JP2016144814A - 熱間鍛造用金型装置及びそれを用いた熱間鍛造方法 - Google Patents

熱間鍛造用金型装置及びそれを用いた熱間鍛造方法 Download PDF

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Yoichi Suga
洋一 菅
松本 英樹
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Abstract

【課題】 大型の熱間鍛造用金型装置において、熱間鍛造用金型の温度低下を抑制することが可能な熱間鍛造用金型装置とそれを用いた熱間鍛造方法を提供する。
【解決手段】 上金型と前記上金型を内周側に保持している上ダイホルダとを備える上金型セットと、下金型と前記下金型を内周側に保持している下ダイホルダとを備える下金型セットと、を備える熱間鍛造用金型装置であって、前記上金型セットは、前記上ダイホルダを介して上金型セット保持部に取り付けられ、及び前記下金型セットは、前記下ダイホルダを介して下金型セット保持部に取り付けられており、前記上金型及び下金型は成形面を備え、前記上金型底面と前記上金型セット保持部との間、及び、前記上金型外周面と前記ダイホルダの内周面との間に、前記上金型からの伝熱による前記上金型セット保持部及びダイホルダの温度上昇を抑制する温度上昇抑制部を備える熱間鍛造用金型装置。
【選択図】 図1

Description

本発明は、熱間鍛造用金型装置及びそれを用いた熱間鍛造方法に関するものである。
近年、中・大型航空機用熱間型打鍛造製品の需要が大きく伸びている。これらの中・大型航空機用熱間型打鍛造製品のうち、例えば、航空ジェットエンジンのタービンディスクは、ニッケル基超耐熱合金やチタン合金製であり、同心円状で直径1メートルを超える大きさがある。これらの大型鍛造品を製造するには、熱間型打鍛造中の変形荷重は150MNを超える非常に大きな加圧力を必要とする。例えば、最近では、5万トンクラスの大型熱間鍛造装置も稼働を開始し、それに用いられる熱間鍛造用金型も大型化している。
前記の大型熱間鍛造装置に最適な熱間鍛造用金型として、例えば、本願出願人の提案による国際公開WO2013/147154パンフレット(特許文献1参照)には、被鍛造材を熱間型打鍛造するための熱間鍛造用金型が開示されれいる。この熱間鍛造用金型は、複数個のリング状金型片が互いに同心円状に組み合わされて固定されており、前記リング状金型片の軸方向が被鍛造材を鍛造する際の押圧方向となり、前記熱間鍛造用金型の被鍛造材と接する部分には型彫面が形成されるとともにニッケル基超耐熱合金の肉盛層が形成されている。
国際公開WO2013/147154パンフレット
前述の特許文献1の発明は、歩留りの高い金型製造が可能となり、従来製作が困難であった大型の航空ジェットエンジンディスクや、発電用ガスタービンディスクの熱間型打鍛造金型に適用することが可能となり、高い金型寿命と合わせて、安価で高品質の大型型打鍛造製品の製造が可能となるものである。
ところで、5万トンクラスの大型熱間鍛造装置に用いる熱間鍛造用金型は、その総重量は30トンを超える場合もある。例えば、このような重量の熱間鍛造用金型を用いて恒温鍛造やホットダイ鍛造を含む熱間鍛造を行う場合、熱間鍛造用金型とそれに組合わせて使用される中間台も大型化して、熱間鍛造用金型の成形面(作業面)の温度低下(抜熱)が激しいという課題が生じた。熱間鍛造用金型はある程度の温度を維持しておく方が熱間鍛造用金型の寿命を向上させる他、鍛造荷重を低くできて有利である。
本発明の目的は、大型の熱間鍛造用金型装置において、熱間鍛造用金型の温度低下を抑制することが可能な熱間鍛造用金型装置とそれを用いた熱間鍛造方法を提供することである。
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものである。
すなわち本発明は、上金型と前記上金型を内周側に保持している上ダイホルダとを備える上金型セットと、
下金型と前記下金型を内周側に保持している下ダイホルダとを備える下金型セットと、を備える熱間鍛造用金型装置であって、
