JP5072760B2 - 圧電磁器およびそれを用いた圧電素子 - Google Patents

圧電磁器およびそれを用いた圧電素子 Download PDF

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Description

本発明は、圧電磁器および圧電素子に関し、例えば、共振子、超音波振動子、超音波モータ、あるいは加速度センサ、ノッキングセンサ、およびAEセンサ等の圧電センサなどに適し、特に、厚み縦振動の正圧電効果を利用した圧電センサとして好適に用いられる圧電磁器および圧電素子に関するものである。
従来から、圧電磁器を利用した製品としては、例えば、圧電センサ、フィルタ、圧電共振子、超音波振動子、超音波モータ等がある。
圧電センサは、ショックセンサや加速度センサ、あるいは、車載用のノッキングセンサとして用いられる。特に近年では、自動車のエンジンの燃費向上および排気ガス(HC、NOx)の低減のために、シリンダ内の圧力を直接検出して、インジェクタからの燃料噴射タイミングの最適化を図るための、圧力センサとしての研究が進められている。
ここでシリンダ内の圧力変化を検出するメカニズムについて説明する。圧力は、例えば、エンジンのシリンダ内に突出した圧力伝達ピンと圧力伝達ピンを介して伝わるシリンダ内の圧力変化を検出する圧電センサにより構成される。この圧力伝達ピンのシリンダ内の圧力を伝えるために、その先端の一部はシリンダ内に突出しており、その部分はシリンダ内の燃焼時の高温にさらされるので、圧力伝達ピンに連結した圧電センサには、高い圧力変化と共に熱が伝わり、その温度は150℃に達する。
従来、圧電磁器としては、圧電性が高く、例えば圧電定数dの大きなPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系材料やPT(チタン酸鉛)系材料が使用されていた。
しかし、PZTやPT系材料は、鉛が約60質量%含まれているため、酸性雨により鉛の溶出が起こり、環境汚染を招く危険性があることが指摘されている。
また、PZT系材料やPT系材料は、キュリー温度Tが約200〜300℃であることから、150℃程度の高温下で使用すると圧電定数dが劣化する点、室温の圧電定数dに対して150℃の圧電定数dが大きく変化する点などから、用途に大きな制約があった。そのため、PZT系材料やPT系材料からなる圧電材料を、例えば、エンジンシリンダ内の圧力を直接検出する圧力センサとして用いた場合、150℃の高温にさらされると、経時変化を起こして圧電定数dが劣化するため、同じ圧力が加わっても出力電圧が変わることになるとともに、室温の圧電定数dに対する150℃の圧電定数dの変化が大きいために、圧力と出力電圧との関係において線形性が得られず、出力電圧から正確な圧力を算出することが困難であった。
これに対して、150℃の高温下においても安定した圧力センサとしての特性を得るために、ランガサイトや水晶などの単結晶を用いる検討もなされている。しかし、単結晶の場合、圧電定数dが小さいという課題がある。また、加工時にチッピングが生じやすく、割れやすく、実際の使用時にも圧力が加わった際に割れやすい。さらに、単結晶の製造コストが極めて高いという課題があった。
そこで、鉛を含有しない圧電材料に対して高い期待が寄せられている。
鉛を含有しない圧電磁器として、ビスマス層状化合物を主体とする材料が提案されている(例えば特許文献1。)。このビスマス層状化合物を主体とする圧電磁器では、キュリー温度が約400℃以上のものが多く、そのようなものは、高い耐熱性を有しておりエンジンルーム内といった高い温度にさらされる環境下で使用するセンサ素子として応用できる可能性がある。
特開2002−167276号公報
しかしながら、特許文献1に記載のビスマス層状化合物を主体とする圧電磁器を、約150℃の高温下にさらされる用途、例えば、シリンダ内の圧力を直接検出するための圧力センサ用圧電素子として用いた場合、高い耐熱性を有するものの、圧力の検出感度を決定する動的圧電定数d33の温度変化率が大きく、室温〜150℃の温度範囲において、圧力検出の分解能が低下し、感度が悪くなる問題があった。
