JP4638565B2 - 高感度力学量センサ材料 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は,力,圧力,応力,トルク,速度,角速度,加速度,位置,変位,衝撃力,重量質量,ロードセル,検出スイッチ,流量,流速,真空度,回転力,振動,騒音等の力学的な変化量を高感度に測定する力学量センサを構成する材料として使用される高感度力学量センサ材料に関する。
【0002】
【従来技術】
従来,力,圧力,応力,トルク,速度,角速度,加速度,位置,変位,衝撃力,重量質量,ロードセル,検出スイッチ,流量,流速,真空度,回転力,振動,騒音等の力学的な変化量を歪み(応力)を介して計測する力学量センサの構成材料として,抵抗線歪みゲージ,半導体のシリコン等が使用されている。
特に半導体シリコンは,高感度の歪み計素子として,衝撃試験機,変位計,圧力変換器,加速度計,生体用の小型圧力計,流量計,ガス圧計等,一般工業用,自動車用,医療用等の様々な分野において応用されている。
【0003】
また,半導体を用いた力学量センサとしては一般的にシリコンや歪みゲージが多く用いられている。この力学量センサは,外力が作用することによって生じる歪みに起因して,シリコンや歪みゲージの比抵抗が変化するという現象を利用している。
【0004】
【解決しようとする課題】
しかしながら,従来材料により構成された力学量センサの感度では,生体系等の微圧センサ,燃焼圧センサ,油圧機器用の圧力センサとして使用するような精度,高感度を要求される力学量センサを得ることが困難であった。
更に,低感度であるがゆえに,従来材料より構成した力学量センサはアンプなどを接続してセンサ出力値を増幅して計測する必要があった。よって,センサシステムの構成が複雑となり,コスト高となるという問題があった。
また,充分なS/N比を得られず分解能を飛躍的に向上させることが困難であった。
【0005】
また,従来材料はセンサ材料のゲージ率に異方性があったため,ゲージ率の調整や材料設計が困難であった。また,1つの素子で2次元センサとして利用することも困難であった。なお,2次元センサとは,同一平面上における少なくとも2方向に対する測定が可能なセンサである。
【0006】
本発明は,かかる問題点に鑑み,高感度(高ゲージ率)でかつ1,2次元の力学量を検知することができるセンサ,また低コストなセンサシステムを構成可能な高感度力学量センサ材料を提供しようとするものである。
【0007】
【課題の解決手段】
請求項1に記載の発明は,絶縁性または高抵抗の材料よりなる絶縁層と,絶縁マトリックス材料に対し導電粒子が網目状に分散した導電層とよりなり,
かつ複数の上記絶縁層と複数の上記導電層とを,交互に一層ずつ積層して層状構造としてなることを特徴とする高感度力学量センサ材料にある。
【0008】
本発明において最も注目すべきことは,導電層と絶縁層とが層状構造にしてなり,上記導電層は絶縁マトリックス材料に対し導電粒子が不連続に分散していることにある。
次に,本発明の作用につき説明する。
このような材料は,(1)外力の付加に対して電気伝導度が変化する,(2)弾性率を制御できる,(3)積層構造により導電層に内部応力を付加できる。
これらの作用により,本発明は加える応力が高くなっても,直線的な歪み(応力)−電気抵抗効果を示す。よって,応力負荷によって不連続に分散した導電粒子よりなる導電パスのより大きな抵抗変化を得られ易いことから,高感度な材料である(後述の図2参照)。
【0009】
また,このように本発明にかかる高感度力学量センサ材料はゲージ率が高く,高感度なセンサを構成することができる。このようなセンサは出力値を増幅せずとも微量の力学量を精度よく測定できるため,センサシステムからアンプ等の機器を省略でき,低コストなセンサシステムの構築が実現できる。
【0010】
また,本発明の高感度力学量センサ材料における層状構造の積層方向と直角方向である積層面方向は比抵抗が歪みに対して均一に変化する。つまり,ゲージ率の面方向への異方性がないため,2次元センサとして利用できる。
もちろん,本発明の材料は通常の一方向からの応力等の力学量についても比抵抗が変化するため,通常の1次元センサとしても利用することができる。
【0011】
以上,本発明によれば,高感度(高ゲージ率)でかつ1,2次元の力学量を検知することができるセンサ,また低コストなセンサシステムを構成可能な高感度力学量センサ材料を提供することができる。
