JP2018164925A - 鍛造製品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】大型鍛造素材を熱間鍛造する場合にも鍛造中の過度の荷重増加を抑制することが可能な鍛造製品の製造方法を提供する。【解決手段】鍛造素材を下型と上型を用いて熱間鍛造する鍛造製品の製造方法であって、下型の型彫り面の少なくとも一部を第1ガラス潤滑剤で被覆する第1工程と、第1工程を経た下型を加熱する第の工程と、鍛造素材の少なくとも一部を第2ガラス潤滑剤で被覆する第3工程と、第3工程を経た鍛造素材を第2工程における下型の加熱温度よりも高い温度に加熱する第4工程と、第2工程を経た下型の型彫り面上に、第4工程を経た鍛造素材を載置し、下型と上型とで熱間鍛造を行う第5工程とを有し、第1ガラス潤滑剤と第2ガラス潤滑剤とは互いに材質が異なり、第2ガラス潤滑剤は第4工程において軟化して鍛造素材表面に留まり、第1ガラス潤滑剤及び第2ガラス潤滑剤が軟化している状態で第5工程における熱間鍛造を開始する鍛造製品の製造方法。【選択図】 図1

Description

本発明は、航空機ジェットエンジン用のタービンディスク等の鍛造製品の製造方法に関する。
近年、中・大型航空機用ジェットエンジン、発電所用蒸気タービン等を構成する大型の熱間型打鍛造製品の需要が大きく伸びている。例えば、航空機ジェットエンジンのタービンディスクは、ニッケル基超耐熱合金やチタン合金製であり、回転体状で直径1メートルを超える大きさがある。これらの大型鍛造製品を製造するには、熱間型打鍛造中150MNを超える非常に大きな加圧力を必要とする。そのため熱間鍛造装置も大型のものが必要であり、500MNクラスの大型熱間鍛造装置も用いられている。
ところで、上記のニッケル基超耐熱合金やチタン合金は熱間鍛造が難しい難加工性材として知られており、熱間鍛造時の鍛造荷重も著しく大きくなる。そのため、潤滑剤を用いて熱間鍛造時の摩擦を低減し、鍛造荷重を小さくする試みが行われている。例えば、特開平2−104435号公報(特許文献1)には、チタン合金素材を、加熱した金型を用いて加圧成形する際に、素材表面に予めガラス系およびボロンナイトライド系の潤滑剤を二重にコーティングしておいて加圧成形する、チタン合金の熱間成形のための潤滑方法の発明が開示されている。
特開平2−104435号公報
しかしながら、数百MNクラスの大型熱間鍛造装置を用いて大型の鍛造素材を熱間鍛造する場合には、特許文献1に開示された構成だけでは潤滑が不十分であり、熱間鍛造の終盤に荷重が過度に大きくなってしまうという問題に直面した。
かかる問題に鑑み、本発明は、大型鍛造素材を熱間鍛造する場合にも鍛造中の過度の荷重増加を抑制することが可能な鍛造製品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述の荷重増加が鍛造中の潤滑切れによることを知見し、かかる潤滑切れを抑制する方法について鋭意検討し、本発明に想到した。
すなわち本発明は、鍛造素材を下金型と上金型を用いて熱間鍛造する鍛造製品の製造方法であって、前記下金型の型彫り面の少なくとも一部を第1のガラス潤滑剤で被覆する第1の工程と、前記第1の工程を経た下金型を加熱する第2の工程と、前記鍛造素材の少なくとも一部を第2のガラス潤滑剤で被覆する第3の工程と、前記第3の工程を経た鍛造素材を前記第2の工程における下金型の加熱温度よりも高い温度に加熱する第4の工程と、前記第2の工程を経た下金型の型彫り面上に、前記第4の工程を経た鍛造素材を載置し、前記下金型と前記上金型とで熱間鍛造を行う第5の工程とを有し、前記第1のガラス潤滑剤と前記第2のガラス潤滑剤とは互いに材質が異なり、前記第2のガラス潤滑剤は前記第4の工程において軟化して前記鍛造素材表面に留まり、前記第1のガラス潤滑剤および第2のガラス潤滑剤が軟化している状態で前記第5の工程における熱間鍛造を開始することを特徴とする。
また、別の本発明は、鍛造素材を、型彫り面を有する下金型と上金型を用いて熱間鍛造する鍛造製品の製造方法であって、前記下金型の型彫り面の少なくとも一部を第1のガラス潤滑剤で被覆する第1の工程と、前記第1の工程を経た下金型を加熱する第2の工程と、前記鍛造素材の少なくとも一部を第2のガラス潤滑剤で被覆する第3の工程と、前記第3の工程を経た鍛造素材を前記第2の工程における下金型の加熱温度よりも高い温度に加熱する第4の工程と、前記第2の工程を経た下金型の型彫り面上に、前記第4の工程を経た鍛造素材を載置し、前記下金型と前記上金型とで熱間鍛造を行う第5の工程とを有し、前記第1のガラス潤滑剤と前記第2のガラス潤滑剤とは互いに材質が異なり、前記第1のガラス潤滑剤は前記第5の工程における熱間鍛造開始時の前記下金型の型彫り面温度に相当する温度での粘度が1×10Pa・s以下であり、前記第2のガラス潤滑剤は前記第4の工程における鍛造素材の加熱温度に相当する温度での粘度が1×10Pa・s以上、かつ前記第5の工程における熱間鍛造開始時の前記鍛造素材の表面温度に相当する温度での粘度が1×10Pa・s以下であることを特徴とする。
