(本実施形態のシフト操作装置を備えた車両)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態のシフト操作装置を備えた自動変速装置及び当該自動変速装置が搭載された車両1000のスケルトン図である。図1に示すように、車両1000は、エンジンEG、クラッチC、オートメイテッドマニュアルトランスミッションAMT(以下、AMTと略す)、デファレンシャルDF、駆動輪Wl、Wrを有する。
エンジンEGは、ガソリンや軽油等の炭化水素系燃料を使用するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等であり、回転トルクを出力するものである。エンジンEGから出力された回転トルクは、駆動軸EG−1に伝達される。
(クラッチ)
クラッチCは、駆動軸EG−1とAMTの入力軸131との間に設けられ、駆動軸EG−1と入力軸131を断接するものであり、駆動軸EG−1と入力軸131間の伝達トルクを電子制御可能な任意のタイプのクラッチである。本実施形態では、クラッチCは、乾式単板ノーマルクローズクラッチであり、フライホイール121、クラッチディスク122、クラッチカバー123、プレッシャープレート124、ダイヤフラムスプリング125を有している。フライホイール121は、所定の質量を有する円板であり、駆動軸EG−1が接続し、駆動軸EG−1と一体回転する。クラッチディスク122は、その外縁部に摩擦部材122aが設けられた円板状であり、フライホイール121と離接可能に対向している。クラッチディスク122は、入力軸131と接続し、入力軸131と一体回転する。
クラッチカバー123は、フライホイール121の外縁と接続しクラッチディスク122の外周側に設けられた円筒部123aと、フライホイール121との接続部と反対側の円筒部123aの端部から径方向内側に延在する円環板状の側周壁123bとから構成されている。プレッシャープレート124は、円環板状であり、フライホイール121との対向面と反対側のクラッチディスク122に離接可能に対向して配設されている。
ダイヤフラムスプリング125は、所謂皿バネの一種で、その厚さ方向に傾斜するダイヤフラムが形成されている。ダイヤフラムスプリング125の径方向中間部分は、クラッチカバー123の側周壁123bの内縁と当接し、ダイヤフラムスプリング125の外縁は、プレッシャープレート124に当接している。ダイヤフラムスプリング125は、プレッシャープレート124を介して、クラッチディスク122をフライホイール121に押圧している。この状態では、クラッチディスク122の摩擦部材122aがフライホイール121及びプレッシャープレート124によって押圧され、摩擦部材122aとフライホイール121及びプレッシャープレート124間の摩擦力により、クラッチディスク122とフライホイール121が一体回転し、駆動軸EG−1と入力軸131が接続される。
クラッチアクチュエータ129は、AMT−ECU113によって駆動制御され、ダイヤフラムスプリング125の内縁部を、フライホイール121側に押圧又は当該押圧を解除し、クラッチCの伝達トルクを可変とするものである。クラッチアクチュエータ129には、電動式のものや油圧式のものが含まれる。クラッチアクチュエータ129が、ダイヤフラムスプリング125の内縁部を、フライホイール121側に押圧すると、ダイヤフラムスプリング125が変形して、ダイヤフラムスプリング125の外縁が、フライホイール121から離れる方向に変形する。すると、当該ダイヤフラムスプリング125の変形によって、フライホイール121及びプレッシャープレート124がクラッチディスク122を押圧する押圧力が徐々に低下し、クラッチディスク122とフライホイール121間の伝達トルクも徐々に低下し、駆動軸EG−1と入力軸131が切断される。このように、AMT−ECU113は、クラッチアクチュエータ129を駆動することにより、クラッチディスク122とフライホイール121間の伝達トルクを任意に可変させる。
(オートメイテッドマニュアルトランスミッション)
AMTは、エンジンEGからの回転トルクを複数の変速段の変速比で変速して、デファレンシャルDFに出力する歯車機構式の自動変速機である。また、本実施形態のAMTは、後述するシンクロメッシュ機構を有するシンクロ式自動変速機である。AMTは、AMT−ECU113、入力軸131、出力軸132、第一ドライブギヤ141、第二ドライブギヤ142、第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、第五ドライブギヤ145、リバースドライブギヤ146、第一ドリブンギヤ151、第二ドリブンギヤ152、第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、第五ドリブンギヤ155、リバースドリブンギヤ156、出力ギヤ157、リバースアイドラギヤ161、第一選択機構100、第二選択機構200、第三選択機構300を有する。
入力軸131は、エンジンEGからの回転トルクが入力される軸であり、クラッチCのクラッチディスク122と一体回転する。出力軸132は、AMTに入力された回転トルクをデファレンシャルDFに出力する軸であり、入力軸131と平行に配設されている。入力軸131及び出力軸132は、それぞれ、図示しないAMTのハウジングに回転可能に軸支されている。
第一ドライブギヤ141、第二ドライブギヤ142は、入力軸131に相対回転不能に固定された固定ギヤである。第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、第五ドライブギヤ145、リバースドライブギヤ146は、入力軸131に相対回転可能(遊転可能)に設けられた遊転ギヤである。
第一ドリブンギヤ151、第二ドリブンギヤ152は、出力軸132に相対回転可能(遊転可能)に取り付けられた遊転ギヤである。第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、第五ドリブンギヤ155、リバースドリブンギヤ156、出力ギヤ157は、出力軸132に相対回転不能に固定された固定ギヤである。
第一ドライブギヤ141と第一ドリブンギヤ151は、互いに噛合し、1速段を構成するギヤである。第二ドライブギヤ142と第二ドリブンギヤ152は、互いに噛合し、2速段を構成するギヤである。第三ドライブギヤ143と第三ドリブンギヤ153は、互いに噛合し、3速段を構成するギヤである。第四ドライブギヤ144と第四ドリブンギヤ154は、互いに噛合し、4速段を構成するギヤである。第五ドライブギヤ145と第五ドリブンギヤ155は、互いに噛合し、5速段を構成するギヤである。
第一ドライブギヤ141、第二ドライブギヤ142、第三ドライブギヤ143、第四ドライブギヤ144、第五ドライブギヤ145の順にギヤ径が大きくなっている。第一ドリブンギヤ151、第二ドリブンギヤ152、第三ドリブンギヤ153、第四ドリブンギヤ154、第五ドリブンギヤ155の順にギヤ径が小さくなっている。
