JP4636693B2 - 合成繊維及びこれを含むセメント系組織 - Google Patents
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Description
発明の分野とその背景
本発明はセメント性複合物におけるセメント性マトリックスの二次的強化材料としての使用に適した特定の繊維に関わるものであり、詳細には、セメント性複合物の二次的強化材料として使用されるアクリル繊維、溶融紡糸合成繊維及び低配向度の前駆体系ナイロン繊維に関わるものである。さらに本発明は方法にも関わる。
【0002】
詳細には、本発明は、セメント性複合物の強化のために用いられる短く切断されたアクリル繊維の摩擦特性及び表面張力特性を調整することによって、セメント性マトリックスへのすぐれた繊維分散性、すぐれた強化力及び耐ひび割れ性を得て、セメント性複合物の強化のために用いられる短く切断されたアクリル繊維の効率性を改良することに関する。さらに、本発明は特に、短く切られた溶融紡糸合成繊維の摩擦特性及び表面張力特性を調整することでセメント性マトリックスへのすぐれた繊維分散性、すぐれた強化力及び耐ひび割れ効率性が得られた結果、セメント性複合物の強化性能を改良する短く切断された溶融紡糸合成繊維に関するものである。本発明は、また、低結晶性、低配向性であり、牽引強度及び引張応力が低いものの、伸長率の高い前駆体系ナイロン繊維及び、低配向度の前駆体系ナイロン繊維の摩擦特性及び表面張力特性を調整することで得られたセメント性マトリックスへのすぐれた繊維分散性、すぐれた強化力及び耐ひび割れ性の結果として、セメント性複合物の強化機能の効率を改善する低配向度の前駆体系ナイロン繊維に関するものである。
【0003】
当該技術分野でよく知られているように、コンクリートなどのセメント性の複合物は本質的に脆性物質であるために自己導入されたひび割れが生じ易い。自己導入されたひび割れは相対的に低い応力のもとでも容易にコンクリート内を伝搬する。このような理由から、進行性のひび割れ成長によりコンクリートの張力均衡を保てない。
【0004】
コンクリートの張力が実際は低いことは、存在する破面(微細な傷やひび割れ)が、応力負荷がかかった状態ではさらに大きな破面に伝わることによって説明できる。したがって、コンクリートの耐性を高めるには、コンクリート強度を弱め、耐性を減少させる、コンクリート内部に散在する微細な破面やひび割れを減らすことが重要である。
【0005】
コンクリートの混合物又は他のセメント性の複合物との混合物が放置された場合(流し込む場合であれ、鋳型に入れられた場合であれ、層状であれ、液状の噴射であれ、等々)、内在するセメント骨材や微粒子やセメント等の固体物は重力により下方に集中し始める。固体物が沈下するに伴い、水分が排除され表層に押し出されて水分が滲出する。コンクリートの塑性収縮ひび割れはこのような水分の蒸発率が水分の置換率を越えたときに発生する。コンクリートにおける全ての非組織的なひび割れの多くは、初期の体積変化を伴う収縮歪みに原因がある。上記したように、コンクリート混合物が安定化するまでに形成されるこれらのひび割れは、使用時のコンクリートの強度、耐久性に影響を及ぼす。したがって、通常は、コンクリート製品は硬化する間、水分が加えられ冷やされる。しかしながら、硬化の最中にコンクリート製品に水分を加えても微細ひび割れやひび割れが完全に取り除かれず、特別の注意を要することから、ひび割れ形成を削減するコンクリートへの添加物が求められ始めた。
【0006】
コンクリート強化のためのナイロン繊維の使用は米国特許第3,645,961号に述べられている。当該特許は耐衝撃性コンクリート形成のための分離された繊維の使用を開示している。この他関係する文献には、米国特許第5,456,752号、同第5,399,195号、同第4,693,749号、同第4,902,347号及びソビエト(SU)特許第1,479,618号がある。
【0007】
コンクリート混合物にナイロン繊維が存在することにより固形物の安定化と水分の滲出のプロセスに変化を与え、これにより、硬化中の初期のコンクリート体積変化時の塑性収縮ひび割れを導く内部引張応力が減少される。応力により生じ始めた微細ひび割れは、セメント性マトリックスに均一に分散して存在する数百万の繊維により架橋、交差してひび割れの伝搬は停止される。
【0008】
微細ひび割れにより形成される傷は、コンクリートが安定化した後もコンクリートの使用時にもさらに大きなひび割れとなり易く、コンクリートを弱め、耐久性を低下させるが、このようにナイロン繊維はコンクリートの安定化時の微細ひび割れの防止の一助となる。しかしながら、コンクリート部材及びその内部体積強度の損失がコンクリート性マトリックスの強度を全体として低下させるため、コンクリートのセメント性マトリックスの全体積の一部を構成する繊維が使用中に劣化しないよう留意されねばならない。以上から、コンクリート強化のために使用されるナイロン繊維には、(i)コンクリート安定化の間に微細ひび割れ形成を減少させる効率性と、(ii)高い耐久性(劣化するまでの期間の長期化)が要求される。
【0009】
コンクリート及びセメントの強化のための専用のナイロン繊維の使用の実質的な発展は、コンクリート強化のためにナイロン繊維を試験使用することから始まった。ナイロン6.6(デュポン社のタイプ663及びタイプ665、両タイプともKapejo社が販売)及びナイロン6(Alliedsignal社のCaprolan−RC、Nycon社が販売)の双方とも、専用のナイロン性能を付与され、コンクリートの初期の軟練り安定段階における耐ひび割れ対策を目的として二次的強化繊維としてコンクリート生産技術に用いられている。二次的強化という用語はコンクリート生産技術において一般に使われ、コンクリート安定化に伴うひび割れの防止、減少に向けた強化を指している。
【0010】
米国特許第6,001,476号は、コンクリートの二次的強化材および繊維を含む強化されたセメント性の複合物に用いられる改良されたナイロン繊維の製造及び使用についてのものである。当該特許は、ナイロン繊維、特に織物(textile)繊維の強度及び耐久性の改善方法に主眼をおいており、コンクリートのようなセメント性複合物のセメント性マトリックスを二次的に強化するために使用されるに適した繊維をこの方法によって提供している。この先行技術特許は、低配向度の前駆体系ナイロン繊維やアクリル繊維の使用について教示していない。
【0011】
同じく当該特許に教示されていないものに、繊維の強化特性を改良する方法として繊維とセメント性マトリックスとの摩擦を増加させるという考えがある。しかしながら、繊維により強化されたコンクリートの機械的挙動モデルによれば、セメント系組織に不連続に分散された繊維は、繊維と物質の境界面でのずれ変形による繊維への荷重の変化を通じ、その耐荷重性能に影響が及ぶ。したがって、材質を混合する上での基本的な規則に従えば、系の伸長強度と剛性は、繊維が持ち得る最大強度と係数値の増加に伴って増える。繊維の強度に応じて、耐荷重性が向上し、材質中の応力を支える繊維の最大長が長くなる。したがって、全体的な効果として組織の引張応力が増える。したがって、セメント系組織を強化するような繊維は、高強度のものである(例、鋼鉄、ガラス、アスベスト等)。同じ理由から、セメントの安定化期間におこる塑性収縮ひび割れに対応するためのセメント系組織強化のために使用された合成繊維(例えば、引張応力5、170Mpa、牽引強度896Mpaという特徴のある「Nycon RC」のようなナイロン、引張応力3,500Mpa、牽引強度370Mpaという特徴のある「Fibrin23」のようなポリプロピレン、引張応力19,000Mpa、牽引強度1,030Mpaという「Dolanit 10」のようなポルアクリロニトリル)は標準的な織物繊維に比べて高い引張応力と牽引強度を有する。
【0012】
セメント性物質の欠陥は主として物質内全体を伝搬するひび割れを生じさせる破面により起きる。強化繊維の役割はひび割れの抑止と破面の強靱化にある。
【0013】
最近の研究(Y. GengとC.K.Y Leung(1996)“Microstructural Study of Fiber/Mortar Interfaces During Fiber Debonding and Pull−out”並びにJ.MaterのSci.31:1285−1294及びACI Committee 544,American Concrete Institute,Ch4,ACI 544 IR 39頁から57頁にある(1997年)の“Fiber Reinforced Concrete”によれば、セメント系組織における合成繊維の結合の解け易さ、及び、鋼鉄、ガラス、アスベスト繊維という一次強化材料に比して境界面での結合が低いことを理由として、破面の平面における繊維の移動は強化メカニズムの支配的な要素であるとしている。
【0014】
これにより、物質中の繊維の分散は、繊維間距離がひび割れ抑制効果に大きく寄与することから(R.F.Zollo(1997)“Fiber reinforced concrete: an overview after thirty years of development”,Seminar 24−62 Abredeen’s world of concrete,12頁から41頁)、ひび割れ減少のために物質中への必要量の制御をすることが重要な要素であることを示している。したがって、先行技術が不適当としてきた材質からでも、繊維/セメント性組織及び繊維間の摩擦の調整により、コンクリートの二次強化材としての新たな繊維を開発する可能性が示された。
【0015】
米国特許第5,989,713号は、繊維がセメント性マトリックスと結合でき得る表面積を増加する繊維の断面形状について述べている。強化繊維の単位重量当たりの表面積が大きいほど、繊維の結合強度が増え、物質から繊維への応力変形の効率も上がる。繊維の最大強度の大部分は繊維が物質から解離する前の耐荷重及びひび割れの架橋に用いられる。当該特許においては、かかる効果を生じるように繊維の引張応力を変更することも、複合物の混合中に繊維の分散性を高めることも含まれていない。
【0016】
しかしながら、実際には、繊維にかかる引き離し応力は繊維の最大の引張応力より遥かに小さく、繊維とセメント性マトリックスの摩擦力により支配される。したがって、硬化済みコンクリートの強力な繊維(鋼鉄、ガラス、アスベスト等)による強化に一般に必要とされる強度や剛性は、合成繊維による二次的強化には実際には必要ではない。
【0017】
