ここで、特許文献1では、傾斜端縁部材において、側面部が、斜面部の上端部が下方に折り曲げられることによって形成され、底面部に対して隙間をあけて配置されている。そのため、例えば、人が歩行するなどして斜面部に外力が加わると、傾斜端縁部材の斜面部が下方に変形し、斜面部の上端と断熱材の上端とが上下方向にずれることがある。このとき、第2塩ビシートが傾斜端縁部材の変形に追従できずに破断してしまう虞がある。
本発明の目的は、防水性と意匠性とを兼ね備えたものとしつつも、工数も少なくし、さらに、防水シートが破断してしまうのを防止することが可能な断熱防水構造、断熱防水施工具、及び、断熱防水工法を提供することである。
第1の発明に係る断熱防水構造は、下地の表面に配置された断熱材と、前記下地の、前記断熱材が配置された部分と前記断熱材が配置されていない部分との境界部分に配置された断熱防水施工具と、前記下地、前記断熱材及び前記断熱防水施工具を覆う防水シートと、を備え、前記断熱防水施工具は、前記下地の前記断熱材が配置されていない部分の表面に配置された第1水平部と、前記断熱材の前記下地と反対側の面に配置された第2水平部と、前記第1水平部と前記第2水平部とを接続する、前記第1水平部及び前記第2水平部に対して傾いた傾斜部と、を有する。
本発明では、下地の断熱材が配置された部分と配置されていない部分との境界部分に、断熱材をカットして作製したコーナーキャントを配置する場合と比較して、下地と断熱材との間の傾斜部分の形状が安定し、意匠性が向上する。また、現場で断熱材をカットしてコーナーキャントを作製する作業が必要なく、工数を少なくすることができる。また、本発明では、第2水平部が断熱材の下地と反対側の面に配置されているため、歩行などにより傾斜部に外力が加わったときに、傾斜部の上端部が下方にずれることがない。これにより、防水シートが傾斜部の変形に追従できずに破断してしまうのを防止することができる。
第2の発明に係る断熱防水構造は、第1の発明に係る断熱防水構造において、前記第1水平部を前記下地に固定する第1アンカー部材と、前記第2水平部を、前記断熱材及び前記下地に固定する第2アンカー部材と、をさらに備えている。
特許文献1の傾斜端縁部材は、水平部の一部分が断熱材に介装されているだけであることから、傾斜端縁部材に外力が加わったときに、傾斜端縁部材の下地の表面上で位置がずれてしまう虞がある。これに対して、本発明では、第1水平部が第1アンカー部材により下地に固定され、第2水平部が第2アンカー部材により断熱材及び下地に固定されている。これにより、断熱防水施工具に外力が加わっても、断熱防水施工具が下地や断熱材の表面上でずれることがない。また、本発明の場合、断熱材が第2水平部と下地とに挟まれた構造になるので、第2アンカー部材で第2水平部を断熱材及び下地に固定することによって、断熱材を下地に固定することができる。
第3の発明に係る断熱防水構造は、第1又は第2の発明に係る断熱防水構造において、前記防水シートとして、前記下地の前記断熱材が配置されていない部分、前記第1水平部、前記傾斜部及び前記第2水平部にまたがって延びた第1防水シートと、前記断熱材及び前記第2水平部にまたがって延びた第2防水シートと、を備えている。
断熱材の材質によっては、防水シートの下地への固定と断熱材への固定とを別々の方法で行う必要がある。本発明では、防水シートとして、下地の断熱材が配置されていない部分、第1水平部、傾斜部及び第2水平部を覆う第1防水シートと、断熱材及び第2水平部を覆う第2防水シートとを備えているため、第1防水シートの下地等への固定と、第2防水シートの断熱材等への固定とを独立して行うことができ、作業が簡単になる。また、第1防水シートと第2防水シートとが第2水平部上で重なるため、第1防水シートと第2防水シートとの境界部分における防水性を確保することもできる。
第4の発明に係る断熱防水構造は、第3の発明に係る断熱防水構造において、前記第1防水シートが、接着剤によって、前記下地、前記第1水平部、前記傾斜部及び前記第2水平部に接着されている。
本発明と異なり、第1防水シートが、前記下地の断熱材が配置されていない部分、前記第1水平部、前記傾斜部及び前記第2水平部に加えて、断熱材を覆うものである場合を考える。この場合、断熱材の材質によっては、第1防水シートの接着に使用可能な接着剤の種類が制限される。例えば、断熱材の材質がポリスチレンである場合、溶剤系接着剤はポリスチレンを溶かす作用があるため、第1防水シートの断熱材への接着に溶剤系接着剤を使用することができない。そのため、この場合には、第1防水シートの接着に接着力や施工性に優れる溶剤系接着剤を使用することができない。あるいは、第1防水シートの、下地への接着には接着力や施工性に優れる溶剤系接着剤を使用し、断熱材への接着には水系接着剤を使用することも考えられるが、この場合には、第1防水シートの部分毎に接着剤の種類を変える必要があり、作業が煩雑になる。
これに対して、本発明では、第1防水シートが、下地の断熱材が配置されていない部分、第1水平部、傾斜部及び第2水平部を覆うものであり、断熱材を覆っていない。したがって、断熱材の材質によらず、第1防水シートの、下地、第1水平部、傾斜部及び第2水平部への接着に所望の接着剤を用いることができる。また、第1防水シートの接着において、作業が煩雑になることもない。
第5の発明に係る断熱防水構造は、第4の発明に係る断熱防水構造において、前記第1水平部、前記傾斜部及び前記第2水平部の、前記第1防水シートとの接着面のうち、少なくとも一部分に、接着剤の接着力を高くするための表面加工が施されている。
