JP4635318B2 - 水域浄化システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として港湾入口に設置される水域浄化システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近では、湾内において人工島建設や埋立造成といったウォータフロント開発が盛んに行われており、それに伴って水際での良好なアメニティ空間を形成していこうというニーズも強い。
【0003】
一方、港湾内の内水域は、外水域との水交換が行われにくいため、どうしても海水が停滞しやすい。
【0004】
そのため、水中の汚濁物質が沈降して底質内の有機物含有量が多くなり、海水への栄養塩類の溶出ひいては内部負荷が高くなるとともに、かかる富栄養化によって植物プランクトンが大量発生し、その死骸が沈降してやはり底質内の有機物含有量が増加する原因となる。
【0005】
そして、このような内部負荷の増加によって水質汚濁がさらに進行するといった悪循環が繰り返されるとともに、底層付近における有機物分解によって多量の酸素が消費されるため、水生生物の死滅を招くことにもつながる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、港湾における閉鎖性水域で生じる富栄養化は従来から大きな問題となっており、かかる問題を解決すべく、底泥の浚渫、底泥への覆砂といった対策がとられてきたが、前者の場合には、産業廃棄物である浚渫土をいかに処理するかといった二次的問題があらたに発生するとともに、後者の場合には、覆砂したとしても、内部負荷を長期的かつ十分に抑制することは困難であるという問題を生じていた。
【0007】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、港湾における閉鎖性水域の水質汚濁を防止可能な水域浄化システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る水域浄化システムは、請求項1に記載したように、港湾等の潮の干満が発生する閉鎖性水域である内水域と該内水域の外側に位置する外水域との境界線に沿って前記内水域と前記外水域との底層連通を確保しつつ表層連通を遮断可能な第1の水流制御体を設置するとともに、該第1の水流制御体の外水域側に表層連通を確保しつつ底層連通を遮断可能な第2の水流制御体を設けたものである。
【0009】
また、本発明に係る水域浄化システムは、前記第1の水流制御体を浮体で構成したものである。
【0010】
また、本発明に係る水域浄化システムは、前記浮体を中空体で構成するとともに該中空体内への注水及び排水を行うことができるように構成したものである。
【0011】
また、本発明に係る水域浄化システムは、前記第1の水流制御体の一部を所定の開閉ゲートで構成し、該開閉ゲートを閉鎖したときに前記表層連通が遮断されるようかつ開放したときに前記表層連通が確保されるように構成するとともに、前記第2の水流制御体の水中天端高さのうち、前記開閉ゲートの対面位置を前記開閉ゲートの非対面位置よりも低く設定したものである。
【0012】
本発明に係る水域浄化システムにおいては、港湾等の内水域と該内水域の外側に位置する外水域との境界線に沿って前記内水域と前記外水域との底層連通を確保しつつ表層連通を遮断可能な第1の水流制御体を設置するとともに、該第1の水流制御体の外水域側に表層連通を確保しつつ底層連通を遮断可能な第2の水流制御体を設けてあり、満ち潮時においては、外水域の底層水は第2の水流制御体で遮断されて内水域へは流入しないが、表層水については、第2の水流制御体の上方を通過した後、第1の水流制御体による表層遮断及び底層連通作用によって表層の流れを遮断されつつ、下方に潜り込むようにして内水域へと流入する。
【0013】
このように内水域と外水域との間では、底層にのみ水が流入するという、水流圧がいわばアンバランスな状態となるため、内水域では循環流が発生し、酸素をたっぷり含んだ表層水が底層に送り込まれるとともに、底泥の有機物分解によって貧酸素状態になった底層水が表層に浮上し酸素が補給されるというサイクルが行われることとなる。
