JP4641606B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム表面へのオリゴマーの析出がなく、優れた密着性を有する塗布層が設けられたポリエステルフィルムに関し、さらに詳しくは、高温下においてもフィルム表面へのオリゴマーの析出がなく、シリコーンなどの離型層に対しても優れた密着性を有するポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種の用途において使用されている。
【0003】
しかし、用途が多様化するにつれて、フィルムの加工、使用条件も多様化し、例えばポリエステルフィルムを100℃以上の高温で放置すると、フィルム表面に内部から浸出してきたオリゴマーが析出してしまうという新たな問題が出てきている。特に、オリゴマーが多く含有されているフィルムは、フィルム表面へのオリゴマー析出が激しくなり、こうした条件でフィルムを加工、あるいは使用することにより種々の問題が生じている。また、ポリエステルフィルムの表面改質を目的として、各種の塗布フィルムが提案されているが、塗布する組成によっては、オリゴマーの析出を促進してしまう問題が生じている。
【0004】
従来、オリゴマーの析出を防止する方法としては、固相重合により原料中に含まれるオリゴマーの低減をはかったり、また、末端封鎖剤を用いてポリエステルフィルムの耐加水分解性を向上させることなどが行われてきた。
【0005】
固相重合すると、オリゴマーの低減と同時にポリマーの重合度も上がるため、フィルム製造の際に押出機への負荷が大きくなったり、製造工程が増加したりするため製造コストの上昇を招いてしまう。さらに、フィルムの製造条件によっては効果が見られないことが生じてしまうなど、フィルム表面へのオリゴマーの析出防止を満足する所までは至っていない。
【0006】
また、末端封止剤を用いた場合は、末端封止剤に起因する異物の発生、ポリマーの着色、固層重合性の悪化等のおそれがある。
【0007】
一方、離型フィルムは、粘着剤、接着剤、貼薬剤等の粘着面保護フイルムとして、あるいはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等硬化性樹脂のシート、あるいは熱可塑性樹脂のシートを成形するためのキャリヤーシートとして用いられ、その量が拡大しつつある。
【0008】
かかる離型フイルムとして、従来、ポリエステルフイルムの少なくとも一表面にビニルシロキサン基を有するシリコーン化合物の付加重合硬化物、アルキルオキシシランもしくはオキシシラン化合物の縮重合硬化物等よりなる被膜を設けたものが用いられている。この硬化物は非粘着で離型効果に優れ、また熱安定性に優れるという利点を有するが、一方、ベースフイルムであるポリエステルフイルムとの密着性が十分とは言い難く、耐久性が低いという問題を有している。
【0009】
離型フィルムにおいては、ポリエステルフィルムと離型層であるシリコーンの密着性を改良する方法として、シランカップリング剤のプライマー層を設ける方法などが提案されているが、オリゴマーの析出防止とシリコーンとの密着性を両立させるまでには至っていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、熱処理などによるポリマーからのフィルム表面に析出してくるオリゴマーを封止するとともに、離型層との密着性に優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ある特定の組成よりなる塗布層を形成することにより、極めてオリゴマー析出が少なく、かつ離型層等との密着性に優れたポリエステルフィルムが得られることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に、アミノ基を有するシラン化合物(A)とエポキシ基を有するシラン化合物(B)とを含む塗布液により設けられた塗布層を有し、フィルム全体の環状三量体含有量が0.5重量%以上であり、180℃で10分間処理した後の前記塗布層表面の環状三量体量が2.80mg/m2以下であり、塗布液中に含まれるアミノ基を有するシラン化合物(A)とエポキシ基を有するシラン化合物(B)の量比が下記式(1)の範囲であることを特徴とするポリエステルフィルムに存する。
80/20≦CA/CB≦30/70 ……(1)
(上記式中、CAは塗布液中に含まれるアミノ基を有するシラン化合物(A)の重量部、CBは塗布液中に含まれるエポキシ基を有するシラン化合物(B)の重量部を示す)
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明におけるポリエステルとしては、例えば、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート、構成単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエチレン−2,6−ナフタレート、構成単位の80モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートであるポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。それらのほかにも、ポリエチレンイソフタレート、ポリ−1,4−ブチレンテレフタレート等を用いることができる。
【0015】
上記の優位構成成分以外の共重合成分としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸およびオキシモノカルボン酸等のエステル形成性誘導体を使用することができる。
【0016】