本発明によると、前記第1水平部、前記傾斜部及び前記第2水平部の、前記第1防水シートとの接着面のうち、少なくとも一部分に、表面加工が施されていることにより、断熱防水施工具と第1防水シートとの接着力を高くすることができる。
第6の発明に係る断熱防水構造は、第3~第5のいずれかの発明に係る断熱防水構造において、前記断熱材の前記下地と反対側の面に互いに間隔をあけて配置された複数の固定ディスク、をさらに備え、前記第2防水シートが、前記複数の固定ディスクに固定されている。
本発明と異なり、第2防水シートを接着剤によって断熱材に接着する接着工法を採用する場合、断熱材の材質によって接着剤の種類を変える必要がある。これに対して、本発明では、断熱材に複数の固定ディスクを配置し、第2防水シートを複数の固定ディスクに固定する機械的固定工法を採用する。したがって、断熱材の種類によらず同じ方法で第2防水シートを断熱材に固定することができる。なお、特許文献1では、防水シートを接着剤で断熱材に接着する接着工法が採用されており、機械的固定工法を適用することについては考慮されていない。
第7の発明に係る断熱防水構造は、第3~第6のいずれかの発明に係る断熱防水構造において、前記第1防水シートの前記第2水平部上に位置する部分と、前記第2防水シートの前記第2水平部上に位置する部分とが、接着剤によって接着されている。
本発明では、第1防水シートと第2防水シートの第2水平部上で重なる部分が接着剤によって接着されるため、第1防水シートと第2防水シートとの間の隙間が接着剤で埋められ、第1防水シートと第2防水シートとの境界部分における防水性をより確実に確保することができる。
第8の発明に係る断熱防水構造は、第1~第7のいずれかの発明に係る断熱防水構造において、前記傾斜部の、前記第1水平部及び前記第2水平部に対する傾斜角度が、20°以上70°以下である。
傾斜部の第1、第2水平部に対する傾斜角度が70°よりも大きいと、断熱防水施工具の第1、第2水平部と傾斜部との間における表面の屈曲角度が大きくなり、防水シートを傾斜部に密着させるのが難しくなる。一方、上記傾斜角度が20°未満であると、傾斜部の長さが長くなる。その結果、断熱防水施工具を配置するために、断熱材が配置されない領域が必要以上に大きくなってしまう。そこで、本発明では、傾斜部の第1、第2水平部に対する傾斜角度を20°以上70°以下の範囲とする。これにより、防水シートを傾斜部に密着させやすく、断熱材が配置されない領域が必要以上に大きくなることもない。
第9の発明に係る断熱防水構造は、第1~第8のいずれかの発明に係る断熱防水構造において、前記断熱防水施工具が、前記第1水平部と前記傾斜部との接続部分、及び、前記第2水平部と傾斜部との接続部分において屈曲された板状の部材である。
本発明によると、断熱防水施工具を、構造の簡単なものとすることができる。
第10の発明に係る断熱防水構造は、第9の発明に係る断熱防水構造において、前記板状の部材の厚みが0.4mm以上5mm以下である。
断熱防水施工具が板状の部材である場合、この板状の部材の厚みが0.4mm未満であると、薄すぎて断熱防水施工具において十分な強度を確保することができない。一方、この板状の部材の厚みが5mmよりも大きいと、厚すぎて、第1水平部と下地との間、及び、第2水平部と断熱材との間に大きな段差ができ、排水性や意匠性の低下につながる。そこで、本発明では、前記断熱防水施工具である板状の部材の厚みを0.4mm以上5mm以下とする。これにより、前記断熱防水施工具の強度を確保しつつも、排水性及び意匠性を確保することができる。
第11の発明に係る断熱防水構造は、第9又は第10の発明に係る断熱防水構造において、前記傾斜部の前記下地側の面に補強用のリブが形成されている。
断熱防水施工具が板状の部材である場合、傾斜部と下地との間は空洞である。一方で、傾斜部には歩行などにより外力が加わる。これらのことから、傾斜部には、第1、第2水平部よりも高い強度が要求される。本発明では、傾斜部の下地側の面に補強用のリブを形成することにより、傾斜部の強度を確保することができる。
第12の発明に係る断熱防水施工具は、下地の表面に配置された断熱材と、前記下地及び前記断熱材を覆う防水シートと、を備えた断熱防水構造において、前記下地の前記断熱材が配置された部分と前記断熱材が配置されていない部分との境界部分に設けられ、前記下地及び前記断熱材とともに前記防水シートに覆われる断熱防水施工具であって、前記下地の前記断熱材が配置されていない部分の表面に配置される第1水平部と、前記断熱材の前記下地と反対側の面に配置される第2水平部と、前記第1水平部と前記第2水平部とを接続する、前記第1水平部及び前記第2水平部に対して傾いた傾斜部と、を備えている。
本発明では、下地の断熱材が配置された部分と配置されていない部分との境界部分に、断熱材をカットして作製したコーナーキャントを配置する場合と比較して、下地と断熱材との間の傾斜部分の形状が安定し、意匠性が向上する。また、現場で断熱材をカットしてコーナーキャントを作製する作業が必要なく、工数を少なくすることができる。また、本発明では、第2水平部が断熱材の下地と反対側の面に配置されているため、歩行などにより傾斜部に外力が加わったときに、傾斜部の上端部が下方にずれることがない。これにより、防水シートが傾斜部の変形に追従できずに破断してしまうのを防止することができる。
