JP4642599B2 - 放射性物質除去フィルターユニット - Google Patents

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本発明は、医療施設や原子力施設などで発生したガス状の放射性物質を捕集除去する放射性物質除去フィルターユニットに関するものである。
従来、医療施設や原子力施設などにおいては、放射性ヨウ素などのガス状の放射性物質が排出されるため、空調施設の気体処理経路中に空気浄化装置を設置し、発生した放射性気体分の濃度を法律に規制された基準値以下に低下させた後、施設外に排出している。
近年は、原子力技術の利用の高まりから、大学の研究施設や医療施設あるいは原子力発電所などにおいて排出される放射性気体量も増加する傾向にあり、また、環境面への配慮からも、大気中に排出される放射性気体の濃度の規制が一段と厳しく設定されてきている。
このため、設置されている空気浄化装置の見直しが図られてきているが、放射性気体濃度の規制の厳格化が図られると、既設の空気浄化装置を取り替えたり改変したりしなければならないという事態が生じる。現在一般的に用いられているフィルターユニットは「トレイ型」と呼ばれる、側面の一方向の流入口から気体が流入し、流入された気体がチャコール層を介して垂直方向に流れる構造をとっている。図1にトレイ型フィルターユニットを使用した装置を掲げる。図1の装置では、施設内の放射性同位元素を含んだ気体はプレフィルター1、HEPAフィルター2を通じて上下に各々約5cm厚に調製された粒状活性炭固定床の側面の所定の開口面積を有する流入口3より流入し、固定床4を通じて放射性同位元素を吸着して上下に排気される。トレイ型ユニットは上下2層からなる活性炭固定床4を有し、これが装置のレール状のジャケット5に置かれて固定される。上下の固定床の間は約3cmの空間を有しており、側面の流入口から流入したガスはこの空間を通じて上下の活性炭固定床に通じる。
こうしたトレイ型フィルターユニットとしては、例えば鋼板またはSUS板からなる箱形フレーム内にガスケットを介して上下に各2枚の平行なパンチング板を設け、そのパンチング板の間に粒状活性炭を充填したものが知られている(特許文献1参照)。このようなトレイ型ユニットに用いられる粒状活性炭は、使用後においては集荷した後、次の要領で解体し、焼却処理がなされている。即ち、側面に設けられた取出口の蓋のビスを外して取り外し、トレイ型ユニットを専用の装置で傾けながら内部の活性炭を回収容器内に回収する。また新しい活性炭はこれと逆の操作で投入される。回収された活性炭は焼却炉へ定量投入して炉内で旋回しながら焼却すると共に、フレーム等は圧縮処理装置で圧縮してドラム缶に封入している。前記従来のトレイ型フィルターユニットは、充填時の重量が50kg以上あるため取り扱いにくく、また活性炭を回収容器内に移し変える際に粉塵が発生して作業環境が悪くなり、更にはフレームが鋼板またはSUS板からなるために焼却できず、解体作業が面倒であるばかりでなく、解体後に圧縮しても減容率が小さく、貯蔵するドラム缶の数量が多くなり、廃棄物貯蔵施設が手狭になるという不都合を有していた。
そのため、シート化されたチャコールフィルターを内蔵し、該シート状チャコールフィルターへの通過による放射性気体成分の捕集除去を行うことが提案されている(特許文献2参照)。また、ここではチャコールフィルターは織布状、不織布状の活性炭素繊維が用いられている。しかしながら、ここで用いられている活性炭素繊維を用いたフィルターユニットは前述のトレイ型に対応するものでないため、これをそのまま用いることができない。そこで本発明者らは、ひだ折りされたフィルターの山を流入口側に向けて配置し、フィルターユニットの枠体の流出側の上下面の少なくとも一方に貫通孔を設置したフィルターユニットを提案した(特許文献3参照)。
しかしながら、最近ではさらに高い捕集効率や寿命を得るためにフィルターユニット中に多層のフィルターを積層して充填することが求められている。この場合、所定の通過線風速を維持するのに必然的に山と山の間隔を狭める必要があるが、このフィルターユニットでは、ひだ折りされた山高さが高いために山と山の間隔を狭めるとユニットの圧力損失が高くなってしまう問題を有している。
特公昭62−44239号公報 特開2003−66191号公報 特願2004−297695号公報
本発明は、上記従来技術の問題を解消するために創案されたものであり、より多くの量の活性炭素繊維を充填したトレイ型ユニットを可能にして、従来のトレイ型ユニットと同等程度の圧力損失を維持し、かつ従来の問題である重量による取扱性を向上させ、かつ燃焼の可能なトレイ型ユニットを提供することを技術的な課題とするものである。
本発明はかかる課題を達成するために鋭意検討した結果、得られたものである。
