JP4635206B2 - 管内部の表面改質または洗浄方法及び該方法に使用される管内部の表面改質または洗浄装置 - Google Patents

管内部の表面改質または洗浄方法及び該方法に使用される管内部の表面改質または洗浄装置 Download PDF

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本発明は,管を有する機械部品や構造物などで,管内面にピーニングを実施して圧縮残留応力を導入して,原子力プラントの配管などの応力腐食割れを防止したり,エンジンのコモンレール式燃料噴射装置におけるコモンレール、車両に使用される中空スタビライザ、中空トーションバーなどの疲労強度を向上したり,あるいは交差穴を有する機械部品などのバリ取りを行う等、管内部の表面を改質したり、あるいは、熱交換器などの管内部の表面を洗浄する等の、管内部の表面改質または洗浄方法及び該方法に使用される管内部の表面改質または洗浄装置に関する。
従来から管内部の表面を改質する(ピーニング)方法としては、エア式ショットピーニングがある(例えば、特許文献1、2参照)。
この方法は、ショットと呼ばれる微細な球を高圧空気によって加速し、ノズルと呼ばれる噴き出し口から処理対象部品に高速で吹き付けることにより、対象部品表面に残留圧縮応力を付加するものである。
しかしながら、この方法では、管内部を有効に処理するには構造が複雑になるという問題があった。
一方、ショットを用いない管内部のピーニング方法としては、ウォータージェットピーニングがある(例えば、特許文献3、4参照)。
この方法は、液中にてノズルから噴射するキャビテーションを伴う高速水噴流を金属材料表面に直接衝突させてキャビテーション気泡を崩壊させ、その衝撃圧で金属材料表面部の残留応力を解放するものである。
キャビテーションは、一般にポンプなどの流体機械の表面を壊食するなど悪影響を与える現象として知られているが、その一方で、キャビテーションの崩壊衝撃力は、ショットピーニングのごとく、金属材料の表面改質による高強度化に有効利用することができ、近年では部品洗浄の分野にも利用されている。
これまでに,管内部の圧力を変化させるとキャビテーション気泡の崩壊領域、すなわちピーニング領域が変化し,キャビテーション噴流の噴射圧力p1と管内部の圧力p2の圧力の比であるキャビテーション数κにより,同一の管内径の場合には,キャビテーション数κによりピーニング領域を制御できることが判明していた(非特許文献1参照)。
しかしながら,管の内径が異なると,どの領域がピーニングできるか全く不明であるという課題がある。
特開2000−233625号公報 特開2000−343429号公報 特開平10−076467号公報 特開2005−238125号公報 祖山均、篠崎侑一「細管へのキャビテーション・ショットレス・ピーニングの適用」日本材料学会第54期学術講演会講演論文集、265(2005) 祖山均,「キャビテーション噴流による材料試験と表面改質」,材料,47巻,4号,pp. 381-387,1998年
本発明の課題は、管の内径が異なっても、キャビテーション気泡の崩壊領域を制御することができる管内部の表面改質または洗浄方法及び該方法に使用される管内部の表面改質または洗浄装置を提供することである。
上記課題を達成するために、本発明の管内部の表面改質または洗浄方法は、ノズルから高圧液体を管の内部に噴射して、高圧液体の噴流まわりにキャビテーションを発生させ、キャビテーション気泡の崩壊衝撃力により管内部の表面を改質または洗浄する方法であって、前記管内径と前記ノズル口径に応じて、前記高圧液体の噴射圧力と前記管内部の圧力を制御することにより前記管内部のキャビテーション気泡の崩壊領域を制御する管内部の表面改質または洗浄方法において、前記管内径D,前記ノズル口径d,前記高圧液体の噴射圧力p1,前記管内部圧力p2,前記崩壊領域xとした場合、以下の関係式が成立することを特徴とする。
Figure 0004635206
この特徴によれば、所定の管内部のキャビテーション気泡の崩壊領域にキャビテーション気泡の崩壊衝撃力を作用させることができるので、効率が良い処理が可能となる。そして、管内径Dとキャビテーション気泡の崩壊領域xに応じて,ノズル口径d,噴射圧力p1,管内部の圧力p2を選定して処理を行うことができる。
本発明の管内部の表面改質または洗浄方法は、前記ノズルを前記管外部に配置して、前記管内部を液体で充満するとともに、前記高圧液体を液体中に噴射することを特徴とする。
