JP4632003B2 - スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法、当該共重合体塩水溶液を利用した紙等 - Google Patents

スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法、当該共重合体塩水溶液を利用した紙等 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン・アクリル酸共重合体の塩水溶液の製造方法、並びに当該共重合体の水溶液塩を利用した紙、ロジン系エマルションなどに関して、所定の連続供給方式の乳化重合法で得たスチレン・アクリル酸共重合体から透明性の高いアルカリ可溶水溶液を製造するとともに、このアルカリ可溶水溶液の利用によって、優れた品質の紙、ロジン系エマルション、或はスチレン・アクリルエステル共重合体エマルションを新たに提供する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン・アクリル酸共重合体の低分子量のアルカリ可溶性樹脂を製造する従来技術としては、次のものなどが挙げられる。
(1)従来技術1(特公昭43−2460号公報)
スチレンとアクリル酸の単量体を有機溶媒中で溶液重合した後、溶剤を蒸留除去する方法が開示されている。
(2)従来技術2(特開昭59−6207号公報)
上記単量体を高温連続加熱してバルク重合する方法が開示されている。
(3)従来技術3(特開昭58−49701号公報)
共溶媒使用によるサスペンション重合で重合した後、溶剤を蒸留除去する方法が開示されている。
ちなみに、これらの共重合体をアルカリ中和すると、スチレン・アクリル酸共重合体の透明なアルカリ塩水溶液が得られ、このアルカリ塩水溶液は、顔料分散剤、乳化重合の際の乳化分散剤、紙加工剤、或は水性インクなどの用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、上記従来技術1又は3の方法では、有機溶剤を用いるために環境への影響が懸念され、さらに、製品に残留する有機溶剤を蒸留除去するために製造時間の長時間化やコストアップをまねく。
また、上記従来技術2の方法では、高温高圧にするために特殊な設備が必要であり、低分子量オリゴマーを多く含むなどの問題もある。
【0004】
そこで、上記弊害を解消するために、溶液重合法などに代えて水系での乳化重合方式によりスチレン・アクリル酸共重合体を製造し、そのアルカリ塩水溶液を得る方策が考えられる。
この乳化重合法には、下記の方式を初め、多くの方法がある(高分子ラテックスの化学;室井宗一著;高分子刊行会発行 参照)。
▲1▼一時仕込み法:単量体や乳化剤、開始剤を一度に混合し、低温で長時間緩慢に重合する方法。
▲2▼モノマー添加法:水と乳化剤と必要なら一部の単量体を反応容器に仕込んでおき、単量体と必要なら開始剤とを重合の進行とともに添加してゆく方法。
▲3▼エマルション添加法:一部の単量体を乳化重合しておき、残りの単量体を水と乳化剤で乳化混合したエマルションとして添加しつつ重合する方法。
▲4▼はん種重合法:少量の乳化剤と共に種ラテックスをつくり、次いで単量体を加えて重合し、種ラテックスから粒子径を成長増大させる方法。
【0005】
ちなみに、特開昭61−108796号公報には、スチレン・アクリル酸系共重合体のケン化物が開示されているが、当該共重合体は上記▲1▼の一時仕込み法、或はこれに類した方法で製造されている。
また、重合熱の制御が容易な上記▲2▼のモノマー添加法は安定な疎水ポリマーエマルションを作ることを最終目的としており、生成した疎水ポリマーエマルションをさらにアルカリ中和して透明な水溶液塩にすることまでを想定したものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、高スチレン比のスチレン・アクリル酸の水系での乳化重合においては、重合したエマルションをアルカリ中和してもエマルションの状態のままか、水溶と水分散が混在する濁りの強いポリマー水性液しか得られないというのが実情である。
これは、J.Polym.Sic.:Part A:Polym.Chem.,24,3109(1987)にも示されているように、水溶性の強いアクリル酸のようなモノマーと水難溶性のスチレンの乳化重合では、重合の場である重合体粒子中のそれぞれのモノマー濃度と系中のモノマー濃度が異なることに起因すると推定される。
例えば、前記▲4▼のはん種重合法などでは、初期にアクリル酸の多い種エマルションが生成し、スチレンはこの種エマルションの表面で遅れて重合し、スチレンの多い不均一な重合粒子になる。このため、この重合エマルションをアルカリ中和してもスチレンの多い粒子が溶解せず、大部分エマルション状態を保つので、透明な共重合体塩水溶液は得られないのである。
【0007】
これに対して、メタクリル酸・スチレンの乳化重合物においては、アルカリ中和で透明なポリマー水溶液が得られ易く、これはメタクリル酸がアクリル酸と異なり水中でホモポリマーを作りにくい性質であるため、スチレンと共通の重合の場である重合体粒子中で主に重合することによると考えられている。
ちなみに、例えば、特開昭56−63098号公報には、乳化重合法で製造したスチレン・メタクリル酸共重合体をアルカリ中和して水溶化する方法が開示されている。
【0008】
本発明は、上記スチレン・メタクリル酸共重合体などとは異なり、重合体エマルションをアルカリ中和しても、透明な水溶液塩を得ることが難しい高スチレン比のスチレン・アクリル酸の水系重合において、新たに、低粘度で透明性の高い共重合体の水溶液塩が得られる重合方法を見い出すことを技術的課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高スチレン比のスチレン・アクリル酸の水系ラジカル重合に際して、前記モノマー添加法などの従来型の乳化重合方式に、いわば、単量体供給量の規制という概念を導入することを着想した。