また、上記各鍛造製品の製造方法において、前記下金型および上金型は、それぞれ型彫り面に肉盛層としてNi基超耐熱合金層を有することが好ましい。
さらに、前記第2の工程は、予め加熱されたダミー材を下金型および上金型で挟持する金型加熱工程を含むことが好ましい。
さらに、前記下金型の型彫り面は部分的に前記第1のガラス潤滑剤で被覆され、前記第5の工程において、前記鍛造素材の端部は、前記第1のガラス潤滑剤で被覆された範囲内で前記下金型の型彫り面上を摺動することが好ましい。
さらに、前記鍛造素材は回転体状であることが好ましい。
さらに、前記第5の工程において、前記鍛造素材の端部は、前記下金型の型彫り面上を200mm以上変位することが好ましい。
本発明の熱間鍛造方法によれば、大型の鍛造素材を熱間鍛造する場合であっても、潤滑切れを抑制し、鍛造荷重を低減することが可能となる。
本発明に係る実施形態で用いる金型の一例を示す模式図である。 本発明に係る実施形態で用いる金型の他の例を示す模式図である。 本発明に係る実施形態で用いる金型の他の例を示す模式図である。 第1のガラス潤滑剤の粘度の温度依存性の一例を示す図である。 第2のガラス潤滑剤の粘度の温度依存性の一例を示す図である。
本発明は、下金型の型彫り面の少なくとも一部を第1のガラス潤滑剤で被覆する第1の工程と、第1の工程を経た下金型を加熱する第2の工程と、鍛造素材の少なくとも一部を第2のガラス潤滑剤で被覆する第3の工程と、第3の工程を経た鍛造素材を前記第2の工程における下金型の加熱温度よりも高い温度に加熱する第4の工程と、第2の工程を経た下金型の型彫り面上に、第4の工程を経た鍛造素材を載置し、下金型と上金型とで熱間鍛造を行う第5の工程とを有する、鍛造製品の製造方法である。すなわち、本発明は、鍛造素材を、型彫り面を有する下金型と上金型を用いて熱間鍛造する、いわゆる熱間型打ち鍛造に係るものである。
第1のガラス潤滑剤と第2のガラス潤滑剤とは互いに材質が異なる点が、本発明の重要な特徴の一つである。さらに、かかる特徴に関連して、本発明には以下の第一の側面および第二の側面がある。
第一の側面とは、第2のガラス潤滑剤は第4の工程において軟化して鍛造素材表面に留まり、第1のガラス潤滑剤および第2のガラス潤滑剤が軟化している状態で第5の工程における熱間鍛造を開始する点である。
また、第二の側面とは、第1のガラス潤滑剤は第5の工程における熱間鍛造開始時の前記下金型の型彫り面温度に相当する温度での粘度が1×10Pa・s以下であり、前記第2のガラス潤滑剤は前記第4の工程における鍛造素材の加熱温度に相当する温度での粘度が1×10Pa・s以上、かつ前記第5の工程における熱間鍛造開始時の前記鍛造素材の表面温度に相当する温度での粘度が1×10Pa・s以下である点である。これらの特徴により、鍛造の終盤まで潤滑剤の効果が維持されるため、熱間鍛造中の潤滑切れを抑制し、鍛造荷重を低減することが可能となる。
以下、本発明に係る鍛造製品の製造方法の実施形態を、図を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本実施形態において説明する各構成は、その機能を損なわない限りにおいて互いに組み合わせることが可能である。
本実施形態でいう熱間鍛造には、熱間プレス、恒温鍛造、ホットダイ等も含む。熱間鍛造の中でも、特に大型の熱間プレス機を用いた熱間鍛造への適用が好適である。例えば400MN以上の大型の熱間プレスであっても、直径1mを超える大型の製品を鍛造する場合には荷重能力に余裕がなくなるため、鍛造荷重低減が可能な本発明が特に有効となる。
鍛造製品は、タービンディスク、タービンブレード等の、鍛造を経て製造される製品であり、鍛造素材は最終的な鍛造製品形状を得るための予備成形体である。鍛造素材には、ビレットの他、複数回(複数ブロー)の熱間鍛造を行う場合の途中段階の中間素材も含まれる。鍛造素材の材質としては、例えばNi基超耐熱合金、Ti合金等を用いることができる。
図1に本実施形態の鍛造製品の製造方法で用いる金型の一例を示す。ここでは、広い範囲で潤滑切れを起こしやすい円盤状鍛造製品用の金型を例として説明する。円盤状鍛造製品の場合のように鍛造素材が回転体状である場合、鍛造素材は全方向に均一に変形する必要があり、変形範囲も広い。そのため上述のように潤滑切れが生じやすい。潤滑切れを抑制することができる本発明は、かかる場合に特に有効である。
金型100は、下金型1と、下金型1に対向して配置された上金型2とで構成されている。図1の上下方向(z方向)が圧下方向である。なお、図1では下金型1および上金型2をそれぞれ固定するダイプレート、プレス機本体の図示は省略している。下金型1および上金型2は、製品形状に応じた所定の凹凸等を形成した型彫り面3を備え、下金型1の型彫り面と上金型2の型彫り面との間に製品形状に対応したキャビティが形成される。型彫り面3は、熱間鍛造後の、最終的な製品形状への加工代を含めて設計、加工された面である。