リバースアイドラギヤ161は、リバースドライブギヤ146とリバースドリブンギヤ156の間に配設され、リバースドライブギヤ146及びリバースドリブンギヤ156と噛合している。リバースアイドラギヤ161、リバースドライブギヤ146及びリバースドリブンギヤ156は、リバース用のギヤである。
出力ギヤ157は、デファレンシャルDFのリングギヤDF−1と噛合し、出力軸132に入力された回転トルクを、デファレンシャルDFに出力する。
(選択機構)
[第一選択機構]
第一選択機構100は、第一ドリブンギヤ151又は第二ドリブンギヤ152を選択して、出力軸132に相対回転不能に連結するものである。第一選択機構100は、図1及び図2に示すように、第一クラッチハブH1と、第一速係合部材E1と、第二速係合部材E2と、第一シンクロナイザリングR1、第二シンクロナイザリングR2と、第一スリーブS1とから構成されている。第一クラッチハブH1は、第一ドリブンギヤ151と第二ドリブンギヤ152との軸方向間となる出力軸132にスプライン固定される。第一速係合部材E1及び第二速係合部材E2は、第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152のそれぞれに、例えば圧入などにより固定される部材である。第一シンクロナイザリングR1は、第一クラッチハブH1と第一速係合部材E1の間に介在され、第二シンクロナイザリングR2は、第一クラッチハブH1と第二速係合部材E2の間に介在される。第一スリーブS1は、第一クラッチハブH1の外周に軸方向移動自在にスプライン係合される。
この第一選択機構100は、第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152の一方と出力軸132との係合を可能とし、かつ、第一ドリブンギヤ151及び第二ドリブンギヤ152の両者を出力軸132に対して離脱する状態にすることができる周知のシンクロメッシュ機構を構成している。
第一選択機構100の第一スリーブS1は、図2に示す「中立位置」では第一速係合部材E1及び第二速係合部材E2のいずれにも係合されていない。第一スリーブS1の外周には、環状の第一係合溝S1−1が形成されている。第一係合溝S1−1には、第一シフトフォークF1(図3示)が係合している。
第一シフトフォークF1により第一スリーブS1が第一ドリブンギヤ151側にシフトされれば、第一スリーブS1は第一シンクロナイザリングR1にスプライン係合して出力軸132と第一ドリブンギヤ151の回転を同期させ、次いで第一速係合部材E1の外周の外歯スプラインと係合し、第一ドリブンギヤ151を出力軸132に相対回転不能に連結して1速段を形成する。また、第一シフトフォークF1により第一スリーブS1が第二ドリブンギヤ152側にシフトされれば、第二シンクロナイザリングR2は同様にして出力軸132と第二ドリブンギヤ152の回転を同期させた後に、この両者を相対回転不能に連結して2速段を形成する。
[第二選択機構]
第二選択機構200は、第三ドライブギヤ143又は第四ドライブギヤ144を選択して、入力軸131に相対回転不能に連結するものである。第二選択機構200は、第二クラッチハブH2と、第三速係合部材E3と、第四速係合部材E4と、第三シンクロナイザリングR3、第四シンクロナイザリングR4と、第二スリーブS2とから構成されている。
第二選択機構200は、第一選択機構100と同様のシンクロメッシュ機構であり、第二クラッチハブH2が、第三ドライブギヤ143と第四ドライブギヤ144の間の入力軸131に固定され、第三速係合部材E3と第四速係合部材E4が、それぞれ第三ドライブギヤ143と第四ドライブギヤ144に固定されている点が異なっているだけである。第二選択機構200は、「中立位置」ではいずれの係合部材E3、E4とも係合されていない。第二スリーブS2の外周には、環状の第二係合溝S2−1が形成されている。第二係合溝S2−1には、第二シフトフォークF2が係合している。
第二シフトフォークF2により第二スリーブS2が第三ドライブギヤ143にシフトされれば、入力軸131と第三ドライブギヤ143の回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて3速段が形成される。また、第二シフトフォークF2により第二スリーブS2が第四ドライブギヤ144側にシフトされれば、入力軸131と第四ドライブギヤ144の回転が同期された後に、この両者が直結されて4速段が形成される。
[第三選択機構]
第三選択機構300は、第五ドライブギヤ145又はリバースドライブギヤ146を選択して、入力軸131に相対回転不能に連結するものである。第三選択機構300は、第三クラッチハブH3と、第五速係合部材E5と、リバース係合部材ERと、第五シンクロナイザリングR5、リバースシンクロナイザリングRRと、第三スリーブS3とから構成されている。
第三選択機構300は、第一選択機構100と同様のシンクロメッシュ機構であり、第三クラッチハブH3が、第五ドライブギヤ145とリバースドライブギヤ146の間の入力軸131に固定され、第五速係合部材E5とリバース係合部材ERが、それぞれ第四ドライブギヤ144とリバースドライブギヤ146に固定されている点が異なっているだけである。第三選択機構300は、「中立位置」ではいずれの係合部材E5、ERとも係合されていない。第三スリーブS3の外周には、環状の第三係合溝S3−1が形成されている。第三係合溝S3−1には、第三シフトフォークF3が係合している。
第三シフトフォークF3により第三スリーブS3が第五ドライブギヤ145にシフトされれば、入力軸131と第五ドライブギヤ145の回転が同期された後に、この両者が一体的に連結されて5速段が形成される。また、第三シフトフォークF3により第三スリーブS3がリバースドライブギヤ146側にシフトされれば、入力軸131とリバースドライブギヤ146の回転が同期された後に、この両者が直結されてリバース段が形成される。
デファレンシャルDFは、AMTの出力軸132から入力された回転トルクを差動可能に駆動輪Wl、Wrに伝達する装置である。デファレンシャルDFは、出力ギヤ157と噛合するリングギヤDF−1を有する。このような構造により、出力軸132は、駆動輪Wl、Wrに回転連結されている。
AMT−ECU113は、AMTを制御する電子制御装置である。AMT−ECU113は、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAM、ROM及び不揮発性メモリー等の「記憶部」を備えている。CPUは、後述する図10に示すフローチャートに対応したプログラムを実行する。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、「記憶部」は前記プログラムを記憶している。
