JP4649572B2 - 光ピックアップ光学系 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
発明は、ブルーレイ・ディスク(BD)、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)およびコンパクト・ディスク(CD)などの光ディスクの面に、それぞれのディスク用の異なる波長を集光させる単体対物レンズを使用した光ピックアップ光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
CDやDVDの光記録媒体の再生や光記録媒体に記録に用いられる光ピックアップシステムの構成を図13に示す。フォトダイオードがユニット化された、異なる波長の半導体レーザー素子7,8より発した光線は、トラッキングやフォーカシング検出に用いられる回折格子9,10を通過することにより分波する。つぎに、半導体レーザーからの光束を平行光に変換するコリメートレンズ12を通過後、立ち上げミラー13によって光軸の向きが変えられる。さらに、対物レンズ14を通過することによって光束は光記録媒体15に集光される。光記録媒体15で反射した光線は同一光路を戻り、光線は分割フォトダイオードに到達し、分割フォトダイオードの信号によりトラッキング、フォーカシングを制御する。ミラー11は波長選択性を持つミラーである。
【0003】
また、異なる波長の発光部を持つ1つの半導体レーザー素子アレイ16を用いた光ピックアップシステムを図14に示す。フォトダイオードがユニット化された半導体素子レーザー素子アレイ16より発する、異なる波長の光束は回折格子17を通過後、コリメータレンズ18を通過する。コリメータレンズにより光束が平行光となり、立ち上げミラー19によって光軸の向きが変えられ、対物レンズ20を通過後、光記録媒体21に集光する。
【0004】
DVDとCDの光記録媒体に対する光学系は共通化されており、共通化する為に様々な技術が開発されている。
【0005】
たとえば、対物レンズの中心部の第一領域を通過する光束は第一の光記録媒体、第二の光記録媒体に集光させ光記録媒体への記録又は再生を行い、中心部の周辺の第二領域については主に第二光記録媒体の記録又は再生させ、第二領域の外側に広がる第三領域については主に第一光記録媒体への記録又は再生に使用する方法が提案されている(特開平11−96585号公報)。
【0006】
しかしながら、上記の従来技術の方法では、対物レンズを通過する光線が、通過する領域により厚みの異なる光記録媒体にそれぞれ対応するため、半導体レーザーからのエネルギーを効率良く光記録媒体に導くことができない。
【0007】
特に、半導体レーザー素子アレイによる、異なる波長を1つのレーザーユニットから発する場合はレーザー光源から光記録媒体表面までの距離が同一であるので、設計によってのDVDとCD光路長差を利用することができず、光記録媒体に記録、あるいは再生するために必要な波面収差量の許容値を満足することができなかった。
【0008】
DVDやCDなど厚みの異なる光記録媒体への記録、あるいは再生に使用する半導体レーザーの二波長は比較的近い波長である。したがって、回折部を有する領域についてDVD、CDを再生または記録するために必要な共通領域に共通回折次数を使用してレンズ面を構成することによっては、光記録媒体に記録、あるいは再生するために必要な波面収差量の許容値を満足することができない。このため、回折部を有する領域において異なる回折次数を使用して最適化を行う方法が提案されている(たとえば、社団法人応用物理学会監修、回折光学素子入門、オプトロニクス社、平成9年5月20日第1版第1刷発行、p.102-105)。
【0009】
回折部を有する領域における回折効率について、一般的に回折格子の最適深さはつぎの数式で示される。ここで、Nは段数、λは波長、nは屈折率である。
【数1】
Figure 0004649572
【0010】
上記の数式によって得られる深さは定義される波長λに対し1次回折光が最大となる深さである。したがって、最適深さを回折格子深さとした場合、波長λに比較的近い波長の光のうち、回折部を有する領域を通過するものは、1次回折光が大部分を占める。厚みの異なる光記録媒体の記録、あるいは再生用の、半導体レーザーからの2波長の光について、それぞれ、1次回折光の回折効率が向上することとなる。すなわち、0次回折光の回折効率は共に低くなる。
【0011】
図15はX軸に回折格子深さをとり、Y軸に回折効率をとって、ブレーズド形状における回折効率を計算したグラフである。可視赤色波長である660nmを0次回折光、近赤外の波長である780nmを1次回折光として定義した場合、0次回折光、1次回折光とも回折効率が得られる深さとしては0.74μm程度となる。この場合、それぞれ異なる波長における回折効率は40%程度となる。
【0012】
このように、回折部領域において上記の回折効率値を与えるレリーフ型回折格子も使用可能である。しかし、市場の要求としては、特に可視赤色半導体レーザーを使用するDVDに対し高速化の要求が高くなっており、光ピックアップとして要求する光学特性を満足すると共に、半導体レーザーのエネルギー効率を高くする必要がある。言い換えれば、半導体レーザーから発した、異なる波長の光線を、0次および1次回折光として効率良く光記録媒体に導く、対物レンズおよびその設計方法に対する大きなニーズがある。
【0013】
このように、DVDやCDなど厚みの異なる光記録媒体への記録、あるいは再生に使用する対物レンズにおいては、光記録媒体上への集光における収差を小さくするため、0次および1次回折光を利用することが必要となる。しかしながら、0次および1次回折光の回折効率をともに向上させることは従来技術では困難であった。このため、0次および1次回折光の回折効率をともに向上させることに対する大きなニーズがある。
【0014】
大容量の情報を保存するための記録媒体として光ディスクが使用されている。光ディスクのうち、広く使用されているものとしてコンパクト・ディスク(CD)およびデジタルバーサタルディスク(DVD)などがある。
【0015】
CDおよびDVD用の光ピックアップシステムは、省スペースおよび省コストの目的から共用とするのが望ましい。しかし、読取り、書き込みに必要な集光スポット径は、CDでは1.4乃至1.5μm程度であるのに対し、DVDでは0.8乃至0.9μm程度である。集光スポット径は、使用される波長に比例し、光学系の像側の開口数に反比例する。このため、DVDでは、CDに比較して波長を小さくし、開口数を大きくすることにより集光スポット径を小さくしている。さらに、DVDでは、ディスクチルトによって生じるコマ収差を抑えるためにCDでは1.2mmである基板厚みを0.6mmとしている。したがって、光ピックアップシステムをCDとDVDで共用とするには、基板厚みの変化による焦点位置の変更や開口数の変更を行なう必要がある。
【0016】
このため、従来技術においては、焦点位置の変更を行なう2焦点レンズ(たとえば、特開2000−81566号公報)を使用した光ピックアップや、液晶により開口数の変更を行なう開口切替え型光ピックアップ(たとえば、特開平10−106020号公報)が提案されている。しかし、2焦点レンズによって基板厚みの変化による焦点位置の変更を行なうとしても、開口数の変更は別途行なうことが必要になる。また、開口数切替えのための液晶パネルを別に設けると部品点数が増え部品コストが増加する。さらに、生産工程における歩留まりの低下および工数の増加にもつながる。
【0017】
このように、従来技術において、開口数選択機能を備えた結像光学素子は提案されていない。
【0018】
大容量の情報を保存するための記録媒体として光ディスクが使用されている。光ディスクのうち、広く使用されているものとしてコンパクト・ディスク(CD)およびデジタルバーサタルディスク(DVD)などがある。さらに、より高密度のブルーレイ・ディスク(BD)が開発されている。
【0019】
光ディスクの記憶密度を決定する集光スポット径は、使用される波長に比例し、光学系の像側の開口数に反比例する。このため、波長を小さくし、開口数を大きくすることにより集光スポット径を小さくしている。CD、DVDおよびBDの波長は、それぞれ約785nm、655nmおよび405nmであり、開口数は、それぞれ約0.45、0.65および0.85である。
【0020】
CD、DVDおよびBD用の光ピックアップシステムは、省スペースおよび省コストの目的から共用とするのが望ましい。
【0021】
従来技術においては、2枚構成の高NA対物レンズであって、レンズ間隔を変化させずとも厚みの異なる情報記録媒体に対応できる対物レンズ(たとえば、特開2001−174697号公報)や1つの対物レンズで複数種類の光情報記録媒体の記録再生を可能とする光利用効率の高い光ヘッド用対物レンズ(たとえば、特開2000−81566号公報)が提案されている。しかし、前者は、レンズが2枚構成なので、部品点数が多くコストがかかる。さらに対物部における重量が増すことにより、レンズ径をアクチュエータで駆動させる負荷がかかり高速化の妨げとなる。また、後者は、BD用の光ピックアップシステムに適用することはできない。
【0022】
このように、従来技術において、BDを含むディスク用の異なる波長を集光させる単体対物レンズは提案されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
発明は、ブルーレイ・ディスク(BD)、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)およびコンパクト・ディスク(CD)などの光ディスクの面に、それぞれのディスク用の異なる波長を集光させる光ピックアップ光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の参考実施形態による結像光学素子は、少なくとも1つの面に、光軸を含む第1領域と第1領域の周囲の回折部を有する第2領域とを備え、第1の波長を有する第1の光線と、第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の光線を取り扱う。第2領域における回折部の形状は、基板を平面とした場合に階段形状であり、階段形状の段差量が、0次回折光の回折効率が、第1および第2の光線の、一方の波長において回折効率のピークに近づくように、前記一方の波長に基づいて定められている。階段数をN、前記一方の光線の波長をλ、0次以外の回折次数をα、mおよびpを整数とした場合に、波長
