JP4633676B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び前記電子写真感光体の再生方法、画像形成方法 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び前記電子写真感光体の再生方法、画像形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、複写機、プリンタ等に好適に用いられ、使用後、容易に再生可能な電子写真感光体、前記電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ、画像形成装置、及び前記電子写真感光体の再生方法に関するものである。さらに、電子写真感光体を使用した画像形成方法に関するものである。
複写機やレーザープリンタなどの画像形成装置においては、電子写真感光体の帯電、露光、現像、転写等を順次行う電子写真方式が広く採用されている。このような画像形成プロセスの場合、転写工程後の電子写真感光体は必要に応じてその表面に残存するトナー等が除去された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。そして繰り返し使用するうちに、電子写真感光体の表面に全体的な摩耗又は局所的な摩耗・傷が発生したり、表面への放電生成物の付着、トナーやその添加剤の固着などの現象が発現したりすると、十分な画像品質が維持できなくなって電子写真感光体は使用限界に達する。使用限界に達した電子写真感光体は、新品の電子写真感光体と交換され、そのまま廃棄される。ところが、近年、環境問題、省資源、製造コスト低減などの観点からリサイクルの動きが活発になっており、電子写真感光体についても使用済みのものを回収して再利用する方法が提案されている。
電子写真感光体をリサイクルして使用する技術としては、(1)導電性基体上に形成した電荷輸送層や電荷発生層などを全て剥離させた後、導電性基体の表面を加工し直した後、導電性基体上に、再度電荷発生層や電荷輸送層等を形成する方法(例えば、特許文献1、2、3参照)、(2)熱硬化性樹脂による下塗り層を形成させておき、下塗り層よりも上層を剥離した後、感光層を形成する方法(例えば、特許文献4参照)、(3)水溶性の有機溶剤で溶解除去した後、再度、電荷発生層や電荷輸送層等を形成する方法(例えば、特許文献5、6参照)、(4)電荷輸送層のみを溶解除去し、再度、電荷輸送層を形成する方法(例えば特許文献7)、(5)表面層のみを機械的外力を加えて剥離し、再度表面層を形成する方法(例えば特許文献8)等が挙げられる。また、(6)三次元架層の直上の電荷輸送層を有機溶剤で溶解除去した後、再度電荷発生層を形成する方法(例えば特許文献9)がある。
これらの技術のうち(1)は、導電性基体上に形成された電荷発生層を完全に剥離させることは困難であり問題があった。また、全て剥離させた後、導電性基体の表面を再加工することは寸法制度の観点からも問題があった。(2)は、熱硬化樹脂を用いており、硬化に長時間が必要であるため、下層成分を含有しやすく、耐溶剤性に問題があった。(3)は、導電性基体が再生可能な程度にまで十分に光導電層全体を溶解除去することは非常に困難であり、溶解除去するためには多量の溶剤と処理時間を必要とする問題があった。(4)は、電荷輸送層を剥離する際に、有機溶剤によって他の層(電荷発生層など)が溶解又は房巡視、電荷発生材料及び結着樹脂の局所的な溶解、脱理を引き起こす問題があった。(5)は、保護層を機械的外力により剥離して用いる方法であるが、剥離後の再塗布時と乾燥時において、下層から保護層中へ電荷輸送性物質などが拡がって染み出してしまい、電気特性及び画像特性に不具合が生じる問題があった。(6)は、三次元架橋層として熱硬化性樹脂であるシロキサン、ウレタンを使用しているが、硬化に長時間必要で、電荷発生層成分を含有しやすく、十分に硬化することができず耐溶剤性が弱い問題があった。実施例のシロキサンを使う場合には、熱硬化反応の触媒として酸(酢酸)を使用していため、酢酸がドナーのアミンと錯体を作ってしまうため電気特性に不具合を生じる。また層内に残った酢酸を取り除くためには、長時間の乾燥が必要である。また、実施例に載されているウレタンを使った場合3次元架橋膜の架橋密度が十分とは言えず不足している。使用済み感光体を剥離、再形成する際に3次元架橋膜中成分が染み出してしまい電気特性及び画像特性に不具合が生じてしまう問題があった。
特開昭63−261361号公報 特開平4−255863号公報 特開平5−181289号公報 特開平5−341537号公報 特開平8−297371号公報 特開平11−24288号公報 特開平5−281757号公報 特開2003−149846号公報 特開2001−201883号公報
そこで、本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、耐溶剤性が非常に高く光架橋型感光層以下の層の特性が初期と変化無く優れた特性を維持でき、容易且つ安価に長期にわたって繰り返し再生することが可能な電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び前記電子写真感光体の再生方法、画像形成方法を提供することである。
前記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
本発明は、少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、光エネルギー照射手段によって硬化する光架橋型電荷輸送層、熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を順次積層してなる電子写真感光体において、前記光架橋型電荷輸送層が、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとを有し、前記光架橋型電荷輸送層の塗工液の固形分中のラジカル重合性官能基量が、3.5mmol/g以上9.5mmol/g以下で、かつ前記固形分中に官能基に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が120以下の電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーを25質量%以上含むことを特徴とする電子写真感光体である。
また、好ましくは、前記光架橋型電荷輸送層の塗工液の固形分中のラジカル重合性官能基量が、4.0mmol/g以上8.5mmol/g以下であることを特徴とする。
さらに、本発明は、前記電子写真感光体を使用後、残存した熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を溶剤により剥離し、熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層塗布液により前記記載の表面層を再形成したことを特徴とする。
また、本発明は、前記電子写真感光体を使用後、残存した熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を研摩して取り除き、熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層塗布液により前記載の表面層を再形成したことを特徴とする。
本発明は、前記記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段を有するものであり、画像形成装置本体に着脱可能としたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジである。
本発明は、前記記載の電子写真感光体を有することを特徴とする画像形成装置である。
本発明は、前記記載の電子写真感光体を使用後、残存した熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を溶剤により剥離し、熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層塗布液により前記載の表面層を再形成することを特徴とする電子写真感光体の再生方法である。
また、本発明は、前記記載の電子写真感光体を使用後、残存した熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を研摩して取り除き、熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層塗布液により前記載の表面層を再形成することを特徴とする電子写真感光体の再生方法である。
本発明は、前記記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行うことを特徴とする画像形成方法である。
本発明は、前記解決するための手段によって、耐溶剤性が非常に高く光架橋型感光層以下の層の特性が初期と変化無く優れた特性を維持でき、容易且つ安価に長期にわたって繰り返し再生することが可能な電子写真感光体、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び前記電子写真感光体の再生方法、画像形成方法を提供することが可能となった。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
本発明によれば、少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、光エネルギー照射手段によって硬化する光架橋型電荷輸送層、熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を順次積層してなる電子写真感光体において、前記光架橋型電荷輸送層が少なくとも電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーを有し、前記光架橋型電荷輸送層塗工液の固形分中のラジカル重合性官能基量が3.5mmol/g以上9.5mmol/g以下で、且つ前記固形分中に官能基に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が120以下の電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーを25質量%以上含むことを特徴とする電子写真感光体によって、光架橋型電荷輸送層以下の優れた特性を維持しつつ、容易且つ安価に長期にわたって繰り返し再生することが可能な電子写真感光体、その再生方法、前記再生方法により再生された電子写真感光体、前記電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することができる。