(シフト操作装置の構造)
次に、図3〜図9を用いて、本実施形態のシフト操作装置90について説明する。
図3〜図6に示すように、シフト操作装置90は、ハウジング10、シャフト20、回転部材30、シフト部材40、ディテント部材50、第一シフトフォーク部材61、第二シフトフォーク部材62、第三シフトフォーク部材63、モータ70、回転角センサ75、ドライブギヤ81、ドリブンギヤ82を有している。
ハウジング10は、本実施形態では、AMTと共通であるが別体であっても差し支え無い。図4に示すように、ハウジング10にシャフト20が回転可能に取り付けられている。なお、以下の説明において、シャフト20の軸線方向を単に、”軸線方向”と表現する。
図5や図6に示すように、シフト部材40は軸心方向を貫通する取付穴40pが形成された円筒形状である。図5に示すように、シフト部材40の取付穴40p内にシャフト20が挿通されて、シフト部材40とシャフト20を締結するボルト45によって、シフト部材40がシャフト20に相対回転不能、且つ、軸線方向に移動不能に固定されている。このような構造により、シフト部材40は、ハウジング10に回転可能に取り付けられている。図7の(A)に示すように、シフト部材40の外周面には、1周シフト溝40aが形成されている。
以下に、図7の(B)を用いて、シフト溝40aについて説明する。なお、図7の(B)において、軸線方向に関して同じ位置において、シフト部材40の外周面を1周する線を中立線とする。そして、中立線から軸線方向の一方側をL側とし、中立線から軸線方向の他方側をH側とする。
図7の(B)に示すように、開始位置(0°)から、中立線に沿って第一バックラッシュ部40bが所定角度形成されている。第一バックラッシュ部40bの末端から、中立線からL側に傾斜した第一低傾斜角部40cが所定角度形成されている。第一低傾斜角部40cの末端から、中立線からL側に傾斜した第一高傾斜角部40dが所定角度形成されている。なお、第一高傾斜角部40dの中立線からの傾斜角は、第一低傾斜角部40cの中立線からの傾斜角よりも大きくなっている。また、第一高傾斜角部40dの形成角度(形成距離)は、第一低傾斜角部40cよりも小さくなっている。第一高傾斜角部40dの末端から、中立線と平行な第二バックラッシュ部40eが所定角度形成されている。第二バックラッシュ部40eの末端から、中立線からH側に傾斜した第二高傾斜角部40fが所定角度形成されている。なお、第二高傾斜角部40fの中立線からの傾斜角は、第一低傾斜角部40cの中立線からの傾斜角よりも大きくなっている。第一バックラッシュ部40bの開始位置から第二高傾斜角部40fの末端までの形成角度は、180°(中間位置)となっている。
中間位置(180°)から、中立線に沿って第三バックラッシュ部40gが所定角度形成されている。第三バックラッシュ部40gの末端から、中立線からH側に傾斜した第二低傾斜角部40hが所定角度形成されている。第二低傾斜角部40hの末端から、中立線からH側に傾斜した第三高傾斜角部40iが所定角度形成されている。なお、第三高傾斜角部40iの中立線からの傾斜角は、第二低傾斜角部40hの中立線からの傾斜角よりも大きくなっている。また、第三高傾斜角部40iの形成角度(形成距離)は、第二低傾斜角部40hよりも小さくなっている。第三高傾斜角部40iの末端から、中立線と平行な第四バックラッシュ部40jが所定角度形成されている。第四バックラッシュ部40jの末端から、中立線からL側に傾斜した第四高傾斜角部40kが所定角度形成されている。なお、第四高傾斜角部40kの中立線からの傾斜角は、第二低傾斜角部40hの中立線からの傾斜角よりも大きくなっている。第三バックラッシュ部40g開始位置から、第四高傾斜角部40kの末端までの形成角度は、180°となっている。
後述するシフトピン30e(図5、図6、図7の(A)示)が第一バックラッシュ部40b又は第三バックラッシュ部40gにあるシフト部材40の状態を「中立状態」といい、シフトピン30eが第二バックラッシュ部40eにあるシフト部材40の状態を「L側状態」といい、シフトピン30eが第四バックラッシュ部40jにあるシフト部材40の状態を「H側状態」という。「中立状態」では、いずれのシフトフォークF1〜F3も、図2に示す「中立位置」にあり、AMTがニュートラル状態となっている。「L側状態」では、図11に示すように、選択されたシフトフォークF1〜F3がL側にあり、AMTが1速、3速、5速のいずれかとなっている。「H側状態」では、選択されたシフトフォークF1〜F3がH側にあり、AMTが2速、4速、リバースのいずれかとなっている。
図5に示すように、シフト部材40の外周側には、円筒形状の回転部材30がシフト部材40と相対回転可能、且つ、軸線方向移動可能に取り付けられている。言い換えると、回転部材30は、ハウジング10に対して回転可能、且つ、軸線方向に移動可能に取り付けられている。図4や図8に示すように、回転部材30の外周面には、一定角度をおいて、複数の係合部30i、30j、30kが形成されている。本実施形態では、係合部30i、30j、30kは、板状であり、回転部材30の半径方向に突出形成されている。また、第一〜第三係合部30i、30j、30kが、回転部材30の外周面に120°間隔をおいて、3つ形成されている。
図3、図6、図8に示すように、回転部材30の外周面には、複数のラッチ歯車30bが連続して1周形成されている。本実施形態では、ラッチ歯車30bは、回転部材30の外周面に30°間隔をおいて12個形成されている。図6に示すように、1つのラッチ歯車30bは、回転部材30の軸線方向に沿って半径方向に延在する係合面30cと、回転部材30の半径方向から傾斜した方向に延在し、その頂部が係合面30cの頂部と接続する傾斜面30dを有している。
ディテント部材50は、ハウジング10に取り付けられている。図3、図5、図6、図8に示すように、ディテント部材50は、ラッチ歯車30bの係合面30cと係合している。図5に示すように、ディテント部材50は、筐体50a、歯止め部材50b、付勢部材50c、摺動検知センサ50dとから構成されている。筐体50aは、ラッチ歯車30b側に開口した有底筒状であり、ハウジング10に取り付けられている。歯止め部材50bは、先端が半球形状であり、先端部が筐体50aの開口部から突出して、筐体50a内に摺動可能に取り付けられている。付勢部材50cは、コイルスプリング等であり、歯止め部材50bをラッチ歯車30b側に付勢している。摺動検知センサ50dは、歯止め部材50bの摺動を検知する近接センサやリミットスイッチ等である。
