものではなく、円周方向に周期的に変化するものであれば、任意の数の山形部を備えることができ、山形部の数に限定されるものではない。山形部が1個の場合には、真円の回転中心を所定量ずらした偏心円盤として構成することができ、山形部が2個の場合には、楕円形の円盤として構成することができる。
図18に、図16の4個の固定子と回転子との配置関係を示す斜視図を示す。
図19に、図16のA−A線に沿って切断して示した縦断面図を示す。
図20に、下部固定子板と励磁巻線とを示した斜視図を示す。
図21に、1つの固定子と励磁巻線及び検出巻線を示した斜視図を示す。
図22に、巻線磁芯と励磁巻線及び検出巻線を示した斜視図を示す。
図23に、図16のB−B線に沿って切断して示した縦断面図を示す。
図24に、下側固定子枠と4個の固定子との組み立て状態を示す平面図を示す。
固定子204A〜204Dのそれぞれは、図18〜図24に示すように、間隔を置いて平行に配置された上部固定子板208と下部固定子板210とを有し、これらは平面形状が矩形状に構成されている。上部固定子板208及び下部固定子板210の内側の面上の外周位置には、等しい大きさの直方体状の巻線磁芯211、212が一体的に突出して形成されている。上部固定子板208及び下部固定子板210は、互いの巻線磁芯211,212を突き合わせるようにした上で、複数個のビス214によって互いに締め付け固定されている。上部固定子板208及び下部固定子板210は、複数枚の電磁鋼板を積層することによって構成することもできるし、あるいは、珪素を含む鋼材を使ってモールド焼結により構成することもできる。
また、実施形態2では、上部固定子板208及び下部固定子板210の先端部の相対向する内側の面にはそれぞれ突起部215、216が一体的に形成されている。このため、実施形態2によれば、回転軸の軸振れによっても、対向する磁極の検出部の磁路中の空隙の量に変動が生じなくなるため、回転角の検出精度を向上させることができる。また、固定子内に形成される磁路を通る磁束が突起部215、216に集中して通りやすくなるため磁束の漏洩を少なくすることができ、これによっても、回転角の検出精度を向上させることができる。更にまた、磁路を通る磁束が突起部215、216に集中して通りやすくなるため、出力電圧を高くすることができる。
巻線磁芯211、212の外側には、図22に示すように、実施形態1と同様のシート状コイルからなる励磁巻線217と検出巻線218とが巻装されている。励磁巻線217には1相の交流電圧が印加される一方、検出巻線218からは2相の出力電圧が検出される。なお、励磁巻線217や検出巻線218に、複数枚のシート状コイルを積層させることで、実施形態1と同様に任意の巻線比を構成することができる。このように実施形態2では、巻線磁芯に巻装される励磁巻線や検出巻線としてシート状コイルを採用でき、実施形態1と同様の手法で、該シート状コイルを設けることができる。
なお、固定子204A〜204Dの4個の巻線磁芯に、例えば図15と同様のシート状コイルを巻装するようにしてもよいし、各巻線磁芯に図8(A)のようにシート状コイルを巻装し、各シート状コイルを図示しない配線により巻線同士を電気的に接続するようにしてもよい。
また、固定子を構成する上部固定子板208及び下部固定子板210の突起部215、216は、板の先端部を二重に折り曲げて局部的に厚さを2倍にすることにより形成してもよいし、あるいは、固定子板の先端近くにダボを形成しておき、そこに別途用意された同一材料の磁極片をカシメ固定することにより形成してもよい。
以上のように、実施形態2におけるレゾルバ200は、磁性材料からなり円周方向に1又は複数の山形部を有する回転子と、磁気間隙を残して回転子の外周領域の一部を両側から挟み込んだ複数の固定子と、複数の固定子を固定保持する固定子枠とを備え、複数の固定子の少なくとも1つは、上部固定子板と、下部固定子板と、上部固定子板及び下部固定子板を連結する巻線磁芯と、巻線磁芯に巻回するように設けられた巻線部材とを有することができる。そして、巻線部材は、シートに導電体が渦巻き状に形成されたシート状コイルであり、シートの導電体形成面又はその裏面の少なくとも一部と当該巻線磁芯の側面とが対向するように配置され、上部固定子板及び前記下部固定子板の先端の対向する内側の面に突起部を有することができる。また、固定子枠は、上側固定子枠と下側固定子枠とを有し、上側固定子枠及び下側固定子枠の間に複数の固定子を挟持することができる。
