JP4648589B2 - 半溶融ブランクの搬送方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半溶融状態を超えない温度まで加熱したブランクを供給する際の半溶融ブランクの搬送方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半溶融状態の温度まで加熱した半溶融材の搬送方法には、例えば、特開平6−198413号公報「固液共存域ダイカスト法」に示されたものがある。同公報の段落番号[0012]〜[0017]によれば、この固液共存域ダイカスト法は次の通りである。ただし、以下の説明は原文の要約である。
【0003】
(a):まず、丸棒材を所定長さに切断し、切断した素材を、予め内面に離型剤を塗布した金属製容器へ入れる。
(b):その次に、容器に入れた素材を加熱炉で素材の固液共存温度域まで加熱する。加熱後、容器ごと炉から取り出し、スリーブ挿入口まで移送する。
(c):最後に、容器を転倒(180°反転)して素材のみをスリーブ内へ落とし込み、金型キャビティへ加熱した素材を射出する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報の方法は、容器を加熱した後、容器を反転し、容器から素材を落とす工程が必要であり、素材の取り扱いに手間がかかり、生産性が悪い。
また、予め素材の長さに丸棒材を切断し、1本の丸棒材から複数の素材を造る切断作業は手間がかかる。特に、丸棒材が難削材の場合には、時間がかかり生産コストが嵩む。
【0005】
そこで、本発明の目的は、生産性を向上させとともに、生産コストを削減する半溶融ブランクの搬送方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、半溶融状態を超えない温度まで加熱したブランクを成形する際の半溶融ブランクの搬送方法であって、ブランクより小さな線膨張係数を有するとともにブランクの外径より僅かに大きな内径を有する輪状部材を、複数個重ねて筒状の治具を組み立てる工程と、筒状の治具にブランクの素材を挿入する工程と、素材が半溶融状態になる温度まで素材ならびに治具を加熱する工程と、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることで素材を切断し、ブランクを得る工程と、ブランクを輪状部材に嵌めたままプレス装置に供給する工程と、からなる。
【0007】
加熱する工程では、加熱により、素材は熱膨張し、隙間が無くなるとともに、素材の外面は治具の内面に密着し、素材に圧縮力が発生する。この圧縮力によって、治具は治具内で移動しないように素材を押えるので、軸線方向に滑りが起きず、後工程での切断が容易になる。
また、素材を半溶融状態になる温度まで素材ならびに治具を加熱することで、素材の剪断の抵抗を小さくする。この結果、後工程での素材の切断が容易になる。
【0008】
素材を切断し、ブランクを得る工程では、素材を半溶融状態にし、且つ、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることで素材を切断するので、カッタなどの切断工具を必要としない。この結果、カッタなどの切断工具の場合に起きる刃の摩耗が無く、切断工具の購入コストは発生しない。
【0009】
また、素材を半溶融状態にし、且つ、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることで素材を切断するので、切断の取り代を設ける必要がない。その結果、素材の歩留りは向上し、生産コストは減少する。
【0010】
さらに、素材を半溶融状態にし、且つ、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることで素材を切断するので、1度に素材を複数に切断することができるとともに、1度に複数のブランクを得ることができ、生産性は向上する。
【0011】
ブランクをプレス装置に供給する工程では、ブランクを輪状部材に嵌めたままプレス装置に供給するので、ブランクの温度が低下する前にブランクをプレス装置に供給することができ、成形前にブランクを再加熱する必要がない。
【0012】
また、ブランクを輪状部材に嵌めたままプレス装置に供給するので、プレス装置側の基準に輪状部材側の基準を一致させて、ブランクを所定位置にセットすることができ、半溶融ブランクの位置決めが容易になる。
【0013】
多数個取りの場合、治具を用いて1度に素材を複数に切断し、続けて、複数のブランクを各々輪状部材に嵌めたままプレス装置に供給するので、複数のブランクをほぼ同時に供給して、ブランクの温度のばらつきを抑える。
【0014】
請求項2では、ブランクの材質は、アルミニウム基複合材であることを特徴とする。
アルミニウム基複合材を治具に挿入し、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることでアルミニウム基複合材を切断するので、アルミニウム基複合材の切断に切断工具を必要としない。その結果、アルミニウム基複合材に対して消耗の激しかった切断工具を購入する費用は発生しない。
【0015】
また、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることでアルミニウム基複合材を切断するので、アルミニウム基複合材の切断に切断工具を必要としない。その結果、切断の取り代を設ける必要はなく、高価なアルミニウム基複合材の歩留りは向上する。