前記上金型セットは、前記上ダイホルダを介して上金型セット保持部に取り付けられ、及び前記下金型セットは、前記下ダイホルダを介して下金型セット保持部に取り付けられており、
前記上金型及び下金型は成形面を備え、
前記上金型底面と前記上金型セット保持部との間、及び、前記上金型外周面と前記ダイホルダの内周面との間に、前記上金型からの伝熱による前記上金型セット保持部及びダイホルダの温度上昇を抑制する温度上昇抑制部を備える熱間鍛造用金型装置である。
好ましくは、前記温度上昇抑制部は空隙である熱間鍛造用金型装置である。
更に好ましくは、前記上金型底面と前記上金型セット保持部との間に備えられた前記温度上昇抑制部としての空隙は、前記上金型セットが前記上ダイホルダを介して上金型セット保持部に取り付けられて、前記上金型の成形面が鉛直方向下側に向いている状態で形成されており、かつ前記状態で形成された前記空隙は0.5mm以上である熱間鍛造用金型装置である。
より好ましくは、前記上金型及び下金型は、それぞれ複数部材に分割されている熱間鍛造用金型装置である。
また本発明は、前記熱間鍛造用金型装置を用いた熱間鍛造方法であって、
前記上金型及び下金型を予熱する予熱工程と、
前記予熱した上金型及び下金型を前記上ダイホルダ及び前記下ダイホルダと組み立てて、前記上金型セット及び前記下金型セットとし、前記上金型セット保持部及び下金型セット保持部に取り付ける金型組み立て工程と、
前記金型組み立て工程により組み立てられた前記上金型セットと前記下金型セットの間に保熱体を挿入して前記上金型及び下金型の成形面を保熱する金型保熱工程と、
前記保熱体を取り除き、次いで、熱間鍛造温度に加熱した鍛造用素材を上下金型セットを用いて熱間鍛造する熱間鍛造工程と、
を含む熱間鍛造方法である。
本発明によれば、大型の熱間鍛造用金型装置において、熱間鍛造用金型の温度低下を抑制することが可能である。そのため、本発明の熱間鍛造用金型装置を用いて熱間鍛造を行った場合、熱間鍛造用金型装置の温度低下が抑制できることから、鍛造荷重を低くでき、均質な熱間鍛造品を効率よく製造することが可能となる。
本発明の熱間鍛造用金型装置の一例を示す断面模式図である。 本発明の熱間鍛造用金型装置を用いた熱間鍛造方法の一例を示す模式図である。 本発明の空隙部の効果を検証するための試験位置を示す模式図である。
本発明を図面を用いて説明する。
図1は本発明の熱間鍛造用金型装置の一例を示す断面模式図である。図1は、上金型2と前記上金型2を内周側に保持している上ダイホルダ1とを備える上金型セット3と、下金型4と前記下金型を内周側に保持している下ダイホルダ9とを備える下金型セット5とを備える熱間鍛造用金型装置を示している。なお、ダイホルダには熱間鍛造時の鍛造荷重は加わらないものである。
前記上金型セット3は、前記上ダイホルダ1を介して上金型セット保持部6に取り付けられ、及び前記下金型セット5は、前記下ダイホルダ9を介して下金型セット保持部7に取り付けられている。図1では、上金型セット保持部6と下金型セット保持部7は中間台として示され、クランプ8と位置決め締結部品(図示せず)により中間台(上金型セット保持部6)に保持されるが、中間台が無い場合は、熱間鍛造装置本体に直接保持され、熱間鍛造装置本体が上金型セット保持部6と下金型セット保持部7となる。
なお、本発明で言う「上金型セット」「下金型セット」とは、上金型2または下金型4とダイホルダ(1または9)との組立て体を言う。
また、本発明で言う、「上金型」「下金型」は一体物であっても良いし、それぞれ複数部材に分割(複数個の金型片)して、その金型片の組合わせによる組立て体であっても良いが、何れの構造としても鍛造用素材を所定の形状とする作業面には、所定の形状が型彫された成形面を有している。
なお、図1では、上金型セット保持部6及び下金型セット保持部7側から鍛造用素材を加工する作業面側に向かって、ハードプレート11、母型12及び成形型13の3つの金型片を少なくとも有する構造体として示している。この場合、ハードプレート11は、熱間鍛造時に母型12及び成形型13に対して上金型セット保持部6と下金型セット保持部7からの荷重を均等に加え、母型と同等か、若しくは安価な材質として金型製作費用を低減するものであり、母型12底面の面積以上を有するものである。母型12と成形型13とを分割するのは、一つには分割することで製造が容易になることと、もう一つには母型と成形型とを分割することで、熱間鍛造前にそれぞれの金型片を予熱しやすくなるためである。