即ち、本発明は側面の一方向の流入口から気体が流入し、流入された気体がフィルターを介して垂直方向に相対する上下面の少なくとも一方の流出口から流出するトレイ型の放射線物質除去フィルターユニットにおいて、側面の流入口から流入した気体が、ひだ折りされたフィルターを介して流入口の流れと垂直の方向へ流出することを特徴とする放射性物質除去フィルターユニットである。
本発明の放射性物質除去フィルターの好ましい態様では、ひだ折りされたフィルターの一方の面が外部に露出し、他方の面が天板内壁とひだ折りされたフィルターの間に気体が流入口より流れ入るための空隙部dを有し、空隙部dにおけるフィルターと天板内壁の間隔(Dd)がひだ折りされたフィルターの山高さの10%以上確保されるようになっており、また流入口とフィルター保持板の間に空隙部aを有し、空隙部aにおける流入口とフィルター保持板の間隔(Da)は、空隙部dにおける間隔(Dd)より大きくなっており、またひだ折りされたフィルターが活性炭素繊維を主成分としたシートで構成されており、またフィルターユニットの枠体および壁面、およびひだ折りされたフィルター内のセパレーターが燃焼可能な材料で構成されている。
本発明によれば、より多くの量の活性炭素繊維を充填して高い捕集効率や寿命を得ながら、従来のトレイ型ユニットと同等程度の圧力損失を維持し、かつ問題である重量による取扱性を向上させ、かつ燃焼の可能なトレイ型ユニットを提供することが可能となる。
以下、本発明の放射性物質除去フィルターユニットを詳細に説明する。
図2a及び図2bは本発明のフィルターユニット例の全体概略図であり、それぞれ流入口側よりユニットの枠体天板方向及び濾材開口面方向から見た図を示す。図2a及び図2bからわかるようにフィルターユニットはひだ折りされたフィルター6とセパレーター7、これらを囲う枠体8a、フィルターをユニット内部で保持する板9から構成される。流入口の前にはフィルター保持板9があり、その保持板9の向こう側に放射性物質を濾過するフィルター6がある。フィルター6の上下面のうち一方にはフィルター6と天板8b内壁の間に気体の通路が存在するように天板8bを設け、他方にはフィルターが外部に露出するように枠体に開口を設けている。図3は図2a及び図2bのフィルターユニットが取り付けられたトレイ型フィルターユニット装置の断面図の一部を示す。図3に示すようにフィルターユニットはフィルター保持板9が見える側を流入口3側にするようにレール状のジャケット5に取り付けられる。気体は流入口3から、流入口3と保持板9の間に保持されている空隙部aと、天板8bの内壁とフィルター6の間に構成されている空隙部dを通じて、ひだ折りされかつセパレーターにより一定の間隔を有したシート状のフィルター6を通過して流入口3の流入方向に対して垂直の方向に排出される。
本発明のフィルターユニットは、図3に示すようにひだ折りされたシート状フィルターが流入口3と保持板9の間の一定の間隔(Da)が存在する空隙部aと、ユニットの天板8b内壁とひだ折りされたフィルター6の間の一定の間隔(Dd)が存在する空隙部dによって空気の緩衝部分を構成し、これによりひだ折りされたフィルターに低圧損で均一な流速分布を提供することが可能となる。また、この緩衝部分により一方の側面の流入口から流入した気体が流入口の流れと垂直の方向へ流出することができる。ひだ折りされたシート状フィルターの保持板9と流入口3の間の空隙部aの間隔(Da)は空気の流通に対する構造抵抗抑制のため、少なくともユニットの天板8b内壁とひだ折りされたフィルターの間の空隙部dの間隔(Dd)より大きいことが好ましく、DaはDdの1.5倍以上であることがより好ましい。DaがDdに対して小さい場合、構造抵抗が大きくなり、フィルターユニットの圧力損失が上昇し、好ましくない。また、ユニットの天板8b内壁とひだ折りされたフィルターの間の空隙部dの間隔(Dd)はフィルターへの均一な風速分布を得るうえで大きいほど望ましいが、ひだ折りされたフィルターの山高さの好ましくは10%以上、より好ましくは12%以上、さらに好ましくは15%以上である。Ddがフィルター山高さの10%より小さい場合、フィルターに風速の分布が生じ、フィルターが有効に利用されない部位が生じてしまうため好ましくない。