【0012】
本発明の高感度力学量センサ材料にて構成された力学量センサは,力学量を測定,検知するためのセンサであり,ここにおける力学量としては,例えば歪量,トルク,力,加速度,衝撃力,角加速度,変位,応力,圧力,重量(荷重)を挙げることができる。
【0013】
上記導電層について説明する。
上記導電層は絶縁マトリックス材料と導電粒子とよりなる。
上記絶縁性マトリックス材料は導電層における母材となる。この絶縁性マトリックス材料としては,例えば金属酸化物,金属窒化物,金属炭化物,またはそれらの複合化合物が挙げられる。
【0014】
例えば,アルミニウム,珪素,マグネシウム,カルシウム,クロム,ジルコニウム,イットリウム,イッテリビウム,ランタン,バナジウム,バリウム,ストロンチウム,スカンジウム,硼素,ハフニウム,ビスマス,チタン,鉄,亜鉛,ベリリウム,ニオブ,タングステン,セリウム,ジスプロシウム,レニウム,リチウム,サマリウム,タンタル等より選ばれる1種以上の元素よりなる酸化物,または窒化物,炭化物,及びそれらの複合酸化物,または固溶体を挙げることができる。
【0015】
また,上述の元素の複合酸化物,複合化合物,固溶体を挙げることもできる。
更に,サイアロン,コージュエライト,ムライト,ジルコン,フォルステライト,フェライト,スピネル等のセラミックス材料を挙げることもできる。
【0016】
また,上記導電粒子として使用可能な材料としては,IIIVa〜VIIIa族及びIb〜IVb族の金属元素,希土類元素及びそれらのうちから選択される一種以上の珪化物,窒化物,炭化物,硼化物,硫化物,弗化物及び酸化物の組み合せを挙げることができる。
例えば,B4C,B及びTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Cr,W等の窒化物,炭化物,硼化物や,Mg,Ca,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Pt,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Mo,Cr,W,Th,Ce,Sr,Cs等の酸化物及びこれらの複合酸化物,珪化物,窒化物,炭化物,硼化物,硫化物,弗化物が挙げられる。
【0017】
また,導電層には上記導電粒子と共に微小な気孔を分散させることによって,導電層を変形し易くすることができる。これにより,応力負荷によって,より大きな変形を生むことによって,より大きな抵抗変化率を発現させることが可能となる。
【0018】
また,上記絶縁層を構成する絶縁性または高抵抗の材料としては,金属元素,希土類元素の酸化物,窒化物の一部,または一部の炭化物及びそれらの複合化合物や固溶体を用いることができる。
例えば,Si3N4,AlN,BN,Al2O3,CaO,MgO,Fe2O3,Mg2SiO4,BaTiO3,SiO2,SiAlON,CeO3,BeO,Y2O3,Yb2O3,La2O3,Sc2O3,ZrO2,ZnO2,TiO2,ムライト,ジルコン等を挙げることができる。
【0019】
なお,本発明にかかる高感度力学量センサ材料は,導電層と絶縁層とを交互に積層した状態とした構成が基本構造であるが,比抵抗が異なる導電層を交互に並べたような層状構造をとることもできる。
【0020】
次に,請求項2の発明のように,上記絶縁層の比抵抗は106Ωm以上であることが好ましい。
これにより,積層方向に導電パスが形成され難いため,(1)素子としての比抵抗を調整し易くなる,(2)応力負荷に伴う横方向の導電パスの変化を抑制できる。比抵抗が106Ωmより小さい場合には,力学量センサとして機能し難くなるおそれがある。
【0021】
また,絶縁層の比抵抗が106Ωm以上である条件を満たすのであれば,適当な(例えば上述した各種の)材料に対して導電材料を添加して,抵抗値を調整することもできる。この場合の導電材料としては,上述した導電層における導電粒子と同様の材料が使用できる。
【0022】
次に,請求項3の発明のように,上記導電層の比抵抗は104Ωm以下であることが好ましい。
これにより,素材の比抵抗を大きくすることなく,力学量センサとして適正な特性を得ることができる。
比抵抗が104Ωmより大である場合には,力学量センサとして機能し難くなるおそれがある。