なお、ここで動的圧電定数d33とは、圧電素子に直接荷重を印加したときの出力電圧の実測値を用いて、後述の式により測定された圧電定数d33である。従来、圧電定数d33は共振インピーダンス法を用いて測定されてきたが、この方法では圧電素子に加わっている負荷が小さいため、実荷重を印加したときの動特性の評価はできない。そこで、実荷重を印加したときの荷重と出力電荷の関係から圧電定数d33(=出力電荷/荷重変化)を測定し、これを動的圧電定数d33とした。
具体的な、測定方法としては、まず、圧電素子に250Nのオフセット荷重を印加しておき、そのオフセット荷重に加えて三角波形で50Nの荷重を印加した。そして、圧電素子に印加された三角波のピーク荷重50Nに対する出力電荷Qをチャージアンプで評価した。荷重50N印加に対する、出力電荷Qの関係から、動的圧電定数d33は、d33=Q/50N(荷重変化)となる。つまり、動的圧電定数d33は、単位C(クーロン)/Nであり、圧電素子に荷重を印加したときの動的な状態での圧電定数d33を意味する。
なお、250Nのオフセット荷重を印加したのは、圧電素子へ引っ張り力が働かないようにして、安定な出力特性を得るためである。また、荷重の変化を50Nとしたのは、本発明の応用例となるエンジンのシリンダ内の荷重変化を検出するのに必要な範囲をカバーするためである。
また、このような圧電素子を圧電センサに組み込む際には圧電素子の寸法精度が重要である。寸法精度を高くする方法としては、焼成後に加工する方法が考えられるが、工数が増える上、加工により圧電素子に割れカケが生じて歩留まりが低くなったり、加工後に残った微細なクラックなどにより圧力が加わった際に割れやすくなるなど、圧電素子の信頼性が低くなったりするおそれがあるため、焼成後に加工を行なわなくてもいいように、焼成後の寸法精度が高いことが好ましい。
したがって、本発明は、耐熱性に優れるとともに、室温の動的圧電定数d33が高いとともに、動的圧電定数 33 の温度に対する変化が小さく、さらに、寸法精度の高い圧電磁器および圧電素子を提供することを目的とする。
本発明の圧電磁器は、組成式をBiTi12・α[(1−β)M1TiO・βM2M3O]と表したとき、0.405≦α≦0.498、0≦β≦0.3を満足するとともに、M1が、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)から選ばれる少なくとも1種であり、M2が、Bi、Na、KおよびLiから選ばれる少なくとも1種であり、M3が、FeおよびNbから
選ばれる少なくとも1種であるビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、およびCuから選ばれる少なくとも1種を酸化物(Y 、CuO)換算の合計で0.1〜1質量部含有することを特徴とするものである。
本発明の圧電素子は、前記圧電磁器からなる基体の対向する一対の表面に電極を備えることを特徴とする。
本発明の圧電磁器によれば、組成式をBiTi12・α[(1−β)M1TiO・βM2M3O]と表したとき、0.405≦α≦0.498、0≦β≦0.3を満足するとともに、M1が、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)から選ばれる少なくとも1種であり、M2が、Bi、Na、KおよびLiから選ばれる少なくとも1種であり、M3が、FeおよびNbから選ばれる少なくとも1種であるビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、Ln(ランタノイド)、Y、BiおよびCuから選ばれる少なくとも1種を酸化物(Ln、Y、Bi、CuO)換算の合計で0.1〜1質量部含有することにより、ビスマス層状化合物の中のペロブスカイト結晶構造が、正方晶と斜方晶とが混在する組成相境界MPBであるため、室温の動的圧電定数d33に対して、150℃の動的圧電定数d33の変化が±5%以内と温度安定性に優れる。
さらに、大きな動的圧電定数d33が得られ、高いキュリー点を有することから、150℃の高温下に放置しても動的圧電定数d33の劣化が少なく、耐熱性に優れた特性を有する。
本発明の圧電素子によれば、前記圧電磁器からなる基体の対向する一対の表面に電極を備える。本発明の圧電素子は多結晶体であることから、単結晶のように特定の面で割れやすい性質を持たず、また、チッピング等の欠けも生じにくく、それらに起因する不良が少なくなり、歩留まりの良い圧電素子が得られる。