この理由としては以下の通りである。
繰り返し再生することが可能な電子写真感光体は、使用済みの感光体の少なくとも表層を剥離する必要がある。剥離後、再塗工時に溶剤に溶かした表層を塗工する。剥離後の表層直下の層は溶剤に晒されるため溶解が進行し、層中成分が溶剤に溶け出してしまう。そのため、表層を再形成した際、再生前の感光体よりも電気特性が悪くなってしまう。また、繰り返し再生される毎にこの電気特性は悪くなってしまう。以上のことから剥離した層直下の耐溶剤性が非常に高いことが必要である。耐溶剤性が高い膜としては3次元架橋膜が上げられ、その中でも熱硬化膜及び光硬化膜の耐溶剤性が特に高い。
熱硬化膜は、3次元架橋する際に高温で非常に長い乾燥時間が必要であり、乾燥中に下層の成分が硬化膜中に染込んでしまい、硬化不良が起こる。感光体に形成する際、感光体に熱的負荷が大きい。また、ウレタン結合を用いる場合には、イソシアネート基とヒドロキシル基の当量をあわせる必要があり、材料の選択性、配合量の選択性が低い。
光硬化膜は、3次元架橋する際に短時間で硬化させることが可能であり同じ官能基同士であれば架橋反応するため当量をあわせる必要もなく材料の選択性、配合量の選択性は熱硬化性樹脂に比べ高い。また、1官能で2本の結合手ができるため架橋密度が高くなる。そのため、下層成分の混入が熱硬化膜に比べ非常に少なく、硬化不良はおきにくい。
しかしながら、繰り返し再生を繰り返す感光体の剥離層直下に光架橋膜を使用する際は、何度も溶剤に晒されるため、単に光架橋膜を使用するだけではまだ不十分であり、膜中の架橋密度が高く、その架橋密度がラジカル重合性官能基が光架橋膜塗工液の固形分に対して3.5mmol/g以上9.5mmol/g以下で、且つ固形分中に官能基に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が120以下の電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーを25質量%以上であることを満たすことで、耐溶剤性が極めて高く、優れた電子写真特性を繰り返し再生を繰り返す中でも長期に渡り維持することができることを鋭意検討を重ね見出した。架橋膜塗工液を塗布する際、硬化不良を抑制するため非常に速く硬化反応が進行し、下層の染み出しを可能な限り抑える必要がある。この時、3官能以上のラジカル重合性モノマーは、架橋密度を高くするためラジカル重合性官能基以外の部分ができる限り短い方がよく、官能基に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が120以下であることが非常に重要である。ラジカル重合性官能基が光架橋膜塗工液の固形分に対して3mmol/g以下の場合、架橋密度が十分ではなく、また下層からの染み込みが多いため膜内部で硬化不良を起こしており、繰り返し再形成する際に徐々に下層成分が染みだしてくる。光架橋膜塗工液の固形分に対して9.5mmol/g以上である場合、架橋密度を高くすることはできるが電荷輸送性物質が少なくなってしまい良好な電気特性が得られなくなってしまう。ラジカル重合性官能基が光架橋膜塗工液の固形分に対して3mmol/g以上9.5mmol/g以下であることが非常に重要である。ラジカル重合性官能基がアクリロイロオキシ基、メタクリロイロオキシ基である場合、反応性が非常に高く、硬化反応が早く終わるため、下層からの染み出しが更に少なくなる。
次に本発明において用いられるラジカル重合性化合物について説明する。電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーについて説明する。
本発明に用いられるラジカル重合性化合物において電荷輸送性構造を有するものが良好に使用可能である。本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送性構造を有しており、且つラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。
これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表わされる官能基が挙げられる。
Figure 0004633676
ただし、式中、Xは、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R10)−基(R10は、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、または−S−基を表わす。
これらの置換基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば以下の式で表わされる官能基が挙げられる。
Figure 0004633676
ただし、式中、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR11基(R11は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、または−CONR1213(R12およびR13は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表わし、互いに同一または異なっていてもよい)、また、Xは上記(化1)式のXと同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表わす。ただし、Y,Xの少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。
これらの置換基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
なお、これらX,X、Yについての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、1個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がその分子中に1個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、1個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を2個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なっても良い。このラジカル重合性官能基の中においてアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が特に有用である。また1分子中のラジカル重合性官能基の数は、1個以上複数個でも良いが、光架橋型電荷輸送層の内部応力を抑え平滑な表面性を得やすいため、また良好な電気特性を持続させるためには、ラジカル重合性官能基が1個である方が一般的には好ましい。このようなラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を用いることでさらなる耐溶解性の向上および長期間安定した電気特性が実現された。ラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物の電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が高移動度性から好適で、中でも下記一般式(1)又は(2)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
Figure 0004633676
Figure 0004633676
式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR(Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を表す)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR(R及びRは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい。)を表わし、Ar、Arは置換もしくは未置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar、Arは置換もしくは未置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル2価基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。
以下に、一般式(1)、(2)の具体例を示す。
前記一般式(1)、(2)において、Rの置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていても良い。Rの置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。置換もしくは未置換のAr、Arはアリール基であり、アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が挙げられる。
前記縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as(asym)−インダセニル基、s(sym)−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
前記非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
また、前記Ar、Arで表わされるアリール基は例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
(2)アルキル基;
好ましくは、C〜C12とりわけC〜C、さらに好ましくはC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C〜Cのアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR);
