JP4641788B2 - 水性懸濁製剤 - Google Patents

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Description

本発明は、保存安定性および再分散性が改良された水性懸濁製剤に関する。
従来より水性懸濁製剤の保存安定性を改良することを目的として、水性懸濁製剤に水溶性高分子化合物を含有することは知られている。
このような例として、下記の(1)〜(3)があげられる。
(1)20℃の水に対する溶解度が100ppm以下である除草活性成分と保護コロイド剤および水よりなることを特徴とする湛水下水田の直接散布用水性懸濁製剤が知られている。この中で特に、保護コロイド剤としては、ポリビニルアルコールまたは水溶性セルロースエーテルが好ましく、また、ポリビニルアルコールを用いる場合は、その平均重合度が2000以下で、ケン化度が69〜90モル%であることが好ましい(特許文献1参照)。
(2)植物油脂肪酸アルキルエステルからなることを特徴とする、水性懸濁状農薬の安定化剤が知られている。さらに、農薬活性成分、植物油脂肪酸アルキルエステル、水溶性高分子化合物、界面活性剤および水よりなることを特徴とする、水性懸濁状農薬が知られている。そしてこの水性懸濁状農薬は、製剤粘度が25℃において100〜1000mPa・sであることが好ましい(特許文献2参照)。
(3)農薬活性成分、次式で表わされるグルタル酸ジエステル、天然水溶性高分子化合物および水よりなり、製剤粘度が25℃において100〜1000mPa・sであることを特徴とする、水性懸濁農薬製剤が知られている。
ROOCCHCHCHCOOR(式中、Rは低級アルキル基を示す。)
さらに次式で表わされるグルタル酸ジエステルからなることを特徴とする、水性懸濁農薬製剤の懸濁安定化剤が知られている。
ROOCCHCHCHCOOR(式中、Rは低級アルキル基を示す。)
(特許文献3参照)
また、本発明に使用する結晶セルロースとしては、例えば次の(4)があげられる。
(4)有効量の薬物、懸濁化剤として約0.05%〜約5%w/wの結晶セルロース・カルメロースナトリウム(アビセルRC)を含んでなる水性懸濁医薬品組成物であって、薬物粒子の形状が球形であることを特徴とする物理的安定性が改良された水性懸濁医薬品組成物(特許文献4参照)。
特開平10−316503号公報 特開平10−7504号公報 特開平9−143003号公報 特開平11−130659号公報
水を分散媒として用いられる水性懸濁製剤の長期間の保存安定性について前述のような技術提案がなされてきた。しかしながら、これらの従来の技術では、沈降した際に沈降物が固くなり、容易に再分散しないという欠点を有していた。したがって、本発明は、このような従来の水性懸濁製剤が有していた欠点のない、長期保存安定性があり、かつ再分散性の高い水性懸濁製剤を提供することにある。
本発明者らは、長期間保存しても安定であり、分散質が一度沈降しても容易に再分散する高い再分散性を有する水性懸濁製剤を開発する目的で鋭意研究した。その結果、水性懸濁製剤の成分として、これまで用いられている水溶性高分子化合物に加え、結晶セルロースを含有することで、水性懸濁製剤を長期保存した際に沈降した成分は、ハードケーキングすることなく容易に再分散するという知見を得て、本発明を完成した。
すなわち、第1に、農薬活性成分、結晶セルロース、水溶性高分子化合物および水を含有することを特徴とする、水性懸濁製剤が上記の目的に合致したものであることがわかった。第2に、用いられる水溶性高分子化合物が、ポリビニルアルコールおよび/または水溶性セルロースエーテルであることが好ましい。そして、第3に、水溶性セルロースエーテルが、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースであることが好ましい。第4に、高沸点溶剤を含有することが好ましい。第5に、製剤粘度が25℃において、100〜1000mPa・sであることが上記目的達成に好ましいとの知見を得た。
本発明を実施するうえで、水性懸濁製剤の製剤粘度が100mPa・s(25℃)より小さくては十分な製剤懸濁安定性が得られない。また、1000mPa・s(25℃)より大きくては製剤のプラスチックボトルの内壁への付着残量が多くなり、かつボトルから排出するのに時間がかかりすぎるなどのデメリットが生ずる。したがって、製剤粘度は100〜1000mPa・s(25℃)が実用上最も好ましい。
本発明の水性懸濁製剤を実施すると、次のような効果がもたらされる。すなわち、
(1)長期間の保存により、容器底に沈殿した分散質がハードケーキングすることなく、容器を振ることで簡単に再分散する。
(2)容器からの排出性がよく、原液の散布性に優れるほか、容器への残量が少ない。
次に、本発明を実施する方法について具体的に示す。
本発明の水性懸濁製剤に用いられる農薬活性成分としては、下記のものがあげられる。
殺虫活性成分としては、有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系、ネライストキシン系、ネオニコチノイド系、フラニコチル系など。
また、殺菌活性成分としては、銅化合物、有機硫黄、有機リン系、メラニン生合成阻害剤、ベンゾイミダゾール系、ジカルボキシイミド系、酸アミド系、ステロール生合成阻害剤、メトキシアクリレート系、アニリノピリミジン系、抗生物質なとが例としてあげられるが、これらに限定されるものではない。
また、上記のものを1種だけ用いても、または2種以上併用しても何ら問題ない。