本発明の圧電磁器は、モル比による組成式をBiTi12・α[(1−β)M1TiO・βM2M3O]と表したとき、0.405≦α≦0.498、0≦β≦0.3を満足するとともに、M1が、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)から選ばれる少なくとも1種であり、M2が、Bi、Na、KおよびLiから選ばれる少なくとも1種であり、M3が、FeおよびNbから選ばれる少なくとも1種であるビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、およびCuから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算の合計で0.1〜1質量部含有するものである。
ここで、係数であるαを上記の範囲に設定した理由について説明する。上記組成式において、0.405≦α≦0.498の範囲に設定した理由は、αが0.498より大きいと、動的圧電定数d33の25℃から−40および150℃への温度変化率が+5%より大きくなるからである。また、αが0.405より小さいと、動的圧電定数d33の25℃から−40および150℃への温度変化率が±5%の範囲を外れるからである。
αが0.405≦α≦0.498の範囲においては、動的圧電定数d33が15pC/Nより大きな値をとるとともに、動的圧電定数d33の25℃から150℃への温度変化率が−から+へ転じる挙動を示す。図1は、ランタノイドとしてLaを含有する圧電磁器のαを変化させたときの結晶構造の変化をX線回折により解析した結果である。図2は図1の2θ=32〜34°の部分を拡大したものである。α=0の時、結晶は斜方晶(a軸の長さ≠b軸の長さ)であり、α=1の時は正方晶(a軸の長さ=b軸の長さ)である。α=0.405〜0.498の範囲においては、正方晶と斜方晶とが混在しており、これは組成相境界MPBである。このMPBは、PZT圧電材料でよく知られており、PZの菱面体晶とPTの正方晶とがほぼ1:1の比率で構成される組成領域でMPBが形成される。このPZTのMPB近傍では圧電定数dが最大値を示し、圧電定数dの温度係数が大きく変化する。この現象と同様に、0.405≦α≦0.498の組成範囲は、2種類の結晶相の境界であるので、圧電体の特異的な現象を示す組成相境界MPBであり、動的圧電定数d33の温度変化率が約0近傍まで小さくなるとともに、大きな動的圧電定数d33が得られる。
図3はCuを含有する圧電磁器のαを変化させたときの結晶構造の変化をX線回折により解析した結果の2θ=32〜34°の部分である。図2のX線解析と同様の結果であり、α=0.405〜0.498の範囲においては、正方晶と斜方晶とが混在しており、これは組成相境界MPBである。このような傾向はYおよび主成分の組成比からずれたBiを含有する圧電磁器でも同様であり、いずれの元素を含有す場合も0.405≦α≦0.498の組成範囲は、動的圧電定数d33の温度変化率が約0近傍まで小さくなるとともに、大きな動的圧電定数d33が得られる。
ここで本願の圧電磁器の焼成温度について説明する。本願の圧電磁器の最適焼成温度は、含まれる元素とその割合によって変わるが、1050〜1250℃程度の範囲内の温度になる。最適焼成温度よりも高い温度で焼成すると、析出する異相の割合が増え、圧電特性が低くなったり、体積固有抵抗が低くなるため分極処理ができなくなったり、焼成時に焼成治具に固着したりする。また、最適焼成温度よりも低い温度で焼成すると、十分焼成収縮せず寸法が大きくなったり、圧電特性が低くなったりする。
具体的に組成式をBiTi12・α[(1−β)Sr0.5Ba0.5TiO・βBiFeO]で表したとき、α=0.47、β=0.1である主成分100質量部に対してランタノイドであるLaをLa換算で0.5質量部含有する圧電磁器A(後述の実施例における試料No.7)と、主成分がこれと同一で添加物として、Ln、Y、BiおよびCuを含まない本発明の範囲外の圧電磁器B(後述の実施例における試料No.51)とを比較する。どちらの圧電磁器も最適焼成温度は約1150℃である。