セメント骨材に対する繊維の摩擦係数は標準的な繊維対金属の摩擦係数(f/m)と同じであるので、f/mを繊維とセメント性マトリクスとの摩擦作用を定量化する変数として用いる。
【0018】
繊維/セメント系組織の摩擦力は、さらに、セメント系組織内の繊維の混合と分散の度合いをも決定する。摩擦力が大であるほど、摩擦力が繊維同士の結合力に打ち勝って、スラリー状の新しいセメント内での繊維の混合段階で繊維の分散が速くなる。したがって、セメント系組織に繊維を効率的に混合するには、繊維表面で高いf/m摩擦係数を有しながら、繊維対繊維(f/f)の摩擦係数とフィラメント同士の結合力が小さいことが望ましい。
【0019】
Goldfineの米国特許第3,645,961号によれば、ナイロン、アクリル、ポリビニールアルコールの繊維はこれらの基準に合致するとあるが、当該特許では、繊維の表面特性を改善するための潤滑剤や表面処理については述べていない。
【0020】
予め湿式処理することでコンクリート内での繊維の混合性を改良する手法はWO83/00324に述べられているが、これらはオレフィン系繊維に限定されている。
【0021】
セメント系組織強化のための、特にポリプロピレン繊維を含むポリオレフィン系繊維の前処理工程について、特許文献中に報告されている(米国特許第5,399,195号)。当該特許は、疎水性のオレフィン系繊維の親水性を高め、分散性およびセメント性マトリクスとの相容性を高める方法を示している。当該特許が教示する工程は、繊維の摩擦特性を変更するものではない。
【0022】
このように、セメント性複合物の二次的強化材料として適した特定の繊維及びその製造方法、さらに上述のような制約を負わない繊維を含有するセメント性複合物の必要性は広く認められており、これを得ることは非常に有益である。
本発明の要旨
本発明の1つの局面によれば、コンクリートなどのセメント性マトリックスを強化するための繊維ステープル束が提供される。この束は、繊維対金属の摩擦係数を平均レベル0.550超に増加させながら、同時に繊維対繊維の摩擦係数を平均0.500未満まで減少させる材料で表面を被覆したアクリル繊維からなる。
【0023】
本発明の他の局面によれば、コンクリートなどのセメント性マトリックスを強化するためのアクリル繊維ステープルの製造方法が提供される。この方法は、(a)最低5%の標準的アクリル系ドープ(但し、アクリル系ポリマ−は35重量%以下)を溶剤中で湿式紡糸して紡糸繊維を作り、(b)このような紡糸繊維をステープルに切断することから構成される。
【0024】
本発明のさらに他の局面によれば、セメント性複合物が提供される。セメント性複合物は硬化したセメント性マトリックスより構成される。マトリックスは強化用のアクリル繊維ステープルを包含し、この繊維は、繊維対金属の摩擦係数を平均レベル0.550超に増加させながら、同時に繊維対繊維の摩擦係数を平均0.500未満まで減少させる材料で被覆されている。
【0025】
本発明のさらに他の局面によれば、強化され硬化されたセメント性複合物の製造方法が提供される。この方法は次の工程により構成される。(a)セメント性マトリックスを形成するため、セメント性物質、水分、及び強化のためのアクリル繊維ステープルを含む成分を供給する、(b)繊維が十分に分散されるまでこれらの成分を混合する、(c)マトリックスを硬化する。この局面によれば、アクリル繊維は繊維対金属の摩擦係数を平均レベル0.550超に増加させながら、同時に繊維対繊維の摩擦係数を平均0.500未満まで減少させる材料で被覆されている。
【0026】
本発明のさらに他の局面によれば、コンクリートなどのセメント性マトリックスを強化する繊維ステープル束が提供される。この束は、複屈折率の平均値が0.0350超0.0440未満、平均引張応力が10グラム/デニール超25グラム/デニール未満、平均牽引強度が2.5グラム/デニール超3.4グラム/デニール未満、平均伸長率が46%超100%未満という特徴を有する系低配向度の前駆体ナイロン繊維により構成される。
【0027】
本発明のさらに他の局面によれば、低配向度の前駆体系ナイロン繊維を改良し、セメント性マトリックスの強化により適するようにする方法が提供される。この方法は、(a)複屈折率の平均値が0.0350超0.0440未満、平均引張応力が10グラム/デニール超25グラム/デニール未満、平均牽引強度が2.5グラム/デニール超3.4グラム/デニール未満、平均伸長率が46%超100%未満という特徴を有する低配向度の前駆体系ナイロン繊維を含むステープル束を得る、(b)この繊維の化学的安定性を向上させて高品質の繊維とするように選択した化学物質をこの繊維に含浸させて含浸繊維とする、(c)低配向度の前駆体系ナイロン繊維を乾燥し、高品質の低配向度の前駆体系ナイロン繊維を得る、という工程により構成される。
【0028】
本発明のさらに他の局面によれば、硬化したセメント性マトリックスからなる繊維強化されたセメント性複合物が提供される。このマトリックスは、複屈折率の平均値が0.0350超0.0440未満、平均引張応力が10グラム/デニール超25グラム/デニール未満、平均牽引強度が2.5グラム/デニール超3.4グラム/デニール未満、平均伸長率が46%超100%未満という特徴を有する低配向性の前駆体系ナイロン繊維束を含んでいる。
【0029】
本発明のさらに他の局面によれば、強化され硬化されたセメント性複合物の製造方法が提供される。この製造方法は、(a)セメント性物質、水分、及び、複屈折率の平均値が0.0350超0.0440未満、引張応力が平均で10グラム/デニール超25グラム/デニール未満、平均牽引強度が2.5グラム/デニール超3.4グラム/デニール未満、平均伸長率が46%超100%未満という特徴を有する低配向性の前駆体系ナイロン繊維を含むセメント性マトリックスの成分を供給する、(b)繊維が十分に分散されるまでこれらの成分を混合する、(c)マトリックスを硬化する、という工程により構成される。
【0030】
本発明のさらに他の局面によれば、コンクリートなどのセメント性マトリックスの強化のための繊維ステープル束が提供される。この束は、複屈折率が0.0185から0.0440の範囲であることを特徴とする分子配向度を有する溶融紡糸繊維から構成される。
【0031】
本発明のさらに他の局面によれば、セメント性マトリックスの強化に適した溶融紡糸合成繊維ステープルの製造方法が提供される。この製造方法は、(a)ポリマーを溶融し、紡糸口金から排出して延伸糸繊維を形成する、(b)この延伸糸繊維に対し紡糸処理を施し、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定された繊維対金属の摩擦係数が0.400超であり、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定された繊維対繊維の摩擦係数が0.700未満であることを特徴とする高品質の繊維を得る、(c)この延伸糸繊維を切断してステープルにする、という工程から構成される。
【0032】
本発明のさらに他の局面によれば、セメント性マトリックスの強化に適した溶融紡糸合成繊維の束を製造する方法が提供される。この方法は、(a)配向と機械特性を制御するために、標準的な1段紡糸工程を管理された速度で行い、低配向性糸繊維を製造する、(b)この低配向性糸繊維に紡糸仕上げ材を塗布し、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定された繊維対金属の摩擦係数が0.400超であり、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定された繊維対繊維の摩擦係数が0.700未満であることを特徴とする高品質の繊維を得る、(c)この低配向性糸繊維を切断してステープルにする、という工程から構成される。
【0033】
本発明のさらに他の局面によれば、セメント性マトリックスの強化に適した合成繊維のステープルの製造方法が提供される。この方法は、(a)現状の合成繊維を、最終用途のために潤滑処理された連続フィラメントヤーンまたはトウ形状とする、(b)この合成繊維の潤滑液を洗浄する、(c)この合成繊維の表面を異なる潤滑液で被覆し、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定された繊維対金属の摩擦係数が0.400超であり、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定された繊維対繊維の摩擦係数が0.700未満であることを特徴とする高品質の繊維を得る、(d)この繊維を切断してステープルにする、という工程から構成される。
【0034】
本発明のさらに他の局面によれば、硬化したセメント性マトリックスからなる合成繊維で強化されたセメント性複合物が提供される。このマトリックスは、複屈折率が0.00185から0.0440の範囲にあるということを特徴とする分子配向度を有する溶融紡糸の合成繊維ステープルを含む。
【0035】
本発明のさらに他の局面によれば、硬化したセメント性複合物の製造方法が提供される。この製造方法は、(a)セメント性物質、水分、及び複屈折率が0.00185から0.0440の範囲にあるということを特徴とする分子配向度を有する溶融紡糸合成繊維のステープルを含むセメント性マトリックスの成分を供給する、(b)溶融紡糸合成繊維が十分に分散されるまでこれらの成分を混合する、(c)このマトリックスを硬化する、という工程から構成される。
【0036】
以下に記載する本発明の好適な実施例におけるさらなる特徴として、繊維は、平均牽引強度が1.90グラム/デニール超3.2グラム/デニール未満、平均伸長率が30%超90%未満、平均引張応力が20グラム/デニール超60グラム/デニール未満、平均音響モジュラス(sonic modulus)が30グラム/デニール超88グラム/デニール未満であることを特徴とする。
【0037】
好適な実施例におけるさらなる特徴として、繊維は、平均牽引強度が2.0グラム/デニール超2.5グラム/デニール未満、平均伸長率が50%超80%未満、平均引張応力が23グラム/デニール超58グラム/デニール未満、平均音響モジュラスが33グラム/デニール超80グラム/デニール未満であることを特徴とする。
【0038】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴として、繊維は、平均牽引強度が2.36グラム/デニール、平均伸長率が56%、平均引張応力が42グラム/デニール、平均音響モジュラスが61グラム/デニールであることを特徴とする。
