JP4636374B2 - 合成樹脂製カップ状容器の熱結晶化処理方法 - Google Patents
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Description
(1)熱板が接触したフランジ面に小さなクレーター状の凹凸が発生し、外観が損なわれ、また蓋材によるシール性が不完全となる。なおこの凹凸は加熱により揮散した成分が、フランジ面と熱板との間にトラップされて発生するものと推定される。
(2)フランジだけに接触させて、フランジだけを加熱するためには、熱板を極く小型にする必要があり、フランジの全周に亘って加熱を均一にすることが困難である。
たとえば熱板の影響でプリフォームの胴部の一部で熱結晶化が進行してしまうと2軸延伸ブロー成形での延伸が不均一になってしまう。また当該部分の白化により外観が損なわれる。
(3)赤外線の照射のように非接触でないのでプリフォームや最終成形品を回転させて全周に亘って均一に加熱することができない。
このうち請求項1記載の発明の方法は、合成樹脂製カップ状容器のフランジの熱結晶化処理方法において、フランジをまず熱板で予熱し、その後にレーザー光の照射により加熱して熱結晶化すること、にある。
レーザー光の照射による加熱は、赤外線の照射のように非接触で加熱でき、そしてレーザー光は直線性に優れているので、所定箇所に限定して照射することができ、幅が数mm程度のフランジという限定した部分のみを加熱することが可能である。
また、このような変形や焼けが発生しないようにレーザー光を緩やかな条件で照射して加熱すると処理時間が長くなってしまう。
また、熱板で上下から挟み込むこともないので、レーザー光の出力を比較的小さくして時間を長くするような加熱条件であっても熱収縮が発生してフランジの幅がかなり狭くなってしまうという問題があることも判った。
すなわち、第1段階の熱板により予熱する工程(以下予熱工程と記す。)により、予め決めた温度範囲まで熱板からの熱伝導により短時間にフランジを予熱することができ、次に第2段階のレーザー光を照射して加熱する工程(以下加熱工程と記す。)では非接触で加熱するので、フランジ面での揮散成分によるクレーター状の凹凸の発生を防止することができ、熱板単独での加熱による凹凸発生の問題と、レーザー光照射単独での加熱による生産性の問題を共に解消することができる。
また、必要に応じてフランジ全体でなく、フランジの中でも限定された部分の熱結晶化処理が可能となる。たとえばフランジの基端部と先端部を除いた部分だけ、レーザー光を照射することもできるし、フランジの上面側近傍あるいは下面側近傍を除いた部分だけを限定して加熱して熱結晶化処理することも可能である。
この頸部についてはフランジ同様、予熱と加熱の2段階で加熱することもできるし、比較的薄肉であり、レーザー光照射による加熱のみとすることもできる。
なお、熱板での予熱は必ずしも上下から熱板で挟む上記方法に限定されるものではなく、目的に応じて上側だけ、あるいは下側だけを熱板とすることもできるが、変形に係る拘束を確実にするために少なくとも反対側を板片等で支えておくことが好ましい。
以下、フランジの所定部分を熱結晶化領域とした4つの例について説明する。
またレーザー照射による加熱工程ではレーザー光源を上面側だけに配設すれば良い。
また上面側に非晶領域(あるいは熱結晶化の進行のない領域)が確保でき、この非晶領域の靭性によりフランジ全体を割れ難くすることができると共に、アルミラミネートフィルムや樹脂合成紙等を基材とする蓋材を熱溶着により容易に接着することができ、容器を容易に、確実に密閉することができる。
またレーザー照射による加熱工程ではではレーザー光源を下面側だけに配設すれば良い。
請求項1または2記載の発明にあっては、フランジの加熱を熱板による予熱と、その後のレーザー光照射による加熱の2段階に分けて実施することにより、両者の長所を発揮させて、安定して、短時間にフランジに大きな変形のない、そしてフランジ面に凹凸のない容器、あるいはプリフォームを提供できる。
図1は本発明の熱結晶化処理方法を概略的に示す説明図であり、熱板33による予熱工程H1と、レーザー光32の照射による加熱工程H2と、冷却板35による冷却工程CLを有する。また、図2は予熱工程H1、図3は加熱工程H2、図5は冷却工程CLをそれぞれ取り出して示したものである。
プリフォーム11を、コア21aを嵌入し、フランジ14の上面14aを平板部21bに当接させた状態で回動固定治具21に倒立姿勢で固定する。この状態で、回動固定治具21を、軸体21cにより中心軸回りに回動させながら、レーザー照射装置31から照射されるレーザー光32をフランジ14の下面14b側から照射する。なお、図4は幅4mmのフランジ14に照射径4mmのレーザー光32を照射した状態をプリフォーム11の平面図で示す説明図であるが、レーザー光32の直進性により安定してこの照射状態を維持することができる。
