JP4644500B2 - 細胞分化誘導剤及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、癌細胞や異常細胞に対する分化誘導作用を有する細胞分化誘導剤、及びその製造方法に関する。
例えば、特許文献1には、キナ酸誘導体を含有する健康食品や医薬品が開示されている。また、特許文献2には、3−プレニル−桂皮酸誘導体を有効成分とする癌細胞のアポトーシス誘導剤が開示されている。
特開2004−161706号公報 特開2004−26760号公報
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、プロポリスから単離したキナ酸誘導体に、癌細胞に対する増殖抑制作用、細胞分化誘導作用及びアポトーシス誘導作用を見出したことによりなされたものである。その目的とするところは、癌細胞又は異常細胞に対する分化誘導効果を有する細胞分化誘導剤、及びその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載のAML又はCMLに適用される細胞分化誘導剤は、キナ酸誘導体として4,5−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、及び3,4,5−トリカフェオイルキナ酸から選ばれる少なくとも1種を有効成分とすることを要旨とする
請求項1の構成によれば、有効成分としてのキナ酸誘導体が、癌細胞や癌化しつつある異常細胞のような増殖能力の高い細胞に作用して、該細胞の分化を誘導する。従って、癌の発生及び悪性化を抑えて、癌の治療や予防に有用である。
請求項2に記載の細胞分化誘導剤の製造方法は、請求項1に記載の細胞分化誘導剤の製造方法であって、該方法は抽出工程と分離工程とを備え、前記抽出工程は、プロポリス原塊を第1の親水性有機溶媒に浸漬させ、該溶媒中に抽出されるプロポリス抽出物を得る工程であり、前記分離工程は、前記抽出工程によって得られたプロポリス抽出物を前記第1の親水性有機溶媒を移動相とする逆相液体クロマトグラフィ担体に接触させた後、該担体に吸着した前記有効成分を第2の親水性有機溶媒で溶出する工程であり、前記第1の親水性有機溶媒は10〜40容量%の含水メタノール又は含水エタノールからなり、前記第2の親水性有機溶媒は50容量%以上の含水メタノール又は含水エタノールからなることを要旨とする。
この方法によれば、健康食品素材として高い評価を得ているプロポリスから、有効成分を多量に含むプロポリス抽出物が容易に得られ、さらに前記プロポリス抽出物中の夾雑物を効率的に取り除くことが可能となるため、有効成分の含有量をさらに高めることが極めて容易に実現される。
本発明によれば、癌細胞又は異常細胞に対する増殖抑制効果を発揮することができる細胞増殖抑制剤、及び該細胞増殖抑制剤の容易な製造方法が提供される。また、本発明によれば、癌細胞又は異常細胞に対する分化誘導効果を発揮することができる細胞分化誘導剤、及び癌細胞又は異常細胞に対するアポトーシス誘導効果を発揮することができるアポトーシス誘導剤が提供される。
以下、本発明を細胞増殖抑制剤、細胞分化誘導剤及びアポトーシス誘導剤に具体化した一実施形態について説明する。
本実施形態の細胞増殖抑制剤は、癌細胞又は異常細胞に対する増殖抑制作用を有する有効成分としてキナ酸誘導体を含有している。この細胞増殖抑制剤は、癌細胞や異常細胞の発生を予防可能な健康食品等の飲食品や、癌の治療に有用な医薬品に添加して使用される。この細胞増殖抑制剤は、急性白血病(AML)や慢性白血病(CML)等を引き起こす血球系癌細胞の増殖や、大腸癌細胞等の固形癌細胞の増殖を抑制する作用を有するとともに、正常細胞からそのような癌細胞や異常細胞へと変化する際の癌化を抑制する作用も有し得る。なお、前記異常細胞としては、ポリープや良性腫瘍等の前癌状態にある細胞が主に挙げられる。また、この細胞増殖抑制剤は、足場依存的な増殖の有無に関わらず、あらゆる種類の正常細胞に由来する癌細胞又は異常細胞の増殖を抑制する。
本実施形態のアポトーシス誘導剤は、癌細胞や異常細胞に対するアポトーシス誘導作用を有する有効成分としてキナ酸誘導体を含有している。このアポトーシス誘導剤は、癌細胞や異常細胞の発生を予防可能な健康食品等の飲食品や、癌の治療に有用な医薬品に添加して使用され、血球系癌細胞や固形癌細胞等の癌細胞又は異常細胞を死滅させる効果を発揮し得る。