【0016】
請求項3では、輪状部材の材質は、オーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする。
輪状部材の材質にオーステナイト系ステンレス鋼を採用すると、誘導加熱法の場合、オーステナイト系ステンレス鋼は誘導加熱されずに、素材のみを誘導加熱することができ、より膨張差が拡大して素材の圧縮応力を大きくすることができる。その結果、後工程での切断がより容易になる。
【0017】
また、オーステナイト系ステンレス鋼を採用すると、オーステナイト系ステンレス鋼の線膨張係数は、アルミニウム基複合材の線膨張係数より小さいので、熱膨張差によって治具内のアルミニウム基複合材に圧縮力を加えることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法のフローチャートであり、STはステップを示す。
ST01:ブランクより小さな線膨張係数の輪状部材を複数個重ねて筒状の治具を組み立てる。
ST02:筒状の治具にブランクの素材を挿入する。
ST03:素材が半溶融状態になる温度まで素材ならびに治具を加熱する。
ST04:隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることで素材を切断し、ブランクを得る。
ST05:ブランクを輪状部材に嵌めたままプレス装置に供給する。
次に、ST01〜ST05を具体的に説明する。
【0019】
図2は本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第1説明図である。
まず、素材11の切断に使用する治具12を組み立てる。具体的には、治具12は、両端に設ける押え板13,14と、これら押え板13,14の間に並べる第1輪状部材15、第2輪状部材16、第3輪状部材17および第4輪状部材18と、ボルト21,22とからなる。押え板14の上に第1〜第4輪状部材15〜18を重ねて筒状の治具12を組み立てる。
【0020】
第1輪状部材15は、ブランクの外径Dmより僅かに大きな内径Diの内周部15aを形成し、この内周部15aの外側に外周部15bを形成し、この外周部15bに把持部材15cを取付け、幅をWに形成したものである。把持部材15cには、孔15dを開けた。なお、外径Dmは素材11の外径でもある。
第1輪状部材15の材質は、ブランクより小さな線膨張係数の材質であり、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、JIS SUS304)である。
第2〜第4輪状部材16〜18は、第1輪状部材15と同じであり、詳細な説明は省略する。16c〜18cは各々の把持部材、16d〜18dは各々の孔を示す。
【0021】
素材11は、ブランクを形成するための素材である。素材11の材質には、一例として、アルミニウム基複合材を用いた。
アルミニウム基複合材は、例えば、アルミナ(Al23)の粉末を予め所定形状に成形し、多孔質アルミナの成形体とし、窒化マグネシウム雰囲気下でアルミナを還元し、金属を露出させ、濡れ性をよくし、多孔質にアルミニウム合金の溶湯を浸透させたもので、アルミニウムと強化材の界面がケミカルコンタクトによって強固に結合され、成形性に優れたものである。
引き続いて、筒状の治具12にブランクの素材11を矢印▲1▼の如く挿入する。
【0022】
図3は本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第2説明図である。
素材11を挿入した後、第1輪状部材15に押え板13(図2参照)を載せ、ボルト21,22を締める。
ここでは、隙間Cを均等に設けて、素材11を配置したが、当然、治具12に素材11の一部が触れた状態で置いてもよい。
【0023】
既に述べたように、ブランクの外径Dmより僅かに大きな内径Diを治具12に設定することで、筒状の治具12と素材11との間には所定の隙間C(半径での隙間)を設定する。詳しくは、素材11の線膨張係数をβとし、第1輪状部材15の線膨張係数をαとし、第1輪状部材15および素材11の常温時の温度をT1とし、加熱温度をT2としたときに、隙間Cは、2×C<(Dm×β−Di×α)×(T2−T1)である。
また、第1輪状部材15の線膨張係数αは、α<βでる。
【0024】
このような条件に設定すべく、素材11の材質をアルミニウム基複合材とし、治具12の材質にオーステナイト系ステンレス鋼を採用すると、オーステナイト系ステンレス鋼の線膨張係数は、アルミニウム基複合材の線膨張係数より小さいので、熱膨張差によって治具12内のアルミニウム基複合材に圧縮力を加えることができる。
【0025】
ここで、アルミニウム基複合材の線膨張係数は19.3×10-6/℃、オーステナイト系ステンレス鋼(JIS SUS304)の線膨張係数は18×10-6/℃である。
【0026】
図4は本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第3説明図である。
素材11が半溶融状態になる温度まで素材11ならびに治具12を加熱手段23で加熱する。24は治具12を載せる台を示す。
加熱手段23としては、誘導加熱法を用いるが望ましい。
このように、誘導加熱法で素材11が半溶融状態になる温度まで加熱し、その温度に達した時点で治具12から加熱手段23を取り外す。
