JP4628741B2 - 反射調光エレクトロクロミック素子及びそれを用いたガラス - Google Patents

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本発明は、建物や車両内の夏期の熱暑感を低減し、快適な温熱環境を提供するためのガラスに関する。更に詳しくは、本発明は、反射調光エレクトロクロミック素子を備え、窓ガラスから入射する太陽光の透過をコントロールできるガラスに関する。反射調光エレクトロクロミック素子によってガラスの透過率が制御され、建物や車両内の熱暑感が低減される。
一般に、建物において窓ガラスは大きな熱の出入口になっている。例えば、冬の暖房時の熱が窓から流失する割合は48%程度に達し、夏の冷房時に窓から熱が入る割合は71%程度にも達する。
同様の現象は、窓ガラスが大きな熱の出入口となっている自動車にも当てはまる。自動車においては、空間に対する窓ガラスの割合が、建築物における割合よりも大きく、かつ、車内にいる人間に日射を避ける余地が少ないため、炎天下環境に置かれた自動車の室内は非常な高温になる。日本国内の夏期環境の測定例では、駐車された車内の空気温度は約70℃近くに達する。室内の内装材温度に関しては、インスツルメントパネル上面で100℃近く、天井は70℃近くに上昇する。こうした状況で乗車した時の不快さは言うまでもない。また、換気や冷房装置を利用しても内装材温度は容易に下がらず、長時間にわたって乗員に輻射熱を放射し続け、車内における快適性を大きく低下させる。
これらの問題を解決する技術として、光および熱の出入を制御できる調光ガラスが開発されている。
以下、簡便のため、ガラスに調光機能を付与する部材を調光素子と呼び、調光素子を含み、その機能を利用するガラスを調光ガラスと呼ぶ。調光素子にはいくつかの種類がある。調光素子としては、1)電流・電圧の印加により可逆的に透過率が変化する材料を用いたエレクトロクロミック素子、2)温度により透過率が変化する材料を用いたサーモクロミック素子、3)雰囲気ガスの制御により透過率が変化する材料を用いたガスクロミック素子が挙げられる。こられの中では、調光材料として酸化タングステン薄膜を用いたエレクトロクロミック素子についての研究が最も進められている。
この酸化タングステンを初めとして、これまで知られているエレクトロクロミック調光素子は、調光材料で光を吸収することにより調光を行うことをその原理としている。即ち、光の吸収により室内側への光の形態をとった熱の進入を抑制する。ところが、このような調光原理を有する調光材料を採用する場合、光の吸収により調光材料が熱を持ち、その熱が室内に再放射されてしまい、調光ガラス内部に熱が侵入してしまう。
この問題の解決手段としては、光を吸収することにより調光を行うのではなく、光を反射することにより調光を行う手法が考えられる。つまり、鏡の状態と透明な状態とが可逆的に変化する特性を有する反射調光材料を用いることによって、調光材料の吸熱による室内への熱進入を防止できると考えられる。
このような、鏡の状態と透明な状態とが変化する反射調光材料は長らく見つかっていなかったが、イットリウムやランタンなどの希土類の水素化物において、プロトンの吸蔵⇔放出により透明⇔鏡状の変化が起きることが発見された(非特許文献1参照)。その後、マグネシウム・ニッケル合金のMgNiや、MgNix(0.1<x<0.3)が、反射調光材料として提案されている(特許文献1、非特許文献2参照)。これらの材料は、使用する元素がマグネシウムとニッケルであり、希土類元素金属に比べてコスト的に優位である。
ただし、これらの反射調光材料は、酸素や水分により酸化劣化しやすい傾向がある。このため、劣化の原因となる酸素や水分の侵入を抑制し、透明と鏡状とを切り替えるために必要なプロトンを透過するキャップ層を設けることが一般的である。キャップ層の構成材料としては、パラジウム、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タンタル、フッ化マグネシウム、フッ化鉛などが提案されている(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2参照)。
上記例示した反射調光エレクトロクロミック素子を用いることによって、光反射を利用した効果的な調光が可能であるが、様々な用途への適用、特に自動車のガラスとしての使用を考えた場合、応答性を高め、透明⇔鏡状の変化速度を高めることが望まれている。
特開2003−335553号公報 J.N.Huiberts,R.Griessen,J.H.Rector,R.J.Wijngaarden,J.P.Dekker,D.G.de Groot,N.J.Koeman,Nature, 380,231(1996) T.J.Richardson,J.L.Slack,R.D.Armitage,R.Kostecki,B.Farangis,and M.D.Rubin,Applied Physics Letters.78,3047(2001)
本発明の目的は、反射調光エレクトロクロミック素子の応答性を高める手段を提供することである。
