以下、本発明の実施形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図13は本発明の第1実施例を示すもので、図1はハイブリッド車両用のマニュアルトランスミッションの縦断面図(図5の1−1線断面図)、図2は図1のA部拡大図、図3は図1のB部拡大図、図4は図1のC部拡大図。図5は図1の5−5線断面図、図6はマニュアルトランスミッションのスケルトン図、図7は変速機構の断面図、図8は図7の8−8線矢視図、図9はシフト操作およびセレクト操作の制御系のブロック図、図10はマニュアルトランスミッションをニュートラルにする作用を説明するフローチャート、図11はシフトアクチュエータの誤作動時の作用説明図、図12はセレクト操作の完了時の作用説明図、図13はシフト操作の完了時の作用説明図である。
図1〜図6に示すように、ハイブリッド車両用のマニュアルトランスミッションTは、右側の第1ケーシング11および左側の第2ケーシング12を車体前後方向に延びる割り面で結合したミッションケース13を備えており、第1ケーシング11の右側面の開口部11aにエンジンEが結合される。第1、第2ケーシング11,12には、ボールベアリング14,15を介してメインシャフトMSが支持されるとともに、ローラベアリング16およびボールベアリング17を介してカウンタシャフトCSが支持され、更にメインシャフトMSおよびカウンタシャフトCSよりも短いリバースカウンタシャフトRCSが支持される。メインシャフトMSの右端はクラッチCを介してエンジンEのクランクシャフト18に接続される。
モータMは本体ケーシング19aと、その前面に結合されたフロントカバー12aと、その後面に結合されたリヤカバー20とで構成されたモータケース19を備えており、フロントカバー12aは第2ケーシング12と一体に形成される。従って、フロントカバー12aはミッションケース13の一部ではなく、モータケース19の一部を構成する。モータ出力軸MOSは第1、第2ケーシング11,12にボールベアリング21,22を介して支持されており、そのモータ軸70に固定されたロータ23がモータケース19の内周面に固定されたステータ24に対向する。
メインシャフトMSには、メイン1速ギヤ25、メイン2速ギヤ26およびメインリバースギヤ27が固設され、メイン3速ギヤ28、メイン4速ギヤ29、メイン5速ギヤ30およびメイン6速ギヤ31がそれぞれニードルベアリング32〜35を介して相対回転自在に支持される。またカウンタシャフトCSには、カウンタ1速ギヤ36およびカウンタ2速ギヤ37がそれぞれニードルベアリング38,39を介して相対回転自在に支持され、カウンタ3速ギヤ40、カウンタ4速ギヤ41、カウンタ5速ギヤ42、カウンタ6速ギヤ43、カウンタリバースギヤ44およびファイナルドライブギヤ45が固設される。
メイン1速ギヤ25、メイン2速ギヤ26、メイン3速ギヤ28、メイン4速ギヤ29、メイン5速ギヤ30およびメイン6速ギヤ31は、それぞれカウンタ1速ギヤ36、カウンタ2速ギヤ37、カウンタ3速ギヤ40、カウンタ4速ギヤ41、カウンタ5速ギヤ42およびカウンタ6速ギヤ43に噛合する。カウンタ1速ギヤ36およびカウンタ2速ギヤ37は第1シンクロメッシュ機構46を介してカウンタシャフトCSに選択的に結合可能であり、メイン3速ギヤ28およびメイン4速ギヤ29は第2シンクロメッシュ機構47を介してメインシャフトMSに選択的に結合可能であり、メイン5速ギヤ30およびメイン6速ギヤ31は第3シンクロメッシュ機構48を介してメインシャフトMSに選択的に結合可能である。
リバースカウンタシャフトRCSには、リバース第1ギヤ49およびリバース第2ギヤ50がそれぞれニードルベアリング51,52を介して相対回転自在に支持されており、リバース第1ギヤ49はメインリバースギヤ27に常時噛合し、リバース第2ギヤ50はカウンタリバースギヤ44に常時噛合する。リバース第1ギヤ49およびリバース第2ギヤ50は第4シンクロメッシュ機構53を介して相互に結合可能である。