【0027】
この加熱する工程では、誘導加熱法を用い、且つ治具12の材質にオーステナイト系ステンレス鋼を採用すると、オーステナイト系ステンレス鋼は誘導加熱されずに、素材11のみを誘導加熱することができ、より膨張差が拡大して素材11の圧縮応力を大きくすることができる。その結果、後工程での切断がより容易になる。
【0028】
また、この加熱する工程では、素材11が半溶融状態になる温度まで素材11ならびに治具12を加熱すると、素材11は熱膨張し、治具12との膨張差によって素材11の外面は治具12の内面に密着するとともに、治具12の拘束によって素材11には圧縮力が発生する。その結果、後工程での切断の際に、軸線方向に滑りが起きず、切断が容易になる。
【0029】
さらに、この加熱では、素材11が半溶融状態になる温度まで素材11ならびに治具12を加熱するので、後工程での切断の際に、剪断の抵抗は小さくなり、素材11の切断が容易になる。
【0030】
図5(a)〜(c)は本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第4説明図である。
(a):治具12を用いて切断を開始する。具体的には、ボルトを取り外し、取り外した孔16d,18dに引張り治具25を取付け、孔15d,17dに引張り治具26を取付ける。そして、保圧手段27で両端の押え板13,14を開かない程度に押えつつ、引張り治具25,26を矢印▲2▼,▲3▼の如く互いに異なる方向に引く。
【0031】
(b):引張り治具25,26を矢印▲2▼,▲3▼の如く互いに異なる方向に移動させ、治具12で素材11に剪断力を与え、素材11を1回で4個に切断する。
(c):素材11を切断し、第1〜第4輪状部材15〜18に各々嵌まったブランク31を得る。
【0032】
このように、素材11を切断し、ブランク31を得る工程では、第2・第4輪状部材16,18を左(矢印▲2▼の方向)に引き、これらの第2・第4輪状部材16,18に接する第1・第3輪状部材15,17を右(矢印▲3▼の方向)へ引き、第2・第4輪状部材16,18に隣り合う第1・第3輪状部材15,17を互いに異なる方向に移動させることで、素材11を切断する。その結果、1度に素材11を4個に切断することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0033】
また、第2・第4輪状部材16,18に隣り合う第1・第3輪状部材15,17を互いに異なる方向に移動させることで、素材11を切断する。その結果、カッタなどの切断工具を用いずに素材11を切断することができ、生産コストを削減することができる。
【0034】
ブランク31の材質がアルミニウム基複合材の場合には、アルミニウム基複合材に対して消耗が激しかった切断工具の調達費を無くすることができる。従って、生産コストを削減することができる。
【0035】
さらに、第2・第4輪状部材16,18に隣り合う第1・第3輪状部材15,17を互いに異なる方向に移動させることで、素材11を切断するので、素材11に切断の取り代を設ける必要がなく、高価なアルミニウム基複合材の歩留りを向上させることができ、生産コストを削減することができる。
【0036】
図6は本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第5説明図である。
第1輪状部材15をプレス装置へ運ぶ。詳しくは、ブランク31は熱膨張によって第1輪状部材15に嵌まっているので、第1輪状部材15の把持部材15cを把持し、第1輪状部材15と一緒にブランク31をプレス装置へ供給する。
【0037】
同様に第2〜第4輪状部材16〜18(図5参照)の把持部材16c,17c,18cを把持し、第2〜第4輪状部材16〜18と一緒に各々のブランク31をプレス装置へ供給する。なお、把持部材を把持せずに、第1〜第4輪状部材15〜18側を把持してもよい。
【0038】
図7は本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第6説明図である。
既に説明しように、ブランク31を第1輪状部材15に嵌めたままプレス装置32に供給する。詳しくは、プレス装置32に金型33(上金型34、下金型35)を取付け、金型33の下金型35に予め形成した嵌合部36に第1輪状部材15を嵌める。
この供給作業で、本発明の半溶融ブランクの搬送方法によるブランク31の供給は完了する。
【0039】
このように、ブランク31をプレス装置に供給する工程では、ブランク31を第1輪状部材15に嵌めたままプレス装置32に供給するので、第1輪状部材15からブランク31を取り出すための冷却時間を省くことができるとともに、手間を省くことができ、生産性の向上を図ることができる。
【0040】
また、ブランク31を第1輪状部材15に嵌めたままプレス装置32に供給するので、切断から供給までの時間が短く、ブランク31の温度は低下し難く、成形前にブランク31を再加熱する必要がない。従って、生産性を向上させることができる。
【0041】
次に、本発明に係るブランクを用いた成形品の成形例を簡単に説明する。
図8(a),(b)は半溶融ブランクを用いた成形品の成形説明図である。
(a):引き続いて、上金型34を圧下して、ブランク31を所望の形状の成形品37に成形する。その次に、上金型34を上昇させ、下金型35から第1輪状部材15および成形品37を押出す。