本発明は、第1透明導電膜層と、プロトンの吸脱着によって光線透過性能および光線反射性能が変化する反射調光材料からなる調光材料層と、前記調光材料層への酸素および水分の侵入を抑制し、プロトン伝導性を有するキャップ層と、プロトン伝導性の電解質層と、前記調光材料層へ供給されるプロトンを貯蔵するプロトン蓄積層と、第2透明導電膜層とが、この順序で積層してなる反射調光エレクトロクロミック素子であって、前記キャップ層は、窒素原子、酸素原子、炭素原子、水素原子、ホウ素原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種類の元素を、前記反射調光材料への水素供給速度向上元素として含む、反射調光エレクトロクロミック素子である。
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子は応答性に優れる。本発明のエレクトロクロミック素子は、透明⇔鏡状の変化速度が速く、様々な用途に有用である。
まず、反射調光エレクトロクロミック素子を用いた調光機能について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、反射調光エレクトロクロミック素子を、単に「エレクトロクロミック素子」とも記載する。
図1は、反射調光板の一実施形態を示す断面模式図である。反射調光板は、第1透明導電膜層10と、調光材料層20と、キャップ層30と、電解質層40と、プロトン蓄積層50と、第2透明導電膜層60とが、この順序で積層してなるエレクトロクロミック素子が、1対の透明基板70によって挟持された構成を有する。なお、図1は、単なる模式図であり、本発明の反射調光板の厚さや大きさが図示する態様に限定されるわけではない。
調光材料層20は、プロトンの吸脱着によって光線透過性能および光線反射性能が変化する反射調光材料からなり、第1透明導電膜層10および第2透明導電膜層60に電圧が印加されると、プロトンの吸脱着が反射調光材料周辺で生じる。その結果、エレクトロクロミック素子の反射特性が変化する。キャップ層30は、調光材料層20の劣化の原因となる酸素および水分の侵入を防止する。キャップ層30および電解質層40は、プロトン伝導性を有しており、プロトンを貯蔵するプロトン蓄積層50と調光材料層20との間でのプロトンの受け渡しを媒介する。1対の透明基板70は、エレクトロクロミック素子を保持する役割を有する。
エレクトロクロミック素子の鏡状⇔透明の変化は、反射調光材料のプロトンの吸脱着によって生じ、反射調光材料のプロトンの吸脱着速度が、エレクトロクロミック素子の応答性に影響を与える。反射調光材料のプロトンの吸脱着速度には、反射調光材料自体のプロトンの吸蔵および放出も影響を及ぼすが、調光材料層へのプロトンの供給および吸収も影響を及ぼす。つまり、調光材料層にプロトンが供給されにくいと、反射調光材料のプロトンの吸着が生じにくいし、調光材料層にプロトンが供給されても、調光材料層にプロトンが吸収されないと、やはり反射調光材料のプロトンが吸着しにくい。
本発明においては、キャップ層に、調光材料層への水素供給速度を向上させる機能を有する元素が注入される。そして、キャップ層のプロトン吸蔵および放出を大きくすることによって、反射調光材料へのプロトン供給速度が向上し、エレクトロクロミック素子の応答性が向上する。
本発明における応答性向上のメカニズムについて、図2および図3を用いて説明する。なお、図2および図3においては、キャップ層がパラジウムから構成される場合について説明するが、キャップ層の構成材料がパラジウムに限定されるわけではない。
図2は、従来のエレクトロクロミック素子における、キャップ層表面におけるプロトン接触およびその後の経過を説明する模式図である。まず、プロトン蓄積層50から電解質層40を経て供給されたプロトンが、キャップ層30の表層に接触して、キャップ層30の最表層に吸着する。次に、キャップ層の最表層に吸着したプロトンがキャップ層内部に取り込まれるか、または再放出される。ここで問題となるのは、キャップ層がプロトンを取り込みやすいパラジウムからなる場合であっても、キャップ層表面に接触したプロトンが、キャップ層に吸着し、更にキャップ層内部に取り込まれる確率は、通常10−4〜10−5程度と低いことである。プロトンがキャップ層内部へ取り込まれる確率がこのように低いため、この過程がエレクトロクロミック素子の応答性に大きく影響を与えている。従って、この過程を改善できれば、調光材料層へのプロトン供給速度が高まり、結果としてエレクトロクロミック素子の応答性が高まる。
図3は、本発明のエレクトロクロミック素子における、キャップ層表面におけるプロトン接触およびその後の経過を説明する模式図である。本発明においては、キャップ層30は、窒素原子、酸素原子、炭素原子、水素原子、ホウ素原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種類の元素を、前記反射調光材料への水素供給速度向上元素として含む。図3において、Xが水素供給速度向上元素である。水素供給速度向上元素とは、キャップ層に供給された水素がキャップ層内部に取り込まれる確率を向上させる機能を有する元素を意味する。水素供給速度向上元素が存在していると、キャップ層30の最表層に吸着したプロトンがキャップ層内部に取り込まれる確率が高まる。その結果、キャップ層30を経て、調光材料層20に供給されるプロトンの量が増加し、エレクトロクロミック素子の応答性が高まる。