本発明のフィルターは活性炭素繊維を主材料とするシート状のものであることが望ましい。ここで使用される活性炭素繊維は公知の方法で製造されたものであり、例えばBET法による比表面積が700m/g以上を有し、かつBJH(Barrett−Joyner−Halenda)法、マイクロポア孔についてはHK(Horvath−Kawazoe)法により求められた細孔分布から算出された細孔直径3〜30nmの細孔容積0.15cc/g以下、細孔直径3nm未満の細孔容積0.50cc/g以上の細孔特性を有するものが有機系ヨウ素化合物の脱離および加熱による脱着が生じないため好ましく使用される。形態としては不織布、織布、編地、紙状物でシートであれば特に限定されない。また、除去特性を向上させるために所定のシートを何層にも積層したり、製造時の取扱性向上のため他の素材からなるシートを積層して用いてもよい。しかしながら、あまり充填密度の高いシートを用いた場合、圧力損失が高くなるため、シートの透過速度係数が0.02〜0.2cm/s/Paであることが望まれる。透過速度係数とはある一定の圧力損失がある場合の気体の風速を示すものであるが、望ましくは0.03〜0.19cm/s/Pa、さらには0.04〜0.18cm/s/Paであることが特に望ましい。本来はこうした透過速度係数は大きいほど望ましいが、0.2cm/s/Paより大きい場合、有効な除去効率と寿命を確保することが困難となり、また0.02cm/s/Paより小さい場合は気体が流通しにくくなっているため本来の使用条件の風速に対応することが困難になり、好ましくない。シートは厚みが2〜20mmであり、重量が200〜2000g/mであることがひだ折り時のハンドリングにおいて望ましいが、設定風量などが適宜勘案されるため特に限定されるものではない。
また、特にフィルターの有機ヨウ素の除去特性を向上させるために活性炭素繊維に1種類以上の薬品を添着してもよい。かかる薬品としては、1,4−ジアザ−2,2,2−ピシクロオクタン(トリエチレンジアミン)、N,N’−ビス−(3−アミノプロピル)−ピペラジン、N,N−ジメチル−アミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、1,5−ジアザビシクロウンデセン、ポリ−3級−ブチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレンイミン、1,5−ジアザピシクロ〔4,3,0〕ノン−5−エン、1,5−ジアザピシクロ〔5,4,0〕ウンデ7−5−エン、2−メチル−1,4−ジアザピシクロ〔2,2,2〕オクタン、フェニルヒドラジン、2−シアノピリジン、ジイソプロピルアミン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ヘキサメチレンテトラミン、メチルポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミン等のアミン類の他、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化錫などの金属ヨウ化物が好適に用いられる。
さらに、本発明のフィルターユニットは枠体が燃焼可能な材料で構成されていることが好ましい。このことにより従来のように重量のある鋼板製のトレイ型ユニットを活性炭の交換時に専用の装置を用いて取り扱うことなく、ユニット全体の交換で済むため作業者の負担が軽減される他、燃焼可能な材料と活性炭素繊維のフィルターを一緒に焼却できるため燃焼効率が良くなり、廃棄業者の負担も軽減される。燃焼可能な材料としては木材の他プラスチック類、ダンボールのような紙類、繊維成形物などが挙げられるが、空気中で燃焼するものであればこれに限定されない。
次に実施例、比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、測定方法は下記の方法に準拠した。
(1)透過速度係数
フィルターサンプルを7cmφに打ち抜き、風速8cm/secの空気を流してそのときの圧力損失を計測する。さらに風速をそのときの圧力損失で除して透過速度係数とした。
(2)細孔特性
島津製作所製ASAP2010を使用し液体窒素温度における窒素吸着等温線より以下の各項目を算出した。
比表面積:BET法による(相対圧0.02〜0.2)
細孔容積:メソポア孔についてはBJH(Barrett−Joyner−Halenda)法により、マイクロポア孔についてはHK(Horvath−Kawazoe)法により求められた細孔分布から算出した。
実施例
公知の方法で得られた比表面積が1490m/g、細孔直径3〜30nmの細孔容積が0.01cc/g、細孔直径3nm未満の細孔容積が0.83cc/g、重量が200g/m、厚みが2.5mmの活性炭素繊維不織布3枚とその両面に重量100g/mのポリプロピレン繊維からなる不織布をニードルパンチにより積層し、積層フィルターAとした。この積層フィルターの厚みは9mm、重量は1500g/m、透過速度係数は0.16cm/s/Paであった。さらに同様の活性炭素繊維不織布2枚とその両面に重量100g/mのポリプロピレン繊維からなる不織布をニードルパンチにより積層し、積層フィルターBとした。この積層フィルターの厚みは5mm、重量は600g/m、透過速度係数は0.24cm/s/Paであった。
