JP4632170B2 - 誘導電動機のインバータ制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、誘導電動機のインバータ制御装置に関する。
従来の誘導電動機のインバータ制御装置のうち、電動機停止状態で励磁インダクタンスM、二次回路時定数T2、二次抵抗R2を求めるものとして下記のものが知られている。
第1の従来技術は、電圧モデル式磁束演算回路(電圧モデル)は高速域で演算精度が高く、電流モデル式磁束演算回路(電流モデル)は低速域での安定性が高いことに着目し、上記補償手段により両者の出力をそれぞれ補正して、低速から高速域にわたる広い速度範囲で安定な演算ができるようにし、また励磁インダクタンスおよび二次時定数の誤差は電流モデルで演算した二次磁束の振幅および位相の偏差となることに着目し、両モデルの出力差から励磁インダクタンスおよび二次時定数を演算して電流モデルのパラメータを設定するパラメータ調節手段を設け、二次磁束、励磁インダクタンスおよび二次時定数の高精度な演算を可能にしている。(例えば、特許文献1参照)
また、第2の従来技術は、一次抵抗と漏れインダクタンスを正しく設定・補償し、誘導電動機の停止状態で、交番磁束が発生するように正弦波の励磁電流指令を与え、電動機磁束と電流指令値から導かれる電流モデル磁束の位相差が零となるように二次回路時定数を同定し、電動機磁束と電流モデル磁束の振幅差が零となるように励磁インダクタンスを同定し、これら二次回路時定数と励磁インダクタンスを用いて二次抵抗を測定している。(例えば、特許文献2参照)。
さらに、第3の従来技術は、電圧出力位相を予め設定された任意の固定値とし、出力電圧指令値として所定値を与え、この際に誘導電動機に流れる一次電流検出値とその収束値i1∞を読み取り、一次電流検出値の時刻tにおけるi1(t)および一次抵抗値から磁束を推定(φ^(t))し、この収束値に係数kを乗じた値がi1∞となるようにkを定め、
R2=−R1(i1∞−i1(t))/(φ^(t)−i1(t))
更に、磁束推定値(φ^(t))の立ち上がりの時定数τφを用いて
M=R1・R2・τφ/(R1+R2)
により求めるようにしている。(例えば、特許文献3参照)
このように、従来の誘導電動機のインバータ制御装置は、M,T2を求める際、電圧モデルと電流モデルという異なる2つの磁束演算値を比較して求めたり、磁束推定値の立ち上がりの時定数を用いて求めたりするのである。
特公平6−79057号公報 特開平6−34724号公報 特開2004−144658号公報
従来の誘導電動機のインバータ制御装置は、運転前の電動機停止状態でのモータ電気定数のオートチューニングとしては使用が困難であったり、処理が複雑であったり、励磁インダクタンスの飽和特性の測定には不向きである等の問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、運転前に電動機停止状態で、励磁インダクタンスの飽和特性を含めモータ電気定数を高精度に測定することができる誘導電動機のインバータ制御装置を提供することを目的とする。
また、電動機に速度センサを持たない場合でも、既に電動機を負荷機械へ組み込まれた機械にも適用でき、静・動特性等の制御精度向上させることを目的とする。
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は、誘導電動機の電圧情報と電流情報のそれぞれに対して、固定座標系上の二軸成分値を求める座標変換手段と、一次抵抗と漏れインダクタンスの補償を行い、前記電圧情報を用いて電動機の二次磁束を演算する積分手段を含む電圧モデル式磁束演算手段と、交番磁束が発生するように正弦波成分を含む励磁電流を指令する正弦波発生手段と、前記電圧モデル式磁束演算手段出力信号と固定座標系上の前記電流情報の各振幅値を検出する振幅値検出手段とを設け、前記正弦波発生手段から発生された励磁電流指令信号が含む角周波数と、前記振幅値検出手段で求められる二次磁束と前記電流情報の