本実施形態の細胞分化誘導剤は、血球系癌細胞や固形癌細胞等の癌細胞又は異常細胞に対する分化誘導作用を有する有効成分としてキナ酸誘導体を含有している。この細胞分化誘導剤は、癌細胞や異常細胞に対して細胞分化を誘導することにより、癌の悪性化を抑えるための医薬品や、癌細胞や異常細胞の発生を予防可能な健康食品等の飲食品に添加して使用される。この細胞分化誘導剤は、血球系癌細胞に作用するとAMLやCML等の白血病の治療効果を発揮し、正常な血球系細胞に作用すると免疫賦活効果を発揮し得る。よって、この細胞分化誘導剤は、前記免疫賦活作用を介して様々な種類の癌や感染症等の治療や予防にも有用である。
即ち、キナ酸誘導体は、細胞増殖抑制作用、アポトーシス誘導作用及び細胞分化誘導作用という互いに深い関連性を有する多様な作用を同時に発揮し得る。このようなキナ酸誘導体としては、4,5−ジカフェオイルキナ酸(4,5-di-O-caffeoylquinic acid)、3,5−ジカフェオイルキナ酸(3,5-di-O-caffeoylquinic acid)、3,4−ジカフェオイルキナ酸(3,4-di-O-caffeoylquinic acid)、3,4,5−トリカフェオイルキナ酸(3,4,5-tri-O-caffeoylquinic acid)等のカフェオイルキナ酸誘導体が挙げられる。前記3種類のジカフェオイルキナ酸は、互いに異性体の関係にある。
細胞増殖抑制剤には、4,5−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、及び3,4,5−トリカフェオイルキナ酸から選ばれる少なくとも1種の有効成分が含有されることが好ましい。また、細胞増殖抑制剤は、製造が容易であることから、4,5−ジカフェオイルキナ酸及び3,5−ジカフェオイルキナ酸の2種類のキナ酸誘導体を有効成分として含有するもの、又は3,4−ジカフェオイルキナ酸及び3,4,5−トリカフェオイルキナ酸の2種類のキナ酸誘導体を有効成分として含有するものであることがより好ましい。さらには、製造がさらに容易であることから、前記4種類のキナ酸誘導体を有効成分として含有する細胞増殖抑制剤が提供されることが特に好ましい。アポトーシス誘導剤及び細胞分化誘導剤の有効成分についても、前記細胞増殖抑制剤の場合と全く同様である。
これらのキナ酸誘導体は、例えば、プロポリス原塊から分離・精製が可能である。この場合、細胞増殖抑制剤は、プロポリス原塊から前記有効成分を含むプロポリス抽出物を抽出する抽出工程と、前記プロポリス抽出物から前記有効成分を分離する分離工程とを実施することにより製造される。これら両工程により、上記4種類のキナ酸誘導体を全て含む細胞増殖抑制剤が製造される。なお、アポトーシス誘導剤及び細胞分化誘導剤の製造方法についても、細胞増殖抑制剤の製造方法と全く同様に実施される。
抽出工程は、プロポリス原塊を第1の親水性有機溶媒に浸漬させ、該溶媒中に抽出されるプロポリス抽出物を得る工程である。この抽出工程は、公知のプロポリス抽出物の製造方法に従って実施されればよい。第1の親水性有機溶媒としては、水、含水アルコール(アルコール濃度が95容量%以下)又はアルコール(アルコール濃度が95容量%超)が使用可能である。前記アルコールとしては、好ましくはメタノール又はエタノールが用いられ、細胞増殖抑制剤を飲食品に添加する場合にはエタノールが用いられる。
第1の親水性有機溶媒としては、夾雑物の混入を効率的に抑えながら前記有効成分を効率よく抽出するために、10〜40容量%の含水アルコールを用いることが好ましく、10〜25容量%の含水アルコールを用いることが好ましい。第1の親水性有機溶媒中のアルコール濃度が10容量%未満の場合、有効成分の抽出率が低下するおそれがある。逆に、第1の親水性有機溶媒中のアルコール濃度が40容量%を超える場合、有効成分以外の夾雑物が混入しやすくなるうえ、分離工程を実施する前に沈殿が生成しやすくなるため、作業効率が低下するおそれがある。
なお、前記プロポリス原塊は、ブラジルを含む南アメリカ諸国、中国や日本等のアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国、オセアニア諸国で採取されるプロポリス等あらゆる産地のものが使用可能であるが、ブラジルのミナスジェライス州原産のグリーン・プロポリス原塊が特に好適に使用される。このグリーン・プロポリス原塊は、キク科植物のバッカリス・ドラクンクリフォリア(伯名:アレクリン・ド・カンポ)を主たる起源植物としている。