図6に示すように、歯止め部材50bの先端は、ラッチ歯車30bの係合面30cと当接して係合している。このため、回転部材30の逆回転方向の回転が規制される。また、歯止め部材50bの先端は、ラッチ歯車30bの傾斜面30dと当接している。回転部材30が正回転方向に回転すると、歯止め部材50bが、傾斜面30dによって押圧されて筐体50a側に摺動し、ラッチ歯車30bを乗り越える。このように、ラッチ歯車30bとディテント部材50は、回転部材30のハウジング10に対する逆回転方向のみの回転を規制し、回転部材30のハウジング10に対する正回転方向のみの回転を許容する「第二ワンウェイクラッチ」として機能する。
なお、回転部材30が正回転方向に回転し、歯止め部材50bが、傾斜面30dによって押圧されて筐体50a側に摺動し、ラッチ歯車30bを乗り越えた際には、摺動検知センサ50dによって、歯止め部材50bの摺動が検知され、歯止め部材50bがラッチ歯車30bを1つ乗り越えたことが検知される。このように、摺動検知センサ50dを備えたディテント部材50は、回転部材30の回転位置を検知する回転位置検知手段として機能する。
図5や図7の(A)に示すように、回転部材30の内周面には、回転部材30の内周側に突出し、シフト部材40のシフト溝40aと係合するシフトピン30eが形成されている。
図5や図6の(B)に示すように、シフト部材40の外周面には、キー用凹部40mが凹陥形成されている。キー用凹部40mには、ブロック状のキー41が、シフト部材40の半径方向に摺動可能に取り付けられている。図6の(B)に示すように、キー41の一方の側面には、軸線方向に沿って回転部材30の半径方向に延在する係合面41aが形成されている。係合面41aの反対側のキー41の側面には、軸線方向に沿って、回転部材30の半径方向から傾斜している傾斜面41bを有している。キー用凹部40mの底部と、キー41の間には、コイルスプリング等の付勢部材42が配設されている。
図5や図6の(B)に示すように、回転部材30の内周面には、キー41と係合するキー係合凹部30fが凹陥形成されている。図6の(B)に示すように、キー係合凹部30fは、キー41に対応した形状である。つまり、キー係合凹部30fは、回転部材30の軸線方向に沿って半径方向に延在し、キー41の係合面41aと当接して係合する被係合面30gが形成されている。また、キー係合凹部30fは、被係合面30gと対向し、回転部材30の軸線方向に沿って半径方向から傾斜し、キー41の傾斜面41bと当接する傾斜面30hを有している。傾斜面30hとキー係合凹部30fの底面の交差角は、鈍角となっている。なお、被係合面30gは、シフト部材40に対して正回転側に形成され、傾斜面30hは、シフト部材40に対して逆回転側に形成されている。図5に示すように、キー係合凹部30fのシャフト20の軸線方向の幅寸法は、キー41の前記軸線方向の幅寸法よりも大きくなっている。このため、回転部材30はシフト部材40に対して、前記軸線方向に移動可能となっている。
キー41の係合面41aと回転部材30の被係合面30gが係合しているので、回転部材30がシフト部材40に対して逆回転方向に相対回転が規制される。キー41の傾斜面41bは、回転部材30の傾斜面30hに当接しているので、シフト部材40の回転部材30に対する逆回転方向に相対回転に伴い、キー41が、キー用凹部40mの底部側に摺動されて、キー用凹部40m内に収納され、回転部材30がシフト部材40に対して正回転方向に相対回転する。このように、キー41とキー係合凹部30fは、シフト部材40の回転部材30に対する正回転方向のみの回転を規制し、シフト部材40の回転部材30に対する逆回転方向のみの回転を許容する「第一ワンウェイクラッチ」として機能する。
なお、キー41がキー係合凹部30fと係合している状態から、シフト部材40が回転部材30に対して所定角度(本実施形態では180°未満)逆回転した位置から、シフト部材40が正回転方向に回転しても、キー41はキー係合凹部30fに係合していないので、回転部材30が正回転方向に回転しない。言い換えると、「第一ワンウェイクラッチ」は、シフト部材40の回転部材30に対する正回転方向の回転に関して所定角度(本実施形態では、180°未満)バックラッシュ可能に構成されている。
なお、シフト部材40が回転部材30に対して、相対回転すると、シフト部材40は、回転部材30に固定されたシフトピン30eがシフト部材40のシフト溝40aに係合しているので、回転部材30が軸線方向に移動する。
図3に示すように、第一シフトフォーク部材61は、回転部材30の外周側に配設されている。第一シフトフォーク部材61は、軸部61aと、軸部61aの基端部に設けられた被係合部61bと、軸部61aの先端に設けられたシフトフォークF1とから構成されている。軸部61aは、軸線方向移動可能にハウジング10に取り付けられている。
被係合部61bには、第一〜第三係合部30i、30j、30kと係合又は離脱可能な係合凹部61cが凹陥形成されている。シフトフォークF1は、円弧形状であり、図2に示す、第一係合溝S1−1と係合している。
図示していないが、第一シフトフォーク部材61と、同じの構造の、第二シフトフォーク部材62、及び第三シフトフォーク部材63が、回転部材30の外周側に、第一シフトフォーク部材61から一定角度(本実施形態では30°)をおいて、ハウジング10に軸線方向摺動可能に取り付けられている。図4の(B)の一点鎖線や、図8の(A)に示すように、第一被係合部61b、第二被係合部62b、第三被係合部63bが、軸線方向に関し、第一〜第三係合部30i、30j、30kが形成されている位置において、回転部材30の外周部に前記一定角度(本実施形態では30°)をおいて配設されている。これら、第一シフトフォーク部材61、第二シフトフォーク部材62、第三シフトフォーク部材63は、自身が軸線方向に移動して、自身に加えられた力を、それぞれ、第一スリーブS1、第二スリーブS2、第三スリーブS3に伝達させることにより、それぞれ、第一スリーブS1、第二スリーブS2、第三スリーブS3を移動させて、それぞれ、AMTの第一選択機構100、第二選択機構200、第三選択機構300を作動させる。
シャフト20には、ドリブンギヤ82が固定されている。モータ70は、その回転角が制御可能なモータである。モータ70は、AMT−ECU113(図1示)によって回転角が制御されて駆動される。モータ70の回転軸71には、ドリブンギヤ82と噛合するドライブギヤ81が取り付けられている。なお、ドリブンギヤ82の歯数は、ドライブギヤ81の歯数よりも多くなっていて、モータ70の回転が、減速されて、シャフト20に伝達される。回転角センサ75は、モータ70の回転角を検知するセンサであり、例えば、回転軸71の近傍に設けられている。回転角センサ75は、AMT−ECU113と通信可能に接続され、検知したモータ70の回転角情報をAMT−ECU113に出力する。
AMT−ECU113は、回転角センサ75から出力されたモータ70の回転角情報に基づいて、シャフト20の回転角を認識することができ、更に、シフト部材40の回転角、回転部材30の回転角を認識することができる。
[セレクト動作]