振幅値の各最大値に基づいて、二次抵抗値を得ることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、誘導電動機の電圧情報と電流情報のそれぞれに対して、固定座標系上の二軸成分値を求める座標変換手段と、一次抵抗と漏れインダクタンスの補償を行い、前記電圧情報を用いて電動機の二次磁束を演算する積分手段を含む電圧モデル式磁束演算手段と、交番磁束が発生するように正弦波成分を含む励磁電流を指令する正弦波発生手段と、前記電圧モデル式磁束演算手段出力信号と固定座標系上の前記電流情報の位相差検出手段とを設け、前記正弦波発生手段から発生された励磁電流指令信号が含む角周波数と、前記位相差検出手段で求められる二次磁束と前記電流情報の位相差に基づいて、二次回路時定数を得ることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、誘導電動機の電圧情報と電流情報のそれぞれに対して、固定座標系上の二軸成分値を求める座標変換手段と、一次抵抗と漏れインダクタンスの補償を行い、前記電圧情報を用いて電動機の二次磁束を演算する積分手段を含む電圧モデル式磁束演算手段と、交番磁束が発生するように正弦波成分を含む励磁電流を指令する正弦波発生手段と、前記電圧モデル式磁束演算手段出力信号と固定座標系上の前記電流情報の各振幅値を検出する振幅値検出手段とを設け、前記正弦波発生手段から発生された励磁電流指令信号が含む角周波数と、前記振幅値検出手段で求められる二次磁束と前記電流情報の振幅値の各最大値に基づいて、励磁インダクタンスを得ることを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3で得られた二次抵抗,励磁インダクタンス、二次回路時定数を設定し、前記電流情報を用いて電動機の二次磁束を演算する一次遅れ要素を含む電流モデル式磁束演算手段と、前記電流モデル磁束演算手段と前記電圧モデル式磁束演算手段のそれぞれの出力値が一致するように補償する補償手段とを設け、前記電圧モデル式磁束演算手段の積分手段のオフセット補償することを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から3で得られた二次抵抗、励磁インダクタンス、二次回路時定数を設定し、前記電流情報を用いて電動機の二次磁束を演算する一次遅れ要素を含む電流モデル式磁束演算手段と、前記電流モデル磁束演算手段と前記電圧モデル式磁束演算手段のそれぞれの出力値が一致するように補償する補償手段とを設け、 二次抵抗を補正演算することを特徴とするものである。
また、請求項6に記載の発明は、請求項5において、二次抵抗の補正前後の演算値比率が所定値以下になるまで、補正処理を繰り返すことを特徴とするものである。
また、請求項7に記載の発明は、請求項2において、前記正弦波発生手段から発生された励磁電流指令信号に直流信号を含むようにして前記位相差検出手段で位相差を求め、その位相差に基づいて、励磁インダクタンスMの飽和特性を得ることを特徴とするものである。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1、2、5、6から得られた二次抵抗R2,二次回路時定数T2から、励磁インダクタンスMを得ることを特徴とするものである。
また、請求項9に記載の発明は、誘導電動機の電圧情報と電流情報のそれぞれに対して、固定座標系上の二軸成分値を求める座標変換手段と、一次抵抗と漏れインダクタンスの補償を行い、前記電圧情報を用いて電動機の二次磁束を演算する積分手段を含む電圧モデル式磁束演算手段と、交番磁束が発生するように正弦波成分を含む励磁電流を指令する正弦波発生手段と、前記電圧モデル式磁束演算手段出力信号と固定座標系上の前記電流情報の各振幅値を検出する振幅値検出手段とを設け、前記電圧モデル式磁束演算手段出力信号と固定座標系上の前記電流情報の位相差検出手段とを設け、前記正弦波発生手段から発生された励磁電流指令信号が含む角周波数と、前記振幅値検出手段で求められる二次磁束と前記電流情報の振幅値の各最大値または前記位相差検出手段で求められる二次磁束と前記電流情報の位相差に基づいて、モータ電気定数を求める定数演算手段とを備えたことを特徴とするものである。