【0014】
特に、外水域からは、第2の水流制御体による底層遮断作用によって、底層水ではなく表層水が流入するため、内水域の底層には、大量の酸素が供給されることとなる。
【0015】
一方、引き潮時においては、内水域から外水域に水が流れ出そうとすると、表層では第1の水流制御体による遮断作用のために表層水は外水域に流出せず、底層では、第1の水流制御体で何ら遮断されることなく底層水がスムーズに外水域へと流出する。
【0016】
したがって、貧酸素状態になりがちな内水域の底層水は、満潮時における内水域内での循環流によって表層水と水交換されるのみならず、潮の干満に応じて外水域の表層水と定期的に水交換されることとなる。
【0017】
内水域と外水域とを隔てる境界線はあくまで人為的あるいは仮想的な線であって、地形的に特段の特徴を有していることを要件とするものではない。すなわち、湾内の内水域と湾外の外水域との境界線をどのように設定するかは地形とは関係なく、任意である。
【0018】
港湾等の内水域は、主として海に面した港湾を対象とするが、潮の干満が発生する閉鎖性水域であればすべて本発明を適用することができる。例えば、海につながっている淡水湖なども本発明で言うところの内水域に包含される。
【0019】
第1の水流制御体は、該第1の水流制御体の設置箇所以外では内水域と外水域とが十分な程度に離隔されるように設置すればよく、例えば港湾の規模が小さい場合であれば、その湾口の対岸同士をつなぐように設置してもよいし、港湾の規模が大きい場合であれば、互いに対向する湾口の所定位置から一対の護岸をそれぞれ向かい合うように構築し、該一対の護岸の先端に挟まれる空間に設置するようにしてもよい。
【0020】
第1の水流制御体は、内水域と外水域との底層連通を確保しつつ表層連通を遮断できるようになっているのであればどのような構成でもよく、例えば防波堤状の堤体を湾口に設置するとともに該堤体の底層近傍に外水域と内水域とを連通させる連通開口を設ける、底層近傍だけに開口を設けた水門を設ける、底層付近に開口を設けた橋を設ける、架台やアンカーあるいはブイなどを利用しながら、シートやパネルを表層付近に鉛直配置するなどの構成が考えられる。
【0021】
このように第1の水流制御体はさまざまに構成することが可能であるが、該水流制御体を浮体で構成した場合においては、設置及び撤去をきわめて容易に行うことができる。
【0022】
さらに、かかる浮体を中空体で構成するとともに該中空体内への注水及び排水を行うことができるように構成した場合には、第1の水流制御体による上述した作用を確認しながら、その設置深さ、すなわち外水域と内水域との連通遮断深さを自在に設定することができる。
【0023】
一方、第2の水流制御体は、第1の水流制御体の外水域側に表層連通を確保しつつ底層連通を遮断可能である限り、その構成は任意であり、例えば潜堤で構成することができる。
【0024】
ここで、第1の水流制御体の一部を所定の開閉ゲートで構成し、該開閉ゲートを閉鎖したときに前記表層連通が遮断されるようかつ開放したときに前記表層連通が確保されるように構成するとともに、前記第2の水流制御体の水中天端高さのうち、前記開閉ゲートの対面位置を前記開閉ゲートの非対面位置よりも低く設定したならば、開閉ゲートを開くことによって大型船舶でも通過することが可能となる。そして、常時は、開閉ゲートを閉じておくことにより、第1の水流制御体及び第2の水流制御体による内水域の浄化を継続して行うことができる。
【0025】
第2の水流制御体のうち、開閉ゲートの対面位置に相当する水中天端高さをどの程度低く設定するかどうかは、通過させたい船舶の形状や大きさ、例えば満載喫水線から船底までの深さに応じて適宜決定すればよい。
【0026】
