JP4639575B2 - 繊維強化接着シート、その製造方法及び被着体の仮固定方法 - Google Patents

繊維強化接着シート、その製造方法及び被着体の仮固定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、繊維強化接着シート、その製造方法及び被着体の仮固定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子部品の各種製造工程で仮固定工程(仮止め工程)等の自動化・省力化を実現する目的で、熱剥離シートが使用されている。これらの熱剥離シートとしては、フィルム状の基材の上に樹脂層(粘着樹脂層等)を形成させたものが一般的で、例えば、シート上の粘着樹脂層に熱膨張性樹脂を含有させたもの(例えば、特許文献1参照)や、粘着樹脂層に熱膨張性微小球を含有させたもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭60−252681号公報
【特許文献2】
特開2002−322436号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近ではプリント配線基板や各種電子部品が薄型・小型化し、熱剥離シートも100μm以下の非常に薄いものが求められてきている。このような厚み100μm以下の非常に薄いシートを厚みのバラツキがなく均一に製造することはきわめて難しく、これは、表面張力の大きい樹脂を離型フィルムの上に均一に塗布することができないことに主に起因する。
【0005】
また、実験的に100μm以下の非常に薄い樹脂シートが製造できたとしても、シート自体の強度が弱いため、ロールに巻き取る工程でシートが破れてしまい、実際上は製造が非常に困難である。また、実際の仮固定工程における自動化・省力化に対応できるだけのシート強度がなく、剥離中に樹脂シートが破れ、不都合が発生する問題もある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、薄型化が可能であり、薄型化によっても強度低下が少なく、電子部品の仮固定に好適に適用可能な繊維強化接着シートの製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、上記製造方法により得られる繊維強化接着シート及び被着体の仮固定方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、強化繊維の編組物に、エポキシ基を2つ有する2官能化合物である第1の反応性化合物と、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基及びシアネートエステル基からなる群より選ばれる官能基を2つ有する2官能化合物である第2の反応性化合物とを含む反応性化合物を含浸させる含浸工程と、含浸工程の後に、第1の反応性化合物と第2の反応性化合物とを重付加反応させ、重付加反応が完了しない状態まで高分子量化させて熱可塑性樹脂を形成する反応工程とを備えることを特徴とする繊維強化接着シートの製造方法を提供する。
【0008】
このような製造方法で得られる繊維強化接着シートにより、被着体の仮固定が可能になる。すなわち、繊維強化接着シートに被着体を接触させた後に、該繊維強化接着シートの反応性化合物の重合反応を進行させて熱可塑性樹脂を形成させるとともに被着体の接着保持を開始し、所定時間後に熱可塑性樹脂を軟化させた状態で被着体を剥離して接着保持を終了させる、被着体の仮固定方法が提供される。かかる固定方法を用いれば、電子部品の各種製造工程の自動化・省力化を実現できる。
【0009】
本発明の製造方法は、基材上に樹脂をコーティングする従来の方法とは異なり、強化繊維シートに所定の化合物を含浸する方法であるため薄型で強度の高い接着シートを得ることができる。また、従来の繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)のように、高分子量の熱可塑性樹脂に強化繊維を含有させるのではなく、高分子量化前の熱可塑性樹脂の前駆体を強化繊維に含浸させるものであるため、含浸がより確実になされ、薄型化及び均一性が格段に向上する。
【0010】
上記強化繊維シートとしては、強化繊維編組物が好ましく、強化繊維を構成する繊維はガラス繊維又はカーボン繊維が好ましい。一定の均一な厚みで織られたガラス繊維織物等の上記強化繊維シートを用いることにより、均一な含浸が可能になり、これにより接着面全体を均一な厚みで接着でき、一定の温度で溶融(軟化)させて剥離する時も、剛性のあるガラス繊維織物等の強化繊維シートごとはがせるために、非常に容易に剥離が可能となる。