キャビテーションは,沸騰と同様に液体が気体になる現象である。ただし,キャビテーションの場合は,流速が増大して,圧力が飽和蒸気圧まで低下して気体になる。速度が低下して圧力が回復するときに,短時間に気泡が収縮してマイクロジェットや衝撃波(収縮後の再膨張による)を生じて衝撃力が発生する。キャビテーションの場合にも,沸騰と同様に,小さな気泡(通常,水中に8ppm程度空気が溶けている)からキャビテーションになるので,大きな気泡からキャビテーションになると,大きなキャビテーション気泡になる。しかし,収縮時に小さくなれないので,衝撃力が気泡の再膨張により緩慢になり,衝撃力が極端に弱まる。この気体により衝撃力が弱まることをクッション効果と呼ぶ。
したがって、上記の本発明の方法によれば、クッション効果によるキャビテーション衝撃力が弱まることはない。
本発明の管内部の表面改質または洗浄方法は、前記液体が水であることを特徴とする。
これによれば、本発明の方法を安価に実施することができる。
本発明の管は、上記管内部の表面改質または洗浄方法で製造されたことを特徴とする。
これによれば、適切に所定の管内部のキャビテーション気泡の崩壊領域にキャビテーション気泡の崩壊衝撃力が作用した管が得られる。
本発明の管内部の表面改質または洗浄方法に使用される管内の表面改質または洗浄装置は、管と、該管内部に高圧液体を噴射するノズルと、前記高圧液体の噴射圧力p1を制御する第1圧力制御手段と、前記管内部の圧力p2を制御する第2圧力制御手段と、前記管内径Dと前記ノズル口径dに応じて、前記高圧液体の噴射圧力p1と前記管内部の圧力p2を制御することにより前記管内部のキャビテーション気泡の崩壊領域xを制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
この特徴によれば、簡単に所定の管内部のキャビテーション気泡の崩壊領域にキャビテーション気泡の崩壊衝撃力作用させることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の方法及び装置の構成図、図2は本発明に用いられる管2とノズル3における寸法関係の定義を示す図、図3は本発明に用いられるキャビテーション噴流試験装置を示す図である。
図1は管内部の表面改質または洗浄装置の構成図である。1は水が満たされたタンクであり、このタンク1内に管2が設置されている。したがって、管2の内部には水が充満されている。3はキャビテーション噴流を噴射するノズル、4はノズル3にポンプPからの高圧液体を供給するための管路、5は高圧液体の噴射圧力p1を制御する流量制御弁(第1圧力制御手段)、6は管2の内部に連通する管路、7は管2内部の圧力p2を制御する圧力制御弁(第2圧力制御手段)である。
なお、タンク1内の液体は水以外の液体、例えば油等であっても良い。また、本実施の形態では、ノズル3は管2の外部に配置されているが、管2の内部に配置しても良い。
図2は管2とノズル3の寸法関係を定義したものである。xはノズル上流側角部から圧痕の上流端と下流端の中心までの距離(スタンドオフ距離)、dはノズル口径、Dは管内径、xはノズル先端と管2との距離である。ここで、スタンドオフ距離xは、本発明のキャビテーション気泡の崩壊領域に相当する。
そして8は管内径D、ノズル口径d、スタンドオフ距離xを入力する入力手段、9はこの入力手段8に入力された管内径D、ノズル口径d、スタンドオフ距離xに応じて前記噴射圧力p1及び管内部の圧力p2を求め、この圧力p1及びp2となるように流量制御弁5及び圧力制御弁7を制御する制御手段である。
したがって、管2をタンク1内で管2の内部が水で充満するように設置して、ノズル3から高圧水を管2の内部に噴射して、噴流まわりにキャビテーション10を発生させ,キャビテーション気泡を管2の内部の表面に当てる。これにより、キャビテーション気泡の崩壊衝撃力が管2の内部の表面に作用して、管2の内部の応力腐食割れを防止したり,疲労強度を向上したり,あるいはバリ取りを行う等、管2の内部の表面を改質したり、あるいは、管2の内部を洗浄したり、管2の内部の表面の加工硬化、残留応力改善、疲労強度改善、洗浄効果などをもたらす。
そこで、本出願人は、管内径D、ノズル口径d、噴射圧力p1、管内部の圧力p2を種々の条件において試験し,スタンドオフ距離xを調べた結果,
Figure 0004635206
の関係を明らかにした。よってノズル口径d,噴射圧力p1,管内部の圧力p2を制御して,任意の管内径径D,スタンドオフ距離xを処理することができる。
上記数式1中の
Figure 0004635206
は、
Figure 0004635206