請求項1に記載の発明によると、二次抵抗値を得ることができ、請求項2に記載の発明によると、二次回路時定数を得ることができ、請求項3に記載の発明によると、励磁インダクタンスを得ることができ、請求項4に記載の発明によると、前記電圧モデル式磁束演算手段の積分手段のオフセット補償することができるので、モータ電気定数の測定精度を上げることができ、請求項5、6に記載の発明によると、二次抵抗の測定精度を上げることができ、請求項7に記載の発明によると、励磁インダクタンスの飽和特性を得ることができ、請求項8に記載の発明によると、請求項3とは別手法で励磁インダクタンスを得ることができる。請求項9の発明によると、モータ電気定数を求めることができる。
これによって、モータ電気定数を精度よく得ることができるので、誘導電動機のインバータ制御装置での静・動特性等の制御精度を向上させる効果がある。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図3は、本発明を適用する誘導電動機のインバータ制御装置のブロック図である。図において、1は誘導電動機、2は誘導電動機1を駆動する電圧形インバータ(2-1はコンバータ部、2-2はインバータ部)、3はPWM演算部で固定座標系における一次電圧指令Vu*,Vv*、Vw*からPWM演算を行ってPWMパルスパターンを発生する。
4はベース回路、5はインバータ出力電流を検出する電流検出器、6は誘導電動機に付設された速度検出器、7は速度演算部で速度検出器6の検出パルスから誘導電動機1の検出速度ωrを発生する。
8は座標変換部で後述する磁束指令位相θを用いて、前記検出電流を3相/2相変換して回転座標d−q軸成分(Id:励磁電流,Iq:トルク電流)に変換し、9、10は減算器で、励磁電流指令Id*と検出Idとを突き合わせて励磁電流偏差ΔIdを、トルク電流指令Iq*と検出Iqとを突き合わせてトルク電流偏差ΔIqをそれぞれ求める。11は励磁電流制御部(ACRd)で励磁電流偏差ΔIdから励磁電流方向の電圧指令Vd*を、12はトルク電流制御部(ACRq)でトルク電流偏差ΔIdからトルク電流方向の電圧指令Vq*を求める。13は座標変換部で後述する磁束指令位相θを用いて、励磁電流方向の電圧指令Vd*とトルク電流方向の電圧指令Vq*から、固定座標系における一次電圧指令Vu*,Vv*、Vw*を求める。
なお、座標変換部8,13では、それぞれ(1)式、(2)式の演算が行われる。
14は磁束指令演算部、15はすべり周波数演算部、16は加算器で磁束指令演算部14は、前記検出速度ωrと、すべり周波数演算部15の出力値であるすべり周波数指令ωs*を加算器16を用いて加算した一次周波数指令ω1*を入力として、磁束指令φ*を出力する。17は係数器で前記φ*から励磁電流指令Id*を求める。18は積分器で前記一次周波数指令ω1*を積分し、磁束指令位相θを求める構成となっている。
図1は、本発明動作時の誘導電動機のインバータ制御装置のブロック図である。図において、20は正弦波発生手段、21はモータ定数測定手段である。正弦波発生手段20は正弦波成分を含む信号を出力し、出力信号は励磁電流指令Id*となる。磁束指令位相θとトルク電流指令Iq*を0に固定し、座標変換部8、13から、Vα*とIα信号を出力させ、モータ定数測定手段21へ入力する。
これら構成と上記(1)、(2)式により、電動機1は停止状態を保持でき、IαとVα*は正弦波発生手段20の出力信号に基づいた信号となり、Iβ=Iq*=0、Vβ*=Vq*=0となることがわかる。