λ=[N/(N・m+α)]・λ・p
と第1および第2の光線の、前記他方の波長との差の、前記他方の波長に対する比率が、回折効率のピーク値からの低下の度合いから定めた所定の値以下であるように、階段数Nが定められている。
【0025】
したがって、階段形状の回折格子形状を備える結像光学素子において、異なる二波長を0次およびα次回折光として回折効率を向上させることができる。
【0026】
本発明の参考実施形態による対物レンズは、第1の波長を有する第1の光線と第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の光線を、それぞれ第1および第2の面上に集光させる対物レンズである。少なくとも1つのレンズ面に、光軸を含む第1領域と第1領域の周囲の回折部を有する第2領域と第2領域の周囲の第3領域とを備える。第1の光線が第1および第2領域を通過後、第1の面上に集光し、第2の光線が第1、第2および第3領域を通過後第2の面上に集光するように、第2領域におけるレンズ面形状が第1および第2の光線の、一方の光路に基づいて設計され、第2領域における回折部を定める位相関数が第1および第2の光線の、他方の光路に基づいて設計されている。
【0027】
本発明の参考実施形態による対物レンズの設計方法は、第1の波長を有する第1の光線と第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の光線を、それぞれ第1および第2の面上に集光させる対物レンズを対象とする。設計方法は、少なくとも1つのレンズ面に、光軸を含む第1領域と第1領域の周囲の第2領域と第2領域の周囲の第3領域とを定めるステップと、第1領域におけるレンズ面形状を設計するステップとを含む。設計方法は、さらに、第2領域におけるレンズ面形状を第1および第2の光線の、一方の光路に基づいて設計するステップと、第2領域における回折部の形状を規定する位相関数を第1および第2の光線の、他方の光路に基づいて定めるステップと、第3領域におけるレンズ面形状を設計するステップとを含む。
【0028】
このように、第1領域は回折部を有していないので回折部によるエネルギーロスがない。また、第2領域において、第1および第2の光線の一方は、レンズ面形状にしたがって屈折により光路を定められ、第1および第2の光線の他方は、レンズ面形状および回折部の位相関数にしたがって光路を定められるので、第1および第2の面上に集光させる場合の収差を小さくすることができる。したがって、それぞれ第1および第2の面上に集光させる二波長の光線に対して、エネルギーロスおよび収差を小さくすることができる。
【0029】
本発明の参考実施形態によれば、第2領域における回折部の形状が、基板を平面とした場合に階段形状であり、階段形状の段差量が第1および第2の光線の波長に基づいて定められる。
【0030】
また、本発明の参考実施形態によれば、第2領域におけるレンズ面形状を定める光線の波長をλ、レンズの屈折率をn、レンズの周囲の屈折率をn、回折部に対する入射角をθとして、段差量をλ・cosθ/(n―n)の整数倍の値を基準として求める。
【0031】
したがって、0次回折光としての第2領域におけるレンズ面形状を定める光線に対する回折部の影響が小さくなり、回折効率が向上する。
【0032】
本発明の参考実施形態によれば、回折部における階段の幅が位相関数および段差量と階段数に基づいて定められる。したがって、1次回折光としての第1および第2の光線の他方に対する回折部の影響が大きくなり、回折効率が向上する。
【0033】
本発明の参考実施形態による対物レンズは、第2領域における回折部において、第2領域におけるレンズ面形状を定める光線が主に0次回折光として通過し、第2領域における回折部の形状を定める光線が主に1次または-1次回折光として通過する。したがって、それぞれ第1および第2の面上に集光させる際の収差を小さくすることができる。
【0034】
本発明の参考実施形態によれば、第1、第2および第3領域のレンズ面形状が非球面である。したがって、収差を小さくするために自由度の高い設計を行うことができる。
【0035】
本発明の参考実施形態によれば、厚みの異なる第1および第2の光記録媒体への情報の記録または再生をおこなう光ピックアップ装置であって、第1の波長を有する第1の光線と第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の光線を、それぞれ第1および第2の光記録媒体に使用する光ピックアップ装置において使用される。第1の面が第1の光記録媒体の面であり、第2の面が第2の光記録媒体の面である。したがって、光ピックアップ装置の第1および第2の光記録媒体の面上にそれぞれ集光させる二波長の光線に対して、エネルギーロスおよび収差を小さくすることができる。
【0036】
本発明の参考実施形態によれば、第1の光記録媒体がCDであり、第2の光記録媒体がDVDである。したがって、光ピックアップ装置のCDおよびDVDの面上にそれぞれ集光させる二波長の光線に対して、エネルギーロスおよび収差を小さくすることができる。
【0037】
本発明の参考実施形態によれば、第1領域を通過する光線が光記録媒体に集光する開口数をNA1とするとNA1は、NA1≦0.37を満たし、第2領域を通過し光記録媒体上に集光する開口数をNA2とするとNA2は0.3≦NA2≦0.51を満たし、第3領域を通過し光記録媒体上に集光する開口数をNA3とするとNA3は 0.4≦NA3≦0.67を満たす。このように、開口数を適切に定めることにより、光ピックアップ装置の第1および第2の光記録媒体の面上にそれぞれ集光させる二波長の光線に対して、エネルギーロスおよび収差を小さくすることができる。
【0038】
本発明の参考実施形態による回折格子形状を決定する方法は、異なる二波長を0次および1次回折光として回折効率を考慮しながら、位相関数に基づいて階段形状の回折格子形状を決定する。回折格子形状を決定する方法は、一方の波長λ0の光を0次回折光として波長λ0に基づいて段差量を定めるステップと、階段数をN、正の整数をmとして、1次回折光における任意のピーク波長λ2を、回折格子形状が右上がり形状を持つ場合はλ2=N/(Nm+1)×λ0とし、回折格子形状が左上がりの形状を持つ場合はλ2=N/(Nm-1)×λ0として求めるステップとを含む。回折格子形状を決定する方法は、さらに、λ2が1次回折光である他方の光の波長に近づくようにmを操作しながら、階段数を定めるステップと、段差量および位相関数に基づいて階段の幅を定めるステップとを含む。
【0039】
本発明の参考実施形態による回折格子形状を決定するコンピュータ・プログラムは、異なる二波長を0次および1次回折光として回折効率を考慮しながら、位相関数に基づいて階段形状の回折格子形状を決定する。回折格子形状を決定するコンピュータ・プログラムは、コンピュータに、一方の波長λ0の光を0次回折光として波長λ0に基づいて段差量を定めるステップと、階段数をN、正の整数をmとして、1次回折光における任意のピーク波長λ2を、回折格子形状が右上がり形状を持つ場合はλ2=N/(Nm+1)×λ0とし、回折格子形状が左上がりの形状を持つ場合はλ2=N/(Nm-1)×λ0として求めるステップとを実行させる。回折格子形状を決定するコンピュータ・プログラムは、さらに、コンピュータに、λ2が1次回折光である他方の光の波長に近づくようにmを操作しながら、階段数を定めるステップと、段差量および位相関数に基づいて階段の幅を定めるステップとを実行させる。
【0040】
したがって、位相関数に基づいて階段形状の回折格子形状を決定する際に、異なる二波長を0次および1次回折光として回折効率を向上させるようにすることができる。
【0041】
本発明の参考実施形態による結像光学素子は、少なくとも1つの面に、光軸を含む第1領域と第1領域の周囲の回折部を有する第2領域とを備え、第1の波長を有する第1の光線は第1領域を通過して結像面に集光するが第2領域を通過した場合は結像面に集光せず、第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の光線は第1領域および第2領域を通過して結像面に集光するようにする。さらに、本発明の参考実施形態による結像光学素子は、第2領域における面形状が第1および第2の光線の、一方の光路に基づいて設計され、第2領域における回折部の形状が第1および第2の光線の、他方の光路に基づいて設計されている。
【0042】
本発明の参考実施形態による結像光学素子を設計する方法は、少なくとも1つの面に、光軸を含む第1領域と第1領域の周囲の回折部を有する第2領域とを備え、第1の波長を有する第1の光線は第1領域を通過して結像面に集光するが第2領域を通過した場合は結像面に集光せず、第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の光線は第1領域および第2領域を通過して結像面に集光するようにする結像光学素子を設計する。さらに、本発明の参考実施形態による結像光学素子を設計する方法は、第2領域における面形状を第1および第2の光線の、一方の光路に基づいて設計するステップと、第2領域における回折部の形状を第1および第2の光線の、他方の光路に基づいて設計するステップと含む。
【0043】
したがって、第2領域における面形状と回折部の形状とによって第1および第2の光線の光路を分離し、第1の光線を結像面に集光させず第2の光線を結像面に集光させることができる。
【0044】
本発明の参考実施形態によれば、第2領域における回折部の形状が、基板を平面とした場合に階段形状であり、階段形状の段差量が、0次回折光の回折効率が、第1および第2の光線の、前記一方の波長においてピークに近づくように、前記一方の波長に基づいて定められている。
【0045】
本発明の参考実施形態によれば、前記一方の波長の整数倍をλ、結像光学素子の屈折率をn、結像光学素子の周囲の屈折率をn、回折部に対する入射角をθとして、回折部の段差量が、λ・cosθ/(n―n)の値を基準として定められている。
【0046】
したがって、第1および第2の光線のうち、一方の光線の大部分は、0次回折光として回折部の影響を受けずに回折部を通過し、第2領域の面形状によって光路が定まる。また、一方の光線のうち0次以外の次数の回折光として回折部を通過し、回折部の影響を受けるものは非常に少ない。
【0047】
本発明の参考実施形態によれば、階段形状の階段数が、前記他方の波長における0次回折光の回折効率が0%に近づき、0次以外の次数の回折光の回折効率が、できるだけ大きくなるように、第1および第2の波長に基づいて定められる。