1150℃前後の焼成温度で焼成した際の、焼成温度と圧電磁器の動的圧電定数d33の関係を図4(a)に、焼成温度と圧電磁器の寸法の関係を図4(b)に示す。動的圧電定数d33は最適焼成温度より低い温度においては、温度が高くなるに従って焼結が進み、動的圧電定数d33が高くなっていく。最適焼成温度を超えると動的圧電定数d33は徐々に低くなり、焼成温度が1160℃を超えると圧電磁器内に大きなボイドが発生し、動的圧電定数d33圧はさらに低くなっていく。主成分に対する添加成分としてLn、Y、BiおよびCuを含まない圧電磁器Bでは、焼成温度の変化に対して動的圧電定数d33の変化が大きく、最適焼成温度で焼成したときの動的圧電定数d33に対して動的圧電定数d33の低下が5%以内になる温度範囲は20℃程度しかない。これに対して主成分100質量部に対してLaをLa換算で0.5質量部含有する圧電磁器Aでは、動的圧電定数d33が焼成温度の変化によってほとんど変化しない、温度依存性のない温度範囲が約40℃ある。また、最適焼成温度で焼成したときの動的圧電定数d33に対して動的圧電定数d33の低下が5%以内になる温度範囲は約60℃と広くなる。
また、圧電磁器Bでは、1150℃の焼成温度の焼成した圧電磁器に対して寸法精度が±1.5%以内である温度範囲は15℃程度しかしかない。圧電磁器Aでは、約40℃の温度範囲で寸法の焼成温度に対する依存性が非常に少なくなっている。また、寸法精度が±1.5%以内となる範囲も約50℃と広くなっている。
このようにLaを含有することにより、安定した特性の得られる焼成温度範囲を広くすることができる。ここで、安定焼成温度範囲として、最適焼成温度で焼成した圧電磁器に対して動的圧電定数d33の低下が5%以内、寸法の差が±1.5%以内となる温度範囲を考える。寸法は焼成温度が最適焼成温度より高くなっても大きくは変動しないが、最適焼成温度より低くなったときの変化は大きい。このため、温度の上限は動的圧電定数d33の低下によって決まり、温度の下限は寸法により決まる傾向があり、上述の例では、圧電磁器Aの安定焼成温度範囲は50℃、圧電磁器Bの安定焼成温度範囲は15℃である。
ビスマス層状化合物である主成分に100質量部に対して含まれるLn、Y、BiおよびCuは、酸化物(Ln、Y、Bi、CuO)換算の合量で0.1〜1質量部である。0.1質量部より少ないと、安定焼成温度範囲の改善がほとんどみられない。また、1質量部よりも多いと異相の析出が多くなり動的圧電定数d33が低くなる。より好ましい範囲は、安定焼成温度範囲の改善効果が高く、焼結性が良くなることにより、動的圧電定数d33も高くなる0.5〜0.8質量部である。
Ln(ランタノイド)は具体的には、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選ばれる少なくとも1種である。また、ランタノイドの中では、最適焼成温度範囲が広がる点でLaおよびNdが好ましく、特に動的圧電定数d33が高くなる点でLaが好ましい。
また、Ln、Y、BiおよびCuの中では、安定焼成温度範囲が広くなる点でYが好ましい。また、動的圧電定数d33 高くできる点でCuが好ましい
M1が、Sr、BaおよびCaのうち少なくとも1種である場合、M1に占めるSrのモル比が高いと、動的圧電定数d33を大きくできるので好ましい。M1に占めるCaのモル比が高いと、温度に対する動的圧電定数d33の変化のリニアリティが良くなるので好ましい。また、M1に占めるBaおよびCaの合量のモル比が高いと動的圧電定数d33の温度依存性が低くなるため好ましい。
また、M1が(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)のうち少なくとも1種を含む場合、圧電磁器の焼結性が良くなる。焼結性は、M1に占める(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)の合量のモル比が高いほど。良くなる。(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)はそれぞれ平均して2価であるため、Sr、Ba、Caと任意の比率で混合して用いることができる。
