JP4639027B2 - スパッタイオンポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、横断面積の小さい空間を超高真空状態に維持するのに使用される超小型スパッタイオンポンプに、そして一層特に、電子顕微鏡のような荷電粒子ビームを用いた電子機器の荷電粒子ビーム通路に組み込まれるスパッタイオンポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
公知のように、スパッタイオンポンプは、真空チャンバ内に配置されたアノード電極とカソード電極を有し、両電極間に高電圧が印加され、磁場の作用で螺旋運動している電子に排気されるべき残留気体分子が衝突してイオン化され、カソード電極をスパッタして、アノード電極表面などに吸着されることにより、排気が行われる。
このようなスパッタイオンポンプの公知例として、実公平3−48838号公報に電子顕微鏡用のイオンポンプが開示されており、このイオンポンプにおいては、アノードとして機能するイオン吸着用セルを上下に挟む二つのドーナツ状磁石がヨーク材に取付けられ、これらドーナツ状磁石の漏洩磁束の磁路に磁極片が配置され、中心軸方向の漏洩磁束のほとんどが磁極片を通ることになり漏洩磁束を集中させることができるようにしている。
また、特公平7−59943号公報には別の公知のスパッタイオンポンプが開示されており、このスパッタイオンポンプにおいては、円筒状の真空容器内に多数の円筒体を結合して成る環状アノード電極を上下に挟んで二つの環状カソード電極が対向して配置され、これら環状カソード電極及び環状アノード電極に相応した形状の二つの環状の永久磁石が真空容器の外側に真空容器を上下に挟んで設けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらの公知のスパッタイオンポンプにおいては、環状アノード電極を上下に挟んで二つの環状の永久磁石が配置されており、中心軸に平行な相当大きな磁場が存在し、また、中心軸に垂直な径方向の磁場に関しては、二つのドーナツ状永久磁石が同一の大きさ及び同一の特性をもち、しかも完全に同軸に組立てられれば、中心軸上の径方向の磁場はゼロになるが、中心軸から少し(例えば0.5〜1mm)離れると、相当大きな磁場が存在している。しかし、実際には、磁石には特性にばらつきがあるため中心軸上の径方向の磁場はゼロにならず相当大きい。
【0004】
また、実公平3−48838号公報に開示された構造ではヨーク回路が存在するので、ポンプ自体が重くなるという問題がある。
【0005】
また、磁石が対向配列しているので、漏洩磁場が大きく、ビーム偏向に悪影響するという問題がある。すなわち、漏洩磁場が大きくなると、加速器や電子顕微鏡の中の電子ビームが曲げられ、その結果電子像がぼけたり電子ビームの電流値が減少するなどの問題が生じる。特に特公平7−59943号公報に記載されたようにヨーク部材を使用していない構造では、上記の問題に加えて永久磁場の発生する磁場が周囲の計測器に悪影響を及ぼすことになる。
【0006】
さらに、ポンプの特性上、極高真空を達成するためには、真空容器内に内蔵された各部材の表面積をできるだけ少なくすることが重要であるが、上述のような従来のスパッタイオンポンプにおいては、カソード電極及び真空容器の内壁の表面積が比較的大きくそこから放出されるガスの量が比較的多くなるためポンプの到達圧力が制限されることになる。
【0007】
このような従来技術の問題点に鑑み、本発明者らは先に荷電粒子ビームを用いた電子機器の荷電粒子ビーム通路に組み込むようにしたスパッタイオンポンプを提案した(特開2001−332209号公報参照)。この先に提案したスパッタイオンポンプにより、構造が簡単化及び小型軽量化できるようになり、中心軸付近の磁場を径方向及び軸方向ともゼロにでき、ポンプの到達圧力を高くできるようになった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、加速器や電子顕微鏡のような電子機器において、超高真空を維持すること及び機器の設計上この種のスパッタインオンポンプを真空チャンバ特に荷電粒子ビームの通路に組み込むことの要求が出てきているが、実際問題として設計上又はシステムの構成上、荷電粒子ビームの通路にこのようなスパッタインオンポンプを組み込むことはできない場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、既存の装置における超高真空を維持する必要のある空間に容易にかつ簡単に取り付けることができしかもこのような空間をもつ機器の動作に実質的に影響を及ぼさずに空間内を超高真空にできるスパッタイオンポンプを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明によるスパッタイオンポンプは、超高真空状態に維持すべき空間の軸線方向に沿った筒状部と、筒状部の両端に設けられた半径方向にのびるフランジ部と、フランジ部間において筒状部の軸線方向に対して垂直な方向にのび、筒状部内に内方端が連通した排気通路と、排気通路の外方端に連接されて筒状部の外周に同心的に配置され、排気通路を介して上記空間内を排気するため、同一円周上に軸対称に配置された複数の永久磁石及び同一円周上に配置された複数のアノード電極が設けられた環状のポンプハウジングとを有することを特徴ととしている。