は(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基;
アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C〜Cのアルコキシ基、C〜Cのアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基;
具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)以下の式で表される置換基
Figure 0004633676
式中、R及びRは各々独立に水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表わす。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC〜Cのアルコキシ基、C〜Cのアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R及びRは共同で環を形成してもよい。
具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
一方、前記Ar、Arで表わされるアリーレン基としては、前記Ar、Arで表されるアリール基から誘導される2価基である。
前記Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C〜C12、好ましくはC〜C、さらに好ましくはC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C〜Cのアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C〜Cのアルキル基もしくはC〜Cのアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C〜Cの環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C〜Cのアルキル基、C〜Cのアルコキシ基を有していても良い。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等のアルキレンオキシ2価基、あるいはエチレングリコール、プロピレングリコール等から誘導されるアルキレンジオキシ2価基、若しくはジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等から誘導される、ジ又はポリ(オキシアルキレン)オキシ2価基等が挙げられ、アルキレンエーテル2価基のアルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
ビニレン基は、
Figure 0004633676
又は、
Figure 0004633676
で表わされ、式中、Rは水素、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ)、アリール基(前記Ar、Arで表わされるアリール基と同じ)、aは1または2、bは1〜3を表わす。
前記Zは置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基、アルキレンオキシカルボニル基2価を表わす。
置換もしくは未置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル2価基が挙げられる。
アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン変性2価基が挙げられる。
また、本発明のラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物として更に好ましくは、下記一般式(3)の構造の化合物が挙げられる。
Figure 0004633676
式中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表わし、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、複数の場合は異なっても良い。s、tは0〜3の整数を表わす。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基
Figure 0004633676
を表わす。
上記一般式で表わされる化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
また本発明においては下記一般式(4)で示した特定のアクリル酸エステル化合物もラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物として良好に用いることができる。
Figure 0004633676
Arは置換又は無置換の芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基を表す。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
置換基としては、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、ベンジル基、ハロゲン原子が挙げられる。また、上記アルキル基、アルコキシ基は、さらにハロゲン原子、フェニル基を置換基として有していても良い。
Arは、少なくとも1個の3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格からなる一価基または二価基もしくは少なくとも1個の3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格からなる一価基または二価基を表すが、ここで、3級アミノ基を有する芳香族炭化水素骨格とは下記一般式(A)で表される。
Figure 0004633676
式中、R13、R14はアシル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Arはアリール基を表す。wは1〜3の整数を表す。R13、R14のアシル基としてはアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。R13、R14の置換もしくは無置換のアルキル基はArの置換基で述べたアルキル基と同様である。
13、R14の置換もしくは無置換のアリール基は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基に加えて下記一般式(B)で表される基を挙げることができる。
Figure 0004633676
式中、Bは −O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−及び以下の2価基から選ばれる。
Figure 0004633676
ここで、R21は、水素原子、Arで定義された置換もしくは無置換のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基を表し、R22は、水素原子、Ar定義された置換もしくは無置換のアルキル基、R13で定義された置換もしくは無置換のアリール基を表し、iは1〜12の整数、jは1〜3の整数を表す。
21のアルコキシ基の具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
21のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
21のアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジベンジルアミノ基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
Arのアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基を挙げることができる。
Ar、R13、R14は、Arで定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していても良い。
また、3級アミノ基を有する複素環式化合物骨格としては、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、ジオキサゾール、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイソキサジン、カルバゾール、フェノキサジン等のアミン構造を有する複素環化合物が挙げられる。これらは、Arで定義されたアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子を置換基として有していても良い。
、Bはアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルキル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基又はビニル基を有するアルコキシ基を表す。アルキル基、アルコキシ基は、Arで述べたものが同様に適用される。これら、B、とBは、どちらか一方のみが存在し、両方の存在は除外される。
一般式(4)のアクリル酸エステル化合物においてより好ましい構造として前記一般式(5)の化合物を挙げることができる。
Figure 0004633676
式中、R、Rは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子を表し、Ar、Arは、置換もしくは無置換のアリール基またはアリレン基、置換又は無置換のベンジル基をあらわす。アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子は前記Arで述べたものが同様に適用される。
アリール基は、R13、R14で定義されたアリール基と同様である。アリレン基は、そのアリール基から誘導される二価基である。
〜Bは、一般式(4)におけるB、Bと同様であり、B〜Bの内、どれか一つだけが存在し、二つ以上の存在は除外される。uは0〜5の整数、vは0〜4の整数を表す。