【0048】
本発明の参考実施形態によれば、階段数をN、前記一方の光線の波長をλ、0次以外の回折次数をα、mおよびpを整数とした場合に、波長
λ=[N/(N・m+α)]・λ・p
と第1および第2の光線の、前記他方の波長との差の前記他方の波長に対する比率が所定の値以下であるように階段数Nを定める。
【0049】
したがって、第1および第2の光線のうち、他方の光線の大部分は、0次以外の次数の回折光として回折部を通過し、回折部の形状によって光路が定まる。また、他方の光線のうち0次回折光として回折部を通過し、回折部の影響を受けないものは非常に少ない。
【0050】
本発明の参考実施形態による対物レンズは、少なくとも1つの面に回折格子を備えており、異なる波長の光線を、異なる面に集光する。第1の波長λおよび第2の波長λ
λ
の関係を満たす場合に、第1の波長λおよび第2の波長λの光束が共に通過する領域において、2次回折光として第1の波長λの光束が第1の面に集光し、1次回折光として第2の波長λの光束が第2の面に集光するように、回折格子の位相関数およびレンズ面形状を定め、回折格子の格子深さを、第1の波長λにおける2次回折光の回折効率および第2の波長λにおける1次回折光の回折効率が所定の値より大きくなるように定める。
【0051】
したがって、第1および第2の波長の光束が2次および1次回折光として、それぞれ第1および第2の面に集光し、回折効率も所定の値より大きくなる。
【0052】
本発明の参考実施形態による対物レンズにおいて、第2の波長λ
λ
の関係を満たす場合に、第1の波長λ、第2の波長λおよび第3の波長λの光束が共に通過する領域において、さらに、1次回折光として第3の波長λの光束が第3の面に集光するように、回折格子の位相関数およびレンズ面形状を定め、回折格子の格子深さを、第3の波長λにおける1次回折光の回折効率が所定の値より大きくなるように定めている。
【0053】
したがって、第3の波長の光束が1次光として第3の面に集光し、回折効率も所定の値より大きくなる。
【0054】
本発明の実施形態による対物レンズにおいて、回折格子がブレーズ化形状である。したがって、加工が比較的簡単である。
【0055】
本発明の実施形態による対物レンズにおいて、nをレンズの屈折率として、回折格子の深さlが式
(7/4)×λ/(n−1) < l < (9/4)×λ/(n−1)
によって定まる。この場合に、第1の波長における2次回折光の回折効率、第2および第3の波長における1次回折光の回折効率は、それぞれ70%以上となる。
【0056】
本発明の実施形態による対物レンズにおいて、少なくとも1つの面を、光軸を取り囲む少なくとも1つの帯状領域および光軸を含む中心領域に分割し、それぞれの領域を別個の面によって定義している。
【0057】
本発明の実施形態による対物レンズにおいて、別個の面の間に光軸方向の段差を備えている。
【0058】
本発明の実施形態による対物レンズにおいて、別個の面が、z軸は光軸と一致し、iは中心から数えた面の番号、Riは曲率半径、Kiは離心率、Ai4、Ai6、Ai8、Ai10は非球面係数、diは第1面を基準とする他の面の光軸上の段差を表す場合に、式
【数2】
Figure 0004649572
によって表される。
【0059】
本発明の参考実施形態による対物レンズにおいて、第1の波長の光束が像側開口数NA1によって集光し、第2の波長の光束が像側開口数NA2によって集光し、
NA1>NA2
の場合に、第2の波長の光束の最も外側の部分によって、少なくとも1つの面を、光軸を取り囲む少なくとも1つの帯状領域および光軸を含む中心領域に分割し、それぞれの領域を別個の面によって定義している。
【0060】
本発明の参考実施形態による対物レンズにおいて、第1の波長の光束が像側開口数NA1によって集光し、第2の波長の光束が像側開口数NA2によって集光し、
NA1>NA2
の場合に、第1の波長の光束のみが通過する光軸から離れた領域において、回折格子を備え、第1の波長λの光束が第1の面に集光するように、回折格子の位相関数およびレンズ面形状を定めている。
【0061】
したがって、レンズ面形状の自由度が高くなり、種々の係数を調整することにより、異なる波長の光束を異なる面に集光させる場合の収差をより小さくさせることができる。それぞれの面に集光させる場合に、波面収差を、波長単位でRMS0.07以下とすることができる。
【0062】
本発明の参考実施形態による対物レンズにおいて、格子斜面がブレーズ化形状の斜面よりも急な部分を少なくとも一部に備えるような形状である。
【0063】
したがって、光が本発明による格子形状の斜面の傾きが急な部分に入射すると、従来技術(ブレーズ化形状)と比較して入射角が大きくなり、透過光が発生せず全反射する。全反射された光は隣り合う格子形状に再び入射し、このとき別の入射光と位相重ね合わせによる結合が行われ、繰り返し反射されて最終的に斜面に対してきわめて小さい角度で透過光(回折光)が出射される。この結果、回折効率が向上する。このように、格子周期の短い部分において回折効率が向上する。
【0064】
本発明の参考実施形態による対物レンズにおいて、それぞれの面に集光させる場合に、波面収差が、波長を単位としてRMS0.07以下となるように設計している。
【0065】
したがって、それぞれの波長に対して、個別の面に高精度に集光させることができる。
【0066】
本発明の実施形態による光ピックアップ光学系において、第1の波長がブルーレイ・ディスク用の波長、第2の波長がデジタル・バーサタイル・ディスク用の波長である。
【0067】
したがって、単体レンズにより、ブルーレイ・ディスクおよびデジタル・バーサタイル・ディスクに対応することができるので、コンパクトな光ピックアップ光学系が提供される。このため、高速化、かつ低価額化が実現される。
【0068】
本発明の実施形態による光ピックアップ光学系において、第3の波長を扱う場合に、第3の波長がコンパクト・ディスク用の波長である。
【0069】
したがって、単体レンズにより、ブルーレイ・ディスク、デジタル・バーサタイル・ディスクおよびコンパクト・ディスクに対応することができるので、コンパクトな光ピックアップ光学系が提供される。このため、高速化、かつ低価額化が実現される。
【0070】
本発明の実施形態による光ピックアップ光学系において、ブルーレイ・ディスク用の波長およびデジタル・バーサタイル・ディスク用の波長の光束が、対物レンズに平行光として入射され、コンパクト・ディスク用の波長の光源と象とが有限共役関係にある。
【0071】
したがって、コンパクト・ディスク用波長の像側開口数を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の参考実施形態による対物レンズを使用した光ピックアップシステムを示す。
【図2】本発明の参考実施形態によるコリメータレンズを使用しない共役レンズを使用した光ピックアップシステムを示す。
【図3】本発明の参考実施形態による対物レンズのレンズ形状を示す。
【図4】本発明の参考実施形態による対物レンズの回折部の形状を示す。
【図5】本発明の参考実施形態による対物レンズの設計方法を示す。
【図6】本発明の参考実施形態による対物レンズの回折部の設計方法を示す。
【図7】本発明の参考実施形態による対物レンズの設計方法による設計結果を示す。
【図8】本発明の参考実施形態による対物レンズの設計方法による設計結果について、回折効率を計算した結果を示す。
【図9】本発明の参考実施形態による対物レンズを含む光学系の参考数値実施例である。
【図10】本発明の参考実施形態による対物レンズの参考数値実施例である。
【図11】本発明の参考実施形態による対物レンズおける球面収差量と回折領域を持たない非球面形状のみで構成した対物レンズにおける球面収差を比較した図である。
【図12】本発明の参考実施形態による対物レンズにおける球面収差を示す。
【図13】従来の光ピックアップシステムを示す。
【図14】半導体レーザー素子アレイを用いた従来の光ピックアップシステムを示す。
【図15】ブレーズド形状における回折効率の計算結果を示す。
【図16】最適傾け量を説明する図である。
【図17】本発明の参考実施形態による対物レンズの設計方法を示す流れ図である。
【図18】本発明の参考実施形態による対物レンズにおける格子部の形状の設計方法を示す流れ図である。
【図19】本発明の参考実施形態による回折部の形状(階段数N=2)を示す。
【図20】本発明の参考実施形態による回折部の形状(階段数N=3)を示す。
【図21】本発明の参考実施形態による対物レンズの光路を示す。
【図22】本発明の参考実施形態による対物レンズの球面収差を示す。
【図23】本発明の参考実施形態による対物レンズの点像強度分布(PSF)を示す。
【図24】本発明の別の参考実施形態による回折部の形状(階段数N=2)を示す。
【図25】本発明の別の参考実施形態による対物レンズの光路を示す図。
【図26】波長に対する、1次回折光および2次回折光の回折効率を示す。
【図27】本発明の参考実施形態の対物レンズの設計方法の流れ図を示す。
【図28】本発明の1実施形態の対物レンズによるBD用光線の光路図を示す。
【図29】本発明の1実施形態の対物レンズによるDVD用光線の光路図を示す。
【図30】本発明の1実施形態の対物レンズによるCD用光線の光路図を示す。
【図31】本発明の1実施形態の対物レンズによるBD用光線の強度分布図を示す。
【図32】本発明の1実施形態の対物レンズによるDVD用光線の強度分布図を示す。
【図33】本発明の1実施形態の対物レンズによるCD用光線の強度分布図を示す。
【図34】本発明の他の参考実施形態の対物レンズによるBD用光線の光路図を示す。
【図35】本発明の他の参考実施形態の対物レンズによるDVD用光線の光路図を示す。
【図36】本発明の他の参考実施形態の対物レンズによるBD用光線の強度分布図を示す。
【図37】本発明の他の参考実施形態の対物レンズによるDVD用光線の強度分布図を示す。
【図38】本発明の参考実施形態の回折光学素子の設計手順を示す流れ図である。
【図39】本発明の参考実施形態の回折光学素子の設計手順を示す流れ図である。
【図40】回折光の振る舞いを示す概念図である。
【図41】本発明の参考実施形態および従来の回折光学素子における格子周期と回折効率との関係を示す。
【図42】本発明の参考実施形態の回折光学素子の断面形状と1次回折効率を示す。
【図43】本発明の参考実施形態の回折光学素子における開口数と回折効率との関係を示す。
