JP4650345B2 - シリコン単結晶の製造方法 - Google Patents
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CZ法により育成されたシリコン単結晶には、半導体集積回路を製造する工程において歩留まりを低下させる原因となる数種類のGrown−in欠陥が生じることが知られている。Grown−in欠陥の代表的なものとしては、酸化膜耐圧特性等を劣化させる原因となるパーティクル(Crystal Originated Particle、以下、COPという。)や或いはリーク特性等を劣化させる原因となる転位クラスタ(侵入型転位(Interstitial-type Large Dislocation)、転位ピットとも呼ばれる)がある。このため、半導体集積回路を製造するために用いられるシリコンウェーハからCOP及び転位クラスタを減少させることが必要となっている。
このため、COPを減少させ、かつマージンを広げる方法として、インゴット引上げ中にチャンバ内のアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中に水素ガスを体積比3%〜0.1ppm連続的に添加することで、後工程の熱処理によりCOPとなる空孔型点欠陥の生成及びそのサイズを低減して、Grown−in欠陥フリー領域[P]を拡大させるシリコン単結晶の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。一般的に、水素は微量で結晶成長中の過冷却度を大きくする効果がある。このため、凝固の相変態に伴うエンタルピーギャップが小さくなり、非平衡な空孔型点欠陥の導入量が減少する。また、凝固温度が下がると固液界面の温度も下がり、平衡な空孔型点欠陥の導入量も減少する。この結果、結晶の冷却中に生じる過飽和な空孔型点欠陥の導入量を減少できる。更に、水素はシリコン結晶中での拡散係数が高く、空孔型点欠陥と結合し空孔型点欠陥同士の凝集を阻害する効果も期待できる。これらの作用により、空孔型点欠陥を低減でき、後工程の熱処理によりCOPとなってもその生成及びそのサイズが酸化膜耐圧特性等を劣化させる原因とならないシリコン単結晶を製造することができる。この結果、マージンを広げることができる。
本発明の目的は、シリコン単結晶インゴットの全長にわたって水素添加による空孔抑制効果が得られるとともに、高い歩留まりでGrown−in欠陥フリーのシリコン単結晶が得られるシリコン単結晶の製造方法を提供することにある。
その特徴ある構成は、シリコン融液13に溶け込んだ酸素のシリコン単結晶インゴット14中への導入を抑制するために、引上げるシリコン単結晶インゴット14の結晶長に応じてチャンバ11内圧力を変化させ、チャンバ内圧力を上昇させるときには、チャンバ11内雰囲気ガス中の水素濃度を低くし、チャンバ内圧力を低下させるときには、チャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度を高くするところにある。
この請求項1に記載されたシリコン単結晶の製造方法では、チャンバ内圧力の変化に合わせてチャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度を変化させることで、チャンバ内圧力の変化によりシリコン融液13に対する水素の溶解度が変化しても、シリコン融液13中に溶け込む水素分子の量、つまりシリコン単結晶インゴット14中の水素濃度が極端に高く又は極端に低くならず、安定したマージンを確保できる。この結果、シリコン単結晶インゴット14の全長にわたって水素添加による空孔抑制効果が得られるとともに、高い歩留まりでGrown−in欠陥フリーのシリコン単結晶を製造できる。
P×p=一定 ……(1)
但し、Pはチャンバ内圧力を、pはチャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度を示す。
この請求項2に記載されたシリコン単結晶の製造方法では、チャンバ内圧力とチャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度との関係を上記の式(1)を満たすことにより、水素濃度を必要以上に高くすることなく、シリコン単結晶インゴット14中の水素濃度を一定範囲内の値にすることができ、安定したマージンを確保できる。この結果、シリコン単結晶インゴット14の全長にわたって一定範囲内の値の水素添加による所定量の空孔抑制効果が得られるとともに、高い歩留まりでGrown−in欠陥フリーのシリコン単結晶を製造できる。
図1に示すように、本発明のシリコン単結晶の製造方法は、シリコン単結晶引上げ装置10のチャンバ11内に設置された石英るつぼ12にシリコン融液13を貯留し、チャンバ11内を水素添加のアルゴンで、不活性ガス雰囲気に維持しながら、石英るつぼ12に貯留したシリコン融液13からシリコン単結晶インゴット14を引上げる方法である。シリコン融液13に溶け込んだ酸素のシリコン単結晶インゴット14中への導入を抑制するために、シリコン単結晶インゴット14の引上げ時にシリコン単結晶インゴット14の結晶長に応じてチャンバ11内圧力を変化させる。チャンバ内圧力を上昇させるときには、チャンバ11内雰囲気ガス中の水素濃度を低くし、チャンバ内圧力を低下させるときには、チャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度を高くする。
シリコン単結晶インゴット14の引上げ中、チャンバ内の雰囲気ガス中に添加された水素分子はシリコン融液13に溶け込み、シリコン結晶が固化するに伴ってシリコン単結晶インゴット14に取り込まれる。
この結果、シリコン単結晶インゴット14の全長にわたって水素添加による空孔抑制効果が得られるとともに、高い歩留まりでGrown−in欠陥フリーのシリコン単結晶を製造できる。
但し、Pはチャンバ内圧力を、pはチャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度を示す。