モータ出力軸MOSには、リバース第2ギヤ50に常時噛合するモータ出力ギヤ54がニードルベアリング55を介して相対回転自在に支持されており、このモータ出力ギヤ54は第5シンクロメッシュ機構56を介してモータ出力軸MOSに結合可能である。
尚、本実施例のマニュアルトランスミッションTはオートマチック作動するものであり、クラッチCおよび第1〜第5シンクロメッシュ機構46,47,48,53,56は、ドライバーによるマニュアル操作ではなくアクチュエータによるオートマチック操作で作動するようになっている。
ディファレンシャルギヤDのディファレンシャルケース57が第1ケーシング11および第2ケーシング12にボールベアリング58,59を介して支持されており、ディファレンシャルケース57に設けたファイナルドリブンギヤ60がカウンタシャフトCSのファイナルドライブギヤ45に噛合する。ディファレンシャルケース57に設けたピニオンシャフト61に2個のディファレンシャルピニオン62,62が回転自在に支持されており、これらのディファレンシャルピニオン62,62に2個のディファレンシャルサイドギヤ63,63が噛合する。各々のディファレンシャルサイドギヤ63,63に結合されてディファレンシャルケース57に相対回転自在に支持された左右の車軸64,64が、左右の駆動輪W,Wにそれぞれ接続される。
図5はマニュアルトランスミッションTの第2ケーシング12を第1ケーシング11との割り面の近傍において切断した断面図であって、エンジンEに接続されたメインシャフトMSの前下方にリバースカウンタシャフトRCSが配置され、その前下方にモータ出力軸MOSが配置される。またメインシャフトMSの後下方にカウンタシャフトCSが配置され、その後下方にディファレンシャルギヤDが配置される。第2ケーシング12の下部には、その前壁からカウンタシャフトCSの下方まで延びるS字状の隔壁12bが設けられており、その隔壁12bの前部にモータ出力軸MOSおよびモータ出力ギヤ54の下方を囲むようにオイル溜まり65が形成される。
次に、図7および図8に基づいて変速機構71の構造を説明する。
ミッションケース13の上部に皿状の凹部13aが形成されており、この凹部13aの開口を覆うように図示せぬボルトでカバー部材72が結合されており、カバー部材72の中央に形成したガイド孔72aにシフトセレクトシャフト73の上部が軸線Lまわりに回転自在に、かつ軸線L方向に摺動自在に支持される。
カバー部材72からシール部材74を介して外部に延びるシフトセレクトシャフト73の上端に切欠73aが形成されており、この切欠73aにセレクトレバー75の先端が係合する。セレクトレバー75の基端が固定された回転軸76はセレクトアクチュエータA1に接続されて回転し、シフトセレクトシャフト73を1速−2速セレクト位置Psel 1,2、3速−4速セレクト位置Psel 3,4、5速−6速セレクト位置Psel 5,6およびリバースセレクト位置Psel Rの何れかに停止させる。
シフトセレクトシャフト73の切欠73aの下方に固定されたシフトレバー77はシフトアクチュエータA2に接続されており、1速変速段、3速変速段および5速変速段を確立するときには、ニュートラル位置Psft Nからロー位置Psft Lowに揺動し、2速変速段、4速変速段、6速変速段およびリバース変速段を確立するときには、ニュートラル位置Psft Nからハイ位置Psft Highに揺動する。
ミッションケース13の内部に延びるシフトセレクトシャフト73にシフトアーム78が固定ピン79で固定されるとともに、そのシフトアーム78を上下から挟むようにインターロックプレート80が相対回転自在に支持される。インターロックプレート80は上下一対のロック爪80a,80bを備えており、これら一対のロック爪80a,80bは前記シフトアーム78の先端に形成した駆動部78aの上下にそれぞれ臨んでいる。またインターロックプレート80はシフトセレクトシャフト73と平行に延びるガイド溝80cを備えており、ミッションケース13に固定した回り止めピン81が前記ガイド溝80cに係合する。