また、ポリエステルとしては、単独重合体または共重合体のほかに、他の樹脂との小割合のブレンドも使用することができる。ポリエチレンテレフタレートにブレンドする樹脂の例としては、例えばイソフタル酸共重合体、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート共重合体、ポリエチレングリコール共重合体等の各種共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび共重合ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0017】
本発明のポリエステルフィルムの極限粘度は、通常0.40〜0.90、好ましくは0.45〜0.80、さらに好ましくは0.50〜0.70の範囲である。極限粘度が0.40未満では、フィルムの機械的強度が弱くなる傾向があり、極限粘度が0.90を超える場合は、溶融粘度が高くなり、押出機に負荷がかかったり、製造コストがかかる等の問題が生じる場合がある。
【0018】
従来、フィルムのオリゴマーを低減する方法しては、固相重合により予めポリマー中のオリゴマー量を低減させておき、最終フィルムのオリゴマーを少なくする処方が用いられているが、固相重合の場合は、極限粘度が高くなったり、工程が増えるためにコストが上昇してしまう問題がある。また、フィルム製造工程の押出機で溶融温度が高かったり、滞留時間が長くなる場合には、オリゴマーを低減させた効果が見られなくなる。
【0019】
本発明のポリエステルフィルムは、滑り性を付与するため、フィルム表面突起形成剤として、フィルム中に平均粒子径が0.1〜5.0μm、さらには0.3〜3.0μmの粒子を含有することが好ましい。平均粒子径が0.1μm未満ではフィルムの滑り性が悪くなる傾向があり、5.0μmを超えた場合はフィルム表面の粗大突起が増える傾向がある。
【0020】
フィルムへの粒子含有量は、通常0.01〜1.0重量%の範囲である。粒子含有量が0.01重量%未満では、フィルムの滑り性が悪くなる傾向があり、1.0重量%を超えるとフィルムの透明性が劣るなど、フィルムの実用特性が悪くなる傾向がある。
【0021】
フィルム中に添加する粒子の例としては、酸化珪素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、カオリン、タルク、カーボンブラック、窒化ケイ素、窒化ホウ素、および特公昭59−5216号公報に記載されているような架橋高分子微粉体を挙げることができ、本発明を満足させるものであればこれらに限定されるものではない。
【0022】
配合する粒子は、単成分でもよく、また、2成分以上を同時に用いてもよい。2成分以上用いる場合は、少なくとも1成分の粒子の平均粒子径および含有量が上記した範囲内にあればよい。
【0023】
また、異なる粒子が配合されたポリエステルが積層されたフィルムの場合は、少なくとも1つの層に含有されている粒子の平均粒子径および含有量が上記した範囲内にあればよい。
【0024】
上記した微粒子を配合すること等により、フィルム表面の最大高さ(Rmax)を0.02〜0.60μmの範囲とすることが好ましい。最大高さ(Rmax)が0.02μm未満の場合には、固着性が劣る傾向があり、0.60μmを超える場合は、離型層等を設ける場合などに不具合が生じる場合がある。
【0025】
本発明のポリエステルフィルムは、必要に応じ、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光線遮断剤、着色剤などを含有していてもよい。
【0026】
また、本発明のポリエステルフィルムは、多層構造であってもよく、この場合、その一部の層はポリエステル以外のポリマーで形成されていてもよい。即ち、ラミネートフィルムでもよい。
【0027】
本発明のフィルムは、フィルム全体中(塗布層を含む)の環状三量体(オリゴマー)含有量が0.5重量%、さらには0.6重量%、特に0.7重量%以上のフィルムに適用することが好適である。フィルム全体中の環状三量体が0.5重量%未満の場合は、熱処理によるフィルム表面へのオリゴマーの析出が少なく、特定の層を設ける必要のない場合もあるが、そもそも原料ポリマー中に含まれるオリゴマーの低減のためには、例えば固相重合等を行う必要があり、製造コストの上昇やポリマーの極限粘度が増加することにより、フィルム製造の際に押出機への負担が大きくなり、生産性が悪くなる。
【0028】
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも一方の表面に塗布層を設けて、180℃で10分間熱処理後の塗布層表面のオリゴマー量を2.8mg/m2 以下、さらには1.60mg/m2 以下、特に1.00mg/m2 以下とする。表面オリゴマー量が2.80mg/m2 を超える場合は、ポリエステルフィルムの用途が限定されたり、高温下においてオリゴマーが多量に発生して異物となったりする。
【0029】
本発明のポリエステルフィルムは、離型フィルムとしても用いることができるが、離型層として多く用いられるシリコーンとポリエステルフィルムとは、一般に密着性に劣るため、密着性を改良する必要がある。
【0030】
本発明では、アミノ基を有するシラン化合物(A)とエポキシ基を有するシラン化合物(B)を含有する塗布層を設けることにより、ベースフィルムから浸出するオリゴマーが表面に析出することを防止し、離型層等との密着性も改良したものである。
【0031】
塗布液に含まれるアミノ基を有するシラン化合物(A)とエポキシ基を有するシラン化合物(B)の量比((A)/(B))は、通常95/5〜5/95の範囲であり、好ましくは90/10〜20/80、さらに好ましくは80/20〜30/70の範囲である。アミノ基を有するシラン化合物とエポキシ基を有するシラン化合物の配合量が上記範囲を外れた場合は、オリゴマーの封止効果と離型層であるシリコーンとの密着性改良効果とが劣る傾向がある。
【0032】
本発明のアミノ基を有するシラン化合物(A)の具体例としては、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