【0039】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴として、繊維は、平均の切断長さが2mm超50mm未満、平均の厚みが1デニール超25デニール未満であることを特徴とする。
【0040】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴として、繊維を被覆する物質は紡糸仕上げ材として用いられる。
【0041】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴として、繊維を被覆する物質は、非イオン性の乳化剤、石鹸、アニオン系表面活性剤およびシリコン表面活性剤よりなる群から選択された少なくとも1つの物質の水溶液として繊維に塗布される。
【0042】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴として、その繊維は、平均の動粘度が100センチストークス超で、平均の表面張力が60dyne/cm超という低い親水傾向であることを特徴とする被覆物質によって被覆される。
【0043】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴として、その被覆物質は紡糸仕上げ材として用いられる。
【0044】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴として、繊維対金属の摩擦力消費は20%を超えており、比較としてフィラメントあたり同一デニールの同一長さに切断した標準的アクリル系繊維を用いたローターリング(Rotor Ring)試験による測定では、輪の直径が30%を越えている、という表面特性を有している。
【0045】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴として、この繊維は、緊締リング法により測定されるひび割れ減少率に鑑み、標準のコンクリート1立米あたり400グラム(0.017重量パーセント又は0.033体積パーセント)の本発明の繊維が、(a)標準のコンクリート1立米あたり1000グラムの標準的アクリル繊維(0.0417重量パーセント又は0.0847体積パーセント)、(b)標準のコンクリート1立米あたり900グラムのポリプロピレン繊維(0.0375重量パーセント又は0.100体積パーセント)の群から選択された何れの材料とも同等またはそれ以上の塑性ひび割れ抑止効果があるという程度にまで、すぐれた塑性ひび割れ抑止効果をもたらすことを特徴とする。
【0046】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、繊維がけん縮繊維である点である。
【0047】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、アクリル系ポリマーが少なくとも85%のアクリロニトリルの共重合体並びに、少なくとも酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリ酸メチル、及び硫化スチレンスルホン酸塩からなる群から選ばれた少なくとも一つの他の共重合体を含んでいることである。
【0048】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、溶剤が、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、チオシアン酸塩、塩化亜鉛の水溶液からなる群から選択されているという点である。
【0049】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、湿式紡糸工程が、(i)湿った繊維と乾燥した繊維のストレッチを組み合わせることにより、150グラム/デニール超の音響モジュラスを有する配向性の高い紡糸繊維を製造する、(ii)紡糸繊維に紡糸仕上げ物質を与えて、繊維対金属の摩擦係数を平均0.550超のレベルに高めながら、同時にその繊維対繊維の摩擦係数を平均0.500未満のレベルに減少させる、(iii)紡糸繊維を十分な蒸気圧によりアニーリングし、その平均音響モジュラスを80グラム/デニール未満に下げる、という副工程によって行われることである。
【0050】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、製造方法がステープル繊維をけん縮する追加工程を含んでいる点である。
【0051】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、繊維を被覆する紡糸仕上げ材は、非イオン性の乳化剤、石鹸、アニオン性の表面活性剤およびシリコン系表面活性剤よりなる群から選択された少なくとも一つの物質の水溶液から得られるものであるという点である。
【0052】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、紡糸仕上げ物質は、被覆材料の平均の動粘度が100センチストークスより高く、平均の表面張力が60ダイン/センチ以上であり、低い湿潤性を特徴とするという点である。
【0053】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、化学的安定性が増したことを特徴とする高品質の繊維を得るために、繊維に選択された化学物質を含浸させているという点である。
【0054】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、その高品質の繊維が卓越した抗塩基性分解性を得ることである。
【0055】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、前記の化学物質が、酸分解性塩、ベンゼンフォスホン酸、マンガン塩、立体障害フェノール光安定剤、立体障害アミン光安定剤、紫外線安定化用燐化合物、燐、アミノ及びフェノール性酸化防止剤及び、ヨウ化銅、酢酸銅、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化亜鉛及びマイクロシリカからなる群から選択されたものである点である。
【0056】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、ナイロン6.6、ナイロン6、ナイロン6.6とナイロン6の共重合体、ナイロン6.6と6.TAとナイロン6.4の共重合体からなる群から選択されたナイロン物質が繊維に含まれている点である。
【0057】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、繊維束が、複屈折率が0.0185から0.0230の範囲にある溶融紡糸ポリプロピレン繊維と複屈折率が0.0350から0.0440の範囲にある溶融紡糸ナイロン繊維からなる群の少なくとも一方から作られている点である。
【0058】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、ステープル繊維の束が、引張応力が18グラム/デニール超35グラム/デニール未満であり、牽引強度が2.1グラム/デニール超3.7グラム/デニール未満であり、伸長率が30%超225%未満であることを特徴とする点である。
【0059】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、繊維が、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定された繊維対繊維の摩擦係数を0.700未満に減少させながら、繊維対金属の摩擦係数が0.400超に増加するような紡糸仕上げ材により被覆されている点にある。
【0060】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、繊維を被覆する紡糸仕上げ材が、非イオン性の乳化剤、石鹸、アニオン性の表面活性剤およびシリコン系表面活性剤よりなる群から選択された少なくとも一つの物質の水溶液から得られるという点である。
【0061】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、繊維が、動粘度を少なくとも150センチストークスに増し、表面張力を少なくとも60ダイン/cmに増すことにより、繊維間の密着度を低下させるような紡糸仕上げ材により被覆されている点である。
【0062】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、繊維が、標準的な溶融紡糸繊維束との比較により測定したローターリング試験によれば、繊維の隙間を開けるのに必要なエネルギー消費(f/m摩擦)が、標準繊維よりも少なくとも20%大きく、紡糸リングの幅も少なくとも30%大きいという特徴を有する表面特性を有する点にある。
【0063】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、繊維が、すぐれた塑性ひび割れ抑止力を有しつつ、他方で、1立米あたり400グラムの繊維が強化されたコンクリートのスランプを15%未満に減少させながら、強化されていない同等のセメント性マトリックスに比べてコンクリート内のセメント性マトリックスのひび割れ度を80%超も減少させるという程度に、コンクリート又はセメント系組織の強化に用いられる標準の繊維に比べ高いスランプ値を有している点である。
【0064】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、繊維が、すぐれた塑性ひび割れ抑止力を有しつつ、他方で、1立米あたり400グラムの繊維が強化されたコンクリートのスランプを9%未満に減少させながら、強化されていないセメント性マトリックスに比べてコンクリート内のセメント性マトリックスのひび割れ度を90%超も減少させるという程度に、コンクリート又はセメント系組織の強化に用いられる標準の繊維に比べ高いスランプ値を有している点である。
【0065】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、延伸紡糸繊維がポリプロピレン繊維であり、複屈折率が0.0185から0.0230の範囲にあることを特徴とする分子配向性を有している点である。
【0066】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、延伸紡糸繊維がナイロン繊維であり、複屈折率が0.0350から0.0440の範囲にあるという分子配向性を有している点である。
