JP4646275B2 - 銅、錫、鉄、チタン合金 - Google Patents

銅、錫、鉄、チタン合金 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、銅、錫、鉄、チタン合金およびその使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
銅、錫合金は、鋳造材料および鍛造材料として広範囲に使用される。この部類の材料は、電子技術、機械製造、装置製造、精密技術および装飾産業において汎用される。通常の組成は、錫0.1〜11%、リン0.01〜0.4%、残が銅の範囲にある。(上例および以下において、各合金添加物の含量は、重量割合(重量%)として示す。)この、いわゆる、リン青銅の利点は、リン青銅は、世界的に極めて良好に入手でき、価格が妥当であり、設計者に、極めて良好な物理的性質以外に、機械的強度および延性に関して優れた特性値を提供するという点にある。この場合、リン青銅は、各種の用途について十分な耐食性をもたらす。
【0003】
即ち、複雑なジオメトリを有する小寸法の構成部材の製造には、銅、錫可鍛材料の使用が魅力的である。即ち、例えば、DIN17662には、多様な用例について、合金成分として錫最大8.5%以外に0.01〜0.35%のリンも規定する4〜8%の青銅が定義されている。他の添加物として、鉄0.1%、ニッケル0.3%、亜鉛0.3%および鉛0.05%が挙げられる。
【0004】
特に、導電性の要求および電気機械的構成部材の適正を伴う需要のために、この種の材料の多数の改良が提示されている。最近の例として、WO98/20176およびWO98/48068を挙げる。上記研究は、全く本質的に、慣用の銅、錫材料の導電性および対緩和性の改良に注力するものである。このような特殊合金は、電子技術および電気機械の用途にますます使用されている。なぜならば、上記の特殊用途について、達成された改良が重要であるからである。
【0005】
機械製造、装置製造、精密技術および装飾産業における使用のために、達成された改良は、もちろん、それほど重要ではないと思われる。この場合、相変わらず、従来のリン青銅が主として使用される。その理由は、この材料グループは、冷間加工によって得られる性質に関して多数の用例に十分に良好であるという点にあると云える。もちろん、若干の欠点はある。
【0006】
機能部材の製造のために、しばしば、接合操作も実施される。この場合、概ね、溶接法および硬ろう法が使用される。接合すべき構成部材に熱を導入することによって、熱作用ゾーンにおいて、回復または再結晶にもとづき強度ロスが誘起される。これは、溶接法および硬ろう法の使用の場合に特に、重要である。強度ロスをできる限り少なくするため、可能である場合は、溶接法の代わりに硬ろう法を使用する。かくして、450℃以上のろう付け温度によって、大きい強度の保持と接合箇所の対負荷能との妥協を要求する接合課題を解決できる。
【0007】
補助材料、即ち、ろうを使用する場合、使用したろうの強度は、接合部の機械的安定性に関して役割を担う。従って、破壊強度の大きいろうが望ましい。しかしながら、高強度のろうは、一般に、高い作業温度を必要とする。かくして、もちろん、接合部材への導入熱量が増加し、従って、ろう付け間隙の近傍の範囲の強度ロスが増加する。即ち、接合部の強度を最適化したい場合、できる限り強度低下の恐れのない材料を使用する必要がある。過去において、特定の設計課題のために、この種の用例について強度安定性の高い材料を提案する試みがない訳ではない。これに関して、メガネ産業の無ニッケル材料の分野における開発が、良い例である。この場合、銅、アルミニウム系および銅、チタン系をベースとする各種組成物が示されている。上記組成物は、現在、例えば、メガネのツルに使用されるリン青銅に比してより良好なバネ特性および強度安定性を示す。
【0008】
さて、この無ニッケル合金を使用する場合、特に、硬ろうは、保護ガス下において重大な問題を生ずるということが判った。なぜならば、上記材料は、低酸素濃度の雰囲気とも反応し、かくして、ろうによる構成部材表面の濡れが、著しく妨害されるからである。硬ろうの加工性は、侵食性のフラックスを使用した場合に限り、所望の範囲において可能となる。このような侵食性フラックスの使用は、現在、作業安全性および環境保護の観点において、時流に合わないと思われる。更に、フラックスおよびフラックス残滓による接合構成部材の変色を手間をかけて除去しなければならない。層面が問題である場合または他の理由から均一な外観が必要である場合、上記クリーニングが不可避である。銅、錫合金は、フラックスの使用とは無関係に、加熱時に変色傾向を示す。この現象は、焼きなまし色の生成として知られている。この場合も、場合によっては、接合構成部材のクリーニングが必要である。この種の後処理は、経費がかかり、従って、望ましくない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、一方では、強度および強度安全性に関して上述の特殊性に一致し、しかも、他方では、極めて良好に硬ろう付けできる錫青銅の利点を与える材料が、強く要望される。更に、焼きなまし色の生成傾向の減少が望まれる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