例えば、母型と成形型とが一体化している場合、大型間鍛造装置に用いようとするとその重量も大きくなり、予熱時間が大幅に長くなる。そこで、分割することにより所定の予熱温度に金型の温度を高める時間が短くすることもできる。また、例えば、母型と成形型とを別な材質とした場合、予熱温度を個別に設定することも可能である。更に、分割型(複数個の金型片)の組立て体とすると、鍛造荷重が大きく加わる成形型を高強度材とし、その他の母型やハードプレートは成形型と比較してやや強度を落として安価な材質で構成することも可能となる。これにより、金型製作費用の低減をはかることができるため、好ましい。
なお、上金型と下金型の断面形状は、成形型を備える成形面(作業面)から上金型セット保持部6や下金型セット保持部7に向かって漸減するような形状は避けるべきである。これは、本発明が対象とする熱間鍛造用金型装置は、数万トン規模の大型根間鍛造装置に使用するものであるため、成形型を備える成形面(作業面)から上金型セット保持部6や下金型セット保持部7に向かって漸減するような形状とすると、熱間鍛造時に上金型や下金型がダイホルダに接触するなどして、ダイホルダに局所的な応力が発生し、ダイホルダが破損しやすくなる。そのため、ダイホルダ自体の強度を高くする必要もあり、ダイホルダの大型化や高強度化により、ダイホルダの製造コストが高くなる。
また、本発明の重要な特徴として、前記上金型2の底面側と前記上金型側の中間台(上金型セット保持部6)との間に、中間台(上金型セット保持部6)の温度上昇を抑制する温度上昇抑制部14を備えている。中間台の温度が上昇することは、上金型2からの伝熱による抜熱量が大きく、実際に鍛造用素材を所定の形状に成形する上金型の温度が低下するということである。そのため、熱間鍛造時の鍛造荷重が大きくなったり、熱間鍛造時に硝子潤滑を用いた場合では、潤滑性能の劣化につながる場合がある。また、上金型2から中間台(上金型セット保持部6)へ熱の移動が過度に生じる場合、中間台や熱間鍛造装置本体の上金型セットと接触する部分の強度が低下するおそれもある。
そこで、本発明では上金型2と中間台(上金型セット保持部6)との間に温度上昇抑制部14を設けて中間台(上金型セット保持部6)の温度上昇を抑制し、上金型からの抜熱量を少なくして上金型の温度低下を抑制する。温度上昇抑制部14は、例えば、シート状の硝子繊維等を用いても良いが、空隙とするのが好ましい。空隙であれば、例えば、熱間鍛造の待機時には上金型の底面(図1ではハードプレート11)と中間台(上金型セット保持部6)との間の空隙により中間台(上金型セット保持部6)の温度上昇抑制部として機能し、熱間鍛造時には中間台(上金型セット保持部6)と上金型との空隙はほぼ無くなり所定の熱間鍛造が行える。なお、図1では、上金型2はダイホルダ1の段差に引っ掛けるようにして垂直方向に支持されて、上方の空隙の分だけ移動可能となっている。
また、空隙を設ける場合は、熱間鍛造待機中において、上金型底面と中間台(上金型セット保持部6)との間に0.1〜50mm程度の空隙部を設けておけば十分である。好ましい空隙部の下限は0.3mmであり、より好ましい下限は0.5mmであり、さらに好ましくは1mmである。また、好ましい空隙部上限は5mmである。過度に大きな空隙部を設けると鍛造精度が悪くなるためである。
なお、前述した中間台(上金型セット保持部6)の温度上昇の問題は、下金型側でも生じる。そのため、下金型用の前記ハードプレート11と下金型セット保持部との間に、前記下金型からの伝熱による前記下金型セット保持部7の温度上昇を抑制する目的で、下金型4においては熱伝導率の低い材料を用いることが好ましい。中でも、例えば、シート状の硝子繊維(断熱材15)等を用いるのが好ましい。
