JP2016198802A - 予熱部材及びそれを用いた熱間鍛造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 熱間鍛造用金型の表面温度の低下を抑制することが可能な予熱部材及びそれを用いた熱間鍛造方法を提供する。【解決手段】 上型と下型とでなる一対の熱間鍛造用金型に成形された型彫り面を保温する予熱部材であって、前記予熱部材は前記型彫り面に沿った形状を有し、前記予熱部材は、前記上型に成形された型彫り面を予熱する予熱部品と前記下型に成形された型彫り面を予熱する予熱部品の組立て体である予熱部材であり、前記予熱部材を用いた熱間鍛造方法としては、前記予熱部材を熱間鍛造温度+100℃〜熱間鍛造温度−300℃に加熱し、前記一対の熱間鍛造用金型に形成された型彫り面に前記予熱部材を挟み込み、前記予熱部材で前記一対の熱間鍛造用金型を予熱した後、前記金型予熱工程により予熱された前記一対の熱間鍛造用金型から前記予熱部材を取り除き、その後、前記一対の熱間鍛造用金型を用いて被鍛造材を熱間鍛造して鍛造材とする熱間鍛造方法。【選択図】 図3

Description

本発明は、熱間鍛造用金型に形成された型彫り面を保温する熱間鍛造に用いられる予熱部材及びそれを用いた熱間鍛造方法に関するものである。
例えば、Alloy718やTi合金等の難加工性材の熱間鍛造(恒温鍛造やホットダイ等を含む)は700℃以上の高温で行われる。前述の難加工性材の熱間鍛造においては、温度の変化によって熱間加工性が変化してしまうため、できるだけ同一条件下で鍛造を行うことが好ましい。
しかしながら、たとえ被鍛造材の温度を同一としても、熱間鍛造用金型の温度は熱間鍛造温度よりも低温であることから、熱間鍛造用金型と被鍛造材との接触により、被鍛造材の温度が低下してしまう。この被鍛造材の温度低下は、熱間加工性を低下させたり、熱間鍛造用金型の摩耗量を増加させるため、熱間鍛造用金型の寿命が短くなってしまう。
この問題に対し、例えば特開2002−96134号公報(特許文献1)には、対向配置された鍛造用の第1の金型と第2の金型とを加熱するための加熱治具として、中央部にヒータを設け、且つ、一方の表面を第1の金型の鍛造面形状に沿った形状とし、他方の表面を第2の金型の鍛造面形状に沿った形状とした鍛造用金型の加熱治具を用いる発明が提案されている。
また、例えば、特開2004−230397号公報(特許文献2)には、金型内に加熱したワークを挿入し、プレスラムスライドによって型締めを行い、金型内に挿入したワークを成形する鍛造方法であって、型締め完了後型開きまでの間、ワークの熱を金型に伝達可能な位置にプレスラムスライドを停止させる工程を含む鍛造方法の発明が提案されている。
また、例えば、特開2001−340935号公報(特許文献3)には、温間あるいは熱間鍛造用金型の金型加熱方法において、前記金型の外周部に、加熱用ヒータ線として、柔軟性のあるニクロム線を内在させた複数のセラミック製碍子を組み合わせた構造のヒータを用いる金型の加熱方法の発明が提案されている。
特開2002−096134号公報 特開2004−230397号公報 特開2001−340935号公報
上述した特許文献1に示される加熱治具を用いる方法は、治具内に設けられたヒータからの熱伝導によって加熱治具表面の温度を高めるものである。また、特許文献2に示される熱間鍛造方法は、被鍛造材の保有熱を下型、上型に伝達して、金型を必要な温度に加熱、保温して、金型から製品を離型した後に実施される潤滑剤の塗布工程において、必要な金型温度を保持し、潤滑剤の水分を円滑に気化させて、金型に良好な潤滑剤皮膜を生成することができるものである。
また、特許文献3においても、加熱用ヒータを用いて金型の表面温度を高めるものである。