そして、鋭意研究の結果、第一に、スチレン及びアクリル酸の単量体を重合系中に連続供給し、第二に、この連続供給に際して、スチレン単量体量を、その重合温度での水に溶解するスチレン量程度以下の極少量に抑制し、系中の未反応スチレン単量体の存在量を特定量以下に保つ状態にすると、供給するスチレンが素早く重合して、アルカリ中和したときに低粘度で透明性の高い共重合体塩水溶液が得られることを見いだした。
さらには、全単量体に対する重合開始剤の供給量を所定範囲に設定して、上記単量体供給量と共に重合速度の二方面から制御すると、透明性の高い共重合体塩水溶液がより円滑に得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明1は、スチレンとアクリル酸の共重合体の製造方法において、
上記共重合体の重合方法が乳化重合であり、且つ、
重合中に系内に存在する未反応スチレンの単量体量を0.6重量%以下に抑制した状態で、スチレンとアクリル酸の各単量体を連続的に重合系中に供給して、スチレン40〜90重量%とアクリル酸60〜10重量%よりなる共重合体を製造し、当該共重合体をケン化して水溶化することを特徴とするスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法である。
【0011】
本発明2は、スチレンとアクリル酸の共重合体の製造方法において、
上記共重合体の重合方法が乳化重合であり、且つ、
スチレン単量体の供給量を水中への溶解度以下の量に抑制した状態で、スチレンとアクリル酸の各単量体を連続的に重合系中に供給して、スチレン40〜90重量%とアクリル酸60〜10重量%よりなる共重合体を製造し、当該共重合体をケン化して水溶化することを特徴とするスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法である。
【0012】
本発明3は、上記本発明1又は2において、スチレン単量体の重合系中への供給速度が、重合系に存在する水100g当たり0.04〜0.16g/分であることを特徴とするスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法である。
【0013】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、重合開始剤を重合系に連続供給するとともに、その供給量が全単量体の0.8〜3.0重量%であることを特徴とするスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法である。
【0014】
本発明5は、上記本発明4の重合開始剤が水溶性であることを特徴とするスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法である。
【0015】
本発明6は、上記本発明1〜5のいずれかにおいて、重合温度が70〜100℃であることを特徴とするスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法である。
【0017】
本発明7は、上記本発明1〜6のいずれかのスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を紙用表面サイズ剤として塗工した紙である。
【0018】
本発明8は、上記本発明1〜6のいずれかのスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を乳化剤として含有するロジン系エマルションである。
【0019】
本発明9は、上記本発明1〜6のいずれかのスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を乳化剤として含有するスチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体エマルションである。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明は乳化重合で製造したスチレン・アクリル酸共重合体の塩水溶液の製造方法に関するが、このスチレン・アクリル酸共重合体は、単量体基準でスチレン40〜90重量%とアクリル酸60〜10重量%より構成され、好ましくは、スチレン/アクリル酸は50〜80重量%/50〜20重量%である。
スチレンが40重量%未満になると(即ち、アクリル酸が60重量%を越えると)、アクリル酸が多いために各種合成方法でもアクリル酸部のアルカリ中和で透明になり、本発明方法によらなくても良く、本発明の意義が減じる。
逆に、スチレンが90重量%を越えると(即ち、アクリル酸が10重量%未満になると)、スチレンの絶対量が多く、アルカリ中和水溶液が高粘度になったり、本発明によっても透明なスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を得ることが難しくなる。
上記共重合体を製造する際の反応物としてのスチレン系単量体はスチレンが基本であるが、α−メチルスチレンなどのビニル基に置換基を有するスチレン、或は、ビニルトルエン、p−クロルスチレンなどのベンゼン環に置換基を有するスチレンなども含まれる。
また、上記反応物としてのアクリル酸系単量体はアクリル酸が基本であるが、加水分解によりアクリル酸に変化し得るアクリル酸塩、アクリル酸の短鎖脂肪族系エステル、或はアクリル酸アミドなども含まれる。
尚、本発明のスチレン・アクリル酸共重合体は上記スチレン系単量体とアクリル酸系単量体を構成成分とするが、当該共重合体を構成し得る他の単量体として、酢酸ビニル、塩化ビニル、メタクリル酸又はそのエステルなどの重合性二重結合を有する単量体の少なくとも一種以上が若干含まれても差し支えない。
【0021】
