JP4641614B2 - 孔版印刷装置及びこれに用いる版胴構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、版胴の内部から外部に滲み出させて版胴に巻着させたマスタの穿孔画像を通過させたインキを印刷用紙に転写して印刷を行うようにした孔版印刷装置及びこれに用いるマスタクランプ機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
孔版印刷装置では、版胴の内部から外部に滲み出させたインキを版胴に巻着させたマスタの穿孔画像を通過させて印刷用紙に転写するようにしている。このような孔版印刷装置の印刷原理を図10に基づいて説明する。
【0003】
図10は、版胴とインキ供給ローラとの配置関係を示す縦断正面図である。図10に示すように、版胴501の内部にはインキ供給ローラ502とドクタローラ503とが設けられており、これらのインキ供給ローラ502とドクタローラ503との間にはインキ溜り504が形成されている。そこで、印刷動作時には、そのインキ溜り504にインキ505を供給しつつ、印刷用紙506を介在させて版胴501にプレスローラ507を押し当て、この時のプレスローラ507の押し当て力によって版胴501に圧力を加える。すると、版胴501が変形し、インキ供給ローラ502が版胴501の内周面に接触する。この際、インキ供給ローラ502も回転しているため、インキ供給ローラ502の回転によってインキ溜り504のインキ505はインキ供給ローラ502の外周面に供給されている。そこで、インキ供給ローラ502の外周面に供給されているインキ505は、インキ供給ローラ502に接触している版胴501の内部から外部に漏れ出し、版胴501に巻着されたマスタ508に形成された穿孔画像を通過し、印刷用紙506に転写される。これが、孔版印刷装置における印刷の原理である。
【0004】
ここで、図11及び図12に基づいて版胴501をより詳しく説明する。図11は版胴501の概略的な分解斜視図、図12はスクリーン取付金具が取り付けられたスクリーンの側面図である。
【0005】
図11に示すように、版胴501は、0.25〜1.0mm程度の間隔で直径0.15〜0.5mm程度の孔が外周面に形成された平板状の版胴板509の両側部が一対の版胴リング510(図11は片側だけを示す)に取り付けられて形状保持され、形成されている。しかし、これでは版胴501の内部のインキ505は多量に版胴501の外部に漏れ出てしまうので、版胴501にはスクリーン511が巻かれている。このスクリーン511は、その両端部Eが袋形状に形成されており、その袋形状部分にはスクリーン取付金具512が挿入され、この状態でスクリーン取付金具512が版胴501、具体的には版胴リング510に固定され、これによってスクリーン511が版胴501に巻き付け固定されている。
【0006】
ここで、スクリーン511には、版胴501に巻き付けられた状態で、ある程度のテンションが加えられている必要がある。そこで、図12に示すように、版胴501に巻き付けられた状態のスクリーン511は、その両端部Eに形成された袋形状部分の内部がスクリーン取付金具512の当接辺513(図12では、スクリーン511の袋形状部分に覆われた状態で示す)に当接した状態となっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
版胴501は、版胴板509を形状保持する版胴リング510の部分では高い剛性を有する反面、中央部分では剛性が低い。これは、プレスローラ507の押し当て力によって圧力を加えた場合に版胴501が変形しなければならないため、版胴501にとって不可欠の構造である。
【0008】
ところが、このような版胴501の構造上、版胴501にスクリーン511を所定のテンションをもって巻き付け固定した場合、版胴501の中央部が歪み、版胴501が鼓形状に変形してしまうという問題がある。図13は、スクリーン511に締め付けられて版胴501が歪んでいる状態を誇張して示す斜視図である。
【0009】