特許文献1や特許文献3のように加熱用ヒータを利用して金型表面の温度を高める方法は、簡便な方法であり、局所的な加熱ができる利点がある。
また、特許文献2のように型締め後の鍛造材の保有熱を利用する方法は、比較的小型の金型を保熱するには適している。
ところで、最近、プレス荷重が数万トン規模の大型鍛造装置が導入されている。このような大型鍛造装置に用いられる金型は大型のものとなり、局所的な加熱を行っても金型自体が大きいため、ヒータを取り除いた後の金型表面温度の低下が直ぐに進行するという問題が生じることを知見した。特に、熱間鍛造の各ショット間に生じる待機時間において、金型の表面温度が低下してしまうと、熱間鍛造条件が変化することにつながる。
本発明の目的は、熱間鍛造用金型の表面温度の低下を抑制することが可能な予熱部材及びそれを用いた熱間鍛造方法を提供する。
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものである。
すなわち本発明は、上型と下型とでなる一対の熱間鍛造用金型に形成された型彫り面を保温する予熱部材であって、前記予熱部材は前記型彫り面に沿った形状を有し、前記予熱部材は、前記上型に形成された型彫り面を予熱する予熱部品と前記下型に形成された型彫り面を予熱する予熱部品の組立て体である予熱部材である。
また本発明は、前記予熱部材を用いた熱間鍛造方法であって、前記予熱部材を熱間鍛造温度+100℃〜熱間鍛造温度−300℃に加熱し、一対の熱間鍛造用金型の上型に形成された型彫り面と下型に形成された型彫り面との間に前記予熱部材を挟み込み、前記予熱部材で前記一対の熱間鍛造用金型を予熱する金型予熱工程と、前記金型予熱工程により予熱された前記一対の熱間鍛造用金型から前記予熱部材を取り除く予熱部材除去工程と、前記予熱部材除去工程後、前記一対の熱間鍛造用金型を用いて被鍛造材を熱間鍛造して鍛造材とする熱間鍛造工程と、を含む熱間鍛造方法である。
本発明の熱間鍛造方法において、前記予熱部材の表面に硝子潤滑被膜が形成されることが好ましい。
本発明によれば、熱間鍛造の各ショット間に生じる待機時間において、熱間鍛造用金型の表面温度の低下を防止または抑制することができる。また、ヒータのような特別な加熱手段を用いないため、経済的にも有利である。
本発明の予熱部材の一例を示す模式図である。 本発明の別な予熱部材の一例を示す模式図である。 本発明の予熱部材を上型と下型とで挟み込んだ一例を示す模式図である。
以下に本発明を詳しく説明する。
上述したように、本発明の重要な特徴は、熱間鍛造に用いる熱間鍛造用金型の型彫り面が形成された表面の温度を十分に高めることにある。
なお、本発明でいう「熱間鍛造」としては、熱間鍛造の他、恒温鍛造、ホットダイ鍛造、熱間プレスを含むものである。
(予熱部材)
図1及び図2に示すように、本発明の予熱部材1は上型と下型とでなる一対の熱間鍛造用金型に形成された型彫り面を保温する予熱部材である。そのため、予熱部材が上型と下型に接触する面は金型の型彫り面に沿った、上型と下型に形成された型彫り面形状と略同形状の面形状を有している。これにより、上型と下型の型彫り面全体を保温することができる。これは型彫り面形状と予熱部材の面形状がほぼ同一形状であれば、型彫り面内の温度をほぼ同一温度とすることができるためである。また、予熱部材の面形状が型彫り面に沿った略同一形状であると、予熱部材1と上型と下型との隙間も少なくすることが可能なため、外気と触れ合うことによる熱間鍛造用金型表面の温度低下をより確実に防止することができる。勿論、金型の型彫り面を含んで、上型と下型が対向する面全面と略同一形状の面を有する予熱部材としても良い。