本発明の第1は、反射調光エレクトロクロミック素子に関する。具体的には、本発明の第1は、第1透明導電膜層と、プロトンの吸脱着によって光線透過性能および光線反射性能が変化する反射調光材料からなる調光材料層と、前記調光材料層への酸素および水分の侵入を抑制し、プロトン伝導性を有するキャップ層と、プロトン伝導性の電解質層と、前記調光材料層へ供給されるプロトンを貯蔵するプロトン蓄積層と、第2透明導電膜層とが、この順序で積層してなる反射調光エレクトロクロミック素子であって、前記キャップ層は、窒素原子、酸素原子、炭素原子、水素原子、ホウ素原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種類の元素を、前記反射調光材料への水素供給速度向上元素として含む、反射調光エレクトロクロミック素子である。以下、本発明の第1について、構成ごとに詳細に説明する。
第1透明導電膜層および第2透明導電膜層は、透明導電膜として公知の材料から構成されうる。新たに開発された材料が、透明導電膜として用いられてもよい。キャップ層に隣接する第1透明導電膜層を構成する材料と、プロトン蓄積層に隣接する第2透明導電膜層を構成する材料とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。透明導電膜を構成する材料としては、例えば、インジウム−錫酸化物(ITO)、アンチモニー−錫酸化物、酸化錫、酸化亜鉛が挙げられる。場合によっては、有機系高分子材料が適用されてもよい。
透明導電膜層の表面抵抗はエレクトロクロミック素子の応答性に関与し、その値が低いことが望ましい。具体的には、透明導電膜層の表面抵抗は、好ましくは50Ω/□以下である。また、透明導電膜層は、エレクトロクロミック素子がガラスなどに適用されることを考慮すると、可視光透過率が高いことが好ましい。具体的には、透明導電成膜の可視光透過率は、好ましくは70%以上である。
調光材料層は、プロトンの吸脱着によって光線透過性能および光線反射性能が変化する反射調光材料からなる調光材料層からなる。反射調光材料は、マグネシウムおよびニッケルからなる合金、イットリウムやランタンなどの希土類の水酸化物など、種々の材料が用いられうる。反射調光材料の選択に当たっては、特許文献1や非特許文献2のような公知技術が適宜参照されてもよい。反射調光材料の中では、原料コストを考慮すると、MgNiやMgNix(0.1<x<0.3)のような、マグネシウムおよびニッケルからなる合金が好ましい。0.1<x<0.3の範囲であると、マグネシウム−ニッケル合金層が水素を吸蔵して透明になったときの透過率が高い。
キャップ層は、プロトン伝導性を有し、電解質層と調光材料層との間でのプロトンの受け渡しを媒介する。また、キャップ層は、酸素および水素の調光材料層への侵入を防止する機能も有する。キャップ層の構成材料としては、パラジウム、パラジウム−金合金、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タンタル、フッ化マグネシウム、フッ化鉛などが挙げられる。この中では、キャップ層は、パラジウム、またはパラジウム−金合金からなることが好ましい。
キャップ層の厚みは、特に限定されないが、0.5〜10nmの範囲であることが好ましい。キャップ層が薄すぎると酸素透過防止能力が十分に発現しない虞がある。また、キャップ層が厚すぎると、キャップ層の光線透過率が低下する虞がある。つまり、キャップ層は、酸素透過防止能力、および光線透過率を考慮して、適切な厚さにされることが好ましい。
本発明においては、キャップ層が、窒素原子、酸素原子、炭素原子、水素原子、ホウ素原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種類の元素を、前記反射調光材料への水素供給速度向上元素として含む。これらの元素をキャップ層に含ませることによって、キャップ層内部への水素取り込み確率を高めることができ、エレクトロクロミック素子の応答性が向上する。水素供給速度向上元素として含まれる元素は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。場合によっては、他の元素がキャップ層内部に混在してもよい。なお、以下の説明においては、水素供給速度向上元素を、単に「速度向上元素」とも記載する。
速度向上元素は、キャップ層と電解質層との界面において層を形成してなることが好ましい。速度向上元素をキャップ層と電解質層との界面に多く存在させることによって、速度向上元素が効果的に機能し、調光材料層へのプロトン供給による鏡状から透明への変化が起こり易くなる。調光材料層においては、透明から鏡状への変化、および鏡状から透明への変化の双方が求められるが、一般的には、鏡状から透明への変化は、透明から鏡状への変化に比べて生じにくい。キャップ層と電解質層との界面に速度向上元素を存在させることによって、電解質層からキャップ層へのプロトン取り込みが促進される。なお、場合によっては、キャップ層と電解質層との界面において速度向上元素からなる層が存在し、かつ、キャップ層と調光材料層との界面においても速度向上元素からなる層が存在していてもよい。