金型100の母材の材質はこれを特に限定するものではなく、強度とコストを勘案して、JIS G4404で規定されるSKD61、SKT4等の熱間金型用鋼やその改良鋼を用いることができる。
また、下金型1および上金型2は、それぞれ型彫り面3に肉盛層4としてNi基超耐熱合金層を有することが好ましい。かかる構成は、Ni基超耐熱合金、Ti合金等の難加工性材の熱間鍛造を行う場合に好適である。これは、以下の理由による。難加工性材を熱間鍛造する場合には、鍛造温度は例えば1000℃以上になり、金型表面(作業面)が高温に晒される。一方、鍛造温度が熱間金型用鋼の焼戻し温度を超える場合には、熱間金型用鋼が軟化してしまう。これに対して、作業面となる型彫り面に高温強度に優れるNi基超耐熱合金の肉盛層を形成すれば、肉盛層は金型の母材の軟化防止層として機能する。また、熱伝導率が低いため、肉盛層には予熱した金型の保熱の効果もある。また、別な効果として、Ni基超耐熱合金層と第1のガラス潤滑剤とは、金型の温度が高くなったときにその接合界面でNi基超耐熱合金に含まれる元素による自己酸化被膜と、第1のガラス潤滑剤に含まれる元素とが化学反応を生じ、第1のガラス潤滑剤の成分が若干変化して、第1のガラス潤滑剤の粘度を高める効果があることが分かった。これにより、熱間鍛造前の金型の昇温時において、第1のガラス潤滑剤の粘度の過度な低粘度化を抑制することができる。
さらに、肉盛層は作業面の耐酸化性を高め、高強度化にも寄与する。なお、Ni基超耐熱合金とは、質量%でNiを最も多く含有し、γ´相等の金属間化合物を析出させて合金を強化(硬化)することが可能な合金である。例えば、Udimet520相当合金(UDIMETはSpecial Metals社の登録商標)、Udimet720相当合金、Waspaloy相当合金(WaspaloyはUnited Technologies社の登録商標)、Alloy718相当合金、を用いることができる。肉盛層は、例えば、ワイヤ状、粉末状等の合金を用いた溶接によって形成することができる。
図1に示す実施形態では、下金型1および上金型2は、それぞれ型彫り面3の全面に肉盛層4を有しているが、型彫り面の一部に肉盛層を有する構成も適用可能である。例えば高温になりやすい部位だけに肉盛層を形成することでコストを削減することができる。
上述の鍛造素材、金型を用いて行う鍛造製品の製造方法の各工程について以下に説明する。
<第1の工程>
第1の工程では、下金型1の型彫り面3の少なくとも一部を第1のガラス潤滑剤5で被覆する。図1に示すように下金型の型彫り面3の全体を第1のガラス潤滑剤5で被覆すれば、潤滑性はより確実になるが、図2に示すように潤滑切れを生じやすい部分等を部分的に第1のガラス潤滑剤5−2で被覆することでも十分な効果を得ることができる。図2(a)は図1と同様に上下非対称の型彫り面を持つ金型200において、下金型1の型彫り面3を部分的に第1のガラス潤滑剤5−2で被覆した例、図2(b)は上下対称的な型彫り面を持つ金型201において、下金型1の型彫り面3を部分的に第1のガラス潤滑剤5−2で被覆した例である。潤滑剤は、必ずしも、型彫り面全体に設ける必要はない。第1のガラス潤滑剤5を型彫り面3の一部に用いることで、潤滑剤の使用量の低減、被覆工程の短縮にも寄与する。例えば、円盤状の鍛造素材6を熱間鍛造する場合であれば、円盤中央に対応する型彫り面の中心側を除く、円環状の領域を第1のガラス潤滑剤で被覆することもできる。具体的には、少なくとも、後述する第5の工程において鍛造素材の端部が摺動する範囲を含む領域を第1のガラス潤滑剤で被覆することが好ましい。なお、下金型の型彫り面3に肉盛層4が設けられている場合は、ガラス潤滑剤はかかる肉盛層4上から型彫り面3を覆う。
下金型に対して型彫り面の被覆を行うことで、必要な鍛造荷重低減の効果が得られるため、工程を簡略化する観点から下金型の型彫り面の被覆を行えば十分であるが、上金型の型彫り面を第1のガラス潤滑剤で覆うことも可能である。なお、前述したように、第1のガラス潤滑剤と下金型との接合界面において、加熱による化学反応で第1のガラス潤滑剤の成分を変化させるには、下金型を構成する金属材料を露出しておくのが好ましい。そのため、第1のガラス潤滑剤を被覆する場所においては、例えば、サンドブラストやグラインダ等により、金属材料表面を確実に露出させておくのが好ましい。