除草活性成分として、ピラゾール系、フェノキシ酸系、カーバメート系、酸アミド系、尿素系、スルホニル尿素系、ピリミジルオキシ安息香酸系、トリアジン系、ダイアジン系、ダイアゾール系、ビピリジウム系、ジニトロアニリン系、芳香族カルボン酸系、脂肪族系、有機リン系、アミノ酸系などが例としてあげられる。そして、これらの除草活性成分は、1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。
なお、上記農薬活性成分は、「農薬ハンドブック2001年版」(社団法人日本植物防疫協会発行)または「クミアイ農薬総覧2003年版」(JA全農発行)に記載されている。
これらの農薬活性成分の含有量は、活性成分の種類により任意に変えることができるが、製剤中に0.1〜60重量%の範囲で添加すればよい。
本発明で使用する結晶セルロースは、植物のパルプ繊維を原料とし、そのセルロース結晶領域を取り出して精製したものであり、例えばパルプから取り出した結晶領域をそのまま乾燥させたアビセルFD−101、アビセルFD−F20(旭化成工業株式会社製の商品名)、KCフロック W−100G(日本製紙ケミカル株式会社製の商品名)、VIVAPUR 101(東亜化成株式会社製の商品名)、結晶セルロースの表面を水溶性高分子で特殊コーティングしたアビセルRC−N81、アビセルRC−591(旭化成工業株式会社製の商品名)などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
これらの結晶セルロースの製剤中の含有量は、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
本発明に使用できる水溶性高分子化合物としては、次のものがあげられる。ただし、本発明は、以下の例示に限定されるものではない。例えば、ポリビニルアルコール、水溶性セルロースエーテル、キサンタンガム、ラムザンガム、プルラン、トラガントガム、カラギナン、アラビアガム、ローカストビーンガム、水溶性大豆多糖類(ソヤファイブ)、カゼイン、デキストリン、アルギン酸ナトリウムなどがあげられる。
本発明に使用できる水溶性セルロースエーテルとしては、セルロース中に含まれる1つのグルコース残基中の3個のOH基のうち2個がメトキシ基で置換され、その分子中にメトキシ基を27〜32重量%含有しているメチルセルロース、あるいはメチルセルロースのメトキシ基の一部が更にヒドロキシプロポキシ基で置換されたヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。例えば、メチルセルロースとして松本油脂製薬株式会社製の商品名「マーポローズM」(メトキシ基置換率27.5〜31.5%、熱ゲル化温度50〜55℃)、信越化学工業株式会社製の商品名「メトローズSM」(メトキシ基置換率27.5〜31.5%、熱ゲル化温度約52℃)などがあり、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとして松本油脂製薬株式会社製の商品名「マーポローズ60MP」(メトキシ基置換率28〜30%、ヒドロキシプロポキシ基置換率7〜12%、熱ゲル化温度58〜64℃)、商品名「マーポローズ65MP」(メトキシ基置換率27〜30%、ヒドロキシプロポキシ基置換率4〜7.5%、熱ゲル化温度62〜68℃)、商品名「マーポローズ90MP」(メトキシ基置換率19〜25%、ヒドロキシプロポキシ基置換率4〜1.2%、熱ゲル化温度70〜90℃)、商品名「マーポローズMP」(メトキシ基置換率16.5〜20%、ヒドロキシプロポキシ基置換率60〜70%、熱ゲル化温度60〜70℃)、信越化学工業株式会社製の商品名「メトローズ60SH」(メトキシ基置換率28〜30%、ヒドロキシプロポキシ基置換率7〜12%、熱ゲル化温度約60℃)、商品名「メトローズ65SH」(メトキシ基置換率27〜29%、ヒドロキシプロポキシ基置換率4〜7.5%、熱ゲル化温度約65℃)、商品名「メトローズ90SH」(メトキシ基置換率19〜24%、ヒドロキシプロポキシ基置換率4〜12%、熱ゲル化温度約85℃)などが挙げられる。
また、これら以外の水溶性セルロースエーテルとしては次のものが挙げられる。すなわち、セルロースに酸化エチレンを反応させて得られるヒドロキシエチルセルロース、セルロースに酸化プロピレンを反応させて得られるヒドロキシプロピルセルロース、セルロースに苛性ソーダを反応させて得られたアルカリセルロースにモノクロル酢酸を反応させ、セルロースの水酸基の一部をカルボキシル基で置換したカルボキシメチルセルロースなどであるが、これらに限定されるものではなく、これらの1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。これら水溶性セルロースエーテルの市販品は、例えば、ヒドロキシエチルセルロースとしては、HECダイセル(ダイセル化学工業株式会社製の商品名)、フジヘック(フジケミカル株式会社製の商品名)、NATROSOL(日商岩井株式会社製の商品名)などがあり、ヒドロキシプロピルセルロースとしては、日曹HPC(日本曹達株式会社製の商品名)などがあり、カルボキシメチルセルロースとしては、サンローズ(日本製紙株式会社製の商品名)、CMCニッポン(日本CMC株式会社製の商品名)、セロゲン(第一工業製薬株式会社製の商品名)、CMCダイセル(ダイセル化学工業株式会社製の商品名)などが挙げられる。
これらの水溶性セルロースエーテルの製剤中の含有量は、0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜15重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。