そして、版胴501が鼓形状に変形した場合に真に問題となるのは、版胴501からのインキ505の漏れ出しが生じ易くなってしまうということである。ここで、図10に基づいて説明した孔版印刷装置の印刷原理を復習する。前述したように、孔版印刷装置では、プレスローラ507の押し当て力によって版胴501を変形させ、インキ供給ローラ502に版胴501の内周面を接触させることでインキ供給ローラ502の外周面に供給されているインキ505を版胴501の内部から外部に漏れ出させるようにしている。このため、非印刷時には、インキ供給ローラ502から版胴501の内周面が離反していなければ、版胴501からのインキ505の漏れ出しが生じてしまう。より詳細には、印刷動作の終了後、版胴501の外周面に漏れ出たインキ505のうち余分なインキ505は、インキ供給ローラ502から版胴501の内周面が離反することによって版胴501の内部に回収される。そこで、従来、図10に示すように、インキ供給ローラ502と版胴501の内周面との間の隙間Gは、0.3mm程度確保されていることが望ましいとされている。
【0010】
ところが、図13に例示するような状態に版胴501が変形した場合、インキ供給ローラ502と版胴501の内周面との間の隙間Gが狭まってしまう。図14は、版胴501が歪んだ場合における版胴501とインキ供給ローラ502との配置関係を示す縦断側面図である。図14に示すように、本来的には0.3mm程度必要であるインキ供給ローラ502と版胴501の内周面との間の隙間Gは、極めて小さくなるか、場合によってはインキ供給ローラ502と版胴501の内周面とが接触してしまう。このため、インキ供給ローラ502と版胴501の内周面との配置関係が図14に例示するようになった場合には、版胴501の外周面に押出された後に版胴501の内部への回収が必要となったインキ505の回収が不可能となり、版胴501からのインキ漏れが生じてしまうという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、版胴からのインキ漏れを防止することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、穿孔画像が形成されたマスタをスクリーンが巻かれた回転自在な版胴に巻着し、前記版胴の内部から外部に滲み出させて前記マスタの前記穿孔画像を通過させたインキを印刷用紙に転写して印刷を行うようにした孔版印刷装置において、前記スクリーンは、その両側縁部よりも中央部のテンションが弱くなるように前記版胴に所定のテンションをもって巻き付け固定されている。
【0013】
したがって、版胴にスクリーンを所定のテンションをもって巻き付け固定した場合、そのテンションは、スクリーンの両側縁部よりも中央部の方が弱くなるため、両端側よりも剛性が低い版胴の中央部に対して加えられるテンションが低くなり、版胴の鼓形状となるような変形が防止される。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、前記スクリーンの端部は袋形状に形成されており、この袋形状部分に挿入されたスクリーン取付金具が前記版胴に取り付けられることによって前記スクリーンが前記版胴に巻き付け固定されている。
【0015】
したがって、スクリーンは従来方法によって容易に版胴に巻き付け固定される。
【0016】
ここで、スクリーンをその両側縁部よりも中央部のテンションが弱くなるように版胴に所定のテンションをもって巻き付け固定するより具体的な構造として、例えば、請求項3記載の発明は、請求項2記載の孔版印刷装置において、前記スクリーン取付金具において前記スクリーンの袋形状内部に当接する当接辺は、その中央部が凹状に形成されており、請求項4記載の発明は、請求項2記載の孔版印刷装置において、前記スクリーンの袋形状部分は、前記スクリーンの両側縁部にのみ設けられている。
【0017】
請求項5記載の発明は、穿孔画像が形成されたマスタをスクリーンが巻かれた回転自在な版胴に巻着し、前記版胴の内部から外部に滲み出させて前記マスタの前記穿孔画像を通過させたインキを印刷用紙に転写して印刷を行うようにした孔版印刷装置の版胴構造において、前記スクリーンは、その両側縁部よりも中央部のテンションが弱くなるように前記版胴に所定のテンションをもって巻き付け固定されている。
【0018】