【0023】
次に,請求項4の発明のように,上記絶縁層及び/または上記導電層の厚さは0.1〜5000μmであることが好ましい。
このようにすることで,導電層に内部応力を付与することができ,また層状構造の本発明にかかる高感度力学量センサ材料全体の弾性率を調整することができ,負荷された応力に対する歪みの変化を制御することができるようになる。その結果,電気抵抗変化率を大きく制御することができる。
【0024】
上記絶縁層及び/または上記導電層の厚みが0.1μm未満である場合には,上記のような積層効果が得難くなるか,または力学量センサ材料として利用する際に,電極材料とのコンタクト状態に不具合が生じるおそれがある。厚みが5000μmより大である場合には,弾性率の調整がし難くなり,内部応力の効果が小さくなる等の問題が生じるおそれがある。
【0025】
また,絶縁層と導電層とのそれぞれの厚みは異なるほうが好ましい。
これにより,層状構造全体の比抵抗を調整できるだけでなく,絶縁層と導電層とに負荷される応力を変えることができる。これにより,応力に対する比抵抗の変化を制御することができる。
【0026】
次に,請求項5の発明のように,上記導電層において,上記導電粒子は粒子間隔0.0005〜1μmで上記絶縁マトリックス材料に対し不連続に分散していることが好ましい。
ここに粒子間距離とは,ある導電粒子と最近接する他の導電粒子との間の隙間の距離を意味する。
【0027】
粒子間距離が0.0005μmより小さい場合には,導電粒子が連続的に分散している状態に近くなり,高感度で直線的な歪み抵抗効果が得られなくなるおそれがある。
一方,1μmより大である場合には,導電層の電気伝導度が低下して,力学量センサとしての機能が得られなくなるおそれがある。
【0028】
なお,上記粒子間距離は導電層を切断し,その断面をECRプラズマによりエッチングしSEM観察するか,または薄片をTEM観察することによって測定することができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
実施形態例
本発明の実施形態例にかかる高感度力学量センサ材料につき説明する。
本例の力学量センサ材料1は,図1に示すごとく,絶縁性または高抵抗の材料よりなる絶縁層12と,絶縁マトリックス材料に対し導電粒子が不連続に分散した導電層11とよりなり,かつ上記絶縁層12と上記導電層11とが交互に積層されて層状構造としてなるものである。
上記絶縁層における絶縁性または高抵抗の材料に導電粒子を添加してもよい。
これにより,導電層に発生する内部応力を調整することができる。
【0030】
以下,具体的に説明すると共に,比較試料との間で性能を比較評価する。
<試料1>
平均粒径:0.2μmのSi3N4原料粉末64wt%と,Y2O3原料粉末6wt%と,平均粒径:0.01〜0.03μmのSiC原料粉末30wt%とを湿式ボールミル混合後,乾燥して混合粉末Iを得た。上記混合粉末Iをポリビニルアルコールまたはポリエチレングリコールをバインダとして混合した後,押出し成形により厚さ600μmの板状成形体とした。
【0031】
また,94wt%のSi3N4(平均粒径:0.2μm)と6wt%のY2O3とを湿式ボールミル混合して混合粉末IIを作製した。上記混合粉末Iと同様に,混合粉末IIにバインダを加え,押出し成形により厚さ500μmの板状成形体に成形した。
【0032】
上記2種類の板状成形体を図1に示すように交互に積層して,脱脂,圧着後,温度1850℃,プレス圧20MPaで1時間ホットプレスを行った。得られたホットプレス体より,長手方向がホットプレス方向と直角な方向になるように試験片を切出して本例にかかる高感度力学量センサ材料を得た。
【0033】
得られた本例にかかる高感度力学量センサ材料の断面をECR(Energy Cyclotron Resonance)プラズマエッチングして,その表面をSEM観察した。その結果,複数のSi3N4結晶粒の周囲をSiC粒子が取り囲むような網目状構造の導電パスが形成された材料からなる導電層11と,柱状のSi3N4結晶粒のみの材料からなる絶縁層12とより構成される層状構造を有することが分かった(図1参照)。
【0034】
<試料2>
94wt%のSi3N4(平均粒径:0.2μm)と6wt%のY2O3およびバインダとを湿式ボールミル混合し,スプレードライヤ装置により粒径80μm程度の造粒粉を作製した。