(1)予熱工程H1
・熱板33の温度115〜135℃、予熱時間10秒
なお上記条件は、フランジ14に熱結晶化が進行しない(熱結晶化による白化が発生しない)範囲で、フランジ14の温度をPET樹脂のガラス転移温度(80℃程度)以上にして内部応力が十分緩和されるように予備試験により決めたものである。
(2)加熱工程H2
・使用したレーザー照射装置31;炭酸ガスレーザー装置(波長10.6μm)
パルス周波数1000HZ、パルス幅100μm、照射径4mm
・回動固定治具21の回転速度;60rpm
・照射時間;20秒
(3)冷却工程CL
・冷却板35の温度25〜30℃、冷却時間5秒
また、上記冷却工程CLまでの一連の工程で得られたプリフォーム11の白化状態を観察すると、図4中にクロスハッチングで示した環状の熱結晶化領域C(白化領域)が観察され、フランジ14の全周に亘って、一定幅で熱結晶化が実現されている。
また、図6中の部分拡大図はフランジ14の縦断面で熱結晶化領域Cをみたものであるが、上面14a側部分において、略一定厚みを非晶領域Nとして残して、他の部分(クロスハッチングした部分)を熱結晶化領域(C)とすることができた。
また、フランジ14の上面14a、および下面14bにはクレーター状の凹凸は無く、フランジ14が反って先端部が斜め上方に変形するようなこともなく水平で平坦な状態とすることができた。
このような実施例と比較例の結果から判るように熱板33による予熱工程H1を設けることにより、加熱のための時間を60秒から予熱も含めた30秒にまで短縮することができ、本発明の熱結晶化処理方法の効果が確認された。また、本発明の方法はフランジ14の変形(特にフランジ幅Wの熱収縮)を抑制する観点からも効果的であることが判った。
(a)はフランジ14の全厚さ範囲を、(b)は上面14a側部分を、(c)は中間部分を非晶状態Nのままにして上面14a側部分と下面14b側部分を熱結晶化領域Cとしたものである。
たとえば2軸延伸ブロー成形のカップ状容器はPET樹脂製に限定されるものではなく、ポリプロピレン系樹脂製のものも2軸延伸ブロー成形によって、優れた耐熱性、強度を有するカップ状容器となる。
2 ;胴部
3 ;底部
4 ;フランジ
4a;上面(シール面)
4b;下面
5 ;頸部
6 ;蓋材
11;プリフォーム
12;胴部
13;底部
14;フランジ
14a;上面(シール面)
14b;下面
15 ;頸部
21;回動固定治具
21a;コア
21b;平板部
21c;軸体
31;レーザー照射装置
32;レーザー光
33、33a、33b;熱板
35、35a、35b;冷却板
101;カップ状容器
104;フランジ
105;頸部
111;プリフォーム
114;フランジ
115;頸部
N ;非晶領域
C ;熱結晶化領域(白化領域)
W ;フランジ幅
H1;予熱工程
H2;加熱工程
CL;冷却工程
Claims (8)
- 合成樹脂製カップ状容器(1)のフランジ(4)の熱結晶化処理方法であって、前記フランジ(4)をまず熱板(33)で予熱し、その後にレーザー光(32)の照射により加熱して熱結晶化することを特徴とする熱結晶化処理方法。
- 2軸延伸ブロー成形して合成樹脂製カップ状容器を成形するためのプリフォーム(11)のフランジ(14)の熱結晶化処理方法であって、
前記フランジ(14)をまず熱板(33)で予熱し、その後レーザー光(32)の照射により加熱して熱結晶化することを特徴とする熱結晶化処理方法。 - 熱板(33)による予熱の温度および時間条件を、フランジ(4、14)で熱結晶化が進行しないように、かつフランジ(4、14)の内部応力の緩和が可能なように予め決めた範囲とした請求項1または2記載の熱結晶化処理方法。
- レーザー光(32)の照射後に、冷却板(35)でフランジ(4、14)を冷却するようにした請求項1、2または3記載の熱結晶化処理方法。
- フランジ(4、14)を上下から熱板(33a、33b)で挟んで予熱する請求項1、2、3または4記載の熱結晶化処理方法。
- フランジ(4、14)の下面側からレーザー光(32)を照射して、該フランジ(4、14)の上面(4a、14a)側部分を非晶部分とし、あるいは結晶化を進行させない状態で残して、他の部分を熱結晶化するようにした請求項1、2、3、4または5記載の熱結晶化処理方法。
- カップ状容器(1)、あるいはプリフォーム(11)を中心軸回りに回転させながら、レーザー光(32)をフランジ(4、14)に照射するようにした請求項1、2、3、4、5または6記載の熱結晶化処理方法。
- カップ状容器(1)、あるいはプリフォーム(11)をポリエチレンテレフタレート系樹脂製とした請求項1、2、3、4、5、6または7記載の熱結晶化処理方法。
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