本発明に使用できるポリビニルアルコールとしては、その重合度が2000を超えると製剤粘度が高くなりすぎて水中での拡散性、排出性が悪いなどの問題がある。またケン化度が69モル%未満では高温時にポリビニルアルコールの析出が著しくなり、90モル%を超えると水に対する溶解度が悪く散布時の水中拡散性が悪いなどの問題がある。よって、重合度2000以下、ケン化度69〜90モル%が最も適したポリビニルアルコールであるといえる。
ポリビニルアルコールとしては、例えば、クラレポバールPVA−405(株式会社クラレ製の商品名、平均重合度500、ケン化度80〜83モル%)、クラレポバールPVA−210(株式会社クラレ製の商品名、平均重合度1000、ケン化度87〜89モル%)、クラレポバールPVA−420(株式会社クラレ製の商品名、平均重合度2000、ケン化度78〜81モル%)、クラレポバールL−8(株式会社クラレ製の商品名、平均重合度1000以下、ケン化度69.5〜72.5モル%)などが挙げられる。
また、ポリビニルアルコールの末端を変性した変性ポリビニルアルコールでもよい。このような変性ポリビニルアルコールは、常法により合成したものを使用することができる。また市販の変性ポリビニルアルコールを使用することもできる。このような市販の変性ポリビニルアルコールとしては、以下のものを挙げることができる。
(1)末端アルキル基変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、クラレポバールMP−203(株式会社クラレ製の商品名、平均重合度300、ケン化度86.5〜89.5モル%)、クラレポバールMP−103(株式会社クラレ製の商品名、平均重合度300、ケン化度98.0〜99.0モル%)、
(2)側鎖アルキル基変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、信越ポバールCOT P−2000(信越化学工業株式会社製の商品名、ケン化度86〜90モル%)、
(3)カルボキシル基変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、クラレポバールPVA KL−506(株式会社クラレ製の商品名、平均重合度600、ケン化度74.0〜80.0モル%)、
(4)カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、クラレポバールPVA C−506(株式会社クラレ製の商品名、平均重合度600、ケン化度74.0〜80.0モル%)、
(5)ケイ素含有変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、クラレポバール R−2105(株式会社クラレ製の商品名、平均重合度500、ケン化度98.0〜99.0モル%)、
(6)スルホン酸基変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、ゴーセラン L−0301(日本合成化学工業株式会社製の商品名)、
(7)アセトアセチル基変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、ゴーセファイマーZ−200(日本合成化学工業株式会社製の商品名、ケン化度99.0モル%以上)などがあげられる。
しかしこれらに限定されるものではなく、また、これらの1種または2種以上を併用しても何ら問題はない。
本発明に使用できる高沸点溶剤としては、例えば、ソルべッソ150(エクソン化学株式会社製の商品名)、ハイゾールE、ハイゾールF(日本石油化学株式会社製の商品名)、カクタスソルベントP100、カクタスソルベントP150、カクタスソルベントP187、カクタスソルベントP200(日本鉱業株式会社製の商品名)、アルケン56N、アルケン60NH、アルケンL(日本石油化学株式会社製の商品名)などのアルキルベンゼン系溶剤、カクタスソルベント220、カクタスソルベントP240(日本鉱業株式会社製の商品名)、ソルべッソ200(エクソン化学株式会社製の商品名)、精製メチルナフタレン(住金化工株式会社製)、ジイソプロピルナフタレンなどのアルキルナフタレン系溶剤、イソパラフィン、流動パラフィン、n−パラフィンなどのパラフィン系溶剤、ナフテール(日本石油化学株式会社製の商品名)、Exssol(エクソン化学株式会社製の商品名)などのナフテン系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレンリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのエーテル系溶剤、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−1,3−ブタンジオールなどのアルコール系溶剤、N−メチルピロリドン、n−オクチルピロリドン、n−ドデシルピロリドンなどのアルキルピロリドン系溶剤、デュポンDBE(デュポン株式会社製の商品名)、フタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソデシル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジアルキル(C10〜C12)、トリメリット酸トリノルマルアルキル(C8〜C10)、トリメリット酸トリ−2−エチルへキシル、トリメリット酸トリイソデシル、アジピン酸ジオレイルなどの多塩基酸エステル系溶剤、オレイン酸イソブチル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、パーム脂肪酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソトリデシル、ステアリン酸−2−エチルへキシル、オレイン酸メチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸デシル、グルタル酸ジメチルなどの脂肪酸エステル、ハイゾールSAS−296、ハイゾールSAS−LH(日本石油化学株式会社製の商品名)など、米ヌカ油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸メチルエステルなどの植物油脂肪酸エステル、ナタネ油、大豆油、ヒマシ油、綿実油、コーン油などの植物油をあげることができる。
ただし、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、また、これらの1種または2種以上を併用しても何ら問題はない。
高沸点溶剤を併用する場合の製剤中の含有量は、1〜60重量%、好ましくは2〜50重量%である。
また、必要に応じて助剤として、例えば増粘剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐防黴剤、農薬活性成分の安定化剤などを用いることができる。
増粘剤としては、一般に使用されるものであればよく、例えば、グァーガム、キサンタンガム、トラガントガム、カゼイン、デキストリン、コロイド性含水ケイ酸アルミニウム、コロイド性含水ケイ酸マグネシウム、コロイド性含水ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの1種または2種以上を併用しても何ら問題ない。
また、消泡剤としては、シリコン系、脂肪酸系物質などを使用することができる。また、凍結防止剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなど、防腐防黴剤としては、ソルビン酸カリウム、p−クロロ−メタキシレノール、p−オキシ安息香酸ブチルなどを使用することができる。また、農薬活性成分の安定化剤としては、酸化防止剤、紫外線防止剤、結晶析出防止剤などを添加してもよい。ただし、本発明はここに例示した補助剤に限定されるものではなく、本発明の目的を達成しうる範囲内であれば各種の補助剤を使用することができる。
本発明の水性懸濁製剤は、通常の方法によって施用することができる。
例えば、農業場面においては水性懸濁製剤を原液そのままで、あるいは水で適当な濃度(通常は約4倍〜3000倍程度)に希釈して、噴霧器を用いて対象作物に噴霧散布すればよい。このとき、地上においてのみならず、有人の航空機、ヘリコプターや無人のRCヘリコプターを使用して空中から散布することもできる。水田においては、原液のまま、あるいは水で2〜5倍程度に高濃度希釈した液を畦畔より水田へ直接滴下、または噴霧することにより省力的に散布施用することもできる。
代かき作業時以降の水田が湛水状態であれば水深には関係なく使用することができる。つまり田植え時のような土壌表面にわずかな水層が存在するような状態から、水田全面に水深3cm〜5cmの水を張った状態まで、土壌表面が乾ききった状態でなければ散布が可能である。さらに灌漑水の入水時においても水口に滴下するなどして使用できる。また田植えと同時に滴下処理するような田植え時の水の少ない条件下であってもよく、処理すれば農薬活性成分はある程度拡散し、その後の入水によってさらに均一となり、十分な効果を発揮することができる。
また、稲の移植前、移植時、移植後のいずれの時期においても散布することができる。さらに湛水下水田へも適用が可能である。
本発明の水性懸濁製剤の調製方法は特に限定されないが、例えば次の方法によって調製できる。
調製法1 (農薬活性成分を水に分散させる場合)
水に水溶性高分子を溶解させ、この中に農薬活性成分および結晶セルロースを添加する。得られた混合液を、粉砕用メディアとして直径0.7〜1.2mmのガラスビーズを用い、4筒式サンドグラインダー(アイメックス株式会社製の商品名)にて湿式粉砕する。この混合液に必要であれば助剤を添加し、水を加えて100部とし、スリーワンモータ(新東科学株式会社製の商品名)を用いて混合して水性懸濁製剤を得る。
調製法2 (溶剤を含む場合)
水に水溶性高分子を溶解させ、この中に農薬活性成分、結晶セルロースを添加する。得られた混合液を、粉砕用メディアとして直径0.7〜1.2mmのガラスビーズを用い、4筒式サンドグラインダーにて湿式粉砕する。この混合液に、溶剤を添加し、TKオートホモミキサー(日本特殊機化工業株式会社製の商品名)を用いて攪拌する。必要であれば助剤を添加し、水を加えて100部とし、スリーワンモータを用いて混合して水性懸濁製剤を得る。
調製法3 (農薬活性成分を溶剤に溶解させる場合)
あらかじめ水に水溶性高分子を溶解させ、この中に結晶セルロースを添加する。得られた混合液に、溶剤に農薬活性成分を溶解させた混合液を加え、TKオートホモミキサーを用いて攪拌する。必要であれば助剤を添加し、水を加えて100部とし、スリーワンモータを用いて混合して水性懸濁製剤を得る。
調製法4 (農薬活性成分を水に分散させ、さらに農薬活性成分を溶剤に溶解した場合)