なお、予熱部材の面を型彫り面形状と略同一とするには、例えば、予熱部材とする素材を試圧によって熱間鍛造し、その熱間鍛造により型彫り面形状と略同一の面を有する予熱部材とすることが好ましい。また、予熱部材の材質は熱伝達係数の小さいものが好ましい。熱伝達係数が小さいものであると、予熱部材の予熱効果を高めることができる。そのための材質としては、例えば、Ni基の超耐熱合金やステンレス鋼であればよい。中でも718合金のように、Niを50質量%以上含有するNi基の超耐熱合金は酸化スケールが生じ難く、熱伝達係数が小さいため、これを予熱部材として用いると予熱・保熱効果が大きいことから特に好ましい。
また、この予熱・保熱効果を高めるには、予熱部材表面に硝子潤滑被膜を形成しておくのが良い。硝子潤滑被膜は保熱効果を有するため、予熱部材による熱間鍛造用金型の予熱・保熱効果を高めることができる。
本発明の前記予熱部材は、前記上型に成形された型彫り面を予熱する予熱部品2aと前記下型に成形された型彫り面を予熱する予熱部品2bの組立て体である。組立て体とすることで保熱部材の保有熱量を大きくすることができ、ホットダイ鍛造や恒温鍛造を行う前の上型と下型とを十分に保温することができる。また、数万トン規模の鍛造荷重で熱間鍛造を行おうとすると、金型自体の総重量も30トンを超える場合もある。そのため、予熱部材により効果的に型彫り面を保温しようとすると予熱部材も大型化することになるが、予熱部品を組立てることで予熱部品の保有熱熱量を金型の総重量に合せて大きくすることができ、特に、1万トン以上の大型熱間鍛造装置用の金型の保熱には大きな効果を奏する。例えば、5万トン規模の大型鍛造装置用の熱間鍛造用金型に予熱部材を用いて型彫り面を予熱しようとした場合、例えば、一体物で予熱部材を作製すると、その重量は1トンを超える場合がある。これを所定の形状の予熱部材としようとすると作製が困難となることから、本発明の組立て体とする方法は大型の予熱部材とするには好適な方法である。
なお、図1や図2では2つの予熱部品の組立て体として示しているが、3つ以上としても良い。
また、本発明の予熱部材1は、例えば、複数個の予熱部品を積層するように組立てた後に溶接やボルト等の締結部品により予熱部品同士を結合させて組立て体(積層体)とするのが簡便である。その場合、積層して組立てるのが困難な形状であれば、図2に示すように、予熱部品を積層する接触面を機械加工などにより積層し易くして組立て体としても良い。
ところで、予熱部材の体積が大きいほど予熱部材の保有熱量も大きくなるため、予熱部材の体積は、熱間鍛造後の鍛造材の2倍以上の体積を有する予熱部材とするのが好ましい。体積が2倍以上となると、熱間鍛造用金型の型彫り面(作業面)の温度低下を防止しつつ、一対の熱間鍛造用金型自体の温度低下も抑制することができ、熱間鍛造の各ショット毎の条件のばらつきを抑制することができる。より好ましくは、熱間鍛造後の鍛造材の体積の2.5倍以上の予熱部材を用意すると良い。なお、予熱部材の体積の上限については特に限定しないが、熱間鍛造後の鍛造材の寸法、製品形状、予熱時間などを勘案して適宜決定するのが良く、過度に予熱部材の体積が大きくなると、予熱部材自体を所望の温度に昇温するのに時間がかかることや、予熱部材の保有熱により熱間鍛造用金型の硬さが低下するおそれがある。そのため、予熱部材の体積の上限は5倍とすると良い。
例えば、被鍛造材と同材質で同形状のものを試圧によって熱間鍛造したものを予熱部品とし、その予熱部品を複数個用意し、それを組立てて組立て体としたものを予熱部材として用いることができる。また、予熱部材を被鍛造材の材質と同一なものとすると、予熱管理が容易となるだけでなく、型彫り面内での熱膨張も整合するため、型彫り面内を効率よく予熱することができ、特に好ましい。
次に、上記の予熱部材を用いた本発明の熱間鍛造方法について説明する。
(金型予熱工程)
