JP4630201B2 - 構造部材の応力推定方法 - Google Patents
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Description
溶接学会全国大会講演概要 第51集 ( ’92-10)第276頁〜277頁
赤外線サーモグラフィーでプレート1表面に生じる応力を測定する場合、赤外線カメラによって測定対象部位の温度分布が測定され、同時に負荷周波数を把握するための参照信号がコントローラ(図示しない)に取り込まれる。この参照信号としては荷重信号を用いることが多く、その荷重信号波形と真の応力波形(図3に示した応力特性S参照)は基本的に同位相になる。
繰り返し荷重を加えた場合にプレート1における曲げ成分σaと軸力成分σbとの比率によって位相のずれがどのように変化するのかをモデル化し、図5の線図において特性bで示す。
このように、図5に示した線図から、赤外線サーモグラフィーによって測定された応力測定値に乗算する補正係数が測定精度低下量D′として求められる。ただし、この測定精度低下量D′は逆数で示されているため、図6に示すように、1/D′を計算することにより補正係数Dに変換する。
図7の線図はプレート1の強度評価を行うためのものであり、横軸は位相のずれを、縦軸は曲げ成分/軸力成分比を示している。
上記実施形態で求めた補正係数Dは普通鋼、負荷周波数2Hz、板厚3mmについて行ったものであるが、各種条件の変化に対してはその条件に対応する線図を作成すればよい。
F=(α・t)/L2 ……(1)
で示される。ただし、α[m2/sec]は熱拡散率、t[sec]は時間、L[m]は板厚
また、熱拡散率αと熱伝導率λとは
λ=α・Cp・ρ ……(2)
の関係がある。ただし、Cp[J/g℃]は比熱、ρは密度[g/cm3]
従って、(2)式からαを求め、(1)式に代入すると、
F=(λ・t)/Cp・ρ・L2……(3)
となる。
上記図8に示した線図では、位相のずれた波形(フーリエ数=0.23,0.83,2.73の各波形)が横軸方向にさらにシフトしており、同時に補正係数の最大値は縦軸方向に異なっている。したがって板厚や負荷周波数が頻繁に変わるような測定対象については、その都度、補正係数の線図を作成しなければならず繁雑になる。
そのためにまず、波形のシフト量を求める。このシフト量は純曲げ時の位相ずれで決まる。フーリエ数がゼロのときは位相のずれはゼロであり、このゼロ点を基準とすると、図8を参照した場合、フーリエ数が0.23のときは位相ずれ量が略40°,0.83の場合は略60°,2.73の場合は略80°である。これらの位相ずれは、熱伝導の問題としてフーリエ数との関係において1対1に対応する。
一方、純曲げ時の補正係数における最大値は各波形から求められ、図8を参照するとフーリエ数が0.23のときは略1.25、0.83の場合は略2,2.73の場合は略4.5である。これらの補正係数の最大値は、熱伝導の問題としてフーリエ数との関係において1対1に対応する。
補正係数/g(フーリエ数)=cos[位相ずれ+f(フーリエ数)]
の関係から、
補正係数=cos[位相ずれ+f(フーリエ数)]×g(フーリエ数)……(4)
となる。
また、図9に示した線図についても曲げ/軸力成分比が無限大となる部分での位相のずれ量がフーリエ数毎に異なっているため、この図9についても曲げ成分/軸力成分の評価を簡略化することを目的として評価線図の共通化を図ることができる。
図9に示される位相ずれ量は純曲げ時の位相ずれに対応しており、熱伝導の問題としてフーリエ数との関係において1対1で決まる。
位相ずれ量=0の場合、曲げ/軸力成分比=0
位相ずれ量<0の領域である場合、位相ずれ×90/h(フーリエ数)
位相ずれ量>0の領域である場合、位相ずれ×90/k(フーリエ数)
ただし、関数H(位相ずれ、フーリエ数)とする。
位相ずれ量<−h(フーリエ数)の場合、位相ずれ=位相ずれ+180°×n
位相ずれ量>k(フーリエ数)の場合、位相ずれ=位相ずれ−180°×n
(n=1,2,3……)
図15は上記の条件に基づいて求められた曲げ/軸力成分比のグラフであり、横軸はH(位相ずれ、フーリエ数)に置き換えられている。これにより、G部およびG′部における位相ずれ量が補正された。