したがって、版胴にスクリーンを所定のテンションをもって巻き付け固定した場合、そのテンションは、スクリーンの両側縁部よりも中央部の方が弱くなるため、両端側よりも剛性が低い版胴の中央部に対して加えられるテンションが低くなり、版胴の鼓形状となるような変形が防止される。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態を図1ないし図4に基づいて説明する。本実施の形態における孔版印刷装置1の基本的な構造は周知の構造なので、基本構造については簡単に説明する。また、従来の技術を説明するために用いた図10及び図13も適宜用いながら説明を進める。以下、機構系、制御系及び制御系により実行される各種手段に分けて構成を説明する。
【0020】
〔機構系の概略〕
図1は、孔版印刷装置1の縦断正面図である。
【0021】
マスタ2を用いて印刷を行う孔版印刷装置1は、概略構造として、光学読取部3、製版部4、印刷部5、排版部6、給紙部7、及び排紙部8から構成されている。
【0022】
光学読取部3は、コンタクトガラス9上に載置された原稿10に光源11からの光を照射し、その反射光をCCD12で受光するデジタルスキャナとしての構造を有し、ADF13を備える。
【0023】
製版部4は、ロール状に巻回保持された画像形成媒体としてのマスタ2をそのマスタ搬送路14に引き出し、マスタ搬送路14上に位置するサーマルヘッド15によってマスタ2に穿孔し、穿孔後のマスタ2をカッタ16で切断してシート状にし、シート状のマスタ2を印刷部5に送り出す構造である。ここで、本実施の形態では、ロール状に巻回保持されたマスタ2をマスタロール2a、切断されてシート状にされたマスタ2をマスタシート2bという。
【0024】
印刷部5は、版胴17を主要な構成要素として有する。この版胴17は、0.25〜1.0mm程度の間隔で直径0.15〜0.5mm程度の孔が外周面に形成されたもので、後述するインキ供給パイプ21が兼ねる支軸を中心として回転駆動される。そして、版胴17は、ステージ部18とクランパ部19とを有し、製版部4からステージ部18に送り出されたマスタ2をクランパ部19で挾持し、駆動されて回転することでマスタ2を巻回保持する構造である。印刷部5は、そのような版胴17の内部にインキ供給部20を備える。このインキ供給部20は、インキ供給パイプ21、インキ供給ローラ22、及びドクタローラ23から構成され、インキ供給パイプ21の外周面に形成された多数の孔からインキ供給ローラ22とドクタローラ23との間に位置するインキ溜り24にインキ25を供給し、このインキ25の量を両ローラ22,23の間の隙間で規制してインキ供給ローラ22に供給する構造である。そして、印刷部5は、版胴17の外周面からインキ供給ローラ22に押し当てられる押圧部材であるプレスローラ26を有し、このプレスローラ26が版胴17に圧力を加えて変形させることにより、版胴17の内周面から外周面にインキ25を漏れ出させる構造である。つまり、版胴17からインキ25が漏れ出ると、版胴17に巻かれたマスタ2に形成された孔をインキ25が通り抜けることを利用し、版胴17とプレスローラ26との間に印刷用紙27を通過させてこの印刷用紙27に画像を形成する、というのが印刷部5における印刷原理である。
【0025】
排版部6は、使用後に不要となったマスタ2を版胴17から受け取り、排版ボックス28に収納する構造である。
【0026】
給紙部7は、給紙台29に積層状態で載置された印刷用紙27を分離給紙して版胴17とプレスローラ26との間に導く構造である。版胴17とプレスローラ26との間に導かれた印刷用紙27は、ベルトコンベア30に搬送されてトレイ状の排紙部8に至るよう、給紙部7と排紙部8とが用紙搬送路31で結ばれている。
【0027】
〔版胴17の周辺構造〕
図2は、版胴周り分解斜視図である。
【0028】
版胴17には、前述した通り、0.25〜1.0mm程度の間隔で直径0.15〜0.5mm程度の孔が外周面に形成されているが、このような構造の版胴17の外周面には、スクリーン101が巻き付けられている。つまり、版胴17は、基本的には平板状の版胴板102がロール状に丸められた構造のものであり、ロール状に丸められた版胴板102は、その両側部を一対の版胴リング103にネジ止めされ、これによって形状保持されている。一対の版胴リング103によって形状保持されている版胴板102の内部には、ユニット化されたインキ供給部20が収納されており、このインキ供給部20は、版胴リング103にそれぞれ取り付け固定された保持ディスク104(図2では、一方の保持ディスク104のみを示す)に保持されている。