【0011】
反応性化合物は、第1の反応性化合物及び第2の反応性化合物からなり、重合反応は、第1の反応性化合物と第2の反応性化合物との重付加又は重縮合反応であるのがよい。この場合において、第1の反応性化合物としては、エポキシ基を2つ有する2官能化合物が好ましい。また、第2の反応性化合物としては、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基及びシアネートエステル基からなる群より選ばれる官能基を2つ有する2官能化合物が好ましく、この中でもフェノール性水酸基を2つ有する2官能化合物が特に好ましい。
【0012】
上述の製造方法により繊維強化接着シートが得られるが、その接着シートの厚さは100μm以下(例えば、1〜100μm、好ましくは1〜50μm)とでき、薄型化が可能である。また、繊維強化接着シートに占める強化繊維シートの割合が20〜70重量%にすると接着性シートの均一性及び強度がより優れるようになる。
【0013】
そして、第1の反応性化合物を、ベンゼン環を1個有する芳香族ジエポキシ化合物、脂環式ジエポキシ化合物、ビスフェノール型エポキシ樹脂、縮合多環ジヒドロキシ化合物のジグリシジルエーテル及びアルコール性水酸基を2個有する化合物のジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1つの反応性化合物とし、また第2の反応性化合物を、フェノール性水酸基を2つ有する2官能化合物、より具体的には、ベンゼン環を1個有する芳香族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノール類、縮合多環ジヒドロキシ化合物及びそれらの芳香環にアリル基を有する2官能フェノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの反応性化合物とし、さらに、重合反応が重付加反応である繊維強化接着シートは、薄型化によっても特に強度低下が少なく、電子部品等の被着体の接着及び脱着の性能、すなわち仮固定性能が特に優れる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の繊維強化接着シート、その製造方法及び被着体の仮固定方法について、好適な実施形態を説明する。
【0015】
(強化繊維シート)
強化繊維シートを構成する強化繊維は、繊維強化樹脂における強化繊維として通常用いられるものであればよく、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維等が挙げられる。中でも、ガラス繊維が好適であり、高強度が要求される土木・建築等の作業用に用いる場合はカーボン繊維を用いてもよい。
【0016】
これらの強化繊維から構成される強化繊維シートとしては、強化繊維編組物、例えば、織物、組物、編物、不織布、チョップドストランドマット等が挙げられ、これらはガラス繊維からなるものが特に好適である。かかる強化繊維シートの厚さは、得られる繊維強化接着シートの薄型化を図る観点から100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
【0017】
強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、用いるガラスの種類としては、Eガラス、Aガラス、Dガラス、Sガラス等が挙げられる。これらのガラスからなるガラス繊維には、後述する反応性化合物及びこれが重合してなる熱可塑性樹脂との接着性を向上させるために、シランカップリング剤による処理を施してもよい。かかる処理は、予め強化繊維シートに施しておいてもよく、含浸工程において熱硬化性樹脂にシランカップリング剤を混合させて含浸と同時に行ってもよい。
【0018】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β一(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β−(N−ベンジルアミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン及びその塩酸塩、N−β−(N−ベンジルアミノエチルアミノプロピル)メチルジメトキシシラン及びその塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシシラン等のシラン化合物を挙げることができる。
【0019】
