JP4162771B2 - 折板屋根用防水断熱パネル及び防水断熱折板屋根構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、建築物等の折板屋根の上に設けられる防水断熱パネル及びこれを用いた防水断熱折板屋根構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より建築物の屋根等に、断面略波形の折板屋根を設けることが広く行われている。このような折板屋根は、長期間使用すると老朽化して雨漏りを生ずる等の不具合を生じたりすることがあるため、通常一定期間が経過した時に改修が施される。
【0003】
このような折板屋根の改修方法として、特公平6−94704号公報には、金属板等の表面材と樹脂発泡成形体とからなる複合板を折板屋根の上に敷設し、この複合板を固定具を用いて折板屋根に固定する方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記改修方法では、樹脂発泡成形体の側面が外界に露出しているため、直射日光や反射光あるいは雨等に晒されて樹脂発泡成形体が容易に劣化してしまい、ひいては改修後において比較的短期間で断熱性能が大きく低下してしまうという問題があった。また、劣化により樹脂発泡成形体の表層がぼろぼろになってしまい良好な外観を長期に亘り維持することができないという問題もあった。更に、表面材と樹脂発泡成形体の端部界面も外界に露出しているから、この端部界面に水滴が付着することは避けられず、従ってこの端部界面から腐食や剥離が生じやすかった。
【0005】
また、このような樹脂発泡成形体の劣化を防止すべく、図5に示すように、前記複合板(92)を折板屋根(90)に敷設した後に、樹脂発泡成形体(94)の側方を覆う態様で断面略L字形の屈曲板(96)を表面材(93)に固定ビス(97)で取り付け固定する方法も採用されているが、この場合複合板(92)と屈曲板(96)との水密性を確保するために、更にシート材(98)を被覆する必要があり、折板屋根端部という足場の悪い箇所で前記取り付け固定を行わなければならない上に、更にシート材(98)の被覆作業を行わなければならず、このように多大な時間と労力を要して施工性が悪い上に施工作業に危険も伴うという問題点を有していた。また、屈曲板(96)を現場で取り付けるものであるため施工精度が十分でないという問題もあった。
【0006】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、断熱層を構成する樹脂発泡成形体の劣化を防止できて耐久性能に優れると共に、現場での施工性に優れ、かつ施工精度も向上できる折板屋根用防水断熱パネル及び防水断熱折板屋根構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者は鋭意研究の結果、硬質板材に合成樹脂発泡成形体からなる断熱層が積層一体化されてなる防水断熱パネルにおいて、硬質板材をその少なくとも一側部から下方に向けて屈曲して延ばされた構成とし、この下方に延ばされた部分により外界に露出していた断熱層の側面が覆い隠されるようにすることにより、前記所望の防水断熱パネルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、この発明に係る折板屋根用防水断熱パネルは、硬質板材の下面に合成樹脂発泡成形体からなる断熱層が積層一体化されると共に、前記硬質板材の少なくとも一側部から下方に屈曲して延ばされた側方遮蔽板部が設けられて前記断熱層の当該側面を覆い隠すようになされていることを特徴とするものである。
【0009】
側方遮蔽板部により断熱層の側面が覆い隠されて外界に露出せず、太陽光や雨等から遮られるから、断熱層の劣化が効果的に防止されて、優れた断熱性能が長期に亘って維持される。かつ、このような側方遮蔽板部が予め硬質板材を屈曲して形成されたものであり、現場施工においてこのような遮蔽板を取り付ける作業を省略することができ、ひいては施工性を著しく向上できて施工コストを低減できる上に、このような折り曲げ加工品が一体化されたものであるから施工精度も向上できて防水断熱パネルとしての信頼性も高いものとなる。