上記スチレン・アクリル酸共重合体は、基本的にスチレン40〜90重量%とアクリル酸60〜10重量%の混合物を重合開始剤を触媒とした水系での乳化重合により得られる。スチレンとアクリル酸は混合物にして、或は別々に水に添加するか、又は水に乳化剤を混合して加温した系に添加する。
上記乳化剤としては公知のアニオン性、カチオン性、ノニオン性界面活性剤、又は両性界面活性剤などを使用できる。
上記アニオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)硫酸エステル塩などが挙げられる。
上記カチオン性界面活性剤としては、ラウリルトリアルキルアンモニウム塩、ステアリルトリアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、第1級〜第3級アミン塩、ラウリルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、或は、ラウリルアミンアセテートなどが挙げられる。
上記ノニオン性界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、C1〜C20アルキルフェノール、C1〜C20アルキルナフトール、ポリオキシエチレン(プロピレン)グリコール、脂肪族アミンなどのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物などが挙げられる。 上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸型、イミダゾリン誘導体型などの界面活性剤が挙げられる。
上記重合開始剤としては、本発明5に示すように、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、レドックス系開始剤、或はアゾイソブチロニトリル等の水溶性アゾ系開始剤などのような水溶性開始剤が好ましいが、過酸化ベンゾイルなどのような油溶性開始剤を排除するものではない。
また、上記乳化重合に際しては、分子量を調整する目的で、n−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、イソプロピルアルコール、四塩化炭素、クメン、チオグリコール酸及びそのエステル類、チオグリコール類などの連鎖移動剤を使用することができる。
【0022】
本発明1の第一の特徴は、高スチレン比のスチレン・アクリル酸の乳化重合に際して、スチレンとアクリル酸の各単量体を重合系に連続供給する点にある。
第二の特徴は、上記連続供給に際して、重合中に系内に存在する未反応スチレン単量体量を0.6重量%以下に抑制することにより、この単量体の供給量を制御する点にある。系内に存在する未反応スチレン単量体量が常に0.6重量%を越えると、スチレンの重合が遅くなってスチレン単量体が蓄積し、スチレンのブロック重合部ができて、アルカリ中和しても透明に溶解しない部分ができるからである。
この場合、上記重合系内に存在するスチレン単量体は各種方法で測定でき、例えば、重合系からのサンプリングを行って急冷し、内部標準にヘキシルアルコールを使ったガスクロマトグラフィーによる分析などが利用できる。
【0023】
上記本発明2は、本発明1と同様に、高スチレン比のスチレン・アクリル酸の乳化重合に際して、スチレンとアクリル酸の各単量体を重合系に連続供給するとともに、この連続供給は、スチレン単量体の供給量を水中への溶解度以下の量に抑制した状態で行う点に特徴がある。
基本的に、スチレン単量体の供給量を水中への溶解度以下の量に抑制した状態で、スチレンとアクリル酸の各単量体を重合系に連続供給すると、重合温度域におけるスチレン単量体の溶解度は水に対して0.1%以下のオーダー程度のごく微量であるため、重合中に系内に存在する未反応スチレン単量体量を効果的に低く抑える(具体的には、本発明1に示すように、0.6重量%以下に抑制する)ことができる。この場合、概ね、この溶解度による制御方式は重合系内に存在する未反応スチレン単量体量の管理により、間接的に実行できる。
【0024】
上記本発明2はスチレン単量体の供給速度を制御する方式であるが、本発明3は当該方式の延長上でこの供給量を具体化したものである。
即ち、スチレン単量体の重合系中への供給速度を、系に存在する水100g当たり0.04〜0.16g/分に設定すると、連続供給するスチレン単量体を系内で素早く重合させることができる。
また、本発明4に示すように、上記重合開始剤量は全単量体の0.8〜3.0重量%になるように調整するのが好ましい。より好ましくは、1.0〜2.5重量%である。この場合、流量コントロール方法で管理することなどにより、上記重合開始剤も重合系に連続供給できるのは勿論である。
上記スチレン単量体の供給速度と重合開始剤の供給量を加重的に組み合わせると、単量体供給速度に加えて重合速度をも制御することができ、連続供給するスチレン単量体を素早く反応させる点でより効果的であるが、スチレン単量体の供給量と重合開始剤の供給量とは、夫々乳化重合での独立条件としても差し支えない。
【0025】
本発明の乳化重合において、重合温度は70〜100℃が適当であり、好ましくは75〜95℃である。
重合温度が70℃以下では重合速度が遅くスチレン単量体の系内存在量が多くなり、逆に、100℃以上では重合速度が速くなり過ぎたり、水系であるため加圧しないと沸騰するなどの問題がある。
【0026】
単量体と重合開始剤を重合系に供給し終えたら、そのまま熟成し単量体を完全に重合させた後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、低級アミン、或はアルカノールアミンなどのアルカリで中和して、透明なスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液が得られる。
【0027】
このスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液は、紙用表面サイズ剤、或はロジン系水性エマルションやスチレン・(メタ)アクリル酸共重合体エマルション用の乳化分散剤など、各種用途に用いられる。
先ず、上記スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を紙用表面サイズ剤として用いる場合には、スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を単独で、或は、当該水溶液を澱粉溶液、ポリアクリルアミド水溶液、或はポリビニルアルコール水溶液などに所定量混合した液をサイズプレス、ゲートロールなどの塗工機を用いて紙の表面に塗工し、乾燥して、紙を製造するのである(本発明7参照)。ちなみに、紙は、印刷・筆記・図画用紙、包装用紙、薄葉紙、新聞巻取紙、雑種紙などの各種品種、或は板紙などを含む広い概念である。
【0028】
第二に、上記スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を乳化分散剤として用いると、転相乳化法、無溶剤型乳化法、或は溶剤型乳化法などにより、ロジン系水性エマルションを効率的に製造することができる(本発明8参照)。
上記転相乳化法は、ロジン類、強化ロジン類、ロジンエステル類、或は強化ロジンエステル類などの各種ロジン系樹脂とスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を充分混練した後、攪拌しながら徐々に水を加えて、油中水型エマルションを水中油型エマルションに相反転させる方法である。
上記無溶剤型乳化法は、溶融した各種ロジン系樹脂とスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液と水を予備混合し、粗い粒子の水性エマルションを調整した後、各種ミキサー、ホモジナイザー、高圧乳化機などを用いて微細分散させる方法である。
また、上記溶剤型乳化法は、各種ロジン系樹脂をメチレンクロライド、トルエン等の有機溶剤に溶解させ、スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液と水を予備混合して粗い粒子の水性エマルションを調整した後、各種乳化機を用いて同様に微細乳化し、有機溶剤を除去する方法である。
以上の各種方式で得られたロジン系水性エマルションは湿式抄紙の際の内添サイズ剤、或は、水性エマルション型の粘・接着剤に配合する粘着付与剤などに利用される。
【0029】
第三に、スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を乳化分散剤として用いると、下記の(a)又は(b)の方式などによりスチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体水性エマルションを製造することができる(本発明9参照。但し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を包含する上位概念である)。
(a)スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液と水の混合液を加熱し、(メタ)アクリル酸エステル類とスチレンの混合単量体を過硫酸塩系開始剤水溶液と共に各々連続的に添加し、乳化重合する。
(b)スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液と水の混合液を加熱し、(メタ)アクリル酸エステル類とスチレンの混合単量体を加え、過硫酸塩系水溶液と還元剤よりなるレドックス開始剤で乳化重合する。
これらの方式で得られたスチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体水性エマルションは紙の表面サイズ剤、印刷物の上に塗布する水系オーバープリントニス、或は、紙の各種加工用合成樹脂エマルションなどに供することができる。
【0030】
【作用】
従来の乳化重合では、アクリル酸はスチレンと相溶せずに単独で水溶液重合しがちであり、スチレン単量体は重合が遅れて蓄積する傾向が強かった。
このため、スチレン割合の多いモノマーが、系内に形成されたミセルの表面又は粒子内にモノマー塊として吸着或は吸収され、その後に重合するので、共重合体にはポリスチレン部が多くでき、重合後にアルカリ中和してもこのポリスチレン部が水に溶解せずに濁ったり、エマルション状態のままになっていた。
これに対して、本発明では、重合系内に存在する未反応スチレン単量体量を特定量以下に制御し、或は、スチレン単量体の供給量をその重合温度での溶解度以下の量に制御して、単量体を系内に連続供給する方式であるため、重合系内に供給されるスチレンの供給速度は遅く、重合速度は速い。
即ち、本発明の機構は充分には解明されておらず、不明の部分もあるが、上記重合方式によると、系内の未反応スチレン単量体量は特定量以下に制御され、或は、スチレン単量体の供給量は溶解度以下に制御されており、この状態では、供給速度が抑制されたスチレンは水中に容易に溶解促進されて、水溶性のアクリル酸と共通の重合の場で素早く共重合するため、従来の乳化重合方式とは異なり、ポリスチレン部の生成がほとんどなくなって、重合体をアルカリ中和した場合、透明性が高いスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液が良好に生成するものと推測される。
【0031】
【発明の効果】
従来のバルク重合方法や溶液重合方法でスチレン・アクリル酸共重合体を製造すると、特殊な専用の重合装置を必要としたり、重合に用いた溶剤を蒸留回収しなければならないという問題があった。
これに対して、本発明では、所定の連続供給型の乳化重合方式をとるために上記問題点を解消して、ポリスチレン部の生成がほとんどないスチレン・アクリル酸共重合体を円滑に製造できる。