特定のアクリル酸エステル化合物は次のような特徴を有する。スチルベン型共役構造を有した三級アミン化合物であり、発達した共役系を有している。こういった共役系の発達した電荷輸送性化合物を用いることで、架橋層界面部分での電荷注入性が非常に良好となり、さらに架橋結合間に固定化された場合でも分子間相互作用が阻害されにくく、電荷移動度に関しても良好な特性を有する。また、ラジカル重合性の高いアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を分子中に1個有しており、ラジカル重合時に速やかにゲル化するとともに過度な架橋歪を生じない。分子中のスチルベン構造部の二重結合が部分的に重合に参加し、しかもアクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基よりも重合性が低いために架橋反応に時間差が生じることで歪みを最大に大きくする事が無く、しかも分子中の二重結合を使用する為に分子量当りの架橋反応数を上げることが出来る為に、架橋密度を高めることができ、耐摩耗性のさらなる向上が実現可能となった。また、この二重結合は、架橋条件により重合度を調整することができ、容易に最適架橋膜を作製できる。この様なラジカル重合への架橋参加は、アクリル酸エステル化合物の特異的な特徴であり、前述したようなα−フェニルスチルベン型の構造では起こらない。
以上のことから、一般式(4)特に一般式(5)に示したラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物を用いることで良好な電気特性を維持しつつ、且つ、クラック等の発生を起さずに架橋密度の極めて高い膜を形成することができ、それにより感光体の諸特性を満足し、且つシリカ微粒子等が感光体に刺さることを防止し、白斑点等の画像欠陥を減らすことができる。
本発明で用いる上記一般式(1)、(2)、(3)、(4)、特に(3)、(5)のラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造をとりうるものと推測される。以下に電荷輸送性構造としてトリアリールアミン構造を有するラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物の具体例を示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではなく、ラジカル重合性官能基が2官能であるものも使うことができる。
Figure 0004633676
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また、本発明に用いられるラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、光架橋型電荷輸送層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は光架橋型電荷輸送層全量に対し20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%になるように塗工液成分の含有量を調整する。この成分が20質量%未満では光架橋型電荷輸送層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また、80質量%を超えると電荷輸送構造を有しない3官能モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐溶剤性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐溶剤性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーについて説明する。
本発明に用いられるラジカル重合性化合物として、電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーが良好に使用可能である。本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーは、先の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物で示したラジカル重合性官能基を有するものが挙げられ、ラジカル重合性官能基としては特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。また耐摩耗性の向上という観点からアクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基のラジカル重合性官能基を3個以上有するラジカル重合性モノマーが有効に用いることができる。
3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なっても良い。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの具体例としては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。
すなわち、本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アルキレン変性(以後HPA変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシ変性(以後EO変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、エピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
また、耐溶剤性を極めて高くすることができる官能基に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が120以下の電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、上記ラジカル重合性モノマーの中のものから選択できる。その量としては、低量で架橋密度を高くするため光架橋型電荷輸送層塗工液の固形分に対して25質量%以上が好ましい。上限値としては請求項に上げたラジカル重合性官能基量を満たす範囲で、光架橋型電荷輸送層塗工液全量に対して70質量%以上である。低量で架橋密度を高くすることはラジカル重合性官能基量を満たす範囲で、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーを多く含有する事ができ、感光体に非常に高い耐溶剤性、良好な電気特性、画像特性を持たせることができるため非常に有効である。
また、本発明に用いられる官能基に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が120以下の電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー以外の電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、光架橋型電荷輸送層中に緻密な架橋結合を形成するために、前記モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、光架橋型電荷輸送層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示したモノマー等中、HPA、EO、PO等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。また、光架橋型電荷輸送層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの成分割合は、光架橋型電荷輸送層全量に対し20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%である。モノマー成分が20質量%未満では光架橋型電荷輸送層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80質量%以上では電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70質量%の範囲が最も好ましい。
本発明の光架橋型電荷輸送層は、本発明の光架橋型電荷輸送層は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、前記感光層の表面層が少なくともラジカル重合性化合物を光硬化することにより形成されるが、これ以外に塗工時の粘度調整、光架橋型電荷輸送層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー、機能性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらとしては公知のものが利用できる。
1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA−EO変性ジアクリレート、ビスフェノールF−EO変性ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると光架橋型電荷輸送層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100質量部に対し50質量部以下、好ましくは30質量部以下に制限される。
重合開始剤について説明する。
本発明の光架橋型電荷輸送層は、本発明の光架橋型電荷輸送層は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、前記感光層の表面層が少なくともラジカル重合性化合物を光硬化することにより形成されるものであるが、必要に応じてこの架橋反応を効率よく進行させるために光架橋型電荷輸送層中に重合開始剤を使用してもよい。
熱重合開始剤としては、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルベルオキサイド、t−ブチルヒドロベルオキサイド、クメンヒドロベルオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの過酸化物系開始剤、アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸などのアゾ系開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