このフィルターA、Bを引きそろえて山高さ130mm、山数15山でひだ折り加工し、幅607mmにスリットし、ひだとひだの間に山高さ5mm、長さ607mm、幅110mmの波型セパレーターを挿入して寸法607mm×591mm、高さ130mmのひだ折りフィルターとした。
厚み12mm、幅155mmの合板を用いて外寸615mm(内寸591mm)×700mm(高さ155mm)のコの字型に枠を組み、フィルターが接する部分に発泡ウレタン樹脂を塗布してひだ折りフィルターを固定した。このときひだ折りフィルターの山側になっている部分をコの字枠の下の部分に固定し、高さ155mmのうち22mmが余るように固定した。フィルターが固定されていない一方の端面に591mm×130mm(厚み12mm)の合板を発泡ウレタン樹脂を塗布してフィルターに接合した。このとき枠組みには66mm分の合板部分が突出していた。
ここに66mm(厚み12mm)の合板を用意して長さ591mmにカットし突出している部分の下の部位に接合した。さらにこの木枠の上面、即ちフィルターとの間に22mmのスペースが形成されている方向に700mm×615mm(厚み6mm)の天板を取り付け、図2a,2bに示すようなトレイ型フィルターユニットとした。このフィルターユニットの重量は8kgで、このときの流入口とフィルター保持板の間隔(Da)は66mm、フィルターと天板内壁の間隔(Dd)は22mmであった。空隙を構成する部分には合板との接合部分にリークが生じないようにシリコン樹脂でシールした。
このユニットを開口部が580mm×50mmの寸法を有するトレイ型ユニット装置に装着した。このときのユニットの圧力損失は風速9.4m/分で320Paであった。
比較例
実施例で使用した活性炭素繊維不織布を676mm×591mmの寸法で14枚分用意した。外寸700mm×615mm×50mm、厚み12mmの木枠を2つ作り、各々木枠の底にプラスチック製のネットを張った。木枠の中に先の用意した活性炭素繊維不織布を7枚ずつ入れ、活性炭素繊維と木枠の部分に接着剤を塗布して接着した。
さらに700mm長×60mm幅、厚み12mmの合板2枚、および615mm長×60mm幅、厚み12mmの合板1枚をコの字型に組み、それを活性炭素繊維の充填された木枠のひとつの上に寸法を合わせて乗せ、さらにその上にもうひとつの活性炭素繊維の充填された木枠を寸法を合わせて乗せた。こうして外寸奥行700mm、幅615mm、高さ160mmで側面が開口しているひだ折りされていないフィルターユニットを作成した。このユニットの活性炭素繊維含有量は1230gであり、全体重量は9kgであった。
このユニットを開口部が580mm×50mmの寸法を有するトレイ型ユニット装置に装着した。このときのユニットの圧力損失は風速9.4m/分で1509Paであった。
従来のトレイ型フィルターユニットを使用した装置を示す。 本発明のトレイ型フィルターユニットの一例を示す。 本発明のトレイ型フィルターユニットの一例を示す。 本発明のトレイ型フィルターユニットを取り付けた装置の断面図の一部を示す。
符号の説明
1 : プレフィルター
2 : HEPAフィルター
3 : 流入口
4 : 活性炭固定床
5 : レール状ジャケット
6 : フィルター
7 : セパレーター
8a: 枠体
8b: 枠体(天板)
9 : フィルター保持板

Claims (4)

  1. 側面の一方向の流入口から気体が流入し、流入された気体がフィルターを介して垂直方向に相対する上下面の少なくとも一方の流出口から流出するトレイ型の放射線物質除去フィルターユニットにおいて、側面の流入口から流入した気体が、ひだ折りされたフィルターを介して流入口の流れと垂直の方向へ流出すること、及びひだ折りされたフィルターの一方の面が外部に露出し、他方の面が天板内壁とひだ折りされたフィルターの間に気体が流入口より流れ入るための空隙部dを有し、空隙部dにおけるフィルターと天板内壁の間隔(Dd)がひだ折りされたフィルターの山高さの10%以上確保されていることを特徴とする放射性物質除去フィルターユニット。
  2. 流入口とフィルター保持板の間に空隙部aを有し、空隙部aにおける流入口とフィルター保持板の間隔(Da)は、空隙部dにおける間隔(Dd)より大きいことを特徴とする請求項1に記載の放射性物質除去フィルターユニット。
  3. ひだ折りされたフィルターが活性炭素繊維を主成分としたシートで構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射性物質除去フィルターユニット。
  4. フィルターユニットの枠体および壁面が燃焼可能な材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放射性物質除去フィルターユニット。
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