このグリーン・プロポリス原塊は、固形分20%のエキス中のp−クマル酸相当量が5%を超えるものが用いられ、p−クマル酸相当量が7%以上のものが特に好適に用いられる。なお、前記固形分20%エキスとは、前記プロポリス原塊を95容量%含水エタノールで抽出した95容量%含水エタノール抽出液であって、当該抽出液に含まれる固形分の濃度(w/v%)が20%となるように調整されたものを指す。さらに、前記p−クマル酸相当量は、前記固形分20%エキス中の全固形分をp−クマル酸の重量に換算した濃度(w/v%)を指す。
ちなみに、前記p−クマル酸相当量は、(財)日本健康・栄養食品協会のプロポリス食品規格基準(平成13年11月1日一部改正)に規定される方法に準じて定量される。このp−クマル酸相当量の定量は、まず、前記固形分20%エキスを液体クロマトグラフィにて分析し、保持時間30分までの全ピーク面積を求める。そして、p−クマル酸(精製物)のメタノール溶液を同様に液体クロマトグラフィにて分析し、前記固形分20%エキスの全ピーク面積をp−クマル酸の重量に換算することにより、当該エキスの濃度(p−クマル酸相当量)が求められる。なお、前記液体クロマトグラフィの条件としては、カラム;島津製作所のShim-pack CLC-ODS 6mm×150mm又はその同等品、移動相;メタノール/水/酢酸=70/30/1、流量;1.2ml/分、温度;50℃、測定波長;275nmが用いられる。
分離工程は、前記抽出工程によって得られたプロポリス抽出物を、第1の親水性有機溶媒を移動相とする逆相液体クロマトグラフィ担体に接触させた後、該担体に吸着した前記有効成分を第2の親水性有機溶媒で溶出する工程である。前記接触及び溶出は、カラム式及びバッチ式のいずれの方法で実施しても構わないが、分離効率が高いことから、カラム式で実施することが好ましい。
逆相液体クロマトグラフィ担体としては、オクタデシルシリル(ODS)基を備えた担体が好適に用いられる。また、得られた有効成分を飲食品に含有させる場合には、食品加工用に使用可能な合成吸着樹脂が用いられる。合成吸着樹脂としては、多孔性を有する吸着表面積の大きなポリマーであり、スチレン−ジビニルベンゼン系(芳香族型)、芳香族修飾型、メタクリル系型等の樹脂で、例えば、ダイヤイオンHP−20(三菱化学社製)、アンバーライトXAD−4(オルガノ社製)、アンバーライトXAD−7(オルガノ社製)が挙げられる。これらの合成吸着樹脂による吸着現象では、ODS基を備えた担体の場合と同様に、ファン・デル・ワールス力により、主に疎水的な相互作用に基づいて吸着及び溶離が行われる。
第2の親水性有機溶媒としては、夾雑物の混入を効率的に抑えながら前記有効成分を効率よく分離するために、50容量%以上の含水アルコール(含水メタノール又は含水エタノール)を用いることが好ましく、50〜75容量%の含水アルコールを用いることがより好ましい。第2の親水性有機溶媒中のアルコール濃度が50容量%未満の場合、有効成分が担体から溶離しにくくなるため、分離効率が低下する。逆に、第2の親水性有機溶媒中のアルコール濃度が75容量%を超える場合には、担体に吸着した夾雑物が多く溶離するため、十分な精製が達成されないおそれがある。
上記4種類のキナ酸誘導体を有効成分として含有する細胞増殖抑制剤は、主に医薬品や医薬部外品に含有させるために、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)にてさらに精製することが可能である。このとき、各キナ酸誘導体をそれぞれ単離することが可能となる。HPLCを実施する際には、公知の逆相カラムクロマトグラフィの手法を採用することが好ましい。
前記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 細胞増殖抑制剤、細胞分化誘導剤及びアポトーシス誘導剤は、いずれも有効成分としてキナ酸誘導体を含有している。本発明者らは、鋭意研究の結果、キナ酸誘導体に、癌細胞や異常細胞に対する増殖抑制作用、細胞分化誘導作用及びアポトーシス誘導作用を見出した。従って、細胞増殖抑制剤、細胞分化誘導剤及びアポトーシス誘導剤はいずれも、癌の縮小や癌化の予防に優れた効果を発揮し得る。このため、癌の予防や治療に有用な飲食品及び医薬品の原料となり得る。
