JP2005351933A - 反射調光エレクトロクロミック素子、当該素子の製造方法、および当該素子を用いた反射調光ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】 コスト的に優れ、しかも、応答性および耐久性をも向上し得る、反射調光エレクトロクロミック素子を提供する。
【解決手段】 反射調光エレクトロクロミック素子10は、マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層40と、その上に実質的に被覆する形態で存在するキャップ層50とを含み、反射調光特性を示す。キャップ層50は、アルミナ、シリカ、チタニアからなる群より選ばれた少なくとも一種類の酸化物と、当該酸化物の表面に分散担持された触媒成分とを含んでいる。触媒成分は、好ましくは、パラジウムである。酸化物の表面に触媒成分を分散担持させるに際しては、触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液を酸化物と接触させ、または、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着のいずれかにより触媒成分を酸化物と接触させている。
【選択図】図1

Description

本発明は、建物や車両内の夏期の熱暑感を低減し快適な温熱環境を提供するための材料に関する。さらに詳しくは、本発明は、建物や車両内の熱暑感に関与する、窓ガラスから入射する太陽光の透過をコントロールできるガラスに用いる反射調光エレクトロクロミック素子、当該素子を用いたガラスに関するものである。本発明は、建物や車両における太陽光の透過率を制御するための窓ガラスの材料技術として有用である。
一般に、建物において窓ガラス(開口部)は大きな熱の出入り場所になっている。例えば、冬の暖房時の熱が窓から流失する割合は48%程度であり、夏の冷房時に窓から熱が入る割合は71%程度にも達する。したがって、窓ガラスにおける光・熱の出入を制御できれば、効果的にエネルギー消費を低減できる。光熱の出入を制御できる調光ガラスは、このような目的で開発された技術の一つである。
特に自動車においては、建築物と比較して窓ガラスが空間に対して大きく、かつ、中にいる人間に日射を避ける余地が少なく、かつ、視界確保の要件から透過率を運転時は一定以上にする必要があるため、光・熱の出入、特に流入を制御する必要性が非常に高い。周知のごとく炎天下環境に置かれた自動車の室内は非常な高温になる。日本国内の夏期環境の測定例では駐車の場合において、室内空気温度が約70℃近くに達する。同時に室内の内装材温度はインスツルメントパネル上面で100℃近く、天井は70℃近くに上昇する。こうした状況で乗車したときの不快さは言うまでもないが、換気あるいは冷房装置を作動させた後でも内装材温度は容易に下がらず、長時間にわたって乗員に輻射熱を放射し続け、快適性を大きく損なっている。この温度上昇の主原因は、日射の室内への侵入である。
以下の説明では、簡便のため、ガラスに調光機能を付与できるものを調光素子と呼び、調光素子を含んで当該素子の機能を利用できるガラスを調光ガラスと呼ぶ。さて、このような調光ガラスの調光を行う方式には、いくつかの種類がある。それらのうち、1)電流・電圧の印加により可逆的に透過率の変化する材料を用いた調光素子をエレクトロクロミック素子といい、2)温度により透過率が変化する材料を用いた調光素子をサーモクロミック素子といい、また、3)雰囲気ガスの制御により透過率が変化する材料を用いた調光素子をガスクロミック素子という。この中でも、調光材料に酸化タングステン薄膜を用いたエレクトロクロミック素子およびそれを用いた調光ガラスの研究が最も進められている。
酸化タングステンを初めとして、これまで知られているエレクトロクロミック調光素子は、すべて調光材料で光を吸収することにより調光を行うことをその原理としている。すなわち、光の吸収により、室内側への光の形態をとった熱の進入を抑制している。この場合、調光材料が光を吸収することにより熱を持ち、それがまた室内に再放射されるため、省エネルギー効果が低くなってしまうという欠点を持っている。これをなくすためには、光を吸収することにより調光を行うのではなく、光を反射することにより調光を行う必要がある。つまり、鏡の状態と透明な状態とが可逆的に変化するような特性を有する材料が望まれている。
このような、鏡の状態と透明な状態とに変化する材料は永らく見つかっていなかったが、1996年にオランダのグループにより、イットリウムやランタンなどの希土類の水素化物が、水素の吸蔵/放出により透明/鏡状の変化が起きることが発見された(非特許文献1参照)。これらの希土類水素化物は、透過率の変化が大きく、反射調光特性を示す。
しかし、この調光素子は、反射調光材料として希土類元素金属を用いるため、窓ガラスのような大面積に適用する場合、その原材料コストに問題がある。また、イットリウムやランタンなどの希土類の金属および水素化物は、酸素や水分により酸化劣化しやすい。そこで水や酸素の侵入を抑制し、水素を透過し得る、いわゆるキャップ層が必須である。キャップ層として用いられるのは高価な貴金属のパラジウムであるが、キャップ層として機能するには100nm〜500nmの厚みが必要であり、大面積に適用する場合には無視できない量である。また、パラジウム自体が着色しており、透明時の透過率に限界を設けることになる。さらに述べるならば、パラジウムはイットリウムやランタンなどの希土類層に拡散してしまい、耐久性にも欠ける。