第1のガラス潤滑剤の被覆方法は、これを特に限定するものではない。例えば、ガラス組成物と水等の媒体を含むスラリー状または懸濁状の混合物を、塗布、噴霧等の方法によって皮膜として型彫り面に配置することができる。作業・設備の簡略化の観点からは塗布が、皮膜の厚さの均一性の観点からは噴霧が好ましい。塗布等の後、乾燥によって不要な媒体が除去され、型彫り面が第1のガラス潤滑剤で被覆される。室温の下金型に対して第1のガラス潤滑剤の被覆を行うことも可能であるが、下金型を50〜200℃に予熱しておき、予熱された下金型をガラス潤滑剤で被覆することが好ましい。50℃以上に予熱することで塗布後に速やかに媒体が蒸発除去できるからである。一方、200℃を超えると塗布直後に瞬間的に媒体が蒸発してガラス潤滑剤が固化してしまい、特に均一な膜厚に塗布することが難しくなるからである。また、人手により塗布を実施する場合、金型からの熱で作業が困難となるからである。より好ましい下金型の予熱温度の下限は80℃であり、また、より好ましい下金型の予熱温度の上限は120℃である。
型彫り面に配置される第1のガラス潤滑剤の被覆の厚さは、潤滑能が発揮される限りにおいてこれを特に限定するものではないが、鍛造荷重の増大をより確実に抑制するためには30μm以上であることが好ましい。この場合、熱間鍛造時に潤滑切れを起こしやすい箇所(例えば型彫り面の端部)において30μm以上の被覆厚さを確保することが好ましい。さらには、型彫り面全体において平均30μm以上の被覆厚さを確保することが好ましく、型彫り面全体において被覆厚さが30μm以上であることがさらに好ましい。型彫り面全体の被覆厚さを測定する場合は、少なくとも型彫り面中央、端部およびそれらの中間点での測定点を含む複数の点で評価する。一方、第1のガラス潤滑剤を過度に厚くしても潤滑能の大幅な向上は期待できないため、コスト抑制の観点から厚さは300μm以下であることが好ましい。なお、第1のガラス潤滑剤の厚さは、渦電流膜厚計により測定すればよい。
<第2の工程>
第2の工程では、第1の工程を経て、型彫り面の少なくとも一部が第1のガラス潤滑剤5で被覆された下金型1を加熱する。第2の工程では、下金型1とともに上金型2も一緒に加熱することが好ましい。下金型1の加熱温度、第1のガラス潤滑剤5の材質等を選択することによって、第1のガラス潤滑剤5を軟化させ、第5の工程における熱間鍛造開始時の下金型の型彫り面温度に相当する温度での粘度を1×10Pa・s以下とする。熱間鍛造中の鍛造素材の温度低下を防止するためには、金型は加熱炉等を用いて250℃以上で、かつ熱間金型用鋼の焼戻し温度未満に温度域に予熱して鍛造に供することが好ましい。例えば、SKD61、SKT4等の熱間金型用鋼であれば、350℃〜550℃が代表的な加熱温度である。なお、前記の下金型の加熱において、母材に熱間金型用鋼を用いて、型彫り面にNi基超耐熱合金を肉盛りした構造のものであっても、母材の熱間金型用鋼の焼戻し温度未満の温度域で加熱するのが好ましい。また、型彫り面にNi基超耐熱合金を肉盛りした場合、Ni基超耐熱合金の自己酸化被膜形成による第1のガラス潤滑剤との化学反応を生じさせるには、加熱炉内の酸素を十分に確保するのが好ましく、下金型の型彫り面は少なくとも大気雰囲気下に露出した状態で加熱を行うことが好ましい。
金型100(下金型1および上金型2)の加熱は例えば予熱炉を用いて行われ、金型全体が所定の加熱温度(以下、単にTwhともいう)に加熱される。予熱炉から取り出した下金型100はダイプレートを介してプレス機に固定される(これを、以下、金型取付工程ともいう)。プレス機に固定された金型の表面温度は徐々に低下する。
whの好ましい範囲は、500℃以上、550℃以下である。Twhの下限はより好ましくは530℃以上である。熱間金型用鋼を単純に加熱してTwhを上げる場合には、上述のように軟化による制限がある。これに対して、上述の肉盛層を設けることで、以下の金型加熱工程を実施することができる。かかる金型加熱工程とは、金型表面温度を高く保つために、予め加熱されたダミー材を下金型1および上金型2で挟持する工程である。型彫り面3の表面温度は熱間金型用鋼の強度を劣化させない範囲でなるべく高くすることが好ましい。例えば、900℃以上に加熱したダミー材を用いることで、型彫り面表面を500℃以上の温度に加熱することができる。肉盛層を設けることで、型彫り面表面温度をTwhよりも高い温度、例えば580℃以上、さらには600℃以上にすることも可能である。かかるダミー材による加熱は、肉盛層またはその近傍の温度だけを上昇させ、金型の母材の温度上昇を回避できるため、加熱炉による金型加熱温度よりも高い温度まで型彫り面温度を高めることもできる。
円盤状等の単純な形状のダミー材を用いることもできるが、均一に、効率的に金型表面を加熱するためには、型彫り面の形状にならった形状を有するダミー材を用いることが好ましい。かかる形状のダミー材は、熱間鍛造に使用する金型を用いて予めダミー素材を成形することで得ることができる。なお、ダミー材による加熱工程を含む場合、金型取付工程は第2の工程の途中に行うこととなる。