また、強化繊維シートがガラス繊維織物である場合、織り密度は好ましくは10〜200本/25mm、より好ましくは15〜100本であり、質量は好ましくは1〜400g/m2であり、より好ましくは5〜300g/m2である。かかるガラス繊維織物の織り方としては、平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等が挙げられる。これらの織物においては、経糸及び緯糸のどちらか又は双方にテクスチャード加工が施されていてもよい。さらに、柱状流や高周波振動法による水流等で開繊する等の物理加工を施したガラス繊維織物を用いることもできる。
【0020】
(反応性化合物)
反応性化合物は、重合により高分子量化して熱可塑性樹脂を形成するものであり、第1の反応性化合物及び第2の反応性化合物からなるものであることが好ましい。
【0021】
第1及び第2の反応性化合物、並びにこれらに生じる重合反応の組み合わせとしては、以下に示す組み合わせが例示できる。以下、第1の反応性化合物として用いる化合物ごとに説明する。
(エポキシ基を2つ有する2官能化合物)
第1の反応性化合物がエポキシ基を2つ有する2官能化合物である場合、第2の反応性化合物としては、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基及びシアネートエステル基からなる群より選ばれる官能基を2つ有する2官能化合物が挙げられる。その場合の重合反応は重付加反応である。
(イソシアネート基を2つ有する2官能化合物)
第1の反応性化合物がイソシアネート基を2つ有する2官能化合物である場合、第2の反応性化合物としては、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選ばれる官能基を2つ有する2官能化合物が挙げられる。その場合の重合反応は重付加反応である。
(オキサゾリン基を2つ有する2官能化合物)
第1の反応性化合物がオキサゾリン基を2つ有する2官能化合物である場合、第2の反応性化合物としては、カルボキシル基を2つ有する2官能化合物が挙げられる。その場合の重合反応は重付加反応である。
(酸無水物基を2つ有する2官能化合物)
第1の反応性化合物が酸無水物基を2つ有する2官能化合物である場合、第2の反応性化合物としては、水酸基及び第2級アミノ基からなる群より選ばれる官能基を2つ有する2官能化合物が挙げられる。その場合の重合反応は重付加反応である。
((メタ)アクリロイル基を2つ有する2官能化合物)
第1の反応性化合物が(メタ)アクリロイル基を2つ有する2官能化合物である場合、第2の反応性化合物としては、アミノ基及びメルカプト基からなる群より選ばれる官能基を2つ有する2官能化合物が挙げられる。その場合の重合反応は重付加反応である。なお、ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基をいうものとする。
(アリル基を2つ有する2官能化合物)
第1の反応性化合物がアリル基を2つ有する2官能化合物である場合、第2の反応性化合物としては、メルカプト基を2つ有する2官能化合物が挙げられる。
その場合の重合反応は重付加反応である。
(Si−H基を2つ有する2官能化合物)
第2の反応性化合物がSi−H基を2つ有する2官能化合物である場合、第2の反応性化合物としては、ビニル基を2つ有する2官能化合物が挙げられる。その場合の重合反応は重付加反応である。
【0022】
(カルボキシル基を2つ有する2官能化合物)
第1の反応性化合物がカルボキシル基を2つ有する2官能化合物である場合、第2の反応性化合物としては、第1級アミノ基を2つ有する2官能化合物が挙げられる。その場合の重合反応は重縮合反応である。
(酸無水物基を2つ有する2官能化合物)
第1の反応性化合物が酸無水物基を2つ有する2官能化合物である場合、第2の反応性化合物は、イソシアネート基を2つ有する2官能化合物であってもよい。その場合の重合反応は重縮合反応である。
(水酸基を2つ有する2官能化合物)
第1の反応性化合物が水酸基を2つ有する2官能化合物である場合、第2の反応性化合物としては、カルボキシル基、エステル基及びハロホルミル基からなる群より選ばれる官能基を2つ有する2官能化合物が挙げられる。その場合の重合反応は重縮合反応である。
【0023】
これらの第1及び第2の反応性化合物の組み合わせのうちでは、第1の反応性化合物がエポキシ基を2つ有する2官能化合物であり、第2の反応性化合物がフェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基及びシアネートエステル基からなる群より選ばれる官能基を2つ有する2官能化合物である組み合わせが好ましく、重合反応は重付加反応であることが好ましい。
【0024】