【図44】本発明の参考実施形態の特殊形状の回折格子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
本発明の参考実施形態による対物レンズの、光ピックアップシステムに使用される1形態について、図 1を参照しながら説明する。
【0074】
半導体レーザー1より発した光線6aは可視赤色波長を持ち、この光線は立ち上げミラー2により光軸方向を変えられる。つぎに、半導体レーザー1より発した光線6aを平行光に変換する素子3(例えばコリメータレンズ)を通過することにより、光線は平行光となる。さらに、対物レンズ4aを通過後、厚みの薄い光記録媒体5a(DVD)に集光する。
【0075】
半導体レーザー1より発した光線6bは近赤外波長であり、この光線は立ち上げミラー2により光軸方向を変えられる。つぎに、半導体レーザー1より発した光線6bを略平行光に変換する素子3を通過することにより、光線は略平行光となる。さらに、対物レンズ4bを通過後、厚みの厚い光記録媒体5b(CD)に集光する。
【0076】
光記録媒体上に集光されるレーザー光線は、ほぼ回折限界の集光能力が必要となり波面収差量として0.07λRMS以下でなければならない。更にDVDにおいては0.035λRMS以下が好ましい。
【0077】
半導体レーザー1は2つの異なる波長を発する半導体レーザー素子アレイであってもよい。通常DVDに使用される半導体レーザーは可視赤色の波長を持ち、CDに使用される半導体レーザーは近赤外の波長を持つ。ここで、6aの光線は可視赤色の波長(例えば660nm)であり、6bの光線は近赤外の波長(例えば780nm)である。
【0078】
本発明の参考実施形態による対物レンズ4a、4bは共通の対物レンズであるが、波長の違いおよび光記録媒体の厚みの違いにより対物レンズ4a、4bが光軸方向に移動して示されている。
【0079】
薄い厚みを持つ光記録媒体(例えば0.6mmの厚みを持つDVD)に集光する開口数は0.6、厚い厚みを持つ光記録媒体(例えば1.2mmの厚みを持つCD)に集光する開口数は、略0.45となっている。また回折格子部は対物レンズの光記録媒体側に配置してある。
【0080】
上記の実施形態は、半導体レーザーと半導体レーザーの光線を光記録媒体に集光させる対物レンズの間に半導体レーザーの光線を平行にするコリメータレンズを使用しているが、本発明の参考実施形態は、図2に示すようなコリメータレンズを除いた共役レンズにも適用できる。
【0081】
図3は本発明の参考実施形態における回折格子部を含む対物レンズの、光記録媒体側のレンズ面形状を示す。対物レンズ光記録媒体側の形状は回折部を有しない中心領域、すなわち第1領域と、回折部を有しない中心領域を取り巻く回折領域、すなわち第2領域と、さらにその回折領域を取り巻く回折部を有しない領域、すなわち第3領域に分割される。それぞれの領域は、非球面形状であり、それぞれの領域の非球面形状は異なっている。
それぞれの領域における非球面形状は以下の数式で表される。
【数3】
Figure 0004649572
【0082】
図4は回折部領域の基板を平面とした場合の回折格子の形状のみ示をしている。階段形状の回折格子を1つの周期内で位相関数に合わせ階段の幅を可変としている。
【0083】
回折格子の形状を決定する位相関数は以下の数式で表される。
【数4】
Figure 0004649572
位相関数を上記の式によって設定した場合の光線追跡の式は、光線のx方向余弦をl、y方向余弦をmとすると、
【数5】
Figure 0004649572
となる。CD用の光線の収差を極小化するように光線追跡によって式の係数を決定することによって位相関数が決定される。
【0084】
このように、DVD、CDなどの厚みの異なる光記録媒体に記録、または再生を行う本発明の参考実施形態による対物レンズにおいては、球面収差が増大する領域に対し非球面形状を変更するとともに、回折格子による回折の効果を使用して収差補正をおこなっている。
【0085】
本発明の参考実施形態による対物レンズの設計手順を図5の流れ図に基づいて説明する。図5のステップS5010において対物レンズの面における第1、第2および第3領域を定める。第1領域はDVD、CD共用領域である。第1領域は、回折格子構造を持たないのでエネルギーロスが発生しない。したがって、第1領域をできるだけ大きくとるのが望ましい。このため、DVD、CDの収差量を確認しながら、収差量を許容値まで認めるように第1領域をできるだけ大きく定める。第1領域を通過する光線が光記録媒体に集光する開口数をNA1とするとNA1は、NA1≦0.37であるのが好ましい。CD用の光線は第1および第2領域のみを通過するので、第2領域の外径は、CDに対して記録、再生を行うのに必要な開口数(NA)から定める。CDの仕様によるが、NAは0.3-0.51の範囲である。第3領域の外径は、DVDに対して記録、再生を行うのに必要な開口数(NA)から定める。DVDの仕様によるが、NAは0.4−0.67の範囲である。
【0086】
ステップS5020において、第1領域におけるレンズ面形状を設計する。第1領域はDVD、CD共用領域であるので、DVD用光線、CD用光線の双方の光路、収差を考慮してレンズ面形状を定める。
【0087】
ステップS5030において、第2領域におけるレンズ面形状を設計する。本実施形態において第2領域におけるレンズ面形状は、DVD用光線のみの光路、収差を考慮して定める。
【0088】
ステップS5040において、第2領域における回折部の形状を設計する。回折部の形状設計については、後で詳細に説明する。
【0089】
ステップS5050において、第3領域におけるレンズ面形状を設計する。第3領域は、DVD専用領域であるので、第3領域におけるレンズ面形状は、DVD用光線のみの光路、収差を考慮して定める。
【0090】
本発明の参考実施形態による対物レンズの第2領域における回折部の形状設計について、図6の流れ図に基づいて説明する。ここで、DVD用光線の波長は、たとえば、655nm、CD用光線の波長は、たとえば、790nmとする。ステップS6010において、CD用光線の光路を補正するように光路差関数または位相関数を定める。本実施形態においては、第2領域におけるレンズ面形状は、DVD用光線のみの光路、収差を考慮して定めているので、CD用光線の光路を位相関数によって補正する。
【0091】
ステップS6020において、DVD用光線を0次回折光として、DVD用光線の波長(たとえば、655nm)から、階段形状格子部の段差量(1段当り)を求める。DVD用光線を0次回折光としているので、段差量は、当該波長をλ、レンズの屈折率をn、レンズの周囲の屈折率をnとして、λ/(n―n)の整数倍である。本実施形態においてn=1.5407、n=1である。
【0092】
ステップS6030において、階段数をN、正の整数をmとして、1次回折光における任意のピーク波長λ2を、回折格子形状が右上がり形状を持つ場合は
【数6】
Figure 0004649572
とし、回折格子形状が左上がりの形状を持つ場合は
【数7】
Figure 0004649572
として求める。上記の式はデータ分析とデータ解析により経験的に求めたものである。
【0093】
本実施形態は、図4に示すように回折格子形状が左上がりの形状を持つので、後の式を使用する。0次回折光波長をλ、レンズの屈折率をn、レンズの周囲の屈折率をnとして、段差量をλ/(n―n)とし、正の整数をm=1として、N=5、6、7、8とした場合の結果を図7に示した表の1乃至4行目に示す。1次回折光のピーク波長(単位nm)は、それぞれ、818.75、786、764.17、748.57となる。また、0次回折光波長をλ、レンズの屈折率をn、レンズの周囲の屈折率をnとして、段差量をλ/(n―n)の2倍とし、正の整数をm=1として、N=3、4、5、6とした場合の結果を図7の5乃至8行目に示す。1次回折光のピーク波長(単位nm)は、それぞれ、786、748.57、727.78、714.55となる。
【0094】
ステップS6040において、上記のように求めたピーク波長λcが、他方のCD用光線の波長λk(たとえば、790nm)に十分近いか判断する。具体的には、1次回折光ピーク誤差として以下の式を計算する。
【数8】
Figure 0004649572
【0095】
図7に示した表の第1行目から第8行目のうち、第2行目と第5行目の1次回折光ピーク誤差が小さい(たとえば、1%以下)ので、階段数は6段(0次回折光波長をλ、レンズの屈折率をn、レンズの周囲の屈折率をnとして、段差量がλ/(n―n)の1倍の場合)、または3段(0次回折光波長をλ、レンズの屈折率をn、レンズの周囲の屈折率をnとして、段差量がλ/(n―n)の2倍の場合)となる。このように階段形状の段差量および階段数は、CD用光線およびDVD用光線の波長に基づいて定められる。
【0096】
上記のピーク誤差の許容範囲は、回折効率のピーク付近の波長と回折効率との関係から定める。一般的に、回折効率のピーク値からの低下を約20%許容する場合に、上記のピーク誤差の許容範囲は、2段回折格子の場合に10乃至15%、3段回折格子の場合に4乃至8%、4段回折格子の場合に2乃至7%、5段回折格子の場合に2乃至5%の範囲である。
【0097】
図7において最適傾け量(t1)とは、図1に示すように回折格子母線に対する傾け量を示す。回折格子母線に対して2×t1傾ける。これにより、1次回折光および-1次回折光の効率バランスを調整する。最適傾け量(t1)の値は、たとえば0次回折光のピーク波長の1/2とする。
【0098】
ステップS6050において、図4に示すように、段差量から位相関数の形状に基づいて階段の幅を定める。すなわち、階段形状の回折格子を1つの周期内で位相関数に合わせ階段の幅を可変としている。
【0099】
ステップS6060において、回折部に入射する光線の角度を考慮し、上記の手順によって求めた回折格子形状を基準として回折格子深さを再計算する。具体的に、入射角をθとして、上記で求めた段差量にcosθを乗じた値を基準として入射角に対応した新たな段差量を求める。段差量に(階段数−1)を乗じたものが回折格子深さである。
【0100】
上記のように本実施形態においては、第2領域においてDVD用光線の光路、収差に基づいてレンズ面形状を求め、CD用光線の光路、収差を位相関数によって補正した。他の実施形態として、第2領域においてCD用光線の光路、収差に基づいてレンズ面形状を求め、DVD用光線の光路、収差を位相関数によって補正してもよい。
【0101】