【0029】
そして、版胴板102の外周面における一部の領域には、版胴17の軸方向に沿わせて、ステージ部18とクランパ部19とが取り付けられている。つまり、ステージ部18は、ベース105にクランパ部19が当接する薄板106が固定された構造であり、このようなステージ部18の両端部は、版胴板102と共に一対の版胴リング103にネジ止めされている。また、クランパ部19は、一対の版胴リング103に回動自在にネジ止めされたクランパ板107にマグネット108が固定されて構成されている。マグネット108は、クランパ板107の回動に伴いステージ部18の薄板106に当接する位置に配置され、ステージ部18のベース105に磁気的に吸着する。そして、クランパ部19は、版胴リング103とクランパ板107との間に掛け渡されたコイルスプリング109の復元力によって、ステージ部18に当接する方向に付勢されている。
【0030】
さらに、版胴17には、前述したように、スクリーン101が巻き付けられている。このスクリーン101は、その両端部Eが袋形状となっており、この袋形状部分にそれぞれスクリーン取付金具110が挿入された状態でそれらのスクリーン取付金具110が版胴板102と共に版胴リング103にネジ止めされることによって版胴17に巻き付けられた状態で保持されている。ここで、2つのスクリーン取付金具110は、それぞれステージ部18及びクランパ部19の両側部近傍に位置付けられ、これにより、スクリーン101は、ステージ部18及びクランパ部19に干渉しない位置で版胴17に巻き付けられることになる。
【0031】
この状態で、スクリーン101は、版胴17に所定のテンションをもって巻き付け固定される。この場合、版胴17に対するスクリーン101のテンションは、スクリーン101の両側縁部Sよりも中央部Cの方が弱くなるように設定されている。本実施の形態では、そのような版胴17に対するスクリーン101のテンション調節を、図3及び図4に例示する構造によって実現している。
【0032】
図3はスクリーン取付金具110の側面図、図4はスクリーン取付金具110が取り付けられたスクリーン101の側面図である。スクリーン取付金具110には、図3及び図4に示すように、その当接辺111に凹部112が形成されている。ここで、当接辺111というのは、スクリーン取付金具110においてスクリーン101の両端部Eに形成された袋形状部分の内部に当接する部分である。つまり、スクリーン101の両端部Eに形成された袋形状部分の内部を当接辺111が引っ張ることにより、スクリーン101が版胴17に所定のテンションをもって巻き付け固定される。本実施の形態では、スクリーン取付金具110の当接辺111の中央部に凹部112が形成されており、この凹部112の部分はスクリーン101の両端部Eに形成された袋形状部分の内部に当接しない。したがって、スクリーン取付金具110は、凹部112の部分ではスクリーン101の両端部Eに形成された袋形状部分の内部を引っ張らず、よって、版胴17に対するスクリーン101のテンションが、スクリーン101の両側縁部Sよりも中央部Cの方が弱くなるように設定される。
〔制御系〕
図5は、各部の電気的接続を示すブロック図である。
【0033】
制御系は、クロック発生器32を備えて各種処理を集中的に行うCPU33、ROM34及びRAM35からなるマイクロコンピュータを主要な構成要素として備え、このマイクロコンピュータの機能として表現される機能ブロックとして、光学読取制御部36、製版制御部37、印刷制御部38、画像処理制御部39、及び操作表示制御部40を有する。CPU33は、クロック発生器32で発生する基本クロック周期に従い動作し、このようなCPU33により実行される動作プログラムはROM34に格納されている。RAM35は、ワークエリア等として使用される。
【0034】