【0010】
上記において、硬質板材としては、接合性、耐久性、加工性に優れて低コストである樹脂被覆鋼板を用いるのが望ましい。
【0011】
また、上記側方遮蔽板部の下端部から内向きに屈曲して延ばされた下方遮蔽板部が設けられているのが望ましく、これにより断熱層の側面をより確実に太陽光や雨等から遮ることができるから、一層耐久性を向上し得る。また、下方遮蔽板部の存在により、硬質板材と断熱層との端部界面に水滴が付着するようなことが防止されるので、この界面から腐食や剥離が生じることも防止される。
【0012】
また、この発明に係る防水断熱折板屋根構造は、折板屋根の上に、上記いずれかの折板屋根用防水断熱パネルが複数敷設されると共に、接合用シートが隣接する前記防水断熱パネルの上面の隣り合う端部同士に架け渡されて接合され、かつ遮蔽板部に対する接合面が該遮蔽板部の外側表面の形状に適合する形状に形成された遮蔽部接合片が、隣接する遮蔽板部の外側表面の隣り合う端部同士に架け渡されてこれら端部に接合固定されてなることを特徴とするものである。
【0013】
接合用シート及び遮蔽部接合片が、隣接する防水断熱パネル間に架け渡されてこれらに接合されているから、屋根構造全体としての防水性が十分に確保される。更に、遮蔽部接合片の接合面が該遮蔽板部の外側表面の形状に適合する形状に形成されているから、その接合面において一層優れた水密性が確保されると共に、施工作業も極めて容易となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、この発明に係る折板屋根用防水断熱パネルの一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示される折板屋根用防水断熱パネル(1)において、(2)はパネル本体、(5)は遮蔽部である。
【0016】
パネル本体(2)は、硬質板材からなる表面層(3)の下面に合成樹脂発泡成形体からなる断熱層(4)が積層一体化されてなるものであり、表面層(3)によりパネルとしての防水性能が確保され、合成樹脂発泡成形体の断熱層(4)によりパネルとしての十分な断熱性能が確保される。
【0017】
一方、遮蔽部(5)は、側方遮蔽板部(6)と下方遮蔽板部(7)とからなるものであり、このような遮蔽部(5)により断熱層(4)の側面を覆い隠すものとなされている。従って、断熱層(4)の側面が外界に露出せず、太陽光や雨等から遮ることができるから、断熱層の劣化を効果的に防止できて、優れた断熱性能を長期に亘って確保することができる。
【0018】
しかも、これら遮蔽板部(6)(7)は前記表面層(3)を構成する硬質板材と連なっている。即ち、これら遮蔽板部(6)(7)と前記表面層(3)は1枚の硬質板材から製作されたものであって、1枚の硬質板材がその一側部から屈曲されて側方遮蔽板部(6)が形成され、更にこの側方遮蔽板部(6)の下端部から内方に屈曲されて下方遮蔽板部(7)が形成されたものである。このように屈曲形成されたものであるからこれだけで遮蔽部(5)と表面層(3)の境界における水密性を確実に確保することができる。また、遮蔽部(5)が予め硬質板材を屈曲して形成されているから、現場施工において遮蔽板を取り付ける作業を省略することができ、ひいては施工性を著しく向上できると共に、このような折り曲げ加工品が一体化されたものであるから施工精度も向上できて防水断熱パネルとしての信頼性も向上できる利点がある。
【0019】
前記硬質板材としては、特に限定されず、例えば樹脂被覆鋼板、鋼板、ステンレス板、鉄板等が挙げられる。中でも、接合性、耐久性、加工性に優れて低コストである点から、樹脂被覆鋼板が好適に用いられる。このような樹脂被覆鋼板としては、例えば塩化ビニル樹脂被覆鋼板、オレフィン系樹脂被覆鋼板等が挙げられる。この硬質板材の厚さは、特に限定されないが、通常0.6〜1.5mmである。
【0020】
