JP4642425B2 - 水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水構造及びその工法 - Google Patents
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Description
図中の符号Aは建物の屋上やバルコニーなど(の平面部)を示し、Bはパラペットを示す。また、符号1は屋上やバルコニーを構成している躯体下地、2はパラペットの立上り部、3は水切りあご部、4は躯体下地1の上面に設けられた防水層である。防水層4の上面には断熱層5が形成される場合があり、最上面に保護層としてのコンクリート層6が敷設されている。他方、パラペットの立上り部2の内側(水切りあご部3の下部)には、当該立上り部2の内側における防水層4’を保護するための保護ブロック壁7が設けられている。
このような構造を持つパラペットの屋上防水を補修もしくは改修する場合、従来では、立上り部2内側の保護ブロック壁7も含めて防水層4を全て撤去して躯体下地1を露出させ、然る後に新たに防水層を立上り部2に形成していた。そのために、旧防水層の撤去にそれなりの工期と費用を要するだけでなく撤去時の騒音、塵埃等の発生が不可避であり、且つ補修もしくは改修が完了するまでの間、常に降雨対策が必要となる。しかも、パラペットの全高が400mm前後の低いものがあり、その場合、当該部分の保護層や防水層の除去作業並びに改修作業が不自然な姿勢での作業とならざるを得ない不具合があった。
本発明はこの様な従来の不具合に鑑みてなされたものであり、既存の防水層を撤去せずとも改修することが出来、改修に要する工期及び費用を大幅に低減することが可能であると共に、現場ごとに異なるパラペットの形状に容易に対応して現場において迅速且つ簡便に施工することが可能なパラペットを有する屋上改修防水構造及び改修防水工法を提供せんとするものである。
しかも、既設のパラペットの水切りあご部から既設の屋上平面部にわたる部分を被覆するのに変形可能なシート体を使用してなるので、各現場毎に高さや形状が異なるパラペットに対しても現場において容易に対応することが可能となり、迅速且つ簡便に施工することができる。
また、既設の屋上平面部及び水切りあご部の天端に、差込み溝を有する差込み支持部材や差込み係合部材を設置して、これら差込み支持部材や差込み係合部材の差込み溝に変形可能なシート体の下辺及び上辺を差込み係合することにより、変形可能なシート体を簡便に固定させることが出来るので作業性が一層のこと向上し、改修に要する工期を大幅に短縮させることが可能となると共に、天端を直線的に綺麗に仕上げることができる。
更に、変形可能なシート体を使用することにより、重設防水層(シート防水材)の機械的固定工法と接着工法が可能になると共に、ウレタンやFRPなどによる塗膜防水も可能となる。
また、全図面を通して同様の構成部材には同一の符号を付してある。
その中でも塩化ビニル樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,エチレン酢ビ共重合体樹脂,アクリル樹脂,ウレタン樹脂,ポリスチレン樹脂,ABS樹脂などが最適である。ちなみに、使用する樹脂製のシート体8の厚みとしては0.2mm〜20mmの範囲のものが好ましい。
剛性体12を金属で形成する場合、例えば鉄,銅,アルミニウム,クロム,亜鉛,ニッケル,錫などの単体又はこれらを含む合金からなる厚さ0.5mm〜2.0mmの板材、或いはこれらの板材を心材としたメッキ品もしくは樹脂コーティング品などが用いられる。
剛性体12として使用しえる樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂,酢酸ビニル-塩化ビニル共重合樹脂,エチレン-塩化ビニル共重合樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,アクリル樹脂,ウレタン樹脂,ポリスチレン樹脂,ABS樹脂,エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂,等の合成樹脂から選ばれた1種または2種以上に、可塑剤,安定剤,有機又は無機充填材,紫外線吸収剤,難燃剤,酸化防止剤,滑剤,導電剤,ゲル化促進剤,加工助剤,着色剤等の公知の添加剤を適宣配合してなるものを挙げることが出来、中でも塩化ビニル樹脂,ポリエチレン樹脂,ポリプロピレン樹脂,エチレン-酢ビ共重合体樹脂,アクリル樹脂,ウレタン樹脂,ポリスチレン樹脂,ABS樹脂又はこれらの混合体などが最適である。
その中でも塩化ビニル樹脂,エチレン-酢ビ共重合体樹脂,エチレン-プロピレン共重合樹脂,エチレン-アクリル酸エチル共重合樹脂,エチレン-アクリル酸メチル共重合樹脂等の熱可塑性樹脂、ABS樹脂、或いはハードセグメントとソフトセグメントとを有する塩化ビニル系熱可塑性エラストマー,オレフィン系熱可塑性エラストマー,ポリエステル系熱可塑性エラストマー,ウレタン系熱可塑性エラストマー,スチレン系熱可塑性エラストマー,加硫ゴム,非加硫ゴム等が最適である。更に、天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、鉱物繊維などからなる編物や織布又は不織布を軟質体13として使用することも可能であり、勿論、これらの繊維は単独でも2種以上を複合して使用しても良い。ここで、軟質体13として使用する樹脂の厚みは0.1mm〜2.0mm程度が好ましく、幅は0.1mm〜50mmの範囲のものを使用し得、中でも0.5mm〜10mmの範囲のものが最適である。
この重設防水層9は、変形可能なシート体8として使用した樹脂と同様の樹脂を用いて形成された防水シートや、ウレタンやFRPなどによる塗膜防水により形成される。
なお、重設防水層9をパラペット天端部B1及び平面部Aで固定する場合、固定方法は重設防水層として使用された材質により変更する必要性があるため、上記した固定方法に限定されるものではない。