それらの中でも特に下記一般式(I)で表されるアルコキシシランによれば、オリゴマー析出防止効果がより一層良好となるので好ましい。
【0034】
Y−R−Si−(X)3 ……(I)
(上記式中、Yはアミノ基、Rはメチレン、エチレン、プロピレン等のアルキレン基、Xはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アルキル基および/またはこれらの基を有する有機官能基を表す)
本発明のエポキシ基を有するシラン化合物(B)の具体例としては、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
それらの中でも特に下記一般式(II)で表されるアルコキシシランによれば、ポリエステルと離型層のシリコーンとの密着性がより一層良好となるので好ましい。
【0036】
Y−R−Si−(X)3……(II)
(上記式中、Yはアミノ基、Rはメチレン、エチレン、プロピレン等のアルキレン基、Xはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アルキル基および/またはこれらの基を有する有機官能基を表す)
上記塗布層には、必要に応じて上記のシラン化合物以外の水溶性または水分散性のバインダー樹脂を併用してもよい。かかるバインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂等が挙げられる。これらは、それぞれの骨格構造が共重合等により実質的に複合構造を有していてもよい。複合構造を持つバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。
【0037】
本発明の目的であるフィルム表面へのオリゴマーの析出防止には、上記バインダーの中でポリビニルアルコールを用いると好ましい。
【0038】
バインダー成分の配合量は、塗布層に対する重量部で50重量部以下、さらには30重量部以下の範囲が好ましい。
【0039】
また、本発明のフィルムの塗布層中には、必要に応じて架橋反応性化合物を含んでいてもよい。
【0040】
架橋反応性化合物としては、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系などの化合物、ポリアミン類、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、ブロックイソシアネート化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコ−アルミネート系カップリング剤、金属キレート、有機酸無水物、有機過酸化物、熱または光反応性のビニル化合物や感光性樹脂などの多官能低分子化合物および高分子化合物から選択される。
【0041】
架橋反応性化合物は、主に塗布層に含まれる樹脂が有する官能基と架橋反応することで、塗布層の凝集性、表面硬度、耐擦傷性、耐溶剤性、耐水性を改良することができる。例えば、前記官能基が水酸基の場合、架橋反応性化合物としては、メラミン系化合物、ブロックイソシアネート化合物、有機酸無水物などが好ましく、前記官能基が有機酸およびその無水物の場合、架橋反応性化合物としてはエポキシ系化合物、メラミン系化合物、オキサゾリン系化合物、金属キレートなどが好ましく、前記官能基がアミン類の場合、架橋反応性化合物としてはエポキシ系化合物などが好ましく、塗布層に含まれる樹脂が有する官能基と架橋反応効率が高いものを選択して用いることが好ましい。
【0042】
架橋反応性化合物は、反応性官能基が1分子中に2個以上含まれる限りにおいて、低分子量化合物であっても、反応性官能基を有する高分子重合体のいずれであってもよい。
【0043】
架橋反応性化合物の配合量は、塗布層に対する重量部で50重量部以下、さらには30重量部以下、特に15重量部以下の範囲が好ましい。
【0044】
さらに本発明の塗布層中には、ブロッキングの防止等必要に応じて塗布層の滑り性改良のために不活性粒子を含んでいてもよい。
【0045】
不活性粒子としては、無機不活性粒子、有機不活性粒子があり、無機不活性粒子としては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、炭酸カルシウム、酸化チタン等が挙げられる。有機不活性粒子としては、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂による単独あるいは共重合体を含む微粒子、またはこれらと架橋成分を複合した架橋粒子に代表される有機粒子が挙げられる。これらの不活性粒子は軟化温度または分解温度が約200℃以上、さらには250℃以上、特に300℃以上であることが好ましい。
【0046】
不活性粒子の平均粒径(d)は、塗布層の平均膜厚を(L)とした際、1/3≦d/L≦3、さらには1/2≦d/L≦2の関係を満足するように選択するのが好ましい。
【0047】
本発明の塗布層は、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、低分子帯電防止剤、有機系潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を少量含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明のフィルムの塗布層は、ポリエステルフイルムの片面だけに形成してもよいし、両面に形成してもよい。片面のみに形成する場合、その反対面には必要に応じて別種の塗布層を形成させ、さらに他の特性を付与することもできる。なお、塗布液のフイルムへの塗布性および接着性を改良するため、塗布前のフイルムに化学処理や放電処理等を施してもよい。
【0049】