かくして設定された課題は、本発明にもとづき、銅に対して、錫4〜12%、鉄1〜4%およびチタン0.01〜0.6%を添加合金化した合金によって解決される。本発明に係る合金は、特に高い強度および強度安全性を特徴とする。従来の見解とは異なり、上述の如き、例えば、リンによる脱酸は不要である。本発明に係る合金において鉄含量を調節すれば、脱酸方策の補足が不要な程度に、好ましくない錫酸化物の出現が明らかに抑制される。本発明に係る合金において、鉄の添加は、驚くべきことには、加熱変色に対する安定性の改善に役立つ。
【0011】
得られる半製品は、従来の粗成形法および変形法による製造において、問題なく処理できる。同時に、本発明に係る合金は、各種のろうによって極めて強固にろう付けできる。本発明に係る鉄含量およびチタン含量において、明らかに、不良な濡れ性またはろうの不良な流れを誘起するような酸化物が表面に現れることはない。
【0012】
好ましい合金組成は、請求項2〜9の対象である。チタンを添加合金することが特に有利である。この場合、本発明に係る合金の鉄添加量に対して鉄/チタン質量比≧2.5でチタンを合金する必要がある。チタンは、熱によって酸素と容易に反応して酸化物を形成し、溶融状態のろうによる濡れを著しく悪化する表面層を生ずるので、上記所見は、極めて驚きに値する。
【0013】
即ち、錫4〜12%を含む銅、錫合金は、チタン0.05%を加えただけで、ろう付け性が著しく悪化するということが判っている。ろう付けを効果的に実施するには、フラックスを使用する必要がある。しかしながら、本発明に係る合金の鉄に対して本発明に係る比でチタンを添加した場合、ろう付け性が損なわれることはなく、しかも、同時に、本発明に係る合金の強度安定性が、恒久的に改善される。チタンの添加によって、強度ロスの時間的推移が、明らかに遅延される。強度ロスの遅延は、硬ろう操作の工業的実施のために、より高い再現性および接合部の機械的強度の最適化を意味する。
【0014】
元素の公知の性質にもとづき、上記状況を知れば、チタンを同族元素のジルコニウムおよびハフニウムによって完全にまたは部分的に置換できると予期される。上記元素は、本発明に係る銅、錫、鉄基本合金と共働して、同一の挙動を示す。
【0015】
合金の低廉化のため、銅の一部をマンガンまたは亜鉛によって置換できる。しかしながら、10重量%よりも多量の銅を上記金属で置換してはならない。なぜならば、かくして、鋳造が、明らかに困難となり、本発明に係る合金の良好な耐食性が、明らかに悪化されるからである。銅、錫合金にしばしば添加されるリンは、チタンの存在下では、合金してはならない。溶湯中に、半製品製造を極めて困難とし且つ材料性質を劣化する針状リン化チタンが生ずる。
【0016】
本発明に係る合金の好ましい使用分野を請求項10〜14に開示した。
【0017】
【発明の実施の形態】
実施例
下記の実施例を参照して本発明を説明する。下記の如く、合金から厚さ1mmの板片を製造した:ブロックのコキル鋳造、700℃/6hの均質化、表面をフライス切削した鋳造ブロックを760℃において減面率45%で熱間圧延、表面をフライス切削した熱間圧延片の横断面積に関して50%の減面率で上記圧延片の冷間圧延、500℃/4hの加熱処理、最初の冷間加工後の横断面積に関して75%の減面率で1mmへの仕上げ圧延。
【0018】
ストリップの組成を表1に括めた:
【表1】
Figure 0004646275
【0019】
仕上げ圧延したストリップについて実施した引張実験の結果を表2に示した:
【表2】
Figure 0004646275
【0020】
本発明に係る合金について求めた破断伸びA10および伸び限界比RP0.2/Rmの測定値は、リンで脱酸した合金12について同等の加工工程にもとづき得られた対応する数値と良い一致を示す。破断伸びの大きさから脱酸効果を結論づけ得るので(Dies,“Kupfer und Kupfer−Legierung in der Technik”,Springer刊、(1967),p126参照)、上記一致から、鉄およびチタンは、銅、錫合金の加工にリンと同様にプラスの影響を与えると推論できる。ろう付け挙動の特徴づけのため、、同一合金からなる2つのストリップ片を、表面を脱脂し機械的にクリーニングした後、硬ろう付けした。作業温度が710℃の市販の銀ろうを使用した。フラックスを使用せずに保護ガス下でろう付けを行った。ろう付け結果を機械的ねじり試験および金属組織学的判定によって評価した。接合した材料のろう付け間隙の近傍、即ち、熱作用ゾーン(WEZ)、の強度は、ビッカース硬さHVによって特徴づけた。
【0021】
表3に、得られた結果を示した。
【表3】
Figure 0004646275
【0022】