第13の発明に係る断熱防水施工具は、第12の発明に係る断熱防水施工具において、前記第1水平部、前記傾斜部及び前記第2水平部に、前記防水シートが接着剤で接着される断熱防水施工具であって、前記第1水平部、前記傾斜部及び前記第2水平部の、前記防水シートとの接着面のうち、少なくとも一部分に、接着剤の接着力を高くするための表面加工が施されている。
本発明によると、前記第1水平部、前記傾斜部及び前記第2水平部の、防水シートとの接着面のうち、少なくとも一部分に、表面加工が施されていることにより、断熱防水施工具と防水シートとの接着力を高くすることができる。
第14の発明に係る断熱防水施工具は、第12又は第13の発明に係る断熱防水施工具において、前記傾斜部の、前記第1水平部及び前記第2水平部に対する傾斜角度が、20°以上70°以下である
本発明では、傾斜部の第1、第2水平部に対する傾斜角度を20°以上70°以下の範囲とすることにより、防水シートを傾斜部に密着させやすく、断熱材が配置されない領域が必要以上に大きくなることもない。
第15の発明に係る断熱防水施工具は、第12~第14のいずれかの発明に係る断熱防水施工具において、前記第1水平部と前記傾斜部との接続部分、及び、前記第2水平部と傾斜部との接続部分において屈曲された板状の部材である。
本発明によると、断熱防水施工具を、構造の簡単なものとすることができる。
第16の発明に係る断熱防水施工具は、第15の発明に係る断熱防水施工具において、前記板状の部材の厚みが0.4mm以上5mm以下である。
本発明では、断熱防水施工具である板状の部材の厚みを0.4mm以上5mm以下とすることより、断熱防水施工具の強度を確保しつつも、排水性及び意匠性を確保することができる。
第17の発明に係る断熱防水施工具は、第15又は第16の発明に係る断熱防水施工具において、前記傾斜部の前記下地側となる面に、補強用のリブが形成されている。
本発明では、板状の断熱防水施工具の、傾斜部の下地側の面に補強用のリブを形成することにより、傾斜部の強度を確保することができる。
第18の発明に係る断熱防水工法は、下地の表面に断熱材を敷設する断熱材敷設工程と、前記下地の前記断熱材が配置された部分と前記断熱材が配置されていない部分との境界部分に断熱防水施工具を設置する断熱防水施工具設置工程と、前記下地、前記断熱材及び前記断熱防水施工具を覆うように防水シートを敷設する防水シート敷設工程と、を備え、前記断熱防水施工具は、前記下地の前記断熱材が配置されていない部分の表面に配置される第1水平部と、前記断熱材の前記下地と反対側の面に配置される第2水平部と、前記第1水平部と前記第2水平部とを接続する、前記第1水平部及び前記第2水平部に対して傾斜した傾斜部と、を有するものである。
本発明では、下地の断熱材が配置された部分と配置されていない部分との境界部分に、断熱材をカットして作製したコーナーキャントを配置する場合と比較して、下地と断熱材との間の傾斜部分の形状が安定し、意匠性が向上する。また、現場で断熱材をカットしてコーナーキャントを作製する作業が必要なく、工数を少なくすることができる。また、本発明では、第2水平部が断熱材の下地と反対側の面に配置されているため、歩行などにより傾斜部に外力が加わったときに、傾斜部の上端部が下方にずれることがない。これにより、防水シートが傾斜部の変形に追従できずに破断してしまうのを防止することができる。
第19の発明に係る断熱防水工法は、第18の発明に係る断熱防水工法において、前記断熱防水施工具設置工程において、前記第1水平部を、第1アンカー部材で前記下地に固定し、前記第2水平部を、第2アンカー部材で前記断熱材及び前記下地に固定する。
本発明では、第1水平部が第1アンカー部材により下地に固定され、第2水平部が第2アンカー部材により断熱材及び下地に固定されている。これにより、断熱防水施工具に外力が加わっても、断熱防水施工具が下地や断熱材の表面上でずれることがない。また、本発明の場合、断熱材が第2水平部と下地とに挟まれた構造になるので、第2アンカー部材により、第2水平部を断熱材及び下地に固定することによって、断熱材を下地に固定することができる。
第20の発明に係る断熱防水工法は、第18又は第19の発明に係る断熱防水工法において、前記防水シート敷設工程は、第1防水シートを、前記下地の前記断熱材が配置されていない部分、前記第1水平部、前記傾斜部及び前記第2水平部にまたがるように敷設する第1防水シート敷設工程と、第2防水シートを、前記断熱材と前記第2水平部とにまたがるように敷設する第2防水シート敷設工程と、を有する。
本発明では、第1防水シートの下地等への固定と、第2防水シートの断熱材等への固定とを独立して行うことができ、作業が簡単になる。また、第1防水シートと第2防水シートとが第2水平部上に重なるため、第1防水シートと第2防水シートとの境界部分における防水性を確保することもできる。
第21の発明に係る断熱防水工法は、第20の発明に係る断熱防水工法において、前記第1防水シート敷設工程において、前記第1防水シートを接着剤で前記下地及び前記断熱防水施工具に接着する。
本発明では、第1防水シートが、下地の断熱材が配置されていない部分、第1水平部、傾斜部及び第2水平部を覆うものであり、断熱材を覆っていない。したがって、断熱材の材質によらず、第1防水シートの下地、第1水平部、傾斜部及び第2水平部への接着に所望の接着剤を用いることができる。また、第1防水シートの接着において作業が煩雑になることもない。
