JP4647563B2 - しいたけ菌床の栽培方法 - Google Patents
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Description
この生育工程にあっては、未接種の培地に、例えば原基の形成されるステージの気菌糸の組織を取り出して、これを接種させるという方法は採られていない。
これは、従来きのこの生育には、栄養菌糸体の潜入菌糸が栄養分を吸収蓄積し、きのこの生育に充分な状態となってから、次に基菌糸部分に原基形成及び発芽が促され、全体が関連し合いながら段階を踏んで進むという考え方が一般的であるからと推察される。
例えば、非特許文献1には、「きのこ菌は培地に菌糸を伸長させ、培地の分解腐朽及び栄養分の吸収を行う。これを一般的に「栄養菌糸体」と言い、栄養菌糸体は生長の過程で潜入菌糸(主に栄養分の吸収蓄積に関与)と気菌糸(主に子実体形成に関与)に生理機能が分化すると考えられている。(きのこ学:古川久彦編集:84頁)」
非特許文献2には、「栄養菌糸体から子実体が発生する条件は、しいたけなどの担子菌の場合、菌叢(菌糸の集合体)の内部で子実体形成に対する準備が完了し、さらに子実体形成が可能な環境条件に置かれたとき、子実体発生が始まると考えられる。(きのこ学:古川久彦編集:89頁)」
と記載されている如くである。
そして上記従来の方法によっては、これらはすべて培養途中から発生にかけて、菌床表面付近の組織に目的に合った原基が形成されるまで熟成させるために、培養期間にかなり長い時間を要し、栽培施設の回転効率を悪化させている。さらに、原基の発生が自然発生的であるため、形成される原基の数が調整できず、必要個数以上の発芽が避けられず、不要な芽を掻き取る所謂芽掻き作業が必要となり、作業的に大変は労力を要するなどの問題点があった。
「きのこ学」古川久彦編集84頁 「きのこ学」古川久彦編集89頁
未接種の培地に原基の形成されるステージの気菌糸の組織を取り出して接種させる手段を用いたところ、当該培地に接種された原基の形成されるステージの気菌糸の組織が根づき、順調にきのこの成長が促されることを見いだし、その結果、きのこの培養期間が短縮されると共に、栽培培地の任意の位置に、任意の大きさできのこを発生させることのできるしいたけ菌床の栽培方法を開発したものである。
例えば、栽培培地の接種に用いる種菌が、オガコ等の粒状あるいは粉状物を主体とした原料を使用している場合が該当し、又、寒天等のゾル又はゲル状の培地も含む。一方、栄養分を含んだ液体にエアーレーションしてきのこ菌糸を増殖させる液体培地を用いる種菌は該当しない。
きのこの成長を各段階(ステージ)で分類し、培地への接種、一次蔓延、原基のもとの形成開始、原基成熟、発芽、幼子実体の形成、きのこの成熟の各段階に分類した場合、本発明の対象となるのは、原基のもとが形成されるステージから原基の成熟するステージまでを指し、単に菌糸が一次蔓延した段階や、幼子実体の形成段階のものを含まない。
何故なら、後述する如く、原基形成が開始される前の単に菌糸が一次蔓延した段階では、気菌糸の原基形成が速まることがなく、一方幼子実体の形成付近では子実体の組織自体を接種するおそれがあり、生理的に調整がとれない等の問題を生じるからである。
又、発芽にあっては、発芽した個体の周辺には、上記原基が形成されるステージの気菌糸が存在することが多く、従って本発明における原基が形成されるステージには、発芽した個体の周辺をも含む意味である。
接種とは、具体的には、培地表面に載置、埋め込み等したものをいい、未接種の培地に原基の形成されるステージの気菌糸の組織が根づくことを指す。
このとき、種菌部分とは、当該接種された個体から原基が生じる場合以外に、その個体の周辺から原基が生じる場合をも含む意味である。即ち、原則的には接種した種菌から潜入菌糸が伸長すると同時に、気菌糸としての原基形成が行われるが、しかし、接種した種菌が乾燥等している場合等には、その部位を避けて、その周辺に気菌糸が伸長して原基が形成され、発芽する場合がある。そこで、その個体周辺に原基形成、発芽がある場合を含める意味で種菌部分と表現したものである。
一方、気菌糸としての原基は、接種当初は栄養分の吸収が十分でないことから、原基から発芽へと向かう生育は若干抑制された状態となるが、その原基組織が消滅等することはなく、その組織及び機能が維持される。
そして、上記潜入菌糸の伸長に伴って原基の形成されるステージの気菌糸の組織に栄養分が供給されると、その栄養分の吸収に従って気菌糸としての原基が熟成され、徐々に発芽、幼子実体の形成へと向かう。
この結果、従来の培地接種後の菌糸の一次蔓延から原基形成までに要する期間が短縮され、栽培効率の改善が促される。
即ち、本発明によれば、上述の如く、接種された組織から潜入菌糸の伸長や気菌糸としての子実体の形成が促され、従来の如き一次蔓延した菌糸から予期しない位置に数を問うことなく原基及び発芽が生じてしまうことがない。自然発生的生育は抑制され、本発明による接種された組織からの生育が優先される。
この結果、例えば角形培地に数個のきのこを分散させて生育させる場合には、相互に適当間隔を保って接種すれば均等に分散された位置を保つことができ、数個のきのこの発生位置が重なって相互にぶつかってしまい、変形したきのこになるのを避けることができる。
又、発育するきのこの位置を、適当間隔を保ちながら培地内の任意の位置に設定できるので、従来必要とされた芽掻き作業が不要となり、大幅な労力の軽減となる。
例えば、接種された菌組織の数が少なく、且つ、それを支持する培地の体積が大きい場合には相対的に大きなきのこの成熟が可能となり、逆に菌組織の数が多く、培地の体積が小であれば、小さなきのことなる。その結果、接種された菌組織に対し、培地の体積を調整すれば、適宜な大きさのきのこを得ることができる。
即ち、栽培用広口ビンの栽培期間は、20℃±1℃で位管理した45日間と、上記発芽刺激後の3日間及びその後の12日間を総計して、管理栽培開始後60日間できのこの収穫がされたことになる。この結果、接種から収穫までの期間が115日程度を要する通常の栽培方法に比較して、約55日間短縮されたことになる。
即ち、種菌におけるしいたけの原基及び原基形成の途中の組織は、新たな培地に接種した場合、菌糸を伸長させて新たな培地の栄養分や水分を吸収すると同時に、予め準備されていた原基及び原基形成の途中の組織は平行して原基の熟成が進められ、新たな培地に原基が準備されるのを待たずに、短い培養期間で任意の位置からきのこを発生させることができることが実証された。
Claims (1)
- 固形培地に菌糸を蔓延させた種菌を接種する菌床栽培において、
菌糸の原基のもとが形成されるステージから原基が成熟するステージまでを含んだ、原基が形成されるステージの気菌糸の組織を取り出し、
該原基の形成されるステージの気菌糸の組織を未接種状態の培地に接種し、
上記接種した種菌部分からきのこを発芽、生育させることを特徴とするしいたけ菌床の栽培方法。
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