JP2004182525A - シリコン単結晶育成における水素ガス供給方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水素を含む不活性雰囲気中でCZ法によりシリコン単結晶を育成する際に、単結晶引上げ炉内に水素ガスを次記の濃度以下で供給する。即ち、水素ガス、酸素ガス及び不活性ガスを頂点A,B,Cとする3成分系の三角線図において、爆ごうに対する混合ガスの希釈限界をK1 とし、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成をDとするとき、DからK1 へ向かう直線が、不活性ガスと水素ガスの体積比を示す辺CAと交差する点S1 で表される水素ガス濃度以下で供給する。ここで、爆ごうに対する混合ガスの希釈限界K1 は、水素ガスと酸素ガスの体積比を示す辺AB上での爆ごう範囲をL1 〜L1 ′、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成Dと頂点Aを結ぶ直線DA上での爆ごう範囲をM1 〜M1 ′とするとき、直線L1 M1 と直線L1 ′M1 ′が交差する交点である。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素をドープしたシリコン単結晶を育成する際の水素ガス供給方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコンウェーハの素材であるシリコン単結晶の製造方法として代表的なものは、CZ法と呼ばれる回転引上げ法である。CZ法によるシリコン単結晶の製造では、周知のとおり、石英ルツボ内に形成したシリコン融液に種結晶を浸漬し、ルツボ及び種結晶を回転させながら種結晶を引上げることにより、種結晶の下方にシリコン単結晶を育成する。
【0003】
このようなCZ引上げにおける炉内雰囲気としては、従来より不活性ガス(主にArガス)が使用されてきた。これは、シリコン融液、炉部材及び結晶との種々の化学反応を抑制し、副生成物として発生する不純物の混入を回避するためである。更に、多量にガス供給を行うことで生じる炉内のガス流れを利用して、金属汚染を回避することもでき、引上げ結晶の高品質化を実現できる。
【0004】
この炉内雰囲気に関し、最近になって、微量の水素ガスを混合することの有効性が報告され始めた(例えば特許文献1〜特許文献4)。この技術によると、結晶中に導入されたGrown−in欠陥、特に空孔欠陥に水素が作用することにより、シリコン融液への窒素ドープと同様に空孔欠陥の縮小や消滅が可能になるとされている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−178495号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平11−189495号公報
【0007】
【特許文献3】
特開2000−281491号公報
【0008】
【特許文献4】
特開2001−335396号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このようなCZ引上げにおける水素ドープ技術では、混合ガス中における水素ガス濃度は、これまでは爆発危険防止等の観点から、最高で3vol%に制限されている。ちなみに、空気中の水素ガスの燃焼下限は4vol%である。
【0010】
しかしながら、このような制限下では、水素ガス混合の際の許容濃度範囲が狭く、操業での作業性が悪い。加えて、本発明者らによる実験にれば、3vol%以下の水素ガス濃度の場合、顕著な水素の効果が得られないことが確認されている。
【0011】
本発明の目的は、安全性を確保しつつ高濃度の水素ガス混合を可能にする水素ガス供給方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するめに、本発明者らは水素を含む不活性雰囲気中でCZ法によりシリコン単結晶を育成する際の爆発危険性について詳細に検討した。その結果、以下の結論に到達した。