先ず、予め工場等で作製された変形可能なシート体8を、改修現場において既設のパラペットBの立上り部2の高さ及び水切りあご部3の大きさに応じて、少なくともパラペットBの水切りあご部3から既設の屋上平面部Aにわたる大きさに折り曲げたり或いは切断加工を行なう。折り曲げや切断加工には、はさみやカッター、その他の適当な工具を使用する。
次に、上記した変形可能なシート体8を、パラペットBの水切りあご部3から既設の屋上平面部Aにわたって張設する。この際、変形可能なシート体8の上端及び下端は、塩ビ被覆鋼板等からなる固定金具10,10’で挟み込み又はビス固定もしくは粘着テープ固定される。特にパラペットBの天端B1においては、シーリング材11を使用することが望ましい。そうすることにより、パラペットBの天端B1における水密性が向上する。
ちなみに、ここで用いるシーリング材としては、シリコーン系,変性シリコーン系,ポリサルファイド系,ポリウレタン系,アクリル系,エポキシ系,ガラスパテ,アスファルト系,ポリブデン系,ポリプロピレン系,ブチル系,ゴムアスファルト系,ポリ塩化ビニル系,クロロプレンゴム系,クロロスルフォン化ポリエチレン系,アスファルト含浸ウレタン系のものを使用し得るが、中でもブチル系やシリコーン系を主成分とするシーリング材が望ましい。
緩衝材18を介設することにより、変形可能なシート体8のガタツキ防止になると共に、変形可能なシート体8が建物の動きに追従し、挙動安定性をもたらすことが可能になる。
更に、天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、鉱物繊維などからなる編物、織布、不織布を緩衝材18として使用することも可能であり、もちろん、これらの繊維は単独でも2種以上複合して使用しても良い。ちなみに、緩衝材18として使用する樹脂の厚みは1〜20mm程度が好ましく、幅は10mm〜50mmの範囲のものを使用し得、中でも3〜5mmの範囲のものが最適である。
本発明の実施例1を図4に示す。この実施例では、変形可能なシート体8として図2に示したような剛性体12と軟質体13からなる複合体を使用し、剛性体12が縦方向に並列するようにパラペットBの形状に合わせてカッターで切断加工した。そして、シート体8の下部を、既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)に設置した略逆U字形をしたアルミニウム製差込み支持部材15に差込み固定すると共に、パラペットBの天端B1には一辺16’を略倒L字形に屈曲形成した塩ビ被覆鋼板からなる差込み係合部材16を設置して、シート体8の上部をパラペットの水切りあご部3と差込み係合部材16の一辺16’との間に差し込んで固定した。そして、シート体8の表面並びに既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)に予めニトリルゴム系接着剤を塗布しておき、パラペットBの天端B1から既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)にわたって塩化ビニル製防水シートからなる重設防水層9を被せ、重設防水層9をシート体8並びに既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)に接着すると共に、差込み係合部材16に熱溶着した。
第2実施例を図5に示す。この実施例では、変形可能なシート体8として、図2に示したような剛性体12と軟質体13からなる複合体に、予め塩ビ製シートを積層一体化したものを使用し、剛性体12が横向きに並列するようにパラペットBの形状に合わせてカッターで切断加工した。この場合、シート体8の背面側にシート体8の繋ぎの部分に厚み0.8mm、幅100mmの鋼板からなる補強部材14を設置した。そして、前記シート体8の下部を既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)に設置した略逆U字形をしたアルミニウム製差込み支持部材15の差込み溝15aに差し込み固定すると共に、パラペットBの天端B1には一辺16’を略倒L字形に屈曲形成した塩ビ被覆鋼板からなる差込み係合部材16を設置して、シート体8の上部をパラペットの水切りあご部3と差込み係合部材16の一辺16’との間に差し込んで固定した。然る後に、パラペットBの天端B1に塩化ビニル製防水シートからなる重設防水層9をその一部9”が前記シート体8上に重なり合うように敷設せしめ、塩ビ被覆鋼板製差込み係合部材16に熱融着した。更に、既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)に塩化ビニル製防水シートからなる重設防水層9を、その一部9’が前記シート体8上に重なり合うように敷設して、既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)に接着剤で接着固定すると共に、重なり合った部分9’を前記シート体8に溶着した。
第3実施例を図6に示す。この実施例では、変形可能なシート体8として、図2に示したような塩化ビニル樹脂からなる剛性体12と塩化ビニル軟質体13からなる複合体を使用し、剛性体12が縦方向に並列するようにパラペットBの形状に合わせてカッターで切断加工した。そして、シート体8の上辺と下辺に、粘着加工した塩化ビニル樹脂発泡体からなる緩衝材18を貼り付けた。一方、既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)に、断面略F字形状をした塩ビ被覆鋼板からなる差込み支持部材15を設置し、パラペットBの天端B1には一辺16’を略倒L字型に屈曲成形した塩ビ被覆鋼板からなる差込み係合部材16を設置して、シート体8の下辺を差込み支持部材15の差込み溝15aに差込み固定をすると共に、シート体8の上辺をパラペットBの水切りあご部3と差込み係合部材16の一辺16’との間に差し込んで固定した。そして、シート体8の表面並びに既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)に予めニトリルゴム系接着剤を塗布しておき、パラペットBの天端B1から既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)にわたって塩化ビニル製防水シートからなる重設防水層9を被せ、重設防水層9をシート体8並びに既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)に接着すると共に、差込み係合部材16に溶着した。