水に水溶性高分子を溶解させ、この中に農薬活性成分および結晶セルロースを添加する。得られた混合液を、粉砕用メディアとして直径0.7〜1.2mmのガラスビーズを用い、4筒式サンドグラインダーにて湿式粉砕する。この混合液に、溶剤に農薬活性成分を溶解させた混合液を加え、TKオートホモミキサーを用いて攪拌する。必要であれば助剤を添加し、水を加えて100部とし、スリーワンモータを用いて混合して水性懸濁製剤を得る。
次に、本発明の水性懸濁製剤の実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例中の部は、すべて重量%を示す。
実施例1
(1)組成
フサライド原体 10部
結晶セルロース 1部
ポリビニルアルコール 3部
(重合度500、ケン化度80〜83%)
水 86部
合計 100部
(2)調製
水86部に、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部を溶解させ、この中にフサライド原体10部および結晶セルロース1部を添加した。得られた混合液を、粉砕用メディアとして直径0.7〜1.2mmのガラスビーズを用い、4筒式サンドグラインダーにて湿式粉砕し、水性懸濁製剤を得た。
実施例1の製剤組成のうち、水86部を水85.5部とし、キサンタンガム0.5部を添加した以外は、実施例1に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
実施例1の製剤組成のうち、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部をポリビニルアルコール(重合度300、ケン化度86.5〜89.5%)3部とした以外は、実施例1に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
実施例1の製剤組成のうち、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部をポリビニルアルコール(重合度1700、ケン化度82〜84%)1部とし、水86部を水88部とした以外は、実施例1に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
実施例1の製剤組成のうち、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部をポリビニルアルコール(重合度2000、ケン化度78〜81%)1部とし、水86部を水88部とした以外は、実施例1に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
実施例1の製剤組成のうち、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部をポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度98.5%)3部とした以外は、実施例1に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
実施例1の製剤組成のうち、水86部を水84部にし、キサンタンガム2.0部を添加した以外は、実施例1に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
実施例1の製剤組成のうち、結晶セルロース1部を結晶セルロース0.05部とし、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部をポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)1部とし、水86部を水88.95部とした以外は、実施例1に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
実施例1の製剤組成のうち、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部を末端変性ポリビニルアルコール(重合度300、ケン化度86.5〜89.5部)とした以外は、実施例1に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
実施例1の製剤組成のうち、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部をメチルセルロース3部とし、結晶セルロース1部を結晶セルロース2部とし、水86部を水85部とした以外は、実施例1に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
実施例1の製剤組成のうち、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部を水溶性大豆多糖類10部とし、フサライド10部をイミベンコナゾール15部とし、結晶セルロース1部を結晶セルロース2部とし、水86部を水72.5部とし、キサンタンガム0.5部を添加した以外は、実施例1に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
(1)組成
フサライド原体 10部
結晶セルロース 2部
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3部
イソパラフィン 15部
水 70部
合計 100部
(2)調製
水70部にヒドロキシプロピルメチルセルロース3部を溶解させ、この中にフサライド原体10部および結晶セルロース2部を添加した。得られた混合液を粉砕用メディアとして直径0.7〜1.2mmのガラスビーズを用い、4筒式サンドグラインダーにて湿式粉砕した。この混合液に、イソパラフィン15部を添加し、TKオートホモミキサーを用いて攪拌し、水性懸濁製剤を得た。