予熱炉からの取り出し、ダミー材による加熱、後述する鍛造素材の載置等を経るため、熱間鍛造開始時(圧下開始時)の下金型の型彫り面温度(以下、単にTssともいう)は、加熱温度Twhから変化する。そのため、上述の第1のガラス潤滑剤の粘度は、熱間鍛造開始時(圧下開始時)の下金型の型彫り面温度Tssを基準とする。上述のようにSKD61等の熱間金型用鋼の加熱温度Twhは550℃程度までである一方、熱間鍛造に供する鍛造素材の加熱温度は、後述するように、通常かかるTwhよりも200℃以上高温である。そのため、加熱された鍛造素材を下金型の型彫り面に載置すると、鍛造素材が載置された部分の型彫り面温度は例えばTwhよりも30℃以上上昇する。熱間鍛造開始時の、鍛造素材が載置された部分の下金型の型彫り面温度Tssを測定することが困難な場合は、加熱温度Twh+30℃の温度をTssとみなして以下のように第1のガラス潤滑剤を選定すればよい。
第2の工程では、温度Tssに相当する温度で粘度が1×10Pa・s以下になるガラス潤滑剤を第1のガラス潤滑剤として選定すればよい。温度Tssに「相当する」温度での粘度を用いることの意味は、実際に熱間鍛造開始時の下金型の型彫り面温度(Tss)での粘度を測定することは困難であるため、予め温度Tssを評価または推測しておき、オフラインで温度Tssと同じ温度で粘度を評価するということである。粘度を1×10Pa・s以下とするのは、第1のガラス潤滑剤が軟化している状態で後述する第5の工程における熱間鍛造を開始するためである。上記粘度はより好ましくは1×10Pa・s以下、さらに好ましくは1×10Pa・s以下である。潤滑剤として機能する限りは上述の粘度の下限は特に限定するものではない。但し、型彫り面の形状によっては、粘度が低すぎるとガラス潤滑剤が流動して偏る可能性があるため、10Pa・s以上であることがより好ましい。
<第3の工程>
第3の工程では、鍛造素材6の少なくとも一部を第2のガラス潤滑剤7で被覆する。潤滑切れを生じやすい部分等を部分的に被覆することも可能であるが、鍛造素材6の全体を第2のガラス潤滑剤7で被覆すれば、潤滑性はより確実になる。また、ガラス潤滑剤は断熱効果もあるため、鍛造素材を加熱炉から取出して金型上に載置して鍛造開始されるまでの間での温度低下を抑制できるため、鍛造素材の全体を被覆することが望ましい。
第2のガラス潤滑剤の被覆方法は、これを特に限定するものではない。例えば、ガラス組成物と媒体を含むスラリー状の混合物を、塗布、噴霧、浸漬等の方法によって皮膜として鍛造素材表面に配置することができる。作業・設備の簡略化の観点からは塗布が、皮膜の厚さの均一性の観点からは噴霧が、好ましい。塗布等の後、乾燥によって不要な媒体が除去され、鍛造素材の表面が第2のガラス潤滑剤で被覆される。室温の鍛造素材に対して第2のガラス潤滑剤の被覆を行うことも可能であるが、鍛造素材を50〜200℃に予熱しておき、予熱された鍛造素材をガラス潤滑剤で被覆することが好ましい。50℃以上に予熱することで塗布後に速やかに媒体が蒸発除去できるからである。一方、200℃を超えると塗布直後に瞬間的に媒体が蒸発してガラス潤滑剤が固化してしまい、特に均一な膜厚に塗布することが難しくなるからである。また、人手により塗布を実施する場合、鍛造素材からの熱で作業が困難となるからである。このため、鍛造素材を予熱する場合でも200℃以下にすることが好ましい。より好ましい鍛造素材の予熱温度の下限は70℃であり、更に好ましくは80℃である。また、より好ましい鍛造素材の予熱温度の上限は150℃であり、更に好ましくは120℃である。
鍛造素材の表面に配置される第2のガラス潤滑剤の被覆の厚さは、潤滑能が発揮される限りにおいてこれを特に限定するものではないが、鍛造荷重の増大をより確実に抑制するためには150μm以上であることが好ましい。一方、第2のガラス潤滑剤を過度に厚くすると、鍛造素材を加熱する後述の第4の工程において、第2のガラス潤滑剤が剥離するリスクが高まる。かかる観点から厚さは300μm以下であることが好ましい。なお、第2のガラス潤滑剤の厚さは、渦電流膜厚計により測定すればよい。
この場合、熱間鍛造時に潤滑切れを起こしやすい箇所(例えば端部)において150μm以上の被覆厚さを確保することが好ましい。さらには、鍛造素材の表面全体において平均150μm以上の被覆厚さを確保することが好ましく、鍛造素材の表面全体において被覆厚さが150μm以上であることがさらに好ましい。型彫り面全体の被覆厚さを測定する場合は、少なくとも型彫り面中央、端部およびそれらの中間点での測定点を含む複数の点で評価する。
<第4の工程>
第4の工程では、熱間鍛造のために第3の工程を経た鍛造素材6を加熱する。第2のガラス潤滑剤7の材質に応じて鍛造素材の加熱温度を調整することによって、第2のガラス潤滑剤7を軟化させるとともに、鍛造素材の加熱温度に相当する温度での粘度は1×10Pa・s以上を確保する。第4の工程において、第2のガラス潤滑剤は、その粘度が低すぎると、加熱時に鍛造素材から剥離してしまうおそれがある。鍛造素材の加熱温度での粘度を1×10Pa・s以上にすることで、第2のガラス潤滑剤は軟化したうえで鍛造素材表面に留まることができる。かかる粘度はより好ましくは1×10Pa・s以上である。なお、鍛造素材の加熱温度に「相当する」温度での粘度を用いることの意味は、実際に加熱時の鍛造素材での粘度を測定することは困難であるため、予めオフラインで鍛造素材の加熱温度と同じ温度で粘度を評価するということである。