図4は、キャップ層30の内部に存在する速度向上元素が、キャップ層30と電解質層40との間で層35を形成している、エレクトロクロミック素子の部分断面模式図である。速度向上元素からなる層35は、キャップ層30において速度向上元素の濃度が高い部位であり、速度向上元素との間には、図4に示すような明確な境界線がなくてもよい。本願においては、キャップ層における元素分布を考えた際に、キャップ層内部において速度向上元素の濃淡が存在し、キャップ層と電解質層との界面側において速度向上元素の濃度が高くなっていれば、キャップ層と電解質層との界面において速度向上元素からなる層が形成されているものとする。
速度向上元素の濃度は、特に限定されないが、好ましくは1×1019/cm〜1×1021/cmの範囲であることが望ましい。キャップ層と電解質層との界面近傍における速度向上元素の濃度がこの範囲であると、プロトンの取り込み速度が十分に向上し、キャップ層の透過率低下も許容可能な範囲となりうる。2種以上の速度向上元素が含まれる場合には、速度向上元素の合計濃度が上記範囲であることが好ましい。速度向上元素の濃度は、SIMS(二次イオン質量分析法)、GD−MS(グロー放電質量分析)などを用いて測定されうる。
電解質層は、プロトン伝導性を有し、プロトン蓄積層とキャップ層との間でのプロトンの受け渡しを媒介する。電解質層を構成する電解質は、液体電解質、固体電解質等種々の材料が存在するが、本発明の主用途である建築用窓ガラス、自動車用窓ガラスを考慮すると固形物であることが望ましい。液体の場合、長期間の使用途中で液漏れによる性能低下が懸念されるからである。固形物として有機物、無機物、および両者の混合物が採用されうる。また、水分の存在はマグネシウムとニッケルを含んでなる層の酸化劣化の要因となりうるため、電解質は無水であることが好ましい。好適な電解質として、例えば、スルホン化ポリエーテルケトンからなるポリマー、酸化タンタルが挙げられる。2枚の基板にエレクトロクロミック素子を挟み込む形態を採る場合には、プロトン電解質が柔軟な有機物からなることが好ましいが、これに限定されない。
プロトン蓄積層は、調光材料層へ供給されるプロトンを貯蔵する役割を果たす。プロトン蓄積層の構成材料としては、金属酸化物が好ましい。例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化バナジウム等が、金属酸化物として用いられうる。これらのうち、酸化タングステンが特に好ましい。
キャップ層に水素供給速度向上元素を存在させることによって、エレクトロクロミック素子の応答性が向上するが、他の応答性向上手段が採用されてもよい。例えば、キャップ層と調光材料層との界面におけるキャップ層の凹凸が、キャップ層と電解質層との界面におけるキャップ層の凹凸よりも大きくする。図5は、キャップ層と調光材料層との界面の凹凸が、キャップ層と電解質層との界面の凹凸よりも大きい実施形態の模式図である。なお、説明の都合上、図5は凹凸を誇張して記載しており、図示するような凹凸に限定されるわけではない。
図5に示すように、キャップ層30と調光材料層20との界面の凹凸を、キャップ層30と電解質層40との界面の凹凸よりも大きくすることによって、キャップ層30に取り込まれたプロトンが、調光材料層20へと移動しやすくなる。また、調光材料層20からキャップ層30にプロトンが移動しやすくなる。このような措置によって、エレクトロクロミック素子の応答性を向上させうる。
同様の目的で、キャップ層と調光材料層との界面におけるキャップ層の表面積が、キャップ層と電解質層との界面におけるキャップ層の表面積よりも大きくしてもよい。表面積が大きいほどプロトンが移動しやすくなると考えられ、このような措置を講じることによって、エレクトロクロミック素子の応答性を向上させうる。
本発明の第2は、本発明のエレクトロクロミック素子と、エレクトロクロミック素子を挟持する1対の透明基板からなる反射調光板である。図1に示すように、エレクトロクロミック素子が、透明基板10および透明基板70によって挟持される。
基板は、エレクトロクロミック素子を保持する機能を有するが、その他に、水や酸素の浸入を抑制する障壁としても機能しうる。基板は、ガラス板や樹脂シートなどから構成される。
ガラスの素材は特に限定されず、一般に用いられているガラスが適用されうる。ガラスは無色であっても着色されていてもよい。ガラスの具体例としては、クリアーガラス、グリーンガラス、ブロンズガラス、グレーガラス、ブルーガラス、UVカット断熱ガラス、熱線吸収ガラス、強化ガラス等が使用されうる。場合によっては、これらが組み合わせられてもよい。
樹脂シートの素材は、特に限定されないが、透明であり、アウトガスが少ないことが好ましい。樹脂シートを用いて反射調光板を作製する場合、調光材料層の成膜を減圧条件下で実施することが多いため、アウトガスの少ない樹脂シートを用いることによって、減圧を維持しやすくなる。