従って、シフトセレクトシャフト73が上下動するとシフトアーム78およびインターロックプレート80は一体で昇降するが、シフトセレクトシャフト73が回転するとシフトアーム78は該シフトセレクトシャフト73と一体で回転するのに対し、インターロックプレート80はガイド溝80cと回り止めピン81との係合によって回転を規制される。
1速変速段および2速変速段を確立するための第1シンクロメッシュ機構46を作動させる1速−2速シフトピース82と、3速変速段および4速変速段を確立するための第2シンクロメッシュ機構47を作動させる3速−4速シフトピース83と、5速変速段および6速変速段を確立するための第3シンクロメッシュ機構48を作動させる5速−6速シフトピース84と、リバース変速段を確立するための第4シンクロメッシュ機構53を作動させるリバースシフトピース85とが、シフトセレクトシャフト73の軸線Lに沿う方向に積み重なるように配置されており、それらの先端の二股状になった切欠82a,83a,84a,85aは、シフトアーム78の先端に設けた駆動部78aに選択的に係合し得るように上下に整列する。
しかして、シフトセレクトシャフト73を1速−2速セレクト位置Psel 1,2に移動させると、そのシフトアーム78の駆動部78aが1速−2速シフトピース82の切欠82aに係合するため、シフトセレクトシャフト73をニュートラル位置Psft Nからロー位置Psft Lowに回転させることによって1速−2速シフトピース82を1速位置に駆動することができ、逆にシフトセレクトシャフト73をニュートラル位置Psft Nからハイ位置Psft Highに回転させることによって1速−2速シフトピース82を2速位置に駆動することができる。
またシフトセレクトシャフト73を3速−4速セレクト位置Psel 3,4に移動させると、そのシフトアーム78の駆動部78aが3速−4速シフトピース83の切欠83aに係合するため、シフトセレクトシャフト73をニュートラル位置Psft Nからロー位置Psft Lowに回転させることによって3速−4速シフトピース83を3速位置に駆動することができ、逆にシフトセレクトシャフト73をニュートラル位置Psft Nからハイ位置Psft Highに回転させることによって3速−4速シフトピース83を4速位置に駆動することができる。
またシフトセレクトシャフト73を5速−6速セレクト位置Psel 5,6に移動させると、そのシフトアーム78の駆動部78aが5速−6速シフトピース84の切欠84aに係合するため、シフトセレクトシャフト73をニュートラル位置Psft Nからロー位置Psft Lowに回転させることによって5速−6速シフトピース84を5速位置に駆動することができ、逆にシフトセレクトシャフト73をニュートラル位置Psft Nからハイ位置Psft Highに回転させることによって5速−6速シフトピース84を6速位置に駆動することができる。
またシフトセレクトシャフト73をリバースセレクト位置Psel Rに移動させると、そのシフトアーム78の駆動部78aがリバースシフトピース85の切欠85aに係合するため、シフトセレクトシャフト73をニュートラル位置Psft Nからハイ位置Psft Highに回転させることによってリバースシフトピース85をリバース位置に駆動することができる。
尚、第5シンクロメッシュ機構56は図示せぬアクチュエータにより独立して駆動される。
次に、上記構成を備えた本発明の第1実施例の作用を説明する。
エンジンEによる前進走行を行うとき、第5シンクロメッシュ機構56によりモータ出力ギヤ54をモータ出力軸MOSから切り離して駆動力がモータMに逆伝達されないようにするとともに、第4シンクロメッシュ機構53によりリバース第1ギヤ49およびリバース第2ギヤ50の結合を解除しておく。