【0013】
引上げ炉内に供給する不活性ガスに水素ガスを混合すること自体は、危険でない。混合ガス中の水素ガス濃度が50%に達しても、不活性ガスと水素ガスのみならば、爆発の危険はない。危険なのは、引上げ炉では大気リークの危険があることである。即ち、引上げ炉内は操業中、所定の真空度に維持される。このため、炉内への大気リークの危険がつきまとう。大気リークが起きると、炉内に空気が侵入し、これによる酸素の侵入により、爆発が生じるのである。
【0014】
より詳しく説明すると、大気リークが発生すると、炉内の雰囲気が大気に徐々に近づいていく。この過程の途中で爆発が生じるわけで、大気リークの発生と同時に爆発が起きるわけではない。つまり、水素ガスの初期濃度が高いことは、直ちに爆発の危険を意味するわけではない。ここに、水素ガス濃度を上げ得る第1の余地がある。
【0015】
また、爆発は単なる燃焼と、より激しい燃焼である爆ごうとに分類される。爆ごうでは雰囲気ガスが急激に大きく膨脹するが、燃焼ではその膨脹度は数倍以下と小さい。本発明者らによる計算によると、CZ引上げでは、炉内は所定の真空度に減圧されているため、炉内で燃焼が起きてもその炉内圧力は大気圧を超えない。このため、引上げ炉内のルツボが破壊されるような設備破損事故には至らない。しかし、爆ごうが起きると炉内圧力は大気圧を超え、設備破壊といった大事故を招く。このため、爆ごうを回避することは不可欠であるが、燃焼までも回避する必要はない。ここに、水素ガス濃度を上げ得る第2の余地がある。
【0016】
本発明の水素ガス供給方法は、かかる着想を基礎にして完成されたものであり、水素を含む不活性雰囲気中でCZ法によりシリコン単結晶を育成する際に、単結晶引上げ炉内に水素ガスを下記のS1 点で表される水素ガス濃度未満で供給するものである。
記
水素ガス、酸素ガス及び不活性ガスを頂点A,B,Cとする3成分系の三角線図において、爆ごうに対する混合ガスの希釈限界をK1 とし、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成をDとするとき、DからK1 へ向かう直線が、不活性ガスと水素ガスの体積比を示す辺CAと交差する点S1 で表される水素ガス濃度。
【0017】
本発明の水素ガス供給方法においては、爆ごうに対する混合ガスの希釈限界K1 は、例えば下記の交点で表すことができる。
記
水素ガスと酸素ガスの体積比を示す辺AB上での爆ごう範囲をL1 〜L1 ′、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成Dと頂点Aを結ぶ直線DA上での爆ごう範囲をM1 〜M1 ′とするとき、直線L1 M1 と直線L1 ′M1 ′が交差する交点。
【0018】
本発明の水素ガス供給方法では、辺CA上のS1 点を第1の臨界点として、これ未満の水素濃度範囲で操業が行われるが、より厳密には、下記する辺CA上のS2 点を第2の臨界点として、これ以上の水素濃度範囲、即ちS1 〜S2 で行う操業と、これ未満の水素濃度範囲、即ちS2 〜で行う操業とに分類される。
記
水素ガス、酸素ガス及び不活性ガスを頂点A,B,Cとする3成分系の三角線図において、燃焼に対する混合ガスの希釈限界をK2 とし、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成をDとするとき、DからK2 へ向かう直線が、不活性ガスと水素ガスの体積比を示す辺CAと交差する点S2 で表される水素ガス濃度。
【0019】
ここで、燃焼に対する混合ガスの希釈限界K2 は、例えば下記の交点で表すことができる。
記
水素ガスと酸素ガスの体積比を示す辺AB上での燃焼範囲をL2 〜L2 ′、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成Dと頂点Aを結ぶ直線DA上での燃焼範囲をM2 〜M2 ′とするとき、直線L2 M2 と直線L2 ′M2 ′が交差する交点。