塗布層の厚さは、0.01〜2μm、さらには0.03〜0.5μm、特に0.06〜0.2μmの範囲が好ましい。塗布層の厚さが0.01μm未満の場合は、十分なオリゴマー析出防止の効果が得られないことがあり、2μmを超える場合は、耐ブロッキング性が不十分となる傾向がある。
【0050】
本発明のフィルム厚みは、通常10〜100μm、好ましくは20〜75μm、さらに好ましくは20〜50μmの範囲である。この範囲を超えた場合は、フィルムの取扱性が悪くなったり、製造コストが上昇したりすることがある。
【0051】
二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、予め乾燥したポリエステルチップと必要な添加剤を混合して押出機にホッパー投入し、押出機にて200〜300℃の温度で溶融混練し、ダイからシート状に押し出して、約70℃以下のキャスティングドラム(回転冷却ドラム)上で急冷して未延伸シートを得、得られたシートを縦および横方向に4倍以上、好ましくは9倍以上の面積倍率で延伸し、さらに120〜200℃の温度で熱固定を行う方法を採用することができる。
【0052】
二軸延伸ポリエステルフイルムの表面に塗布層を形成する方法は、特に制限されないが、ポリエステルフイルムを製造する工程中で塗布液を塗布する方法が好適に採用される。具体的には、未延伸シート表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、一軸延伸フイルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、二軸延伸フイルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。これらの中では、未延伸フィルムまたは一軸延伸フイルム表面に塗布液を塗布後、フイルムに熱処理を行う過程で同時に塗布層を乾燥硬化する方法が経済的である。
【0053】
また、塗布層を形成する方法として、必要に応じ、前述の塗布方法の幾つかを併用した方法も採用し得る。具体的には、未延伸シート表面に第一層を塗布して乾燥し、その後、一軸方向に延伸後、第二層を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。
【0054】
ポリエステルフイルムの表面に塗布液を塗布する方法としては、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるリバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。
【0055】
本発明において用いる塗布液は、通常、安全性や衛生性の観点から水を主たる媒体として調整されていることが好ましい。水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的あるいは造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、主たる媒体である水と混合して使用する場合、水に溶解する範囲で使用することが好ましいが、長時間の放置で分離しないような安定した乳濁液(エマルジョン)であれば、水に溶解しない状態で使用してもよい。有機溶剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明において塗布層上に形成する離型層は、離型性を有する材料を含有していれば、特に限定されるものではない。その中でも、硬化型シリコーン樹脂を含有するものによれば離型性が良好となるので好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0057】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等何れの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0058】
具体例としては、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、ダウ・コーニング・アジア(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、東レ・ダウ・コーニング(株)製SD7220、SD7226、SD7229等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0059】
また、上述のとおり、離型層中にアミノ基を有するシラン化合物を添加することもある。
【0060】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法としては、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0061】
本発明における離型層の塗布量は、通常0.01〜1g/m2の範囲である。
【0062】
本発明において、離型層が設けられていない面には、接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよく、また、ポリエステルフィルムにはコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0063】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、本発明における各種の物性および特性の測定方法、定義は下記のとおりである。また、実施例および比較例中、「部」および「%」とあるのは、各「重量部」および「重量%」を意味する。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒子径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
(3)フィルム全体中の環状三量体含有量