なお、図1に示すように、成形型13は母型12とは別な金型片であることから、最終製品の形状が変化した場合でも成形型13のみを変更することにより、所望の形状に熱間鍛造が行える。入子型の変更のみで最終製品の形状を所望の形状とできることから、金型製作費用の低減にもつながる。勿論、更に分割して型彫り面の箇所を別な入子型としても良い。
また、本発明では、前記上金型2の外周面と前記ダイホルダ1の内周面との間にダイホルダの温度上昇を抑制可能な温度上昇抑制部14を備える。このダイホルダの温度上昇抑制部14においても、空隙であることが好ましい。この理由の一つには、大型熱間鍛造装置に用いるダイホルダはその寸法、重量も大きなものとなる。そこで、空隙を設けてダイホルダの温度上昇を抑制することで、上金型からの抜熱量を少なくして上金型の温度低下を抑制することができる。また、熱間鍛造中や熱間鍛造前の保熱中において、上金型が熱による膨張を起こしたときに、空隙部が緩衝部として機能してダイホルダの内側にかかる応力を低減することができる。また、熱間鍛造中には、大きな鍛造応力によって金型が変形するが、空隙があることでダイホルダの変形が防止でき、ダイホルダの寿命低下を抑制することができる。また、ダイホルダを高強度材で作製する必要もなくなり、ダイホルダの作製費用も低減することができる。
そのため、ダイホルダの温度上昇抑制部14としては、熱間鍛造中においても空隙を維持したままの空間を備えておくのが好ましく、温度上昇を抑制すると共に、上金型とダイホルダとの熱膨張、上金型の変形量も勘案して、上金型2とダイホルダ1との間に1〜40mm程度の空隙を設けることが好ましい。この空隙の広さは上金型の寸法によって変化させるのが好ましく、例えば、上金型の直径が1000〜2000mm程度であれば1〜20mm程度とし、上金型の直径が2000mmを超えると5〜40mm程度とすると良い。上金型2の外周面と前記ダイホルダ1の内周面との空隙を均等に保つために、本発明では位置決め締結部品(図示せず)により、所定の位置に上金型を固定すると良い。
なお、前述したダイホルダの温度上昇や熱膨張の問題は、下金型側でも生じるため、下金型においても上金型と同様な空隙を設けておくことが好ましい。また、ハードプレートを含む上下の金型(2,4)とダイホルダとの全て間に空隙を設けておき、前述の熱膨張に起因する問題を生じることを防止しても良い。
以上、説明する本発明の大型の熱間鍛造用金型装置によれば、熱間鍛造用金型の温度低下を抑制することが可能となる。
次に、前述の本発明の熱間鍛造用金型装置を用いた熱間鍛造方法について図を用いて説明する。
先ず、「予熱工程」として、上金型及び下金型を予熱する。なお、上金型及び下金型がハードプレート11、母型12、成形型13とに分割可能な構造となっている場合は、材質に応じてそれぞれの金型片を別な温度で予熱しても良いし、各金型片を組み立てた状態で所定の温度に予熱しても良い。
予熱の温度は材質によって異なり、例えばJISで規定される熱間金型用鋼であれば、焼戻し温度マイナス20℃程度を上限に予熱を行う。また、例えば、析出強化型Ni基の超耐熱合金であれば、時効処理温度マイナス20℃程度を上限とする。なお、特別な難加工性材料を熱間鍛造する場合は、固溶強化型のNi基超耐熱合金を用いれば鍛造温度マイナス100℃程度まで予熱することも可能である。
次に、「金型組み立て工程」として、予熱したそれぞれの金型をダイホルダ1で固定し、上金型セット3及び下金型セット5とする。
そして、中間台(上金型セット保持部6、下金型セット保持部7)と上金型セット3及び下金型セット5のダイホルダとをクランプ8により固定して図1に示す熱間鍛造用金型装置とする。このとき、前述したように、上金型側の温度上昇抑制部14は、上金型底面と中間台(金型セット保持部6)との間に0.1〜50mm程度の空隙を設けておく。また、下金型4と下金型側ハードプレート11と中間台1との間には、例えば、シート状の硝子繊維を設けて中間台温度上昇抑制部とする。更に、上金型2の外周面と前記ダイホルダ1の内周面との間には1〜40mm程度の空隙を設けておく。
次に、「成形型保熱工程」として、前記金型組み立て工程により組み立てられた上金型セット3と下金型セット5の間に成形面を保熱する保熱体16を挿入して成形面を保熱する。