なお、開閉ゲートを設置した箇所については、大型船舶を通過させるべく、第2の水流制御体の水中天端高さを低く設定してあり、その分、外水域からの酸素補給機能が若干低下することになるが、その他の箇所については、外水域からの十分な酸素補給が期待できるため、全体として浄化機能が劣るおそれはほとんどない。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る水域浄化システムの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0028】
(第1実施形態)
【0029】
図1は、本実施形態に係る水域浄化システムを示した図であり、(a)は配置図、(b)はA―A線方向に沿う断面図である。
【0030】
本実施形態に係る水域浄化システムは、港湾1の内水域2と該内水域の外側に位置する外水域3との境界線、ここでは湾口4の対岸同士をつなぐ直線に沿って第1の水流制御体5を設置してなり、該第1の水流制御体は、内水域2と外水域3との底層連通を確保しつつ表層連通を遮断できるようになっている。
【0031】
すなわち、第1の水流制御体5は、同図(b)及び図2でよくわかるように、浮体としてのコンクリート製中空体6で構成してあり、該コンクリート製中空体の側面による防波堤類似の機能によって、海水面から深さH1までの表層における内水域2と外水域3との連通を遮断してその流れを遮断するとともに、コンクリート製中空体6の底面から海底までの深さH2までの底層における内水域2と外水域3との連通を確保できるようになっている。
【0032】
第1の水流制御体5は、ワイヤーやドルフィンで適宜係留し、その移動を拘束しておけばよい。
【0033】
ここで、第1の水流制御体5は、その中空内部に水中ポンプ7を設置するとともに該水中ポンプを利用したコンクリート製中空体6内への注水や排水を行うことができるようになっており、コンクリート製中空体6の底面から海底までの深さH2、言い換えれば底層での連通高さ及び表層での遮断高さを自在に調整できるようになっている。具体的には、地理的条件や内水域の水質汚濁状況等を考慮しつつ、コンクリート製中空体6内の水を排水し又は注水することにより、水流制御体5の最適浮上位置を決定するようにすればよい。
【0034】
一方、第1の水流制御体5の外水域側には第2の水流制御体としての潜堤8を設けてあり、該潜堤は、表層連通を確保しつつ底層連通を遮断できるようになっている。
【0035】
本実施形態に係る水域浄化システムにおいては、内水域2と外水域3との底層連通を確保しつつ表層連通を遮断可能な第1の水流制御体5を設置するとともに、該第1の水流制御体の外水域側に表層連通を確保しつつ底層連通を遮断可能な第2の水流制御体としての潜堤8を設けてあり、満ち潮時においては、図3(a)に示すように、外水域3の底層水は、潜堤8で遮断されて内水域2へは流入しないが、表層水については、潜堤8の上方を通過した後、第1の水流制御体5による表層遮断及び底層連通作用によって表層の流れを遮断されつつ、下方に潜り込むようにして内水域2へと流入する。
【0036】
このように内水域2と外水域3との間では、底層にのみ水が流入するという、水流圧がいわばアンバランスな状態となるため、内水域2では同図矢印に示すような循環流が発生し、酸素をたっぷり含んだ表層水が底層に送り込まれるとともに、底泥の有機物分解によって貧酸素状態になった底層水が表層に浮上し酸素が補給されるというサイクルが行われることとなる。
【0037】
特に、外水域3からは、潜堤8による底層遮断作用によって、底層水ではなく表層水が流入するため、内水域2の底層には、大量の酸素が供給されることとなる。
【0038】
一方、引き潮時においては同図(b)に示すように、内水域2から外水域3に水が流れ出そうとすると、表層では第1の水流制御体5による遮断作用のために表層水は外水域に流出せず、底層では、第1の水流制御体5で何ら遮断されることなく底層水がスムーズに外水域3へと流出する。
【0039】
なお、一定期間にわたる上述した浄化作用によって内水域2が浄化されたならば、第1の水流制御体5を適宜撤去し、別の港湾に転用することも可能である。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る水域浄化システムによれば、貧酸素状態になりがちな内水域2の底層水が、満潮時における内水域2内での循環流によって表層水と水交換されるのみならず、潮の干満に応じて外水域3の表層水と定期的に水交換されることとなり、底層付近が貧酸素状態となるのを未然に防止するとともに該底層付近を好気性状態に維持することが可能となる。