図2は、モータ定数測定手段21のブロック図である。図において、22-1、22-2は除算手段、23は乗算手段、24は正接(tan)演算手段、30は電圧モデル式磁束演算手段、40は電流モデル式磁束演算手段、50-1、50-2は振幅値検出手段、60は位相差検出手段、70はオフセット補償手段、80はR2補正手段であり、モータ定数測定手段21には、正弦波発生手段20が出力する正弦波信号の角周波数値ω1、ω2とタイマ情報が入力される。
図4は、電圧モデル式磁束演算手段30の構成図である。図において、31は積分手段、32、33は1次電圧降下演算手段であり、32は一次抵抗R1分、33は漏れインダクタンス分を演算し、34-1、34-2は減算手段である。
この構成により、誘導電動機の電圧方程式に基づいて二次磁束φαVを(3)式により演算する。
図5は、電流モデル式磁束演算手段40の構成図である。図5はモータ停止状態であることより、検出速度ωr=0のときを示している。図において、41は積分手段、42、43は係数器で、42は二次回路時定数T2、43は二次抵抗R2の値が設定され、44は減算手段である。
この構成により、誘導電動機の電流方程式に基づいて二次磁束φαIを(4)式により演算する。
図6は、振幅値検出手段50-1の構成図である。図において、51は最大値選択手段、52は最小値検出手段、53-1、53-2は遅延手段、54は減算器である。
この構成により、入力信号であるIαの最大値max(Iα)と最小値min(Iα)の差として振幅値を検出する。
|Iα|peak=max(Iα)−min(Iα) ・・・(5)
図7は、位相差検出手段60の構成図である。図において、61-1、61-2は最大値検出手段、62-1〜62-6は遅延手段、63-1、63-1はラッチ手段、64-1、64-2は最大値選択手段、65は減算手段、66は乗算手段である。
最大値検出手段61-1は、Iα信号の連続した3信号をU1,U2,U3としたとき、U1<U2、かつ、U2>U3を満足したときにトリガ信号を出力する回路である。
この構成により、Iα信号とφαV信号がそれぞれ最大値となる時間差(t2 −t1)と、このとき指令されている正弦波信号の角周波数値ωとの積により、Iα信号とφαV信号の位相差δを測定する。
δ=(t2−t1)×ω ・・・(6)
実施例の詳細な説明の前に、図2に示すモータ定数測定手段21での測定の基本的考え方を説明する。
いま、上記(4)式より、誘導電動機の電流方程式に基づく二次磁束φαIは、入力信号Iαとすれば、一次遅れ要素G(s)=M/(1+T2・p)の伝達関数で示される。
このとき、周知のように、角周波数がωである正弦波信号を入力したときの出力の振幅比|G|、遅れ位相角∠Gは、次式で求まる。
ここで、1に対してω・T2が十分大きくなるようにωを選ぶ(以下、ω1とする)と、
となる。
したがって、ω1は既知であるので、次式で二次抵抗R2が求まる。
次に、1とω・T2がほぼ等しくなるようなωを選ぶ(以下、ω2とする)と、
となる。(9)、(10)式より、次式で励磁インダクタンスMが求まる。
以下、実施例を説明する。
正弦波発生手段20から発生された励磁電流指令信号が含む角周波数値ω1と、前記振幅値検出手段50-1、50-2で求められる電圧モデル式二次磁束と電流情報の振幅値の各最大値に基づいて、二次抵抗値R2を得る際の動作について説明する。
電圧モデル式磁束演算手段30と電流モデル式磁束演算手段40出力は一致すること、電流モデル式は、G(s)=M/(1+T2・p)と表現できることより、図4に示した電圧モデル式磁束演算手段30を用いて、図1の回路で運転すれば、図6よりφαvとIαの振幅値の比率を|G|ω1として測定できるので、(8)式から次式で二次抵抗R2を演算することができる。
R2=|φαv|peak /|Iα|peak×ω1 ・・・(12)
次に、正弦波発生手段20から発生された励磁電流指令信号が含む角周波数値ω2と、位相差検出手段60で求められる電圧モデル式磁束と電流情報の位相差に基づいて、二次回路時定数T2を得る際の動作について説明する。
図4に示した電圧モデル式磁束演算手段30を用いて、図1の回路で運転すれば、図7によりφαv、Iαの位相差δが測定できるので、(7)式から次式で二次回路時定数T2を演算することができる。