第1シンクロメッシュ機構46でカウンタ1速ギヤ36をカウンタシャフトCSに結合すると1速変速段が確立し、エンジンEにクラッチCを介して接続されたメインシャフトMSの回転は、メイン1速ギヤ25、カウンタ1速ギヤ36、カウンタシャフトCS、ファイナルドライブギヤ45、ファイナルドリブンギヤ60、ディファレンシャルギヤDおよび車軸64,64を介して駆動輪W,Wに伝達される。第1シンクロメッシュ機構46でカウンタ2速ギヤ37をカウンタシャフトCSに結合すると2速変速段が確立し、メインシャフトMSの回転は、メイン2速ギヤ26からカウンタ2速ギヤ37に伝達されて駆動輪W,Wが駆動される。
第2シンクロメッシュ機構47でメイン3速ギヤ28をメインシャフトMSに結合すると3速変速段が確立し、メインシャフトMSの回転は、メイン3速ギヤ28からカウンタ3速ギヤ40に伝達されて駆動輪W,Wが駆動される。第2シンクロメッシュ機構47でメイン4速ギヤ29をメインシャフトMSに結合すると4速変速段が確立し、メインシャフトMSの回転は、メイン4速ギヤ29からカウンタ4速ギヤ41に伝達されて駆動輪W,Wが駆動される。第3シンクロメッシュ機構48でメイン5速ギヤ30をメインシャフトMSに結合すると5速変速段が確立し、メインシャフトMSの回転は、メイン5速ギヤ30からカウンタ5速ギヤ42に伝達されて駆動輪W,Wが駆動される。第3シンクロメッシュ機構48でメイン6速ギヤ31をメインシャフトMSに結合すると6速変速段が確立し、メインシャフトMSの回転は、メイン6速ギヤ31からカウンタ6速ギヤ43に伝達されて駆動輪W,Wが駆動される。
尚、駆動輪W,Wに接続されたカウンタシャフトCSの回転は、カウンタリバースギヤ44およびリバース第2ギヤ50を介してモータ出力ギヤ54に常時伝達されるが、第5シンクロメッシュ機構56によりモータ出力ギヤ54をモータ出力軸MOSから切り離すことで、高速走行時にモータMが外力で強制的に高速回転させられて耐久性が低下したり、モータMのフリクションによりエンジンEの燃料消費量が増加したりするのを防止することができる。
但し、車両の減速時であり、かつモータMが外力で過回転になる虞のない場合には、第5シンクロメッシュ機構56によりモータ出力ギヤ54をモータ出力軸MOSに結合することで、モータMをジェネレータとして機能させて回生制動を行うことができる。
エンジンEによる後進走行を行うとき、第4シンクロメッシュ機構53でリバース第1ギヤ49およびリバース第2ギヤ50を一体に結合して後進変速段を確立する。その結果、エンジンEにクラッチCを介して接続されたメインシャフトMSの回転は、メインリバースギヤ27、リバース第1ギヤ49、リバース第2ギヤ50、カウンタリバースギヤ44、カウンタシャフトCS、ファイナルドライブギヤ45、ファイナルドリブンギヤ60、ディファレンシャルギヤDおよび車軸64,64を介して駆動輪W,Wに伝達される。
上述したエンジンEによる前進走行中あるいは後進走行中に、第5シンクロメッシュ機構56でモータ出力ギヤ54をモータ出力軸MOSに結合した状態でモータMを駆動すると、モータMの駆動力をモータ出力ギヤ54、リバース第2ギヤ50およびカウンタリバースギヤ44を介してカウンタシャフトCSに伝達することで、エンジンEの駆動力をモータMの駆動力でアシストすることができる。但し、前進走行中であるか後進走行中であるかに応じてモータMの駆動方向は逆になる。
エンジンEの駆動力を使用せずにモータMの駆動力だけで車両を前進走行あるいは後進走行させる場合には、第5シンクロメッシュ機構56でモータ出力ギヤ54をモータ出力軸MOSに結合し、かつ第4シンクロメッシュ機構53でリバース第1ギヤ49およびリバース第2ギヤ50の結合を解除した状態でモータMを正転あるいは逆転駆動する。これにより、モータMの駆動力がモータ出力ギヤ54、リバース第2ギヤ50およびカウンタリバースギヤ44、カウンタシャフトCS、ファイナルドライブギヤ45、ファイナルドリブンギヤ60、ディファレンシャルギヤDおよび車軸64,64を介して駆動輪W,Wに伝達される。