【0067】
記載された好適な実施例におけるさらなる特徴は、繊維が、繊維対金属の摩擦係数を0.400超に増加させながら、対応する連続フィラメントヤーンに対して測定された繊維対繊維の摩擦係数を0.700未満に減少させるような紡糸仕上げ材によってさらに被覆されている点である。
【0068】
本発明は、改良されたコンクリート強化能力を有する合成繊維、かかる繊維及びかかる繊維を含むセメント性複合物の製造方法、並びに、セメント性複合物の製造方法を提供することにより、従来知られている製品の欠点を解消しようとするものである。
【0069】
実施例
本発明は、セメント性複合物において二次的強化材料として使用することができるアクリル繊維、溶融紡糸合成繊維および低配向度の前駆体系ナイロン繊維に関するものである。本発明はさらに、かかる繊維の製造方法及びこれを含むセメント性複合物の製造方法に関するものである。詳細には、本発明は、セメント性複合物の強化のために用いられる短く切断されたアクリル繊維の摩擦特性及び表面張力特性を調整することによって、セメント性マトリックスへのすぐれた繊維分散性、すぐれた強化力及び耐ひび割れ性を得て、セメント性複合物の強化のために用いられる短く切断されたアクリル繊維の効率性を改良することに用いることができる。本発明は特に、短く切られた溶融紡糸合成繊維の摩擦特性及び表面張力特性を調整することでセメント性マトリックスへのすぐれた繊維分散性、すぐれた強化力及び耐ひび割れ効率性が得られた結果、短く切断された溶融紡糸合成繊維によるセメント性複合物の強化性能を改良することに用いることができる。さらに、本発明は、結晶性、配向性、牽引強度、引張応力が低く、伸長率が高い低配向度の前駆体系ナイロン繊維を改善し、これにセメント性複合物の二次的強化に適した機能を付与することに用いることができる。
【0070】
本発明の少なくとも1つの実施例を詳細に説明する前に、本発明の適用は以下の記載で述べている具体的な構成及び構成要素の配置に限定されるものではないということが理解されるべきである。本発明は、他の実施例に適用でき、またさまざまなやり方で実施し使用できるものである。また、ここに用いられる表現・用語は記述するのためのものであり、それによって何らの限定を受けるものではないことが理解されるべきである。
【0071】
先ず、本明細書の開示、請求の範囲において以下に言及される試験及び特徴化方法について説明する。
【0072】
試験及び特徴化方法
繊維の分析
単一フィラメントの応力特性
2セットのクランプに一定の低い圧縮応力を加えながら単一のフィラメントの試料をのせ、120%/分の一定率でこれを破断するまで引き伸ばす。参考のためにここで用いる繊維用の応力試験機の仕様基準であるASTM D 76にしたがって、力とひずみを応力−ひずみ曲線で記録する。牽引強度の値(破断時の応力)、破断時の伸長率、および伸長率5%のときの引張応力を求める。
【0073】
音響モジュラス(sonic modulus)
100本単位のフィラメントヤーンの試料の軸にそった音の速度を、10kcpsの振動数に設定されたKLHパルス伝搬計測器で測定する。試験中、試料は引き伸ばされている。音響モジュラス(グラム/デニールの単位でEsm)は、Esm=11.3V2の式にしたがって音の速度から計算される。ここで、Vはキロメートル/秒の単位である。
【0074】
糸表面の油の含有量
糸表面の油のパーセンテージは石油エーテルを用いた標準的なSoxhlet装置による抽出によって重量測定される。これはAATCCモノグラフ第3:繊維の分析方法(137頁、1968)にある繊維仕上げの決定方法に従うものである。
【0075】
繊維表面の性質の特徴化
繊維対金属の摩擦
繊維対金属(f/m)の摩擦は、参考のためにここで用いるASTM3108の標準的方法に従い、100m/分の速度で、180度の巻き角の5umの粗さ、直径12.7mmのクロム製針を用いて測定される。繊維対金属の摩擦係数を求める。
【0076】
繊維体繊維の摩擦
繊維対繊維(f/f)の摩擦は、参考のためにここで用いるASTM3412の標準的方法(第2タイプ、ツイスト方法)に従い、2〜20mm/分の速度範囲、負荷応力10グラム、3.5.360度の巻き角を用いて測定される。繊維体繊維の摩擦係数を求める。
【0077】
フィラメント密着テスト
連続フィラメントヤーンの繊維間密着力を特徴化するためのフィラメント密着テストは、この目的のためにドイツの「Institute for Textiletechnik Denkendorf」にて開発された装置を用いて行う。この装置を用い、複繊維のフィラメントにフィラメント間を開かせる空気注入(ballooning)摩擦応力をかける。糸の軸に対し垂直な単位距離ごとに開いたフィラメントの数が光電管により測定され、1メートル当たりの繊維数として記録される。これは比較試験であり、試料は絶対基準と比較される。
【0078】
繊維束の密着と摩擦テスト(ローターリング)
このテストはローターリング試験システム(Spinlab Special instruments Laboratory Inc., Knoxville, Tennessee)を用いて、切断された繊維束の繊維間密着力とフリクショナル(Frictional)、特に繊維対金属(f/m)の摩擦を特徴化するものである。テストシステム製造者の操作指示書にしたがって、1.0〜2.5グラムの繊維束が均一に混ぜ合わされた繊維の「リング」になるようにローター回転される。
【0079】
繊維の塊をほどくのに必要とされるエネルギーを測定することにより、繊維に作用する全動的摩擦力の指標が求められる。テストのパラメータを調整することにより(例:1.0グラムの繊維塊を投入、ローター速度6000rpm)、その結果は繊維対金属の摩擦の指標となる。ローターリング方法で作られる繊維の「リング」の大きさは繊維間の密着力の指標となり、リング直径が小さいことは相互作用が大きいことを示す。実験結果は、摩擦力はエネルギー単位として、「リング」の直径は糸の密着力として記録される。
【0080】
本発明の繊維束を試験するため、長さ60mm、厚み3.3dtex、1インチ当たり10のけん縮を有するビスコース・レイヨンの繊維束を2.5重量%〜5.0重量%混ぜ合わせるという特別な試料準備方法が開発された。
【0081】
微細繊維の摩擦応答を良くするために、ローターリングの開口ローラーを納めたケースの内壁に既知の粗さのサンドペーパーが任意に挿入された(Mogahzy他(1998)“Evaluating staple fibers processing properties” part I Textile Research Journal, 68(11):835−840 and part II Textile Research Journal 68 (12): 907−912)。
【0082】
これは比較試験でありその結果は絶対基準と比較される。
【0083】
強化されたセメント性複合物の分析
ひび割れ減少力
緊締リング法(FCB Cement and Concrete Institute, Trodenheim, Norway, report, ISBN No.82−4060−6)によりひび割れ減少力を測定した。1立米当たり400グラムのアクリル繊維が用いられた。基準は1立米当たり900グラムを添加したポリプロピレン標準繊維である。これは建設業界での代表的なポリプロピレン標準繊維の使用量に基づくものであり、対照として用いられた。標準繊維は以下に示す各試験に用いられた。
【0084】
スランプ試験
スランプ試験はASTM C 143試験方法にしたがって行われた。新しいコンクリート混合物の自己水平化(スランピング)傾向は、最初から円錐形容器に鋳られたコンクリートの高さと、自由にスランプさせた同じコンクリートの残留した形の高さを比較することで求められた。円錐形容器は高さ300mmで底面の直径200mm、上面の直径100mmである。標準的なスランプ用容器はASTM法に準じて用いられた。
【0085】
本明細書及び添付の請求項への記載を目的とするため、全ての数値は平均値で記載されており、求められた値の90%から110%の範囲にあるものを含んでいる。
【0086】
アクリル繊維
本発明に従うアクリル繊維を製造するために、McPeters and Paul(A.L.Mcperes and D.R,Paul(1974)の“Stress and Molecular Orientation Generated During Wet Spinning of Acrylic Fibers”応用ポリマーシンポジウム、25、159〜178)による図1にしたがって、特別に組み立てられた研究用回転機により繊維を紡糸した。本機械の主要部材には紡糸ポンプ(Zenith pumps, Sanford N.C.)、引き出し加熱ロール(Neumag Machinen,GmbH、ドイツ)、回転延伸機(Leezona,N.C.)及び延伸カッター(DM&E,N.C.)が含まれている。
【0087】
この目的のために、アクリロニトリルのポリマー共重合体及び平均分子量118,000のビニルアセテート7.45%が用いられた。この標準的なアクリルドープをジメチルアセトアミド(DMAC)に25重量%溶解させた。紡糸口金には3.5ミルの細孔を有する孔が1000個形成されている。凝固槽は57%のDMACを含む50℃の水であった。
【0088】
噴射速度はポンプ率と細孔の大きさで制御し、20フィート/分に設定した。凝固槽における噴射延伸(V1/Vτ)は1.68Xであった。配向延伸槽(Orientation Draw Bath)におけるカスケード延伸(cascade stretch)(V2/V1)は2.0Xから7.0Xの範囲であった。蒸気加熱されたゴデット上での165℃での塑性延伸(V3/V2)は3.5Xから1.0Xの範囲であった。噴射速度は紡糸口金の射出口からドープが排出される速度である。噴射速度は処理量と紡糸口金の細孔径に依存する。ローラー速度V1、V2、V3は図1(McPeters and Paul、前出)に示したローラーと比較したものである。(V1は洗浄ローラー、V2は乾燥ローラー、V3は延伸用ローラー)。最終のゴデットの速度は100フィート/分であった。塑性延伸の後に最終槽において紡糸仕上げが施された。紡糸仕上げの処理速度は、紡糸仕上げのポンプ率と紡糸仕上げ材の濃度により制御され、紡糸されたトウのデニールと速度にしたがって調整される。0.5%から0.6%の紡糸仕上げ材(繊維重量超、以下各ケース毎に具体的に記載)が用いられた。