鍛造素材の加熱温度は鍛造素材の材質に応じて設定すればよい。例えば、Ni基超耐熱合金の場合は850〜1150℃、Ti合金の場合は800〜1100℃が実用的な範囲である。上述のように下金型の加熱温度は、焼戻し温度を超えないように設定されるため、鍛造素材は、第2の工程における下金型の加熱温度よりも高い温度に加熱されることになる。鍛造素材の加熱は例えば加熱炉を用いて行うことができる。
<第5の工程>
第5の工程では、第2の工程を経た下金型1の型彫り面3上に、第4の工程を経た鍛造素材6を載置し、下金型1と上金型2とで熱間鍛造を行う。
第5の工程における熱間鍛造開始時の鍛造素材の表面温度に相当する温度での第2のガラス潤滑剤の粘度を1×10Pa・s以下にする。第2のガラス潤滑剤の粘度を1×10Pa・s以下にするのは、潤滑剤としての機能を発揮するように軟化させるためである。かかる粘度はより好ましくは1×10Pa・s以下、さらに好ましくは1×10Pa・s以下である。なお、熱間鍛造開始時の鍛造素材の表面温度に「相当する」温度での粘度を用いることの意味は、実際に熱間鍛造開始時の鍛造素材での粘度を測定することは困難であるため、予め熱間鍛造開始時の鍛造素材の表面温度を評価または推測しておき、オフラインで熱間鍛造開始時の鍛造素材の表面温度と同じ温度で粘度を評価するということである。
第4の工程を経て加熱炉から取り出した鍛造素材6は、第5の工程において下金型1上に載置されるが、熱間鍛造開始時までに鍛造素材の表面温度が低下する。加熱された鍛造素材の表面温度は、熱間鍛造開始時には、典型的にはNi基超耐熱合金の場合で850℃〜1000、Ti合金の場合で800℃〜900℃の範囲となる。そのため、熱間鍛造開始時の鍛造素材の表面温度に相当する温度での粘度を指標として用いる。Ni基超耐熱合金の場合であれば、熱間鍛造開始時の第2のガラス潤滑剤の粘度は、簡易的、代表的には850℃で評価することもできる。
上述のように第1のガラス潤滑剤と第2のガラス潤滑剤等を選定することで、第1のガラス潤滑剤および第2のガラス潤滑剤が軟化している状態で第5の工程における熱間鍛造を開始することが可能となる。熱間鍛造を開始する際に、第1のガラス潤滑剤および第2のガラス潤滑剤が軟化していることで、潤滑剤の効果が確実になる。また、軟化した第1のガラス潤滑剤が下金型1に存在することで、熱間鍛造の途中での潤滑切れが抑制され、鍛造荷重の低減に大きく寄与する。一組の金型(上金型および下金型)で得ようとする最終形状を、一回の押圧で得ることができる。
第5の工程の上下方向の押圧に伴い鍛造素材は横方向へ変形し、鍛造素材の端部が型彫り面3上を摺動する。図2のように下金型1の型彫り面3が部分的に第1のガラス潤滑剤で被覆されている場合、鍛造素材の端部は、第1のガラス潤滑剤で被覆された範囲内で下金型1の型彫り面3上を摺動することが好ましい。かかる構成によれば、変形に伴って鍛造素材が新たに接する型彫り面部分に潤滑剤が存在するので、下金型1の型彫り面3に第1のガラス潤滑剤を配置する効果は十分に発揮される。一方、熱間鍛造開始時に鍛造素材が接する部分等では、鍛造素材に設けた第2のガラス潤滑剤による潤滑効果が期待できる。かかる部分等を除いて部分的に下金型の型彫り面を第1のガラス潤滑剤で被覆すれば、コスト低減にも寄与する。
上述の実施形態は、鍛造素材の端部が、下金型1の型彫り面3上を200mm以上変位するような大きな変形を伴う熱間鍛造に特に好適である。この場合の変位量は、端部(縁)の部分が型彫り面に沿って変位する量である。例えば、かかる変位量は、上下対称な円盤状の鍛造素材であれば、端部(縁)の水平方向の変位量であり、鍛造前後の径の寸法差に相当する。型彫り面が傾斜している場合の変位量は、かかる傾斜に沿った方向の変位量である。
なお、熱間鍛造工程開始時の鍛造素材の表面温度は、第4の工程における加熱温度よりも若干低くなる。この場合でも、第5の工程における鍛造開始時の鍛造素材の表面温度は、第4の工程の加熱温度に対して温度差が50℃以下であることが好ましい。
上述の実施形態は、潤滑性確保に特に優れることから、新規の金型で最初に鍛造を行う場合、表面手直し・清浄作業を行った直後の金型で鍛造を行う場合に特に有効である。
上述の第1〜第5の工程の前後、途中に他の工程を含むことができる。例えば、第5の工程の後に加工工程を実施することができる。また、第1および第2の工程と、第3および第4の工程とは、その順序は特に限定するものではなく、並行して進めることが好ましい。