T2=tanδ/ω2 ・・・(13)
次に、電圧モデル式磁束と電流情報の振幅値の各最大値に基づいて励磁インダクタンスMを得る際の動作について説明する。
ω1とω2で、図4に示した電圧モデル式磁束演算手段30を用いて、図1の回路で運転し、図6よりφαvとIαの振幅値の比率を、それぞれ測定できるので、(11)式から次式により、励磁インダクタンスMを演算することができる。
また、これは二次抵抗R2を用いて、次のように演算することもできる。
次に、電圧モデル式磁束演算手段30のオフセット補償と電流モデル式磁束演算手段40でのR2の補正する際の動作について説明する。
図8は、電圧モデル式磁束演算手段30と電流モデル式磁束演算手段40と各出力値が一致するように補償する補償手段70およびR2補正手段80の構成図である。図において、71は減算手段、72は積分手段、73は係数器、81-1、81-2は絶対値化手段、82は減算手段、83は積分手段、84は係数器である。
減算手段71は電圧モデル式磁束演算手段30と電流モデル式磁束演算手段40の偏差Δφを積分手段72に出力し、積分手段72により偏差Δφを積分し、係数器73で係数(k1)倍後、電圧モデル式磁束演算手段30内の積分手段31の前段に帰還する。
また、絶対値化手段81-1、81-2はそれぞれ電圧モデル式磁束演算手段30と電流モデル式磁束演算手段40の出力値の絶対値をとり、減算手段82は前記絶対値信号の偏差Δ|φ|を積分手段83へ出力し、積分手段83で偏差Δ|φ|を積分して係数器84で係数(k2)倍後、電流モデル式磁束演算手段40内の係数器43を補正する。この補正は、図示していないが、加算手段、乗算手段を追加して、R2×(1+k)として行う。なお、kは係数器84の出力、R2は係数器43が対応している。
図8に示すように、これまで得た二次抵抗R2、二次回路時定数T2を電流モデル式磁束演算手段40に設定し、電圧モデル式磁束演算手段30のオフセット補償と電流モデル式磁束演算手段40でそれぞれ演算した二次磁束が一致しないのは、各演算手段に誤差成分があるからだと考える。
誤差成分として、電圧モデル式磁束演算手段30では入力信号のオフセットであり、電流モデル式磁束演算手段40では二次抵抗R2の測定誤差とする。
オフセット補償では、上記積分手段72と係数器73で与える積分時間は、正弦波発生手段20が出力する信号の正弦波成分の周期(1/ω2)に対し、十分長く取ることで平均化されるようにし、R2の補正処理では、オフセット補償と干渉しないように、上記積分手段83と係数器84で与える積分時間は、正弦波発生手段20が出力する信号の正弦波成分の周期(1/ω2)に対し、短めに取るとよい。
また、実際の二次抵抗R2の補正処理は、係数器84の出力Kを用い、次式で演算し、R’として得る。
なお、励磁インダクタンスMは、(14)、(14)’ 式でなく、(15)式のようにR2、T2から演算で求めてもよい。
上述したオフセット補償処理とR2補正処理を実施すると、電圧モデル式磁束演算値と電流モデル式磁束演算値の値が精度よく一致するようになるので、オフセット補償の精度が上がる。したがって、精度よくオフセット補償された電圧モデル式磁束演算手段30を用いることで更に、二次抵抗R2の測定精度が上がるという好循環をもたらす。
二次抵抗R2の補正比率(R2’/R2)が所定値範囲内になるまで、上述したオフセット補償とR2補正処理を繰り返すようにすれば、精度のよい誘導電動機の二次抵抗R2、励磁インダクタンスMを得ることができる。
次に、励磁インダクタンスMの飽和特性を得る際の動作について説明する。この動作の手順を順に追って説明する。
(1)事前準備として測定しようとしている誘導電動機のベース電圧Vbase、ベース周波数fbaseに基づいて、励磁電流(無負荷電流)Im0を次式で演算する。
なお、ベース電圧、ベース周波数情報は、通常インバータ制御装置内に記憶されているが、無ければ、インバータ装置に付属のオペレータ等(図示せず)から入力する。