【0020】
後で詳しく説明するが、辺CA上のS1 〜S2 (S1 は含まず)における操業では、大気リークが発生した場合、燃焼は生じるが、爆ごうは生じない。S2 〜(S2 は含まず)における操業では、大気リークが発生した場合、爆ごうも燃焼も生じない。
【0021】
前者の操業、即ち操業点Sが辺CA上のS1 〜S2 (S1 は含まず)に存在する場合、下記のS0 点における酸素ガス濃度に至るまでに警報を発することことが好ましい。より具体的には、雰囲気ガス中の酸素濃度が下記の酸素ガス濃度の0.1〜0.25倍に達した時点で警報を発することが好ましい。これにより、前者の操業で避けられない燃焼の発生を未然に検知することが可能になる。
記
酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成Dと、不活性ガスと水素ガスの体積比を示す辺CA上での操業点Sとを結ぶ直線DSが、燃焼領域の上限を表す直線L2 ′K2 と交差する点S0 における酸素ガス濃度。
【0022】
水素ガス濃度の下限については、0超であればよく、特に限定しないが、水素混合効果を高める点からは3vol%超が好ましく、5%以上が特に好ましい。ちなみに、S2 点で表される水素ガス濃度は10%である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1はCZ引上げ炉の概略構成図、図2は水素ガス、酸素ガス及び不活性ガスを頂点A,B,Cとする3成分系の三角線図である。
【0024】
CZ引上げ炉は、図1に示すように、炉体として、円筒形状のメインチャンバ1と、その上に重ねられた小径のプルチャンバ2とを備えている。
【0025】
メインチャンバ1内には、ルツボ3が中心部に位置して配置されている。ルツボ3は内側の石英ルツボを外側の黒鉛ルツボで保持した二重構造であり、ペディスタルと呼ばれる支持軸4の上に受け皿5を介して支持されている。支持軸4は、ルツボ3の昇降及び回転のために、メインチャンバ1の下方に配置された駆動機構により、軸方向及び周方向に駆動される。
【0026】
ルツボ3の外側には環状のヒータ6が配置されており、その更に外側には断熱材7がメインチャンバ1の内面に沿って配置されている。
【0027】
メインチャンバ1上のプルチャンバ2内には、引上げ軸としてのワイヤ8が垂らされ、メインチャンバ1内に達している。ワイヤ8は、プルチャンバ2の上に設けられた駆動機構9により、巻き上げ及び回転を行う。
【0028】
操業では、まず、ルツボ3内にシリコンの原料融液10を形成する。ワイヤ8の下端部に装着した種結晶11を原料融液10に漬ける。ルツボ3及びワイヤ8を回転させながら、ワイヤ8を巻き上げることにより、種結晶11の下方にシリコンの単結晶12を育成する。
【0029】
このとき、炉体内を所定の真空度に減圧し、この状態で、炉体内に、不活性ガスとしてのArと水素の混合ガスを上から下に流通させる。このガス流通のために、プルチャンバ2の上部にガス供給口13が設けられ、メインチャンバ1の下部には、真空排気ポンプに接続されたガス排出口14が設けられている。
【0030】
ガス排出口14に繋がるガス排出管には、排ガス中の酸素濃度を測定する酸素センサー15が設けられており、その酸素濃度測定値より炉内雰囲気ガス中の酸素ガス濃度が認識され。また、その酸素濃度測定値に応じて警報を発するシステム(図示せず)が構築されている。
【0031】
本実施形態では、この炉体内に供給する混合ガスの組成、即ち水素ガス濃度が重要である。水素ガスは、炉体外で不活性ガスと混合して炉体内に供給する他、別ルートで炉体内に独立して供給して、炉体内の不活性ガスに混合することもできる。
【0032】
以下に、炉内雰囲気中の水素ガス濃度の設定方法を、図2に示す三角線図により詳細に説明する。なお、以下の説明で%は特にことわりのない限りvol%である。
【0033】