・ 4,5−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、及び3,4−ジカフェオイルキナ酸は、互いに異性体の関係にあり、さらにこれら3種類のキナ酸誘導体と3,4,5−トリカフェオイルキナ酸とは、カフェオイル基を有するという共通の特徴を備えている。即ち、カフェオイル基を有するキナ酸誘導体は、細胞増殖抑制作用、細胞分化誘導作用及びアポトーシス誘導作用を発揮する可能性が極めて高い。
・ キナ酸誘導体は、健康食品素材として高い評価を得ているプロポリス原塊中にも高含有されている。プロポリス原塊からキナ酸誘導体を抽出する際には、抽出工程と分離工程とが実施される。いずれの工程も容易に実施することができるうえ、キナ酸誘導体の抽出効率が極めて高い。よって、本実施形態の製造方法によれば、細胞増殖抑制剤、細胞分化誘導剤及びアポトーシス誘導剤を容易に製造することが可能である。
<プロポリス抽出物の分画>
まず、抽出工程を行った。即ち、ブラジルのミナスジェライス州原産のグリーン・プロポリス原塊300gに25容量%含水メタノール1500mLを加え、40℃で4時間撹拌することにより抽出工程を行った後、得られた抽出液を2000rpmで5分間遠心することにより上清を得た。この上清を濃縮した後に凍結乾燥することにより、プロポリス抽出物53.1gを得た。
次に、分離工程を行った。即ち、得られたプロポリス抽出物25.0gを25容量%含水メタノール250mLに溶解した溶液を、ODSカラム(富士シリシア社製、カラム直径70mm、カラム長さ400mm、担体の粒径100μm、担体の容量1000mL)に通した後に分画した。分画は、まず、25容量%含水メタノール1000mLで溶出することにより溶出画分Aを得た後、50容量%含水メタノール3000mLで溶出することにより溶出画分Bを得、さらに99容量%メタノール1500mLで溶出することにより溶出画分Cを得ることにより行われた。各溶出画分A〜Cをそれぞれ濃縮した後に凍結乾燥したところ、溶出画分Aが14.6g、溶出画分Bが7.75g、溶出画分Cが1.76g得られた。
<血球系癌細胞に対する細胞増殖抑制及び細胞分化誘導に関するインビトロ試験1>
得られた各溶出画分A〜Cについて、急性前骨髄球性白血病細胞株であるHL60細胞に対する細胞増殖抑制効果及び細胞分化誘導効果を調べた。HL60細胞は、分化能を有し、種々の化学物質に反応して増殖が停止し、顆粒球、又は、単球/マクロファージに分化する性質を有する。本試験で用いたHL60細胞は、ヒューマンサイエンス研究資源バンクより供与を受け、非働化ウシ胎児血清(FBS)を10容量%含有するRPMI−1640培地(シグマ社製の♯R8758)中、37℃、5容量%二酸化炭素存在下で継代培養されたものである。
12ウェルプレート(ヌンク社製の♯150628)の各ウェルに、1ウェル当たり2×10個のHL60細胞を播種した。なお、各ウェル内のHL60細胞は、FBS含有RPMI−1640培地2mL中に懸濁されている。続いて、溶出画分A〜Cの試料をそれぞれ終濃度0〜400μg/mLとなるように各ウェル内に添加した後、37℃、5容量%二酸化炭素存在下で72時間培養した。その後、トリパンブルー色素排除法を用いて、各ウェル内の生細胞の数をそれぞれ計測し、72時間培養後の細胞増殖率をそれぞれ求めた。
次に、各ウェル内のHL60細胞をマイクロチューブ内にそれぞれ集めた後、1500rpmで5分間遠心することにより培地を除去した。続いて、各マイクロチューブ内にNBT溶液100μL及びRPMI−1640培地100μLを加えて混合した後、フォルボールエステル(12-o-tetradecanoylphorbol-13-acetate ;TPA)2μLを加え、37℃で30分間インキュベートした。なお、前記NBT溶液は、ニトロブルーテトラゾリウム(シグマ社製の♯N−5514)2mgを1mLのリン酸カリウム水溶液に溶解したものと、0.425質量%の塩化ナトリウム水溶液とを等量混合することにより調製された。次に、インキュベート後の各マイクロチューブを3000rpmで5分間遠心して上清を除去した後、各マイクロチューブ内にリン酸緩衝液(PBS)を50μLずつ加え、NBT還元活性をそれぞれ計測することにより、72時間培養後におけるHL60細胞の分化誘導率をそれぞれ求めた。なお、前記PBSは、137mMのNaCl、2.7mMのKCl、1.5mMのKHPO及び8mMのNaHPOを含む、pH7.3の水溶液である。