第22の発明に係る断熱防水工法は、第21の発明に係る断熱防水工法において、前記断熱防水施工具は、前記第1水平部、前記傾斜部及び前記第2水平部の、前記第1防水シートとの接着面のうち、少なくとも一部分に、接着剤の接着力を高くするための表面加工が施されたものである。
本発明によると、前記第1水平部、前記傾斜部及び前記第2水平部の、前記第1防水シートとの接着面のうち、少なくとも一部分に、表面加工が施されていることにより、断熱防水施工具と第1防水シートとの接着力を高くすることができる。
第23の発明に係る断熱防水工法は、第20~第22のいずれかの発明に係る断熱防水工法において、前記断熱材の前記下地と反対側の面に、互いに間隔をあけて複数の固定ディスクを設置する固定ディスク設置工程、をさらに備え、前記第2防水シート敷設工程において、第2防水シートを、前記複数の固定ディスクに固定する。
本発明では、断熱材に複数の固定ディスクを配置し、第2防水シートを複数の固定ディスクに固定する機械的固定工法を採用する。したがって、断熱材の種類によらず同じ方法で第2防水シートを断熱材に固定することができる。
第24の発明に係る断熱防水工法は、第20~第23の発明に係る断熱防水工法において、前記防水シート敷設工程は、前記第1防水シートの前記第2水平部上に位置する部分と、前記第2防水シートの前記第2水平部上に位置する部分とを接着剤で接着する接着工程、をさらに有する。
本発明では、第1防水シートと第2防水シートの第2水平部上で重なる部分が接着剤によって接着されるため、第1防水シートと第2防水シートとの間の隙間が接着剤で埋められ、第1防水シートと第2防水シートとの境界部分における防水性をより確実に確保することができる。
本発明によると、下地と断熱材との間の傾斜部分の形状が安定し、意匠性が向上する。また、現場で断熱材をカットしてコーナーキャントを作製する作業が必要なく、工数を少なくすることができる。本発明では、歩行などにより傾斜部に外力が加わったときに、防水シートが破断してしまうのを防止することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
<断熱防水構造>
図1に示すように、本実施の形態に係る断熱防水構造1は、ビルの屋上などの下地100に設けられる。下地100は、例えばコンクリートからなる。断熱防水構造1は、断熱材2と、断熱防水施工具3と、第1防水シート4と、第2防水シート5とを備えている。
断熱材2は、下地100の表面に一部分を除いて配置されている。ここで、下地100の断熱材2が配置されない部分は、例えば、側溝部やドレン周辺の部分である。また、断熱材2は、ポリスチレンフォームによって形成されている。断熱材2を形成するポリスチレンフォームのマトリックス部分となるポリスチレン樹脂は、スチレン系単量体の単独重合体であってもよいし、スチレン系単量体とスチレン系以外の単量体との共重合体であってもよいし、これらの単独重合体または共重合体と他の熱可塑性樹脂との混合物であってもよい。ただし、強度や断熱性といったポリスチレンフォームとしての特性を損なわないために、ポリスチレンフォーム全体に占めるスチレン系単量体の割合は50質量%以上であることが好ましい。
また、強度や断熱性を向上するためには、ポリスチレンフォーム中の気泡は、独立気泡であることが好ましく、発泡シートの密度は20~25kg/m3、熱伝導率は0.02~0.04W/(m・K)程度であることが好ましい。また、発泡成形法としては、押出発泡成形法やビーズ発泡成形法を適用することができる。発泡倍率は、例えば10~50倍程度であることが好ましい。発泡倍率が10倍未満であると断熱性が低下し、50倍を超えると強度が低下する虞がある。また、断熱材2の厚みは、5~100mm程度、より好ましくは10~50mm程度である。厚みが5mm未満であると断熱性や強度が低下し、100mmを超えると歩行性を損なう虞がある。
また、断熱材2は、ポリスチレンフォームによって形成されていることにも限られない。断熱材2は、例えば、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォームなど、ポリスチレンフォーム以外の発泡シートによって形成されていてもよい。
<断熱防水施工具>
断熱防水施工具3は、下地100の断熱材2が配置された部分と配置されていない部分との境界部分に配置される。図1、図2に示すように、断熱防水施工具3は、第1水平部11と、第2水平部12と、傾斜部13とを有する。断熱防水施工具3は、第1水平部11と傾斜部13との接続部分、及び、第2水平部12と傾斜部13との接続部分においてそれぞれ屈曲された、厚みTが0.4mm以上5mm以下の板状の部材である。
第1水平部11は、下地100の断熱材2が配置されていない部分の表面に配置され、水平に延びている。また、第1水平部11は、アンカー部材21(本発明の「第1アンカー部材」)により、下地100に固定されている。第2水平部12は、断熱材2の上面(下地100と反対側の面)に配置され、水平に延びている。また、第2水平部12は、アンカー部材22(本発明の「第2アンカー部材」)により、断熱材2及び下地100に固定されている。また、これにより、断熱材2は、第2水平部12と下地100とに挟まれた状態で、アンカー部材22によって下地100に固定される。傾斜部13は、第1水平部11と第2水平部12との間に位置し、第1水平部11と第2水平部12とを接続する。傾斜部13は、第1水平部11及び第2水平部12に対して傾斜している。ここで、傾斜部13の第1水平部11及び第2水平部12に対する傾斜角度θは、20°以上70°以下である。