<第1および第2のガラス潤滑剤>
第1および第2のガラス潤滑剤についてさらに詳述する。上述のように、第1のガラス潤滑剤と第2のガラス潤滑剤とは互いに材質が異なる点が重要な点の一つである。ガラス潤滑剤はガラス組成物、媒体、添加物等を含む。材質が異なるとは、ガラス組成物の組成が異なることを意味する。第1のガラス潤滑剤の種類としては、例えばリン酸塩系ガラスを主体成分とするガラス潤滑剤を用いることができる。一方、第2のガラス潤滑剤としては例えばホウ珪酸塩系ガラスを主体成分とするガラス潤滑剤を用いることができる。なお、第1のガラス潤滑剤に樹脂バインダを更に添加しても良い。樹脂バインダを添加することにより、第1のガラス潤滑剤と金型との剥離をより確実に防止することができる。
第1のガラス潤滑剤は、第2のガラス潤滑剤よりも低い温度で軟化し、同じ温度で比較すれば第1のガラス潤滑剤の方が粘度が低い。これは金型母材と鍛造素材の加熱温度の違いに対応させるためである。仮に、下金型1と鍛造素材の被覆に材質が同じガラス潤滑剤を用いると、下金型1の加熱温度で軟化するようなガラス潤滑剤では、鍛造素材の加熱温度では粘度が低すぎて鍛造素材表面に留まることができない。一方、鍛造素材の加熱温度で軟化し、かつ鍛造素材表面に留まるガラス潤滑剤では、下金型の加熱温度では十分な軟化状態が得られず、金型側での潤滑効果が得られない。これらを解決するために、第1および第2のガラス潤滑剤として、互いの材質が異なるガラス潤滑剤を用いるのである。
ガラス潤滑剤の粘度の測定は、平行平板法を用いて測定することができる。
概形として図3に示す型彫り面8を有する下金型9およびそれに対置される上金型10を有する金型300を用いた熱間鍛造により、中空の略円錐台形状の鍛造製品を以下の手順で作製した。下金型9および上金型10とも型彫り面8にはNi基超耐熱合金でなる肉盛層11を形成した。
(実施例)
Alloy718(材質)製の、外径880mmの円盤状の鍛造素材を用いた。鍛造素材はサンドブラスト処理を施した。下金型の型彫り面の外周側を円環状に第1のガラス潤滑剤で被覆した(第1の工程)。第1のガラス潤滑剤には、リン酸塩系ガラス潤滑剤を用い、被覆は塗布によって行った。用いたガラス潤滑剤の粘度の温度依存性を図4に示す。粘度測定は、平行平板粘度計(オプト企業社製PPVM−1100)を用いて行った。図4に示すように、使用したガラス潤滑剤は520℃以上で軟化し、温度の上昇に伴い急激に粘度が低下し、530〜590℃の範囲で1×10〜10Pa・sの粘度を有していた。具体的には、粘度は550℃で7×10Pa・s、580℃で2×10Pa・sであった。第1のガラス潤滑剤は、鍛造素材を載置した場合に上下方向(図3のz方向)から見て鍛造素材の外周側の一部と重なるように、水平方向の位置で見て中心から270mmの位置から620mmの範囲に塗布した。第1のガラス潤滑剤の厚さは280mmの位置と、440mmの位置と、610mmの位置で測定し、それぞれ99μm、107μm、81μm、平均で96μmであった。
第1の工程を経た下金型を上金型とともに大気雰囲気中の加熱炉に挿入して550℃(Twh)に加熱した(第2の工程)。一方、鍛造素材の全面を第2のガラス潤滑剤で被覆(第3の工程)。第2のガラス潤滑剤には、ホウケイ酸系ガラス潤滑剤を用い、被覆は噴霧によって行った。用いたガラス潤滑剤の粘度の温度依存性を図5に示す。図5に示すように、使用したガラス潤滑剤は、第1のガラス潤滑剤よりも温度に対する粘度の低下率が小さく、温度の上昇に伴い緩やかに粘度が低下した。粘度は530℃では1×10Pa・sを超える一方、580℃では1×10Pa・sを600〜950℃の範囲で1×10〜1×10Pa・sの粘度を有し、1000℃でも1×10Pa・sを超える粘度を維持していた。第2のガラス潤滑剤の厚さは鍛造素材の中心から220mmの位置と、310mmの位置と、390mmの位置で測定し、それぞれ260μm、280μm、270μm、平均で270μmであった。第3の工程を経た鍛造素材を加熱炉に挿入して1000℃に加熱した(第4の工程)。かかる1000℃の加熱の際に、第2のガラス潤滑剤は水あめ状に軟化して鍛造素材表面に留まっていた。第2の工程で加熱した上金型、下金型をプレス機本体に据え付けた後、1000℃に加熱したダミー材を下金型および上金型で挟持して、金型の加熱を行った(金型加熱工程)。かかる金型加熱工程によって、一旦低下した型彫り面の温度は530℃まで上昇した。第2の工程を経た下金型の型彫り面上に、第4の工程を経た鍛造素材を載置し、第1のガラス潤滑剤および第2のガラス潤滑剤が軟化している状態で熱間鍛造を開始した。熱間鍛造には、500MN熱間鍛造機を用い、下金型と上金型とで1回の押圧で熱間鍛造を行い、外径1300mmの鍛造製品を得た(第5の工程)。この場合、鍛造素材の端部は、第1のガラス潤滑剤で被覆された範囲内で下金型の型彫り面上を摺動し、下金型の型彫り面上を350mm変位した。なお、熱間鍛造開始時の下金型の型彫り面温度と鍛造素材の表面温度を放射温度計を用いて測定した。鍛造素材加熱温度およびかかる温度に相当する温度での第2のガラス潤滑剤の粘度、熱間鍛造開始時(圧下開始時)の鍛造素材の温度およびかかる温度に相当する温度での第2のガラス潤滑剤の粘度、熱間鍛造開始時(圧下開始時)の下金型の型彫り面の温度Tssとみなした温度およびかかる温度での第1のガラス潤滑剤の粘度、並びに鍛造における最大荷重の評価結果を表1に示す。