【0089】
アクリル糸には2種類の異なる紡糸仕上げ材を用いた。1つは、Tallopal SY 01(Tal;Stockhausen,Krefeld、ドイツ)で、これはアクリル繊維束の紡糸の仕上げの代表的なものである。2つ目は、Standopol 1144+2074(Stan:Henkel KgaA、ドイツ)で、これはO.E.紡糸とアクリルフィラメントヤーンの延伸織物(Draw Texturizing)の特殊な組み合わせである。
【0090】
乾燥は180℃に蒸気加熱されたローラーを通るトウの12巻毎に行われる。
【0091】
繊維は飽和蒸気アニーラー(Ernst Benz、スイス)の標準的な7サイクル法により「自由に弛緩する」状態にアニーリングされる。各サイクルは、排気、飽和蒸気による加圧、必要とされる温度での3分間の圧力維持、排気で構成される。
【0092】
試験結果
湿式紡糸の間に適用される延伸の組み合わせ(凝固槽における噴射延伸、湿式、カスケード及び乾燥塑性延伸)の程度と、紡糸直後の繊維の蒸気アニーリングによる弛緩の程度が、配向及びこれに対応する機械的性質を制御することは良く知られている。(McPeters,A.L.とD.R.Paul,D.R.(1974)の“Stress and molecular orientation during wet spinning of acrylic fibers” 応用ポリマー論文集 No.25,159−178及びGupta,B.S.et al.(1989)の“The effect of hot wet draw ratio on the coefficient of friction of Acrylic yarns”J.App.Polym.Sci.38:899−905)。
【0093】
表1にアクリル繊維に対するカスケード延伸とアニーリング圧力の効果を示す。これによりセメント系組織の強化効率を向上させるのに必要とされる引張応力と収縮幅を有する製品を製造する道筋が示される。
【0094】
紡糸直後のアクリル繊維及びアニーリングされたアクリル繊維の配向、引張応力及び摩擦
【表1】
*伸長率5%における引張応力
**全配向関数ft=1−Eu/Esm、ここでEsmは繊維の音響モジュラスであり、Euは非配向繊維の音響モジュラス(30グラム/デニールと推定される)
【0095】
アニーリングされない繊維の結果から、カスケード延伸比とこれに応じる引張応力の増加による配向度及び繊維対繊維の摩擦値がよく制御されていることがわかる。高い配向度における高い摩擦値は、微細繊維構造の発達に伴い表面形態がより滑らかになることと関係がある(Gupta,B.S.et al(1989))“The effect of hot wet draw ratio on the coefficient of friction of Acrylic yarns”J.App.Polym.Sci.38:899−905)。
【0096】
さらにアニーリング収縮を行うと、引張応力値が実質的に低下し摩擦がさらに増加する。これは摩擦の密着性理論(Adhesion Theory)によって説明できる。高い延伸比に起因する滑らかな表面とアニーリング収縮に起因する低い引張応力が組み合わさることにより、摩擦係数が増大し、セメント性複合物の相互作用に有効に働く繊維が増える。これらの変化に基づいて本発明の繊維がすぐれたものとなっているのである。
【0097】
表2は、高い程度の延伸に続いて行われる高いアニーリング収縮という組み合わせによって、すぐれたひび割れ減少性能を有する繊維を得るための、上述の原理を示している。紡糸条件、機械特性及びひび割れ減少可能性は、本発明の最適化された繊維の特徴的なパラメータを示すものである。
【0098】
ひび割れ防止機能にすぐれたアクリル繊維の性能
【表2】
【0099】
表2にまとめられた結果から、4.78Xのカスケード延伸と1.38Xの塑性延伸の組み合わせは、カスケード延伸のみの場合よりも効果が高く、したがって今回の発明を実施する上で好適に利用できることがわかる。表2にまとめたように、改良されたひび割れ防止力を生み出す繊維の機械的性能を得るためには、塑性延伸及びカスケード延伸と、アニーリングの圧力と温度とのさまざまな組み合わせが推奨される。
【0100】
本発明の好適な実施例によれば、アクリル繊維は平均牽引強度が1.90グラム/デニール超3.20グラム/デニール未満であることを特徴としているが、平均牽引強度が2.0グラム/デニール超2.5グラム/デニール未満であればなお好ましく、平均牽引強度が2.36グラム/デニールであれば最適である。
【0101】
また、平均伸長率が30%超90%未満であることを特徴とする繊維が好ましいとしているが、平均伸長率が50%超80%未満であればなお好ましく、平均伸長率が56%であれば最適である。
【0102】
さらに、平均引張応力が20グラム/デニール超60グラム/デニール未満であることを特徴とする繊維が好ましいとしているが、平均引張応力が23グラム/デニール超58グラム/デニール未満であればなお好ましく、平均引張応力が42グラム/デニールであれば最適である。
【0103】
さらに平均音響モジュラスが30グラム/デニール超で88グラム/デニール未満であることを特徴とする繊維が好ましいとしているが、平均音響モジュラスが33グラム/デニール超80グラム/デニール未満であればなお好ましく、平均音響モジュラス応力が61グラム/デニールであれば最低である。表2において、これらのパラメータとひび割れ減少の相関関係を示す。
【0104】
本発明の好適な実施例によれば、繊維を被覆する物質が紡糸仕上げ材として用いられる。そこに使用される繊維を被覆する物質としては、たとえば非イオン性の乳化剤、石鹸、アニオン性の表面活性剤およびシリコン系の表面活性剤の水溶液が用いられる。アクリル繊維の摩擦及びひび割れ減少可能性に対する紡糸仕上げ被覆材の効果の結果を表3に示す。
【0105】
アクリル繊維に対する紡糸仕上げの効果
【表3】
仕上げ材の量 0.60%
*繊維番号10:6.0倍にカスケード延伸され135℃(45PSI)で30%収縮するまでアニーリングされた繊維。
**繊維番号5:最適に塑性延伸され、140℃(52PSI)で40%収縮するまでアニーリングされた繊維。
(1)f/f摩擦は2mm/分の速度の連続フィラメントテスト(ASTM3412、タイプ2、上記に詳述した撚り方式)によって測定した。
(2)f/m摩擦は10グラムの張力負荷を用いた連続フィラメントテスト(ASTM3108、上記に詳述)によって測定した。
【0106】
表3に示した結果は、繊維対金属のより大きな摩擦、及び、繊維対繊維のより小さな摩擦を得るために開発されたStandopol紡糸仕上げ材が、Tallopol仕上げ材よりも、塑性延伸された繊維及びカスケード延伸された繊維の両方において、繊維によるひび割れ減少性能を向上させたことを証明している。したがって、繊維対金属の摩擦係数を平均レベルで0.550超としつつ、同時に繊維対繊維の摩擦係数を平均レベルで0.500未満とする物質で被覆されたアクリル繊維を製造する一つの方法として、Standopol紡糸仕上げ材が推奨される。
【0107】
本発明の紡糸仕上げ材は、上述したフィラメント密着試験によって特徴づけられた、繊維間の密着力をも減少させる。表3にあるように、TallopolとStandopolで紡糸仕上げされた繊維番号5の連続フィラメントは各々、0.002フィラメント/メーター、0.300フィラメント/メーターという値を示した。繊維間の密着力は、紡糸仕上げ材の動粘度と表面張力により制御される湿潤作用に影響を受ける。
【0108】
Standopol紡糸仕上げ材は110センチストークスの粘度と50dyne/cmの表面張力を示すが、Tallopol紡糸仕上げ材は40センチストークスの粘度と28dyne/cmの表面張力を示す。したがって、より高い粘度と表面張力との相関関係があるStandopol仕上げを用いるほうが、繊維間の密着力を著しく小さくするという比較結果が出たことは驚くに値しない。これは、平均の動粘度が100センチストークス超であり、平均の表面張力が60dyne/cm超であるような低い親水傾向を特徴とする被覆物質で繊維が被覆されていることを証明するものである。
【0109】
本発明に基づいてセメント性複合物の製造に使用された切断された繊維束の摩擦特性もまた、前述のローターリング法により測定された。本発明のStandopol紡糸仕上げの繊維番号5の繊維(表3を参照)の比較ローターリング試験は、基準値としてコンクリート強化に用いられる市販のRicem MC アクリルの繊維ステープルを用いて行われた。両試料のステープルのパラメータは2.0デニール/フィラメントで、12mmの切断長の扁平繊維である。
【0110】
ローターリング試験の結果によれば、ローターリングにおいてStandopol仕上げのステープルを開くには、Tallopol仕上げされたものに比べて26%超のエネルギー消費を必要とすることが示された。これは、Standopol処理されたステープルの繊維対金属の摩擦が著しく大きいことを示している。
【0111】
ローターリング試験結果においても、Standopol仕上げの繊維に比べ、Tallopol仕上げの繊維のリング直径が38%小さいことが示された。これは、Standopol仕上げの繊維の繊維間密着力がTallopol仕上げに対し、著しく低いことを示している。
【0112】
これは、フィラメント当たりのデニール値及び切断長さが等価の、対照として用いた標準アクリル繊維(本実施例の場合はTallopol被覆した繊維)を使用したローターリング試験によって測定した場合、この繊維は、増加したエネルギー消費が20%超で、増加したリング直径が30%超であるという平均の表面特性を有していることを特徴としていることを意味している。
【0113】
本発明のアクリル繊維がコンクリートの塑性収縮ひび割れを制御する能力も測定された。試験方法は前述の緊締リング試験とスランプ試験である。
【0114】
標準的なコンクリートの組成は、
圧潰セメント骨材 800(Kg/m3)
細圧潰セメント骨材 300(Kg/m3)
砂 600(Kg/m3)
セメント 400(Kg/m3)
水 223(Kg/m3)
標準コンクリートを強化コンクリートとするために、下記表4に記載した繊維を追加した。
【0115】
3種類のコンクリートの繊維の量
【表4】
*Ricem MCは、コンクリートの塑性収縮ひび割れを減少させるために特に設計され、商用生産されているアクリル繊維である。
【0116】
3種類のコンクリートのスランプ試験とひび割れ減少率