実施例12の製剤組成のうち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース3部をヒドロキシエチルセルロース2部とし、フサライド10部をイミベンコナゾール15部とし、水70部を水70.5部とし、イソパラフィン15部を米ヌカ油脂肪酸メチルエステル10部とし、グァーガム0.5部を添加した以外は、実施例12に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
実施例12の製剤組成のうち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース3部をヒドロキシプロピルセルロース2部とし、フサライド10部をイミベンコナゾール15部とし、水70部を水61部とし、イソパラフィン15部をメチルナフタレン20部とした以外は、実施例12に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
(1)組成
MEP原体 20部
結晶セルロース 1部
ポリビニルアルコール 3部
(重合度500、ケン化度80〜83%)
グルタル酸ジメチル 10部
水 66部
合計 100部
(2)調製
水66部に、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部を溶解させ、結晶セルロース1部を添加した溶液中に、あらかじめグルタル酸ジメチル10部にMEP原体20部を溶解させた混合液を加え、TKオートホモミキサーを用いて攪拌し、水性懸濁製剤を得た。
実施例15の製剤組成のうち、水66部を水74.5部とし、結晶セルロース1部を結晶セルロース0.5部とし、グルタル酸ジメチル10部をアジピン酸ジメチル20部とし、MEP20部をフェノチオール2部とした以外は、実施例15に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
(1)組成
フサライド原体 10部
MEP原体 20部
結晶セルロース 1部
ポリビニルアルコール 3部
(重合度500、ケン化度80〜83%)
グルタル酸ジメチル 10部
水 56部
合計 100部
(2)調製
水56部に、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部を溶解させ、フサライド原体10部および結晶セルロース1部を添加し、得られた混合液を粉砕用メディアとして直径0.7〜1.2mmのガラスビーズを用い、4筒式サンドグラインダーにて湿式粉砕した。この混合液に、あらかじめグルタル酸ジメチル10部にMEP原体20部を溶解させた混合液を加え、TKオートホモミキサーを用いて攪拌し、水性懸濁製剤を得た。
比較例1
実施例1の製剤組成のうち、水86部を水87部とし、結晶セルロース1部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例1に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例2
実施例2の製剤組成のうち、水85.5部を水88.5部とし、ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度80〜83%)3部をポリビニルアルコール添加なしとした以外は、実施例2に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例3
実施例3の製剤組成のうち、水86部を水87部とし、結晶セルロース1部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例3に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例4
実施例4の製剤組成のうち、水88部を水89部とし、結晶セルロース1部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例4に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例5
実施例5の製剤組成のうち、水88部を水89部とし、結晶セルロース1部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例5に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例6
実施例9の製剤組成のうち、水86部を水87部とし、結晶セルロース1部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例9に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例7
実施例10の製剤組成のうち、水85部を水87部とし、結晶セルロース2部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例10に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例8
実施例12の製剤組成のうち、水70部を水72部とし、結晶セルロース2部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例12に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例9