としても表せる。
したがって、予め実験により,定数のc1とc2を求めておき,処理する管内径Dとスタンドオフ距離xに応じて,ノズル口径d,噴射圧力p1,管内部の圧力p2を選定して処理を行う。
一般に,キャビテーション噴流におけるキャビテーション発達・崩壊領域は,キャビテーション数の関数であり,
Figure 0004635206
で表すことができる(例えば、非特許文献2参照)。
細い管内にキャビテーション噴流を流し込む場合について考えてみる。キャビテーション噴流よりも細い管にキャビテーションを流し込むと,一定量のキャビテーションが存在した場合には,直径Dの3乗に逆比例してキャビテーションが長くなる。またDに逆比例して流速が増大する。よって,一定量のキャビテーションが管内を下流に運ばれて崩壊することを考えると,x D4が一定となると考えられる。
一方,キャビテーション噴流は,dの2乗に比例してキャビテーションの発生量が増え(その分だけ下流に流れる),さらに流速もdの2乗に比例して増大すると考えられる。よって,x / d にキャビテーションの発生量(体積)2乗と,流速の2乗を勘案すると,x / d 5 = 一定,となる。
上記の数式1は以下の実験により求められた。図3はキャビテーション噴流試験装置を示す。実験では最大吐出し圧力30MPa、最大吐出し量3.0×10-2m3/minのポンプ100によりキャビテーション噴流を内径D=8〜18 mmのアルミニウム管101内に噴射した。なお、ポンプ100からノズル102の途中に高圧プランジャポンプ103を設けて、噴射圧力p1を調節した。また供試管101下流に弁104を取り付けて供試管内圧力p2を調節した。p1及びp2には絶対圧力を用いた。105、106は圧力ゲージ、107は弁である。キャビテーション噴流によってアルミニウム管内に生じた圧痕の上流端と下流端を目視により計測し、その範囲を処理領域とした。なお、図2の寸法定義はそのまま採用する。
本実験では、上記管内径D、ノズル口径dの条件に加え、キャビテーション噴流の噴射条件を噴射圧力p1および管内部の圧力p2を調節することで変化させ、種々の条件により、処理領域の変化を調べた。噴射時間は10分間一定とし、キャビテーション数κは、ノズル上流側圧力p1、ノズル下流側圧力p2および資料水の飽和蒸気圧pvから以下のように定義した。
Figure 0004635206
残留応力測定用の供試管にはD=10mm,肉厚2.5mmのステンレス管を用いた。残留応力は、供試管を切断し、X線回折式応力測定装置を用いて、管の残留応力σθを測定した。なお、応力定数には−369.5Mpa/deg.を用いた。
実験結果について説明する。図4は、D = 8〜18 mmのアルミニウム管をx=0mm、d=1.8mmでキャビテーション噴流を行った場合について、κとxの関係を、p1 = 30 MPaで処理した場合について、両対数グラフ上に示したものである。なお、図中Iは、圧痕の上流端と下流端の平均値を示す。また、図5は、図4と同様のデータを、xをD4 / d 5で無次元化して、κについて示す。これにより、Dが異なる場合には、κが同一でも、xは大きく異なる。しかし無次元化パラメータxD4 / d 5を用いると、κとxは両対数グラフ上で直線関係にある。
図6は、D =10mmのアルミニウム管をp1 = 30 MPa、x=10mm、でキャビテーション噴流を行った場合について、κとxの関係を1.4mm、1.8mm、2.0mmで処理した場合について、両対数グラフ上に示したものである。また、図7は、図6と同様のデータを、xをD4 / d 5で無次元化して、κについて示す。これにより、dが異なる場合にも,κが同一でも,xは大きく異なる。しかし無次元化パラメータxD4 / d 5を用いると、κとxは両対数グラフ上で直線関係にある。
この直線関係を用いることにより,処理する管内径Dと処理領域xに応じて,直径d,噴射圧力p1,管内圧力p2を選定して処理を行うことができる。
したがって、制御手段にはこれらの関数が記憶手段(図示せず)に記憶されている。そして、入力手段7に管内径D、ノズル口径d、スタンドオフ距離xが入力されると、記憶手段に記憶されている関数により噴射圧力p1及び管内部の圧力p2を求め、この圧力p1及びp2となるように制御手段により流量制御弁5及び圧力制御弁6が制御される。
これにより、管2の内部の所定のスタンドオフ距離xにおいて、キャビテーション気泡の崩壊衝撃力を作用させることができ、効率が良い処理が可能となる。
