JP4644930B2 - シートスライド装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、車両用シートを支えるシートスライド装置に関するもので、特にシート側に過大な荷重が加わった時に、所定の強度を効率よく発揮するようにする構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
シートを支えるシートスライド装置は、そのアッパーレールとロアレールを互いに摺動可能に、且つ所定の係止の強度を有するように組み合わせ、駆動装置を用いて前後に摺動させてシートの位置を調整できるようにしている。このようなシートスライド装置において、特にシートが最も後方に調整されたとき、アッパーレールがロアレールから外れる部分を持つように構成される場合多い。このようなシートスライド装置では、シート側に取り付けられるシートベルトからアッパーレールの後端部分に過大な上向きの荷重が伝達され、アッパーレールには大きな曲げモーメントが作用するとき、所定の強度を確保するために、従来はアッパーレールを厚い鋼板で構成するか、または例えば実公平7−9694に開示されているように、シートスライド装置の後部の側に強度を補助するため、フロア側とシート側にかぎ状の部材を取り付け互いに係止させる方法がとられて来た。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した厚い鋼板による従来のアッパーレールの構造では、実際は余り応力が大きくならないアッパーレールの部分までも一様に厚く構成され、結果的にシートスライド装置の重量を不用に増加させてしまう。また補強用のかぎ状の部材を用いる方法は、幅方向にスペースを必要とするほかに、過大な荷重に対して、シートスライド装置の2個所の係止部とかぎ状の部材の1個所の、計3個所で受けることになるが、各個所の発揮できる係止力のバラツキなどから、もっとも弱い係止個所が先に破損するなどで、効率よく強度を確保できない。このために、本発明の課題は、余分な取付けスペースを必要とせずに、且つ上記した過大な荷重に効率良く対応でき、軽量化に寄与できるシートスライド装置の構造を実現することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するために、本発明で講じた技術的な手段は、車両フロアに固定されるロアレールと、シートに固定され且つ前記ロアレールに摺動自在に係止されるアッパレールと、前記アッパレールの断面内に取付けられ駆動装置によって駆動されるスクリュシャフトと、前記ロアレールに固定され前記スクリュシャフトと螺合するナット部材とを有し、前記シートの位置を前後方向に調整可能にするシートスライド装置であって、前記アッパレールは両側に縦片を有する断面の基部を有し、前記ナット部材よりもシート後方側において、前記シートスライド装置が最後方位置に調整された状態にあって前記ロアレールとの係止から後方に外れる前記アッパレールの前記基部と前記両縦片とにより囲われた内側空間に、前記基部の前記両縦片を連結する連結部材を備えることである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。図6に示されるように、車両用シート10は、シートクッション11と、シートバック12と、さらにシートクッション11とシートバック12との角度を調整できるように支持するリクライニング装置7を備えている。リクライニング装置7のロアアーム72は、シートスライド装置5のアッパレール58の前方と後方に設けられた取付け穴52、53で固定されている。シートスライド装置5は、車両フロア1に、ブラケット61,62を介して固定されるロアレール66を有し、アッパレール58はロアレール66に摺動自在に支持されている。そして、シート10は、車両に対して前後方向の位置が調整できるようになっている。リクライニング装置7のロアアーム72には、シートベルト7が取付けられ、乗員が前方向に過大な慣性を受けるような緊急時には、シートベルト7から伝達される荷重はアッパレール58からロアレール66へと伝達され、車両フロア1で支持される。シートベルト7は直接アッパレール58に取付ける構造を採ってもよい。
【0006】
図1乃至3に示されるように、シートスライド装置5のアッパレール58は、車両の前後方に延びる一定断面に成形された2枚の鋼板を溶接して構成され、下方のみが開放された矩形の断面の基部58aが形成されている。基部58aの両側の縦片59の下端は断面外側に折れ曲げられ、さらに上方に延びる一対のフランジ部59aを有するように成形されている。縦片59とフランジ部59aを連結する部分には水平平坦部59bが形成されている。基部58aの縦片59の一辺は、接合された2枚の鋼板が共に上方に起立するように延び、シート10が取付ける穴52、53を設けた取付フランジ部58bが形成されている。一方ロアレール66は、車両の前後方向に延び、上方のみが開放された矩形断面の基部66aを有し、基部66aの両側縦壁67の上端は、断面内側に折れ曲げられ、さらに下方に延びる一対のフランジ部67aを有するように成形された断面形状となっている。両側のフランジ部67aの下端には、前後方向に延びるシュー82が夫々取付られ、さらにシュー82はその下方端面と側面で、アッパレール58の水平平坦部59b、縦片59およびフランジ部59aと摺動するように接し、さらにシュー82と接する水平平坦部59b部とは反対側の下面には、水平平坦部59b部とロアレール66の水平面との間にローラ81が配置され、ロアレール66に対して、アッパレール58の前後方向への滑らかな移動を可能にし、且つ上下方向には互いに係止している。
【0007】