そこで、高価なパラジウムを多量に使うこと、および、透明にしたときの透過率を確保することの解決策が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術では、パラジウムに代えて、透明でプロトン伝導性のある材料、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タンタル、といった酸化物や、フッ化マグネシウム、フッ化鉛といったフッ化物、を用いている。これによりパラジウムの使用がなくなり、かつ、パラジウムによる着色を避けることができる。しかしながら、透明/鏡状の変化の速度、応答性がパラジウムを用いた場合よりも低下する傾向にある。
また、非特許文献1のR.Griessenらは、耐久性、光学特性を改善するために、イットリウムやランタンなどの希土類の水素化物とパラジウムのキャップ層との間に、アルミナの緩衝層を設ける構造を提案している(非特許文献2)。アルミナの緩衝層を設けることにより、イットリウムやランタンなどの希土類層へのパラジウムの拡散を防ぎ、耐久性が向上する。しかしながら、イットリウムやランタンなどの希土類への水素の移動が妨げられる結果、透明/鏡状の変化の速度、応答性がやはり十分なものではない。
その後、2001年に、アメリカのグループにより、新たな調光ミラー材料として、マグネシウム・ニッケル合金のMgNiが発見されている(非特許文献3)。この材料は、使用する元素がマグネシウムとニッケルであり、希土類元素金属に比べて、コスト的に優位である。したがって、この材料は、希土類元素金属を含んだ反射調光材料に比べると、窓ガラスに適用する上で望ましい。但し、この材料は、鏡状態のときの反射率は高いが、透明状態になったときの可視光透過率が20%と低く、建築物や自動車への適用を考慮すると、透明時の可視光透過率は不十分である。また、この材料も同様にキャップ層を必要とし、高価なパラジウムを多量に用いている。
これに対し、可視光透過率を改善した調光ミラー材料として、新たな組成MgNix(0.1<x<0.3)が提案されている(特許文献2)。この材料も酸素や水による酸化劣化防止のために、高価なパラジウムからなる保護層を必要としている。この組成の材料は、前述のMgNiよりも透明時の可視光透過率が高く、50%近くになる。しかしながら、自動車のガラスとして考えた場合にはまだ十分な透過率とはいえない。
上述した従来技術の特徴をまとめて述べると、以下のとおりである。
反射調光特性を有する材料としては、これまで、イットリウムやランタンなどの希土類金属の水素化物(非特許文献1、非特許文献2)、希土類金属(特に、イットリウム、ガドリニウム、サマリウム)の水素化物とマグネシウムの合金(特許文献1)、およびマグネシウム・ニッケル合金の水素化物(非特許文献3、特許文献2)などが知られている。これらの中で、コストの観点から、窓ガラスの日射透過率制御に適しているのは、マグネシウム・ニッケル合金を用いたものであると考えられる。
これらの材料はいずれも水や酸素により容易に酸化劣化しやすく、キャップ層を設けることが一般的である。キャップ層としては、パラジウム単独層(非特許文献1、特許文献2、非特許文献3)、アルミナ層とパラジウム層との積層体(非特許文献2)、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化タンタル、といった酸化物や、フッ化マグネシウム、フッ化鉛といったフッ化物の層(特許文献1)、を挙げることができる。従来の技術では、高価なパラジウムを多量に消費するか、使わずに応答性に課題がでるか、のいずれかである。
特開2000−204862号公報 特開2003−335553号公報 J.N.Huiberts,R.Griessen,J.H.Rector,R.J.Wijngaarden,J.P.Dekker,D.G.de Groot,N.J.Koeman,Nature, 380,231(1996) A.T.M.van Gogh,S.J.van der Molen,J.W.J.Kerssemakers,N.J.Koeman,R.Griessen,Applied Physics Letters,77(6),815(2000) T.J.Richardson,J.L.Slack,R.D.Armitage,R.Kostecki,B.Farangis,and M.D.Rubin,Applied Physics Letters.78,3047(2001)
本発明の目的は、希土類元素金属を用いる場合と比較して安価なマグネシウムおよびニッケルを含んでなる層と、その上に実質的に被覆する形態で存在するキャップ層とを構成部材として含み、キャップ層に占めるパラジウムの量を従来よりも低減可能でコスト的に優れ、しかも、応答性および耐久性をも向上し得る、反射調光エレクトロクロミック素子を提供することにある。さらに、本発明は、当該素子の製造方法、および当該素子を用いた反射調光ガラスを提供することをも目的とする。