実施形態2では上記のように構成されているため、回転軸の軸振れによっても、対向する磁極の検出部の磁路中の空隙の量に変動が生じなくなるため、回転体の検出精度を向上させることができる。また、固定子中に設けられた磁路を通る磁束の漏洩を少なくし磁束の集中を図ることができるため、これによっても回転角の検出精度を向上させることができる。
また、実施形態2では、実施形態1と同様の手法で巻線磁芯にシート状コイルを巻装するようにしたので、巻線部材として予め所定の導電体パターンが形成されているため、巻線を規格通りに精度良く形成することが可能となり、巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくすることができるようになる。
更に、実施形態2によれば、シート状コイルのシートの導電体形成面又はその裏面の少なくとも一部と巻線磁芯の側面とが平行になるように(或いは対向するように)配置するようにしたので、巻線磁芯の側面と対向している導電体形成面に形成された導電体の電磁誘導に寄与する電磁気的な結合度を弱めることがなく、巻線磁芯の磁束効率を向上させることができるようになる。
更に、実施形態2によれば、シート状コイルのシートに渦巻き状に形成された導電体の中心領域内に設けられた切込部を開くことにより形成される開口部に、巻線磁芯を挿入することで、巻線部材を巻線磁芯に巻装するようにしたので、巻線を規格通りに精度良く形成し、且つ導電体形成面と巻線磁芯の側面とを対向させる配置を容易に実現できるようになる。
更に、実施形態2によれば、シート状コイルを複数枚積層したシート状積層コイルを巻線部材として採用したので、励磁巻線と検出巻線との巻線比として任意の巻線比を実現しつつ、巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくし、且つ巻線磁芯の磁束効率を向上させることができる。
〔実施形態3〕
実施形態1及び実施形態2では、磁性体固定子に設けられた空隙を介して回転子を回転させる構成のレゾルバを例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る実施形態3におけるレゾルバは、回転子の回転により空隙形成板の板内面と巻線磁芯との間隔を変化させることで、回転角度を検出することができ、このような構成のレゾルバにも本発明を適用することができる。
図25(A)〜図25(C)に、本発明に係る実施形態3におけるレゾルバの構成例の斜視図を示す。図25(A)は、実施形態3におけるレゾルバの斜視図であり、回転子の一部を切り欠いてレゾルバの構造を示している。図25(B)は、図25(A)の固定子の斜視図である。図25(C)は、図25(B)のAA−AO断面図である。図25(A)、図25(B)においては、配線の図示を省略している。
実施形態3におけるレゾルバ300は、固定子(ステータ)310と、回転子(ロータ)330とを備える。
固定子310は、図25(B)に示すように、非磁性材料(例えばステンレス)からなる輪状基板312と、輪状基板312に配設された磁性材料(例えば電磁鋼板)からなる輪状固定子板としての4個の分割固定子板314a〜314dと、各分割固定子板314a〜314dの面上に突出してかつ円周方向に沿って配設された4個の巻線磁芯316a〜316dと、各巻線磁芯316a〜316aの周囲に配設された巻線部材318a〜318dと、各分割固定子板314a〜314dの面上に突出して、かつ、巻線磁芯316a〜316dの内側に設置された磁束帰路台320a〜320dとを有する。
輪状固定子板は、巻線磁芯316a〜316dごとに4個の分割固定子板314a〜314dとして分割されている。