管内径D = 10 mm,肉厚2.5 mmのステンレス管を用いて,p1= 30 MPa, d = 2.0 mm,p= 1.1 MPa (κ= 0.037)で処理を行った。その結果,図8に示すように、x= 80 mm前後にσθ= 330 MPa程度の圧縮残留応力を導入できた。
実施例1と同様な管の内部にペイントを塗布して実施例1と同様な試験を行った結果,x= 80 mm前後でペイントが剥がれ,管内の洗浄が可能であることが判明した。
実施例1と同様な管に直径1 mm〜2 mm程度の孔をドリルで空けて,バリを管内面に突出させて,実施例1と同様な試験を行った結果,x = 80 mm前後の孔のバリが取れた。
本発明の効果について説明する。
請求項1に係る発明によれば、所定の管内部のキャビテーション気泡の崩壊領域にキャビテーション気泡の崩壊衝撃力を作用させることができるので、効率が良い処理が可能となる。そして、管内径Dとキャビテーション気泡の崩壊領域xに応じて,ノズル口径d,噴射圧力p1,管内部の圧力p2を選定して処理を行うことができる。
請求項に係る発明によれば、クッション効果によるキャビテーション衝撃力が弱まることはない。
請求項に係る発明によれば、安価に実施することができる。
請求項に係る発明によれば、適切に所定の管内部のキャビテーション気泡の崩壊領域にキャビテーション気泡の崩壊衝撃力が作用した管が得られる。
請求項に係る発明によれば、簡単に所定の管内部のキャビテーション気泡の崩壊領域にキャビテーション気泡の崩壊衝撃力作用させることができる。
本発明の方法及び装置の構成図である。 本発明に用いられる管2とノズル3における寸法関係の定義を示す図である。 本発明に用いられるキャビテーション噴流試験装置を示す図である。 本発明における管内径Dを変化させた場合におけるキャビテーション数κとスタンドオフ距離xとの関係を示す対数グラフである。 本発明における管内径Dを変化させた場合におけるキャビテーション数κと無次元数xD4 / d 5との関係を示す対数グラフである。 本発明におけるノズル口径dを変化させた場合におけるキャビテーション数κとスタンドオフ距離xとの関係を示す対数グラフである。 本発明におけるノズル口径dを変化させた場合におけるキャビテーション数κと無次元数xD4 / d 5との関係を示す対数グラフである。 本発明におけるスタンドオフ距離xと残留応力σθとの関係を示す図である。
符号の説明
1 タンク
2 管
3 ノズル
4 管路
5 流量制御弁(第1圧力制御手段)
6 管路
7 圧力制御弁(第2圧力制御手段)
8 入力手段
9 制御手段
10 キャビテーション
100 ポンプ
101 アルミニウム管(供試管)
102 ノズル
103 高圧プランジャポンプ
104、107 弁
105、106 圧力ゲージ

Claims (5)

  1. ノズルから高圧液体を管の内部に噴射して、高圧液体の噴流まわりにキャビテーションを発生させ、キャビテーション気泡の崩壊衝撃力により管内部の表面を改質または洗浄する方法であって
    前記管内径と前記ノズル口径に応じて、前記高圧液体の噴射圧力と前記管内部の圧力を制御することにより前記管内部のキャビテーション気泡の崩壊領域を制御する管内部の表面改質または洗浄方法において、
    前記管内径D,前記ノズル口径d,前記高圧液体の噴射圧力p1,前記管内部圧力p2,前記崩壊領域xとした場合、以下の関係式が成立することを特徴とする管内部の表面改質または洗浄方法
    Figure 0004635206
  2. 前記ノズルを前記管外部に配置して、前記管内部を液体で充満するとともに、前記高圧液体を液体中に噴射することを特徴とする請求項1に記載の管内部の表面改質または洗浄方法。
  3. 前記液体が水であることを特徴とする請求項1または2に記載の管内部の表面改質または洗浄方法。
  4. 請求項1ないしのいずれかに記載の方法で製造されたことを特徴とする管。
  5. 請求項1ないし3のいずれかに記載の方法に使用される管内の表面改質または洗浄装置において、
    管と、
    該管内部に高圧液体を噴射するノズルと、
    前記高圧液体の噴射圧力p1を制御する第1圧力制御手段と、
    前記管内部の圧力p2を制御する第2圧力制御手段と、
    前記管内径Dと前記ノズル口径dに応じて、前記高圧液体の噴射圧力p1と前記管内部の圧力p2を制御することにより前記管内部のキャビテーション気泡の崩壊領域xを制御する制御手段と、
    を備えたことを特徴とする管内部の表面改質または洗浄装置。
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