コントロールとしては、試料としての各溶出画分A〜Cの代わりに蒸留水を用いた溶媒対照群と、試料としての各溶出画分A〜Cの代わりにATRAを用いた陽性対照群とを準備し、上記と同様に試験した。なお、前記ATRAは、オールトランスレチノイン酸(all-trans retinoic acid ;シグマ社製のR−2625)であり、一般にHL60等の白血病細胞を好中球へと分化誘導するために用いられる。その結果、100〜200μg/mLの溶出画分Bを添加したHL60細胞のみに、細胞増殖抑制効果及び細胞分化誘導効果が有意に確認された。ちなみに、NBT還元活性は、分化した顆粒球特異的に発現される活性である。また、死滅した細胞の核をヘキスト33342にて染色したところ、溶出画分Bを添加したHL60細胞には、アポトーシスに特徴的な核の凝縮及び断片化が確認された。
<細胞増殖抑制及び細胞分化誘導を引き起こす成分の同定>
溶出画分Bを核磁気共鳴装置(NMR;バリアン社製、300MHz)にて解析した。その結果、この溶出画分Bには、4,5−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、及び3,4,5−トリカフェオイルキナ酸が豊富に含まれていた。
<細胞増殖抑制及び細胞分化誘導を引き起こす成分の精製>
実施例1の溶出画分BをHPLC(カラム直径20mm、カラム長さ250mm、担体は資生堂製のACRタイプシリカゲル、溶出溶媒は2容量%酢酸を含有する17容量%アセトニトリル水溶液、検出波長は325nm)により、画分B−1、画分B−2及び画分B−3の3つの画分に分画した。各画分B−1〜B−3について細胞増殖率及び分化誘導率を前記と同様に測定したところ、画分B−1及び画分B−2に細胞増殖抑制効果及び細胞分化誘導効果が確認された。
次に、画分B−1及び画分B−2をそれぞれ前記HPLCと同じ条件で、さらに細かく分画した。このときのクロマトグラフィチャートを図1(a)、(b)に示す。その結果、画分B−1には4,5−ジカフェオイルキナ酸(図1(a)のピークa)及び3,5−ジカフェオイルキナ酸(図1(a)のピークb)が含まれており、画分B−2には3,4−ジカフェオイルキナ酸(図1(b)のピークc)及び3,4,5−トリカフェオイルキナ酸(図1(b)のピークd)が含まれていた。なお、これら各ピークa〜dを構成する各成分は、上記と同様にNMRにて同定及び確認した。最後に、各ピークa〜dを含む画分(以下、精製画分α〜δと記載する)をそれぞれ濃縮した後に凍結乾燥した。
<血球系癌細胞に対する細胞増殖抑制及び細胞分化誘導に関するインビトロ試験2>
各精製画分α〜δについて、上記実施例1と同様に、HL60細胞に対する細胞増殖抑制効果及び細胞分化誘導効果をそれぞれ調べた。結果を表1に示す。
Figure 0004644500
なお、表1の細胞増殖率は、72時間培養後の溶媒対照群の細胞数を100としたときの細胞増殖率の相対値を示す。また、表1の分化誘導率は、72時間培養後の細胞200個を調べ、そのうち分化誘導された細胞の数をNBT還元活性に基づいて算出することにより求めた。ちなみに、溶媒対照群における分化誘導率は1.7%であった。
表1に示すように、各精製画分α〜δは、それぞれHL60細胞に対して、濃度依存的に細胞増殖抑制効果及び細胞分化誘導効果を有することが明らかとなった。これらの精製画分のうち、精製画分δが最も高い分化誘導効果を有することも明らかとなった。
以下、参考例を示す。
<固形癌に対する細胞増殖抑制に関するインビトロ試験>
各精製画分α〜δについて、ヒト大腸癌細胞株であるSW480細胞に対する細胞増殖抑制効果をMTTアッセイ法により調べた。MTTアッセイ法とは、生細胞中のミトコンドリア内脱水素酵素活性を測定することにより、生細胞数を相対的に測定する方法である。具体的には、MTT( 3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide )を細胞の培地に加えたとき、細胞が生きていればミトコンドリア内脱水素酵素によってMTTが還元され、暗青色のMTTホルマザンを生成する。生成したMTTホルマザンの量は、570nmにおける培地の吸光度を測定することにより求められる。