これにより、重合体をアルカリ中和しても透明性が高く低粘度のスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液が生成し、この水溶液塩を高い性能を有する紙用表面サイズ剤、或は、乳化分散剤などとして供することができる。
従って、本発明の共重合体塩水溶液を上記用途に利用することにより、後述の試験例に示すように、従来の乳化重合方式による濁ったアルカリ中和水溶液を用いた場合とは異なり、サイズ性に優れた紙、或は、粒子径が小さく安定したロジン系エマルション又はスチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルションなどを良好に製造することができる。
【0032】
【実施例】
以下、スチレン・アクリル酸共重合体とその塩水溶液の製造実施例、当該共重合体塩水溶液の透過率試験例、当該共重合体塩水溶液を表面サイズ剤として用いた紙、乳化剤として用いたロジン系エマルション及びスチレン・アクリル酸エステル共重合体エマルションに関する各種製造実施例及び試験例を順次説明する。
また、以下の実施例、試験例などの「部」、「%」は特に指定しない限り、「重量部」、「重量%」を指す。
尚、本発明は下記の実施例、試験例などに拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0033】
以下の製造実施例並びに比較例に関して、本発明のスチレン・アクリル酸共重合体及び当該共重合体塩水溶液についてはAグループ、この共重合体塩水溶液を利用した紙についてはBグループ、ロジン系エマルションについてはCグループ、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体エマルションについてはDグループとして符号を付し、グループごとに区別した。
【0034】
《スチレン・アクリル酸共重合体及び当該共重合体塩水溶液の製造実施例》
下記の実施例1A〜4A及び比較例1A〜2Aでは共にスチレン及びアクリル酸の単量体及び重合開始剤を連続供給するとともに、これらの供給量を実施例と比較例の間で差異化した。
(1)実施例1A
予め、アクリル酸72gとスチレン168gと連鎖移動剤としてのチオグリコール酸0.9gを混合してモノマー混合物を用意した。また、これとは別に、過硫酸カリウム3.6gを水100gに溶解して重合開始剤水溶液を用意した。
そこで、攪拌機、温度計の付いた1Lの4つ口フラスコに水460gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム7gを入れ、85℃まで加熱攪拌した。
上記フラスコ中に前記モノマー混合物と重合開始剤水溶液を別々に7時間かけて連続的に注入し、且つ、この間の温度を90℃までに保って重合を進め、注入終了後30分間熟成した。次いで、95℃まで加熱して重合を完結させた後、75℃まで冷却した。
その後、25%水酸化カリウム水溶液202gと水を加えて中和し、スチレン・アクリル酸共重合体アルカリ塩水溶液(固形分20.5%、粘度90mPa・s、pH11)を得た。
上記乳化重合に際しては、図1に示すように、合成中の重合系液を逐次採取して、反応工程中の重合系内に残存するスチレン単量体濃度(%)を、ガスクロマトグラフィー(メチルペンタノールを内部標準とした)により経時的に測定した。
【0035】
(2)実施例2A
上記実施例1Aと同様の条件で重合し、重合が完結した後に25%水酸化ナトリウム水溶液96gを加えて中和し、水を加えてスチレン・アクリル酸共重合体のアルカリ塩水溶液(固形分20.2%、粘度240mPa・s、pH8.4)を得た。
また、実施例1Aと同様に、乳化重合の間、合成中の重合系内のスチレン単量体の残存濃度をガスクロマトグラフィーで経時測定した(図1参照)。
【0036】
(3)実施例3A
予め、アクリル酸52gとスチレン188gと連鎖移動剤のチオグリコール酸0.8gを混合したモノマー混合物を用意した。また、これとは別に、過硫酸カリウム4.3gを水100gに溶解した重合開始剤水溶液を用意した。
そこで、攪拌機、温度計のついた1Lの4つ口フラスコに水460gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム7gを入れ、85℃まで加熱攪拌した。
上記フラスコ中に前記モノマー混合物と重合開始剤水溶液を別々に5時間かけて連続的に注入し、且つ、この間の温度を90℃までに保って重合を進め、注入終了後30分間熟成した。次いで、95℃まで加熱して重合を完結させた後、75℃まで冷却した。
その後、25%水酸化カリウム水溶液129.6gと25%アンモニア水9.8gと水を加えて中和し、スチレン・アクリル酸共重合アルカリ塩水溶液(固形分20.2%、粘度160mPa・s、pH10.5)を得た。
また、実施例1Aと同様に、乳化重合の間、合成中の重合系内のスチレン単量体の残存濃度をガスクロマトグラフィーで経時測定した(図1参照)。
【0037】
(4)実施例4A
予め、アクリル酸96gとスチレン144gと連鎖移動剤のn−ドデシルメルカプタン1.4gを混合したモノマー混合物を用意した。また、これとは別に、過硫酸カリウム3.6gを水100gに溶解した重合開始剤水溶液を用意した。
そこで、攪拌機、温度計のついた1Lの4つ口フラスコに水460gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム7gを入れて、85℃まで加熱攪拌した。
上記フラスコ中に前記モノマー混合物と重合開始剤水溶液を別々に4時間かけて連続的に注入し、且つ、この間の温度を90℃までに保って重合を進め、注入終了後30分間熟成した。次いで、95℃まで加熱し重合を完結させた後、75℃まで冷却した。
その後、水470gと40%水酸化カリウム水溶液149.6gと25%アンモニア水18.1gを加え中和してスチレン・アクリル酸共重合アルカリ塩水溶液(固形分20.1%、粘度2500mPa・s、pH10)を得た。