これらの重合開始剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100質量部に対し、0.5〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。
添加剤について説明する。
本発明の塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20質量%以下、好ましくは10質量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3質量%以下が適当である。
架橋型電荷輸送層塗工液の希釈溶媒に関しては、蒸発速度の遅い溶剤を用いた場合、残留する溶媒が硬化の妨げとなったり、下層成分の混入量を増加させることがあり、不均一硬化や硬化密度低下をもたらす、この有機溶剤に対し、可溶性となりやすい。具体的には、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとメタノール混合溶剤、酢酸エチル、メチルエチルケトン、エチルセロソルブなどが有用であるが、塗工法と合わせて選択される。また、固形分濃度に関しては、同様な理由で低すぎる場合、有機溶剤に対し可溶性となりやすい。逆に、膜厚、塗工液粘度の制限から上限濃度の制約をうける。具体的には10〜50質量%の範囲で用いることが望ましい。架橋型電荷輸送層の塗工方法としては、同様な理由で塗工膜形成時の溶剤含有量、溶媒との接触時間を少なくする方法が好ましく、具体的にはスプレーコート法、塗工液量を規制したリングコート法が好ましい。また、下層成分の混入量を抑えるためには、電荷輸送層として高分子電荷輸送物質を用いること、架橋型電荷輸送層の塗工溶媒に対し不溶性の中間層を設けることも有効である。
表面層形成方法について、説明する。
本発明の光架橋型電荷輸送層は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、前記感光層の表面層が少なくともラジカル重合性化合物を光硬化することにより形成されるが、塗布方法としては浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができるが、塗工時における塗膜中の残留溶媒量を適度に調整できるスプレーコート法がより好ましく選択できる。
光エネルギー照射手段について説明する。
本発明においては、かかる塗工液を塗布後、外部から光エネルギーを与え硬化させ、光架橋型電荷輸送層を形成するものであるが、このとき用いられる光エネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は50mW/cm以上、好ましくは500mW/cm以上、より好ましくは1000mW/cm以上である。1000mW/cmより強い照射光を用いることで重合反応の進行速度が大幅に速くなり、より均一な光架橋型電荷輸送層を形成する。またUV照射時間としては5秒から5分で、かつ温度上昇を50℃以下に制御し、不均一な硬化反応を抑えることが望ましい。
本発明の光架橋型電荷輸送層の膜厚は、1μm以上、10μm以下、さらには好ましくは2μm以上、8μm以下である。8μm以下ではその余裕度がさらに向上するため架橋密度を高くすることが可能で、さらに耐溶剤性を高める材料選択や硬化条件の設定が可能となる。
本発明に用いられる電子写真感光体の層構造について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の電子写真感光体を表わす断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生層32、電荷輸送層33、光架橋型電荷輸送層34、熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を有する表面層35を順次積層する。
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体31として用いることができる。
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体31として用いることができる。
この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
電荷発生層32は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層32に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
前者の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
また、後者の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
また、電荷発生層32には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。電荷発生層32に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層32を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
また、後述のキャスティング法によって電荷発生層32を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層32の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
本発明における電荷輸送層33は、電荷発生層32、光架橋型電荷輸送層34との間にあり、電荷発生層32から発生した電荷をスムーズに光架橋型電荷輸送層34へ注入させるために設けている。架橋密度をできる限り高くした光架橋型電荷輸送層34は、電荷輸送性物質量が少なくなっているため、おそらく膜全体としてのイオン化ポテンシャルが低下してしまい、電荷発生層32から発生した電荷が効率よく注入されにくくなる。これを解決するため電荷輸送層33を設ける。
電荷輸送層33は、電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層32上に塗布、乾燥することにより形成される。
電荷輸送物質としては電荷発生層32で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。前述したように高分子電荷輸送物質を用いることにより、架橋型電荷輸送層塗工時の下層の溶解性を低減でき、とりわけ有用である。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンーブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性または熱硬化性樹脂が上げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100質量部に対し、20〜300質量部、好ましくは40〜150質量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
電荷輸送層33の下層部分の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層32と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層33の下層部分の形成には電荷発生層32と同様な塗工法が可能である。
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
電荷輸送層の下層部分に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜30質量部程度が適当である。
電荷輸送層33の下層部分に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100質量部に対して0〜1質量部程度が適当である。
電荷輸送層33の膜厚は、1〜10μm程度が適当であり、好ましくは1〜5μmが適当である。
このようにして形成された電荷輸送層33上に、前述の架橋型電荷輸送層塗工液を塗布、必要に応じて、乾燥後、熱や光照射の外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋型電荷輸送層34が形成される。
また、本発明における熱可塑性樹脂と電荷輸送性物質を有する表面層35の構成材料としては、上記電荷輸送層33と全く同じ成分のものが使用できる。
前記表面層35の膜厚は、5〜40μm程度が適度であり、好ましくは10〜30μmが適当である。
本発明の感光体においては、導電性支持体31と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Alを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO、SnO、TiO、ITO、CeO等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、表面架橋層、感光層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、中間層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総質量に対して0.01〜10質量%である。
電子写真感光体の再生方法においては、使用済みの前記本発明の電子写真感光体について、残存した電荷輸送層を剥離した後、表面層形成塗布液により表面層を再形成する。
ここで、前記「使用済み」とは、ある程度以上の使用により、電子写真感光体の表面が摩耗し、又は、表面に傷・汚れの付着量が発生し、電子写真感光体が所望の特性を維持し得なくなった状態をいう。