この場合、エポキシ基を2つ有する2官能化合物としては、例えば、カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、t−ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル等のべンゼン環を1個有する一核体芳香族ジエポキシ化合物類;Celloxide2021P(商品名、ダイセル化学工業(株)製)、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等の指環式ジエポキシ化合物類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル等のビスフェノール型エポキシ化合物類及びこれらが部分縮合したオリゴマー混合物(ビスフェノール型エポキシ樹脂類);テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルジグリシジルエーテル、ジメチルジ−t−ブチルビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドジグリシジルエーテル等の置換ビスフェノール型エポキシ化合物類及びこれらが部分縮合したオリゴマー混合物(置換ビスフェノール型エポキシ樹脂類);その他、ビスフエノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型又はテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂類、ジヒドロキシナフタレンのジグリシジルエーテル及びこれらが部分縮合したオリゴマー混合物(ナフタレン型エポキシ樹脂類);ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,3−シクロヘキサンジグリシジルエーテル、1,2−シクロヘキサンジグリシジルエーテル、ジメチロールジシクロペンタジエンジグリシジルエーテル等の環状脂肪族アルコールのジエポキシ化合物類;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルエステル等の環状脂肪族ジカルボン酸のジエポキシ化合物類;1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族アルコールのジエポキシ化合物類;Epikote871(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、Epikote872(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)等のダイマー酸を骨格とするエポキシ樹脂類等が挙げられる。
【0025】
仮固定後に軟化(再溶融)させる温度を低下させるために、当該化合物の一部を、たとえばp−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル等のベンゼン環を1個有する一核体芳香族モノエポキシ化合物類等の1官能エポキシ化合物に、好ましくは5〜30重量%の範囲で置換してもよい。
【0026】
また、フェノール性水酸基を2つ有する2官能化合物としては、例えば、カテコール等のベンゼン環1個を有する一核体芳香族ジヒドロキシ化合物類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)等のビスフェノール類;ジヒドロキシナフタレン等の縮合多環ジヒドロキシ化合物;ジアリルレゾルシン、ジアリルビスフェノールA、トリアリルジヒドロキシビフェニル等のアリル基を有する2官能フェノール化合物等が挙げられる。ヒドロキノン等の結晶性化合物は、結晶性が現れない程度に希釈して使用することができる。
【0027】
接着力強化のために、当該化合物成分の一部を、たとえばピロガロール、フロログルシノール、3核体フェノールノボラック、カテコールのホルムアルデヒド縮合物等3官能以上のフェノール化合物に、好ましくは1〜20重量%の範囲で置換してもよい。
【0028】
なお、エポキシ基を2つ有する2官能化合物としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、縮合多環ジヒドロキシ化合物のジグリシジルエーテルが好ましく、フェノール性官能基を2つ有する2官能化合物としては、ビスフェノール、縮合多環ジヒドロキシ化合物、t−ブチルヒドロキノンが好ましい。
【0029】
2つのエポキシ基を有する2官能化合物と2つのフェノール性水酸基を有する2官能化合物とを重合反応させる際には、重合反応触媒を更に添加することが好ましく、かかる触媒としては、リン系触媒の他、1,2−アルキレンベンズイミダゾール(TBZ)や2−アリール4,5−ジフェニルイミダゾール(NPZ)等が挙げられる。