実施例13の製剤組成のうち、水70.5部を水72.5部とし、結晶セルロース2部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例13に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例10
実施例14の製剤組成のうち、水61部を水63部とし、結晶セルロース2部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例14に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例11
実施例15の製剤組成のうち、水66部を水67部とし、結晶セルロース1部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例15に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例12
実施例16の製剤組成のうち、水74.5部を水75部とし、結晶セルロース0.5部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例16に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
比較例13
実施例17の製剤組成のうち、水56部を水57部とし、結晶セルロース1部を結晶セルロース添加なしとした以外は、実施例17に準じて調製し、水性懸濁製剤を得た。
試験例1 製剤安定性試験
調製した水性懸濁製剤を容量30ml(φ17mm×長さ180mm)の試験管に30ml入れ、密栓をし、20℃または40℃の恒温室に静置する。水性懸濁製剤は当初は全層にわたって懸濁状態である。そして、それぞれ20℃で3か月後、40℃で3か月後の製剤の分離状態を、試験管中の懸濁剤が下層に沈降し、懸濁液の上層に生じた水層(上スキ層)と全層の高さ(cm)を測定して、下記式により算出した。
Figure 0004641788
その結果を表1、2に示した。
試験例2 再分散性試験
調製した水性懸濁製剤を容量500mlポリびんに450ml入れ、20℃または40℃の恒温室に静置する。そして、それぞれ90日後にポリびんを倒立させ、沈降物が完全に分散するまでの倒立回数を測定した。再分散回数が20回以下であれば、散布時に問題がなく散布できる。その結果を表1、2に示した。
試験例3 粘度測定
調製直後の水性懸濁製状農薬の粘度をB型粘度計[(株)トキメック製]を用いてローターNo2、回転数12r.p.m、温度25℃で測定した。その結果を表1、2に示した。
試験例4 排出性試験
500ml容量のポリびんに調製直後の水性懸濁状農薬を450ml入れ、25℃で1日間静置後に容器の倒立を20回くりかえした後、容器を逆さにし、水性懸濁状農薬を排出させる。容器の口より薬剤の滴下間隔が10秒以上になった時を終点とする。この時点で排出した薬剤の重量をはかり、容器に充填した薬剤の重量に対する割合(%)で示した。その結果を表1、2に示した。
Figure 0004641788
Figure 0004641788

Claims (4)

  1. 農薬活性成分、結晶セルロース、平均重合度2000以下でケン化度が69〜90モル%であるポリビニルアルコールおよび水を含有することを特徴とする、水性懸濁製剤。
  2. 農薬活性成分、結晶セルロース、水溶性セルロースエーテルがメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる1種、および水を含有することを特徴とする、水性懸濁製剤。
  3. 高沸点溶剤として、ジイソプロピルナフタレン、イソパラフィン、流動パラフィン、n−パラフィン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−1,3−ブタンジオール、N−メチルピロリドン、n−オクチルピロリドン、n−ドデシルピロリドン、フタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソデシル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジアルキル(C10〜C12)、トリメリット酸トリノルマルアルキル(C8〜C10)、トリメリット酸トリ−2−エチルへキシル、トリメリット酸トリイソデシル、アジピン酸ジオレイル、オレイン酸イソブチル、ヤシ脂肪酸メチル、ラウリン酸メチル、パーム脂肪酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソトリデシル、ステアリン酸−2−エチルへキシル、オレイン酸メチル、オレイン酸オクチル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸デシル、グルタル酸ジメチル、米ヌカ油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸メチルエステル、ナタネ油、大豆油、ヒマシ油、綿実油、コーン油のうち一種を含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の水性懸濁製剤。
  4. 製剤粘度が、25℃において100〜1000mPa・sであることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の水性懸濁製剤。
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