図2に示す三角線図は、水素ガス、酸素ガス及び不活性ガスを頂点A,B,Cとしている3成分系の三角線図である。不活性ガスは、CZ引上げで多用されるArガスとしており、空気中の不活性ガスである窒素ガス、或いはヘリウムガスで代用することもできる。
【0034】
頂点A,B,Cは水素ガス、酸素ガス及び不活性ガスがそれぞれ100%の純成分を表す。辺ABは、水素ガスと酸素ガスの混合物における組成比を表し、数字はこの混合物中の水素ガス濃度である。同様に、辺BCは、酸素ガスとArガスの混合物における組成比を表し、数字はこの混合物中の酸素ガス濃度である。辺CAは、Arガスと水素ガスの混合物における組成比を表し、数字はこの混合物中のArガス濃度である。
【0035】
空気は基本的に酸素ガスと窒素ガス(不活性ガス)の混合物であるので、その組成は辺BC上のD点で表される。また、直線DAは、空気と水素ガスの混合物における組成比を表しており、空気に水素ガスを混合していくと、酸素ガスと窒素ガス(不活性ガス)は、所定の混合比を維持しつつ、合計含有比を低下させ、最終的に純水素ガスとなる。
【0036】
水素ガスと酸素ガスの混合物における組成比を表す辺AB上で、水素ガス濃度を0%(純酸素ガス)から徐々に大きくしていく場合を想定すると、L2 からL2 ′までが燃焼範囲となり、そのなかの特にL1 からL2 ′までが爆ごう範囲となる。これらの水素濃度限界値は既知であり、燃焼下限値L2 は4%、燃焼上限値L2 ′は95.8%、爆ごう下限値L1 は18.3%、爆ごう上限値L2 ′は59%である。
【0037】
同様に、空気と水素ガスの混合物における組成比を表す直線DA上で、水素ガス濃度を0%(空気のみ)から徐々に大きくしていく場合を想定すると、M2 からM2 ′までが燃焼範囲となり、そのなかの特にM1 からM1 ′までが爆ごう範囲となる。これらの水素濃度限界値は実験により正確に求めることができ、燃焼下限値M2 は4%、燃焼上限値M2 ′は75%、爆ごう下限値M1 は18.3%、爆ごう上限値M2 ′は27%程度である。
【0038】
ここで、直線L2 M2 と直線L2 ′M2 ′は先で交わり、その交点K2 は3成分系での混合ガスの燃焼に対する希釈限界となる。また、直線L1 M1 と直線L1 ′M1 ′は先で交わり、その交点K1 は3成分系での混合ガスの爆ごうに対する希釈限界となる。そして、三角形L2 K2 L2 ′の内側が当該3成分系混合ガスにおける燃焼領域となり、更にその内側に形成される三角形L1 K1 L1 ′の内側が当該3成分系混合ガスにおける爆ごう領域となる。
【0039】
Arガスと水素ガスの混合物における組成比を表す辺CAは、CZ引上げ炉に供給するArと水素の混合ガスの組成比に対応する。この辺CAは、三角形L1 K1 L1 ′で表される爆ごう領域にも、三角形L2 K2 L2 ′で表される燃焼領域にも入らないので、Arと水素の混合ガスは、それ自体は爆発の危険性がない。しかし、大気リークにより空気が減圧下の炉内に侵入すると、混合ガス中の水素ガス濃度によっては爆発の危険性が生じる。
【0040】
具体的に説明すると、今、引上げ炉内を満たすArと水素の混合ガス中の水素ガス濃度が、S3 で示す50%の場合に、大気リークが発生したとすると、炉内雰囲気は、直線S3 D上をS3 からDへ移動する。途中N2 ′で燃焼領域に侵入し、N1 ′で爆ごう領域に入る。更にリークが進み、空気組成に近づくと、N1 で爆ごう領域から退出し、N2 で燃焼領域から出る。即ち、炉内雰囲気が水素50%の混合ガスの場合は大気リークにより爆ごうを避けられない。
【0041】
これに対し、辺BC上の大気組成Dから3成分系混合ガスの爆ごうに対する希釈限界K1 に至る直線が辺CAと交差する交点をS1 とし、引上げ炉内を満たすArと水素の混合ガス中の水素ガス濃度がこのS1 の場合に大気リークが発生したとすると、炉内雰囲気は、直線S1 D上をS1 からDへ移動することになる。このとき、燃焼領域は通過するが、爆ごう領域は希釈限界K1 をかすめるだけとなる。したがって、炉内の混合ガスにおける水素ガス濃度がこのS1 未満であれば、仮に大気リークが生じても爆ごうに至ることはない。