結果から、ろう付け後の硬さに対する鉄の極めて好適な作用が知られる。本発明に係る鉄、チタン比を順守しない場合、強度安定性は改善されるが、良好な硬ろう付け性は得られないということが明らかである(合金1および6、従来の合金12と対比して)。
【0023】
ろう付け時の材料軟化を調べるため、冷間加工したストリップ片の一部を塩浴中で700℃に5min加熱し、各時間tの経過後、残存硬さHVを測定した。かくして、観察した材料の強度安定性の等温特性HV(t)が得られる。硬さの経時的変化は、ろう付け後の強度および接合構成部材の工業的製造時の安全性の判断に重要である。5minの加熱処理の残存硬さHV(300s)が高ければ高い程、ろう接の予期される機械的安定性が高くなる。硬さの経時的変化が小さければ小さい程、接合構成部材の品質が均一となり、製造プロセスが、プロセスパラメータの不可避の変動に対してより不感となる。更に、一方では、5minの加熱処理後、通常のリン青銅12に関する合金Y(Y=1,2…12)の残存硬さの大きさを評価した:HV(Y,700℃,300s)/HV(12,700℃,300s)−1。他方、60s後の硬さと300s後の硬さとの差の減少に関して、合金Yを合金12と比較した:1−〔HV(Y,700℃,60s)−HV(Y,700℃,300s)〕/〔HV(12,700℃,60s)−HV(12,700℃,300s)〕。
【0024】
比較した良好な材料は双方の評価について、特に大きい正の数値を示す。
【表4】
Figure 0004646275
【0025】
鉄を添加すれば、残存硬さの良好な利得が得られ、チタンを添加すれば、長時間の温度保持における硬さ低下が、特に好適に減少されると云うことが判った。上記実験の補足のため、ストリップ片を保護ガス雰囲気中で下記の如く熱処理した:調整ガス(N295%,H25%)中で700℃にストリップを12min加熱、炉を200℃に冷却、実験室の静止空気中で室温に冷却。この実験によって、保護ガス下のろう付けプロセスを定性的に調整する。但し、変動は、製造法によって排除した。実験の評価には、表面変色および組織に関するストリップの判断が含まれる。表5から明らかな如く、本発明に係る組成の合金の変色挙動は、慣用のリン青銅と同等である。鉄含量が高い場合、変色は、通常の銅、錫合金の場合よりも少ない。この場合、ろう付けシームの近傍の表面の慎重な後処理は、小さい範囲においてのみ必要であるか、全く不要である。
【0026】
【表5】
Figure 0004646275
【0027】
上記熱処理後、本発明に係る合金の微構造は、下記の如く特徴づけられる:組織に酸化物は認められない。しかも、先行技術では、共通して、必要とみなされているが、リンは添加されていない。本発明に係る合金の元素である鉄またはチタンが富化された析出層のみを検証できる。上記熱処理後の本発明に係る合金において、平均粒径は約25μmに過ぎない。これは、鉄の微粒化作用に起因する。所望であれば、接合後に本発明に係る合金を変形することも可能であり、しかも、この場合、錫青銅合金の場合に認められるような荒さが、構成部材表面に生ずることはない。
【0028】
被験合金の総合評価のために、表6に概要をしめす:尚、この表6にあって合金12に対する総合的適性の算出方法は各合金の合金12と比較した残存硬さと合金12に対する60〜300sの硬さ低下の減少のパーセンテージを基本として、これらを加算し、その数値に硬ろう付け品質及び保護ガス雰囲気下の熱処理後の表面変色のパーセンテージを加味したもので、いずれもが50%の場合、前記加算値から50%を減算し、いずれかが50%と100%の場合には前記加算値に変更なく、共に100%の場合には前記加算値に50%を加算することによって得られる。表6に記載されているとおりである。
【表6】
Figure 0004646275
【0029】
【発明の効果】
本発明に係る合金によって、明らかに、総合適正において大きい利得が得られる。利得は、通常のリン青銅である。比較例の合金12に対する%点で示した。本発明に係る合金によって、明らかに、設定課題が適正に解決される。

Claims (5)

  1. 錫4〜12質量%と、鉄0.1〜4質量%と、チタン0.01〜0.6質量%と、残りが銅および不可避的不純物とからなり、チタンに対する鉄の重量比が、少なくとも2.5であることを特徴とする銅、錫、鉄、チタン合金。
  2. 錫6〜10質量%と、鉄1〜2質量%と、チタン0.05〜0.4質量%とを含むことを特徴とする請求項1に記載の銅、錫、鉄、チタン合金。
  3. 構成部材として銅、錫、鉄、チタン合金を使用し、ろうの作業温度が300℃より高い状況下でろう付け法により接合することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の銅、錫、鉄、チタン合金の使用方法。
  4. 構成部材が装飾品または衣類のアクセサリであることを特徴とする請求項3に記載の銅、錫、鉄、チタン合金の使用方法。
  5. 構成部材がメガネまたはメガネ部品であることを特徴とする請求項3に記載の銅、錫、鉄、チタン合金の使用方法。
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