(b):プレス装置から完成した成形品37を取り出す。成形品37は、例えば、プーリの部品である。
【0042】
次に、本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の別実施の形態を示す。
図9(a),(b)は別実施の形態図であり、上記図2〜図6に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0043】
(a):ブランク31を第1輪状部材15に嵌めたままプレス装置32に供給する。具体的には、プレス装置32に下金型41を取付け、予め下金型41に形成した位置決め部42に把持部材15cを矢印▲4▼の如く挿入して位置決めするとともに、第1輪状部材15を矢印▲5▼の如く嵌める。
同様に、把持部材16cで第2輪状部材16を位置決めし、把持部材17cで第3輪状部材17を位置決めする。
【0044】
(b):下金型41に第1〜第3輪状部材15〜17と一緒にブランク31,31,31を供給し、別実施の形態によるブランク31の供給は完了する。
このように別実施の形態では、ブランク31を第1輪状部材15に嵌めたままプレス装置32に供給するとともに、把持部材15cを下金型41の位置決め部42に挿入するので、ブランク31の位置決めは容易にる。その結果、手間をかけずに、成形品の精度の向上を図ることができるとともに、寸法のばらつきを抑えて安定した成形を実施することができる。
【0045】
図9に示すような多数個取りの場合、既に説明したように治具12(図5参照)を用いて1度に素材11を4個に切断し、続けて、ブランク31,31,31を各々第1〜第3輪状部材15〜17に嵌めたままプレス装置32に供給するので、3個のブランク31をほぼ同時に供給することができ、ブランク31の温度のばらつきを抑えることができる。
【0046】
次に、別実施の形態の成形例を簡単に説明する。
図10(a),(b)は別実施の形態の成形説明図である。
(a):引き続いて、下金型41に対応する上金型43を圧下し、ブランク31を成形品44に成形する。
(b):プレス装置から完成した成形品44を取り出す。なお、成形品44の形状は一例である。
【0047】
次に、本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の変形例を示す。
図11(a),(b)は変形例図であり、上記図2〜図6に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
(a):素材11Bを切断し、第1輪状部材15Bに嵌まったブランク31Bを得る。素材11Bの材質は、素材11と同じであり、素材11Bは平面部51を有する。
第1輪状部材15Bの材質は第1輪状部材15と同じであり、第1輪状部材15Bは内周部15aに形成した平部52と、外周部15bに形成した位置決め部53とを有する。
【0048】
(b):ブランク31Bを第1輪状部材15Bに嵌めたままプレス装置32に供給する。具体的には、プレス装置32に下金型54を取付け、下金型54に予め形成した位置決めピン55に把持部材15cを矢印▲6▼の如く嵌めるとともに、下金型54に形成した位置決めピン56に位置決め部53を矢印▲7▼の如く嵌め、ブランク31Bの供給は完了する。
このようにブランク31Bを位置決めするので、変形例では、別実施の形態と同様の効果を発揮することができる。
【0049】
尚、本発明の実施の形態に示した第1〜第4輪状部材15〜18の形状は任意である。例えば、内径Diで形成した内周を多角形に形成してもよく、外周を多角形に形成してもよい。
第1〜第4輪状部材15〜18の4個で治具12を組み立てたが、輪状部材の数量は4個に限定するものではなく、任意である。
アルミニウム基複合材の構成は任意であり、例えば、アルミナ(Al23)の粉末をアルミニウム合金の溶湯に分散させたものでもよい。
図7の金型33の構成は一例であり、下金型35に形成した嵌合部36の形状は一例である。
【0050】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、ブランクより小さな線膨張係数を有するとともにブランクの外径より僅かに大きな内径を有する輪状部材を、複数個重ねて筒状の治具を組み立てる工程と、筒状の治具にブランクの素材を挿入する工程と、素材が半溶融状態になる温度まで素材ならびに治具を加熱する工程と、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることで素材を切断し、ブランクを得る工程と、ブランクを輪状部材に嵌めたままプレス装置に供給する工程とからなる。
素材を切断し、ブランクを得る工程では、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることで素材を切断するので、カッタなどの切断工具の場合に起きる刃の摩耗が無く、生産コストを削減することができる。
【0051】
また、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることで素材を切断するので、素材に切断の取り代を設ける必要がなく、素材の歩留りを向上させることができる。従って、生産コストを削減することができる。
【0052】