(2)励磁インダクタンスMの飽和特性の測定ポイントを決定する。係数としてあるいは関数と得たい励磁電流値を決定する。
ここでは、(16)式でのIm0に対して、50%、75%、100%のポイントとして説明する。
(3)次に、これまで得た二次抵抗R2、二次回路時定数T2を電流モデル式磁束演算手段40に設定するとともに、正弦波発生手段20から発生された励磁電流指令信号(例えば、角周波数値ω2)に、直流量を含むようにして(17)式で与え、上述した図7の回路でφαv、Iαの位相差δを測定し、上記(13)式で二次回路時定数T21を演算する。
Id*=A・sinω2t+Im0×0.5 ・・・(17)
なお、振幅Aは、図7での最大値選択手段64-1、64-2が、その最大値を測定可能な範囲で小さい値とする。
(4)(3)の動作を75%、100%の直流量で行い、T22、T23を演算する。
(5)測定したT21、T22、T23を用いて、その条件での励磁インダクタンスMを演算する。
M1=R2×T21
M2=R2×T22
M3=R2×T23
以上のようにして励磁インダクタンスMの飽和特性を測定することができる。
モータ電気定数のオフラインチューニングを、電動機停止状態で行うことができるので、速度センサを持たない場合でも、一度電動機を組み込んでしまった機械や、エレベータ・クレーン用途のようにブレーキ付きで垂直方向に移動する機械に適用できるとともに、静・動特性等の制御精度を期待される用途に適用できるようになる。
本発明動作時の誘導電動機のインバータ制御装置のブロック図 モータ定数測定手段21のブロック図 本発明を適用する誘導電動機のインバータ制御装置のブロック図 電圧モデル式磁束演算手段の構成図 電流モデル式磁束演算手段の構成図 振幅値検出手段の構成図 位相差検出手段の構成図 オフセット補償手段とR2補正手段の構成図
符号の説明
1 誘導電動機
2 電圧形インバータ
2-1 コンバータ部
2-2 インバータ部
3 PWM演算部
4 ベース回路
5 電流検出器
6 速度検出器
7 速度演算部
8、13 座標変換部
9、10 減算手段
11 励磁電流制御部(ACRd)
12 トルク電流制御部(ACRq)
14 磁束指令演算部
15 すべり周波数演算部
16 加算手段
17、42、43、73、84 係数器
18、31、41、72、83 積分手段
20 正弦波発生手段
21 モータ定数測定手段
22-1、22-2 除算手段
23、66 乗算手段
24 正接(tan)演算手段
30 電圧モデル式磁束演算手段
32、33 1次電圧降下演算手段
34-1、34-2、44、54、65、71、82 減算手段
40 電流モデル式磁束演算手段
50-1、50-2 振幅値検出手段
51、64-1、64-2 最大値選択手段
52 最小値検出手段
53-1、53-2、62-1〜62-6 遅延手段
60 位相差検出手段
61-1、61-2 最大値検出手段
63-1、63-1 ラッチ手段
70 オフセット補償手段
80 R2補正手段
81-1、81-2 絶対値化手段

Claims (9)

  1. 誘導電動機の電圧情報と電流情報のそれぞれに対して、固定座標系上の二軸成分値を求める座標変換手段と、
    一次抵抗と漏れインダクタンスの補償を行い、前記電圧情報を用いて電動機の二次磁束を演算する積分手段を含む電圧モデル式磁束演算手段と、
    交番磁束が発生するように正弦波成分を含む励磁電流を指令する正弦波発生手段と、
    前記電圧モデル式磁束演算手段出力信号と固定座標系上の前記電流情報の各振幅値を検出する振幅値検出手段とを設け、
    前記正弦波発生手段から発生された励磁電流指令信号が含む角周波数と、前記振幅値検出手段で求められる二次磁束と前記電流情報の振幅値の各最大値に基づいて、二次抵抗値を得ることを特徴とする誘導電動機のインバータ制御装置。
  2. 誘導電動機の電圧情報と電流情報のそれぞれに対して、固定座標系上の二軸成分値を求める座標変換手段と、