即ち、96ウェルプレート(ヌンク社製の♯167008)の各ウェルに、1ウェル当たり1×10個のSW480細胞を播種した。なお、各ウェル内のSW480細胞は、FBS含有RPMI−1640培地(シグマ社製の♯13K2445)100μL中に懸濁されている。続いて、精製画分α〜δの試料をそれぞれ終濃度0〜500μMとなるように各ウェル内に添加した後、37℃、5容量%二酸化炭素存在下で72時間培養した。コントロールとしては、試料としての各精製画分α〜δの代わりに蒸留水を用いた溶媒対照群を準備し、上記と同様に試験した。
その後、MTT Cell Growth Kit 1000 Assays(CHEMICON社製の#24060069)を用い、該キットのプロトコールに従って、試薬を各ウェル内に添加した。96ウェルプレートの各ウェルについて、プレートリーダー(BIO−TEK社製)を用いて570nmにおける吸光度を測定した。細胞増殖率は、72時間培養後の溶媒対照群の吸光度を100としたときの各精製画分α〜δの吸光度の相対値を求めることにより算出した。結果を表2に示す。
Figure 0004644500
表2に示すように、各精製画分α〜δは、それぞれSW480細胞に対して、濃度依存的に増殖抑制効果を有することが明らかとなった。なお、3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸及び3,4,5−トリカフェオイルキナ酸はいずれも100μM以上、4,5−ジカフェオイルキナ酸は500μM以上の濃度で顕著な増殖抑制効果を有していた。また、死滅した細胞を顕微鏡下で観察したところ、各精製画分α〜δを添加したSW480細胞では、それぞれアポトーシスに特徴的な細胞の断片化が確認された。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ キナ酸誘導体は、プロポリス原塊以外の動物素材又は植物素材(甘藷(カンショ)の葉、ヨモギ、コーヒー豆、ヒマワリの外皮等)から抽出することも可能である。また、キナ酸誘導体は、人為的に有機化学合成されたものであっても構わない。
薬品には、キナ酸誘導体に加え、レチノイン酸やビタミンDのようなビタミン類、及び/又は、ケルセチンやゲニステインのようなフラボノイド類を添加してもよい。
・ キナ酸誘導体は、正常な血球系細胞に作用すると免疫賦活作用を発揮し得る。このため、キナ酸誘導体は、免疫賦活剤としての用途に利用可能である。
・ キナ酸誘導体を含有する医薬部外品を製造してもよい。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する
・ キナ酸誘導体を有効成分として含有し、分化誘導作用を有する医薬品。このように構成した場合、細胞分化誘導作用を発揮するため、癌の治療に有用な医薬品が提供される。
(a)は実施例2の画分B−1をHPLCで精製したときのクロマトグラフィチャートを示し、(b)は画分B−2をHPLCで精製したときのクロマトグラフィチャートを示す。

Claims (2)

  1. キナ酸誘導体として4,5−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、3,4−ジカフェオイルキナ酸、及び3,4,5−トリカフェオイルキナ酸から選ばれる少なくとも1種を有効成分とし、AML又はCMLに適用される細胞分化誘導剤
  2. 請求項1に記載の細胞分化誘導剤の製造方法であって、
    該方法は抽出工程と分離工程とを備え、
    前記抽出工程は、プロポリス原塊を第1の親水性有機溶媒に浸漬させ、該溶媒中に抽出されるプロポリス抽出物を得る工程であり、
    前記分離工程は、前記抽出工程によって得られたプロポリス抽出物を前記第1の親水性有機溶媒を移動相とする逆相液体クロマトグラフィ担体に接触させた後、該担体に吸着した前記有効成分を第2の親水性有機溶媒で溶出する工程であり、
    前記第1の親水性有機溶媒は10〜40容量%の含水メタノール又は含水エタノールからなり、前記第2の親水性有機溶媒は50容量%以上の含水メタノール又は含水エタノールからなることを特徴とする細胞分化誘導剤の製造方法。
JP2005027876A 2005-02-03 2005-02-03 細胞分化誘導剤及びその製造方法 Expired - Fee Related JP4644500B2 (ja)

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