光学読取制御部36は、光学読取部の動作制御を行う。そこで、この光学読取制御部36は、CCD41aの出力信号を扱う画像読取系と図示しない光源等を駆動する駆動系とからなる。画像読取系は、CCD41aの信号出力回路からなるCCD基板41と、CCD基板41からの出力信号をA/D変換するA/D変換基板42とからなり、共にCPU33に接続されて動作制御を受ける。CCD基板41は、CCD41aの実装基板であり、1主走査ライン毎のCCD41aの読み取り信号を1画素ずつ連続的にシリアル出力する。A/D変換基板42は、CCD基板41からシリアル出力されたアナログ信号を64〜256階調の多値デジタル信号に変換し、更に、変換された多値デジタル信号に対し、周知のシェーディング補正及び地肌補正を施す。そして、A/D変換基板42によるA/D変換後の信号は、画像処理制御部39に出力される。駆動系は、デジタルスキャナ及びADFのそれぞれの駆動源である二つのモータ43を駆動制御するモータ駆動回路44よりなる。このモータ駆動回路44は、クロック発生器32からのクロック信号に同期し、モータ43の各励磁相に所定のタイミング及び周波数で所定値の電流パルスを印加し、これによってモータ43を所定のタイミング及び速さで回転駆動する。クロック発生器32からモータ駆動回路44に与えられるクロック信号は、基本クロック周期から分周された信号である。
【0035】
製版制御部37は、製版部4の動作制御を行う。そこで、この製版制御部37は、サーマルヘッド15を駆動制御する画像書込系と、マスタシート2bを搬送するための搬送系と、マスタロール2aの回転速度を検出する検出系とからなる。画像書込系は、CPU33に接続されてサーマルヘッド15を駆動制御するサーマルヘッド発熱制御回路45よりなる。このサーマルヘッド発熱制御回路45は、後述する画像処理制御部39から送信された画像データに従い、サーマルヘッド15に発熱信号を送信して図示しない発熱素子を選択的に発熱させる。搬送系は、マスタを搬送するフィード部の駆動源であるモータ46を駆動制御するモータ駆動回路47よりなる。このモータ駆動回路47は、クロック発生器32からのクロック信号に同期し、モータ46の各励磁相に所定のタイミング及び周波数で所定値の電流パルスを印加し、これによってモータ46を所定のタイミング及び速さで回転駆動する。クロック発生器32からモータ駆動回路47に与えられるクロック信号は、基本クロック周期から分周された信号である。検出系は、マスタロール2aの回転速度を検出するためのロータリエンコーダの一部となる透過型光センサOSの出力が入力されるセンサ入力回路48よりなる。
【0036】
印刷制御部38は、印刷部5、排版部6及び給紙部7の動作制御を行う。つまり、印刷制御部38は、印刷部5、排版部6及び給紙部7において各部を駆動する複数個のモータ49を駆動制御するモータ駆動回路50からなる。ここで、モータ49に駆動される各部は、印刷部5では版胴17、インキ供給ローラ22、ドクタローラ23、プレスローラ26、及びクランパ部19であり、排版部6ではマスタを搬送するフィード部や排版ボックス28内のマスタに押圧力を加える機構であり、給紙部7では印刷用紙を給紙搬送するフィード機構である。また、モータ駆動回路50は、クロック発生器32からのクロック信号に同期し、モータ49の各励磁相に所定のタイミング及び周波数で所定値の電流パルスを印加し、これによってモータ49を所定のタイミング及び速さで回転駆動する。クロック発生器32からモータ駆動回路50に与えられるクロック信号は、基本クロック周期から分周された信号である。
【0037】
操作表示制御部40は、図示しない操作パネルにおける操作系、表示系及び操作表示系を駆動制御する。すなわち、操作表示制御部40は、操作系(操作表示系の操作系を含む)、例えばスタートキー51等が操作された場合に所定の信号を生成してCPU33に送信し、表示系(操作表示系の表示系を含む)、例えば図示しないモニター表示部やLCD表示部を駆動して所定の表示を行わせる。なお、図4のブロック図中、操作表示制御部40にはスタートキー51しか示されていないが、操作表示制御部40には操作パネルにおけるすべての操作系、表示系及び操作表示系が含まれている。
【0038】