保熱体としては以下の幾つかの方法を単独または組合わせて用いることができる。
例えば、
(1)予め上金型セット3と下金型セット5とで鍛造した鍛造品を加熱炉で加熱して、前記の鍛造品を上金型セット3と下金型セット5との間に挟み込んで金型の成形面を保熱する方法。
(2)インダクションヒータや赤外線ヒータ等のヒータによって加熱する方法。
(3)バーナ等の火炎によって加熱する方法。
上記の(1)の方法では、成形面の形状と保熱体との形状が一致しているため、金型の成形面全体を保熱できる利点がある。また、その保熱体の体積を大きくしておけば、十分な保熱力を確保できる。
また、上記の(2)の方法では、鍛造直前まで保熱できる利点がある。特に、非酸化性雰囲気で行う恒温鍛造などには有効である。
また、上記の(3)の方法では、特別な設備が必要でなく、簡便に保熱できる利点がある。
上記の(1)〜(3)の方法のうち、1つ又は2つ以上を組合わせて所定の温度に保熱すると良い。なお、保熱温度は通常の熱間プレス等の熱間鍛造では200〜400℃で十分である。また、恒温鍛造等の熱間鍛造では600〜1000℃で十分である。ホットダイ鍛造では400〜600℃で十分である。
そして、本発明では「熱間鍛造工程」として、前記保熱体16を取り除き、次いで、熱間鍛造温度に加熱した鍛造用素材17を上下金型セットを用いて熱間鍛造し、熱間鍛造材18を得る。
熱間鍛造温度は、例えば、Ni基超耐熱合金やTi合金を鍛造用素材として熱間鍛造を行う場合には、950〜1100℃を熱間鍛造温度とすれば良い。
この熱間鍛造時には、図2に示すように、中間台(上金型セット保持部6)の温度上昇抑制部14の空隙は0.1mm以下となり、熱間鍛造を行うことができる。そして、次の熱間鍛造までの待機時間中は、再び中間台(上金型セット保持部6)の温度上昇抑制部14の空隙が生じて、熱間鍛造用金型の保温が効率よく行える。
図1に示すような熱間鍛造用金型装置を用意した。用意した上下の金型セットの総重量はそれぞれ約35トンであり、5万トン規模の大型熱間鍛造装置のものである。
先ず、JISで規定されるSKD61(熱間金型用鋼)製の成形型13を550℃に予熱した。また、JISで規定されるSKT4(熱間金型用鋼)製の母型12及びJISで規定されるSKT4(熱間金型用鋼)製ハードプレート11を450℃で予熱した。
次に、予熱した母型12、成形型13及びハードプレート11を組合わせて上金型2と下金型4とし、さらにそれぞれの金型をダイホルダ1で固定し、上金型セット3及び下金型セット5とした。
そして、中間台(上金型セット保持部6、下金型セット保持部7)と上金型セット3及び下金型セット5のダイホルダとをクランプ8により固定して図1に示す熱間鍛造用金型装置とした。なお、上金型側の温度上昇抑制部14は、上金型底面に相当するハードプレート11の中間台に対向する面と中間台(金型セット保持部6)との間に約1mmの空隙を設けた。空隙内には、空隙の効果を確認する目的で、空隙部のみの箇所と、厚さが約0.8mmの耐熱温度が1000℃の硝子繊維でなる断熱シート(断熱材15)の箇所を設け、断熱シートは図3のように配置した。また、下金型4と下金型側ハードプレート11と中間台7との間にも耐熱温度が1000℃の0.8mmの硝子繊維でなる断熱シートを設けた。
更に、上金型2のハードプレート11と上金型用のダイホルダ6との間の空隙は約10mmであり、上下方向で接触している部分以外の上金型2の母型12と上金型用のダイホルダ6との間にも同様の空隙を設けた。
次に、組み立てた上金型セット3と下金型セット5の間に成形面を保熱する保熱体16を挿入して成形面を保熱した。
保熱体は、予め上金型セット3と下金型セット5とで鍛造した鍛造品を加熱炉で約1000℃に加熱して、前記の加熱した鍛造品を上金型セット3と下金型セット5との間に挟み込んで成形型の成形面を保熱した。
続いて、前記保熱体16を取り除き、次いで、熱間鍛造温度である、1000℃に加熱したニッケル基超耐熱合金製の鍛造用素材17を上下金型セット間に配置して熱間鍛造して熱間鍛造材18のディスクを得た。