【0041】
そのため、内水域2における内部負荷、すなわち底泥からの栄養塩の溶出を減少させて水質汚濁の進行を止めることが可能となり、閉鎖性水域ゆえに水質汚濁が進行しがちな内水域2を、人工的なエネルギーを何ら消費することなく自然に浄化することが可能となる。
【0042】
なお、底層付近が好気性に変化することにより、底泥の有機物分解が促進されるとともに水生生物の棲息に適した環境となることや、循環流によって浮上した底泥内の有機物が酸素の豊富な表層近傍で効率よく分解されることは言うまでもない。
【0043】
また、本実施形態に係る水域浄化システムによれば、第1の水流制御体5を浮体としてのコンクリート製中空体6で構成したので、設置及び撤去をきわめて容易に行うことができるとともに、このような浮体で構成された第1の水流制御体5に水中ポンプ7を設置し、コンクリート製中空体6内への注水や排水を行うことができるように構成したので、第1の水流制御体5による上述した作用を確認しながら、コンクリート製中空体6の底面から海底までの深さH2、言い換えれば底層での連通高さ及び表層での遮断高さを自在に設定することが可能となり、内水域2の水質汚濁の程度に応じて最適な調整が可能となる。
【0044】
本実施形態では、第1の水流制御体を浮体であるコンクリート製中空体6で構成したが、これに代えて図4に示すように、防波堤状の堤体11を湾口4に設置するとともに該堤体の底層近傍に外水域3と内水域2とを連通させる連通開口12を設けて構成するようにしてもよい。
【0045】
かかる構成においても上述の実施形態と同様、満ち潮時においては、図4(a)の実線で示すように、外水域3の底層水は、潜堤8で遮断されて内水域2へは流入しないが、表層水については、潜堤8の上方を通過した後、第1の水流制御体である堤体11による表層遮断及び該堤体に設けられた連通開口12による底層連通作用によって表層の流れを遮断されつつ、下方に潜り込むようにして内水域2へと流入する。
【0046】
このように内水域2と外水域3との間では、底層にのみ水が流入するという、水流圧がいわばアンバランスな状態となるため、内水域2では同図実線の矢印に示すような循環流が発生し、酸素をたっぷり含んだ表層水が底層に送り込まれるとともに、底泥の有機物分解によって貧酸素状態になった底層水が表層に浮上し酸素が補給されるというサイクルが行われることとなる。
【0047】
特に、外水域3からは、潜堤8による底層遮断作用によって、底層水ではなく表層水が流入するため、内水域2の底層には、大量の酸素が供給されることとなる。
【0048】
一方、引き潮時においては同図破線で示すように、内水域2から外水域3に水が流れ出そうとすると、表層では堤体11による遮断作用のために表層水は外水域に流出せず、底層では、堤体11に設けられた連通開口12を介して底層水がスムーズに外水域3へと流出する。
【0049】
その他の作用効果についても上述の実施形態と同様であるが、ここではその説明を省略する。
【0050】
(第2実施形態)
【0051】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図5は、本実施形態に係る水域浄化システムを示した図であり、(a)は平面図、(b)はD―D線方向から見た矢視図である。また、図6は、図5のE―E線方向から見た矢視図、図7は、図5のF―F線及びG―G線に沿う断面図である。
【0053】
本実施形態に係る水域浄化システムは、内水域2と外水域3との境界線に沿って第1の水流制御体31を設置してなり、該第1の水流制御体は、内水域2と外水域3との底層連通を確保しつつ表層連通を遮断できるようになっているとともに、第1の水流制御体31の外水域側には第2の水流制御体としての潜堤37を設けてあり、該潜堤は、表層連通を確保しつつ底層連通を遮断できるようになっている。