M2M3OのM2はBi、Na、KおよびLiから選ばれる少なくとも1種、M3はFeおよびNbから選ばれる少なくとも1種である。このようなM2M3Oの置換量βを0≦β≦0.3としたのは、βが0.3より多いと動的圧電定数d33が低くなるからである。M2M3Oは安定した寸法(収縮率)の得られる焼成温度の範囲(安定焼成温度範囲)を広げる効果がある。0.1≦β≦0.3とすることにより、動的圧電定数d33をあまり低下させることなく、β=0の場合と比較して安定焼成温度範囲を約10℃広くすることができる。安定焼成温度範囲を広げる点で、M2M3OはBiFeOであるのが特に好ましい。
以上のような組成比を選択することにより、大きな動的圧電定数d33を有するとともに、高耐熱性を有し、25℃から−40および150℃までの動的圧電定数d33の温度変化が少ないビスマス層状構造を持つ非鉛圧電磁器を得ることができる。
本発明の圧電磁器は、主成分の組成式がBiTi12・α[(1−β)M1TiO+βM2M3O]で表され、主結晶相としてはビスマス層状化合物からなるものである。これは、基本的には、BiTi12・αM1TiOで表されるビスマス層状化合物であるか、このビスマス層状化合物の疑ペロブスカイト層を構成するM1の一部がM2に、Tiの一部がM3に置換されたものであると考えられる。言い換えると、本発明の圧電磁器は、(Bi2+(αm−1β3m+12−で書き表されるビスマス層状構造物の一般式において、αサイトとβサイトおよび酸素サイトに配位する構成元素の種類と量を調整することで、m=4の場合に生じる正方晶とm=3の場合に生じる斜方晶とが混在する組成相境界MPB(Morphotoropic Phase Boundary)にあるビスマス層状構造物となる。その結果、PZTでも知られているようなMPB組成近傍における特徴的な圧電特性を、ビスマス層状化合物においても実現することができる。
また、含有しているLn、Y、BiおよびCuから選ばれる少なくとも1種は、主結晶相中に固溶し、また、一部はLn、Y、BiおよびCuから選ばれる少なくとも1種を含む化合物の結晶として粒界に析出する場合があり、さらに、その他の結晶相として、パイロクロア相、ペロブスカイト相、構造の異なるビスマス層状化合物が存在することもあるが、微量であれば特性上問題ない。
本発明の圧電磁器は、粉砕時のZrOボールからZr等が混入する場合もあるが、微量であれば特性上問題はない。
電磁器は、例えば、原料として、SrCO、BaCO、CaCO、Nb、Bi、TiO、NaCO、KCO、LiCO、Fe、Ln、YおよびCuOからなる各種酸化物あるいはその塩を用いることができ
る。原料はこれに限定されず、焼成により酸化物を生成する炭酸塩、硝酸塩等の金属塩を用いても良い。なお、Ln(ランタノイド)は具体的には、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選ばれる少なくとも1種であ
これらの原料をBiTi12・α[(1−β)M1TiO・βM2M3O]と表したとき、0.405≦α≦0.498、0≦β≦0.3を満足するとともに、M1が、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)から選ばれる少なくとも1種であり、M2が、Bi、Na、KおよびLiから選ばれる少なくとも1種であり、M3が、FeおよびNbから選ばれる少なくとも1種であるビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、Ln(ランタノイド)、Y、BiおよびCuから選ばれる少なくとも1種を酸化物換算の合計で0.1〜1質量部含有するように秤量した。秤量し混合した粉末を、平均粒度分布(D50)が0.5〜1μmの範囲になるように粉砕し、この混合物を800〜1050℃で仮焼し、所定の有機バインダを加え湿式混合し造粒する。このようにして得られた粉体を、公知のプレス成形等により所定形状に成形し、大気中等の酸化性雰囲気において1050〜1250℃の温度範囲で2〜5時間焼成し、本発明の圧電磁器が得られる。
本発明の圧電磁器は、図5に示すような圧力センサ用の圧電磁器として最適であるが、それ以外の圧電共振子、超音波振動子、超音波モータおよび加速度センサ、ノッキングセンサ、AEセンサ等の圧電センサなどに使用できる。