前記剥離方法としては、有機溶剤又は研摩によって剥離させるのが好ましい。前記有機溶剤としては、実際に表面層を形成する際に用いた電荷輸送層形成塗不液に含まれる溶剤と同種の溶剤をはじめ、種々の溶剤を用いて剥離することによって、効果的に電子写真感光体を再生することができる。例えば、前記有機溶剤を剥離槽内において収容させて、表面層に含まれる熱可塑性樹脂や電荷輸送性物質を溶解あるいは膨潤させる方法、感光体を回転させながら溶剤を染込ませたブラシを押し当て溶解あるいは膨潤させる方法が好ましい。ブラシを押し当て溶解あるいは膨潤させる方法が感光体にかかる負荷が大きく、下層成分が溶解してくる場合が多いが、溶剤を少なくできより好ましい。研摩する方法としては、例えば市販されている平均粒度分布30μm以下の砥石が付着したラッピングフィルムを使用し、一定の荷重で感光体に押し当て、感光体を回転させながら研摩することによって、表面層部分のみを取り除くことができる。このようにして剥離することにより、容易に光架橋層までの層のみを剥離することができる。
前記再形成においては、前記剥離の後、表面層を光架橋型電荷輸送層上に再形成する。前記再形成される電荷輸送層は、電荷輸送層、表面層の項で既に述べた、電荷輸送材料、前記結着樹脂、及び、溶剤を含む表面層形塗布液を用いて、同様に形成される。
次に図面に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。
本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、本発明は平滑な電荷輸送性表面架橋層を有する感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法ならびに画像形成装置である。
場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
図2は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ3が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
特に本発明の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような帯電手段からの近接放電により感光体組成物が分解する様な帯電手段を用いた場合に有効である。ここでいう接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。
均一に帯電された感光体1上に静電潜像を形成するために画像露光部5が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
感光体1上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット6が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
感光体上で可視化されたトナー像を転写体9上に転写するために転写チャージャ10が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ7を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
転写体9を感光体1より分離する手段として分離チャージャ11、分離爪12が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ11としては、前記帯電手段が利用可能である。
転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ14、クリーニングブレード15が用いられる。また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ13を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ2、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。
この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図3に示す。
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体101を内蔵し、他に帯電手段102、現像手段104、転写手段106、クリーニング手段107、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図3に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段103による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段104でトナー現像され、前記トナー現像は転写手段106により、転写体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
本発明は、平滑な電荷輸送性表面架橋層を有する感光体と帯電、現像、転写、クリーニング、除電手段の少なくとも一つを一体化した画像形成装置用プロセスカートリッジを提供するものである。
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンタ、CRTプリンタ、LEDプリンタ、液晶プリンタ及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
実施例
<例示化合物No.1の合成法>
本発明における電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば特許第3164426号公報記載の方法にて合成される。また、下記にこの一例を示す。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式B)の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式A)113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mLを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し、反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして下記構造式Bの白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。融点は、64.0〜66.0℃。表1に、元素分析値(%)を示す。
Figure 0004633676
Figure 0004633676
Figure 0004633676
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(表1中の例示化合物No.1)の合成
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式B)82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mLに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100mL)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。このようにして例示化合物No.1の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。融点は、117.5〜119.0℃。表2に、元素分析値(%)を示す。
Figure 0004633676
<例示化合物NO.34の合成法>
(2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルの調製)
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、2−ヒドロキシベンジルアルコール(東京化成品製)38.4g、o−キシレン80mLを入れ、窒素気流下、亜リン酸トリエチル(東京化成品製)62.8gを80℃でゆっくり滴下し、さらに同温度で1時間反応を行った。その後、減圧蒸留により、生成したエタノール、溶媒のo−キシレン、未反応の亜リン酸トリエチルを除去し、66gの2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチルを得た(沸点 120.0℃/1.5mmHg、収率90%)。
(2−ヒドロキシ−4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベンの調製)
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、カリウム−tert−ブトキサイド14.8g、テトラヒドロフラン50mLを入れ、窒素気流下、2−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル9.90gと4−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)ベンズアルデヒド5.44gとをテトラヒドロフランに溶解させた溶液を室温でゆっくり滴下し、その後、同温度で2時間反応させた。その後、水冷下、水を加え、次いで2規定の塩酸水溶液を加えて酸性化したのち、テトラヒドロフランをエバポレーターにより除き、粗生成物をトルエンで抽出した。トルエン相を水、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムを加えて脱水した。ろ過後、トルエンを除いてオイル状の粗収物を得、さらにシリカゲルによりカラム精製を行った後、ヘキサン中で晶析させ、5.09gの2−ヒドロキシ−4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベンを得た(収率72%、融点136.0〜138.0℃)。
(4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベン−2−イルアクリレートの調製)
かき混ぜ装置、温度計、滴下漏斗をつけた反応容器に、2−ヒドロキシ−4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベン14.9g、テトラヒドロフラン100mL、12%濃度の水酸化ナトリウム水溶液21.5gを入れ、窒素気流下、5℃でアクリル酸クロリド5.17gを30分かけて滴下した。その後、同温度で3時間反応させた。反応液を水にあけ、トルエンで抽出した後、濃縮してシリカゲルによるカラム精製を行った。得られた粗収物をエタノールで再結晶し、黄色針状晶の4’−(N,N−ビス(4−メチルフェニル)アミノ)スチルベン−2−イルアクリレート(例示化合物No.34)13.5gを得た(収率79.8%、融点104.1〜105.2℃)。