【0054】
ここで、本実施形態に係る第1の水流制御体31は、船舶が航行しない沿岸付近に設置された堤体32、32と該堤体の間に挟まれた空間内に設置された開閉ゲート33とからなり、堤体32は、堤体11と同様、底層に連通開口12を設けてある。
【0055】
開閉ゲート33は、ゲート本体36を降ろして閉鎖したときに表層連通が遮断されるよう、かつ上昇させて開放したときに表層連通が確保されるように構成してある。
【0056】
一方、潜堤37は、水中天端高さのうち、開閉ゲート33の対面位置を該開閉ゲートの非対面位置よりも低く設定して船舶通過用天端38としてある。
【0057】
開閉ゲート33の対面位置に相当する水中天端高さ、すなわち船舶通過用天端38の高さをどの程度低く設定するかどうかは、通過させたい船舶の形状や大きさ、例えば満載喫水線から船底までの深さに応じて適宜決定すればよい。
【0058】
本実施形態に係る水域浄化システムにおいて開閉ゲート33が設置されていない箇所については、満ち潮時、図7(a)の実線で示すように、外水域3の底層水は、潜堤37で遮断されて内水域2へは流入しないが、表層水については、潜堤37の上方を通過した後、堤体32による表層遮断及び該堤体に設けられた連通開口12による底層連通作用によって表層の流れを遮断されつつ、下方に潜り込むようにして内水域2へと流入する。
【0059】
このように内水域2と外水域3との間では、底層にのみ水が流入するという、水流圧がいわばアンバランスな状態となるため、内水域2では同図実線の矢印に示すような循環流が発生し、酸素をたっぷり含んだ表層水が底層に送り込まれるとともに、底泥の有機物分解によって貧酸素状態になった底層水が表層に浮上し酸素が補給されるというサイクルが行われることとなる。
【0060】
特に、外水域3からは、潜堤37による底層遮断作用によって、底層水ではなく表層水が流入するため、内水域2の底層には、大量の酸素が供給されることとなる。
【0061】
また、引き潮時においては同図破線で示すように、内水域2から外水域3に水が流れ出そうとすると、表層では堤体32による遮断作用のために表層水は外水域に流出せず、底層では、堤体32に設けられた連通開口12を介して底層水がスムーズに外水域3へと流出する。
【0062】
これに対し、開閉ゲート33が設置されている箇所については、大型船舶39が通過するときだけ開閉ゲート33を開いてこれを通過させ、常時は、開閉ゲート33を閉じておく。
【0063】
このようにすると、常時は、開閉ゲート33を閉じておくことにより、開閉ゲート33が設置されていない箇所とほぼ同様の作用によって、内水域の浄化が継続して行わる。すなわち、満ち潮時には、図7(b)の実線で示すように、外水域3の底層水は、潜堤37で遮断されて内水域2へは流入しないが、表層水については、潜堤37に形成された船舶通過用天端38の上方を通過した後、開閉ゲート33による表層遮断及び底層連通作用によって表層の流れを遮断されつつ、ゲート本体36の下方をくぐるようにして内水域2へと流入する。また、引き潮時においては同図破線で示すように、内水域2から外水域3に水が流れ出そうとすると、表層では開閉ゲート33による遮断作用のために表層水は外水域に流出せず、底層では、底層水がスムーズに外水域3へと流出する。
【0064】
なお、開閉ゲート33の対面位置については、潜堤37の天端を下げて船舶通過用天端38としてあるため、その分、外水域3からの酸素補給機能が若干低下することになるが、その他の箇所については、外水域3からの十分な酸素補給が期待できるため、全体として浄化機能が劣るおそれはほとんどない。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係る水域浄化システムによれば、貧酸素状態になりがちな内水域2の底層水が、満潮時における内水域2内での循環流によって表層水と水交換されるのみならず、潮の干満に応じて外水域3の表層水と定期的に水交換されることとなり、底層付近が貧酸素状態となるのを未然に防止するとともに該底層付近を好気性状態に維持することが可能となる。
【0066】