画像処理制御部39は、光学読取制御部36で読み取られた原稿の画像データに所定の処理を施し、製版制御部37に送信する処理を行う。画像データに施す所定の処理としては、例えばMTF補正や変倍等であり、それ自体は周知なのでその説明は省略する。
【0039】
このような構成において、孔版印刷装置1は、光学読取部3で読み取った原稿画像に基づき製版部4でマスタ2を製版する製版動作と、製版後のマスタ2を利用して印刷用紙27に原稿画像を転写し印刷する印刷動作とを基本的な動作とする。これらの各動作は、スタートキー51の押下によって連続的に実行される。
【0040】
ここで、印刷動作には、印刷制御部38において、モータ駆動回路50によってモータ49が駆動制御され、インキ溜り24にインキ25を供給しつつ、印刷用紙27を介在させて版胴17にプレスローラ26を押し当てるという動作が印刷部5において実行される。すると、プレスローラ26の押し当て力によって版胴17に圧力が加えられ、これによって版胴17が変形し、インキ供給ローラ22が版胴17の内周面に接触する。この際、モータ駆動回路50によって駆動制御されるモータ49に駆動されてインキ供給ローラ22も回転しているため、インキ供給ローラ22の回転によってインキ溜り24のインキ25はインキ供給ローラ22の外周面に供給されることになる。そこで、インキ供給ローラ22の外周面に供給されているインキ25は、インキ供給ローラ22に接触している版胴17の内部から外部に漏れ出し、版胴17に巻着されたマスタ2に形成された穿孔画像を通過し、印刷用紙27に転写される。
【0041】
このような印刷動作が終了した場合、モータ駆動回路50によってモータ49が駆動制御され、印刷用紙27を介在させて版胴17に押し当てられていたプレスローラ26が版胴17から離反される。これにより、版胴17が元の形状に復元され、版胴17の変形によってインキ供給ローラ22に当接していた版胴17の内周面がインキ供給ローラ22から離反する。すると、版胴501の外周面に漏れ出たインキ25のうち余分なインキ25は、インキ供給ローラ22から版胴17の内周面が離反することによって版胴17の内部に回収される。
【0042】
ここで、版胴17は、その両側縁部に配置された版胴リング103によって両側縁部の剛性が高くなっている反面、中央部分の剛性が相対的に低い。このため、スクリーン101が版胴17に所定のテンションをもって巻き付け固定されることにより版胴17の中央部が変形し、版胴17に鼓形状の変形が生ずることが想定される(図13参照)。これに対し、本実施の形態では、スクリーン101を版胴17に固定するためのスクリーン取付金具110において当接辺111の中央部に凹部112が形成されていることから、版胴17に対するスクリーン101のテンションは、スクリーン101の両側縁部Sよりも中央部Cの方が弱くなるように設定されている。このため、版胴17の中央部の変形が防止され、インキ供給ローラ22と版胴17の内周面との間の隙間Gは、0.3mm程度という理想的な値に確保される(図10参照)。つまり、本実施の形態においては、インキ供給ローラ22と版胴17の内周面との間の隙間Gの管理が容易であり、この隙間Gが不適切である場合に発生する版胴17からのインキ25の漏れ出しを防止することできる。
【0043】
本発明の第2の実施の形態を図6及び図7に基づいて説明する。図6はスクリーン取付金具110の側面図、図7はスクリーン取付金具110が取り付けられたスクリーン101の側面図である。第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0044】
本実施の形態は、版胴17に対するスクリーン101のテンションを、スクリーン101の両側縁部Sよりも中央部Cの方が弱くなるように設定するための構造についての第1の実施の形態とは別の実施の形態である。
【0045】
本実施の形態では、スクリーン取付金具110には、図6及び図7に示すように、その当接辺111の中央部に凹状の湾曲部201が形成されている。この当接辺111の中央部に形成された湾曲部201の部分は、スクリーン101の両端部Eに形成された袋形状部分の内部との当接力を中央部に向かうに従い徐々に弱める。これにより、版胴17に対するスクリーン101のテンションは、スクリーン101の両側縁部Sから中央部Cに向かうに従い徐々に弱くなるように設定される。