【0011】
筒状部の両端に設けられた半径方向にのびるフランジ部は一体的に形成され得、筒状部内と環状ポンプ本体内とを連通する排気通路は一体的に形成されたフランジ部間に設けられ得る。
【0012】
筒状部内と環状ポンプ本体内とを連通する排気通路は径方向に複数個設けられ得る。
【0013】
筒状部内及び環状ポンプ本体内の少なくとも一方において排気通路に対向した位置に邪魔板部材が設けられ得る。邪魔板部材は排気通路のレベルに位置したリング部材から成り得る。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1及び図2には、本発明のスパッタイオンポンプの一つの実施の形態を示し、図示スパッタイオンポンプにおいては、1は超高真空に維持すべき空間の一部2を画定し、該空間2の軸線方向に沿ってのびる筒状部であり、この筒状部1の両端には半径方向にのびるフランジ部3が設けられている。これらのフランジ部3により、超高真空に維持すべき空間を画定している図示していない壁部材に気密に取付けられる。
【0016】
フランジ部3間において筒状部1の外周には軸線方向に対して垂直な方向にのびる複数の排気通路4が設けられ、各排気通路4の内方端は筒状部1内の排気空間2に連通し、また各排気通路4の外方端は筒状部1の外周に同心的に配置された環状のポンプハウジング5に連通している。環状のポンプハウジング5内には複数のイオンポンプセル6が放射状に配列され、各排気通路4を介して超高真空に維持すべき空間2内を排気する環状ポンプ本体を構成している。
【0017】
図3及び図4には、本発明のスパッタイオンポンプの別の実施の形態を示し、図1及び図2に示す実施の形態におけるスパッタイオンポンプと対応した部分は同じ符号で示す。図3及び図4に示すスパッタイオンポンプにおいては、筒状部1は、その軸線方向長さを実質的にゼロとし、一体に形成された半径方向にのびる単一フランジ部7として形成されている。このフランジ部7は、図1及び図2に示す実施の形態の場合と同様に、超高真空に維持すべき空間を画定している図示していない壁部材に気密に取付けられる。
【0018】
フランジ部7には軸線方向に対して垂直な方向にのびる複数の排気通路すなわち排気孔8が設けられ、各排気通孔8の内方端は筒状部1内の排気空間2に連通し、また各排気孔8の外方端は筒状部1の外周に同心的に配置された環状のポンプハウジング5に連通している。環状のポンプハウジング5内には複数のイオンポンプセル6が放射状に配列され、各排気孔8を介して超高真空に維持すべき空間2内を排気する環状ポンプ本体を構成している。
【0019】
ところで、図1〜図4に示す実施の形態において、排気通路3又は8はそれぞれ四つ設けられているが、必要により四つ以上又は四つ以下でもよい。
【0020】
図5には、図3及び図4に示すスパッタイオンポンプの変形例を示す。この場合に、環状ポンプ本体から余分の電子、イオン又は原子などが排気孔8を介して排気空間2内へ入り込まないようにするため、各排気孔8の内方端及び外側端に対向した位置において排気空間2及び環状のポンプハウジング5内に邪魔板部材9が設けられている。排気空間2及び環状のポンプハウジング5内に配置される邪魔板部材9はそれぞれ必要によりリング部材として構成することもできる。
【0021】
次に図6及び図7を参照して図1及び図2に示すスパッタイオンポンプの実施例について説明する。
筒状部11は超高真空に維持すべき空間の一部12を画定し、この筒状部11の両端には半径方向にのびるフランジ部13が設けられている。フランジ部13間において筒状部11の外周には軸線方向に対して垂直な方向にのびる20個の排気通路14が設けられ、各排気通路14の内方端は筒状部11内の排気空間12に連通し、また各排気通路14の外方端は筒状部11の外周に同心的に配置された環状のポンプハウジング15に連通している。
【0022】
環状のポンプハウジング15の周囲部分16は凹凸形状に形成され、外側凹部16aと内側凹部16bとが交互に画定されている。この周囲部分16はチタンで構成され、カソード電極として機能するように構成されている。