一方、断熱層(4)を構成する合成樹脂発泡成形体としては、特に限定されるものではないが、例えばポリスチレン樹脂発泡成形体、ポリウレタン発泡成形体、ポリエチレン発泡成形体、ポリプロピレン発泡成形体等が挙げられる。なお、断熱層(4)の厚さは、特に限定されないが、20〜50mmとするのが好ましい。20mm未満では十分な断熱性を確保し難くなるので好ましくないし、一方50mmを超えると厚くなり過ぎて施工性が低下するので好ましくない。
【0021】
上記実施形態においては、遮蔽部(5)及びその近傍の断面形状が図1に示されるように略L字形に形成されているが、特にこのような形状のものに限定されるものではなく、例えば図2に示すように遮蔽部(5)と表面層(3)の境界部において上方に隆起状に屈曲形成されたものでも良く、あるいは図3に示すような断面2段形状に構成されて折板屋根の側面をも覆うように構成されたものであっても良い。
【0022】
また、上記実施形態においては、パネル本体(2)に対してその一側部のみに遮蔽部(5)が設けられているが、特にこのような形態のものに限定されるものではなく、例えばパネル本体(2)に対してその二側部に遮蔽部(5)が設けられた構成でも良く、あるいは三側部に遮蔽部(5)が設けられた構成であっても良い。
【0023】
この発明に係る折板屋根用防水断熱パネル(1)は、その用途として既設の折板屋根の改修用途はもちろんのこと、折板屋根の新設の際にその上に敷設して使用される場合も包含されるものとする。
【0024】
次に、この発明の防水断熱パネル(1)を用いた折板屋根構造の一実施形態について説明する。本実施形態の屋根構造は、既設の折板屋根の改修を目的として適用されたものであって、改修構造を示す図4において、(10)は既設折板屋根、(11)は接合用シート、(12)は遮蔽部接合片である。
【0025】
接合用シート(11)は、折板屋根(10)の上に複数敷設施工された隣接する防水断熱パネル(1)…相互間に隙間があると水密性が保たれず、全体として防水性能を発揮できなくなることから、これを防止すべくこれらの境界近傍部に架け渡されて水密接合されるもので、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂等から構成されるシートである。
【0026】
遮蔽部接合片(12)は、同じく敷設施工された隣接する遮蔽部(5)…相互間に隙間があると水密性が保たれず、全体として防水性能を発揮できなくなることから、これを防止すべく遮蔽部(5)…の境界近傍部に架け渡されて水密接合されるもので、遮蔽板部(6)(7)に対する接合面が該遮蔽板部(6)(7)の外側表面の形状に適合する形状に形成されたものであり、例えば樹脂被覆鋼板、鋼板、ステンレス板、鉄板等の硬質板材からなる。
【0027】
しかして、本実施形態の屋根構造は、折板屋根(10)の上に複数の防水断熱パネル(1)…が敷設されると共に、接合用シート(11)が、隣接した防水断熱パネル(1)(1)の上面における隣り合う端部に架け渡されてこれらに接着剤により接着され、一方遮蔽部接合片(12)が、隣接した遮蔽部(5)(5)の外表面における隣り合う端部に架け渡されてこれらに接着剤により接合固定されたものである。
【0028】
上記屋根構造によれば、隣接した防水断熱パネル(1)(1)間の隙間をなくすべく、接合用シート(11)及び遮蔽部接合片(12)がこれらに架け渡されて接合されているから、屋根構造全体として十分な防水性能を確保することができる。なおかつ、遮蔽部接合片(12)の接合面が遮蔽板部(6)(7)の外側表面の形状に適合する形状であるから、その接合面において一層優れた水密性を確保することができるし、遮蔽部接合片(12)の接合作業も極めてスムーズに行うことができて施工性に優れている。
【0029】
なお、上記実施形態においては、遮蔽部接合片(12)が接着剤を介して遮蔽板部(6)(7)に接合固定されているが、両者の接合形態としては特にこのようなものに限定されるものではなく、例えば溶着等の溶かし合わせによる接合であっても良い。また、接合用シート(11)も接着剤により防水断熱パネル上面に接合されているが、特にこのような接合形態に限定されるものではない。
【0030】