ここで、断熱防水施工具3は、金属材料や合成樹脂材料等、一定の強度と、溶剤系接着剤に対する耐性を有する材料からなる。金属材料としては、例えば、鋼、鋳鉄、ステンレス鋼、アルミニウム合金などが挙げられる。また、合成樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアリレート(全芳香族ポリエステル)などが挙げられる。また、樹脂は、これらのうちいずれかの単独の組成であってもよいし、これらのうち2以上の混合物であってもよいし、さらには、繊維強化されたものであってもよい。
第1防水シート4は、可撓性を有するシート状の部材である。第1防水シート4は、下地100の断熱材2が配置されていない部分、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12にわたって延びており、断熱材2の第2水平部12が配置されていない部分までは延びていない。また、第1防水シート4は、接着剤26によって、下地100、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12に接着されている。
接着剤26は、溶剤系接着剤、水系接着剤、化学反応によって硬化させる無溶剤系接着剤などである。具体的には、クロロプレンゴム、ブチルゴム等を溶剤に溶かした接着剤、ポリウレタン系接着剤、変性シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。これらの接着剤のうち、接着力や施工性に優れる点から溶剤系接着剤、特にクロロプレンゴム系接着剤やブチルゴム系接着剤を用いることが好ましい。
第2防水シート5は、可撓性を有するシート状の部材である。第2防水シート5は、断熱材2と第2水平部12とにわたって延びている。ここで、断熱材2の上面には、間隔をあけて並んだ複数の固定ディスク31が配置されている。固定ディスク31は、略円形の板状の部材であり、アンカー部材32によって断熱材2及び下地100に固定されている。また、このとき、断熱材2がアンカー部材32によって下地100に固定される。そして、第2防水シート5は、熱融着などによって複数の固定ディスク31に固定されている。また、第1防水シート4の第2水平部12上に位置する部分と、第2防水シート5の第2水平部12上に位置する部分とは、接着剤27により接着されている。接着剤27は、接着剤26と同じ種類のものであってもよいし、異なる種類のものであってもよい。
ここで、防水シート4、5の材質は、例えば、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、IIR(ブチルゴム)、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、CSM(クロロスルフォン化ポリエチレン)等のゴム、あるいは、熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂などである。また、施工場所の面積にもよるが、防水シート4、5は、それぞれ、一体成形された1枚のシートであってもよいし、複数枚のシートを接着したものであってもよい。また、防水シート4、5の厚みは、1.0~2.5mmが好ましい。厚みが1.0mm未満であると強度が不足して防水シート4、5が破断しやすい。一方、厚みが2.5mmを越えると複数のシートを重ねて連結した際の接合部において段差が大きくなってしまい、排水性の悪化や意匠性の低下につながるため好ましくない。また、防水シート4、5は、上述したゴムまたは合成樹脂からなるシートに、ガラス繊維やポリエステル繊維などからなる補強布を埋設して機械的強度を向上させたり寸法安定性を向上させたりしたものを用いてもよい。
<断熱防水工法>
次に、断熱防水構造1を形成するための断熱防水工法について説明する。断熱防水構造1を形成するためには、図3(a)に示すように、まず、下地100の表面に断熱材2を敷設する(断熱材敷設工程)。
次に、図3(b)に示すように、下地100の断熱材2が配置された部分と配置されていない部分との境界部分に、断熱防水施工具3を設置し、アンカー部材21で第1水平部11を下地100に固定し、アンカー部材22で第2水平部12を断熱材2及び下地100に固定する(断熱防水施工具設置工程)。このとき、第1水平部11が下地100の断熱材2が配置されていない部分の表面上に位置し、第2水平部12が断熱材2の上面に位置するように断熱防水施工具3を設置する。また、アンカー部材22で第2水平部12を断熱材2及び下地100に固定すると、断熱材2の第2水平部12と上下に重なる部分が、第2水平部12と下地100とに挟まれた状態で、アンカー部材22によって下地100に固定される。
次に、図4(a)に示すように、下地100の断熱材2が配置されていない部分、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12の表面に第1防水シート4を敷設する(第1防水シート敷設工程)。具体的には、下地100の断熱材2が配置されていない部分、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12の表面に接着剤26を塗布し、第1防水シート4を、下地100、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12に接着する。