図8は、本実施形態の設計方法によって求めた回折格子形状の回折効率をベクトル計算で計算した結果のグラフである。このグラフはX-軸に波長をとり、Y-軸に回折効率をとっている。DVD用光線の波長655nmにおける0次回折光の回折効率およびCD用光線の波長790nmにおける−1次回折光の回折効率は、それぞれ約83%強および約60%強で、高い回折効率が得られていることがわかる。なお、本実施形態において回折部に入射する光線の角度を18度、回折格子階段数は5段、回折格子深さは4.5μmとした。なお、上述のとおりピーク波長の点から階段数は6段が最適であるが、他の次数を含めた総合的な回折効率および加工性などを考慮して5段とした。
【0102】
参考数値実施例1)
図9および図10に本実施形態における対物レンズの参考数値実施例を示す。ここで示されている1実施形態は、半導体レーザーと対物(Pick Up)レンズの間に半導体レーザーからの光線を平行光に変換するコリメータ(Collimator)レンズが配置されている。図9において、APLは、環状オレフィンコポリマーを示し、PCはポリカーボネートを示す。図10の非球面係数の近軸Rは、非球面形状を表わす上記の数式における近軸半径1/cを示し、conicは、定数kを示す。
【0103】
図11に本発明の参考実施形態の球面収差と、同一の条件で回折領域を持たない非球面のみで構成された対物レンズの球面収差とを比較して示す。図11の比較結果によれば本発明の参考実施形態の球面収差は非常に小さく、光記録媒体への記録、あるいは再生に対し充分な光学特性を示している。他方、非球面のみで構成した対物レンズを用いると光記録媒体への記録、あるいは再生に対しする規格値を超えていることがわかる。
【0104】
図12は、本発明の参考実施形態における球面収差のグラフを示す。上の2図は、厚みの薄い光記録媒体(DVD)に対する球面収差、厚みの厚い光記録媒体(CD)に対する球面収差を示す。縦軸はレンズ高さ(瞳半径)、横軸は対応するレンズ高さにおける収差を示す。下の図は、厚みの厚い光記録媒体(CD)に対し、厚みの薄い光記録媒体へ記録、再生を行うために必要な開口数を与えた場合の球面収差を示す。縦軸は開口数、横軸は対応する開口数における収差を示す。厚みの厚い光記録媒体(CD)に必要な開口数に対応するレンズ領域の外側を通過する光線の球面収差は急峻に増大しており、厚みの厚い光記録媒体上でフレア光となっており、集光していないことを示している。
【0105】
本発明の実施形態及び参考実施形態における対物レンズは、材料として環状オレフィンコポリマーを使用しているが、他のプラスチック材料によっても製造できる。
【0106】
本発明の別の参考実施形態として、CDおよびDVD用の光ピックアップシステムにおける対物レンズを対象として以下に説明する。第1の光線は、CD用の波長785nmのレーザー光線、第2の光線はDVD用の波長660nmのレーザー光線とする。
【0107】
本発明の参考実施形態の結像光学素子としての対物レンズの設計方法を図17および図18の流れ図に基づいて説明する。
【0108】
図17のステップS1010において、第1および第2の光線の光路を考慮して第1領域および第2領域におけるレンズ面形状を設計する。なお、第2領域のレンズ面形状は、第2の光線の光路のみを考慮して結像面に集光するように設計する。第1および第2領域を有する面以外の面の面形状も同時に設計する。ここで、第1領域は光軸を含み、たとえば光軸から一定の距離以内であり、第1および第2の光線を結像面に集光させる領域である。第1領域の大きさは、CDに対する対物レンズ像側開口数から定める。CDに対する対物レンズ像側開口数は、たとえば、0.457などである。また、第2領域は、第1領域の周囲に存在し、たとえば、光軸から一定距離以内であり、第1の光線を結像面に集光させないが第2の光線を結像面に集光させる領域である。第2領域の大きさは、DVDに対する対物レンズ像側開口数から定める。DVDに対する対物レンズ像側開口数は、たとえば、0.652などである。
【0109】
図17のステップS1020において、第1の光線すなわちCD用のレーザー光線を結像面に集光させないように第2領域における回折部の形状を設計する。具体的に、第2領域を通過した場合に、第2の光線すなわちDVD用のレーザー光線の大部分は、0次回折光として回折部を通過し、第1の光線の大部分は1次以上または−1次以下の回折光として回折部を通過するように設計する。0次回折光として回折部を通過した第2の光線の大部分は、レンズ面形状により光路を定められているので結像面に集光する。1次以上または−1次以下の回折光として回折部を通過した第1の光線の大部分は、結像面に集光しない。回折部の形状設計の詳細は、図18の流れ図に基づいて後で詳細に説明する。
【0110】
なお、上記の説明では、第2の光線すなわちDVD用のレーザー光線を結像面に集光させるように第2領域におけるレンズ面形状を設計し、第1の光線すなわちCD用のレーザー光線を結像面に集光させないように第2領域における回折部の形状を設計するとしたが、第1の光線すなわちCD用のレーザー光線を結像面に集光させないように第2の領域におけるレンズ面形状を設計し、第2の光線すなわちDVD用のレーザー光線を結像面に集光させるように回折部の形状を設計してもよい。
【0111】
以下に、図18の流れ図に基づいて回折部の形状設計の詳細について説明する。第2領域における回折部の形状は、基板を平面とした場合に階段形状である。
【0112】
図18のステップS2010において、第1の光線すなわちCD用のレーザー光線は結像面に集光させないように、回折部の形状を定める位相関数を設計する。XYZ直交座標系において、光軸をZ軸としたときに、位相関数はたとえば以下の式で表現される。
【数9】
Figure 0004649572
ここで、hはZ軸に垂直な平面内におけるZ軸からの距離であり、
【数10】
Figure 0004649572
である。位相関数を上記の式によって表現した場合の光線追跡の式は、光線のx方向余弦をl、y方向余弦をmとすると、以下の式で表現される。
【数11】
Figure 0004649572
第1の光線を結像面に集光させないように、光線追跡によって上記の位相関数の式における係数を決定する。
【0113】
なお、位相関数の形は、後で参考数値実施例として示すように上記の式に限定されない。
【0114】
つぎに、ステップS2020において、階段形状の段差量を、0次回折光の回折効率が、第2の光線すなわちDVD用のレーザー光線の波長においてピークに近づくように定める。具体的に、段差量(1段当り)をlとして、以下の式に基づいてlを定める。
l=λ・cosθ/(n―n) (1)
ここで、第2の光線すなわちDVD用のレーザー光線を0次回折光とするので、pを整数として
λ=p・660nm (2)
である。また、θは、回折部に対する入射角、nは対物レンズの屈折率、nは対物レンズの周囲の屈折率である。
【0115】
つぎに、ステップS2030において、以下の式から求めた波長λと、第1の波長、すなわちCD用のレーザー光線の波長との差が所定の値以下となるように階段数Nを定める。
λ=[N/(N・m+α)]・λ (3)
ここで、mは任意の整数、αは0次以外の回折次数である。上記の式(3)は、0次以外の回折次数αのピーク波長を求める経験則に基づく式である。λが第1の波長と近づけば、回折次数αのピーク波長が第1の波長と近づく。したがって、第1の光線のエネルギーは、回折次数αの回折光で大きくなり、0次回折光では0に近づく。
【0116】
つぎに、ステップS2040において、位相関数、段差量および階段数に基づいて階段の幅を定める。
【0117】
つぎに、ステップS2050において回折部による回折効率をベクトル計算により求める。
【0118】
ステップS2060において、回折効率が所望の範囲内であるか否かを判断し、所望の範囲内であれば終了する。所望の範囲内でなければ、種々のパラメータを調整しながらステップS2020乃至S2050を繰り返す。
【0119】
ここで、ステップS2020およびS2030を以下の数値例に基づいて説明する。
n=1.54
=1.0
θ=25度
ここで、p=3とすると、上記の式(2)から
λ=3・660=1980
となる。
【0120】
この値を、式(1)に代入して、
l=λ・cosθ/(n―n
=1980・cos(π・25/180)/(1.54−1.0)
=3323
このようにして1段当りの段差量3.323μmが求まる。
【0121】
λの値を式(3)に代入し、さらに
m=3
α=−1
とすると、N=2の場合に、
λ=(2/5)・1980=792
となる。この値は、第1の波長すなわちCD用レーザー光線の波長785nmに非常に近い。差は7nmであるので、第1の波長に対する比率(ピーク誤差)は0.89%である。したがって、−1次回折光は、第1の波長付近でピークに近づく。第1の光線のエネルギーは、−1次回折光で大きくなるので、0次回折光では0に近づくことが予想される。すなわち、0次回折光は、第2の波長でピークに近づき、第1の波長では0に近づく。このようにして階段数N=2が求まる。たとえば、上記の比率(ピーク誤差)が5%以下となるようにして階段数を定めてもよい。
【0122】
上記のピーク誤差の許容範囲は、回折効率のピーク付近の波長と回折効率との関係から定める。
【0123】
また、p=2とすると、上記の式(2)から
λ=2・660=1320
となる。
【0124】
この値を、式(1)に代入して、
l=λ・cosθ/(n―n
=1320・cos(π・25/180)/(1.54−1.0)
=2215
このようにして1段当りの段差量2.215μmが求まる。
【0125】
λの値を式(3)に代入し、さらに
m=2
α=−1
とすると、N=3の場合に、
λ=(3/5)・1320=792
となる。この値は、第1の波長すなわちCD用レーザー光線の波長785nmに非常に近い。差は7nmであるので、第1の波長に対する比率(ピーク誤差)は0.89%である。したがって、−1次回折光は、第1の波長付近でピークに近づく。第1の光線のエネルギーは、−1次回折光で大きくなるので、0次回折光では0に近づくことが予想される。すなわち、0次回折光は、第2の波長でピークに近づき、第1の波長では0に近づく。このようにして階段数N=3が求まる。たとえば、上記の比率(ピーク誤差)が5%以下となるようにして階段数を定めてもよい。
【0126】
上記のピーク誤差の許容範囲は、回折効率のピーク付近の波長と回折効率との関係から定める。
【0127】