モータ70が逆回転して、シャフト20が正回転すると、上述したように、「第二ワンウェイクラッチ」(ラッチ歯車30bとディテント部材50)は、回転部材30のハウジング10に対する正回転方向の回転を許容し、「第一ワンウェイクラッチ」(キー41、キー係合凹部30f)は、回転部材30のシフト部材40に対する逆回転方向の回転を規制するので、シフト部材40と回転部材30が一体に正回転方向に回転する。
このように、回転部材30が正回転方向に回転し、歯止め部材50bが、ラッチ歯車30bを乗り越える度に、第一係合部30i〜第三係合部30kのいずれかが、第一被係合部61bと係合し、第一シフトフォーク部材61が選択されている状態(図9の(A)示)、第一係合部30i〜第三係合部30kのいずれかが、第二被係合部62bと係合し、第二シフトフォーク部材62が選択されている状態(図9の(B)示)、第一係合部30i〜第三係合部30kのいずれかが、第三被係合部63bと係合し、第三シフトフォーク部材63が選択されている状態(図9の(C)示)、第一係合部30i〜第三係合部30kのいずれもが、いずれの第一被係合部61b〜第三被係合部63bと係合していない非選択状態(非係合位置)(図9の(D)示)のいずれかの状態となる。
また、歯止め部材50bが、ラッチ歯車30bを乗り越えると、摺動検知センサ50dは、歯止め部材50bの摺動を検知して、検知情報をAMT−ECU113に出力する。このため、AMT−ECU113は、回転部材30の回転角を認識することができ、第一シフトフォーク部材61〜第三シフトフォーク部材63のいずれが選択されているか、又は、第一シフトフォーク部材61〜第三シフトフォーク部材63のいずれもが選択されていない非選択状態を認識することができる。また、AMT−ECU113は、回転角センサ75から出力されたモータ70の回転角情報に基づいて、シフト部材40の回転角を認識することにより、第一シフトフォーク部材61〜第三シフトフォーク部材63のいずれが選択されているか、又は、第一シフトフォーク部材61〜第三シフトフォーク部材63のいずれもが選択されていない非選択状態を認識することができる。
なお、図9の(D)に示すように、係合部30iが被係合部61b、62b、63bを通過した場合に、次の係合部30jが被係合部61b、62b、63bの手前で待機しているので、小さい回転部材30の回転角で、係合部30jを被係合部61b、62b、63bに係合させることができる。
なお、「セレクト動作」では、シフト部材40と回転部材30が一体に正回転方向に回転し、シフト部材40と回転部材30が相対回転しないので、回転部材30が軸線方向に摺動しない。
[シフト動作]
モータ70が正回転して、シャフト20が逆回転すると、上述したように、「第二ワンウェイクラッチ」(ラッチ歯車30bとディテント部材50)は、回転部材30の逆回転方向の回転を規制し、「第一ワンウェイクラッチ」(キー41、キー係合凹部30f)は、シフト部材40の回転部材30に対する逆回転方向の回転は許容するので、回転部材30が停止した状態で、シフト部材40のみが逆回転方向に回転し、シフト部材40が回転部材30に対して逆回転方向に相対回転する。
このように、シフト部材40が回転部材30に対して逆回転方向に相対回転すると、回転部材30に固定されているシフトピン30eがシフト溝40aに係合しているので、シフトピン30eのシフト溝40aに対する移動に伴い、回転部材30が軸線方向に摺動する。第一シフトフォーク部材61〜第三シフトフォーク部材63のいずれが選択されている状態で、回転部材30が軸線方向に摺動すると、選択されている第一シフトフォーク部材61〜第三シフトフォーク部材63が軸線方向に移動し、これに対応するシフトフォークF1〜F3が軸線方向に移動し、シフトが実行される。
AMT−ECU113は、回転角センサ75から出力されたモータ70の回転角情報に基づいて、シフト部材40の回転角、回転部材30の回転角を認識し、シフト部材40(シフトピン30e)の回転位置が、L側にあるか、中立位置にあるか、H側にあるかを認識することができる。
(変速制御)
次に、AMT−ECU113が実行する変速制御について、図10に示すフロー及び図11を用いて説明する。なお、図11は、各シフトフォークF1〜F3の位置と変速段との関係を表した概念図である。
車両1000が走行可能な状態になると、S11に進む。S11において、AMT−ECU113が、「変速要求」が有ったと判断した場合には(S11:YES)、プログラムをS12に進め、「変速要求」が無いと判断した場合には(S11:NO)、S11の処理を繰り返す。なお、AMT−ECU11は、スロットル開度と車両1000の速度からなる車両1000の走行状態が、スロットル開度と速度との関係を表した変速線を越えたと判断した場合に、或いは、運転者が、図示しないシフトレバーを操作した場合に、「変速要求」有りと判断する。なお、S11においては、いずれかのシフトフォーク部材61〜63が選択され、いずれかの変速段が形成されている。
S12において、AMT−ECU113は、クラッチアクチュエータ129を駆動制御することにより、クラッチCの伝達トルクを0にして、クラッチCを切断する。S12が終了すると、プログラムは、S13に進む。
S13において、AMT−ECU113が、「変速要求」が2段アップ変速又は2段ダウン変速のいずれかであると判断した場合には(S13:YES)、プログラムをS31に進め、「変速要求」が2段アップ変速及び2段ダウン変速のいずれかでないと判断した場合には(S13:NO)、プログラムをS21に進める。なお、2段アップ変速とは、1速から3速にアップ変速する場合(図11の(1))、2速から4速にアップ変速する場合(図11の(2))、3速から5速にアップ変速する場合(図11の(3))である。また、2段ダウン変速とは、5速から3速にダウン変速する場合(図11の(4))、4速から2速にダウン変速する場合(図11の(5))、3速から1速にダウン変速する場合(図11の(6))である。
S21において、AMT−ECU113が、「セレクト動作」が必要であると判断した場合には(S21:YES)、プログラムをS22に進め、「セレクト動作」が必要で無いと判断した場合には(S21:NO)、プログラムをS26に進める。なお、AMT−ECU113は、2速から3速にアップ変速する場合(図11の(7))、4速から5速にアップ変速する場合(図11の(8))、5速から4速にダウン変速する場合(図11の(9))、3速から2速にダウン変速する場合(図11の(10))、1速からリバースにする場合(図11の(11))、リバースから1速にする場合(図11の(12))のように、シフトフォーク部材61〜63を選択し直す必要がある場合には、「セレクト動作」が必要であると判断する。
S22において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を逆回転させることにより、シフトピン30eを第一バックラッシュ部40b又は第三バックラッシュ部40gに位置させて、選択されているシフトフォーク部材61〜63を「中立位置」に位置させ、AMTをニュートラル状態にする制御を開始する。S22が終了するとプログラムは、S23に進む。