    一次抵抗と漏れインダクタンスの補償を行い、前記電圧情報を用いて電動機の二次磁束を演算する積分手段を含む電圧モデル式磁束演算手段と、
    交番磁束が発生するように正弦波成分を含む励磁電流を指令する正弦波発生手段と、
    前記電圧モデル式磁束演算手段出力信号と固定座標系上の前記電流情報の位相差検出手段とを設け、
    前記正弦波発生手段から発生された励磁電流指令信号が含む角周波数と、前記位相差検出手段で求められる二次磁束と前記電流情報の位相差に基づいて、二次回路時定数を得ることを特徴とする誘導電動機のインバータ制御装置。
  3. 誘導電動機の電圧情報と電流情報のそれぞれに対して、固定座標系上の二軸成分値を求める座標変換手段と、
    一次抵抗と漏れインダクタンスの補償を行い、前記電圧情報を用いて電動機の二次磁束を演算する積分手段を含む電圧モデル式磁束演算手段と、
    交番磁束が発生するように正弦波成分を含む励磁電流を指令する正弦波発生手段と、
    前記電圧モデル式磁束演算手段出力信号と固定座標系上の前記電流情報の各振幅値を検出する振幅値検出手段とを設け、
    前記正弦波発生手段から発生された励磁電流指令信号が含む角周波数と、前記振幅値検出手段で求められる二次磁束と前記電流情報の振幅値の各最大値に基づいて、励磁インダクタンスを得ることを特徴とする誘導電動機のインバータ制御装置。
  4. 請求項1から3で得られた二次抵抗、励磁インダクタンス、二次回路時定数を設定し、前記電流情報を用いて電動機の二次磁束を演算する一次遅れ要素を含む電流モデル式磁束演算手段と、
    前記電流モデル磁束演算手段と前記電圧モデル式磁束演算手段のそれぞれの出力値が一致するように補償する補償手段とを設け、
    前記電圧モデル式磁束演算手段の積分手段のオフセット補償することを特徴とする誘導電動機のインバータ制御装置。
  5. 請求項1から3で得られた二次抵抗、励磁インダクタンス、二次回路時定数を設定し、前記電流情報を用いて電動機の二次磁束を演算する一次遅れ要素を含む電流モデル式磁束演算手段と、
    前記電流モデル磁束演算手段と前記電圧モデル式磁束演算手段のそれぞれの出力値が一致するように補償する補償手段とを設け、
    二次抵抗を補正演算することを特徴とする誘導電動機のインバータ制御装置。
  6. 二次抵抗の補正前後の演算値比率が所定値以下になるまで、補正処理を繰り返すことを特徴とする請求項5記載の誘導電動機のインバータ制御装置。
  7. 前記正弦波発生手段から発生された励磁電流指令信号に直流信号を含むようにして前記位相差検出手段で位相差を求め、その位相差に基づいて、励磁インダクタンスの飽和特性を得ることを特徴とする請求項2記載の誘導電動機のインバータ制御装置。
  8. 請求項1、2、5、6から得られた二次抵抗、二次回路時定数から、励磁インダクタンスを得ることを特徴とする誘導電動機のインバータ制御装置。
  9. 誘導電動機の電圧情報と電流情報のそれぞれに対して、固定座標系上の二軸成分値を求める座標変換手段と、
    一次抵抗と漏れインダクタンスの補償を行い、前記電圧情報を用いて電動機の二次磁束を演算する積分手段を含む電圧モデル式磁束演算手段と、
    交番磁束が発生するように正弦波成分を含む励磁電流を指令する正弦波発生手段と、
    前記電圧モデル式磁束演算手段出力信号と固定座標系上の前記電流情報の各振幅値を検出する振幅値検出手段とを設け、
    前記電圧モデル式磁束演算手段出力信号と固定座標系上の前記電流情報の位相差検出手段とを設け、
    前記正弦波発生手段から発生された励磁電流指令信号が含む角周波数と、前記振幅値検出手段で求められる二次磁束と前記電流情報の振幅値の各最大値または前記位相差検出手段で求められる二次磁束と前記電流情報の位相差に基づいて、モータ電気定数を求める定数演算手段とを備えたことを特徴とする誘導電動機のインバータ制御装置。
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