この造粒粉80wt%とSiC15wt%(平均粒径:0.4μm)とを湿式混合して乾燥し,混合粉末Iを作製した。この混合粉末Iをバインダと混合した後,押出し成形により厚さ600μmの板状成形体を成形した。
【0035】
また,94wt%のSi3N4(平均粒径:0.2μm)と6wt%のY2O3とを湿式ボールミル混合して混合粉末IIを作製した。上記混合粉末Iと同様に,この混合粉末IIにバインダを加え,押出し成形により厚さ500μmの板状成形体を成形した。
【0036】
上記2種類の板状成形体を交互に積層して脱脂,圧着後,温度1850℃,プレス圧20MPaで1時間ホットプレスを行った。得られたホットプレス体より,長手方向がホットプレス方向と直角な方向になるように試験片を切出して本例にかかる高感度力学量センサ材料を得た。
【0037】
得られた本例にかかる高感度力学量センサ材料の断面をECRプラズマエッチングして,その表面をSEM観察した。
その結果,複数のSi3N4結晶粒の周囲をSiC粒子が取り囲むような網目状構造の導電パスが形成された材料からなる導電層11と,柱状のSi3N4結晶粒のみの材料からなる絶縁層12とより構成される層状構造を有することが分かった(図1参照)。
ただし,試料2は造粒により粒径が大となったSi3N4より作製されたため,Si3N4結晶粒のサイズが試料1よりも大きかった。
【0038】
<試料3>
平均粒径:0.2μmのSi3N4原料粉末64wt%と,Y2O3原料粉末6wt%と,平均粒径:0.01〜0.03μmのSiC原料粉末30wt%を湿式ボールミル混合し,乾燥して混合粉末Iを得た。
この混合粉末Iをバインダと混合した後,押出し成形により厚さ600μmの板状成形体を成形した。
【0039】
また,86wt%のSi3N4(平均粒径:0.2μm),6wt%のY2O3と,8wt%のSiCとを湿式ボールミル混合して混合粉末IIを作製した。上記混合粉末Iと同様に,混合粉末IIにバインダを加え,押出し成形により厚さ500μmの板状成形体を成形した。
【0040】
上記2種類の板状成形体を交互に積層して脱脂,圧着後,温度1850℃,プレス圧20MPaで1時間ホットプレスを行った。
得られたホットプレス体より,長手方向がホットプレス方向と直角な方向になるように試験片を切出して,本例にかかる高感度力学量センサ材料を得た。
【0041】
得られた本例にかかる高感度力学量センサ材料の断面をECRプラズマエッチングして,その表面をSEM観察した。
その結果,複数のSi3N4結晶粒の周囲をSiC粒子が取り囲むような網目状構造の導電パスが形成された材料からなる導電層11と,柱状のSi3N4結晶粒のみの材料からなる絶縁層12とより構成される層状構造を有することが分かった(図1参照)。
【0042】
<試料4>
平均粒径:0.2μmのSi3N4原料粉末64wt%と,Y2O3原料粉末6wt%と,平均粒径:0.01〜0.03μmのSiC原料粉末30wt%とを湿式でボールミル混合し,乾燥して混合粉末Iを得た。
また,94wt%のSi3N4(平均粒径:0.2μm)と6wt%のY2O3を湿式ボールミル混合して混合粉末IIを作製した。
【0043】
上記混合粉末Iおよび混合粉末IIとを成形型に対し交互に積層した。つまり,成形型のキャビティに混合粉末Iを敷き詰め,その上から混合粉末Iと混じらないように静かに混合粉末IIを敷き詰めた。この操作を何度か繰り返し,所望の厚みまで交互に粉末を敷き詰めた。そして,プレス圧20MPaで一軸成形した。得られた積層成形体に対し,温度1850℃,プレス圧20MPaで1時間ホットプレスを行った。
上記ホットプレス体より,長手方向がホットプレス方向と直角な方向になるように試験片を切り出して,本例にかかる高感度力学量センサ材料を得た。
【0044】
得られた本例の高感度力学量センサ材料の断面をECRプラズマエッチングして,その表面をSEM観察した。
その結果,試料1と同様に導電層11と絶縁層12とからなる層構造の材料で,導電層11は,複数のSi3N4結晶粒の周囲をSiC粒子が取り囲んでおり,全体としてはSi3N4相に対しSiCが不連続に分散することで形成された網目状構造が形成されていることが分かった。また,絶縁層12は柱状のSi3N4結晶粒からなることが分かった。
【0045】
<試料5>