S23において、AMT−ECU113は、回転角センサ75からの情報に基づいて、AMTがニュートラル状態になったと判断した場合には(S23:YES)、プログラムをS24に進め、AMTがニュートラル状態になっていないと判断した場合には(S23:NO)、S23の処理を繰り返す。
S24において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を正回転させて、「変速要求」の変速段に対応するシフトフォーク部材61〜63のいずれかを選択する「セレクト動作」を開始する。S24が終了するとプログラムは、S25に進む。
S25において、AMT−ECU113が、回転角センサ75や摺動検知センサ50dからの情報に基づいて、「セレクト動作」が完了したと判断した場合には(S25:YES)、プログラムをS26に進め、「セレクト動作」が完了していないと判断した場合には(S25:NO)、S25の処理を繰り返す。
S26において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を逆回転させて、シフト部材40を、シフトピン30eが「変速要求」のシフト位置(L側又はH側)に回転させる「シフト動作」を開始する。
例えば、2速から1速にダウン変速する場合には、図7の(3)に示すように、シフトピン30eがH側の第四バックラッシュ部40jにある状態において、シフトピン30eが第一バックラッシュ部40b(図7の(4)示)、次いでL側の第二バックラッシュ部40e(図7の(5)示)に位置するようにシフト部材40が回転される。
シフトピン30eが第一バックラッシュ部40b(図7の(4)示)に移動すると、AMTはニュートラル状態となる。シフトピン30eが第一低傾斜角部40cを摺動している際には、第一低傾斜角部40cは第一高傾斜角部40dよりも中立線からの傾斜角が小さいので、回転部材30がゆっくりとL側に移動する。つまり、第一シフトフォークF1がゆっくりとL側に移動し、第一シフトフォークF1には移動のためのより大きいトルクが付与される。このため、確実に、第一シンクロナイザリングR1により出力軸132と第一ドリブンギヤ151(図1示)の回転が同期される。なお、シフトピン30eが、第一低傾斜角部40cの末端に達した際には、第一シンクロナイザリングR1により出力軸132と第一ドリブンギヤ151の回転の同期が完了している。そして、シフトピン30eが第一高傾斜角部40dを摺動している際には、第一高傾斜角部40dは第一低傾斜角部40cよりも中立線からの傾斜角が大きいので、回転部材30が素早くL側に移動する。つまり、第一シフトフォークF1が素早くL側に移動し、出力軸132と第一ドリブンギヤ151の回転の同期の完了後に、素早く第一スリーブS1が第一速係合部材E1の外周の外歯スプラインと係合し、1速段が形成される。
なお、本実施形態では、シフトピン30eが第一高傾斜角部40dの末端に達してから、シフトピン30eが第二バックラッシュ部40eにある範囲内において、シフト部材40を余分に逆回転させた後に当該余分の角度分正回転方向に戻している。これにより、確実に、シフトピン30eが第一高傾斜角部40dの末端に達することにより、確実に回転部材30及び選択されたシフトフォーク部材61〜63を軸線方向に移動させることができ、確実に「シフト動作」を実行することができる。なお、図7の(B)に示すように、第二バックラッシュ部40eは、中立線に対して傾斜していないので、シフトピン30eが第二バックラッシュ部40eを摺動している限りにおいては、回転部材30及び選択されたシフトフォーク部材61〜63は、軸線方向に移動しない。また、シフト部材40を前記した余分の角度分正回転方向に回転させたとしても、「第一ワンウェイクラッチ」であるキー41、キー係合凹部30fによって、シフト部材40の回転部材30に対する正回転方向の回転に関して所定角度バックラッシュ可能となっているので、シフト部材40の正回転方向の回転に伴い回転部材30が回転することが無い。S26が終了するとプログラムは、S51に進む。
S31において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を逆回転させることにより、シフトピン30eを第一バックラッシュ部40b又は第三バックラッシュ部40gに位置させて、選択されているシフトフォーク部材61〜63を「中立位置」に位置させ、AMTをニュートラル状態にする制御を開始する。例えば、1速から3速にアップ変速する場合には、第二バックラッシュ部40eにあるシフトピン30eを、第三バックラッシュ部40gに移動させて、AMTをニュートラル状態にする。S31が終了するとプログラムは、S32に進む。
S32において、AMT−ECU113は、回転角センサ75からの情報に基づいて、AMTがニュートラル状態になったと判断した場合には(S32:YES)、プログラムをS33に進め、AMTがニュートラル状態になっていないと判断した場合には(S32:NO)、S32の処理を繰り返す。
S33において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を正回転させて、回転部材30を非選択状態(図9の(D))にする制御を開始する。S33が終了するとプログラムは、S34に進む。
S34において、AMT−ECU113が、回転角センサ75や摺動検知センサ50dからの情報に基づいて、回転部材30が非選択状態になったと判断した場合には(S34:YES)、プログラムをS35に進め、回転部材30が非選択状態になっていないと判断した場合には(S34:NO)、S34の処理を繰り返す。
S35において、AMT−ECU113は、モータ70を駆動制御して、シャフト20を逆回転させて、シフト部材40を、シフトピン30eが「変速要求」の変速段手前の中立位置にある準備位置に回転させる制御を開始する。例えば、1速から3速にアップ変速する場合には、S31において第四バックラッシュ部40gに位置されたシフトピン30eが、L側の手前の準備位置である第一バックラッシュ部40bに位置するように(図7の(2)示)、シフト部材40が回転される。S35が終了するとプログラムは、S36に進む。
S36において、AMT−ECU113が、回転角センサ75からの情報に基づいて、シフト部材40が準備位置にあり、AMTがニュートラル状態になっていると判断した場合には(S36:YES)、プログラムをS24に進め、シフト部材40が準備位置に無いと判断した場合には(S36:NO)、S36の処理を繰り返す。
S51において、AMT−ECU113が、回転角センサ75からの情報に基づいて、「シフト動作」が完了したと判断した場合には(S51:YES)、プログラムをS52に進め、「シフト動作」が完了していないと判断した場合には(S51:NO)、S51の処理を繰り返す。