第4実施例を図8に示す。この実施例では、変形可能なシート体8として、図2に示したような塩化ビニル樹脂とABS樹脂の混合樹脂からなる剛性体12と塩化ビニル軟質体13からなる複合体を使用し、剛性体12が縦方向に並列するようにパラペットBの形状に合わせてカッターで切断加工した。そして、シート体8の上辺と下辺に、粘着加工した塩化ビニル樹脂発泡体からなる緩衝材18を貼り付けた。一方、既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)に、断面略F字形状をした塩ビ被覆鋼板からなる差込み支持部材15を設置し、パラペットBの天端B1には断面略F字形状をした塩ビ被覆鋼板からなる差込み係合部材16を設置して、シート体8の下辺を差込み支持部材15の差込み溝15aに差込み固定をすると共に、シート体8の上辺を差込み係合部材16の係合溝16aに差し込んで固定した。そして、パラペットBの天端B1から既設の屋上平面部A(保護コンクリート層6の上)にわたって塩化ビニル製防水シートからなる重設防水層9を被せ、差込み支持部材15と差込み係合部材16に熱溶着した。
1:躯体下地 2:立上り部
3:水切りあご部 4:既設防水層
5:断熱層 6:保護コンクリート層
7:保護ブロック壁 8:変形可能なシート体
9:重設防水層 10:固定金具
11:シーリング材 12:剛性体
13:軟質体 14:補強部材
15:差込み支持部材 16:差込み係合部材
18:緩衝材
Claims (12)
- 水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水構造であって、
既設のパラペットの水切りあご部から既設の屋上平面部にわたる部分を変形可能なシート体で被覆すると共に、
該シート体の上に重設防水層を形成してなり、
前記シート体は、一方向に長い形状で変形に対して剛性を有する部分と該部分を並列して一連に連結した軟質体からなる連結部分を備え、該連結部分で変形可能にしたことを特徴とする水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水構造。 - 既設の屋上平面部に差込み溝を有する差込み支持部材を設け、前記変形可能なシート体の下辺を前記差込み溝に差込み固定してなることを特徴とする請求項1に記載の水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水構造。
- 既設の水切りあご部の天端に差込み係合部材を設け、前記変形可能なシート体の上辺を水切りあご部と前記差込み係合部材との間に差込み固定してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水構造。
- 既設の水切りあご部の天端に係合溝を有する差込み係合部材を設け、前記変形可能なシート体の上辺を前記差込み係合部材の係合溝に差込み固定してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水構造。
- 前記変形可能なシート体の下辺と前記差込み支持部材との間及び前記変形可能なシート体の上辺と前記差込み係合部材との間に、弾性を有する緩衝材を介設してなることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水構造。
- 前記変形可能なシート体が、樹脂製シート体または金属製シート体である請求項1から5のいずれか1項に記載の水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水構造。
- 前記変形可能なシート体に防水層が積層一体化されている請求項1から6のいずれか1項に記載の水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水構造。
- 前記差込み支持部材が断面略U字形又はF字形をしている請求項2に記載の水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水構造。
- 前記差込み係合部材が断面略L字形又はF字形をしている請求項3又は4に記載の水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水構造。
- 水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水工法であって、既設のパラペットの水切りあご部から既設の屋上平面部にわたって変形可能なシート体を張設する工程と、前記変形可能なシート体を被覆すると共に既設のパラペット天端から既設の屋上平面部にわたって重設防水層を形成しパラペット天端においてその端部を納める工程とからなり、
前記シート体は、一方向に長い形状で変形に対して剛性を有する部分と該部分を並列に連結した軟質体からなる連結部分を備え、該連結部分で変形可能にしたことを特徴とする水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水工法。 - 前記剛性を有する部分が縦方向に並列された状態で前記シート体の被覆を行うことを特徴とする請求項10記載の水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水工法。
- 前記剛性を有する部分が横方向に並列された状態で前記シート体の被覆を行うことを特徴とする請求項10記載の水切りあご付きパラペットを有する屋上改修防水工法。
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