所定量のポリエステルフィルム(塗布層は除去せずにそのまま)をo−クロロフェノールに溶解した後、テトラヒドロフランで再析出して濾過し、線状ポリエチレンテレフタレートを除いた後、次いで得られた濾液を液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してポリエチレンテレフタレート中に含まれる環状三量体量を求め、この値を測定に用いたフィルム量で割って、フィルム全体中に含まれる環状三量体量とする。
【0064】
液体クロマトグラフィーで求める環状三量体量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
【0065】
標準試料の作成は、予め分取した環状三量体を正確に秤量し、正確に秤量したDMF(ジメチルホルムアミド)に溶解して作成した。標準試料の濃度は、0.001mg/ml〜0.50mg/mlの範囲が好ましい。
【0066】
液体クロマトグラフの条件は下記の通りとした。
【0067】
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製 MCI GEL ODS 1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/min
検出波長:254nm
(4)フィルムの熱処理
A4サイズのケント紙と熱処理を行うポリエステルフィルムを合わせる。その際、塗布層のある面が外側になるようにゼムクリップ等で四隅をクリップし、ケント紙とポリエステルフィルムを止める。
【0068】
窒素雰囲気下、180℃のオーブンに前記ポリエステルフィルムを10分間放置し熱処理を行う。
(5)フィルム表面環状三量体量
上部が開放され、底辺の面積が250cm2 となるように、熱処理後のポリエステルフィルムを折って、四角の箱を作成する。塗布層を設けている場合は、塗布層面が内側となるようにする。
【0069】
次いで、上記の方法で作成した箱の中に、DMF10mlを入れ3分間放置後DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してDMF中のオリゴマー量を求め、この値をDMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面環状三量体量(mg/m2 )とする。
【0070】
DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
【0071】
標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解して作成した。標準試料の濃度は、0.001mg/ml〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。
【0072】
液体クロマトグラフの条件は下記の通りとした。
【0073】
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製 MCI GEL ODS 1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/min
検出波長:254nm
(6)生産性
原料の重合工程およびフィルムの製膜工程などにおいての製造コストより下記の通り判断した。
【0074】
○:製造工程、製造条件などの問題がなく、生産性が高い。
△:製造工程、製造条件などにある程度の制限があり、生産性が若干低い。
×:製造工程、製膜条件に制限があり生産性が劣る。
(7)耐ブロッキング特性
ポリエステルフィルムの塗布層面と未処理のPETフィルム面および塗布層面同士を重ね、温度40℃、湿度80%RH、荷重10kg/cm2 で20時間プレス処理を行い、ASTM D 1893により決められているプラスチックフィルム間のブロッキング度を測定し定量化する手法に準拠し、プレスしたフィルム面をはがす際にかかる荷重からブロッキング度を求めた。測定値を以下の基準にて判定した。
【0075】
50g未満 :○(優秀)
50g以上200g未満 :△( 良 )
200g以上 :×(不良)
(8)ラブオフテスト
ポリエステルフィルムに離型層をコーティング後、試料を23℃/50%RHの室内に30日間放置後、コーティング面を指先で数回摩擦し、硬化シリコーン樹脂皮膜の脱落の具合を下記の評価基準にて判断し、密着性の目安とした。
【0076】
◎:脱落なく、密着性良好。
○:若干脱落するが、密着性良好。
△:若干脱落し、密着性も若干劣るが実用上問題ないレベル。
×:脱落あり、密着性不良。
【0077】
実施例および比較例において、オリゴマー析出防止層形成のために用いたバインダー樹脂等は下記のとおりである。
[化合物例]
・アミノ基含有シラン化合物(A):シランカップリング剤(A)
N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
塗布液調整において、濃度調整の希釈液は純水を用いて2%濃度に調整した。
・エポキシ基含有シラン化合物(b):シランカップリング剤(B):
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
塗布液調整において、純水では溶解し難いので濃度調整の希釈液は2%酢酸水溶液を用いて2%濃度に調整した。
・PVA系樹脂:
けん化度=88モル%、重合度=500のポリビニルアルコール
塗布液調整において、濃度調整の希釈液は純水を用いて2%濃度に調整した。
[ポリエステル(1)の製造方法]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、平均粒子径1.6μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を0.06部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、4時間を経た時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(1)の極限粘度は0.53、オリゴマー(環状三量体)の含有量は0.98重量%であった。