S52において、AMT−ECU113は、クラッチアクチュエータ129を駆動制御することにより、クラッチCの伝達トルクを最大にして、クラッチCを接続する。S52が終了すると、プログラムは、S11に戻る。
(本実施形態の効果)
上述した説明から明らかなように、単一のモータ70が、シフト部材40を正回転させることにより、シフト部材40と回転部材30を一体回転させることにより、回転部材30を複数のシフトフォーク部材61〜63(伝達部材)のうち1のシフトフォーク部材61〜63に係合させ、複数のシフトフォーク部材61〜63のうち1のシフトフォーク部材61〜63を選択する「セレクト動作」を行う。そして、単一のモータ70が、シフト部材40を逆回転させることにより、回転部材30とシフト部材40を相対回転させて、回転部材30を軸線方向に移動させ、選択されたシフトフォーク部材61〜63を軸線方向に移動させる「シフト動作」を行う。このように、単一のモータ70によって「セレクト動作」と「シフト動作」の両方を行うことができるので、部品点数の増大を抑制することができる自動変速機のシフト操作装置90を提供することができる。
このように、本実施形態では、従来では「セレクト動作」と「シフト動作」を行うのに、2以上必要であったモータを、単一のモータ70に削減することができるので、モータに付随するECU、ドライバ、センサ等の各種制御備品を削減することができる。このため、シフト操作装置90の製造コストを低減することができ、シフト操作装置90の車両への搭載性が良好となり、車両の重量を低減することができる。
「第一ワンウェイクラッチ」(セレクト機構)であるキー41とキー係合凹部30fは、シフト部材40の回転部材30に対する正回転方向の回転を規制し、「第二ワンウェイクラッチ」(シフト機構)であるラッチ歯車30bとディテント部材50は、回転部材30のハウジング10(本体)に対する逆回転方向の回転を規制し、単一のモータ70は、シフト部材40を正逆回転させる。これにより、モータ70によってシフト部材40を正回転させると、「第一ワンウェイクラッチ」によってシフト部材40の回転部材30に対する正回転方向の回転が規制され、回転部材30とシフト部材40を一体に正回転させることができるので、回転部材30とシフト部材40が相対回転すること無く、回転部材30がシフト部材40に対して軸線方向に摺動することが無い。このため、回転部材30を正回転させて、係合部30i、30j、30kのうちいずれかを、複数の被係合部61b、62b、63bのうち1の被係合部61b、62b、63bに係合させることにより、複数のシフトフォーク部材61〜63のうち1のシフトフォーク部材61〜63を選択する「セレクト動作」を確実に行うことができる。
また、モータ70によってシフト部材40を逆回転させると、「第二ワンウェイクラッチ」によって、回転部材30のハウジング10に対する逆回転方向の回転が規制され、「第一ワンウェイクラッチ」によってシフト部材40の回転部材30に対する逆回転方向の回転が許容されるので、シフト部材40のみをハウジング10に対して逆回転させることができ、回転部材30とシフト部材40を相対回転させることができる。このため、回転部材30とシフト部材40の相対回転により、回転部材30を軸線方向に移動させ、選択されたシフトフォーク部材61〜63を軸線方向に移動させる「シフト動作」を確実に行うことができる。
また、回転部材30は、いずれの係合部30i、30j、30kがいずれの被係合部61b、62b、63bに係合していない回転位置である「非係合位置」(図9の(D)示)で停止可能に構成され、シフト操作装置90は、「非係合位置」において、「シフト動作」が可能に構成されている。これにより、2速アップ変速又は2速ダウン変速する場合において(図10のS13でYESと判断)、回転部材30が「非係合位置」にある状態で「シフト動作」することにより(図10のS35)、次のギヤ段の「シフト動作」を迅速に行うことができる。つまり、2速アップ変速又は2速ダウン変速する場合には、「シフト動作」を2回行わなければならないが、回転部材30が「非係合位置」にある状態で「シフト動作」させると、シフトフォーク部材61〜63が動かないので、シンクロナイザリングR1〜R5、RRによる同期時間を削減することができ、迅速に2速アップ変速又は2速ダウン変速を行うことができる。
また、図7の(B)に示すように、シフト溝40a(移動機構)は、シフト部材40の外周面の周方向に対する傾斜角が小さい低傾斜角部40c、40hと、シフト部材40の周方向に対する傾斜角が低傾斜角部40c、40hよりも大きく、低傾斜角部40c、40hと連続して形成された高傾斜角部40d、40f、40i、40kを有する。これにより、低傾斜角部40c、40hによって回転部材30を軸線方向に摺動させることにより、大きい荷重でシンクロナイザリングR1〜R5、RRを移動させることができ、確実に遊転ギヤ151、152、143、144、145、146とこれと噛合する軸131、132(図1示)の回転を同期させることができる。また、高傾斜角部40d、40iによって回転部材30を軸線方向に摺動させることにより、遊転ギヤ151、152、143、144、145、146と軸131、132と回転の同期後に、素早くシンクロナイザリングR1〜R5、RRを移動させることができ、素早く「シフト動作」を完了させることができる。或いは、高傾斜角部40f、40kによって回転部材30を軸線方向に摺動させることにより、遊転ギヤ151、152、143、144、145、146と軸131、132との嵌合を解除することにより、素早くAMTをニュートラル状態にすることができる。
また、図9に示すように、係合部30i、30j、30kは、回転部材30に複数形成されている。これにより、図9の(D)に示すように、ある係合部30iが選択する被係合部61b、62b、63bを通過した後の場合であっても、次の係合部30jが選択する被係合部61b、62b、63bの手前で待機しているので、迅速に「セレクト動作」を実行することができる。
また、図4や図5に示すように、「第二ワンウェイクラッチ」は、回転部材30の外周部に形成されたラッチ歯車30bと、回転部材30の半径方向に摺動可能に配設されラッチ歯車30bと係合して回転部材30の本体に対する逆回転方向の回転を規制する歯止め部材50bとから構成されている。そして、摺動検知センサ50d(摺動検知部)は歯止め部材50bの摺動を検出し、ATM−ECU13(回転位置検出手段)は摺動検知センサ50dが検出した歯止め部材50bの摺動に基づいて回転部材30の回転位置を検出する。これにより、ATM−ECU13が、摺動検知センサ50dからの検知信号に基づいて、歯止め部材50bがラッチ歯車30bを乗り越えたことを検知することにより、確実に回転部材30の回転位置を検出することができる。また、「第二ワンウェイクラッチ」であるディテント部材50に摺動検知センサ50dを設けることにしたので、回転部材30の回転位置を検出する専用の検出部を設ける必要が無く、製造コストを削減することができる。