(比較例)
下金型の型彫り面を第1のガラス潤滑剤で被覆しない以外は、上記実施例と同様にして、鍛造製品を得た。鍛造における最大荷重等の評価結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例の鍛造製品の製造方法では、比較例に比べて鍛造荷重が15%以上低減され、400MN未満の荷重での鍛造が可能であった。加圧能力として最大級の鍛造装置を用い、しかもその限界に近い荷重領域での15%以上の荷重低減できたことは、難加工性の鍛造製品の製造自由度を高める上で極めて有効であることを示している。また、得られた鍛造製品に潤滑切れを示唆する傷は確認されず、鍛造製品の表面状態も極めて良好であった。
100、200、201、300:金型
1:下金型
2、2−2:上金型
3:型彫り面
4:肉盛層
5、5−2:第1のガラス潤滑剤
6:鍛造素材
7:第2のガラス潤滑剤
8:型彫り面
9:下金型
10:上金型
11:肉盛層

Claims (7)

  1. 鍛造素材を下金型と上金型を用いて熱間鍛造する鍛造製品の製造方法であって、
    前記下金型の型彫り面の少なくとも一部を第1のガラス潤滑剤で被覆する第1の工程と、
    前記第1の工程を経た下金型を加熱する第2の工程と、
    前記鍛造素材の少なくとも一部を第2のガラス潤滑剤で被覆する第3の工程と、
    前記第3の工程を経た鍛造素材を前記第2の工程における下金型の加熱温度よりも高い温度に加熱する第4の工程と、
    前記第2の工程を経た下金型の型彫り面上に、前記第4の工程を経た鍛造素材を載置し、前記下金型と前記上金型とで熱間鍛造を行う第5の工程とを有し、
    前記第1のガラス潤滑剤と前記第2のガラス潤滑剤とは互いに材質が異なり、
    前記第2のガラス潤滑剤は前記第4の工程において軟化して前記鍛造素材表面に留まり、
    前記第1のガラス潤滑剤および第2のガラス潤滑剤が軟化している状態で前記第5の工程における熱間鍛造を開始する鍛造製品の製造方法。
  2. 鍛造素材を、型彫り面を有する下金型と上金型を用いて熱間鍛造する鍛造製品の製造方法であって、
    前記下金型の型彫り面の少なくとも一部を第1のガラス潤滑剤で被覆する第1の工程と、
    前記第1の工程を経た下金型を加熱する第2の工程と、
    前記鍛造素材の少なくとも一部を第2のガラス潤滑剤で被覆する第3の工程と、
    前記第3の工程を経た鍛造素材を前記第2の工程における下金型の加熱温度よりも高い温度に加熱する第4の工程と、
    前記第2の工程を経た下金型の型彫り面上に、前記第4の工程を経た鍛造素材を載置し、前記下金型と前記上金型とで熱間鍛造を行う第5の工程とを有し、
    前記第1のガラス潤滑剤と前記第2のガラス潤滑剤とは互いに材質が異なり、
    前記第1のガラス潤滑剤の、前記第5の工程における熱間鍛造開始時の前記下金型の型彫り面温度に相当する温度での粘度が1×10Pa・s以下であり、
    前記第2のガラス潤滑剤の、前記第4の工程における鍛造素材の加熱温度に相当する温度での粘度が1×10Pa・s以上、かつ前記第5の工程における熱間鍛造開始時の前記鍛造素材の表面温度に相当する温度での粘度が1×10Pa・s以下である鍛造製品の製造方法。
  3. 前記下金型および上金型は、それぞれ型彫り面に肉盛層としてNi基超耐熱合金層を有する請求項1または2に記載の鍛造製品の製造方法。
  4. 前記第2の工程は、予め加熱されたダミー材を下金型および上金型で挟持する金型加熱工程を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の鍛造製品の製造方法。
  5. 前記下金型の型彫り面は部分的に前記第1のガラス潤滑剤で被覆され、
    前記第5の工程において、前記鍛造素材の端部は、前記第1のガラス潤滑剤で被覆された範囲内で前記下金型の型彫り面上を摺動する請求項1〜4のいずれか一項に記載の鍛造製品の製造方法。
  6. 前記鍛造素材は回転体状である請求項1〜5のいずれか一項に記載の鍛造製品の製造方法。
  7. 前記第5の工程において、前記鍛造素材の端部は、前記下金型の型彫り面上を200mm以上変位する請求項1〜6のいずれか一項に記載の鍛造製品の製造方法。

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