また、実施例1Aと同様に、乳化重合の間、合成中の重合系内のスチレン単量体の残存濃度をガスクロマトグラフィーで経時測定した(図1参照)。
【0038】
(5)比較例1A
予め、アクリル酸72gとスチレン168gと連鎖移動剤のチオグリコール酸0.9gを混合したモノマー混合物を用意した。また、これとは別に、過硫酸カリウム1.7gを水100gに溶解した重合開始剤水溶液を用意した。
そこで、攪拌機、温度計のついた1Lの4つ口フラスコに水460gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム7gを入れ85℃まで加熱攪拌した。
上記フラスコ中に前記モノマー混合物と重合開始剤水溶液を別々に2時間かけて連続的に注入し、且つ、この間の温度を90℃に保って、注入終了後30分間熟成した。次いで、95℃まで加熱して重合を完結させた後、75℃まで冷却した。
その後、25%水酸化カリウム水溶液202gと水を加え中和し、スチレン・アクリル酸共重合体アルカリ塩水溶液(固形分20.5%、粘度280mPa・s、pH10.6)を得た。
また、実施例1Aと同様に、乳化重合の間、合成中の重合系内のスチレン単量体の残存濃度をガスクロマトグラフィーで経時測定した(図1参照)。
【0039】
(6)比較例2A
予め、アクリル酸46gとスチレン194gと連鎖移動剤のチオグリコール酸0.8gを混合したモノマー混合物を用意した。また、これとは別に、過硫酸カリウム3.6gを水100gに溶解した重合開始剤水溶液を用意した。
そこで、攪拌機、温度計のついた1Lの4つ口フラスコに水460gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム7gを入れ85℃まで加熱攪拌した。
上記フラスコ中に前記モノマー混合物と重合開始剤水溶液を別々に3時間かけて連続的に注入し、且つ、この間の温度を90℃を保って、注入終了後30分間熟成した。次いで、95℃まで加熱して重合を完結させた後、75℃まで冷却した。
その後、25%水酸化カリウム水溶液129gと水を加え中和し、スチレン・アクリル酸共重合体アルカリ塩水溶液(固形分20.3%、粘度200mPa・s、pH10.6)を得た。
また、実施例1Aと同様に、乳化重合の間、合成中の重合系内のスチレン単量体の残存濃度をガスクロマトグラフィーで経時測定した(図1参照)。
【0040】
《スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の透過率試験例》
そこで、上記実施例1A〜4A並びに比較例1A〜2Aで得られた各スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液について、この水溶液塩を固形分5重量%に希釈して、濁度計(ANA−14S;東京光電株式会社製)を用いて光透過率を測定した。但し、光透過率は水を100%とした。
下表はその結果を示す。
Figure 0004632003
【0041】
上記結果をみると、実施例1A〜4Aの透過率は大きく、透明性の高い共重合体塩水溶液が得られたのに対して、比較例1A〜2Aの透過率は小さく、明らかに濁度が大きかった。
ちなみに、実施例1A〜4A及び比較例1A〜2Aは、単量体及び重合開始剤を連続供給する乳化重合方式でスチレン・アクリル酸共重合体を製造した点で共通するが、図1に見るように、実施例1A〜4Aでは、反応工程中における重合系内の未反応のスチレン単量体量は0.6重量%以下に常に保持されていたのに対して、比較例1A〜2Aでは、反応開始から約1時間経過時点以後は0.6重量%を越えて大きく増加を続けた。
従って、単量体供給量と重合速度を制御してスチレン・アクリル酸の水系での乳化重合を行うに際して、重合系中の未反応スチレン量を常に0.6重量%以下に制御した実施例1A〜4Aは、0.6重量%を越えて増加し続けた比較例1A〜2Aに比べて、得られた共重合体アルカリ塩水溶液の透明性の点で優位性が顕著であった。
【0042】
一方、スチレン単量体の重合系中への供給速度を、系内の水100g当たりの単位時間(分)での供給量(g)で表すと、各実施例は次の通りである。
(1)実施例1A:168g/420分/水460〜560g=0.071〜0.087g/分/水100g
(2)実施例2A:実施例1Aと同じ。
(3)実施例3A:188g/300分/水460〜560g=0.11〜0.14g/分/水100g
(4)実施例4A:144g/240分/水460〜560g=0.11〜0.13g/分/水100g
(5)比較例1A:168g/120分/水460〜560g=0.25〜0.30g/分/水100g
(6)比較例2A:194g/180分/水460〜560g=0.19〜0.23g/分/水100g
また、重合開始剤の全単量体に対する供給量は、実施例1A〜2Aでは各2.6重量%、実施例3Aでは1.79重量%、実施例4Aでは1.5重量%、比較例1Aでは0.71重量%、比較例2Aでは1.5重量%であった。
従って、透明性の高いスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を製造する見地から、スチレン単量体の供給量を0.16g/分/水100g以下に抑制することの重要性が確認された。
尚、前述したように、スチレン単量体量をその重合温度での水に溶解する量程度以下で供給する場合には、この溶解度のオーダーはごく微量であるため、スチレン単量体量を水100g当たり0.16g/分以下に制御するという上記供給条件をきわめて容易に達成できることはいうまでもない。
【0043】
《スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を表面サイズ剤として塗工した紙の製造実施例及びその試験例》