先ず、本発明では、図2に示すように一対の熱間鍛造用金型(上型11、下型12)に、熱間鍛造温度+100℃〜熱間鍛造温度−300℃に加熱した予熱部材1を挟み込み、上型11の重量を利用して予熱部材1を加圧しつつ、一定時間保持する金型予熱工程を行う。なお、本発明でいう一対の熱間鍛造用金型とは、上型11と下型12を指すものである。また、予熱部材1は従来のようなヒータを備えていないものである。
本発明では、前述の一対の熱間鍛造用金型に、熱間鍛造温度+100℃〜熱間鍛造温度−300℃に加熱した予熱部材1を挟み込む。予熱部材の温度を熱間鍛造温度+100℃〜熱間鍛造温度−300℃としたのは、被鍛造材を下型に載置したときに被鍛造材の急激な温度低下を防止するためである。予熱部材1の温度の上限が熱間鍛造温度+100℃より高温であると予熱部材が熱膨張して金型に嵌め合うことができなくなるおそれがある。また、予熱部材1の温度の下限が熱間鍛造温度−300℃より低温であると、特に、大型の熱間鍛造用金型を用いたときに、予熱部材の有する保有熱が短時間で低温になってしてしまい、被鍛造材を下型2に載置したときに、被鍛造材が冷却されやすくなる。
そのため、本発明では予熱部材1の温度を熱間鍛造温度+100℃〜熱間鍛造温度−300℃とする。なお、好ましい予熱部材の加熱温度の上限は熱間鍛造温度+50℃である。また、好ましい予熱部材の加熱温度の下限は熱間鍛造温度−100℃である。
また、本発明では前述の予熱部材1を挟み込み、一定時間保持する。予熱部材は上下一対の熱間鍛造用金型で挟み込まれるため、上型の重量によって加圧され、熱間鍛造用金型表面の温度低下を防止することができる。勿論、例えば、熱間鍛造機のプレス荷重によって特定の荷重を加えてもよい。この場合のプレス荷重は100〜25,000トンの間で適宜選択すると良い。なお、本発明者の検討によれば、プレス荷重は数百トンレベルで十分に予熱することができる。
そして、この予熱部材を挟み込んだ状態で一定時間保持する。保持時間は特に限定しないが、上型と下型の材質、予熱部材の温度を考慮すると良い。
例えば、上型、下型の材質がJIS−G4404(合金工具鋼鋼材)中「熱間金型用」として記されるもの(以下、熱間金型用鋼)であれば、本発明で規定する温度範囲に加熱された予熱部材を上型と下型に挟み込んだときに、長時間の予熱によって上型と下型の硬さが低下するおそれがある。そのため、上型や下型が熱間金型用鋼である場合は、予熱部材を挟み込む時間を20分以内とするのが好ましい。
また、前述の「熱間金型用」の鋼を用いた上型や下型であっても、例えばNi基超耐熱合金の肉盛層が形成されている場合は、30分程度までの予熱を行っても差し支えなく、また、上型と下型が共に例えばNi基超耐熱合金である場合は、例えば30分を超えて2時間程度までの予熱を行っても差し支えない。
なお、熱間鍛造用金型の材質としては、上記の熱間金型用鋼として記されるものであれば、比較的安価であるため好ましい。より好ましくは、上記の熱間金型用鋼にNi基超耐熱合金の肉盛層を形成したものである。または、熱間鍛造時に被鍛造材の変形量が大きな部位をNi基超耐熱合金製の入子型として用いて、熱間金型用鋼とNi基超耐熱合金製の入子型の複合金型として用いるのが良い。このNi基超耐熱合金を用いることで、金型の高強度化による高寿命化がはかれ、更に、保熱効果を向上させることができる。
なお、予熱部材の効果を最大限発揮させるには、熱間鍛造に用いる一対の熱間鍛造用金型を予め予熱しておくと良い。熱間鍛造用金型自体を予熱することで、予熱部材を一対の熱間鍛造用金型で挟み込んだときに、予熱部材の有する保有熱の熱間鍛造用金型への拡散を遅らせることができ、熱間鍛造用金型を保温することも可能となる。