【0046】
したがって、版胴17の中央部の変形が防止され、インキ供給ローラ22と版胴17の内周面との間の隙間Gは、0.3mm程度という理想的な値に確保される(図10参照)。つまり、本実施の形態においては、インキ供給ローラ22と版胴17の内周面との間の隙間Gの管理が容易であり、この隙間Gが不適切である場合に発生する版胴17からのインキ25の漏れ出しを防止することできる。
【0047】
本発明の第3の実施の形態を図8及び図9に基づいて説明する。図8はスクリーン取付金具110の側面図、図9はスクリーン取付金具110が取り付けられたスクリーン101の側面図である。第1の実施の形態と同一部分は同一符号で示し説明も省略する。
【0048】
本実施の形態では、スクリーン取付金具110の当接辺111自体は直線状に形成されているのに対し、スクリーン101の両端部Eに形成された袋形状部分の中央部Cに切欠301が形成され、実質的に、それらの袋形状部分は、スクリーン101の両側縁部Sにのみ形成されていることになる。これにより、版胴17に対するスクリーン101のテンションは、スクリーン101の両側縁部Sから中央部Cに向かうに従い徐々に弱くなるように設定される。
【0049】
したがって、版胴17の中央部の変形が防止され、インキ供給ローラ22と版胴17の内周面との間の隙間Gは、0.3mm程度という理想的な値に確保される(図10参照)。つまり、本実施の形態においては、インキ供給ローラ22と版胴17の内周面との間の隙間Gの管理が容易であり、この隙間Gが不適切である場合に発生する版胴17からのインキ25の漏れ出しを防止することできる。
【0050】
【発明の効果】
請求項1記載の発明は、穿孔画像が形成されたマスタをスクリーンが巻かれた回転自在な版胴に巻着し、前記版胴の内部から外部に滲み出させて前記マスタの前記穿孔画像を通過させたインキを印刷用紙に転写して印刷を行うようにした孔版印刷装置において、前記スクリーンは、その両側縁部よりも中央部のテンションが弱くなるように前記版胴に所定のテンションをもって巻き付け固定されているので、スクリーンの巻き付け固定によって版胴に加わるテンションは、スクリーンの両側縁部よりも中央部の方が弱くなるため、両端側よりも剛性が低い版胴の中央部に対して加えられるテンションが低くなり、版胴が鼓形状に変形することを防止することができ、したがって、インキ供給ローラと版胴の内周面との間の隙間の管理が容易となり、この隙間が不適切である場合に発生する版胴からのインキの漏れ出しを防止することできる。
【0051】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の孔版印刷装置において、前記スクリーンの端部は袋形状に形成されており、この袋形状部分に挿入されたスクリーン取付金具が前記版胴に取り付けられることによって前記スクリーンが前記版胴に巻き付け固定されているので、従来方法によって容易にスクリーンを版胴に巻き付け固定することができ、版胴の組立作業の容易化を図ることができる。
【0052】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の孔版印刷装置において、前記スクリーン取付金具において前記スクリーンの袋形状内部に当接する当接辺は、その中央部が凹状に形成されているので、簡単な構造によってスクリーンをその両側縁部よりも中央部のテンションが弱くなるように版胴に所定のテンションをもって巻き付け固定することができる。また、版胴に対するスクリーンの取り付け作業についても、従来の作業と異なる点がないため、版胴の組立作業の容易化を図ることができる。
【0053】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の孔版印刷装置において、前記スクリーンの袋形状部分は、前記スクリーンの両側縁部にのみ設けられているので、簡単な構造によってスクリーンをその両側縁部よりも中央部のテンションが弱くなるように版胴に所定のテンションをもって巻き付け固定することができる。また、版胴に対するスクリーンの取り付け作業についても、従来の作業と異なる点がないため、版胴の組立作業の容易化を図ることができる。