この熱間鍛造時には、図2に示すように、中間台(上金型セット保持部6)の温度上昇抑制部14の空隙は0.1mm以下となり、熱間鍛造を行うことができた。そして、次の熱間鍛造までの待機時間中は、再び中間台(上金型セット保持部6)の温度上昇抑制部14の空隙が広がって、熱間鍛造用金型を保温して、再び熱間鍛造を行った。
上金型セットを中間台(上金型セット保持部6)より取り外し、中間台(上金型セット保持部6)の上金型セットが装着されていた面の温度を接触式温度計を用いて測定した。測定点は図3に示す。その結果、断熱シートを用いた箇所(測定点D)では124℃まで温度が上昇していた。一方、本発明の空隙を設けた部分は、測定点Aが87.7℃、測定点Bが99.0℃、測定点Cが96℃であった。なお、図3は上金型2を熱間鍛造機にセットした状態で、上金型2側から見た模式図である。
この結果から、断熱材で保護した場所と比較して、温度上昇抑制部14の空隙のみとした方が伝熱が抑制されていることが分かった。このことは金型側から熱間鍛造機本体側への熱移動が抑制されることを示しており、結果として金型温度低下を抑制することができるものである。そのため、本発明の熱間鍛造用金型装置を用いて熱間鍛造を行った場合、熱間鍛造用金型装置の金型の成形面の温度低下が抑制できることから、鍛造荷重を低くでき、均質な熱間鍛造品を効率よく製造することが可能となるものである。
1 上ダイホルダ
2 上金型
3 上金型セット
4 下金型
5 下金型セット
6 上金型セット保持部(中間台)
7 下金型セット保持部(中間台)
8 クランプ
9 下ダイホルダ
11 ハードプレート
12 母型
13 成形型
14 温度上昇抑制部
15 断熱材
16 保熱体
17 鍛造用素材
18 熱間鍛造材

Claims (5)

  1. 上金型と前記上金型を内周側に保持している上ダイホルダとを備える上金型セットと、
    下金型と前記下金型を内周側に保持している下ダイホルダとを備える下金型セットと、を備える熱間鍛造用金型装置であって、
    前記上金型セットは、前記上ダイホルダを介して上金型セット保持部に取り付けられ、及び前記下金型セットは、前記下ダイホルダを介して下金型セット保持部に取り付けられており、
    前記上金型及び下金型は成形面を備え、
    前記上金型底面と前記上金型セット保持部との間、及び、前記上金型外周面と前記ダイホルダの内周面との間に、前記上金型からの伝熱による前記上金型セット保持部及びダイホルダの温度上昇を抑制する温度上昇抑制部を備えることを特徴とする熱間鍛造用金型装置。
  2. 前記温度上昇抑制部は空隙であることを特徴とする請求項1に記載の熱間鍛造用金型装置。
  3. 前記上金型底面と前記上金型セット保持部との間に備えられた前記温度上昇抑制部としての空隙は、前記上金型セットが前記上ダイホルダを介して上金型セット保持部に取り付けられて、前記上金型の成形面が鉛直方向下側に向いている状態で形成されており、かつ前記状態で形成された前記空隙は0.5mm以上であることを特徴とする請求項2に記載の熱間鍛造用金型装置。
  4. 前記上金型及び下金型は、それぞれ複数部材に分割されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の熱間鍛造用金型装置。
  5. 請求項1乃至4の何れかに記載の熱間鍛造用金型装置を用いた熱間鍛造方法であって、
    前記上金型及び下金型を予熱する予熱工程と、
    前記予熱した上金型及び下金型を前記上ダイホルダ及び前記下ダイホルダと組み立てて、前記上金型セット及び前記下金型セットとし、前記上金型セット保持部及び下金型セット保持部に取り付ける金型組み立て工程と、
    前記金型組み立て工程により組み立てられた前記上金型セットと前記下金型セットの間に保熱体を挿入して前記上金型及び下金型の成形面を保熱する金型保熱工程と、
    前記保熱体を取り除き、次いで、熱間鍛造温度に加熱した鍛造用素材を上下金型セットを用いて熱間鍛造する熱間鍛造工程と、
    を含むことを特徴とする熱間鍛造方法。

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