そこで、上記実施例1A〜4A並びに比較例1A〜2Aの各スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を表面サイズ剤として塗工した紙を製造し、その紙についてヒトステキサイズ度、点滴吸水度などの各種試験を行って、上記スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の表面サイズ剤としての性能の良否を調べた。
(1)実施例1B
前記実施例1Aで得られたスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を酸化澱粉水溶液に混合し、酸化澱粉4%濃度で、且つ、スチレン・アクリル酸共重合体0.2%濃度の塗工液を作成した。
次いで、坪量75g/m2でステキヒトサイズ度7秒の中性上質紙に上記塗工液を塗布量1.2g/m2(固形)の条件でラボサイズプレス塗工機を用いて塗工し、回転式ドラムドライヤーにより90℃、90秒の条件で乾燥した。
【0044】
(2)実施例2B
前記実施例1Aで得られたスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を酸化澱粉水溶液に混合し、酸化澱粉5%濃度で、且つ、スチレン・アクリル酸共重合体0.2%濃度の塗工液を作成した。
次いで、坪量43g/m2の未塗工新聞用紙に上記塗工液を塗布量0.3g/m2(固形)の条件でバーコーターを用いて塗工し、回転式ドラムドライヤーにより90℃、90秒の条件で乾燥した。
【0045】
(3)比較例1B
前記比較例1Aで得られたスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を用い、実施例1Bと同様の条件で中性上質紙に塗工し、塗工紙を得た。
【0046】
(4)比較例2B
前記比較例1Aで得られたスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を用い、実施例2Bと同様の条件で未塗工新聞紙に塗工し、塗工紙を得た。
【0047】
そこで、上記実施例1Bと比較例1Bの塗工紙(上質紙)について、JIS P8122に基づきステキヒトサイズ度を測定した。
また、実施例2Bと比較例2Bの塗工紙(新聞用紙)については、J.TAPPI紙パルプ試験方法 No.33に基づき、10μLの点滴吸水度(滴下法)を測定した。
下表はその結果を示す。
Figure 0004632003
上記結果を見ると、実施例1B〜2Bは比較例1B〜2Bに比べてサイズ性が高く、特に、点滴吸水度でのサイズ性が高く、均一性に優れていた。これにより、前記実施例1Aで得られたスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液は、比較例1Aの共重合体塩水溶液に比べて、表面サイズ剤としての性能の点で明らかな優位性が確認できた。
【0048】
《スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を利用したロジン系エマルションサイズ剤の製造実施例及びその試験例》
以下では、得られたスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を乳化分散剤として使用して、ロジン系水性エマルションサイズ剤を製造した場合のエマルション自体の安定性を調べた。
(1)実施例1C
フマル酸強化ロジン100部をトルエン186部に溶解し、このトルエン溶液に前記実施例2Aのスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液7部と水104部を予備混合した。得られた予備混合物をゴーリンホモジナイザーに吐出圧270kgf/cm2で2回通して乳化した後、減圧蒸留によりトルエンを留去して、ロジン系水性エマルションサイズ剤を得た。
【0049】
(2)比較例1C
スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を実施例2Aから前記比較例1Aのものに代替して、それ以外の条件は上記実施例1Cと同様に設定して、ロジン系水性エマルションサイズ剤を得た。
【0050】
そこで、上記実施例1C及び比較例1Cで得られた各ロジン系エマルションサイズ剤に関して、下記の項目(a)〜(d)についての各種試験を行った。
(a)固形分。
(b)平均粒子径:光散乱法(DLSー700:大塚電子製)により測定した。
(c)遠心沈降析出樹脂:試料44gを遠心分離器(H−103N2:国産遠心器社製)を用いて4000rpm、30分間の条件で遠心分離し、沈降部の重量を測定して固形分に対する量(%)を測定した。
(d)200mlメスフラスコに100mlのエマルションサイズ剤を入れ、振とうして発泡性を判定した。その評価基準は次の通りである。
○:発泡性が低かった。
△:発泡性が高かった。
【0051】
下表はその結果である。
Figure 0004632003
上記結果を見ると、実施例1Cのロジン系エマルションサイズ剤は比較例1Cに比べて、平均粒子径が小さく、遠心沈降析出樹脂の割合も顕著に小さく、また、発泡性も低いことから、実施例1Cは優れたエマルション安定性を示した。
これにより、前記実施例2Aのスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液は、比較例1Aのものに比べて、ロジン系エマルションを製造する際の乳化分散剤としての性能の点で、明らかな優位性が確認できた。
【0052】
《スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を利用したスチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体エマルションの製造実施例及びその試験例》
以下では、得られたスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を乳化分散剤として使用して、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体水性エマルションを製造した場合のエマルション自体の安定性を調べた。