前記の熱間鍛造用金型の予熱温度は、例えば上型、下型の材質がJIS−G4404(合金工具鋼鋼材)中に示される「熱間金型用」として記されるものであれば、焼戻し温度を予熱温度の上限とする。
また、予熱部材自体の予熱については、被鍛造材を鍛造温度に加熱する際に、予熱部材も一緒に加熱しておくことが好ましい。これにより、予熱部材を加熱する加熱炉を別に用意する必要がなくなり、経済的である。
(予熱部材除去工程)
次に、本発明では、前述の金型予熱工程により予熱された一対の金型から予熱部材を取り除く。予熱部材の除去はマニピュレータを用いるのが簡便である。
予熱部材を取り除くタイミングとしては、被鍛造材を予熱炉から取り出すタイミングで十分である。
以上、説明する本発明の熱間鍛造方法によれば、熱間鍛造用金型表面の温度低下を十分に抑制することができ、熱間鍛造条件のばらつきを抑制するだけでなく、熱間鍛造用金型の寿命を向上させることも可能である。
特に本発明の熱間鍛造は、例えば、6Al−4V−Ti合金等のTi合金や、Alloy718等のNi基超耐熱合金の難加工性材の熱間鍛造に好適である。
(実施例1)
先ず、実際の熱間鍛造を行う前に、本発明の予熱部材の効果を確認した。
熱間鍛造にて、718合金製のディスク材(熱間鍛造材)を熱間鍛造することを模擬したものである。用意した予熱部材は2つであり、材質は718合金である。
予熱部材は予め熱間鍛造に使用する熱間鍛造用金型で熱間プレス(試圧)したものであり、それにより上型と下型に形成された型彫り面形状と略同形状の面が形成されている。なお、この予熱部材は、図1に示した構造をしている。また、予熱部材の一つには硝子潤滑剤を塗布したものを用い、もう一つには硝子潤滑剤の塗布は行わなかった。なお、試圧の温度は、実際の熱間鍛造温度プラスマイナス100℃程度の範囲で行うと良い。
前述の予熱部材を熱間鍛造温度と同じ1000℃に加熱し、上下一対の熱間鍛造用金型はおおよそ500℃に加熱した。なお、熱間鍛造用金型の表面温度が500℃以上であると、熱間鍛造時に用いる硝子潤滑剤の摩擦条件が良好となり、熱間鍛造条件を適正とすることができる。
上下一対の熱間鍛造用金型に前述の予熱部材を挟み込み、1つは200トンの軽荷重、もう1つは20,000トンの荷重を加え、熱間鍛造温度の変化を確認した。なお、予熱部材を用いない場合は、500℃の温度を有する熱間鍛造用金型は、3分経過後には約460℃程度まで金型の表面温度が低下することを確認した。
また、用いた熱間鍛造用金型は、最大荷重50,000トン用の大型鍛造品用の熱間鍛造用金型であり、材質はJIS−SKD61(以下、SKD61と記す)である。SKD61の焼戻し温度は650℃である。
結果を表1に示す。表1は、予熱部材を挟み込む前(予熱部材加温前)、予熱部材による予熱を終了し、上型を離した直後(加熱終了直後)、予熱部材を金型から除去した1分後、2分後、3分後、4分後の上型、下型の表面温度を測定した結果を示している。なお、「加熱終了直後」の下型の温度は、予熱部材が下型上に載置してあるため、下型の表面温度の測定は行わなかった。
Figure 2016198802
表1に示すように、加熱終了直後の温度も熱間鍛造用金型(SKD61)の焼戻し温度を超えていないことが分かる。また、3分経過後においても上下の熱間鍛造用金型の表面温度は500℃を超える温度を維持していることが分かる。また、予熱部材の形状が上型と下型に形成された型彫り面形状と略同形状であることと、硝子潤滑剤の塗布を行った効果のため、荷重が軽荷重(200トン)を加えたときの温度変化と大荷重(20,000トン)を加えたときの温度変化には大きな有意差はなかった。
この結果から、本発明で用いた予熱部材は熱間鍛造用金型が有する機械的特性を劣化させることなく、熱間鍛造の各ショット間に生じる待機時間において、金型の表面温度の低下を防止し、500℃以上の温度に熱間鍛造用金型の表面温度を維持することができることを確認した。