[ポリエステル(2)の製造方法]
ポリエステル(1)を固相重合しポリエステル(2)を得た。得られたポリエステル(2)の極限粘度は0.85、オリゴマー(環状三量体)の含有量は0.32重量%であった。
[ポリエステル(3)の製造方法]
ポリエステル(1)の製造において、シリカ粒子を平均粒子径0.27μm、添加量を0.3重量部に変えた以外はポリエステル(1)と同様にしてポリエステル(3)を得た。得られたポリエステル(3)の極限粘度は0.53、オリゴマー(環状三量体)の含有量は0.98重量%であった。
[ポリエステル(4)の製造方法]
ポリエステル(1)の製造において、シリカ粒子を平均粒子径0.08μm、添加量を0.01重量部に変えた以外はポリエステル(1)と同様にしてポリエステル(4)を得た。得られたポリエステル(4)の極限粘度は0.53、オリゴマー(環状三量体)の含有量は0.98重量%であった。
【0078】
実施例1
(塗布液−1の調整)
シランカップリング剤(A)を78重量部、シランカップリング剤(B)を22重量部、PVA系樹脂を10重量部含有する塗布液を調整した。塗布液の固形分濃度は2重量%とした。
(フィルムの製造)
ポリエステル(1)を乾燥後、280〜300℃の温度で溶融押し出しし、静電密着法を併用しながら冷却ドラム上にキャストし、厚さ約550μmの無定形フィルムを得た。このフィルムを85℃で縦方向に3.7倍延伸し、フィルムの片面に、塗布液−1を厚み0.06μmに塗布した後、100℃で横方向に3.9倍延伸し、210℃で熱処理して、厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(離型フィルムの製造)
得られたポリエステルフィルムに下記組成からなる離型層を塗布量が0.1g/m2(乾燥後)になるように設けて離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの特性を下記表2に示す。
【0079】
離型剤組成 硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 100部 硬化剤(PL−50T: 信越化学製) 1部 MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
実施例2、比較例1〜5
実施例1のフィルムの製造において、塗布液を下記表1に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0080】
実施例3
実施例1において、ポリエステル(1)をポリエステル(3)に変えた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0081】
比較例6
実施例1において、ポリエステル(1)をポリエステル(2)に変えた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0082】
比較例7
実施例1のフィルムの製造において、塗布液を塗布せずにポリエステルフィルムを製造した以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0083】
比較例8
比較例1において、ポリエステル(1)をポリエステル(4)に変えた以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。
【0084】
【表1】
【0085】
各実施例、比較例で得られたフィルムの評価結果をまとめて下記表2および表3に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
表3から明らかなように、本発明の要件を満たす実施例1〜6は、生産性が良好で、熱処理によるオリゴマーの析出が抑えられ、ラブオフテストの結果も実用上問題のないレベル以上となる。一方、本発明の要件を満たさない比較例1〜5では、いずれかの項目を満足できない。
【0089】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜請求項4に記載の発明のポリエステルフィルムによれば、高温下でもフィルム表面に析出してくるオリゴマーを抑えると同時に離型層との密着性が改良することができ、有用なフィルムを安価に提供することができ、その工業的価値は高い。
Claims (3)
- ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に、アミノ基を有するシラン化合物(A)とエポキシ基を有するシラン化合物(B)とを含む塗布液により設けられた塗布層を有し、フィルム全体の環状三量体含有量が0.5重量%以上であり、180℃で10分間処理した後の前記塗布層表面の環状三量体量が2.80mg/m2以下であり、塗布液中に含まれるアミノ基を有するシラン化合物(A)とエポキシ基を有するシラン化合物(B)の量比が下記式(1)の範囲であることを特徴とするポリエステルフィルム。
80/20≦CA/CB≦30/70 ……(1)
(上記式中、CAは塗布液中に含まれるアミノ基を有するシラン化合物(A)の重量部、CBは塗布液中に含まれるエポキシ基を有するシラン化合物(B)の重量部を示す) - ポリエステルフィルム中に平均粒子径0.1〜5.0μmの粒子を0.01〜1.0重量%含有し、フィルム表面の最大高さ(Rmax)が0.02〜0.60μmであることを特徴とする請求項1記載のポリエステルフィルム。
- 塗布層上に離型層を設けてなる請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
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