元素分析結果を表3に示す。
Figure 0004633676
(実施例)
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて質量部を表わす。
実施例1
外径30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、浸漬塗工によって順次塗布、乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、5μmの電荷輸送層を形成した。
[下引き層用塗工液]
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン(CR−EL:石原産業) 40部
メチルエチルケトン 50部
[電荷発生層用塗工液]
下記構造のビスアゾ顔料 2.5部
Figure 0004633676
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製) 0.5部
シクロヘキサノン 200部
メチルエチルケトン 80部
[電荷輸送層用塗工液]
ビスフェーノルZ型ポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造の低分子電荷輸送物質 15部
Figure 0004633676
テトラヒドロフラン 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 1部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
電荷輸送層上に下記構成の光架橋型電荷輸送層塗工液I〜VIIを用いて、スプレー塗工し、図4に示すFusion製UVランプシステムModel F600S(光源部:モデルI600M、電源部:モデルP600M)、ランプ電力:160W/cm、ランプ種:Vバルブ、ランプ数と配置:直列2本連結、波長365nmの照度300mW/cm以上の光が感光体ドラム表面に当たる時間:30秒、感光体表面温度が70℃を超えないよう水冷する条件で感光体ドラムを回転しながら光照射を行ない、更に130℃で30分乾燥を加え2.0μmの光架橋型電荷輸送層を設けた。光架橋型電荷輸送層塗工液VIIを用いたものは、浸漬コーティング法で塗布後、10分間指触乾燥後150℃で60分加熱し1μmの熱硬化性電荷輸送層を設けた。その上に熱可塑性樹脂と電荷輸送性物質を有する表面層を設け、電子写真感光体を作成した。
また、熱硬化性架橋型電荷輸送層Iは、浸漬コーティング法により塗布し、常温で10分間乾燥させた後150℃で60分加熱し、厚み1μmの層を形成した。
[光架橋型電荷輸送層塗工液I]
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物:10部
例示化合物NO.1(分子量:419、官能基数:1官能)
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:15部
トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬製、KAYARAD TMPTA、分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基:99)
光重合開始剤:1部
イルガキュア184(日本化薬製、分子量:204)
溶剤:100部
テトラヒドロフラン
塗塗工溶液中の固形分のラジカル重合性官能基量:7.03mmol/g
[光架橋型電荷輸送層塗工液II]
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物:10部
例示化合物NO.1(分子量:419、官能基数:1官能)
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:15部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬製、SR−295、分子量:352、官能基数:4官能、分子量/官能基:88)
光重合開始剤:1部
イルガキュア184(日本化薬製、分子量:204)
溶剤:100部
テトラヒドロフラン
塗工溶液中の固形分のラジカル重合性官能基量:4.32mmol/g
[光架橋型電荷輸送層塗工液III]
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物:18.75部
例示化合物NO.15(分子量:559、官能基数:1官能)
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:6.25部
トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬製、KAYARAD TMPTA、分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基:99)
光重合開始剤:1部
イルガキュア184(日本化薬製、分子量:204)
溶剤:100部
テトラヒドロフラン
塗工溶液中の固形分のラジカル重合性官能基量:3.78mmol/g
[光架橋型電荷輸送層塗工液IV]
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物:18.75部
例示化合物NO.15(分子量:559、官能基数:1官能)
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:6.25部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬製、SR−295、分子量:352、官能基数:4官能、分子量/官能基:88)
光重合開始剤:1部
イルガキュア184(日本化薬製、分子量:204)
溶剤:100部
テトラヒドロフラン
塗工溶液中の固形分のラジカル重合性官能基量:4.18mmol/g
[光架橋型電荷輸送層塗工液V]
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物:12.5部
例示化合物NO.1(分子量:419、官能基数:1官能)
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:6.25部
トリメチロールプロパントリアクリレート日本化薬製、KAYARAD TMPTA、分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基:99)
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:6.25部
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPCA−120、平均分子量:1948、官能基数:6官能、分子量/官能基:324)
光重合開始剤:1部
イルガキュア184(日本化薬製、分子量:204)
溶剤:100部
テトラヒドロフラン
塗工溶液中の固形分のラジカル重合性官能基量:4.49mmol/g
[光架橋型電荷輸送層塗工液VI]
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物:12.5部
例示化合物NO.1(分子量:419、官能基数:1官能)
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:6.25部
トリメチロールプロパントリアクリレート日本化薬製、KAYARAD TMPTA、分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基:99)
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:6.25部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製、KAYARAD DPHA、平均分子量:536、官能基数:5.5官能、分子量/官能基:97)
光重合開始剤:1部
イルガキュア184(日本化薬製、分子量:204)
溶剤:100部
テトラヒドロフラン
塗工溶液中の固形分のラジカル重合性官能基量:6.29mmol/g
[光架橋型電荷輸送層塗工液VII]
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物:18.75部
例示化合物NO.15(分子量:559、官能基数:1官能)
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:6.25部
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(日本化薬製、SR−355、分子量:467、官能基数:4官能、分子量/官能基:117)
光重合開始剤:1部
イルガキュア184(日本化薬製、分子量:204)
溶剤:100部
テトラヒドロフラン
塗工溶液中の固形分のラジカル重合性官能基量:3.49mmol/g
[光架橋型電荷輸送層塗工液VIII]
電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物:5部
例示化合物NO.1(分子量:419、官能基数:1官能)
電荷輸送性構造を有さないラジカル重合性モノマー:20部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(日本化薬製、SR−295、分子量:352、官能基数:4官能、分子量/官能基:88)
光重合開始剤:1部
イルガキュア184(日本化薬製、分子量:204)
溶剤:100部
テトラヒドロフラン
塗工溶液中の固形分のラジカル重合性官能基量:9.56mmol/g
[熱架橋型電荷輸送塗工液I]
下記構造の電荷輸送物質:8.3部
Figure 0004633676
下記構造のモノマー:16.7部
Figure 0004633676
ビュレット変性体溶液(固形分67質量%):16.6部
溶剤:シクロヘキサノン:100部
塗工溶液中の固形分のウレタン結合当量:2.34mmol/g(ウレタン結合はアクリルに対して、結合手は1本であるため当量計算はアクリルの2分の1として計算した。)