樹脂の具体例としては、各種ナイロンに代表される脂肪族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン、ポリプロピレンなどからなる各種樹脂シートが、加工性、経済性、市場入手性、リサイクル性等の点から好適である。これらの中でも、ポリプロピレン、ポリエステルがより好適で、例えばポリエステルではポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリブチレンイソフタレート(PBI)、ポリε−カプロラクトン(PCL)等のほか、PETのエチレングリコール成分を他の異なるグリコール成分で置換したもの(例えば、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT))、またはテレフタル酸成分を他の異なる2塩基酸成分で置換したもの(ポリヘキサメチレンイソフタレート(PHI)、ポリヘキサメチレンナフタレート(PHN))等を用いることができる。価格、透明性、耐熱性などを考慮すると、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、アクリルなどからなることが好ましい。
透明基板によってエレクトロクロミック素子が挟持された反射調光板においては、透明導電膜層は、隣接する透明基板上に密着成形されてなることが好ましい。つまり、透明導電膜層が表面に形成された透明基板を用いて、エレクトロクロミック素子を製造することが好ましい。このような態様の材料を用いた場合、Roll TO Rollで連続的に生産できるメリットがあるため、作業工程が効率的になる。
透明基板として樹脂シートを用いる反射調光板は、図6に示すように、さらに2枚のガラス板80に挟持されることが好ましい。このような構成とすることによって、樹脂シートによるシーリング機能に加え、ガラスによる同機能が期待できる。この際には、ポリビニルブチラール(PVB)のような公知の材料からなる樹脂シート90を樹脂シートの外側に配置し、さらにガラス板に挟み込む構成が望ましい。
反射調光板を構成する各層の大きさおよび厚さは、特に限定されない。公知の反射調光板の構造を参考にして決定されてもよいし、用途や求める性能に応じて適宜調整されてもよい。例えば、反射調光板が自動車のフロントガラスに用いられるのであれば、車両のデザインに応じて透明基板の大きさが決定される。また、厚さも、調光材料の透光率や強度などを考慮して決定される。
本発明の第3は、反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法に関する。具体的には、本発明の第3は、第1透明導電膜層上に、プロトンの吸脱着によって光線透過性能および光線反射性能が変化する反射調光材料からなる調光材料層を形成する段階と、前記調光材料層上に、前記調光材料層への酸素および水分の侵入を抑制し、プロトン伝導性を有するキャップ層を形成する段階と、前記キャップ層を、減圧条件下で一酸化炭素、エチレン、水素、または硫化水素ガスと接触させる段階と、第2透明導電膜層上に、プロトン蓄積層を形成する段階と、前記第1透明導電膜層、前記調光材料層、および前記キャップ層からなる積層体、および前記第2透明導電膜層、および前記プロトン蓄積層からなる積層体を、プロトン伝導性の電解質膜を介して、前記キャップ層および前記プロトン蓄積層が対向するように積層させる段階とを含む反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法である。
本発明の第4も、反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法に関する。具体的には、本発明の第4は、第1透明導電膜層上に、プロトンの吸脱着によって光線透過性能および光線反射性能が変化する反射調光材料からなる調光材料層を形成する段階と、前記調光材料層上に、前記調光材料層への酸素および水分の侵入を抑制し、プロトン伝導性を有するキャップ層を形成する段階と、イオン注入法を用いて、前記キャップ層に窒素原子、酸素原子、炭素原子、水素原子、ホウ素原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種類の元素を水素供給速度向上元素として注入する段階と、第2透明導電膜層上に、プロトン蓄積層を形成する段階と、前記第1透明導電膜層、前記調光材料層、および前記キャップ層からなる積層体、および前記第2透明導電膜層、および前記プロトン蓄積層からなる積層体を、プロトン伝導性の電解質膜を介して積層させる段階とを含む反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法である。
本発明の第3および第4は、水素供給速度向上元素の導入方法が異なる以外は同様であるため、以下、まとめて説明する。また、エレクトロクロミック素子を構成する材料の種類や水素供給速度向上元素などについては、本発明の第1および第2において説明した通りであるため、以下において説明を省略する。
調光材料層が形成される第1透明導電膜層を準備する。ITOなどである第1透明導電膜層は、樹脂シートやガラス板といった透明基板上に形成されていてもよい。
第1透明導電膜層上には、調光材料層を形成する。調光材料層の形成には、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相蒸着法(CVD)、めっき法等が採用されうる。基板としてポリマー材料を用いた場合に、基板を加熱せずに成膜できる点や、成膜した金属、とりわけマグネシウムの酸化を防止できる点を考慮すると、真空蒸着、イオンプレーティング、またはスパッタリングのいずれかの方法で成膜されることが好ましい。