また、上記実施形態の防水断熱折板屋根構造は、既設の折板屋根の改修構造に係るものであるが、この発明の防水断熱折板屋根構造は、特にこのような改修構造に限定されるものではなく、新設構造(折板屋根の新設の際にその上に防水断熱パネルが敷設されたもの)も包含されるものである。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、この発明に係る折板屋根用防水断熱パネルは、側方遮蔽板部により断熱層の側面が覆い隠されて外界に露出しないものとなされているから、太陽光や雨等による断熱層の劣化を効果的に防止することができ、ひいては優れた断熱性能を長期間に亘って維持することができて耐久性に優れている。しかも、この側方遮蔽板部が硬質板材を屈曲して予め形成されたものであるから、現場施工において遮蔽板を取り付ける煩雑な作業を省略することができて、施工性を著しく向上させることができると共に、施工コストの低減をも図ることができる。更に、このような折り曲げ加工品が一体化されたものであるから、遮蔽板を現場施工で取り付けるのと比較して、施工精度をより向上させることができ、防水断熱パネルとしての信頼性をも向上させることができる。
【0032】
また、硬質板材が樹脂被覆鋼板である場合には、接合性、耐久性、加工性を向上させることができる上に、低コストであり経済的である。
【0033】
更に、側方遮蔽板部の下端部から内向きに屈曲された下方遮蔽板部が設けられている場合には、断熱層の側面をより確実に太陽光や雨等から遮蔽することができるから、耐久性を一層向上させることができる。
【0034】
また、この発明の防水断熱折板屋根構造は、折板屋根の上に上記折板屋根用防水断熱パネルを敷設するものであるから、優れた断熱性能を長期に維持できると共に、施工性にも優れ、かつ高い施工精度も確保することができる。また、接合用シート及び遮蔽部接合片が、隣接する防水断熱パネル間に架け渡されてこれらに接合されているから、屋根構造全体としての防水性を十分に確保できる。更に、遮蔽部接合片の接合面が該遮蔽板部の外側表面の形状に適合する形状に形成されているから、その接合面において一層優れた水密性を確保できると共に、遮蔽部接合片の接合作業も極めてスムーズに行うことができ、この点からも施工性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態にかかる折板屋根用防水断熱パネルを示す断面図である。
【図2】別の実施形態に係る防水断熱パネルを示す断面図である。
【図3】更に別の実施形態に係る防水断熱パネルを折板屋根に敷設した状態で示す断面図である。
【図4】この発明の一実施形態に係る防水断熱折板屋根構造を示す斜視図である。
【図5】従来の折板屋根改修構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1…防水断熱パネル
2…パネル本体
3…表面層
4…断熱層
5…遮蔽部
6…側方遮蔽板部
7…下方遮蔽板部
10…折板屋根
11…接合用シート
12…遮蔽部接合片
Claims (3)
- 硬質板材の下面に合成樹脂発泡成形体からなる断熱層が積層一体化されると共に、前記硬質板材の少なくとも一側部から下方に屈曲して延ばされた側方遮蔽板部が設けられて前記断熱層の当該側面を覆い隠すようになされた折板屋根用防水断熱パネルが、折板屋根の上に、複数敷設されると共に、接合用シートが隣接する前記防水断熱パネルの上面の隣り合う端部同士に架け渡されて接合され、かつ遮蔽板部に対する接合面が該遮蔽板部の外側表面の形状に適合する形状に形成された遮蔽部接合片が、隣接する遮蔽板部の外側表面の隣り合う端部同士に架け渡されてこれら端部に接合固定されてなることを特徴とする防水断熱折板屋根構造。
- 前記硬質板材が樹脂被覆鋼板である請求項1に記載の防水断熱折板屋根構造。
- 前記側方遮蔽板部の下端部から内向きに屈曲して延ばされた下方遮蔽板部が設けられている請求項1または2に記載の防水断熱折板屋根構造。
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