下記組成のおよび電荷輸送層塗工液を、浸漬コーティング法で塗布後、110度で乾燥し、20μmの熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を有する表面層を形成した。

ビスフェーノルZ型ポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造の低分子電荷輸送物質 7部
Figure 0004633676
テトラヒドロフラン 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 1部
(KF50−100CS、信越化学工業製)

以上の液を用いて作成した感光体を下記表4に示す。
Figure 0004633676
作成し得られた感光体No.1〜9を電子写真プロセス用カートリッジに装着し、帯電方式をAC非接触ローラ方式、画像露光光源を655nmの半導体レーザーを用いたリコー製IPSiO Color 7100にて暗部電位700(−V)に設定した後、連続してトータル5000枚の実機通紙試験を行った。本実施例において「使用済みの電子写真感光体」とは、以上のように5000枚のプリントテストを行った後の電子写真感光体を指す。
前記画像形成層力、使用済みの電子写真感光体を取り出し、表面層を剥離した。感光体をテトラヒドロフランを入れた容器に入れ、モーターで回転(回転数:約200rpm)させながら、残存した電荷輸送層を溶解剥離した。
以上のようにして、表面層直下の層の剥離、表面層の再形成・画像の形成を合計5回行ったときの機内電位特性を表5に示す。
Figure 0004633676
比較例2においては初期の明部電位が高い、これは架橋密度を高めるため電化輸送物質含有量が減ってしまったためであると考える。また、実施例1及び3は再形成10回後の明部電位が初期に比べ非常に高くなっている、これは架橋密度が低いため再形成時の溶媒によって、下層成分が溶剤へと染み出してしまったためである。
次に耐溶剤性の強さをみるため、表面層を剥離した電子写真感光体の2つの溶出試験を行った。
溶出試験1:感光体を1リットルのテトラヒドロフランが入った容器に入れ、モーターで200rpmに回転させながら、1時間後の表面層からテトラヒドロフランに染み出してくる電荷輸送性化合物を、光吸収スペクトルにより定量した。
溶出試験2:感光体をモーターで200rpmに回転させながら、入った容器にいれ、溶液のしみこませたブラシを10rpmで回転させながら(図5参照)、1時間後の表面層中からテトラヒドロフランに染み出してくる電荷輸送物質量を光吸収スペクトルにより定量した。また測定の際テトラヒドラフランの量は1リットルに調整した。
なお、電荷輸送物質の定量は、テトラヒドロフランに量の異なる電荷輸送物質を溶解させた溶液と光吸収スペクトルの関係を求めた検量線から算出した。光吸収スペクトル、分光光度計(UV3100;島津製作所社製)により測定した。実施例7〜12、比較例4〜6の結果を表6に示す。
Figure 0004633676
比較例4及び6の電化輸送物質染み出し量は他と比べ極端に多い値になった。また、実施例10から12においては、架橋密度が高いほど溶出量が少なかった。
また、上記溶出試験2後の感光体の表面粗さRz(JIS B0601:1982規格:中心線表面粗さ)を測定した結果を表7に示す。
Figure 0004633676
溶出試験2後の感光体には表面に傷ができており、特に傷がはっきりと確認された実施例18の感光体においては表面粗さが他と比較し極端に大きかった。
以上のことから、本発明によれば、少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、光エネルギー照射手段によって硬化する光架橋型電荷輸送層、熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を順次積層してなる電子写真感光体において、前記光架橋型電荷輸送層が少なくとも電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーを有し、前記光架橋型電荷輸送層塗工液の固形分中のラジカル重合性官能基量が3mmol/g以上9.5mmol/g以下で、かつ前記固形分中に官能基に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が120以下の3電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーを25質量%以上含むことを特徴とする電子写真感光体によって、光架橋型電荷輸送層以下の優れた特性を維持しつつ、容易且つ安価に長期にわたって繰り返し再生することが可能な電子写真感光体、その再生方法、前記再生方法により再生された電子写真感光体、前記電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することができる。
本発明の電子写真感光体を表わす断面図である。 画像形成装置の一例を示す概略図である。 プロセスカートリッジを示す図である。 Fusion製UVランプシステムModel F600Sを示す図である。 溶出試験2を示す図である。
符号の説明
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
9 転写体
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
21 UVランプ
22 ランプ室
23 ワーク室
24 感光体ドラム
25 光透過性部材
26 照射光
31 導電性支持体
32 電荷発生層
33 電荷輸送層
34 光架橋型電荷輸送層
35 熱可塑性樹脂と電荷輸送性物質を含有する表面層
101 感光体
102 帯電手段
103 露光手段
104 現像手段
105 転写体
106 転写手段
107 クリーニング手段

Claims (9)

  1. 少なくとも電荷発生層、電荷輸送層、光エネルギー照射手段によって硬化する光架橋型電荷輸送層、熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を順次積層してなる電子写真感光体において、
    前記光架橋型電荷輸送層が、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとを有し、
    前記光架橋型電荷輸送層の塗工液の固形分中のラジカル重合性官能基量が、3.5mmol/g以上9.5mmol/g以下で、
    かつ前記固形分中に官能基に対する分子量の割合(分子量/官能基数)が120以下の電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーを25質量%以上含む
    ことを特徴とする電子写真感光体。
  2. 請求項1に記載の電子写真感光体において、
    前記電荷輸送性構造を有するラジカル重合性モノマーと前記電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマーのラジカル重合性官能基が、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基である
    ことを特徴とする電子写真感光体。
  3. 請求項1又は2に記載の電子写真感光体において、
    前記電子写真感光体は、
    前記電子写真感光体を使用後、
    残存した熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を溶剤により剥離し、
    熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層塗布液により前記記載の表面層を再形成した
    ことを特徴とする電子写真感光体。
  4. 請求項1又は2に記載の電子写真感光体において、
    前記電子写真感光体は、
    前記電子写真感光体を使用後、
    残存した熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を研摩して取り除き、
    熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層塗布液により前記載の表面層を再形成した
    ことを特徴とする電子写真感光体。
  5. 画像形成装置用プロセスカートリッジは、
    請求項1乃至4のいずれか一つに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段及び除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段を有するものであり、
    画像形成装置本体に着脱可能とした
    ことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
  6. 画像形成装置は、
    請求項1乃至4のいずれか一つに記載の電子写真感光体を有する
    ことを特徴とする画像形成装置。
  7. 電子写真感光体の再生方法は、
    請求項1又は2に記載の電子写真感光体を使用後、
    残存した熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を溶剤により剥離し、
    熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層塗布液により前記載の表面層を再形成する
    ことを特徴とする電子写真感光体の再生方法。
  8. 電子写真感光体の再生方法は、
    請求項1又は2に記載の電子写真感光体を使用後、
    残存した熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層を研摩して取り除き、
    熱可塑性樹脂と電荷輸送物質を含有する表面層塗布液により前記載の表面層を再形成する
    ことを特徴とする電子写真感光体の再生方法。
  9. 画像形成方法は、
    請求項1乃至4のいずれか一つに記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行う
    ことを特徴とする画像形成方法。
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