キャップ層と調光材料層との界面におけるキャップ層の凹凸を、キャップ層と電解質層との界面におけるキャップ層の凹凸よりも大きくする場合や、キャップ層と調光材料層との界面におけるキャップ層の表面積が、キャップ層と電解質層との界面におけるキャップ層の表面積よりも大きくする場合には、形成された調光材料層に凹凸を形成する手段や、表面積を増大させる手段が講じられてもよい。例えば、基板に凹凸を設ける手法やパラジウムをスパッタリングで成膜することによって、凹凸を設けることが可能である。なお、パラジウムをスパッタリングで成膜すると凹凸が形成されるのは、相対的に軟らかいマグネシウム−ニッケル合金などからなる調光材料層にパラジウム粒子が刺さることにより、凹凸ができるためである。
調光材料層上には、キャップ層を形成する。キャップ層も、調光材料層と同様に、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相蒸着法(CVD)、めっき法などによって作製することが可能である。
キャップ層の内部には、水素供給速度向上元素が導入される。水素供給速度向上元素を導入する方法の1つとしては、キャップ層を、減圧条件下で一酸化炭素、エチレン、水素、または硫化水素ガスと接触させる方法が挙げられる。これらのガスとキャップ層との接触は、キャップ層の成膜後に連続して行われることが好ましい。
水素供給速度向上元素を導入する他の方法としては、イオン注入法を用いて、キャップ層に窒素原子、酸素原子、炭素原子、水素原子、ホウ素原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種類の元素を注入する方法が挙げられる。イオン注入法は、水素供給速度向上元素をイオン注入する際にイオン注入のエネルギー及びドーズ量を正確に制御することが可能であり、エネルギーを調整することでイオンの打ち込み位置を制御することができる。また、イオン注入のドーズ量を調整することで、注入される水素供給速度向上元素濃度を調整することが可能である。打ち込まれるイオンは、注入する元素に応じて選択されればよい。例えば、窒素原子を打ち込む場合はN2+を、ホウ素原子を打ち込む場合にはBF2+が用いられる。
必要であれば、キャップ層とガスとを接触させる方法、およびイオン注入法の両者が併用されてもよい。
別途、プロトン蓄積層が形成される第2透明導電膜層を準備する。ITOなどである第2透明導電膜層は、樹脂シートやガラス板といった透明基板上に形成されていてもよい。
第2透明導電膜層上には、プロトン蓄積層を形成する。プロトン蓄積層は、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相蒸着法(CVD)、めっき法等が採用されうる。
続いて、第1透明導電膜層、調光材料層、およびキャップ層からなる積層体、および第2透明導電膜層、およびプロトン蓄積層からなる積層体を、プロトン伝導性の電解質膜を介して積層させて、エレクトロクロミック素子を得る。その際には、キャップ層およびプロトン蓄積層が対向し、キャップ層、電解質層、プロトン蓄積層の順に積層されるように配置する。
本発明の第3および第4によってエレクトロクロミック素子が製造されるが、本発明のエレクトロクロミック素子の製造方法が上記方法に限定されるわけではない。可能であれば、他の製造方法によって製造されてもよい。例えば、調光材料層とキャップ層を設けてから電解質層、プロトン蓄積層、透明導電膜層を設けてもよく、逆に透明導電膜層を設けた基板にプロトン蓄積層、電解質層を設けて、その上にキャップ層、調光材料層、透明導電膜層を設けてもよい。なお、他の製造方法によって製造されたエレクトロクロミック素子も、本発明の第1のエレクトロクロミック素子の技術的範囲に含まれうる。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
厚さ1mmのガラス板にインジウム−錫酸化物層が成膜されている、透明基板と第1透明導電膜層との積層体を準備した。これを洗浄後、スパッタリング装置の真空装置内にセットして真空排気を行った。スパッタリング装置は3つのスパッタ銃を備え、ターゲットとして、金属マグネシウム、金属ニッケル、および金属パラジウムを用いた。
最初に、直流スパッタ法により、マグネシウムに30W、ニッケルに11Wのパワーを加えてスパッタを行い、マグネシウムおよびニッケルからなる調光材料層を形成した。スパッタ中のアルゴンガス圧は0.4Paであった。形成された調光材料層の厚さは40nm、調光材料層におけるマグネシウムとニッケルとの原子比率は6:1とした。
次に、同じ真空条件で、6Wのパワーを加えてパラジウム薄膜を、キャップ層として成膜した。パラジウム薄膜の厚みは4nmとした。引き続き、反応系にエチレンガスを1×10−3Paとなるように導入し、パラジウムからなるキャップ層の表層に、水素供給速度向上元素として炭素原子および水素原子を導入した。キャップ層の表層における炭素原子の濃度は1×1019/cmとした。
別途、厚さ1mmのガラス板にインジウム−錫酸化物層が成膜されている、透明基板と第2透明導電膜層との積層体に、プロトン蓄積層を形成した。プロトン蓄積層の形成は、酸化タングステンを第2透明導電膜層上に蒸着させることにより行った。プロトン蓄積層の厚さは100nmとした。