モータMの駆動力を駆動輪W,Wに伝達する際に、モータ出力軸MOSに結合されたモータ出力ギヤ54の回転を第2リバースギヤ50を介してカウンタシャフトCSに伝達するので、モータMからカウンタシャフトCSへの駆動力の伝達経路の減速比を既存の第2リバースギヤ50およびカウンタリバースギヤ44を利用して稼ぐことができ、カウンタシャフトCS上に特別の減速用ギヤを設ける必要がなくして部品点数を削減するとともに、カウンタシャフトCSの長さが増加するのを防止してマニュアルトランスミッションTの軸方向寸法を小型化することができる。しかもカウンタシャフトCSに比べて短いリバースカウンタシャフトRCSにリバース変速段を確立するための第4シンクロメッシュ機構53を設けたので、カウンタシャフトCS上にシンクロメッシュ機構を配置する場合に比べてマニュアルトランスミッションTの軸方向寸法を小型化することができる。
次に、セレクトアクチュエータA1およびシフトアクチュエータA2の制御について説明する。
図9に示すように、シフト位置センサで検出したシフトセレクトシャフト73の実シフト位置Psftと、マニュアルトランスミッションTを制御する電子制御ユニットから指令される目標シフト位置Psft cmdとをシフト方向位置制御コントローラで比較し、その偏差に応じたシフト制御電圧V sftがシフトアクチュエータA2に出力される。このシフト制御電圧V sftでシフトアクチュエータA2が作動してシフトセレクトシャフト73がシフト方向に移動すると、その位置を前記シフト位置センサで検出してシフト方向位置制御コントローラにフィードバックすることで、シフトセレクトシャフト73のシフト方向の実位置が目標位置に収束するように制御される。
同様に、セレクト位置センサで検出したシフトセレクトシャフト73の実セレクト位置Pselと、マニュアルトランスミッションTを制御する電子制御ユニットから指令される目標セレクト位置Psel cmdとをセレクト方向位置制御コントローラで比較し、その偏差に応じたセレクト制御電圧V selがセレクトアクチュエータA1に出力される。このセレクト制御電圧V selでセレクトアクチュエータA1が作動してシフトセレクトシャフト73がセレクト方向に移動すると、その位置を前記セレクト位置センサで検出してセレクト方向位置制御コントローラにフィードバックすることで、シフトセレクトシャフト73のセレクト方向の実位置が目標位置に収束するように制御される。
図10のフローチャートはマニュアルトランスミッションTをニュートラルにするときの作用を示すもので、先ずステップS1でニュートラル指令が出力されると、ステップS2で目標シフト位置Psft cmdをニュートラル位置Psft Nとし、ステップS3でシフト制御電圧V sftを算出することでシフトアクチュエータA2を駆動してシフトセレクトシャフト73をニュートラル位置Psft Nに向けて駆動する。その結果、ステップS4で目標シフト位置Psft cmdと実シフト位置Psftとの偏差の絶対値が規定値以下になると、シフトセレクトシャフト73がニュートラル位置Psft Nに復帰したと判断し、続くステップS5で目標セレクト位置Psel cmdを二つのセレクト位置の中間位置、例えば3速−4速セレクト位置Psel 3,4および5速−6速セレクト位置Psel 5,6の中間位置に設定し、ステップS6でセレクト制御電圧V selを算出することでセレクトアクチュエータA1を駆動してシフトセレクトシャフト73を前記中間位置に向けて駆動する。その結果、ステップS7で目標セレクト位置Psel cmdと実セレクト位置Pselとの偏差の絶対値が規定値以下になると、シフトセレクトシャフト73が前記中間位置達したと判断し、続くステップS8でニュートラル指令を解除する。
図8には、上記制御によりシフトセレクトシャフト73が(つまりシフトアーム78の先端の駆動部78aが)3速−4速セレクト位置Psel 3,4および5速−6速セレクト位置Psel 5,6中間位置に待機する状態が示されている。