【表5】
【0117】
表5の結果は、本発明の繊維は市販の標準繊維(この場合、Ricem MC)よりも著しく優れていることを示している。実際、緊締リング法によって求められる塑性ひび割れ減少率に関しては、1立米の標準的なコンクリートあたり本発明の繊維400グラム(0.025重量%、0.050体積%)が、例えば1立米の標準的コンクリートあたり1000グラムの標準的アクリル繊維(0.0417重量%、0.0847体積%)、又は1立米の標準的コンクリートあたり900グラムの標準的ポリプロピレン繊維(0.0375重量%、0.100体積%)と、塑性ひび割れ防止において同等あるいはそれ以上であるという程度にまで、すぐれた塑性ひび割れ防止性能がもたらされている。
【0118】
さらに、表5にまとめられた結果から、本発明のアクリル繊維がコンクリートのスランプに及ぼす影響が小さいこともわかる。400グラム/m3の本発明の繊維により、強化されたセメント系組織のひび割れ減少率は、強化されていないコンクリートに比べて、好ましくは最低で80%、より好ましくは最低85%、最も好ましくは最低93%超も改善している。同様に、400グラム/m3の本発明の繊維により強化されたセメント性物質のスランプは、強化されていないコンクリートに比べて、好ましくは14%まで、最も好ましくは7%未満にまで低下している。
【0119】
コンクリートなどのセメント性マトリックスの強化のために用いるアクリル繊維のステープルの製造方法は、本発明のさらなる好適な実施例を構成する。この方法は、標準的アクリル系ドープ(上記に定義されたもの)を最低5%、但しアクリル系ポリマ−は35重量%未満を溶剤中で湿式紡糸して、製造された紡糸をステープルに切断するという工程からなる。
【0120】
この方法は、例えば、少なくとも85%のアクリロニトリルの共重合体と、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレンスルホン酸ナトリウムの群から選ばれた少なくとも一つの他の共重合体を含んでいるアクリル系ポリマーに適用できる。溶剤は、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、チオシアン酸エステル及び塩化亜鉛水である。
【0121】
多くの場合、湿式紡糸は3つの工程で実施される。第1の工程は、音響モジュラス値が150グラム/デニール超となる高い配向度を持つ紡糸繊維を作るために、延伸した湿った繊維と乾燥した繊維を組み合わせることを含む。第2の工程は、平均の繊維対金属の摩擦係数を0.550超に増加させながら、同時に、繊維対繊維の摩擦係数を0.500未満に減少させるために、この紡糸繊維に紡糸仕上げ物質を塗布することを含む。第3の工程は、紡糸繊維の平均音響モジュラス値を80グラム/デニール未満に減少させるために十分な蒸気圧のもとで該紡糸繊維をアニーリングすることを含む。
【0122】
いくつかの実施例においては、この方法に、さらに、ステープルをけん縮する工程が追加される。
【0123】
繊維を被覆する紡糸仕上げ材は、例えば、非イオン性の乳化剤、石鹸、アニオン性の表面活性剤およびシリコン系の表面活性剤のうちの1以上の物質の水溶液から得られる。
【0124】
紡糸仕上げ物質は、繊維を被覆する物質の平均の動粘度が100センチストークス超であり、平均の表面張力が60dyne/cm超であるような、低い親水傾向であるという特徴を持つことが多い。
【0125】
強化のためのアクリル系ステープルを含む、硬化されたセメント性マトリックスからなるセメント性複合物は、本発明のさらなる好適な実施例を構成する。この実施例によれば、繊維は、繊維対金属の平均の摩擦係数のレベルを0.550超に増加させながら、同時に、繊維対繊維の平均の摩擦係数のレベルを0.500未満に減少させる物質により被覆されている。この繊維はさらに上述のように処理されてもよい。
【0126】
強化されて硬化したセメント性複合物の製造方法は、本発明のさらなる好適な実施例を構成する。この方法は3つの工程より構成される。第1の工程には、セメント性マトリックスを形成するための成分を供給することが含まれる。この成分にはセメント性物質、水、強化のためのアクリル系繊維のステープルが含まれる。第2の工程には、繊維が十分に成分中に分散するまで成分を混合することが含まれる。第3の工程にはマトリックスを硬化することが含まれる。アクリル系繊維は、繊維対金属の平均の摩擦係数のレベルを0.550超に大きくしながら、同時に、繊維対繊維の平均の摩擦係数のレベルを0.500未満に小さくする物質により被覆されている。この繊維はさらに上述のように処理されてもよい。
【0127】
低配向度の前駆体系物質であるナイロン繊維
本発明には、米国特許第6,001,476号の教示と相容れない部分がある。本発明においては、改良されてセメント性複合物の強化に使用するのに適するものとしたナイロン繊維は、この特許とは異なり、技術応用向けのナイロン繊維やナイロン繊維の織物の「前駆体」である。これらの前駆体の使用は、米国特許第6,001,476号において全体としては教示されていない。前駆体であるナイロン繊維は、通常、最終製品に必要とされる機械的、織物的特性を付与するためにさらに延伸処理、紡織処理、熱定着処理を行う必要がある中間製品である。これらの追加の生産工程を省くことは、商業的に望ましいことである。ナイロン繊維織物に比べ、前駆体系ナイロン繊維は、織物のナイロン繊維と比べ、低い結晶性と配向度、低い牽引強度と引張応力、高い破断伸長率という特徴がある。表6は、前駆体、織物及び技術応用向けのナイロン繊維の物理特性の違いとともに製造条件の違いをまとめたものである。
【0128】
異なる型のナイロン繊維の比較
【表6】
*40−80RVポリマーの一段紡糸
**750m/分で紡がれた40RVポリマーUDヤーンの延伸
繊維の分子配向度(本表では複屈折率で示される)が大きくなるほど、機械的特性は前駆体から織物、そして技術応用向け繊維へと移行することがわかる。
【0129】
したがって、本発明のこの局面は、コンクリートなどのセメント性マトリックスの強化に用いられるステープル繊維束によって具体化されている。この束は、複屈折率の平均値が0.0350超で0.0440未満、平均引張応力が10グラム/デニール超で25グラム/デニール未満、平均牽引強度が2.5グラム/デニール超で3.4グラム/デニール未満、平均伸長率が46%超で100%未満という特徴を有する低配向度の前駆体系ナイロン繊維を含む。
【0130】
場合によっては、化学的安定性が高められたことを特徴とする高品質の繊維を得るために選択された化学物質を繊維に含浸させする。その結果、その高品質の繊維は卓越した抗塩基性分解性を得る。このような化学物質には、例えば、酸分解性塩、ベンゼンフォスホン酸、マンガン塩、立体障害フェノール光安定剤、立体障害アミン光安定剤、紫外線安定化用燐化合物、燐、アミノ及びフェノール性酸化防止剤及び、ヨウ化銅、酢酸銅、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化亜鉛及びマイクロシリカなどがある。
【0131】
繊維には、例えばナイロン6.6、ナイロン6、ナイロン6.6とナイロン6の共重合体、ナイロン6.6と6.TAとナイロン6.4の共重合体からなる群から選択されたナイロン物質が含まれる。
【0132】
異なる糸を製造するのに実際に用いられている代表的な製造方法が二つある。第一の方法は「一段紡糸」と呼ばれる方法で、速度をさまざまに変化させることによって、異なる型の糸を製造するものである。「非延伸糸」は低い紡糸速度で製造され、「部分配向糸」(POY又は前駆体系ナイロン繊維)は高い紡糸速度で製造され、「全配向糸」(FOY又は技術応用向けナイロン繊維)は超高速の紡糸速度で製造される。第二の方法は、「非延伸糸」の低い紡糸速度の工程に続いて、繊維の配向度を希望値まで上げる少なくとも一段階の延伸を行うという、二つの工程からなるものである。表7に、一段紡糸における、前駆体型を含むさまざまな繊維タイプに対応した、すべての紡糸速度の例を示す。
【0133】
ナイロン6.6糸の一段紡糸
【表7】
【0134】
表8に750m/分と1000m/分の速度で紡糸されたポリマーRV値が40と80の低速紡糸の「非延伸」糸が、「前駆体」繊維の域まで延伸された結果を示す。
【0135】
ナイロン6.6糸の2段紡糸−延伸
【表8】
【0136】
表6で定義し、表7、8に記載されたようにして得られた「前駆体系ナイロン繊維」は、かつては、織物用加工糸を製造する際の延伸加工処理用の供給糸、及び扁平な(けん縮のない)織物糸または技術応用向けの糸を製造するための連続的(継続的)または2段階の(分割)延伸工程用の供給糸として主に用いられていた。本発明以前には、これらの繊維は強度と安定性が比較的低いために、織物の最終製品にも、コンクリートの強化材料にも、その他にも応用されなかった。
【0137】
しかしながら、後述するように、織物繊維に比較して配向度の低い前駆体系ナイロン繊維は、それに対応する低い引張応力、剛性、及び破断伸長率の大きさ、高い延伸性により、先行技術の教示とは対照的に、コンクリートの強化性能によい影響を与えるということが判明した。
【0138】
予想に反して、柔軟性の高い繊維はセメント性複合物と容易に混合され、複合物のセメント骨材間のさまざまな空間に容易に馴染んだ。その結果、骨材間の隙間内への混合と分布が改善し、繊維によるセメント性マトリックスのひび割れ防止力に非常に有益であることがわかった。低い引張応力のナイロン繊維の延伸性と強靱性により、セメント系組織における塑性収縮とひび割れ伝搬応力のもとで伸長することによる歪みと衝撃のエネルギーの吸収が可能となり、マトリックスがさらに効率的に強化される。
【0139】
摩擦の密着性理論によれば、低い引張応力の繊維は、滑り面どうしの実効接触面積を増加させるため、セメント系組織の骨材との間により大きな摩擦を生じさせる。このような摩擦力はセメント性複合物内における繊維の分散効率に大きく影響し、さらにひび割れを防止しようとしている繊維への界面間のずり応力移動の効率を高める。
【0140】
アモルファス配向度の低いナイロン繊維は、多くの水分とセメント活性成分を吸収する。このため、この繊維は相当程度にまで膨張し、周辺のマトリックスとより強く結合する。
【0141】
繊維を含んだセメント性複合物の流れ性は繊維の剛性に反比例する。したがって、低い引張応力と高い伸長率を有する柔軟性のある繊維により強化されたセメント性複合物は、コンクリート強化用の標準的な(市販の)繊維よりも、すぐれた流れ性を有しているはずである。複合物の加工性は改善され、コンクリートの高いスランプ値、すぐれた打ち込み性、相容性、仕上げ性また、すぐれたパイプ内での流動性、可塑性、目止め性、展開性、側壁への密着性、モルタル及びセメント性複合物のその他の微細骨材内での凝集力という特徴を有する。