【0042】
この交点S1 で表される水素ガス濃度の上限値は30%以上であり、従来考えられている3%より格段に高い。
【0043】
かくして、本発明の水素ガス供給方法によれば、設備破壊の危険がある爆ごうを回避しつつ、3%を超える高濃度の水素ガス混合が可能になり、これにより、操業の自由度を高めると共に、欠陥抑制などの水素混合による効果を十分に発揮させることが可能になる。
【0044】
また、辺BC上の大気組成Dから3成分系混合ガスの燃焼に対する希釈限界K2 に至る直線が辺CAと交差する交点をS2 とし、炉内の混合ガスにおける水素ガス濃度をこのS2 未満とすれば、燃焼さえも防止することができる。ちなみに、交点S2 で表される水素ガス濃度の上限値は10%である。
【0045】
実操業上、比較的好ましい水素ガス濃度は、S2 未満、S1 以上の範囲内である。この範囲内であれば、相当に高い水素ガス濃度を維持しつつ、大気リークによる事故の危険性を、燃焼のみに抑制することができる。燃焼の場合、炉内は大気圧を超えることはなく、ルツボ破壊を始めとする設備破壊に至る危険がないことは前述したとおりである。
【0046】
水素ガス濃度がS2 からS1 までのS点で操業を行う場合について更に詳しく説明する。この操業で大気リークが発生した場合、炉内雰囲気は、直線SD上をS点からD点へ移動することになり、途中S0 点より燃焼領域に入る。S0 点を通る直線CAに平行な直線が直線BCと交差する点をO0 とすると、O0 点はS0 点における酸素濃度を表す。即ち、操業中に大気リークが発生すると、炉内雰囲気ガス中の酸素ガス濃度は辺BC上をC点からB点へ移動し、途中O0 点より燃焼領域に入る。このため、操業中に雰囲気ガス中の酸素濃度を測定し、その酸素濃度測定値の上昇を検知すれば大気リークを検知でき、酸素濃度測定値がO0 点で表される酸素濃度に到達する前に警報を発するようにすれば、燃焼が始まる前に大気リークを検知できる。
【0047】
この場合、実際の操業では大気リーク時の対処時間などを考慮することが重要である。この観点から、実操業上は、O0 点で表される酸素濃度に安全率として0.1〜0.25を乗じた値の酸素濃度が検知されたときに警報を出すことが望まれる。安全率が0.1未満の場合は感度が上がり過ぎ、誤検出が問題になる。0.25を超える場合は大気リークに対する対処時間が不足すると共に、酸素センサーの測定誤差による誤動作が問題になる。
【0048】
なお、図2に示した三角線図は便宜上、常温、大気圧下のものであるが、減圧された操業炉内では燃焼、爆ごうは抑制される傾向となるので、図2に示した三角線図中で爆ごう、燃焼を回避できれば、炉内の高温雰囲気を考慮しても、実操業での爆ごう、燃焼を回避できる。炉内操業条件を考慮した三角線図の使用が可能なことは言うまでもない。
【0049】
【発明の効果】
以上に説明したとおり、本発明の水素ガス供給方法は、水素を含む不活性雰囲気中でCZ法によりシリコン単結晶を育成する際に、水素ガス濃度を大気リークによる爆ごうを回避できる限界値以下に抑制することにより、安全を維持しつつ、その濃度を従来より高濃度にできる。これにより、操業の自由度を広げ、且つ、水素の混合による欠陥抑制等の効果を飛躍的に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】CZ引上げ炉の概略構成図である。
【図2】水素ガス、酸素ガス及び不活性ガスを頂点A,B,Cとする3成分系の三角線図である。
【符号の説明】
1 メインチャンバ
2 プルチャンバ
3 ルツボ
4 支持軸
6 ヒータ
8 ワイヤ
10 原料融液
11 種結晶
12 単結晶
13 ガス供給口
14 ガス排出口
15 酸素センサー
Claims (8)
- 水素を含む不活性雰囲気中でCZ法によりシリコン単結晶を育成する際に、単結晶引上げ炉内に水素ガスを下記のS1 点で表される水素ガス濃度未満で供給することを特徴とするシリコン単結晶育成における水素ガス供給方法。