アッパレール58の矩形の断面形状の内側空間54内には、前後方向に延びるスクリュシャフト51が、回転可能に、且つ軸方向には移動不能に配置されている。アッパレール58の前方部分には、さらにブラケット31を介して駆動機構2が取付けられ、駆動機構2はスクリュシャフト51と連結され、スクリュシャフト51を回転させることができる構成となっている。一方、ロアレール66の断面内には、スクリュシャフト51に螺合するナット部材63がネジ手段64でロアレール66に取付けられている。駆動機構2は、ハウジング30内に配設されたウォームギヤ(図示せず)と、ウォームギヤ(図示せず)に噛合いスクリュシャフト51に連結されたホイールギヤ23(図示せず)とからなる減速装置で、ウォームギヤ(図示せず)に連結されたモータ24からの回転をスクリュシャフト51に減速して伝えるものである。操作スイッチ(図示せず)の操作でモータ24に電力を供給し回転作動させて、アッパレール58をロアレール56に対して前後方向に移動させることで、シート10を所望の位置に調整ができるように構成している。
【0008】
図1、2は、アッパレール58が、ロアレール66に対して最も後方の調整位置に移動した状態を示している。このとき、スクリュシャフト51に固定された後方ストッパ51aは、ナット部材63の前面と当接してアッパレール58のそれ以上の後方への移動を規制する構成となっている。後部席の乗員に対する足元のスペースを確保するために、ロアレール66の後方への長さは制限されて設定されているため、アッパレール58が最後方位置に調整されたとき、アッパレール58の後部は、ロアレール66のフランジ部67aとの係止から外れる。このアッパレール58のロアレール66との係止から外れた部分で、アッパレール58の両縦片59を連結部材8とネジ手段84で連結して補強する構成が採られている。これによりロアアーム72を介してシートベルト7からの過大な荷重が伝達され、アッパレール58の後端に大きな上方向の荷重が作用した場合、アッパレール58に作用する曲げモーメントが過大になる部分が補強された構造となっている。特に、上記のような大な荷重が伝達されたとき、アッパレール58の受ける曲げモーメントはロアアーム72の後端部の近傍で最大となる。そして、曲げモーメントが最大となり、且つロアレール66のフランジ部67aとの係止から外れる部分では、両縦片59は断面の内側に倒れ込むように変形する傾向を示し、剛性と強度が低下する。従って、両縦片59を連結部材8で連結し、両縦片59の変形を規制することによってアッパレール58の剛性と強度は大きく向上する。図3には、連結部材8としてアッパレール58の逆U字形状に内接するU字形のブラケット形態を示すが、本発明の主旨からすれば、両縦片59の変形を防止するように連結するものであれば良く、別の実施例として、例えば図5に示されるように両縦片59をピン108で連結し、断面補強部材109を介在させても良い。
【0009】
上記したように、断面形状の変形を連結部材8、108で規制するように補強する方法は、特にアッパレール58を降伏応力の高い抗張力鋼板を用い、そのアッパレール58を薄い鋼板で構成しようとする場合、大きな曲げモーメントが作用するアッパレール58の部分の断面が変形しないように補強することによって、高い抗張力の材料特性を活かすことができる。このように部分的に強化する方法で効率良く剛性と強度を確保することができ、大きく軽量化を果たすることができる。
【0010】
一方、上記のようにアッパレール58の後部に配置されたU字形のブラケット形態をした連結部材8の長さと、ナット部材63の位置を設計上で適切に設定することによって、図4に示されるように、アッパレール58が最前方位置になったとき連結部材8とナット部材63を当接するようにしてストッパを構成することができる。従来は、後方ストッパ51aと同様の形状で、スクリュシャフト51の後端に前方ストッパを取付ける方法が一般的であったが、補強部材に前方ストッパ機能を持たせて部品の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシートスライド装置の側面図である。
【図2】本発明に係るシートスライド装置の平面図である。
【図3】図1におけるIII-IIIでの第1実施例の断面図である。
【図4】本発明に係るシートスライド装置が最前方位置に調整された状態の平面図である。
【図5】図1におけるIII-IIIでの第2実施例の断面図である。
【図6】本発明に係るシートスライド装置が装着されたシートの側面図である。
【符号の説明】
1 車両フロア
2 駆動装置
5 シートスライド装置
8 連結部材
10 シート
51 スクリュシャフト
58 アッパレール
58a 基部
59 縦片
63 ナット部材
66 ロアレール
108 連結部材
Claims (2)
- 車両フロアに固定されるロアレールと、シートに固定され且つ前記ロアレールに摺動自在に係止されるアッパレールと、前記アッパレールの断面内に取付けられ駆動装置によって駆動されるスクリュシャフトと、前記ロアレールに固定され前記スクリュシャフトと螺合するナット部材とを有し、前記シートの位置を前後方向に調整可能にするシートスライド装置であって、
前記アッパレールは両側に縦片を有する断面の基部を有し、前記ナット部材よりもシート後方側において、前記シートスライド装置が最後方位置に調整された状態にあって前記ロアレールとの係止から後方に外れる前記アッパレールの前記基部と前記両縦片とにより囲われた内側空間に、前記基部の前記両縦片を連結する連結部材を備えることを特徴とするシートスライド装置。 - 前記シートスライド装置が最前方位置に調整されたとき、前記連結部材は前記ナット部材のシート後方側端と当接するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のシートスライド装置。
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