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層と、その上に実質的に被覆する形態で存在するキャップ層とを含み、反射調光特性を示す反射調光エレクトロクロミック素子において、
前記キャップ層は、アルミナ、シリカ、チタニアからなる群より選ばれた少なくとも一種類の酸化物と、当該酸化物の表面に分散担持された触媒成分とを含んでいることを特徴とする反射調光エレクトロクロミック素子である。
また、請求項12に記載の発明は、マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層と、その上に実質的に被覆する形態で存在するキャップ層とを含み、反射調光特性を示す反射調光エレクトロクロミック素子を製造する方法において、
前記キャップ層は、アルミナ、シリカ、チタニアからなる群より選ばれた少なくとも一種類の酸化物と、触媒成分とを含み、
前記触媒成分または前記触媒成分の前駆体を含む溶液を前記酸化物と接触させることによって、または、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着のいずれかにより前記触媒成分を前記酸化物と接触させることによって、前記酸化物の表面に前記触媒成分を分散担持させる工程を含むことを特徴とする反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法である。
また、反射調光エレクトロクロミック素子を用いた反射調光ガラスであって、反射調光エレクトロクロミック素子は、前記マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層と、前記キャップ層と、前記キャップ層の上にさらに積層された無水の電解質層と、イオン蓄積層と、透明導電性膜層とが積層されてなる積層構成体を有し、前記積層構成体が基板上に設けられ、前記基板が透明部材から形成されている。前記積層構成体が、前記基板と、さらに他の基板との2枚の基板によって挟まれ、前記他の基板が透明部材から形成されている。そして、前記透明導電性膜層の側に配置される基板は、前記透明導電性膜層が予め設けられたガラスから構成され、前記マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層の側に配置される基板は、他の透明導電性膜層が予め設けられたガラスから構成されている。
キャップ層に触媒成分と一体化した酸化物層を含むことにより、従来報告されているマグネシウム・ニッケル合金を用いた反射調光エレクトロクロミック素子に比べて、高価な触媒であるパラジウムを有効に利用してその使用量を低減でき、コスト的に優れたものとなる。
また、電解質層、あるいはマグネシウム・ニッケル層のプロトンを迅速に移動でき、結果として応答性を向上させることができる。
また、パラジウムなどの触媒が酸化物層と結合しているため、プロトンの移動を繰り返すことによるマグネシウム・ニッケル層へのパラジウムの移動を抑制でき、結果として耐久性を向上させることができる。
本発明についてさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る反射調光エレクトロクロミック素子10の要部を断面で示す模式図である。
図示する反射調光エレクトロクロミック素子10は、基板20上に、透明導電性膜層30、マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層40(以下、「マグネシウム・ニッケル合金層40」と言う)、キャップ層50が、順に設けられている。基板20は、透明なガラス基板または樹脂フィルムを用い得る。この基板20上に形成される透明導電性膜30には、例えば、ITO(インジウム−錫酸化物)膜が用いられる。
反射調光エレクトロクロミック素子10は、マグネシウム・ニッケル合金層40と、その上に実質的に被覆する形態で存在するキャップ層50とを含み、反射調光特性を示すものである。マグネシウム・ニッケル合金層40は、水や酸素により容易に酸化劣化する。キャップ層50は、マグネシウム・ニッケル合金層40の酸化劣化を防止する保護層として機能する。キャップ層50は、アルミナ、シリカ、チタニアからなる群より選ばれた少なくとも一種類の酸化物と、当該酸化物の表面に分散担持された触媒成分とを含んでいる。
前記触媒成分は、パラジウム、または、パラジウムと金との混合物から選ばれる。触媒成分は、好ましくは、パラジウムである。
マグネシウム・ニッケル合金層40の上に存在するキャップ層50を構成する酸化物としてはアルミナ、シリカ、チタニアからなる群より選ばれた少なくとも一種類の酸化物が望ましく、さらに望ましくはアルミナである。
触媒成分は、所定の工程を経て、キャップ層50に設置されている。つまり、触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液を酸化物と接触させることによって、または、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着のいずれかにより触媒成分を酸化物と接触させることによって、酸化物の表面に触媒成分を分散担持させてある。なお、説明の便宜上、酸化物の表面に触媒成分を分散担持させるに際し、触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液を酸化物と接触させる方式を「第1の方式」、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着のいずれかにより触媒成分を酸化物と接触させる方式を「第2の方式」とも言う。