記
水素ガス、酸素ガス及び不活性ガスを頂点A,B,Cとする3成分系の三角線図において、爆ごうに対する混合ガスの希釈限界をK1 とし、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成をDとするとき、DからK1 へ向かう直線が、不活性ガスと水素ガスの体積比を示す辺CAと交差する点S1 で表される水素ガス濃度。 - 爆ごうに対する混合ガスの希釈限界K1 は下記の交点である請求項1に記載のシリコン単結晶育成における水素ガス供給方法。
記
水素ガスと酸素ガスの体積比を示す辺AB上での爆ごう範囲をL1 〜L1 ′、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成Dと頂点Aを結ぶ直線DA上での爆ごう範囲をM1 〜M1 ′とするとき、直線L1 M1 と直線L1 ′M1 ′が交差する交点。 - 前記水素ガスを下記のS2 点で表される水素ガス濃度以上で供給することを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶育成における水素ガス供給方法。
記
水素ガス、酸素ガス及び不活性ガスを頂点A,B,Cとする3成分系の三角線図において、燃焼に対する混合ガスの希釈限界をK2 とし、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成をDとするとき、DからK2 へ向かう直線が、不活性ガスと水素ガスの体積比を示す辺CAと交差する点S2 で表される水素ガス濃度。 - 燃焼に対する混合ガスの希釈限界K2 は下記の交点である請求項3に記載のシリコン単結晶育成における水素ガス供給方法。
記
水素ガスと酸素ガスの体積比を示す辺AB上での燃焼範囲をL2 〜L2 ′、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成Dと頂点Aを結ぶ直線DA上での燃焼範囲をM2 〜M2 ′とするとき、直線L2 M2 と直線L2 ′M2 ′が交差する交点。 - 単結晶引上げ操業中に雰囲気ガス中の酸素濃度の上昇を検知し、その酸素濃度が下記のS0 点における酸素ガス濃度に至るまでに警報を発することを特徴とする請求項3に記載のシリコン単結晶育成における水素ガス供給方法。
記
酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成Dと、不活性ガスと水素ガスの体積比を示す辺CA上での操業点Sとを結ぶ直線DSが、燃焼領域の上限を表す直線L2 ′K2 と交差する点S0 における酸素ガス濃度。 - 前記雰囲気ガス中の酸素濃度が、前記S0 点における酸素ガス濃度O0 の0.1〜0.25倍に達したときに警報を発することを特徴とする請求項5に記載のシリコン単結晶育成における水素ガス供給方法。
- 前記水素ガスを下記のS2 点で表される水素ガス濃度未満で供給することを特徴とする請求項1に記載のシリコン単結晶育成における水素ガス供給方法。
記
水素ガス、酸素ガス及び不活性ガスを頂点A,B,Cとする3成分系の三角線図において、燃焼に対する混合ガスの希釈限界をK2 とし、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成をDとするとき、DからK2 へ向かう直線が、不活性ガスと水素ガスの体積比を示す辺CAと交差する点S2 で表される水素ガス濃度。 - 燃焼に対する混合ガスの希釈限界K2 は下記の交点である請求項7に記載のシリコン単結晶育成における水素ガス供給方法。
記
水素ガスと酸素ガスの体積比を示す辺AB上での燃焼範囲をL2 〜L2 ′、酸素ガスと不活性ガスの体積比を示す辺BC上での空気組成Dと頂点Aを結ぶ直線DA上での燃焼範囲をM2 〜M2 ′とするとき、直線L2 M2 と直線L2 ′M2 ′が交差する交点。
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