【0142】
表7及び8にしたがって製造された前駆体系繊維を12mm長に切断し、FCB Cement and Concrete Institute(Trodenheim、ノルウェー)の報告ISBN番号82−4060−6に従い、1立米のコンクリートに一定量として400グラムの繊維を加えて、塑性ひび割れ減少可能性の評価を行った。
【0143】
表9と表10に、表7と表8で説明したPOY(部分配向糸)と延伸糸(Drawn Yarns)を対照として用いたひび割れ減少率(%)の比較を示す。
【0144】
POYナイロン6.6のすぐれたひび割れ防止性能
【表9】
紡糸仕上げ材−0.60%BK2170(ドイツ、ヘンケルKGaA製)
【0145】
延伸ナイロン6.6のすぐれたひび割れ防止性能
【表10】
紡糸仕上げ材−0.60%BK2170(ドイツ、ヘンケルKGaA製)
【0146】
表9にまとめた結果から、低い繊維配向度において塑性ひび割れ減少能力が向上していることわかる。紡糸速度が3,000〜4,500m/分で製造された代表的な前駆体系繊維が最もすぐれた結果を示している。
【0147】
表10の結果にまとめた結果から、低い牽引強度と引張応力、及び、高い伸長率の延伸糸を得るために非延伸ナイロン糸の標準的な延伸作業において延伸比を調節することにより、塑性ひび割れ防止可能性が改善された繊維が生み出される。
【0148】
したがって、本発明の前駆体系ナイロン繊維は、米国特許番号第6,001,476号が示す織物ナイロン糸に比して、繊維配向度と機械的特性の幅を広げている。これらの繊維は、セメント性複合物における塑性ひび割れ度の減少に大きく貢献する。
【0149】
セメント性複合物の強化のためにより適するように低配向度の前駆体系ナイロン繊維を改良する方法も、本発明のこの局面によって具体化される。この方法は3つの工程からなる。第1工程は、複屈折率の平均値が0.0350超で0.0440未満、平均引張応力が10グラム/デニール超で25グラム/デニール未満、平均牽引強度が2.5グラム/デニール超で3.4グラム/デニール未満、平均伸長率が46%超で100%未満であることを特徴とする低配向度の前駆体系ナイロン繊維を含むステープルの束を供給することを含む。第2工程には、含浸ナイロン繊維を得るために繊維に化学物質を含浸させることが含まれる。この化学物質は化学的安定性を向上させることによって繊維を改善するためのものが選ばれている。第3工程には低配向度の前駆体系ナイロン繊維の乾燥が含まれる。これにより改善された低配向度の前駆体系ナイロン繊維が得られる。
【0150】
本発明のこの局面はまた、低配向度の前駆体系ナイロン繊維のステープルを含む硬化されたセメント性マトリックスからなる繊維強化されたセメント性複合物によっても具体化される。この繊維は、複屈折率の平均値が0.0350超で0.0440未満、平均引張応力が10グラム/デニール超で25グラム/デニール未満、平均牽引強度が2.5グラム/デニール超で3.4グラム/デニール未満、平均伸長率が46%超で100%未満という特徴を有している。
【0151】
強化され硬化されたセメント性複合物の製造方法も本発明のこの局面によって具体化される。この方法には3つの工程がある。第1工程には、セメント性物質、水、複屈折率の平均値が0.0350超で0.0440未満、平均引張応力が10グラム/デニール超で25グラム/デニール未満、平均牽引強度が2.5グラム/デニール超で3.4グラム/デニール未満、平均伸長率が46%超で100%未満という特徴を有している低配向度の前駆体系ナイロンのステープルを含むセメント性マトリックスの成分を供給することが含まれる。第2工程には、繊維が十分に分散されるまで成分を混合することが含まれる。第3工程には、マトリックスを硬化することが含まれる。
【0152】
溶融紡糸繊維
溶融紡糸の工程は広範囲のポリマー系繊維に用いることができる。本発明を限定するものではない例として、ポリプロピレンを用いた実験データを示す。POY型のポリプロピレン繊維の紡糸条件、配向度、機械的特性及びひび割れ減少能力を表11に示す。
【0153】
POY(部分配向糸)ポリプロピレンのすぐれたひび割れ防止性能
【表11】
【0154】
この例では、ポリマーは融点160℃でメルトフローインデックスが23.0(グラム/10分)のアイソタクチックなポリプロピレンである。このポリマーは押し出し成形機内で溶融され、その後、溶融紡糸ラインで紡糸された。溶融温度は280℃で、直径0.300mmの34の細孔の紡糸口金が用いられた。急冷ゾーンは温度20℃で1ft/分の空気流である。収束距離は72”である。紡糸仕上げ材(0.6% Laviron NSO)は繊維重量比0.5%超でキスロールを通して塗布された。ポリマー処理量は、全ての紡糸速度において102デニールの最終紡糸(フィラメント当たり3.0デニール)となるよう設定された。
【0155】
これらの結果により、繊維には、マトリックスを強化するのに必要とされる牽引強度を最低レベル以上となるように維持させつつ、低いレベルの配向度、低い牽引強度及び引張応力、高い伸長値を持たせることで、ひび割れ減少性能が改善される傾向があることが示される。したがって、本発明におけるポリプロピレン繊維の紡糸パラメータとその結果である特性については、次のようなものが推奨される。
【0156】
本発明のこの局面による好適な実施例には、コンクリートなどのセメント性マトリックスの強化のための繊維ステープル束が含まれる。この束は、複屈折率が0.0185から0.0440の範囲にあることを特徴とする分子配向度を有する溶融紡糸繊維からなる。束には、例えば、複屈折率が0.0185から0.0230の範囲にある溶融紡糸ポリプロピレン繊維、又は、複屈折率が0.0350から0.0440の範囲にある溶融紡糸ナイロン繊維が含まれる。繊維ステープルの束は、さらに、引張応力が18グラム/デニール超で35グラム/デニール未満、好ましくはこれが22.00グラム/デニール超で27.00グラム/デニール未満、最も好ましくは27グラム/デニールであること、また牽引強度は2.1グラム/デニール超で3.7グラム/デニール未満、好ましくは2.70グラム/デニール超で3.00グラム/デニール未満、最も好ましくは3.00グラム/デニールであること、伸長率は30%超で225%未満、好ましくは50%超で125%未満、最も好ましくは90%であることを特徴としてもよい。
【0157】
本発明の好適な実施例によれば、延伸糸繊維はポリプロピレン繊維で、複屈折率が0.0185から0.0230の範囲にあることを特徴とする分子配向度を有している。本発明の他の好適な実施例によれば、延伸糸繊維はナイロン繊維で、複屈折率が0.0350から0.0440の範囲にあることを特徴とする分子配向度を有している。
【0158】
本発明の一部としての使用に適した延伸ポリプロピレン繊維は、低速紡糸及び連続的延伸継続して行うか、または2段階に分けた工程のいずれによっても得ることができる。表12は、延伸ポリプロピレン繊維の紡糸条件、配向度、機械的特性及びひび割れ減少可能性をまとめたものである。
【0159】
延伸ポリプロピレン糸のすぐれたひび割れ防止性能
【表12】
【0160】
融点160℃でメルトフローインデックスが23.0(グラム/10分)のアイソタクチックなポリプロピレンを用いた。このポリマーは押し出し成形機内で溶融され、その後、上述の溶融紡糸ラインで溶融温度280℃で紡糸された。直径0.300mmの34の細孔の紡糸口金が用いられた。35”の急冷ゾーンは温度20℃で1ft/分の空気流である。収束距離は72”である。ポリマー処理量は、1フィラメント当たり3.0デニール(直径22μm)の最終延伸繊維を製造するよう設定された。紡糸された糸は沸騰水の入った配向延伸槽で延伸された後に弛緩された。延伸比はロール速度比V2/V1により制御された。弛緩は150℃に蒸気加熱されたロールの上で行われた。ロール速度比V3/V2を0.85に維持することにより12%という一定値の弛緩が行われた。最終の延伸ロールV3の速度は60m/分であった。弛緩工程の後、仕上げ槽において潤滑仕上げ材が塗布された。この仕上げ材は、繊維を湿らせて、コンクリート内へすぐに分散するような表面特性に調整するように調製されたものである。仕上げポンプ比と仕上げ材濃度を制御して、0.6%(繊維重量超)のレベルの代表的な湿潤剤(例、ドイツのHenkel KGaA製のLaviron NSO)が塗布された。最終乾燥は、150℃に蒸気加熱された対のロール上で延伸糸12巻毎に行われた。
【0161】
表12にまとめた結果は、代表的な方法で紡糸された直後のポリプロピレンの標準的延伸工程において、標準的な技術応用向け繊維よりも低い牽引強度と引張応力、高い伸長率を有する延伸糸を得るために、延伸比を調節することによって、コンクリートのひび割れ防止可能性が改善された繊維が生み出されることを示している。
【0162】
表12には詳細な製造上のパラメータが表記されているが、本発明のこの局面には、セメント性マトリックスの強化に適した溶融紡糸合成繊維のステープルを製造するための3つの一般的な方法が含まれている。
【0163】
本発明に従いセメント性マトリックスの強化に適した溶融紡糸合成繊維のステープルを製造するための第1の方法は、3工程で構成される。第1工程には、ポリマーを融かし紡糸口金から押し出して延伸糸繊維を形成することが含まれる。第2工程には、対応する連続フィラメントヤーンで測定される繊維対金属の摩擦係数が0.400超であり、対応する連続フィラメントヤーンで測定される繊維対繊維の摩擦係数が0.700未満であることを特徴とする高品質の繊維を得るために、延伸糸繊維に紡糸仕上げを施すことが含まれる。第3工程は、延伸糸繊維をステープルに切断することを含んでいる。
【0164】
本発明に従いセメント性マトリックスの強化に適した溶融紡糸合成繊維のステープルを製造するための第2の方法も、3工程で構成される。第1工程には、低配向度の糸繊維の配向度と機械的特性を制御するために、標準的な1段紡糸工程を用いて管理された速度の下で低配向度の糸繊維を製造することが含まれる。第2工程には、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定される繊維対金属の摩擦係数が0.400超であり、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定される繊維対繊維の摩擦係数が0.700未満であることを特徴とする高品質の繊維を得るために、延伸糸繊維に紡糸仕上げを施すことを含んでいる。第3段階には、低配向度の糸繊維を切断してステープルにすることが含まれる。