上記補正によって曲げ/軸力成分比が+無限大、−無限大となる部分での位相のずれは補正されたが、図15に示したグラフにおいて曲げ/軸力成分比が無限大から0に低下する時の波形の傾きはなお、フーリエ数毎にばらついている。
(曲げ成分/軸力成分)/g(フーリエ数)……(5)
(曲げ成分/軸力成分)/g(フーリエ数)=F(H(位相ずれ、フーリエ数))の関係から
曲げ成分/軸力成分=g(フーリエ数)×F(H(位相ずれ、フーリエ数)……(6)
によって求められる。
σa=表側の応力値×[(曲げ成分/軸力成分)/(1+曲げ成分/軸力成分)]……(7)
一方、軸力成分応力は、
σb=表側の応力値×1/(1+曲げ成分/軸力成分)……(8)
によって求められる。
裏側の応力値=赤外線応力測定値×精度補正係数×−1+2/(1+曲げ成分/軸力成分)……(9)
によって求められる。
裏側応力値=赤外線応力測定値×cos〔位相ずれ+f(フーリエ数)〕×g(フーリエ数)×{−1+2/〔1+g(フーリエ数)×F〈 H(位相ずれ、フーリエ数)〉〕}
……(10)
上記(10)式より、
裏側応力値/赤外線応力測定値=cos〔(位相ずれ+f(フーリエ数)〕×g(フーリエ数)×{−1+2/〔1+g(フーリエ数)×F〈 H(位相ずれ、フーリエ数)〉〕}……(11)
となり、式(11)の右辺によって裏側応力値/赤外線応力測定値が評価される。
図25において、重ね継手によって接合されたプレート10とプレート11に対し矢印N方向に繰り返し引張力を作用させた。図中Oは軸力成分と曲げ成分が混在する測定範囲を示しており、応力測定はその測定範囲O内で矢印Pに沿って測定した。
材料:高強度鋼
熱伝導率=58.6W/mK
密度=7800kg/m3
比熱=0.5kJ/kgK
板厚=3mm
負荷周波数=2Hz
フーリエ数は0.83である。
図26のグラフは赤外線測定による応力分布を示したものであり、特性Qは補正前応力を示している。この応力分布は上記矢印Pに沿って測定した結果を示している。また、図27は応力の測定と同時に測定した位相ずれの分布図を示している。
フーリエ数が0.83のとき、裏側応力値/赤外線応力測定値=cos〔(位相ずれ+f(0.83)〕×g(0.83)×{−1+2/〔1+g(0.83)×F〈 H(位相ずれ、0.83)〉〕}
によって求められ、図28は求められた裏側応力値/赤外線応力測定値をグラフにしたものである。
図26に示した赤外線測定による応力分布に対し、図28で求められた曲げ成分/軸力成分分布を掛けると、図29に示すように裏側応力のグラフVが得られる。
2 プレート
2a 重ね継手部
2b プレート片
2c プレート片
σa 曲げ成分
σb 軸力成分
G 測定範囲
Claims (5)
- 部材に対し繰り返し負荷を与えた際に発生する負荷応力の波形と赤外線映像装置によって測定された測定応力の波形との間の位相のずれを測定し、上記部材に混在する曲げ成分応力と軸力成分応力の比と上記位相のずれとの関係をモデル化しておき、
表面と裏面を有する構造部材に対し繰り返し負荷を与えている状態で上記赤外線映像装置によってその構造部材の応力を表面側から測定し、この測定応力の波形と上記負荷応力の波形との間に生じる位相のずれに対応する曲げ成分応力/軸力成分応力比を上記モデルより求め、
上記構造部材の測定応力を、上記曲げ成分応力/軸力成分応力比に基づいて曲げ成分応力と軸力成分応力とに分離し、この軸力成分応力から上記曲げ成分応力を減算することにより、上記構造部材における裏面側の応力を推定することを特徴とする構造部材の応力推定方法。 - 上記構造部材の測定応力の波形と上記負荷応力の波形との間に生じる位相のずれから、上記構造部材の測定において熱伝導に起因する測定誤差を計算し、この測定誤差を補償する補正係数を上記測定応力に乗算することにより上記測定応力を補正する請求項1記載の構造部材の応力推定方法。
- 上記負荷応力の波形として負荷周波数を把握するための参照信号を用いる請求項1または2記載の構造部材の応力推定方法。
- 上記部材における熱伝導率挙動をフーリエ数に変換し、上記位相のずれに応じた上記補正係数をフーリエ数毎に求める請求項2または3記載の構造部材の応力推定方法。
- 上記部材における熱伝導率挙動をフーリエ数に変換し、上記位相のずれと曲げ成分応力/軸力成分応力比との関係をフーリエ数毎に求める請求項2または3記載の構造部材の応力推定方法。
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