図26(A)、図26(B)に、実施形態3におけるレゾルバ300の励磁巻線及び検出巻線の説明図を示す。図26(A)は励磁巻線を説明するための図であり、図26(B)は検出巻線を説明するための図である。図26(A)においては励磁巻線を模式的に示し、図26(B)においては検出巻線を模式的に示す。また、図26(A)及び図26(B)においては、各巻線磁芯316a〜316dの中心位置と固定子310の略中心位置AOとを通る直線を、それぞれ直線AA−AO、直線AB−AO、直線AC−AO、直線AD−AOで示している。
円周方向に沿って隣接する巻線磁芯の各中心間角度αは、例えば90度である。すなわち、図26(A)及び図26(B)に示すように、巻線磁芯316aと巻線磁芯316bとの中心間角度α1は90度であり、巻線磁芯316bと巻線磁芯316cとの中心間角度α2は90度であり、巻線磁芯316cと巻線磁芯316dとの中心間角度α3は90度であり、巻線磁芯316dと巻線磁芯316aとの中心間角度α4は90度である。なお、中心間角度α1〜α4が90度であるものに本発明が限定されるものではない。
巻線部材318a〜318dは、1相の励磁巻線Rと2相の検出巻線Sa、Sb(Cos相検出巻線及びSin相検出巻線)とから構成されている。検出巻線Sa(Cos相検出巻線)は、巻線磁芯316a及び巻線磁芯316cに対してそれぞれ逆方向に巻回されるように設けられており、検出巻線Sb(Sin相検出巻線)は、巻線磁芯316b及び巻線磁芯316dに対してそれぞれ逆方向に巻回されるように設けられている。励磁巻線Rに入力する電圧の周波数は、例えば10kHzである。
巻線部材318a〜318dは、実施形態1と同様のシート状コイルであり、シートの導電体形成面又はその裏面の少なくとも一部と当該巻線磁芯の側面とが対向するように配置される。なお、励磁巻線や検出巻線に、複数枚のシート状コイルを積層させることで、実施形態1と同様に任意の巻線比を構成することができる。このように実施形態3では、巻線磁芯に巻装される励磁巻線や検出巻線としてシート状コイルを採用でき、実施形態1と同様の手法で、該シート状コイルを設けることができる。
なお、巻線磁芯316a〜316dに、例えば図15と同様のシート状コイルを巻装するようにしてもよいし、各巻線磁芯に図8(A)のようにシート状コイルを巻装して各シート状コイルを図示しない配線により巻線同士を電気的に接続するようにしてもよい。
図27(A)〜図27(D)に、実施形態3におけるレゾルバ300の各巻線磁芯の磁気回路の説明図を示す。図27(A)は、図26(A)のAA−AO断面で示す巻線磁芯316aの磁気回路を示す図である。図27(B)は、図26(A)のAB−AO断面で示す巻線磁芯316bの磁気回路を示す図である。図27(C)は、図26(A)のAC−AO断面で示す巻線磁芯316cの磁気回路を示す図である。図27(D)は、図26(A)のAD−AO断面で示す巻線磁芯316dの磁気回路を示す図である。
回転子330は、図25(A)、図25(B)、図26(A)、図26(B)及び図27(A)〜図27(D)に示すように、輪状回転子板332と、輪状回転子板332の内面に配設された空隙形成板334とを有する。輪状回転子板332は、非磁性材料(例えばステンレス)からなり、空隙形成板334は、磁性材料(例えば、電磁鋼板)からなる。
図28に、空隙形成板334の板内面336の突出状態の変化の説明図を示す。なお、図28においては、円周外型から見たレゾルバ300の構造を、所与の半径における円周方向の突出情報を横方向に展開して図示している。また、図28では、矢印は各巻線磁芯316a〜316dにおける磁束ベクトルの方向を示している。
空隙形成板334は、波状に突出状態が変化する板内面336を有する。空隙形成板334の板内面336は、図28に示すように、突出状態が円周方向に沿って正弦波状に単周期で変化している。こうすることで、回転子の回転により空隙形成板の板内面との交差面積が正弦波状に変化するようになるため、所与の間隔における正弦波状の変化を用いて回転角度を高精度に検出することが可能となる。なお、本発明は、空隙形成板334の板内面336が正弦波状に単周期で変化しているものに限定されるものではなく、空隙形成板334の板内面336が円周方向に沿って正弦波状に複数周期で変化しているものであってもよい。