上記の手順によって求めた回折部の格子形状を、レンズ面の非球面形状と組み合わせた場合と単独の場合について図19および図20に示す。図20は、階段数N=2の場合、図20は、階段数N=3の場合である。
【0128】
参考数値実施例2)
本実施形態の参考数値実施例を図21に基づいて説明する。階段数N=2である。光学配置を以下の表1に示す。
【表1】
Figure 0004649572
【0129】
半導体レーザー(LD)光源からのレーザー光線は、DVD使用時には第2の光線としてコリメートしたものを使用する。CD使用時には、対物レンズ(表1の第一レンズ)の絞り面から48.6mmの距離からのものを使用する。必要に応じて、対物レンズの手前にコリメートレンズを設ける。
【0130】
対物レンズの中心面間距離は、2.2mmである。対物レンズの像側の面から基板までの距離は、DVDの場合に0.961mm、CDの場合に1.161mmである。基板の厚みは、DVDの場合に0.6mm、CDの場合に1.2mmである。対物レンズの像側開口数(NA)は、DVDの場合に0.652、CDの場合に0.457である。また、対物レンズの焦点距離は、DVDの場合に2.74、CDの場合に2.75である。
【0131】
対物レンズの光源側の面(表1の絞り面)を複合非球面とする。複合非球面は、光軸を中心とする2個の同軸円によって区切られた3個の面j=1、2、3である。3個の面は、以下の式および以下の表2によって定義される。なお、以下の式におけるhは、
【数12】
Figure 0004649572
によって定義される。
【数13】
Figure 0004649572
ここでkjは、曲面の形状を示す定数、Rjは中心曲率半径、A4j乃至A10jは、補正係数である。また、djは、Z軸に沿った面のシフト量である。
【0132】
表2における2番目の面の面最内半径は、DVDとCDの収差状態を確認しながら、収差が所定の範囲に収まるようにできるだけ大きく定める。3番目の面の面最内半径は、CDの像側開口数により定める。
【表2】
Figure 0004649572
【0133】
対物レンズの像側の面(表1の2面)を、回折部を備えた特殊DOE面とする。この面の非球面を以下の式および表3によって定義する。
【数14】
Figure 0004649572
ここでkは、曲面の形状を示す定数、Rは中心曲率半径、A4乃至A10は、補正係数である。
【表3】
Figure 0004649572
【0134】
また、回折部の位相関数を以下の式および表4によって定義する。
【数15】
Figure 0004649572
ここで、C2、C4、C6は、係数である。
【表4】
Figure 0004649572
【0135】
表4において位相関数の内径とは、対物レンズの像側の面において、光軸を含む第1領域と、第1領域の周囲に設けられ、回折部を有し、したがって位相関数によって形状が定まる第2領域との境界と光軸との距離である。位相関数によって形状が定まる第2領域の外縁は、対物レンズの像側の面の有効径によって定まる。
【0136】
上記の参考数値実施例の適用結果を図21乃至23に示す。図21の上段は、DVD用光線(第2の光線)の光路図である。図21の中段は、CD用光線(第1の光線)を−1次回折光とした場合の光路図である。図21の下段は、CD用光線(第1の光線)を1次回折光とした場合の光路図である。光路図よりCDの光学系では像面上で波長選択回折格子によって必要像側開口数より外の光線がフレアになっており、またDVDの光学系においては指定された開口数において、光線が像面において1点に集光している。このように、波長選択回折格子によって像側開口数の制御がなされていることがわかる。
【0137】
図22は球面収差図を示す。球面収差図において横軸は光軸方向の距離、縦軸は光線が入射瞳に入る高さを示し、光線が光軸と交わる位置をプロットしている。図22の上段は、DVD用光線(第2の光線)の場合、図22の中段は、CD用光線(第1の光線)を−1次回折光とした場合、図22の下段は、CD用光線(第1の光線)を1次回折光とした場合である。DVDの光学系において球面収差は略最適化されており、系のパワーが大きくなっている。CDの光学系において波長選択回折格子において1次光を用いた場合も−1次を用いた場合も同様に、必要像側開口数外の球面収差は大きくなっており、CDの読取り、書き込みに必要な像側開口数の分の光線だけを取り込んでいることがわかる。
【0138】
図23は、点像強度分布(PSF)を示す。図23の上段は、DVD用光線(第2の光線)の場合、図23の中段は、CD用光線(第1の光線)を−1次回折光とした場合、図23の下段は、CD用光線(第1の光線)を1次回折光とした場合である。DVD、CDとも必要な像側開口数において収差は抑えられているので、DVD、CDに対し記録・再生を満足させる点像強度分布(PSF)を形成している。集光スポット径及びサイドローブの数値については表5に示す。サイドローブの値(%)は、PSF図におけるメインビームの高さに対するサイドローブ高さの比率である。表5において、回折格子が無い場合の集光スポット径は1.14であり、CDの集光スポット径より小さくなっている。これに対して、回折格子がある場合の集光スポット径は、1.44であり、CDの集光スポット径の仕様になっている。
【表5】
Figure 0004649572
【0139】
表6に、階段数N=2および3の場合について、第1の波長785 (nm)と第2の波長660(nm)の光線の0次及び±1次での回折効率を示す。たとえば、階段数N=2の場合、第1の波長は、1次および−1次の回折光の回折効率がそれぞれ37%であり、0次の回折光の回折効率が0%である。第2の波長は、1次および−1次の回折光の回折効率がそれぞれ0%であり、0次の回折光の回折効率が80%である。このように、表6の数値から、第1および第2の波長の間で次数の切替えが適切に行なわれていることがわかる。
【表6】
Figure 0004649572
【0140】
参考数値実施例3)
別の参考数値実施例として、回折部の位相関数を以下の式および表7によって定義した場合には、回折部の格子ピッチが等間隔となる。
Ф(h)=Cxh
ここで、Cは係数である。
【表7】
Figure 0004649572
【0141】
回折部の格子形状を、レンズ面の非球面形状と組み合わせた場合と単独の場合について図24に示す。また、回折部の格子ピッチが等間隔となる上記の場合について、表1乃至3のデータを使用した場合の適用結果を図25に示す。図25の上段は、CD用光線(第1の光線)を−1次回折光とした場合の光路図である。図25の下段は、CD用光線(第1の光線)を1次回折光とした場合の光路図である。光路図よりCDの光学系では像面上で波長選択回折格子によって必要像側開口数より外の光線がフレアになっており、先の参考数値実施例と同様に波長選択回折格子によって像側開口数の制御がなされていることがわかる。
【0142】
本発明の実施形態及び参考実施形態における対物レンズは、材料として環状オレフィンコポリマーを使用しているが、他のプラスチック材料によっても製造できる。
【0143】
本発明のさらに別の参考実施形態として、BD用、DVD用およびCD用に共用される単体対物レンズを対象として説明する。第1の波長の光線は、BD用の光線(波長405nm)、第2の波長の光線は、DVD用の光線(波長655nm)、第3の波長の光線は、CD用の光線(波長785nm)である。像側開口数は、それぞれ0.85、0.65および0.47である。
【0144】
本発明のさらに別の参考実施形態による対物レンズは少なくとも1つの面に回折格子を備えており、第1の波長の光線は2次回折光として回折格子を通過し、第2および第3の波長の光線は1次回折光として回折格子を通過するように設計される。
【0145】
回折格子は、ブレーズ化(ブレーズド)形状の格子とする。ブレーズ化形状の格子とするのは以下の理由による。球面乃至非球面のパワーを併せ持った階段形状は、加工が非常に難しく、何十輪帯も設置することはほとんど不可能である。
【0146】
回折格子の深さ1は、nをレンズの屈折率として、それぞれの波長の1次または2次回折光に対する回折効率を70%以上とするように式
(7/4)×λ/(n−1) < l < (9/4)×λ/(n−1)
により定める。この場合に、それぞれの波長の回折効率は、具体的に以下の表8に示される。
【表8】
Figure 0004649572
【0147】
図26は、第1の波長(BD用の405nm)を有する2次回折光に対して格子深さを最適化(回折効率を最大化)した場合の、1次および2次回折光の波長に対する回折効率を示す。図26において実線は2次回折光の回折効率を示し、1点鎖線は1次回折光の回折効率を示す。1次回折光の回折効率は、第2の波長(DVD用の655nm)および第3の波長(CD用の785nm)において、回折効率は1に近くほぼ最適化されている。したがって、第1の波長を2次回折光とし、格子深さを第1の波長に対して回折効率を最適化することにより、第2および第3の波長に対しても回折効率がほぼ最適化される。
【0148】
本発明の参考実施形態の対物レンズの設計方法を図27の流れ図に基づいて説明する。
【0149】
図27のステップS1010において、各波長の光線に関する像側開口数を実現するように、入射瞳径を設定し最外光線角度を制約条件として定める。
【0150】
ステップS1020において、最外光線角度の制約条件を満足するように、レンズ面形状および回折格子の位相関数を定める。
【0151】
ステップS1030において、各波長の光線のそれぞれの像面上での収差を計算する。
【0152】
ステップS1040において、収差が許容範囲内かどうか判断する。たとえば、波面収差が、波長を単位としてRMS0.07以下とれば許容範囲内とする。RMSとは、参照波面全域にわたって、波面収差の二乗の平均値を求め、その平方根をとった値である。許容範囲内であれば終了する。許容範囲内でなければステップS1050に進む。
【0153】
ステップS1050において、レンズ面形状および回折格子の位相差関数の補正量を定め、ステップS1020に戻る。
【0154】
図および表に基づいて、本発明の数値実施例について以下に説明する。
【0155】
(数値実施例
図28乃至30は、数値実施例の対物レンズのそれぞれBD、DVDおよびCDの光路図を示す。表9は、数値実施例のレンズデータを示す。図28および29に示すように、BD用およびDVD用光束は、平行光として対物レンズに入射される。CD用光束は絞り面から21mmの距離の光源からの拡がり角度をもった光束として対物レンズに入射される。すなわち、CD用光源と像とは、有限共役系を構成する。レンズの絞り面(入射側面)には、ブレーズ化形状の回折格子が設けられている。レンズの出射側面は、光軸を取り囲む少なくとも1つの帯状領域および光軸を含む中心領域に分割し、それぞれの領域を別個の面によって定義した、特殊面から構成されている。