【0023】
外側凹部16aには永久磁石17が同一円周上に軸対称に配置され、各永久磁石17は環状のポンプハウジング15の中心軸線方向に垂直な横断面が外方に向って広がった楔型をした柱状体を成し、同一形状、同一特性をもつ。またこれらの永久磁石17は同一磁極方向に向けて配列されている。すなわち隣接した永久磁石17のN極とS極が互いに対向するように配列されている。
【0024】
環状のポンプハウジング15の周囲部分16の内側凹部16bには導電性材料から成る筒状のアノード電極18が図示したように環状のポンプハウジング15の壁から離間して同一円周上に、その開口が円周方向を向いて配置され、各アノード電極18は環状のポンプハウジング15の中心軸線方向の投影図が矩形の円筒体を成し、同一形状、同一寸法に構成されている。またこれらのアノード電極18は導電性の支持材19を介して共通の環状部材20に接続され、この環状部材20は高電圧導入端子21に接続されている。
【0025】
ところで、図示実施の形態では、アノード電極18は円筒状以外に多角形の筒状であってもよい。 また、環状のポンプハウジング15の形状を円筒形ではなく、正多角形としてもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によるスパッタイオンポンプにおいては、 超高真空状態に維持すべき排気空間の軸線方向に沿った筒状部のフランジ部間において筒状部の軸線方向に対して垂直な方向にのびる排気通路を設け、筒状部の外側に、排気通路の外方端に連接して環状ポンプ本体を設け、排気通路を介して排気空間内を横方向に排気するように構成しているので、このような排気空間をもつ機器の動作に実質的に影響を及ぼさずに超高真空状態に維持すべき空間にポンプ本体を挿置するスペースがない場合でも容易にスパッタイオンポンプを組み込むことができるようになる。
【0027】
また、ポンプハウジング内に内蔵された各部材の表面積を比較的小さくでき、従って、放出されるガスの量を比較的少なく抑えることができ、その結果、排気空間内を超高真空にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるスパッタイオンポンプの一実施の形態の概念を示す概略縦断面図。
【図2】図1のスパッタイオンポンプの概略平面図。
【図3】本発明によるスパッタイオンポンプの別の一実施の形態の概念を示す概略縦断面図。
【図4】図3のスパッタイオンポンプの概略平面図。
【図5】図3及び図4に示すスパッタイオンポンプの変形例を示す概略縦断面図。
【図6】図1に示すスパッタイオンポンプの具体的実施例を示す概略横断面図。
【図7】図6に示すスパッタイオンポンプの概略縦断面図。
【符号の説明】
1 :筒状部
2 :超高真空に維持すべき空間の一部
3 :フランジ部
4 :排気通路
5 :環状のポンプハウジング
6 :イオンポンプセル(環状ポンプ本体)
7 :単一フランジ部
8 :排気孔
9 :邪魔板部材
11 :筒状部
12 :超高真空に維持すべき空間の一部
13 :フランジ部
14 :排気通路
15 :環状のポンプハウジング
16 :ポンプハウジング15の周囲部分
16a:外側凹部
16b:内側凹部
17 :永久磁石
18 :アノード電極
19 :導電性の支持材
20 :共通の環状部材
21 :高電圧導入端子

Claims (3)

  1. 超高真空状態に維持すべき空間の軸線方向に沿った筒状部と、
    筒状部の両端に一体的に形成された半径方向にのびるフランジ部と、
    フランジ部間に設けられ、各々筒状部の軸線方向に対して垂直な方向にのび、筒状部内に内方端が連通した複数の排気通路と、
    排気通路の外方端に連接されて筒状部の外周に同心的に配置され、排気通路を介して前記空間内を排気する環状ポンプ本体と
    を有し、
    前記環状ポンプ本体が、排気通路の外方端に連接されて筒状部の外周に同心的に配置された環状のポンプハウジングと、前記環状のポンプハウジングに設けられ、同一円周上に軸対称に配置された複数の永久磁石と、前記環状のポンプハウジングに設けられ、前記同一円周上に配置された複数のアノード電極とを備えていること
    を特徴とするスパッタイオンポンプ。
  2. 筒状部内及び環状ポンプ本体内の少なくとも一方において排気通路に対向した位置に邪魔板部材が設けられることを特徴とする請求項1に記載のスパッタイオンポンプ。
  3. 邪魔板部材が排気通路のレベルに位置したリング部材から成ることを特徴とする請求項2に記載のスパッタイオンポンプ。
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