続いて、第1透明導電膜層、調光材料層、およびキャップ層からなる積層体、および第2透明導電膜層、およびプロトン蓄積層からなる積層体を、プロトン伝導性の電解質膜を介して、キャップ層およびプロトン蓄積層が対向するように積層させた。電解質膜は、アクリルアミドスルホン酸とメトキシポリエチレングリコール(4)モノメタクリレートよりなるシート状の膜を用いた。電解質膜の厚さは100nmとした。その結果、第1透明導電膜層と、調光材料層と、キャップ層と、電解質層と、プロトン蓄積層と、第2透明導電膜層とが、この順序で積層してなるエレクトロクロミック素子を得た。
エレクトロクロミック素子の応答性を評価するために、エレクトロクロミック素子に配線し、電圧3.5Vで駆動させた際の鏡状から透明への変化速度を調べた。速度を評価する基準として、透過率が1%から50%になるまでの時間を採用した。エレクトロクロミック素子の透過率が1%から50%になるまでの時間は350秒であった。結果を表1に示す。
(実施例2)
エチレンガスにかえて硫化水素を用い、パラジウムからなるキャップ層の表層に、水素供給速度向上元素として硫黄原子および水素原子を導入した以外は、実施例1と同様にしてエレクトロクロミック素子を得た。
エレクトロクロミック素子の透過率が1%から50%になるまでの時間は320秒であった。結果を表1に示す。
(実施例3)
エチレンガスにかえて一酸化炭素を用い、パラジウムからなるキャップ層の表層に、水素供給速度向上元素として炭素原子および酸素原子を導入した以外は、実施例1と同様にしてエレクトロクロミック素子を得た。
エレクトロクロミック素子の透過率が1%から50%になるまでの時間は320秒であった。結果を表1に示す。
(実施例4)
キャップ層とガスとを接触させるかわりに、窒素イオンを加速エネルギー20KeV、ドーズ量5×1015/cmの条件でキャップ層にイオン注入した以外は、実施例1と同様にしてエレクトロクロミック素子を得た。
エレクトロクロミック素子の透過率が1%から50%になるまでの時間は320秒であった。結果を表1に示す。
(実施例5)
キャップ層とガスとを接触させるかわりに、BF2+イオンを加速エネルギー20KeV、ドーズ量3×1015/cmの条件でキャップ層にイオン注入した以外は、実施例1と同様にしてエレクトロクロミック素子を得た。
エレクトロクロミック素子の透過率が1%から50%になるまでの時間は310秒であった。結果を表1に示す。
(実施例6)
キャップ層とガスとを接触させるかわりに、O イオンを加速エネルギー20KeV、ドーズ量3×1015/cmの条件でキャップ層にイオン注入した以外は、実施例1と同様にしてエレクトロクロミック素子を得た。
エレクトロクロミック素子の透過率が1%から50%になるまでの時間は340秒であった。結果を表1に示す。
(実施例7)
パラジウムからなるキャップ層の厚みを10nmとする以外は、実施例1と同様にして反射調光エレクトロクロミック素子を得た。
エレクトロクロミック素子の透過率が1%から50%になるまでの時間は380秒であった。結果を表1に示す。
(実施例8)
パラジウムからなるキャップ層の厚みを0.5nmとする以外は、実施例1と同様にして反射調光エレクトロクロミック素子を得た。
エレクトロクロミック素子の透過率が1%から50%になるまでの時間は290秒であった。結果を表1に示す。
(実施例9)
透明基板として厚さ1mmのガラス板の代わりに、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして反射調光エレクトロクロミック素子を得た。
エレクトロクロミック素子の透過率が1%から50%になるまでの時間は350秒であった。結果を表1に示す。
(比較例1)
エチレンガスを導入してキャップ層に炭素原子および水素原子を導入する作業を省く以外は、実施例1と同様にして反射調光エレクトロクロミック素子を得た。
エレクトロクロミック素子の透過率が1%から50%になるまでの時間は12000秒であった。結果を表1に示す。
表に示すように、キャップ層に水素供給速度向上元素として作用する元素を注入することによって、キャップ層を経た調光材料層への水素供給速度が向上し、エレクトロクロミック素子の応答性が大幅に向上する。
本発明は、例えば、建物や車両のガラスに用いられる。本発明のエレクトロクロミック素子を備えるガラスを用いて太陽光の透過を制御することによって、室内空間を快適に保つことが可能である。
反射調光板の一実施形態を示す断面模式図である。 従来のエレクトロクロミック素子における、キャップ層表面におけるプロトン接触およびその後の経過を説明する模式図である。 本発明のエレクトロクロミック素子における、キャップ層表面におけるプロトン接触およびその後の経過を説明する模式図である。 キャップ層30の内部に存在する速度向上元素が、キャップ層30と電解質層40との間で層35を形成している、エレクトロクロミック素子の部分断面模式図である。 キャップ層と調光材料層との界面の凹凸が、キャップ層と電解質層との界面の凹凸よりも大きい実施形態の模式図である。 透明基板として樹脂シートを用いる反射調光板が、さらに2枚のガラス板に挟持された実施形態の断面模式図である。
符号の説明