そのため、内水域2における内部負荷、すなわち底泥からの栄養塩の溶出を減少させて水質汚濁の進行を止めることが可能となり、閉鎖性水域ゆえに水質汚濁が進行しがちな内水域2を、人工的なエネルギーを何ら消費することなく自然に浄化することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態に係る水域浄化システムによれば、第1の水流制御体31の一部を開閉ゲート33で構成し、該開閉ゲートを閉鎖したときに表層連通が遮断されるようかつ開放したときに表層連通が確保されるように構成するとともに、第2の水流制御体である潜堤37の水中天端高さのうち、開閉ゲート33の対面位置を非対面位置よりも低く設定したので、開閉ゲート33を開くことによって大型船舶39でも通過することが可能となる。そして、常時は、開閉ゲート33を閉じておくことにより、第1の水流制御体31及び第2の水流制御体である潜堤37による内水域の浄化を継続して行うことが可能となる。
【0068】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る水域浄化システムによれば、貧酸素状態になりがちな内水域の底層水が、満潮時における内水域内での循環流によって表層水と水交換されるのみならず、潮の干満に応じて外水域の表層水と定期的に水交換されることとなり、底層付近が貧酸素状態となるのを未然に防止するとともに該底層付近を好気性状態に維持することが可能となる。
【0069】
そのため、内水域における内部負荷、すなわち底泥からの栄養塩の溶出を減少させて水質汚濁の進行を止めることが可能となり、閉鎖性水域ゆえに水質汚濁が進行しがちな内水域2を、人工的なエネルギーを何ら消費することなく自然に浄化することが可能となる。
【0070】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る水域浄化システムの図であり、(a)は配置図、(b)はA―A線に沿う断面図。
【図2】本実施形態に係る水域浄化システムの図であり、図1のB―B線方向から見た矢視図。
【図3】本実施形態に係る水域浄化システムの作用を示した図。
【図4】変形例に係る水域浄化システムの図であり、(a)は断面図、(b)はC―C線方向から見た矢視図。
【図5】第2実施形態に係る水域浄化システムの図であり、(a)は平面図、(b)はD―D線方向から見た矢視図。
【図6】図5のE―E線方向から見た矢視図。
【図7】第2実施形態に係る水域浄化システムの図であり、(a)は図5のG―G線に沿う断面図、(b)はF―F線方向に沿う断面図。
【符号の説明】
2 内水域
3 外水域
5 第1の水流制御体
6 コンクリート製中空体(浮体)
8 潜堤(第2の水流制御体)
11 堤体(第1の水流制御体)
31 第1の水流制御体
32 堤体(第1の水流制御体)
33 開閉ゲート(第1の水流制御体)
37 潜堤(第2の水流制御体)

Claims (4)

  1. 港湾等の潮の干満が発生する閉鎖性水域である内水域と該内水域の外側に位置する外水域との境界線に沿って前記内水域と前記外水域との底層連通を確保しつつ表層連通を遮断可能な第1の水流制御体を設置するとともに、該第1の水流制御体の外水域側に表層連通を確保しつつ底層連通を遮断可能な第2の水流制御体を設けたことを特徴とする水域浄化システム。
  2. 前記第1の水流制御体を浮体で構成した請求項1記載の水域浄化システム。
  3. 前記浮体を中空体で構成するとともに該中空体内への注水及び排水を行うことができるように構成した請求項2記載の水域浄化システム。
  4. 前記第1の水流制御体の一部を所定の開閉ゲートで構成し、該開閉ゲートを閉鎖したときに前記表層連通が遮断されるようかつ開放したときに前記表層連通が確保されるように構成するとともに、前記第2の水流制御体の水中天端高さのうち、前記開閉ゲートの対面位置を前記開閉ゲートの非対面位置よりも低く設定した請求項1記載の水域浄化システム。
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