また、図4(a)に示すように、断熱材2の上面に複数の固定ディスク31を互いに間隔をあけて設置し、アンカー部材32によって断熱材2及び下地100に固定する(固定ディスク設置工程)。このとき、断熱材2は、各固定ディスク31が設置された部分において、アンカー部材32によって下地100に固定される。また、上述の第1防水シート敷設工程と、固定ディスク設置工程の順序はどちらが先であってもよい。あるいは、これらを並行して行ってもよい。
次に、図4(b)に示すように、第2防水シート5を、断熱材2と第2水平部12とにまたがるように敷設し、熱融着によって複数の固定ディスク31に固定する(第2防水シート敷設工程)。そして、その後、第1防水シート4の第2水平部12上に位置する部分と第2防水シート5の第2水平部12上に位置する部分とを接着剤27により接着する(接着工程)。これにより、図1に示すような断熱防水構造1が完成する。なお、本実施の形態では、上述の第1防水シート敷設工程と、第2防水シート敷設工程と、接着工程とを合わせたものが、本発明の防水シート敷設工程に相当する。
ここで、本実施の形態と異なり、下地100の断熱材2が配置された部分と配置されていない部分との境界部分に、断熱材をカットして傾斜部を形成したコーナーキャントを配置する場合を考える。この場合には、断熱材をカットしてコーナーキャントを作製する工程が必要となり、工数が増大する。また、現場で断熱材をカットして作製されるコーナーキャントは、傾斜部分の形がいびつになりやすく、意匠性が低下してしまう虞がある。
これに対して、本実施の形態では、下地100の断熱材2が配置された部分と配置されていない部分との境界部分に、断熱防水施工具3が配置されている。そして、下地100と断熱材2との間の傾斜部分が、断熱防水施工具3の傾斜部13によって形成される。これにより、下地100と断熱材2との間の傾斜部分の形状が安定し、意匠性が向上する。また、現場で断熱材をカットしてコーナーキャントを作製する作業が必要なく、工数を少なくすることができる。また、傾斜部13には、歩行などにより外力が加わることがある。しかしながら、断熱防水施工具3では、傾斜部13の上端部と接続される第2水平部12が、断熱材2の上面に配置されているため、傾斜部13に外力が加わったときに、第2水平部12と接続される傾斜部13の上端部が下方にずれることがない。これにより、傾斜部13が変形し、第1防水シート4が傾斜部13の変形に追従できずに破断してしまうのを防止することができる。
また、本実施の形態では、第1水平部11がアンカー部材21により下地100に固定され、第2水平部12がアンカー部材22により断熱材2及び下地100に固定されている。これにより、断熱防水施工具3に外力が加わっても、断熱防水施工具3が下地100の表面上や断熱材2の表面上でずれることがない。また、本実施の形態では、断熱材2が第2水平部12と下地100とに挟まれた構造となっているため、アンカー部材22で第2水平部12を断熱材2及び下地100に固定することによって、断熱材2を下地100に固定することができる。
また、本発明では、防水シートとして、下地100の断熱材2が配置されていない部分、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12とを覆う第1防水シート4と、断熱材2及び第2水平部12を覆う第2防水シート5とを備えている。これにより、接着剤26による第1防水シート4の下地100、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12への接着と、第2防水シート5の複数の固定ディスク31への固定とを独立して行うことができ、作業が簡単になる。
また、第1防水シート4と第2防水シート5とが第2水平部12上で重なるため、第1防水シート4と第2防水シート5との境界部分における防水性を確保することもできる。さらに、第1防水シート4の第2水平部12上に位置する部分と、第2防水シート5の第2水平部12上に位置する部分とが接着剤27により接着されているため、第1防水シート4と第2防水シート5との間の隙間が接着剤27で埋められ、第1防水シート4と第2防水シート5との境界部分における防水性をより確実に確保することができる。
また、本実施の形態と異なり、下地100、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12に加えて断熱材2にまたがって延びる第1防水シートを、接着剤で接着する場合を考える。この場合、断熱材2を形成するポリスチレンフォームは、溶剤系接着剤によって溶けてしまう性質を有するため、第1防水シートの接着に、接着力や施工性に優れる溶剤系接着剤を用いることができない。あるいは、第1防水シートの、下地への接着には溶剤系接着剤を用い、断熱材への接着には水系接着剤を用いるなどすることが考えられるが、この場合には、第1防水シートの部分毎に、接着に使用する接着剤の種類を変える必要があり、作業が煩雑になる。
これに対して、本実施の形態では、第1防水シート4が、下地100の断熱材2が配置されてない部分、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12を覆うものであり、断熱材2を覆っていない。したがって、断熱材2の材質に関係なく、第1防水シート4の下地100、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12への接着に溶剤系接着剤を用いることができる。また、第1防水シート4を接着するための作業が煩雑になることもない。