シリコン単結晶インゴット14引上げ中のチャンバ内圧力は所望の結晶酸素濃度によって異なるため、一概には言えないが、一般的には3〜13kPa(20〜100torr)程度の範囲内の値が用いられることが多い。また、チャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度のとりうる値は10vol%以下、好ましくは3〜6vol%である。この範囲内において、チャンバ内圧力(P)とチャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度(p)の積を一定とする。これによってシリコン融液13に溶け込んだ酸素のシリコン単結晶インゴット14中への導入を十分抑制し、インゴット内部の空孔抑制効果を十分に発揮させるとともに、シリコン単結晶中の水素欠陥を防止する。
<実施例>
この実施例に用いられる図1に示すシリコン単結晶引上げ装置10では、チャンバ11内の中心位置にシリコン融液13を貯留する石英るつぼ12が設けられる。石英るつぼ12の外側には黒鉛からなるサセプタ30が設けられる。石英るつぼ12及びサセプタ30は支軸15により支持される。支軸15は石英るつぼ12を回転させるとともに昇降させるるつぼ駆動手段16に接続される。石英るつぼ12の外周部には、加熱ヒータ17と保温筒18が同心円状に配置され、石英るつぼ12内には加熱ヒータ17によりボロンが添加された多結晶シリコンが融解されたシリコン融液13が収容されている。チャンバ11の上端には、円筒状のプルチャンバ19が接続され、このプルチャンバ19の上端にはシード引上げ手段(図示せず)が設けられ、このシード引上げ手段に接続されたワイヤーケーブル20の先端には種結晶21が装着される。ワイヤケーブル20を下降して種結晶21をシリコン融液13に接触させた後、ワイヤケーブル20を上昇しながら回転させることにより、この種結晶21の下端からシリコン単結晶インゴット14が育成される。更にチャンバ11内には育成されるシリコン単結晶インゴット14を囲むように熱遮蔽部材22が配置される。熱遮蔽部材22は下方に向かうに従って細くなるコーン部22aと、コーン部に連設され外方に張り出すフランジ部22bと、フランジ部22bを保温筒18上に載置するためのリング板22cとから構成されている。
また、プルチャンバ19及びチャンバ11内には、供給ガス流量調整弁23を有するガス供給パイプ24と排出ガス流量調整弁25を有するガス排出パイプ26が設けられている。水素添加の不活性ガスはパイプ24を通ってプルチャンバ19及びチャンバ11内に入り、シリコン単結晶インゴット14やシリコン融液13の表面を流通した後、パイプ26から排出される。更に、チャンバ11の外側の左右には磁界印加装置(図示せず)が配置され、シリコン融液13の対流を制御するようになっている。
引上げ速度に関しては図2に示すGrown−in欠陥がフリーとなる領域[P]にインゴット14全体が入るように複数のパターンを設定した。引上げ速度のすべてのパターンにおいて、単結晶の引上げ時のチャンバ11内圧力とチャンバ11内雰囲気ガス中の水素濃度との間にP×p=一定という関係を維持した。チャンバ内圧力(torr)とチャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度(vol%)の積が約250となるように、チャンバ内圧力を約4〜9kPa(30〜70torr)の範囲内で変化させ、不活性ガス中の水素濃度を3.5〜8.5vol%の範囲内で変化させるように添加する不活性ガスと水素の混合ガスを流した。不活性ガスとしては、アルゴンを用いた。
具体的なチャンバ内圧力の履歴を図3に、チャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度の履歴を図4の実線aにそれぞれ示す。インゴット14の結晶長が200mmになるまでの間は、チャンバ内圧力を約6kPa(50torr)と一定にし、水素濃度を5%と一定にした。その後、結晶長が長くなるにつれ、チャンバ内圧力を徐々に低下させ、結晶長が400mmになる時点で、チャンバ内圧力が約4kPa(30torr)になるようにした。この間、水素濃度をこのチャンバ内圧力の変化に合わせて徐々に高くし、結晶長が400mmになる時点で、8.3vol%になるようにした。その後、結晶長が1100mmになるまでチャンバ内圧力を約4kPa(30torr)に、また水素濃度を8.3vol%に、それぞれ一定に保持した。結晶長が1100mmになった後、チャンバ内圧力を再び徐々に上昇させるとともに水素濃度をこのチャンバ内圧力の変化に合わせて徐々に低くした。その後のチャンバ内圧力と水素濃度は図3及び図4の実線aに示すようにそれぞれ変化させた。
図4の一点鎖線bに示すようにチャンバ内雰囲気ガス中に占める水素濃度の割合の履歴を5vol%に固定し、かつ図2に示す領域[P]にインゴット全体が入るように引上げ速度に関して複数のパターンを設定したこと。これ以外は、実施例と同様に、シリコン単結晶インゴットを複数本育成した。
実施例及び比較例で得られたそれぞれのGrown−in欠陥フリーの複数本のシリコン単結晶インゴットをすべて結晶軸方向に縦割りし、その断面を観察した。
11 チャンバ
12 石英るつぼ
13 シリコン融液
14 シリコン単結晶インゴット
Claims (2)
- シリコン単結晶引上げ装置(10)のチャンバ(11)内に設置された石英るつぼ(12)にシリコン融液(13)を貯留し、前記チャンバ(11)内を水素添加の不活性ガス雰囲気に維持しながら、前記石英るつぼ(12)に貯留したシリコン融液(13)からシリコン単結晶インゴット(14)を引上げるシリコン単結晶の製造方法において、
前記シリコン融液(13)に溶け込んだ酸素のシリコン単結晶インゴット(14)中への導入を抑制するために前記引上げるシリコン単結晶インゴット(14)の結晶長に応じてチャンバ(11)内圧力を変化させ、前記チャンバ内圧力を上昇させるときには、チャンバ(11)内雰囲気ガス中の水素濃度を低くし、前記チャンバ内圧力を低下させるときには、チャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度を高くする
ことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。 - チャンバ内圧力とチャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度との関係が次の式(1)を満たす請求項1記載のシリコン単結晶の製造方法。
P×p=一定 ……(1)
但し、Pはチャンバ内圧力を、pはチャンバ内雰囲気ガス中の水素濃度を示す。
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