さらに、素材を半溶融状態にし、且つ、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることで素材を切断するので、1度に素材を複数個に切断することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0053】
ブランクをプレス装置に供給する工程では、ブランクを輪状部材に嵌めたままプレス装置に供給するので、切断から供給までの時間が短く、ブランクの温度は低下し難く、温度の高いブランクをプレス装置に供給することができる。この結果、成形前にブランクを再加熱する必要がなく、生産性を向上させることができる。
【0054】
また、ブランクを輪状部材に嵌めたままプレス装置に供給するので、輪状部材からブランクを取り出すための冷却時間を省くことができるとともに、手間を省くことができ、生産性の向上を図ることができる。
【0055】
さらに、ブランクを輪状部材に嵌めたままプレス装置に供給するので、プレス装置側の基準に輪状部材側の基準を一致させて、ブランクを所定位置にセットすることができ、半溶融ブランクの位置決めが容易になる。その結果、手間をかけずに、成形品の精度の向上を図ることができるとともに、寸法のばらつきを抑えて安定した成形を実施することができる。
【0056】
多数個取りの場合、治具を用いて1度に素材を複数に切断し、続けて、複数のブランクを各々輪状部材に嵌めたままプレス装置に供給するので、複数のブランクをほぼ同時に供給することができ、ブランクの温度のばらつきを抑えることができる。
【0057】
請求項2では、ブランクの材質は、アルミニウム基複合材であり、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることでアルミニウム基複合材を切断するので、切断工具を用いずにアルミニウム基複合材を切断することができる。その結果、アルミニウム基複合材に対して消耗が激しかった切断工具の調達費を無くすることができる。従って、生産コストを削減することができる。
【0058】
また、隣り合う輪状部材を互いに異なる方向に移動させることでアルミニウム基複合材を切断するので、切断工具を用いずにアルミニウム基複合材を切断することができる。その結果、アルミニウム基複合材に切断の取り代を設ける必要がなく、高価なアルミニウム基複合材の歩留りを向上させることができ、生産コストを削減することができる。
【0059】
請求項3では、輪状部材の材質は、オーステナイト系ステンレス鋼であり、誘導加熱法を採用し、且つ治具の材質にオーステナイト系ステンレス鋼を採用すると、オーステナイト系ステンレス鋼は誘導加熱されずに、素材のみを誘導加熱することができ、より膨張差が拡大して素材の圧縮応力を大きくすることができる。その結果、後工程での切断がより容易になる。
【0060】
また、オーステナイト系ステンレス鋼を採用すると、オーステナイト系ステンレス鋼の線膨張係数は、アルミニウム基複合材の線膨張係数より小さいので、熱膨張差によって治具内のアルミニウム基複合材に圧縮力を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法のフローチャート
【図2】本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第1説明図
【図3】本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第2説明図
【図4】本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第3説明図
【図5】本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第4説明図
【図6】本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第5説明図
【図7】本発明に係る半溶融ブランクの搬送方法の第6説明図
【図8】半溶融ブランクを用いた成形品の成形説明図
【図9】別実施の形態図
【図10】別実施の形態の成形説明図
【図11】変形例図
【符号の説明】
11…ブランクの素材、12…治具、31…ブランク、32…プレス装置、Di…輪状部材の内径、Dm…ブランクの外径、α…輪状部材の線膨張係数、β…ブランクの線膨張係数(素材の線膨張係数)。

Claims (3)

  1. 半溶融状態を超えない温度まで加熱したブランクを成形する際の半溶融ブランクの搬送方法であって、
    前記ブランクより小さな線膨張係数を有するとともに該ブランクの外径より僅かに大きな内径を有する輪状部材を、複数個重ねて筒状の治具を組み立てる工程と、
    前記筒状の治具に前記ブランクの素材を挿入する工程と、
    前記素材が半溶融状態になる温度まで該素材ならびに前記治具を加熱する工程と、
    隣り合う前記輪状部材を互いに異なる方向に移動させることで前記素材を切断し、ブランクを得る工程と、
    前記ブランクを前記輪状部材に嵌めたままプレス装置に供給する工程と、からなる半溶融ブランクの搬送方法。
  2. 前記ブランクの材質は、アルミニウム基複合材であることを特徴とする請求項1記載の半溶融ブランクの搬送方法。
  3. 前記輪状部材の材質は、オーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項2記載の半溶融ブランクの搬送方法。
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