図5に本発明の一実施形態である圧電素子5を示す。圧電素子5は、上述の圧電磁器のからなる円柱状の基体1の対向する一対の表面に電極2、3を形成して構成されている。図5では、電極2、3は、基体1の上下面である円形の面全体に形成されている。また、分極は基体1の厚み方向に施してある。このような圧電素子5は、自動車のエンジンシリンダ内の圧力を直接検出する用途に用いた場合、例えば、150℃の高温下で500Nの高荷重が印加されても、破壊されることなく安定して動作する。シミュレーションによる応力解析によれば、500Nの荷重が印加された場合でも、圧電素子5に発生する最大主応力は、基体1を構成する圧電磁器の機械的強度の約1/10以下であった。
まず、出発原料として純度99.9%のSrCO粉末、BaCO粉末、CaCO粉末、Bi粉末、TiO粉末、NaCO粉末、KCO粉末、LiCO粉末、Fe粉末およびNb粉末を、モル比による組成式をBiTi12・α[(1−β)M1TiO・βM2M3O]と表したとき、M1、M2、M3、α、βが表1および表2に示す元素、割合となるように、秤量した。
この主成分100重量部に対してLn粉末、Y粉末、Bi粉末およびCuO粉末を表1および表2に示す重量部となるように秤量して、混合し、純度99.9%のジルコニアボール、イソプロピルアルコール(IPA)と共に500mlの樹脂製ポットに投入し、その樹脂製ポットを回転台に置き16時間混合した。
混合後のスラリーを大気中で乾燥し、#40メッシュを通し、その後、大気中950℃、3時間保持して仮焼し、この合成粉末を純度99.9%のZrOボールと水あるいはイソプロピルアルコール(IPA)と共に500mlの樹脂製ポットに投入し、その樹脂製ポットを回転台に置き20時間粉砕をした。
この粉砕した粉末に適量の有機バインダを添加して造粒し、金型プレスで150MPaの荷重で円柱形状の成型体を作製した後、脱バインダ処理を行ない、次いで大気雰囲気中にて、1050〜1250℃の間で各試料の動的圧電定数d33がもっとも高くなるピーク温度で、3時間の条件で焼成を行ない、直径4mm、厚み2mmの円板状の圧電磁器を得た。また、前述の動的圧電定数d33がもっとも高くなる焼成ピーク温度に対して−50〜+20℃の範囲で5℃の間隔で焼成ピーク温度を変えて焼成を行なった圧電磁器も作製した。
その後、円柱状の圧電磁器の両主面に、Agの電極を焼付けし、200℃の条件下で、厚み方向に5kV/mm以上のDC電圧を印加して分極処理を施した後、300℃で24時間の熱エージング処理を行なった。
その後、図6に示す装置を用いて、室温(25℃)での動的圧電定数d33を評価した。具体的には、まず、圧電素子5に250Nのオフセット荷重を印加した。その後、圧電素子5に加える荷重を300Nまで増加させた後、再度250Nまで戻すことを繰り返し、圧電素子5から出力される電荷量の変化をチャージアンプで測定した。この際の荷重は1Hzの三角波で与えた。そして、動的圧電定数d33=出力電荷/荷重の変化量(単位pC/N)の式により動的圧電定数d33を求めた。同様にして、−40℃および150℃における動的圧電定数d33を測定し、動的圧電定数d33の温度変化率を求めた。室温からT℃までの動的圧電定数d33の温度変化率は、室温(25℃)における動的圧電定数d33およびT℃における動的圧電定数d33から、(T℃における動的圧電定数d33−室温(25℃)における動的圧電定数d33)/(室温(25℃)における動的圧電定数d33)の式より求めた。
また、体積固有抵抗をJIS−C2141に準拠して評価した。体積固有抵抗は1×10Ω・m以上を良好とし、表1および表2では○、1×10Ω・m未満を不良とし、表1および表2では×として示した。150℃の高温での検出感度を保つためには、圧電素子5の体積固有抵抗が1×10Ω・m以上であることが望まれるからである。体積固有抵抗がこれより高いことにより、出力された電荷が圧電素子5で消費されることが抑制され、信号処理回路に供給されることから、感度ばらつきが少なく、感度低下やノイズ源となってセンサ特性の性能劣化をもたらすことがなくなる。
各組成について、焼成のピーク温度を変えた中でもっとも動的圧電定数d33が高くなった試料の結果を表1および表2に示した。さらに、もっとも動的圧電定数d33の高かった温度の試料の平均の寸法と比較して、焼成のピーク温度を変更した試料の平均の動的圧電定数d33の低下が5%以内であるとともに、試料の平均の寸法が±1.5%以内となった温度範囲を安定焼成温度範囲として、表1および表2に示した。この温度範囲が広いと、製造時に焼成温度がばらついた際にも、寸法精度の良い、安定した圧電特性の圧電磁器を作製できる。なお、寸法は円柱状の圧電磁器の直径で評価した。