【0165】
本発明に従いセメント性マトリックスの強化に適した溶融紡糸合成繊維のステープルを製造するための第3の方法は、4工程で構成される。第1工程には、現状の合成繊維を、最終用途のために潤滑処理された連続フィラメントヤーンまたはトウ形状にすることが含まれる。第2工程には、合成繊維に施された潤滑液の洗浄が含まれる。第3工程には、合成繊維の表面を異なる潤滑液で被覆し、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定される繊維対金属の摩擦係数が0.400超であり、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定される繊維対繊維の摩擦係数が0.700未満であることを特徴とする高品質の繊維を得ることが含まれる。第4工程には、繊維を切断してステープルにすることが含まれる。
【0166】
ポリプロピレン繊維の強化効率に対する表面特性の効果を実証するために、紡糸仕上げの湿潤効果に加え、前述の実施例から選んだ最適なPOY繊維及び延伸繊維を、市販の湿潤仕上げ材(ドイツ、Henkel KgaA製のLaviron NSO)と、ポリプロピレンPOY(BKM)の延伸織物に用いられる、高い繊維対金属の摩擦特性を付与するように特に調整された湿潤剤とで処理した。糸が含む仕上げ材量は0.6%(繊維重量超)に維持された。表13はこれら2種の仕上げ材によって付与された摩擦とひび割れ減少可能性を比較したものである。
【0167】
ポリプロピレン糸に対する紡糸仕上げの効果
【表13】
延伸紡糸速度=787m/分、延伸比=3.0
【0168】
POY紡糸速度は4,000m/分であった。Laviron標準紡糸仕上げ材は切断されたポリプロピレン繊維を水に分散させるために用いられた。BKM紡糸仕上げ材は、切断されたポリプロピレン繊維を水に分散させるためと、ポリプロピレン繊維を延伸織物糸にするために用いられた。
【0169】
摩擦特性は、上述のように連続フィラメントに基づいて測定された。これらの結果は、繊維対金属及び繊維対繊維の摩擦係数に対する紡糸仕上げの効果は、処理された繊維のひび割れ減少効率と相関性があることを示している。要約すると、繊維対繊維の摩擦値をしきい値未満に減らしつつ、繊維対金属の摩擦を増加させることにより、繊維のひび割れ減少効率能力は著しく改善される。
【0170】
ここでは市販の紡糸仕上げ材を例として挙げているが、繊維対金属の摩擦係数が0.400超、より好ましくは0.450超、最も好ましくは0.500増大させ、対応する連続フィラメントヤーンに基づいて測定された繊維対繊維の摩擦係数が0.700未満、より好ましくは0.600未満、最も好ましくは0.530未満に減少させるようなものであれば、どのような延伸織物紡糸仕上げ材でも本発明の一部として使用されるのに適している。繊維を被覆する仕上げ材は、例えば、非イオン性の乳化剤、石鹸、アニオン性の表面活性剤およびシリコン系の表面活性剤などの水溶液から得られるものであってよい。紡糸仕上げ材を塗布すると、通常、動粘度を少なくとも150センチストークスまで、表面張力を60dyne/cmまで増加させることで、低い繊維間密着力が与えられる。
【0171】
本発明の切断された繊維ステープルは直接にセメント性複合物に使用され、上述のローターリング試験で表面特性が特徴化された。4,000m/分で紡糸され、表11及び13に記載したように表面をBKM特殊延伸織物紡糸仕上げで処理したポリプロピレンのPOYフィラメントの切断繊維ステープルについて、比較試験を行った。塑性ひび割れ防止用のコンクリート強化に用いられる標準的なポリプロピレン繊維(引張応力51グラム/デニール、牽引強度5.2グラム/デニール、伸長率10%、断面は円形、セメント系組織への分散を促進するように従来の紡糸仕上げが施されたもの(例:Fibermesh stealth fibers type 6922))を比較基準として比較が行われた。両方のステープルとも扁平で(けん縮されていない)、フィランメント当たり3.0デニールで19mmの長さである。
【0172】
ローターリング試験方法で測定されたBKM繊維の表面特性は、標準の溶融紡糸短繊維ステープルの束(上記に定義)に比べ、繊維の隙間を開けるのに必要なエネルギー消費(f/m摩擦)が、少なくとも標準繊維よりも20%超大きく、紡糸リングの幅(繊維間の密着度)も少なくとも標準繊維よりも30%超大きい(本実験では40%である)というものである。これらの結果から、BKM紡糸仕上げされた本発明のステープルが著しく繊維間の密着力を低くすることが示される。
【0173】
ひび割れ耐性の試験方法は、上述の緊締リング試験とスランプ試験方法によって行った。
標準的なコンクリートの混合成分(Kg/m3)
圧潰セメント骨材 800
細圧潰セメント骨材 300
砂 600
セメント 400
水 223
実験用のコンクリート混合物は表14に示す繊維を含む。スランプ試験と緊締リング塑性収縮ひび割れ試験を3種の混合物について行った。
【0174】
実験用コンクリート混合物の構成
【表14】
*6922−“Stealth 6922”セメント系組織の塑性ひび割れ収縮減少用にFibermeshにより製造されている市販のポリプロピレン繊維。
【0175】
スランプ試験とひび割れ減少試験の結果
【表15】
【0176】
表14は、本発明の繊維が市販の標準的な繊維に比べ、塑性ひび割れ減少力に優れ、コンクリートのスランプにわずかな程度しか影響を及ぼさないことを示している。
【0177】
本発明の繊維は、1立米のコンクリートあたり400グラムの繊維が、強化されたコンクリートのスランプを15%未満に減少させながら、強化されていない同等のセメント性マトリックスに比べコンクリート内のセメント性マトリックスのひび割れ度を80%超も減少させるという程度に、コンクリート又はセメント系組織の強化に用いられる標準の繊維に比べ高いスランプ値を維持しつつ、すぐれた塑性ひび割れ抑止力を有していることを特徴とする。
【0178】
本発明のいくつかの好適な実施例では、本発明の繊維は、1立米のコンクリートあたり400グラムの繊維が、強化されたコンクリートのスランプを9%未満に減少させながら、強化されていない同等のセメント性マトリックスに比べコンクリート内のセメント性マトリックスのひび割れ度を90%超も減少させるという程度に、コンクリート又はセメント系組織の強化に用いられる標準の繊維に比べ高いスランプ値を維持しつつ、すぐれた塑性ひび割れ抑止力を有していることを特徴とする。
【0179】
さらなる好適な実施例によれば、硬化されたセメント性マトリックスからなる、合成繊維で強化されたセメント性複合物が提供される。このマトリックスには、複屈折率が0.0185から0.0440の範囲にあることを特徴とする分子配向度を有する溶融紡糸合成繊維が含まれる。
【0180】
さらなる好適な実施例によれば、強化され、硬化されたセメント性複合物の製造方法が開示されている。この製造方法は3工程よりなる。第1工程には、セメント性物質、水、及び複屈折率が0.0185から0.0440の範囲にあることを特徴とする分子配向度を有している溶融紡糸合成繊維のステープルを含むセメント性マトリックスを供給することが含まれる。第2工程には、溶融紡糸合成繊維が十分に成分中に分散されるまで混合することが含まれる。第3工程には、マトリックスを硬化させることが含まれる。
【0181】
本発明のアクリル繊維、前駆体系ナイロン繊維及び溶融紡糸合成繊維に関しては、繊維は典型としては平均の切断長が2mm超で50mm未満であり、平均の太さが1デニール超であり25デニール未満であることを特徴とするが、その他の長さ及び太さも本発明の範囲内にある。
【0182】
本発明のアクリル系繊維、前駆体系ナイロン繊維及び溶融紡糸合成繊維に関しては、繊維はけん縮されている場合もあるが、その他の場合には真っ直ぐである。
【0183】
結語
本発明の繊維は、表面被覆または引張応力の減少の結果としての特徴的な表面特性及び機械的特性を有するため、先行技術によるコンクリート及びセメント系組織の強化に用いられる繊維とは、本質的に異なっている。
【0184】
本発明の繊維により、湿式のセメント系組織での混合も、また、乾式のセメント系組織での予備混合も、短時間で容易なものとなる。さらに、本発明の繊維は、コンクリート、モルタル及びその他の微少骨材のセメント性複合物への分散性、相容性に優れている。本発明の繊維を用いて調整された硬化されたセメント性複合物は、繊維濃度が低くても塑性ひび割れ度が小さく、遅延ひび割れ度が小さく、塑性及び遅延収縮の程度が小さく、耐衝撃性が大きく、同等の繊維量であっても曲げ強さに優れ、ひび割れ前に大きな延伸性及び高い歪力を示す。さらに、セメント系組織により多くの繊維を含有させることが容易に可能となり、強化された組織のひび割れ阻止、強靱さ、曲げ強さが改善される。
【0185】
本発明は、特定の実施例と関連付けて記述されているが、当業者がみれば、多くの代替案、修正案、バリエーションがあることは明らかである。したがって、添付の請求の範囲の精神ならびに広い範囲にこれらのすべての代替案、修正案、バリエーションが含まれることが意図される。本明細書において言及したすべての出版物、特許、特許出願は、それぞれ個々の出版物、特許、特許出願が具体的かつ個別に引用として挿入されているのと同程度に、全体として明細書への引用としてここに挿入されている。さらに、本願中のいかなる引例の引用または特定も、これらの文献が本発明の先行技術であるということを認めていると解釈されるものではない。
Claims (2)
- セメント性マトリックスを強化するための繊維ステープル束であって、前記ステープル束が、複屈折率が0.0350から0.0440の範囲にある溶融紡糸ナイロン繊維からなるものであり、
さらに、前記繊維は引張応力が10グラム/デニール超で35グラム/デニール未満であり、牽引強度が2.1グラム/デニール超で3.7グラム/デニール未満であり、伸長率が30%超で225%未満であることを特徴とする繊維ステープル束。 - さらに、複屈折率が0.01850から0.0230の範囲にある溶融紡糸ポリプロピレン繊維を含む請求項1記載の繊維ステープル束。
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