この状態から、図11に示すように、シフトアクチュエータA2が誤作動してシフトアーム78がニュートラル位置Psft Nからロー位置Psft Lowに移動しようとしても、そのシフトアーム78が3速−4速シフトピース83および5速−6速シフトピース84の両方に係合して図中右方向に押圧するため、5速−6速シフトピース84の切欠84aがインターロックプレート80の上側のロック爪80aにa点で干渉し、意図せぬ3速変速段あるいは5速変速段が確立するのを確実に防止することができる。
逆に、シフトアクチュエータA2が誤作動してシフトアーム78がニュートラル位置Psft Nからハイ位置Psft Highに移動しようとしても、そのシフトアーム78が3速−4速シフトピース83および5速−6速シフトピース84の両方に係合して図中左方向に押圧するため、3速−4速シフトピース83の切欠83aがインターロックプレート80の下側のロック爪80bにb点で干渉し、意図せぬ4速変速段あるいは6速変速段が確立するのを確実に防止することができる。
セレクトアクチュエータA1およびシフトアクチュエータA2が正常に機能し、例えば3速変速段あるいは4速変速段を確立する場合の作用は以下のようになる。
先ずセレクトアクチュエータA1が作動してシフトセレクトシャフト73を図8の中間位置から図12の3速−4速セレクト位置Psel 3,4に移動させると、シフトアーム78の駆動部78aが3速−4速シフトピース83の切欠83aに正しく係合し、この状態で、図13に示すように、シフトアクチュエータA2が作動してシフトアーム78がニュートラル位置Psft Nからロー位置Psft Lowに移動すると3速−4速シフトピース83が右側に揺動して3速変速段が確立し、逆にシフトアーム78がニュートラル位置Psft Nからハイ位置Psft Higに移動すると3速−4速シフトピース83が左側に揺動して4速変速段が確立する。
尚、上述した第1実施例ではニュートラル時にシフトセレクトシャフト73を3速−4速セレクト位置Psel 3,4および5速−6速セレクト位置Psel 5,6の中間位置に待機させているが、1速−2速セレクト位置Psel 1,2および3速−4速セレクト位置Psel 3,4の中間位置に、あるいは5速−6速セレクト位置Psel 5,6およびリバースセレクト位置Psel Rの中間位置に待機させても良い。特に、請求項2の発明のようにニュートラル時におけるシフトセレクトシャフト73の待機位置を、そのときの車速に応じて変更すれば、格別の作用効果を達成することができる。
即ち、車速が所定値(例えば、60km/h)未満のときには、シフトセレクトシャフト73を1速−2速セレクト位置Psel 1,2および3速−4速セレクト位置Psel 3,4の中間位置に待機させ、車速が所定値以上のときには、シフトセレクトシャフト73を3速−4速セレクト位置Psel 3,4および5速−6速セレクト位置Psel 5,6の中間位置に待機させれば、インギヤまでのシフトセレクトシャフト73のセレクト方向の移動距離を小さくして速やかな変速段の確立が可能になる。なぜならば、車速が所定値未満の低速時には1速あるいは2速の低速段に変速される確率が高く、逆に車速が所定値以上の高速時には5速あるいは6速の高速段に変速される確率が高いからである。
以上のように、ニュートラル時にシフトセレクトシャフト73をシフト操作が不能なセレクト位置に待機させておくことで、万一シフトアクチュエータA2が誤作動しても意図せぬ変速段が確立されるのを未然に防止することができる。これにより、例えば、マニュアルトランスミッションTをニュートラル状態にしてモータMの駆動力で車両を走行させているときに、シフトアクチュエータA2が誤作動して何れかの変速段が確立されてしまい、そのときのエンジンEの回転数に応じて予期せぬ加速度や減速度が発生するのを確実に防止することができる。
次に、図14に基づいて本発明、特に請求項1の発明に対応した第2実施例を説明する。