このような実施形態3におけるレゾルバ300は、回転子330の回転により、空隙形成板334の板内面336と巻線磁芯316a〜316d(より具体的には巻線磁芯316a〜316dの端面)との間隔dが変化するように構成されている。
このように、実施形態3におけるレゾルバ300は、非磁性材料からなる輪状基板と、前記輪状基板に配設され磁性材料からなる輪状固定子板と、輪状固定子板の面上に突出して且つ円周方向に沿って配設された1又は複数の巻線磁芯(n個(例えば、nは4以上の整数)の巻線磁芯)と、前記巻線磁芯の周囲に配設された巻線部材と、輪状固定子板の面上に突出して、且つ、前記巻線磁芯の内側又は外側に設置された磁束帰路台とを有する固定子と、磁性材料からなる輪状回転子板と、前記輪状回転子板の内側に配設され波状に突出状態が変化する板内面を有し磁性材料からなる空隙形成板とを有する回転子とを備えることができる。そして、輪状固定子板は、前記巻線磁芯ごとに複数(n個)の分割固定子板に分割され、巻線部材は、シートに導電体が渦巻き状に形成されたシート状コイルであり、シートの導電体形成面又はその裏面の少なくとも一部と当該巻線磁芯の側面とが対向するように配置される。このようなレゾルバ300は、回転子の回転により、空隙形成板の板内面と巻線磁芯の端面との間隔が変化するように構成されている。
以上のような構成により、実施形態3によれば、回転子330の回転により空隙形成板334の板内面336と巻線磁芯316a〜316dの端面との間隔dが変化し、この間隔dの変化を用いて回転角度を検出することができる。そのため、実施形態3によれば、いわゆるバリアブルリラクタンス型のレゾルバを構成することができるようになる。
また、実施形態3によれば、輪状固定子板としての4個の分割固定子板314a〜314dの面上に突出して配設された巻線磁芯316a〜316dの周囲に巻線部材としてシート状コイルを配設したので、巻線部材がレゾルバ300の厚さ方向に出っ張ることがなくなり、厚さの薄いレゾルバを提供できるようになる。
また、実施形態3によれば、輪状固定子板は、巻線磁芯316a〜316dごとに4個の分割固定子板314a〜314dに分割されているため、隣り合う磁気回路同士の干渉が防止され、各巻線磁芯316a〜316dの磁気回路(磁束分布)が安定し、回転角度を高精度に検出することが可能となる。
また、実施形態3におけるレゾルバ300によれば、各巻線磁芯316a〜316dの内側には磁束帰路台320a〜320dが設置されているため、各巻線磁芯316a〜316dの磁気回路(磁束分布)が安定し、回転角度を更に高精度に検出することが可能となる。
また、実施形態3におけるレゾルバ300によれば、固定子310と回転子330とは軸方向に隔離して配置されるため、レゾルバ300を機器に組み込む際、固定子310の横方向から回転子330を挿入することが可能となる。
更にまた、実施形態3におけるレゾルバ300においては、薄いシート状コイルを巻線部材として採用しているため、厚さの更に薄いレゾルバを提供できるようになる。
更に、実施形態3におけるレゾルバ300によれば、シート状コイルを製造する過程でエッチング液を使用する必要がなくなるため、レゾルバの使用中にシート状コイルを製造する過程で除去しきれなかったエッチング液の存在に起因してコイルが腐食したり断線したりすることがなくなり、高信頼性のレゾルバを提供できるようになる。
また、実施形態3では、実施形態1と同様の手法で巻線磁芯にシート状コイルを巻装するようにしたので、巻線部材として予め所定の導電体パターンが形成されているため、巻線を規格通りに精度良く形成することが可能となり、巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくすることができるようになる。
更に、実施形態3によれば、シート状コイルのシートの導電体形成面又はその裏面の少なくとも一部と巻線磁芯の側面とが平行になるように(或いは対向するように)配置するようにしたので、巻線磁芯の側面と対向している導電体形成面に形成された導電体の電磁誘導に寄与する電磁気的な結合度を弱めることがなく、巻線磁芯の磁束効率を向上させることができるようになる。