また、図6に示すように、「第一ワンウェイクラッチ」であるキー41、キー係合凹部30fは、シフト部材40の回転部材30に対する正回転方向の回転に関して所定角度バックラッシュ可能に構成されている。これにより、「シフト動作」の際に、シフト部材40を余分に逆回転させた後に当該余分の角度分正回転方向に戻したとしても、回転部材30が正回転方向に回転しない。このため、シフト部材40を余分に逆回転させることにより、確実に「シフト動作」を実行することができる。
また、図5に示すように、シフト部材40は回転部材30の内部に回転部材30と同軸に配設されている。このように、シフト部材40が回転部材30の内部に配設されているので、シフト操作装置90が軸線方向に大きくならず、シフト操作装置90をコンパクトにすることができる。
(6速段を有する実施形態の説明)
図9及び図13を用いて、AMTが1速〜6速を有する実施形態について、以上説明した実施形態と異なる点について説明する。
この実施形態では、図13に示すように、第三フォークF3によって第三スリーブS3がH側に移動されると、6速が形成されるようになっている。そして、図9において、第一フォークF1に逆回転側に隣接する位置には、第四フォークF4が配設されている。つまり、図9の(A)の二点鎖線で示すように、第四フォークF4の被係合部64bが、第一フォークF1の被係合部61bの逆回転方向に隣接する位置に位置している。
そして、図13の(A)に示すように、第一係合部30i〜第三係合部30kのいずれかが、第四被係合部64bと係合して、第四フォークF4がH側に移動されれば、リバースが形成されるようになっている。つまり、リバースは、1速とシフト方向反対側に第四シフトフォークF4が移動された場合に形成される。言い換えると、図13の(A)に示すシフトパターン上、シフト方向に関して、リバースは1速と反対側に配置されている。これによる利点を以下に説明する。
図13の(B)に示すように、シフトパターン上、シフト方向に関して、リバースが1速と同じ側に配置されている場合について以下に説明する。この場合には、リバースから1速を形成する場合には、図13の(B)の一点鎖線で示すように、シフト動作→セレクト動作→シフト動作の3動作で済む。一方で、1速からリバースを形成する場合には、図13の(B)の二点鎖線で示すように、シフト動作→セレクト動作→シフト動作(被係合位置)→セレクト動作→シフト動作の5動作が必要となってしまう。このため、リバースから1速を形成するのに時間がかかってしまい、変速速度が低下してしまう。
車両をガレージ等に駐車する場合には、1速とリバースの形成が繰り返されるガレージシフトが実行される。当該ガレージシフトの場合に特に、リバースから1速の形成が繰り返されるので、変速速度の低下に起因して駐車に時間がかかってしまうという問題が顕在化してしまう。
一方で、図13の(A)に示すようなシフトパターンであれば、1速からリバースを形成する場合と、リバースから1速を形成する場合のいずれの場合も、シフト動作→セレクト動作→シフト動作の3動作で済むので、変速速度の低下を防止することができる。
図12に示すAMTの段数は5であり、図13示すAMTの段数は6であるが、AMTの段数はこれらに限定されず、任意の段数を設定可能であることは言うまでもない。そして、AMTの段数が偶数である場合には、上述したように、シフトパターン上、シフト方向に関して、リバースは1速と反対側に配置されていることが好ましい。
(別の実施形態)
以上説明した実施形態では、モータ70が、ドライブギヤ81、ドリブンギヤ82、及びシャフト20を介して、シフト部材40を回転させている。しかし、モータ70が直接シフト部材40を回転させる実施形態であっても差し支え無い。
以上説明した実施形態では、「第一ワンウェイクラッチ」は、キー41とキー係合凹部30fとから構成され、「第二ワンウェイクラッチ」は、ラッチ歯車30bとディテント部材50とから構成されている。しかし、「第一ワンウェイクラッチ」や「第二ワンウェイクラッチ」は、アウターレースとインナーレースの間にスプラグが配設されたスプラグ式のワンウェイクラッチや、アウターレースとインナーレースの間にカムが配設されたカム式のワンウェイクラッチであっても差し支え無い。
また、図12に示すように、シフト部材40がシャフト20に回転可能に取り付けられ、シャフト20の回転部材30に対する正回転方向の回転を規制する第二ワンウェイクラッチ91、シフト部材40の回転部材30に対する逆回転方向のみの回転を許容する第一ワンウェイクラッチ92と、及びシャフト20のシフト部材40に対する逆回転方向の回転を規制する第三ワンウェイクラッチ93が設けられた実施形態であっても差し支え無い。この実施形態であっても、シャフト20が正回転すると、第二ワンウェイクラッチ91によって、シャフト20と回転部材30とが一体に正回転し、第一ワンウェイクラッチ92によって、回転部材30とシフト部材40が一体に正回転し、「セレクト動作」を実行することができる。また、シャフト20が逆回転すると、第二ワンウェイクラッチ91によって、回転部材30がシャフト20に対して空回りし、第三ワンウェイクラッチ93によって、シャフト20とシフト部材40が一体回転し、第一ワンウェイクラッチ92によって、回転部材30とシフト部材40が相対回転し、「シフト動作」を実行することができる。なお、シャフト20が正回転する場合には、第二ワンウェイクラッチ91は、回転部材30のハウジング10に対する正回転方向の回転を許容している。また、シャフト20が逆回転する場合には、第二ワンウェイクラッチ91は、シャフト20の回転部材30に対する逆回転方向の回転を許容することにより、シャフト20を回転部材30に対して空回りさせ、回転部材30のハウジング10に対する逆回転方向の回転を規制している。
以上説明した実施形態では、シフト部材40は、回転部材30の内部に配設されている。しかし、シフト部材40が回転部材30の外側に配設されている実施形態であっても差し支え無い。
また以上説明した実施形態では、シフト溝40aと係合するシフトピン30eが、回転部材30の内周面に形成されている。しかし、シフト溝40aと係合する部材が、回転部材30と別体に設けられ、当該部材が、回転部材と接続している実施形態であっても差し支え無い。
また以上説明した実施形態では、シフト溝40aは、シフト部材40の外周面に1周形成され、シフト溝40aと係合するシフトピン30eが、回転部材30の内周面に形成されている。しかし、シフト溝40aが、回転部材30の内周面に1周形成され、シフト溝40aと係合するシフトピン30eが、シフト部材40の外周面に形成されている実施形態であっても差し支え無い。