また、本実施の形態と異なり、第2防水シート5を接着剤によって断熱材2に接着する、いわゆる接着工法を採用する場合には、上記のように、接着剤の種類を断熱材2の材質に応じたものとする必要がある。これに対して、本実施の形態では、断熱材2に複数の固定ディスク31を配置し、第2防水シート5を複数の固定ディスク31に固定する、いわゆる機械的固定工法を採用する。したがって、断熱材2の材質によらず同じ方法で第2防水シート5を断熱材2に固定することができる。
また、接着工法を採用する場合には、断熱材2を下地100に接着剤で接着する必要がある。通常、下地100の表面には、汚れ、湿気、凹凸等あるため、断熱材2を下地100に接着剤で接着する前に、下地100の表面を接着に適した状態にするための処理が必要となり、工数の増大につながる。これに対して、本実施の形態のように機械的固定工法方法を採用する場合には、アンカー部材32によって断熱材2を下地100に固定するため、下地100の表面の状態の影響を受けにくい。したがって、機械的固定工法を採用する場合には、接着工法を採用する場合と比較して工数を少なくすることができる。
また、上記のとおり、傾斜部13の第1水平部11及び第2水平部12に対する傾斜角度θが70°よりも大きいと、第1水平部11及び第2水平部12と傾斜部13との間での断熱防水施工具3の表面の屈曲が大きくなるため、第1防水シート4を傾斜部13に密着させるのが難しくなる。一方、上記傾斜角度θが20度未満であると、傾斜部13の長さが長くなり、断熱防水施工具3を配置するために、断熱材2が配置されない領域が必要以上に大きくなってしまう。そこで、本実施の形態では、傾斜部13の第1水平部11及び第2水平部12に対する傾斜角度θを20°以上70°以下の範囲とする。これにより、第1防水シート4を傾斜部13に密着させやすくすることができ、断熱材2が配置されない領域が必要以上に大きくなることもない。
また、本実施の形態では、断熱防水施工具3を、第1水平部11と傾斜部13との接続部分、及び、第2水平部12と傾斜部13との接続部分においてそれぞれ屈曲された板状の部材とすることにより、断熱防水施工具3を構造の簡単なものとすることができる。
また、断熱防水施工具3が板状の部材である場合、この板状の部材の厚みTが0.4mm未満であると、薄すぎて十分な強度を確保することができない。一方、この板状の部材の厚みTが5mmよりも大きいと、厚すぎて、第1水平部11と下地100との間、及び、第2水平部12と断熱材2との間に大きな段差ができ、排水性や意匠性の低下につながる。そこで、本発明では、断熱防水施工具3である板状の部材の厚みTを0.4mm以上5mm以下とする。これにより、断熱防水施工具3の強度を確保しつつも、排水性及び意匠性を確保することができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
例えば、断熱防水施工具の構造は上述の実施の形態のものには限られない。変形例1では、図5(a)に示すように、断熱防水施工具50が、上述の実施の形態の断熱防水施工具3と同様の、第1水平部11、第2水平部12及び傾斜部13を有しているのに加えて、傾斜部13の下面(下地100側の面)に、傾斜部13の補強用の3つのリブ51が形成されている。3つのリブ51は、それぞれが、傾斜部13の傾斜に沿ったX方向に延びており、X方向と直交するY方向に間隔をあけて並んでいる。
変形例2では、図5(b)に示すように、断熱防水施工具60が、上述の実施の形態の断熱防水施工具3と同様の、第1水平部11、第2水平部12及び傾斜部13を有しているのに加えて、傾斜部13の下面に、傾斜部13の補強用の2つのリブ61が形成されている。2つのリブ61は、それぞれが、Y方向に延びており、X方向に間隔をあけて並んでいる。
上述の実施の形態のように、断熱防水施工具が屈曲された板状の部材である場合には、傾斜部13と下地100との間が空洞となっている。また、歩行などにより、傾斜部13には外力が加わることがある。これらのことから、傾斜部13には第1水平部11及び第2水平部12よりも高い強度が要求される。変形例1、2では、それぞれ、傾斜部13をリブ51、61によって補強することにより、傾斜部13の強度を確保することができる。
また、リブの数は、変形例1、2で説明したものには限られず、傾斜部13の下面に任意の数のリブを形成することが可能である。また、リブの向きもX方向あるいはY方向と平行であることには限られず、X方向及びY方向のいずれとも交差する方向に延びていてもよい。また、傾斜部13の下面に複数のリブが形成される場合において、全てのリブが同じ方向に延びたものであることにも限られない。例えば、傾斜部13の下面にX方向に延びたリブとY方向に延びたリブの両方が配置されているなど、傾斜部13の下面に形成される複数のリブ間で、リブの延びる方向が異なっていてもよい。また、傾斜部13の補強は、リブによって行うことには限られない。例えば、傾斜部13の下面の全面に板状の部材を接合して、傾斜部13を補強するなどしてもよい。
また、上述の実施の形態では、断熱防水施工具3である板状の部材の厚みTが0.4mm以上5mm以下であったが、断熱防水施工具3である板状の部材の厚みTは0.4mm未満であってもよいし、5mmよりも大きくてもよい。