更に、実施形態3によれば、シート状コイルのシートに渦巻き状に形成された導電体の中心領域内に設けられた切込部を開くことにより形成される開口部に、巻線磁芯を挿入することで、巻線部材を巻線磁芯に巻装するようにしたので、巻線を規格通りに精度良く形成し、且つ導電体形成面と巻線磁芯の側面とを対向させる配置を容易に実現できるようになる。
更に、実施形態3によれば、シート状コイルを複数枚積層したシート状積層コイルを巻線部材として採用したので、励磁巻線と検出巻線との巻線比として任意の巻線比を実現しつつ、巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくし、且つ巻線磁芯の磁束効率を向上させることができる。
〔実施形態4〕
実施形態1〜実施形態3では、レゾルバについて説明したが、本発明に係る角度検出装置は、実施形態1〜実施形態3のいずれかにおけるレゾルバを含むことができる。
図29に、本発明に係る角度検出装置の構成例のブロック図を示す。
本発明に係る角度検出装置400は、R/D変換器410と、バッファアンプ420と、レゾルバ430とを含むことができる。R/D変換器410は、図示しない励磁信号発生装置を含み、バッファアンプ420を介してレゾルバ430に励磁信号を供給する。レゾルバ430は、実施形態1におけるレゾルバ100、実施形態2におけるレゾルバ200又は実施形態3におけるレゾルバ300のいずれかを採用できる。
このようなレゾルバ430からの検出信号であるレゾルバ信号は、R/D変換器410に入力され、レゾルバ信号により特定される変位に対応したシリアル出力又はパラレル出力のデジタル信号として出力される。このデジタル信号が、図示しないデジタル機器に供給され、デジタル機器の制御に用いられる。
図29の構成によれば、磁芯の磁束効率を低下させることなく巻線のコンダクタンスのばらつきを極めて小さくし、且つ可動子の振れに関係なく安定した高精度な検出精度を得ることができるレゾルバを含む角度検出装置を提供できるようになる。
以上、本発明のレゾルバ及びこれを含む角度検出装置を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
(1)上記の各実施形態においては、シート状コイルの両面に導電体が形成された巻線部材を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シートの片面のみに導電体が渦巻き状に形成されたシート状コイルを巻線部材として用いてもよい。
(2)上記の各実施形態においては、固定子として4個の巻線磁芯を有する固定子を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、8個、10個、12個、16個その他の個数の巻線磁芯を有する固定子を用いていてもよい。
(3)上記の各実施形態においては、回転子として主に2Xタイプの回転子を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。3Xタイプ、4Xタイプ、5Xタイプ、7Xタイプ、10Xタイプ、14Xタイプその他のタイプの回転子を用いてもよい。
(4)上記の実施形態2においては、上部固定子板及び下部固定子板の平面形状が矩形状である場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上部固定子板及び下部固定子板の平面形状が扇形状(弧状)その他の形状であってもよい。
(5)上記の実施形態3においては、磁束帰路台が巻線磁芯の内側を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、磁束帰路台が、巻線磁芯の外側に配置されていてもよい。
(6)上記の実施形態3においては、輪状固定子板が巻線磁芯ごとに複数の分割固定子板に分割されているものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、輪状固定子板が、巻線磁芯ごとに複数の分割固定子板に分割されていないものであってもよい。