【0030】
また、リン系触媒としては、3個の有機基を有する有機リン系化合物が挙げられ、その具体例としては、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ−o―トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボロン錯体、テトラフェニルホスホニウム−テトラフェニルボレ−ト等が挙げられる。これらのなかでは、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボロン錯体が好ましい。
【0031】
なお、本発明の効果が奏される限りにおいて、消泡剤、フィラー、増量剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を更に添加してもよい。
【0032】
(繊維強化接着シートの製造方法)
強化繊維シートに反応性化合物を含浸させる方法としては、強化繊維シートを反応性化合物中に浸漬させる方法や強化繊維シートに反応性化合物を塗布する方法が挙げられるが、強化繊維シート中に樹脂を均一に分散させる観点から、反応性化合物中に浸漬させる方法が好ましい。
【0033】
上記含浸をより簡易に行うため、反応性化合物を予め有機溶媒等と混合して樹脂ワニスとし、反応性化合物を低粘度化させて用いることが好ましい。このときに用いる有機溶媒としては、含浸後に加熱等により揮発・除去が可能なものが好ましく、具体的には100〜200℃の温度において数分で揮発するものが好ましい。このような有機溶媒としては、メチルセロソルブ、メチルエチルケトン、メチルエチルイソブチルケトン、アセトン等が挙げられ、これらを反応性化合物100重量部に対して50重量部以下含有させることが好ましい。
【0034】
上述の反応性化合物又は樹脂ワニスは、25℃における粘度が0.1〜100cPであると好ましく、1.0〜10cPであるとより好ましい。かかる粘度が0.1cP未満である場合、強化繊維シートに含浸させた後に樹脂が基材から流出してしまうおそれがあり、100cPを超えると基材中への樹脂の含浸が不充分となる傾向にある。
【0035】
強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、繊維強化接着シートの全重量に対するガラス繊維の割合は、20〜75重量%とすることが好ましく、20〜70重量%とすることがより好ましい。この割合が20重量%未満であると、得られる繊維強化接着シートの強度が不充分となり使用時に破れ等を生じる場合があり、75重量%を超えると、ガラス繊維の糸束部分にのみ熱硬化性樹脂が集中してしまい、繊維強化接着シート全体の接着力が低下してしまう傾向にある。
【0036】
含浸工程においては、反応性化合物中に、上記溶媒に加えて種々の添加剤を加えることができる。かかる添加剤としては、反応促進剤(0.01〜5重量部)、カップリング剤(0.1〜5重量部)、顔料(0.1〜5重量部)、濡れ性調整剤(0.1〜5重量部)、消泡剤(0.01〜0.1重量部)等が挙げられる。なお、括弧内はこれらの好適な添加量を示し、その値は反応性化合物100重量部に対する重量部で示されている。
【0037】
また、含浸時に上述の樹脂ワニスを用いる場合、含浸後に樹脂ワニス中に含まれる有機溶媒を揮発させる等して除去することが好ましい。かかる溶媒の除去は、得られた繊維強化接着シートを溶媒が揮発する温度に加熱することにより実施できる。この際、加熱は繊維強化接着シートに含浸された樹脂の重合反応が完了しない程度に行う必要がある。なお、接着時又は後述の反応工程において溶媒の揮発が生じる場合は、このような溶媒除去操作は特に必要とされない。
【0038】
このように反応性化合物を強化繊維シートに含浸させた後、含浸された反応性化合物に部分的に重合反応を生じさせ、かかる反応性化合物を室温において流動性を殆ど有しない状態の熱可塑性樹脂とする工程(反応工程)を更に実施することもできる。これにより、接着時の加熱時間の短縮が図れる等の作業上の利点が生じる他、含浸された樹脂の流動性が低下することから、基材からの樹脂の流出が少なくなり、繊維強化接着シートの保存性が向上する。
【0039】