【0054】
請求項5記載の発明は、穿孔画像が形成されたマスタをスクリーンが巻かれた回転自在な版胴に巻着し、前記版胴の内部から外部に滲み出させて前記マスタの前記穿孔画像を通過させたインキを印刷用紙に転写して印刷を行うようにした孔版印刷装置の版胴構造において、前記スクリーンは、その両側縁部よりも中央部のテンションが弱くなるように前記版胴に所定のテンションをもって巻き付け固定されているので、スクリーンの巻き付け固定によって版胴に加わるテンションは、スクリーンの両側縁部よりも中央部の方が弱くなるため、両端側よりも剛性が低い版胴の中央部に対して加えられるテンションが低くなり、版胴が鼓形状に変形することを防止することができ、したがって、インキ供給ローラと版胴の内周面との間の隙間の管理が容易となり、この隙間が不適切である場合に発生する版胴からのインキの漏れ出しを防止することできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す孔版印刷装置全体の縦断正面図である。
【図2】版胴周りの分解斜視図である。
【図3】スクリーン取付金具の側面図である。
【図4】スクリーン取付金具が取り付けられたスクリーンの側面図である。
【図5】各部の電気的接続のブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示すスクリーン取付金具の側面図である。
【図7】スクリーン取付金具が取り付けられたスクリーンの側面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態を示すスクリーン取付金具の側面図である。
【図9】スクリーン取付金具が取り付けられたスクリーンの側面図である。
【図10】従来の一例として、版胴とインキ供給ローラとの配置関係を示す縦断正面図である。
【図11】版胴の概略的な分解斜視図である。
【図12】スクリーン取付金具が取り付けられたスクリーンの側面図である。
【図13】スクリーンに締め付けられて版胴が歪んでいる状態を誇張して示す斜視図である。
【図14】版胴が歪んだ場合における版胴とインキ供給ローラとの配置関係を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
2 マスタ
17 版胴
25 インキ
27 印刷用紙
101 スクリーン
110 スクリーン取付金具
111 当接辺
C スクリーンの中央部
E スクリーンの端部
S スクリーンの両側縁部
Claims (5)
- 穿孔画像が形成されたマスタをスクリーンが巻かれた回転自在な版胴に巻着し、前記版胴の内部から外部に滲み出させて前記マスタの前記穿孔画像を通過させたインキを印刷用紙に転写して印刷を行うようにした孔版印刷装置において、
前記スクリーンは、その両側縁部よりも中央部のテンションが弱くなるように前記版胴に所定のテンションをもって巻き付け固定されていることを特徴とする孔版印刷装置。 - 前記スクリーンの端部は袋形状に形成されており、この袋形状部分に挿入されたスクリーン取付金具が前記版胴に取り付けられることによって前記スクリーンが前記版胴に巻き付け固定されていることを特徴とする請求項1記載の孔版印刷装置。
- 前記スクリーン取付金具において前記スクリーンの袋形状内部に当接する当接辺は、その中央部が凹状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の孔版印刷装置。
- 前記スクリーンの袋形状部分は、前記スクリーンの両側縁部にのみ設けられていることを特徴とする請求項2記載の孔版印刷装置。
- 穿孔画像が形成されたマスタをスクリーンが巻かれた回転自在な版胴に巻着し、前記版胴の内部から外部に滲み出させて前記マスタの前記穿孔画像を通過させたインキを印刷用紙に転写して印刷を行うようにした孔版印刷装置の版胴構造において、
前記スクリーンは、その両側縁部よりも中央部のテンションが弱くなるように前記版胴に所定のテンションをもって巻き付け固定されていることを特徴とする孔版印刷装置の版胴構造。
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