第1実施例ではニュートラル時にシフトセレクトシャフト73を軸線L方向の二つのセレクト位置の中間位置で待機させているが、第2実施例ではニュートラル時にシフトセレクトシャフト73を軸線L方向の両端に位置するセレクト位置よりも更に軸線L方向外側位置で待機させるようになっている。図14の例では、シフトセレクトシャフト73(シフトアーム78)を最も下側の1速−2速セレクト位置セレクト位置Psel 1,2よりも更に下方で待機させているため、この状態でシフトアクチュエータA2が誤作動しても、シフトアーム78は空動するだけで意図せぬ変速段が確立される虞はない。
尚、上述した第2実施例ではシフトセレクトシャフト73を軸線L方向の下端に位置する1速−2速セレクト位置Psel 1,2よりも更に下側で待機させているが、シフトセレクトシャフト73を軸線L方向の上端に位置するリバースセレクト位置Psel Rよりも更に上側で待機させても良い。
図15〜図18は本発明の第3実施例を示すもので、図15は図2の15部拡大図、図16は図15の16−16線断面図、図17はボーク位置の相違の説明図、図18はマニュアルトランスミッションの変速時の作用を説明するフローチャートである。
図15は3速変速段および4速変速段を確立するための第2シンクロメッシュ機構47の拡大図であり、第2シンクロメッシュ機構47はメインシャフトMSにスプライン結合された環状のハブ86の外周に摺動自在にスプライン結合されたスリーブ87を備える。スリーブ87はシフトフォーク88で図示したニュートラル位置から左右に駆動される。ハブ86の右側において、メインシャフトMSにニードルベアリング89を介してメイン3速ギヤ28が相対回転自在に支持されており、メイン3速ギヤ28とハブ12との間にブロッキングリング90およびシンクロスプリング91が配置される。ハブ12の左側部分(つまりメイン4速ギヤ29側)の構造は、上述したハブ12の右側部分の構造と左右対称である。
図15および図16から明らかなよううに、ブロッキングリング90の軸方向外端には半径方向外側に突出する複数のドグ歯90aが形成されるとともに、このドグ歯90aに臨むメイン3速ギヤ28の端部にドグ歯28aが形成されており、スリーブ87が右方向に移動すると、その内周のスプライン歯92はブロッキングリング90のドグ歯90aおよびメイン3速ギヤ28のドグ歯28aに噛み合い可能である。
スリーブ87のスプライン歯92の軸方向端部にはテーパー状のチャンファーC1が形成されており、ブロッキングリング90のドグ歯90aおよびメイン3速ギヤ28のドグ歯28aにはスプライン歯87aのチャンファーC1と逆方向にテーパーするチャンファーC2,C3が形成される。
しかして、例えば3速変速段を確立すべく第2シンクロメッシュ機構47のスリーブ87をシフトフォーク88で右方向に移動させると、その過程でスリーブ87の内周のスプライン歯92のカム突起92aがシンクロスプリング91を押圧する。するとシンクロスプリング91はカム突起92aとの間の摩擦力で右向きの荷重を受け、ブロッキングリング90をメイン3速ギヤ28に向けて右方向に付勢するため、ブロッキングリング90およびメイン3速ギヤ28間に摩擦力が発生する。
これと同時に、スプライン歯92の先端のチャンファーC1がブロッキングリング90のドグ歯90aのチャンファーC2に押し付けられてスリーブ87およびブロッキングリング90が相対回転し、その際に両チャンファーC1,C2間に発生する軸方向荷重でブロッキングリング90およびメイン3速ギヤ28間に大きな摩擦力が発生する。その結果、前記摩擦力でメイン3速ギヤ28の回転がスリーブ87の回転に同期する。
スリーブ87が更に右方向に移動すると、スプライン歯92のチャンファーC1とメイン3速ギヤ28のドグ歯28aのチャンファーC3とが係合し、その楔作用でスリーブ87およびメイン3速ギヤ28が僅かに相対回転することにより、スリーブ87のスプライン歯92がメイン3速ギヤ28のドグ歯28aに噛み合って3速変速段が確立する。
以上、3速変速段の確立時の同期作用について説明したが、その他の変速段の確立時の同期作用も同じである。但し、第1〜第3シンクロメッシュ機構46,47,48が左右両方向に移動して各々二つの変速段を選択的に確立するのに対し、第4シンクロメッシュ機構53はリバース変速段の確立のみに使用されるために左右一方向にしか移動しない点で異なっている。