重合反応は、例えば、加熱による方法や紫外線又は電子線等の照射による方法により実施することができ、上述の含浸において樹脂ワニスを用いた場合は、加熱により溶剤を揮発させた後に、紫外線又は電子線の照射を行う方法も採用可能である。加熱により重合を実施する場合、かかる重合は、反応性化合物を含浸させたシート状の基材を、乾燥機中で100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、1〜30分、好ましくは2〜10分加熱することにより行うことができる。含浸工程において樹脂ワニスを用いた場合は、かかる加熱によりワニスに含まれる有機溶媒が同時に除去される。
【0040】
重合反応は、反応性化合物の重合反応が完全に終了しないように実施する(部分的に重合する)必要があり、具体的には、反応性化合物の有する反応性の官能基が0%を超え90%以下反応した状態が好ましく、0を超え70%以下反応した状態がより好ましく、0を超え50%以下反応した状態が更に好ましい。当該官能基の反応率が90%を超えると、接着時の樹脂の流動性が低くなり、これにより被着体への濡れが不充分となって繊維強化接着シートの接着性が低下してしまう場合がある。かかる官能基の反応率は、例えば、DSCによる残留発熱量の測定を行う方法や、また、第1の反応性化合物としてエポキシ化合物を用いる場合には、エポキシ当量測定を行う方法等により求められ、用いる反応性化合物に応じて種々の公知の方法を採用できる。
【0041】
(仮固定方法)
上述の製造方法により得られた繊維強化接着シートを用いて、以下に示すようにして接着及び剥離(仮固定)を行うことができる。まず、接着においては、必要に応じて加圧する等して被着体に本発明の繊維強化接着シートを接触させる。次に、これらを所定時間放置するか、所定の温度に加熱して、繊維強化接着シートにおける反応性化合物(当該化合物が重合してなる熱可塑性樹脂を含み得る)に重合反応を生じさせ、これにより被着体と繊維強化接着シートとを接着する。この場合の加熱手段としては、例えば高周波加熱等を採用することができる。また、上記重合反応の一例としては、下記化学式で示される反応が例示できる。
【0042】
【化1】
Figure 0004639575
【0043】
上記化学式で表される反応は、第1の反応性化合物として2つのエポキシ化号物を有する2官能化合物を用い、第2の反応性化合物として2つのフェノール性水酸基を有する2官能化合物を用いた場合のものであり、両者が反応することにより熱可塑性樹脂である直鎖状のポリマーが得られる。
【0044】
このようにして接着された被着体と繊維強化接着シートは、所定の温度に加熱して繊維強化接着シートに含まれる熱可塑性樹脂を軟化(溶融、再液状化)させることにより容易に剥離することができる。そして、接着性を発現する熱可塑性樹脂は強化繊維からなるシート状の基材中に取り込まれているため、剥離後の被着体への熱可塑性樹脂の残存は極めて少なく、剥離後の被着体は極めて美麗な表面を保つことができる。
【0045】
また、上述のようにして一旦接着・剥離を行った繊維強化接着シートであっても、加熱することにより熱可塑性樹脂を軟化(溶融、再液状化)させることができ、再び接着・剥離を行うことができる。よって、本発明の繊維強化接着シートは繰り返して接着・剥離の工程に使用することができる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
[繊維強化接着シートの製造]
まず、以下の表1に示す使用原料を同表記載の重量部混合し、更に低粘度化のための溶媒としてメチルセロソルブを31重量部添加して、反応性化合物の組成物を得た。得られた組成物は、その調製時及び室温における保管時には重合反応を生じなかった。
【表1】
Figure 0004639575
【0048】
次に、強化繊維からなる強化繊維シート(シート基材)として、平織りガラス繊維織物(日東紡績社製WPA05E104F236N、厚み:50μm、エポキシシランカップリング剤処理品)を用い、かかる強化繊維シートを上記の組成物中に浸漬させ、強化繊維シート中に上記の組成物を含浸させた。次に、樹脂の含浸された強化繊維シートを熱風乾燥炉にいれて、180℃で約10分の処理を行い、組成物中のメチルセロソルブを揮発させて繊維強化接着シートを得た。なお、上記組成物は、メチルセロソルブが揮発された後でも加熱により低粘度化が可能であり、繊維中への組成物の含浸を容易に行うことが可能であった。
【0049】
[評価用サンプルの製造]
得られた繊維強化接着シートを、10mm×10mmにカットして、せん断接着力(Die Shear Strength)試験用のシリコンチップ(10mm×10mm−5mm×5mm)間に挟み、150℃で1時間加熱して、繊維強化接着シートに含浸された反応性化合物の重合反応を生じさせて熱可塑性樹脂とし、シリコンチップ間に繊維強化接着シートが挟まれたせん断接着力評価用サンプルを得た。なお、断面観察の結果、繊維強化接着シートの断面には気泡等は観察されなかった。また、シートの厚みは50μm±1μm以下のばらつきであり、均一なシート厚であった。