平均粒径:1.0μmのSi3N4原料粉末64wt%と,Y2O3原料粉末6wt%と,平均粒径:0.4μm(比表面積が18m2/g)のTiN原料粉末30vol%とを湿式でボールミル混合して乾燥し,混合粉末Iを得た。
また,94wt%のSi3N4(平均粒径:0.2μm)と6wt%のY2O3を湿式ボールミル混合して混合粉末IIを作製した。
【0046】
上記混合粉末Iおよび混合粉末IIとを成形型に対し交互に積層した。つまり,試料4と同様に,成形型のキャビティに混合粉末Iを敷き詰め,その上から混合粉末Iと混じらないように静かに混合粉末IIを敷き詰めた。そして,プレス圧20MPaで一軸成形した。得られた積層成形体に対し,温度1850℃,プレス圧20MPaで1時間ホットプレスを行った。
上記ホットプレス体より,長手方向がホットプレス方向と直角な方向になるように試験片を切り出して本例にかかる高感度力学量センサ材料を得た。
【0047】
得られた高感度力学量センサ材料の断面をECRプラズマエッチングして,その表面をSEM観察した。
その結果,試料1と同様に,導電層11と絶縁層12とからなる層構造の材料で,導電層11は,複数のSi3N4結晶粒の周囲をTiN粒子が取り囲んでおり,全体としてはSi3N4相に対しTiNが不連続に分散することで形成された網目状構造が形成されていることが分かった。また,絶縁層12は柱状のSi3N4結晶粒からなることが分かった。
【0048】
<試料6>
平均粒径:1.0μmのSi3N4原料粉末64wt%と,Y2O3原料粉末6wt%と,平均粒径:0.4μm(比表面積が18m2/g)のTiN原料粉末30vol%とを湿式でボールミル混合して乾燥し,混合粉末Iを得た。
また,ZrO2(平均粒径:0.6μm)の粉末IIを準備した。
【0049】
上記混合粉末Iおよび粉末IIとを成形型に対し交互に積層した。つまり,試料4と同様に,成形型のキャビティに混合粉末Iを敷き詰め,その上から混合粉末Iと混じらないように静かに粉末IIを敷き詰めた。そして,プレス圧20MPaで一軸成形した。得られた積層成形体に対し,温度1850℃,プレス圧20MPaで1時間ホットプレスを行った。
上記ホットプレス体より,長手方向がホットプレス方向と直角な方向になるように試験片を切り出して本例にかかる高感度力学量センサ材料を得た。
【0050】
得られた高感度力学量センサ材料の断面をECRプラズマエッチングして,その表面をSEM観察した。
その結果,試料1と同様に,複数のSi3N4結晶粒の周囲をTiN粒子が取り囲むような網目状構造の導電パスが形成された材料からなる導電層11と,ZrO2単相のみの材料からなる絶縁層12とより構成される層状構造を有することが分かった(図1参照)。
【0051】
<比較試料C1,C2>
平均粒径:0.2μmのSi3N4原料粉末64wt%と,Y2O3原料粉末6wt%と,平均粒径:0.01〜0.03μmのSiC原料粉末30wt%とを湿式ボールミル混合後,乾燥して混合粉末Iを得た。
また,混合粉末Iと同様のSi3N4原料粉末62wt%と,Y2O3原料粉末8wt%と,SiC30wt%とを湿式ボールミルで混合後,乾燥して混合粉末IIを得た。
【0052】
この混合粉末I及びIIをそれぞれ2.0MPaの圧力で直径40mm×厚さ8mmの円板状に一軸加圧成形した後,温度1850℃,プレス圧20MPaで1時間ホットプレスを行った。得られたホットプレス体より,長手方向がホットプレス方向と直角な方向になるように試験片を切り出して比較試料C1及びC2とした。
【0053】
得られたC1,C2の断面をECRプラズマエッチングして,そのエッチング面をSEM観察した。
その結果,C1,C2は,複数のSi3N4結晶粒の周囲をSiC粒子が取り囲むような網目状構造が形成されていることが確認された。
【0054】
<性能評価試験>
以上,試料1〜試料6,比較試料C1,C2について,圧縮応力を負荷したときの比抵抗ならびに歪量を測定した。その結果を図2に記載した。
この測定は次のように行った。
上下面に金蒸着を施したφ4×5mmの円柱試験片を各試料,比較試料について準備し,該円柱試験片を圧縮試験機に取りつけ,この円柱試験片に圧縮荷重を付加したときの電気抵抗の変化を金蒸着を施した面に対し取りつけた銅製の箔を介して検出した。
【0055】
図2から明らかであるが,試料1及び試料3は応力が小さい時から大きい時まで直線的に応力−抵抗変化率が変化することが分かった。