図17に示すように、シンクロメッシュ機構のスリーブ87がニュートラル位置から移動し、スプライン歯92のチャンファーC1とブロッキングリング90のドグ歯90aのチャンファーC2とが係合するボーク位置までの移動距離が、各変速段により異なっている。本実施例では、1速〜6速変速段を確立する際のスリーブ87のボーク位置までの移動距は小さく(例えば、1.5mm)に設定されているのに対し、リバース変速段を確立する際のスリーブ87のボーク位置までの移動距は大きく(例えば、3.5mm)に設定されている。
これにより、6速変速段を確立すべくセレクトアクチュエータA1でシフトセレクトシャフト73を5速−6速セレクト位置Psel 5,6に移動させたとき、シフトセレクトシャフト73がオーバーランしてリバースセレクト位置Psel Rに達してしまい、その位置でシフトアクチュエータA2がシフトセレクトシャフト73をニュートラル位置Psft Nからハイ位置Psft Highに移動させた場合に、誤ってリバース変速段が確立されるのを未然に防止することができる。
以下、その作用を図18のフローチャートに基づいて説明する。
先ずステップS11で電子制御ユニットから所定の変速段へのシフト指示があると、ステップS12でシフトコマンドが算出されてシフトアクチュエータA2が駆動され、シンクロメッシュ機構のスリーブ87が駆動される。そしてステップS13でスリーブ87が目標ボーク位置に達するまでは、ステップS14でスリーブ87をボーク位置に移動させるためのシフトアクチュエータA2の制御電圧が算出されて出力される。
前記ステップS13でスリーブ87が目標ボーク位置に達すると、ステップS15でシンクロメッシュ機構の同期が完了したか否かを判断し、同期が完了していれば、ステップS16でスリーブ87をボーク位置から次段シフト位置に移動させるためのシフトアクチュエータA2の制御電圧が算出されて出力される。
一方、前記ステップS15でシンクロメッシュ機構の同期が完了しない場合には、セレクトアクチュエータA1の誤作動等により本来は5速−6速セレクト位置Psel 5,6にあるべきシフトセレクトシャフト73がリバースセレクト位置Psel Rにあり、図17で説明したボーク位置までの距離が異なるために同期が不能になっていることが考えられる。そこでステップS18でセレクト位置が正しいか否かを確認し、正しければ、ステップS19でボーク用電圧を算出して出力することで、シフトアクチュエータA2を更に駆動してボークを完了させる。また前記ステップS18でセレクト位置が誤っていれば、ステップS20でシフト位置をニュートラルに戻した後に、再度シフト指示を出力する。
尚、上述した第3実施例ではシンクロメッシュ機構を介してリバース変速段を確立しているが、リバースアイドルギヤをフォークで摺動させてリバース変速段を確立するものでは、他の変速段のシンクロメッシュ機構のスリーブがボーク位置に達するまでの移動距離よりも、前記リバースアイドルギヤが対応するギヤに噛合するまでの移動距離を大きく設定すれば、同様の作用効果を達成することができる。
また上述した第3実施例ではリバース変速段のスリーブのボーク位置までの移動距離を他の変速段よりも大きくしているが、ボーク位置までの移動距離を低速段ほど長くすれば、低速段への誤変速を防止してエンジンのオーバーレブを未然に回避することができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施例ではハイブリッド車両を例示したが、本発明はエンジンのみ、あるいはモータのみを走行用駆動源とする車両に対しても適用することができる。
また実施例のハイブリッド車両はエンジンEおよびモータMで共通の駆動輪を駆動しているが、本発明はエンジンEで主駆動輪を駆動し、モータMで副駆動輪を駆動するハイブリッド車両に対しても適用することができる。