(1)実施例1D
予め、スチレン38部、メタクリル酸メチル22.5部、メタクリル酸イソブチル37.5部、アクリル酸2エチルヘキシル53部を混合モノマー液として用意した。また、これとは別に、水65部に過硫酸アンモニウム1.9部を溶解した重合開始剤水溶液を用意した。
そこで、攪拌機、温度計の付いた1Lの4つ口フラスコに前記実施例2Aのスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液517部と水140gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.6部を入れ、80℃まで加熱攪拌した。次いで、上記フラスコ中に前記混合モノマー液を3時間かけて連続添加し、同時に前記重合開始剤水溶液を3時間30分かけて連続添加し、この間の温度を80℃に保った。
そして、上記重合開始剤の添加終了後に1時間熟成して、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体水性エマルションを得た。
【0053】
(2)比較例1D
スチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を実施例2Aから比較例1Aのものに代替し、それ以外の条件は上記実施例1Dと同様に設定して、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体水性エマルションを得た。
【0054】
そこで、上記実施例1D及び比較例1Dで得られた各スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルションに関して、下記の項目(イ)〜(ニ)についての各種試験を行った。
(イ)固形分。
(ロ)粘度。
(ハ)平均粒子径:光散乱法により(DLS−700:大塚電子製)測定した。
(ニ)貯蔵安定性:エマルションの調製後、1ケ月後の沈降物の程度で判定した。その評価基準は次の通りである。
○:沈降物がほとんど認められなかった。
△:沈降物が認められた。
【0055】
下表はその結果である。
Figure 0004632003
上記結果を見ると、実施例1Dのスチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルションは比較例1Dに比べて、平均粒子径が小さく、エマルションの化学的安定性は高かった。また、実施例1Dは比較例1Dに比べて貯蔵安定性の点でも優れていた。
これにより、前記実施例2Aのスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液は、比較例1Aのものに比べて、スチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体エマルションを製造する際の乳化分散剤としての性能の点で、明らかな優位性が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】スチレン・アクリル酸共重合体の合成中における重合系内のスチレン単量体濃度の経時変化図である。

Claims (9)

  1. スチレンとアクリル酸の共重合体の製造方法において、
    上記共重合体の重合方法が乳化重合であり、且つ、
    重合中に系内に存在する未反応スチレンの単量体量を0.6重量%以下に抑制した状態で、スチレンとアクリル酸の各単量体を連続的に重合系中に供給して、スチレン40〜90重量%とアクリル酸60〜10重量%よりなる共重合体を製造し、当該共重合体をケン化して水溶化することを特徴とするスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法。
  2. スチレンとアクリル酸の共重合体の製造方法において、
    上記共重合体の重合方法が乳化重合であり、且つ、
    スチレン単量体の供給量を水中への溶解度以下の量に抑制した状態で、スチレンとアクリル酸の各単量体を連続的に重合系中に供給して、スチレン40〜90重量%とアクリル酸60〜10重量%よりなる共重合体を製造し、当該共重合体をケン化して水溶化することを特徴とするスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法。
  3. スチレン単量体の重合系中への供給速度が、重合系に存在する水100g当たり0.04〜0.16g/分であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法。
  4. 重合開始剤を重合系に連続供給するとともに、その供給量が全単量体の0.8〜3.0重量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法。
  5. 請求項4に記載の重合開始剤が水溶性であることを特徴とするスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法。
  6. 重合温度が70〜100℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を紙用表面サイズ剤として塗工した紙。
  8. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を乳化剤として含有するロジン系エマルション。
  9. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のスチレン・アクリル酸共重合体塩水溶液を乳化剤として含有するスチレン・(メタ)アクリル酸エステル系共重合体エマルション。
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