Figure 0005072760
Figure 0005072760
表1および表2から明らかなように、本発明の範囲内の圧電磁器である、組成式をBiTi12・α[(1−β)M1TiO・βM2M3O]と表したとき、0.405≦α≦0.498、0≦β≦0.3を満足するとともに、M1が、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)から選ばれる少なくとも1種であり、M2が、Bi、Na、KおよびLiから選ばれる少なくとも1種であり、M3が、FeおよびNbから選ばれる少なくとも1種であるビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、およびCuから選ばれる少なくとも1種を酸化物(Y 、CuO)換算の合計で0.1〜1質量部含有する試料No.27〜29、35〜37、39〜4は、動的圧電定数d33が15.pC/N以上と高い値が得られるとともに、25℃の動的圧電定数d33に対する−40℃および150℃の動的圧電定数d33の変化率が±4.8%以内と温度依存性が低いものとなり、さらに安定焼成温度範囲が30℃以上となった。
図1は、試料No.1(α=0)、No.7(α=0.47)およびNo.11(α=1)のX線回折図である。X線回折図からビスマス層状化合物を主結晶相としていることが分かる。これは、本発明の範囲内の他の圧電磁器でも同様である。また、X線回折図からビスマス層状化合物が主結晶相として認められることから、M2M3Oのペロブスカイト化合物はビスマス層状化合物の疑ペロブスカイト層に取りこまれて、ビスマス層状化合物の一部になったものと考えられる。
また、作製した試料を蛍光X線分析装置で組成分析した。その結果、各試料の圧電磁器の組成は、調合した原料組成と同じ割合であった。これは、検出された元素のうち、Bi、Ti、Sr、Ba、Ca、Na、Li、K、Nb、Fe、Ln、YおよびCuの割合を、組成式BiTi12・α[(1−β)M1TiO+βM2M3O](ただし、M1はSr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)から選ばれる少なくとも1種、M2はBi、Na、KおよびLiから選ばれる少なくとも1種、M3はFeおよびNbから選ばれる少なくとも1種)に当てはめてαおよびβを算出するとともに、前記組成式の成分の量とLn、Y、BiおよびCuの量の比からLn、Y、BiおよびCuOが前記組成式の成分100重量に対して何重量部に当たるかを算出して確認した。
電磁器(試料No.7、α=0.47)と他の圧電磁器(試料No.1および11、α=0および1)のX線回折図である。 図1のX線回折図のX部を拡大した図である。 電磁器(試料No.31、α=0.47)と他の圧電磁器(α=0および1)のX線回折図である。 (a)電磁器A(試料No.7)と他の圧電磁器B(試料No.51)の焼成温度と動的圧電定数d33の関係を示す図である。(b)同圧電磁器の焼成温度と寸法の関係を示す図である。 本発明の圧電素子の一実施形態である圧力センサである。 本発明で用いた動的圧電定数d33の評価装置を説明する説明図である。
符号の説明
l・・・基体
2、3・・・電極
4・・・分極方向
5・・・圧電素子

Claims (2)

  1. 組成式をBiTi12・α[(1−β)M1TiO・βM2M3O]と表したとき、0.405≦α≦0.498、0≦β≦0.3を満足するとともに、M1が、Sr、Ba、Ca、(Bi0.5Na0.5)、(Bi0.5Li0.5)および(Bi0.50.5)から選ばれる少なくとも1種であり、M2が、Bi、Na、KおよびLiから選ばれる少なくとも1種であり、M3が、FeおよびNbから選ばれる少なくとも1種であるビスマス層状化合物の主成分100質量部に対して、およびCuから選ばれる少なくとも1種を酸化物(Y 、CuO)換算の合計で0.1〜1質量部含有することを特徴とする圧電磁器。
  2. 請求項1記載の圧電磁器からなる基体の対向する一対の表面に電極を備えることを特徴とする圧電素子。
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