【0050】
[せん断接着力の測定]
得られた評価用サンプルを用い、温度を変化させると共に、マルチファンクションテスター(Multi-Function Tester)によりクロスヘッドスピードを200μm/秒とし、JIS K−7057に準拠する方法でせん断接着力の測定を行った。図1は、温度に対するせん断接着力の変化を示すグラフである。
【0051】
図1より、せん断接着力は、60℃から80℃の温度範囲で急激に低下していることが確認された。このことから、この温度範囲において繊維強化接着シートにおける熱可塑性樹脂の軟化(溶融、再液状化)が生じることが判明した。
【0052】
[剥離性の評価]
同様の評価用サンプルを用い、上記せん断接着力の測定においてせん断接着力が低下した温度(80℃付近)で、シリコンチップと繊維強化接着シートの剥離を行い、剥離の容易性を評価すると共に、剥離した後のシリコンチップの表面を観察した。
【0053】
その結果、シリコンチップと繊維強化接着シートは容易に剥離が可能であった。また、剥離後のシリコンチップの接着面には熱可塑性樹脂等の残存は殆どなく、極めて美麗な表面であった。
【0054】
以上の結果から、評価用サンプルにおける繊維強化接着シートは、常温付近(20〜60℃)ではシリコンチップと充分な強度で接着しており、また、一定の温度に達すると(80℃付近)、急激に熱可塑性樹脂が軟化(溶融、再液状化)して、シリコンチップの剥離を容易に行うことができ、さらに剥離後のシリコンチップ表面は美麗であることが確認された。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の繊維強化接着シートの製造方法によれば、厚みが100μm以下であるような薄い繊維強化接着シートを得ることが可能となる。また、得られた繊維強化接着シートは、常温では充分な接着強度を有しており、また、接着後は加熱するだけで良好に剥離することが可能であり、接着・剥離の工程を容易に行うことができる。従って、小型又は薄型の電子機器の製造における仮固定工程等に対しても好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】温度に対するせん断接着力の変化を示すグラフである。

Claims (8)

  1. 強化繊維の編組物に、エポキシ基を2つ有する2官能化合物である第1の反応性化合物と、フェノール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基及びシアネートエステル基からなる群より選ばれる官能基を2つ有する2官能化合物である第2の反応性化合物とを含む反応性化合物を含浸させる含浸工程と、
    前記含浸工程の後に、前記第1の反応性化合物と前記第2の反応性化合物とを重付加反応させ、該重付加反応が完了しない状態まで高分子量化させて熱可塑性樹脂を形成する反応工程と、を備えることを特徴とする繊維強化接着シートの製造方法。
  2. 加熱により前記重付加反応を行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 前記強化繊維は、ガラス繊維又はカーボン繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 前記第2の反応性化合物は、フェノール性水酸基を2つ有する2官能化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする繊維強化接着シート。
  6. 請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法により製造される繊維強化接着シートであって、厚さが100μm以下であることを特徴とする繊維強化接着シート。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法により製造される繊維強化接着シートであって、繊維強化接着シートに占める強化繊維シートの割合が20〜70重量%であることを特徴とする繊維強化接着シート。
  8. 請求項5〜7のいずれか一項に記載の繊維強化接着シートに被着体を接触させた後に、該繊維強化接着シートの反応性化合物の重合反応を進行させて熱可塑性樹脂を形成させるとともに前記被着体の接着保持を開始し、所定時間後に前記熱可塑性樹脂を軟化させた状態で前記被着体を剥離して接着保持を終了させることを特徴とする被着体の仮固定方法。
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