【表9】
Figure 0004649572
【0156】
入射面側の面の仕様を表10に示す。
【表10】
Figure 0004649572
【0157】
入射側面のレンズ形状は、以下の非球面式によって表される。
【数16】
Figure 0004649572
ここで、z軸は光軸と一致し、Rは曲率半径、Kは離心率、A4、A6、A8、A10は非球面係数を表す。dはここではゼロとする。また、hは光軸からの距離であり以下の式で表される。
【数17】
Figure 0004649572
【0158】
入射面の回折格子の格子間隔を定める位相関数は以下の式によって表される。
【数18】
Figure 0004649572
ここで、C2、C4、C6、C8、C10、C12は、位相関数係数を表す。また、rは以下の式で表される。
【数19】
Figure 0004649572
【0159】
出射側面の仕様を表11に示す。出射側面は、光軸を取り囲む2つの帯状領域および光軸を含む中心領域に分割され、それぞれの領域は別個の面によって定義される。光軸を含む中心領域の面を第1面、その周囲を取り囲む領域の面を第2面、第2面の領域を取り囲む領域の面を第3面とする。
【表11】
Figure 0004649572
【0160】
第1乃至第3面の形状は、以下の非球面式によって表される。
【数20】
Figure 0004649572
ここで、z軸は光軸と一致し、iは中心から数えた面の番号を表し、Riは曲率半径、Kiは離心率、Ai4、Ai6、Ai8、Ai10は非球面係数を表す。diは第1面を基準とする他の面の光軸上の移動量(段差量)を表す。光の進行方向の移動量が正である。また、hは式(1)の場合と同様である。
【0161】
ここで、境界半径および段差量は、以下の考え方により決定される。図27の設計方法にいて、像面上に集光する光線束の光路差(すなわち、波面収差)が最小となるように境界半径を設定する。段差量は、像面上に集光する光線束の光路差の分散値が最小になるように、すなわち、境界領域において形状が数値的および微分(傾き)的に連続になるように設定する。
【0162】
数値実施例による点像強度分布を図31乃至33に示す。
【0163】
参考数値実施例
図34および35は、参考数値実施例の対物レンズのそれぞれBDおよびDVDの光路図を示す。表12は、参考数値実施例のレンズデータを示す。図34および35に示すように、BD用およびDVD用光束は、平行光として対物レンズに入射される。レンズの絞り面(入射側面)は、内側の、DVDおよびBD用の共用領域と外側の、BD用専用領域とに分割され、異なった表面形状を有し、それぞれ異なった回折格子が設けられている。レンズの出射側面は、光軸を取り囲む少なくとも1つの帯状領域および光軸を含む中心領域に分割し、それぞれの領域を別個の面によって定義した、特殊面から構成されている。
【表12】
Figure 0004649572
【0164】
入射側の面の仕様を表13に示す。入射側面のレンズ形状は、上記の非球面式(1)によって表される。ただし、光軸を中心とする半径1.45mmより外側は、光軸に垂直な面を形成する。非球面式によって表される部分(中心領域)は、DVDおよびBD用の共用領域であり、光軸に垂直な面を形成する部分(帯状領域)は、BD用専用領域である。すなわち、DVDの入射瞳径2.9mmから、上記の境界半径が決められる。
【0165】
入射面の回折格子の格子間隔を定める位相関数は上記の式(2)によって表される。表13は、DVDおよびBD用の共用領域(中心領域)の位相関数とBD用専用領域(帯状領域)の位相関数を示す。
【表13】
Figure 0004649572
【0166】
出射側面の仕様を表14に示す。出射側面は、光軸を取り囲む1つの帯状領域および光軸を含む中心領域に分割され、それぞれの領域は別個の面によって定義される。光軸を含む中心領域の面を第1面、その周囲を取り囲む領域の面を第2面とする。第1および第2面の形状は、上記の式(3)によって表される。
【表14】
Figure 0004649572
【0167】
ここで、境界半径および段差量は、以下の考え方により決定される。境界半径は、DVDの最外光線の光路から決める。段差量の値は、中心領域の最も外側を通過する光線と帯状領域の最も内側を通過する光線の光路差をできるだけ小さくするように決定する。
【0168】
参考数値実施例による点像強度分布を図36および37に示す。
【0169】
なお、参考数値実施例において入射側面のBD専用領域の回折格子として、ブレーズ化格子に代わり、以下に説明する特殊形状の回折格子(回折光学素子)を使用している。
【0170】
本発明の参考実施形態の回折光学素子は、少なくとも一部の格子周期Λが
【数21】
Figure 0004649572
の範囲である格子形状を基板上に有する回折光学素子であって、当該周期部分において、回折効率を上げるように、格子斜面が鋸型の斜面よりも傾きが急な部分を、当該格子斜面の少なくとも一部に備えるように構成されている。光が本発明の参考実施形態による格子形状の斜面の傾きが急な部分に入射すると、従来技術(ブレーズ化形状または鋸型形状)と比較して入射角が大きくなり、透過光が発生せず全反射する。全反射された光は隣り合う格子形状に再び入射し、このとき別の入射光と位相重ね合わせによる結合が行われ、繰り返し反射されて最終的に斜面に対してきわめて小さい角度で透過光(回折光)が出射される。この結果、回折効率が向上する。
【0171】
一般的に回折格子の位相関数をφ、光軸からの距離をrとし、格子周期をΛとすると、
2π=Λ・(dφ/dr)
の関係が成立する。この式を
λ<Λ<4λ
に代入すると、
(2π/4λ)<(dφ/dr)<(2π/λ)
ここで、λに第1の波長λ=405nmを代入すると、
3879(rad/mm)<(dφ/dr)<15514(rad/mm)
となる。
【0172】
他方、参考数値実施例の帯状領域(周辺領域)の位相関数から、帯状領域の範囲として、1.45mm<r<1.9mmとすると、
8900(rad/mm)<(dφ/dr)<11070 (rad/mm)
となる。したがって、 λ<Λ<4λの条件は満たされている。
【0173】
本発明の参考実施形態によれば、前記傾きが急な部分が、入射光が全反射を起こすように構成されている。したがって、別の入射光と位相重ね合わせによる結合が確実に行われ、回折効率が向上する。
【0174】
本発明の参考実施形態によれば、格子断面における格子斜面を表す線が、少なくとも1つの変曲点をする。したがって、格子斜面が鋸型の斜面よりも傾きが急な部分が存在する。
【0175】
本発明の参考実施形態によれば、格子断面における格子斜面を表す線が、異なる曲率を有する2つ以上の曲線から構成される。したがって、格子斜面が鋸型の斜面よりも傾きが急な部分が存在する。
【0176】
本発明の参考実施形態によれば、nは基板の屈折率,n0は出射光側の媒質の屈折率として、前記周期部分における格子の高さが
【数22】
Figure 0004649572
の範囲で、回折効率を上げるように設定されている。したがって、格子構造内を進行中の位相変化を考慮して格子高さが最適化される。
【0177】
本発明の参考実施形態によれば、4λより大きな周期を有する中央部と、
【数23】
Figure 0004649572
の範囲の周期を有する周縁部とを備える回折光学レンズである。したがって、回折光学レンズの格子周期が短い部分の回折効率を高めることによって集光強度を改善させ、その結果開口数を高めることができる。また、従来よりも高性能な回折光学素子を読取り光学系などの光学装置の一部として用いることにより、装置の高性能化を図ることができる。
【0178】
なお参考数値実施例において、入射側面のBD専用領域(表6の帯状領域)の回折格子として使用するのは、上記の周縁部である。
【0179】
本発明の参考実施形態によれば、入射光が基板に対して透過する。すなわち、透過型の回折光学素子が得られる。
【0180】
本発明の参考実施形態によれば、格子部上方からの入射光に対応する。すなわち、格子上方からの入射光に対応する回折光学素子が得られる。
【0181】
以下においては、回折光学素子として回折光学レンズを例として説明を行うが、本発明の参考実施形態は回折光学レンズに限定されるものではない。
【0182】
図38および39の流れ図にしたがって、本発明の参考実施形態による回折光学素子の設計方法について説明する。
【0183】
図38のステップS3010において、初期設定を行う。初期設定の対象は、波長、屈折率、素子の大きさ、目標とする開口数および回折効率などである。ステップS3020において位相関数を計算する。ステップS3030において、素子の格子高さを計算する。ステップS3040において位相関数から素子の格子形状を決定する。
【0184】
ステップS3050において、それぞれの格子がどの領域に属するか判定する。回折光学素子の格子構造の周期が以下の式を満たす場合に、格子は領域2に属するとし、以下の式を満たさない場合は、格子は領域1に属するとする。
【数24】
Figure 0004649572
【0185】
なお、参考数値実施例において、入射側面のBD専用領域(表6の帯状領域)の回折格子として使用するのは、上記の領域2である。
【0186】
領域2に属する周期の格子に対しては、ステップS3060において格子形状の最適化を行う。ここで、λは使用波長を表す。上記の式の下限を下回ると、1次の回折光が出現せず0次光のみが透過することになり、集光性を得ることができない。また上限を上回ると1次回折光が最大となる回折格子の形状は、従来技術で知られる鋸型形状となる。すなわち、格子周期が波長に対して十分に長いため格子形状を最適化する必要がない。したがって、上記の式を満たさない領域1に属する周期の格子に対しては、格子形状の最適化は行わない。ステップS3070において、それぞれの格子の判定が終了したか否かを判断する。終了していなければ、ステップS3050に戻る。
【0187】
ステップS3080において開口数と回折効率を計算し、ステップS3090において計算結果を出力する。
【0188】
つぎに、図39にしたがって、領域2における格子の格子形状を最適化する方法(図38のステップS3060)について説明する。
【0189】