10…第1透明導電膜層、20…調光材料層、30…キャップ層、35…速度向上元素からなる層、40…電解質層、50…プロトン蓄積層、60…第2透明導電膜層、70…透明基板、80…ガラス板、90…樹脂シート。

Claims (13)

  1. 第1透明導電膜層と、
    プロトンの吸脱着によって光線透過性能および光線反射性能が変化する反射調光材料からなる調光材料層と、
    前記調光材料層への酸素および水分の侵入を抑制し、プロトン伝導性を有するキャップ層と、
    プロトン伝導性の電解質層と、
    前記調光材料層へ供給されるプロトンを貯蔵するプロトン蓄積層と、
    第2透明導電膜層とが、この順序で積層してなる反射調光エレクトロクロミック素子であって、
    前記キャップ層は、窒素原子、酸素原子、炭素原子、水素原子、ホウ素原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種類の元素を、前記反射調光材料への水素供給速度向上元素として含む、反射調光エレクトロクロミック素子。
  2. 前記反射調光材料は、マグネシウムおよびニッケルからなる合金である、請求項1に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  3. 前記キャップ層は、パラジウム、またはパラジウム−金合金からなる、請求項1または2に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  4. 前記キャップ層の厚みが0.5〜10nmの範囲である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  5. 前記水素供給速度向上元素は、前記キャップ層と前記電解質層との界面において層を形成してなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  6. 前記キャップ層と前記調光材料層との界面における前記キャップ層の凹凸が、前記キャップ層と前記電解質層との界面における前記キャップ層の凹凸よりも大きい、請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  7. 前記キャップ層と前記調光材料層との界面における前記キャップ層の表面積が、前記キャップ層と前記電解質層との界面における前記キャップ層の表面積よりも大きい、請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の反射調光エレクトロクロミック素子と、
    前記反射調光エレクトロクロミック素子を挟持する2枚の透明基板と、
    を有する、反射調光板。
  9. 前記透明基板は、ガラス板、または樹脂シートである、請求項8に記載の反射調光板。
  10. 前記透明導電膜層は、隣接する前記透明基板上に密着成形されてなる、請求項8または9に記載の反射調光板。
  11. 第1透明導電膜層上に、プロトンの吸脱着によって光線透過性能および光線反射性能が変化する反射調光材料からなる調光材料層を形成する段階と、
    前記調光材料層上に、前記調光材料層への酸素および水分の侵入を抑制し、プロトン伝導性を有するキャップ層を形成する段階と、
    前記キャップ層を、減圧条件下で一酸化炭素、エチレン、水素、または硫化水素ガスと接触させる段階と、
    第2透明導電膜層上に、プロトン蓄積層を形成する段階と、
    前記第1透明導電膜層、前記調光材料層、および前記キャップ層からなる積層体、および前記第2透明導電膜層、および前記プロトン蓄積層からなる積層体を、プロトン伝導性の電解質膜を介して、前記キャップ層および前記プロトン蓄積層が対向するように積層させる段階と、
    を含む反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  12. 第1透明導電膜層上に、プロトンの吸脱着によって光線透過性能および光線反射性能が変化する反射調光材料からなる調光材料層を形成する段階と、
    前記調光材料層上に、前記調光材料層への酸素および水分の侵入を抑制し、プロトン伝導性を有するキャップ層を形成する段階と、
    イオン注入法を用いて、前記キャップ層に窒素原子、酸素原子、炭素原子、水素原子、ホウ素原子、および硫黄原子からなる群より選択される少なくとも一種類の元素を水素供給速度向上元素として注入する段階と、
    第2透明導電膜層上に、プロトン蓄積層を形成する段階と、
    前記第1透明導電膜層、前記調光材料層、および前記キャップ層からなる積層体、および前記第2透明導電膜層、および前記プロトン蓄積層からなる積層体を、プロトン伝導性の電解質膜を介して積層させる段階と、
    を含む反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  13. 前記調光材料層および前記キャップ層は、真空蒸着、イオンプレーティング、またはスパッタリングのいずれかの方法で形成される、請求項11または12に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
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