(実施例2)
次に、実際に熱間鍛造を行った。用いた熱間鍛造用金型の型彫り面形状と予熱部材の形状は上記実施例1で用いたものと同じとした。また、用意した予熱部材1は図1に示すように2つの予熱部品(2a,2b)を積層するように組立てた後、溶接により一体化した組立て体である。
また、熱間鍛造用金型の型彫り面のうち、特に荷重が加わる箇所はNi基超耐熱合金の肉盛層を形成したものを用いた。熱間鍛造機は最大荷重が50,000トンの大型鍛造機を用いた。
熱間鍛造は硝子潤滑剤で被覆した718合金製のディスク材(熱間鍛造材)を熱間鍛造するものである。用意した予熱部材1の体積は前記718合金製のディスク材(熱間鍛造材)の2倍であり、予熱部材1の表面には硝子潤滑剤を塗布した。予熱部材1と被鍛造材は同一の加熱炉内で鍛造温度の1000℃に加熱した。一対の熱間鍛造用金型は500℃に予熱を行った。
次に、大型鍛造機に熱間鍛造用金型をセットし、上型11と下型12とでなる一対の熱間鍛造用金型に、1000℃に加熱した予熱部材を挟み込み、一対の熱間鍛造用金型を5分間予熱して熱間鍛造用金型の型彫り面を500℃以上の温度に保った。
次に、加熱炉から被鍛造材を取り出すと共に、予熱中の一対の金型から予熱部材1を取り除いて、8分後に熱間鍛造を開始した。熱間鍛造前の金型の型彫り面(表面)温度は530℃であり、予熱部材による金型表面温度の低下の防止効果を確認した。
一対の熱間鍛造用金型の温度低下を防止したため、熱間鍛造時には硝子潤滑の摩擦条件が良好となり、熱間鍛造条件を適正とすることができたため、焼き付きなどの問題は発生しなかった。
この熱間鍛造を複数回繰返した。熱間鍛造の各ショット間に生じる待機時間には、鍛造温度と同じ1000℃に再加熱を行った予熱部材を用いて一対の熱間鍛造用金型の表面温度を500〜600℃の範囲内に維持することができ、各ショット後の熱間鍛造品には焼き付きなどの問題は発生しなかった。
以上の結果から、熱間鍛造の各ショット間に生じる待機時間において、金型の表面温度の低下を防止し、熱間鍛造条件をほぼ一定の条件下で行えることが確認された。特に、今後益々大型化する鍛造品を製造するにあたり、ヒータ等の加熱手段を用いることもないため、エネルギーコストの削減にも有利である。
1 予熱部材
2a,2b 予熱部品
11 上型
12 下型

Claims (3)

  1. 上型と下型とでなる一対の熱間鍛造用金型に形成された型彫り面を保温する予熱部材であって、前記予熱部材は前記型彫り面に沿った形状を有し、
    前記予熱部材は、前記上型に形成された型彫り面を予熱する予熱部品と前記下型に形成された型彫り面を予熱する予熱部品の組立て体であることを特徴とする予熱部材。
  2. 請求項1に記載の予熱部材を用いた熱間鍛造方法であって、
    前記予熱部材を熱間鍛造温度+100℃〜熱間鍛造温度−300℃に加熱し、一対の熱間鍛造用金型の上型に形成された型彫り面と下型に形成された型彫り面との間に前記予熱部材を挟み込み、前記予熱部材で前記一対の熱間鍛造用金型を予熱する金型予熱工程と、
    前記金型予熱工程により予熱された前記一対の熱間鍛造用金型から前記予熱部材を取り除く予熱部材除去工程と、
    前記予熱部材除去工程後、前記一対の熱間鍛造用金型を用いて被鍛造材を熱間鍛造して鍛造材とする熱間鍛造工程と、
    を含むことを特徴とする熱間鍛造方法。
  3. 前記予熱部材の表面には硝子潤滑被膜が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の熱間鍛造方法。

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