図39のステップS4010において、各々の格子形状を細かくM分割してそれぞれの高さ位置座標値をP(I)(I=1,...,M)とおく。ステップS4020において、P(I)の領域に対して所定の最適化アルゴリズムにより、0から1までの範囲の任意数Rを指定する。ステップS4030において、Rが0.5よりも大きければP(I)を所定値分だけ増加させ、Rが0.5以下であれば所定値分だけ減少させる。最適化アルゴリズムとしては、たとえば焼き鈍し法(Simulated Annealing Method)や遺伝アルゴリズム(Genetic Algorithm)などを使用する。ステップS4040において、修正後の形状を更新する。ステップS4050において、I=Mであるか否か判定する。I=MでなければステップS4020に戻る。I=Mであれば、ステップS4060に進む。
【0190】
領域2における格子の高さhは以下の式の範囲となる。
【数25】
Figure 0004649572
ここでnは基板の屈折率,n0は出射光側の媒質の屈折率を示す。このとき高さhが上記の式の範囲外となると1次回折効率が減少し、回折光学素子の集光強度が低下する。領域2において、格子高さがフレネルレンズの場合の一定の高さ
【数26】
Figure 0004649572
から変化するのは、格子周期が波長に近い領域2においては格子構造内を進行中の位相変化を考慮する必要があるからである。すなわち、最終的な位相差が格子周期が波長に対して十分に大きな場合と異なってくる。その結果、位相差に釣り合いをとらせるために格子高さに変化を与える必要が生じる。
【0191】
ステップS4060において、電磁波の厳密解析法を使用して回折効率を計算する。ステップS4070において、評価関数を算出する。評価関数φは、回折光の次数iごとに回折効率ηの計算値と目標値との差を求め、重みWiを付けて和を求めたものである。ステップS4070において、評価関数φの値が所定値未満であるか否か判断する。所定値未満でなければステップS4020に戻り、所定値未満であれば終了する。
【0192】
図41は各々の格子周期に対する1次回折効率の依存性を計算にて求めた結果を示している。図41において、「本発明」とは、本発明の参考実施形態によるものであることを示す。a)はTE偏光を、(b)ではTM偏光の場合を示している。ここで、計算は電磁波の振舞いを厳密に再現するための手法として、厳密結合波解析(Rigorous Coupled Wave Analysis, RCWA)を用いた。図41は従来技術の鋸型形状での結果と、1次回折効率が最大となるように上記の手順で最適化された形状での結果を併記している。なお、光学素子基板および出射回折光側の屈折率はそれぞれ1.5、1.0である。このとき、従来技術の鋸型形状では偏光方向にかかわらず周期が波長に対してきわめて長い場合、回折効率は約90%以上の値を得ることができるが、周期が短くなっていくにつれて回折効率は徐々に低下し、周期が約2λ前後では20%しか得られないことがわかる。一方、1次回折効率を高めるように最適化された形状においては、周期が波長に対して長い場合では、得られる回折効率は従来技術(鋸型形状)のそれとほとんど変わらない。しかし、最適化された形状では周期が短くなっても、ほぼ80%程度を維持していることがわかる。
【0193】
図41(c)は入射光がTE波とTM波のそれぞれの偏光方向に対する1次回折効率の差を表している。従来技術(鋸型形状)は点線で、本発明の参考実施形態による効果を実線で表示している。鋸型形状では周期が短くなるにつれて偏光による回折効率の差が最大25%程度であるのに対して、最適化された形状では最大13%程度となり、偏光方向による回折効率の依存性は鋸型形状と比較して小さい。このことは本発明の参考実施形態の回折光学素子により、入射光の偏光方向に対する回折効率の依存性を改善できることを示している。
【0194】
図42は領域2の格子形状を最適化したときの回折光学素子の断面形状および各々の地点での回折効率を示している。なお比較のため、従来技術による回折効率の結果も点線で示している。
【0195】
領域2における格子断面形状は、変曲点を含む曲線で表わされ、鋸型形状の斜面よりも傾きが急な斜面を備える。図40の(b)に示すように、光が格子形状の斜面の傾きが急な部分に入射すると、従来技術と比較して入射角が大きくなり、透過光が発生せず全反射する。全反射された光は隣り合う格子形状に再び入射し、このとき別の入射光と位相重ね合わせによる結合が行われ、繰り返し反射されて最終的に斜面に対してきわめて小さい角度で透過光(回折光)が出射される。この結果、回折効率が向上する。
【0196】
ここで、「位相重ね合わせによる結合」とは、波の重ね合わせを意味する。全反射による光と直接入射による隣の入射光は互いに光強度の差が小さいため、格子斜面部における波の重ね合わせが有効に行われる。その結果、図40の(b)に示すように、波の重ね合わせによって互いに強度を強めある条件を満たす波面が再び反射光として進行する。互いに強度を強めあうには振幅の方向が一致していることが必要となる。格子構造の形状条件としては、反射波が隣り合う入射波に会うまでの進行距離が波長以下である構造が最低限必要と考えられる。
【0197】
なお、従来技術においても格子周期が波長と同程度の領域においては、上述の効果が確認されると考えられる。しかしながら、従来技術においては反射光の強度に比較して隣の入射光の強度が大きいため、波の重ね合わせは入射光に優勢に働き、図40の(a)に示すように、そのまま格子内へ0次光として通過し結果的に1次回折光の増加につながらない。
【0198】
このように、本発明の参考実施形態の格子形状により従来技術の鋸型形状よりも高い回折効率を有する回折光を得ることが可能となる。
【0199】
図42に戻り、波長よりも十分に長い周期の格子構造が配置される領域1においては、従来技術と本発明の参考実施形態による回折効率の値はほぼ同一であり、本発明の参考実施形態による特徴的な差異はほとんど現われていない。しかしながら、周期の短い格子構造が配置されている領域2では、従来技術における格子構造では回折効率が領域1よりも大きく減少するが、本発明の参考実施形態では回折効率の減少が従来技術よりも改善されている。このことは集光強度にも大きく影響し、従来技術では領域2の影響により十分な集光強度を維持することができないが、本発明の参考実施形態による回折光学素子では集光強度を維持することが可能となる。これを端的に表したグラフが図43である。
【0200】
図43では回折光学素子の集光強度を決定する因子である開口数に対して得られる回折効率の平均値を表している。図43において、「発明」とは、本発明の参考実施形態によるものであることを示す。点線部で示された従来技術による結果と比較して、本発明の参考実施形態による結果は開口数が大きい場合においても高い回折効率を維持していることがわかる。したがって、従来技術よりも高性能な大きい開口数をもつ回折光学素子を実現することが可能であり、これを利用することによってより高い性能をもつ光学装置を提供することができる。
【0201】
前述した回折光学素子の実施例では、入射光の偏光方向をTE偏光であると仮定したが任意の偏光においても成立する。
【0202】
また本発明の参考実施形態に係る回折光学素子の基板材料は、使用する波長領域において十分な透過域を有する材質であれば、ガラス、プラスチック、光学結晶などについて限定するものではない。
【0203】
また、回折光学素子は半導体製造技術によるリソグラフィー技術(光源が紫外線、X線および電子ビームなど)や切削加工を用いて製造することができる。あるいは、連続的な形状をもつ回折光学素子であることからリソグラフィー技術や切削加工で原版を作り、金型を製作することによって、プラスチックやガラスなどによる大量生産を目的とする成形もできる。
【0204】
このように、本発明の参考実施形態の回折光学素子は、レンズと比較して球面収差を低下させ、また、周縁部において最適化させた格子構造を配置することにより集光効率を増加させ、従来技術の問題点である回折効率の低下を防ぐことができる。周縁部の集光効率の増加に伴って素子全体の集光効率が増加し、開口数の高い光学素子を実現することが可能となる。この結果、本発明の参考実施形態の回折光学素子を用いることによって、従来の回折光学素子よりも光学系、光学装置の高性能化を図ることができ、また回折光学素子構造を使用可能とすることによって装置の軽量化と光学系の小型化を図ることができる。
【0205】
図44は、以上において説明した特殊形状の回折格子を示す。

Claims (5)

  1. 異なる波長の光線を、異なる面に集光する対物レンズであって、入射面側に回折格子を備えており、第1の波長λ、第2の波長λ及び第3の波長λ
    λ
    の関係を満たし、第1の波長はブルーレイ・ディスク用の波長、第2の波長はデジタル・バーサタイル・ディスク用の波長、第3の波長はコンパクト・ディスク用の波長であり、第1の波長λ、第2の波長λ及び第3の波長λの光束が共に通過する領域において、2次回折光として第1の波長λの光束が第1の面に集光し、1次回折光として第2の波長λの光束が第2の面に集光し、1次回折光として第3の波長λの光束が第3の面に集光するように、回折格子の形状が定められ、出射面が光軸を取り囲む2つの帯状領域及び光軸を含む中心領域に分割され、それぞれの領域が異なる曲率半径及び非球面係数を持つように構成された対物レンズを含む光ピックアップ光学系であって、第1及び第2の波長の光が、該対物レンズに平行光として入射され、第3の波長の光の光源と像とが有限共役関係にあるように構成された光ピックアップ光学系。
  2. 前記回折格子がブレーズ化形状である請求項1に記載の光ピックアップ光学系。
  3. nをレンズの屈折率として、前記回折格子の深さlが式
    (7/4)×λ/(n−1) < l < (9/4)×λ/(n−1)
    によって定まる請求項2に記載の光ピックアップ光学系。
  4. 複数の領域の間に光軸方向の段差を備えた請求項1から3のいずれかに記載の光ピックアップ光学系。
  5. 複数の領域の面が、z軸は光軸と一致し、iは中心から数えた面の番号、Riは曲率半径、Kiは離心率、Ai4、Ai6、Ai8、Ai10は非球面係数、diは第1面を基準とする他の面の光軸上の段差を表す場合に、式
    Figure 0004649572
    によって表される1から4のいずれかに記載の光ピックアップ光学系。
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