また,後述する比較試料C1,C2と比べて図2における直線の傾きが大きく,これらの試料が1000〜1200という高いゲージ率(=ΔR/R/ε;R:電気抵抗,ΔR:抵抗変化量,ε:歪量)を持つことが分かった。
また,同図には記載しなかったが,試料2,試料4,5,6についてもゲージ率が900〜2500という高い値を持つことが分かった。
【0056】
これに対して,図2に示すように,長手方向がホットプレス方向と直角な方向になるように試験片を切り出して作製した比較試料C1,C2ではそのゲージ率が100〜150程度であることが分かった。この値は通常の半導体シリコン並の値である。
【0057】
本例の作用効果について説明する。
上述する試料1〜6は図1に示すごとく導電層11と絶縁層12とを層状構造にしてなる材料である。
このような材料は外力の負荷に対して電気伝導度が変化し,材料の選択,導電粒子の添加量の調整,焼成助剤量,積層を変える,または微小な気孔を導入する等の方法で導電層11と絶縁層12との弾性率を調整し,また厚みを適宜選択することで,層状構造全体の弾性率を低下させ,同一応力に対する導電層の歪み量を増やすことができる。
これらの作用により,本例にかかる材料は加える応力が低い場合から高い場合において,直線的な歪み(応力)−電気抵抗効果を示すことができる。
よって高い抵抗変化率を得ることができる。
【0058】
また,両者の熱膨張率差に依存して生成される内部応力を導電層内の導電粒子の熱膨張率や添加量及び導電層の厚さを調整するという方法で増加させることができるので,導電層に負荷される応力に対するバンドギャップ障壁の高さをより低下させることができるため,高い抵抗変化率を得ることができる。
【0059】
また,このように本例にかかる材料はゲージ率が高く,高感度なセンサを構成することができる。このようなセンサは出力値を増幅せずとも微量の力学量を精度よく測定できるため,センサシステムからアンプ等の機器を省略でき,低コストなセンサシステムの構築が実現できる。
【0060】
また,本例の材料における層状構造の積層方向と直角方向である積層面方向は比抵抗が歪みに対して均一に変化する。これは,導電層は導電粒子が電子の経路となって電気が流れるが,絶縁層では殆ど流れないためである。
また,ゲージ率の面方向への異方性がないため,2次元センサとして利用できる。もちろん,通常の一方向からの応力等の力学量についても比抵抗が変化するため,通常の1次元センサとしても利用することができる。
【0061】
以上,本例によれば,高感度(高ゲージ率)でかつ1,2次元の力学量を検知することができるセンサ,また低コストなセンサシステムを構成可能な高感度力学量センサ材料を提供することができる。
【0062】
【発明の効果】
上述のごとく,高感度(高ゲージ率)でかつ1,2次元の力学量を検知することができるセンサ,また低コストなセンサシステムを構成可能な高感度力学量センサ材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例における,高感度力学量センサ材料を示す模式図。
【図2】実施形態例における,各試料,比較試料にかかる抵抗変化率と応力との関係を示す線図。
【符号の説明】
1...高感度力学量センサ材料,
11...導電層,
12...絶縁層,
Claims (5)
- 絶縁性または高抵抗の材料よりなる絶縁層と,絶縁マトリックス材料に対し導電粒子が網目状に分散した導電層とよりなり,
かつ複数の上記絶縁層と複数の上記導電層とを,交互に一層ずつ積層して層状構造としてなることを特徴とする高感度力学量センサ材料。 - 請求項1において,上記絶縁層の比抵抗は106Ωm以上であることを特徴とする高感度力学量センサ材料。
- 請求項1または2において,上記導電層の比抵抗は104Ωm以下であることを特徴とする高感度力学量センサ材料。
- 請求項1〜3のいずれか一項において,上記絶縁層及び/または上記導電層の厚さは0.1〜5000μmであることを特徴とする高感度力学量センサ材料。
- 請求項1〜4のいずれか一項において,上記導電層において,上記導電粒子は粒子間隔0.0005〜1μmで上記絶縁マトリックス材料に対し不連続に分散していることを特徴とする高感度力学量センサ材料。
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