また、上述の実施の形態では、傾斜部13の第1水平部11及び第2水平部12に対する傾斜角度θが20°以上70°以下であったが、傾斜部13の第1水平部11及び第2水平部12に対する傾斜角度θは、20°未満であってもよいし、70°よりも大きくてもよい。
また、上述の実施の形態では、断熱防水施工具3が屈曲された板状の部材であったが、これには限られない。断熱防水施工具は、下地100の断熱材2が配置されていない部分の表面に配置される第1水平部と、断熱材2の上面に配置される第2水平部と、第1水平部と第2水平部を接続する、第1、第2水平部に対して傾斜した傾斜部とを有するものであれば、屈曲された板状の部材でなくてもよい。
また、上述の実施の形態では、第1防水シート4の第2水平部12上に位置する部分と、第2防水シート5の第2水平部12上に位置している部分とが接着剤27で接着されていたが、これには限られない。第1防水シート4の第2水平部12上に位置する部分と、第2防水シート5の第2水平部12上に位置している部分とが、接着剤以外の手段によって接合されていてもよい。
また、上述の実施の形態では、断熱材2の上面に複数の固定ディスク31を設置し、第2防水シート5を、複数の固定ディスク31に固定することによって断熱材2に固定する機械的固定工法を採用したが、これには限られない。例えば、第2防水シート5を接着剤によって断熱材2に接着する接着工法を採用してもよい。このとき、第2防水シート5と断熱材2との接着には、断熱材2の材質に応じた種類の接着剤を用いる。例えば、断熱材2がポリスチレンフォームである場合には、第2防水シート5と断熱材2との接着に水系接着剤を用いる。また、この場合には、固定ディスク31を断熱材2及び下地100に固定するためのアンカー部材32がないため、断熱材2を接着剤により下地100に固定する必要がある。断熱材2の下地110への接着にも、上記と同様、断熱材2の材質に応じた種類の接着剤を用いる。
また、上述の実施の形態において、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12の第1防水シート4との接着面のうち、少なくとも一部分に、接着剤による断熱防水施工具3と第1防水シート4の接着力を高くするための表面加工が施されていてもよい。表面加工は、例えば、表面の凹凸を粗くする粗面化加工や、表面に官能基を付与する化学修飾などである。ただし、断熱防水施工具3の材質によらず接着力を高くするという観点からは、粗面化加工が好ましい。また、粗面化加工は、例えば、エッチング(化学エッチング、電解エッチングなど)やブラスト(サンドブラスト、ショットブラスト、グリットブラストなど)などによる加工である。
例えば、断熱防水施工具3が金属材料からなる場合には、断熱防水施工具3の第1防水シート4との接着面に、上記表面加工が施されていないと、ゴム系の接着剤を用いて断熱防水施工具3とゴム製の第1防水シート4とを接着したときに、十分な接着力が得られない可能性がある。このような場合に、断熱防水施工具3の第1防水シート4との接着面を上記表面加工が施されたものすることにより、ゴム系の接着剤による、金属材料からなる断熱防水施工具3とゴム製の第1防水シート4との接着力を高くすることができる。
なお、断熱防水施工具3の材質によらず、断熱防水施工具3の第1防水シート4との接着面を、上記表面加工が施されたものすれば、断熱防水施工具3と第1防水シート4との接着力を高くすることができる。また、上記表面加工は、例えば、断熱防水施工具3の表面全体等、断熱防水施工具3の表面のうち第1防水シート4との接着面以外の部分にも施されていてもよい。
また、上述の実施の形態では、第1防水シート4が、接着剤26によって、下地100、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12に接着されたが、これには限られない。例えば、下地100の断熱防水施工具3が配置されていない部分、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12の表面に固定ディスクが設けられており、第1防水シート4がこれらの固定ディスクに固定されていてもよい。あるいは、第1防水シート4を下地100、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12の表面に直接熱融着させるなどしてもよい。
また、上述の実施の形態では、防水シートとして、下地100の断熱材2が配置されていない部分、第1水平部11、傾斜部13及び第2水平部12にまたがって延びた第1防水シート4と、断熱材2及び第2水平部12にまたがって延びた第2防水シート5とを備えている例について説明したが、これには限られない。例えば、防水シートとして、下地100の断熱材2が配置されていない領域と、断熱防水施工具3と、断熱材2とにまたがって延びた防水シートを備えていてもよい。
また、上述の実施の形態では、第1水平部11がアンカー部材21によって下地100に固定され、第2水平部12がアンカー部材22によって断熱材2及び下地100に固定されることによって、断熱防水施工具3が下地100及び断熱材2に固定されていたが、これには限られない。例えば、第1水平部11が接着剤によって下地100に接着され、第2水平部12が接着剤によって断熱材2に接着されているなど、上述の実施の形態とは異なる方法で、断熱防水施工具3が下地100及び断熱材2に固定されていてもよい。