本発明の反射調光エレクトロクロミック素子10にあっては、キャップ層50が、アルミナなどの酸化物と、当該酸化物の表面に分散担持させたパラジウムなどの触媒成分とを含んでいることから、触媒成分のみで保護層としての機能を持たせる必要がなくなる。これは酸化物にも保護層としての機能があるからである。したがって、保護層として機能させるために従来多量に使用されていた高価な触媒、例えばパラジウムの使用量を低減できる。この結果、本発明の反射調光エレクトロクロミック素子10は、コスト的に有利なものとなる。
さらに、触媒成分をキャップ層50に設置するにあたり、触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液を酸化物と接触させることによって、または、スパッタリング・イオンプレーティング、真空蒸着のいずれかにより触媒成分を酸化物と接触させることによって、酸化物の表面に触媒成分を分散担持させてあり、触媒成分を酸化物の表層に高分散、かつ、均一に担持させることができる。これにより、パラジウムのもう一つの機能である、マグネシウム・ニッケル合金層40への水素通路としての機能を維持できる。すなわち、キャップ層50表層における電解質層と接するパラジウム粒子が水素原子と結合し、そこから、スピルオーバー現象で隣接するキャップ層50の内部のパラジウム原子へ、水素原子が移動する。これを繰り返すことにより、水素原子は、最終的に、マグネシウム・ニッケル合金層40に吸収される。
従来のパラジウム層のみからなるキャップ層の場合には、水素原子は、パラジウム層に取り込まれ、パラジウム層内部を移動し、最終的に、マグネシウムとニッケルの合金層に到達して吸収される。かかる水素の移動過程ではパラジウム表層に吸着した水素の内部への取り込みが非常に起こりにくく、水素の移動が制限される。また、前述した非特許文献2に記載されるように別個独立したアルミナ層とパラジウム層とを積層する形態の場合には、スピルオーバー現象を期待できないし、水素がキャップ層を透過する速度は遅い。
これに対して本発明では、従来技術のようにパラジウム内部に水素を取り込むのではなく、隣接するパラジウム間のスピルオーバー現象を利用しているので、水素が移動しやすくなる。この結果、本発明の反射調光エレクトロクロミック素子10は、応答性を向上させたものとなる。
さらに、本発明のようにアルミナなどの酸化物層にパラジウムを高分散で担持させることにより、パラジウムと酸化物との間で何らかの結合が生じ、パラジウムが移動しにくくなる。したがって、マグネシウム・ニッケル合金層40にパラジウムが拡散してしまうことが防止される。この結果、本発明の反射調光エレクトロクロミック素子10は、耐久性を向上させたものとなる。
触媒成分の量としては、キャップ層50の1mあたり、3mg−120mgであることが望ましい。3mg未満の場合には、水素の量が少なすぎて、水素のマグネシウム・ニッケル合金層40への供給が十分に行うことができず、応答性の低下が見られるからである。一方、120mgを超えても、応答性のさらなる向上が得られず、かつ、透明時の透過率の低下が起きるからである。
酸化物の量としては、キャップ層50の1mあたり、10mg−500mgであることが望ましい。10mg未満の場合には、水、酸素に対する保護層としての機能が十分でないからである。一方、500mgを越える場合には、水素の透過が遅くなり、応答性が低下するので望ましくないからである。
マグネシウム・ニッケル合金層40を形成する方法として、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相蒸着法(CVD)、めっき法などを採用することができる。好適には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングのいずれかにより成膜するのがよい。マグネシウム・ニッケル合金層40のマグネシウム・ニッケルの比率は合金層をMgNixで表現した場合に、0.1<x<0.3であることが望ましい。この範囲は、マグネシウム・ニッケル合金層40が水素を吸蔵して透明になったときの透過率が高くなる範囲である。0.3≦x、または、x≦0.1の場合には、透明になったときの透過率が低下するので望ましくない。
酸化物の層を形成する方法として、マグネシウム・ニッケル合金層40の形成と同様に、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相蒸着法(CVD)、めっき法などを採用することができる。好適には、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングのいずれかにより成膜するのがよい。あるいは、対応する金属を成膜した後に、この金属膜を酸化することにより形成しても良い。酸化する方法には、公知の方法を用いることができ、例えば、プラズマ酸化などの手段を採用できる。
酸化物の表面に触媒成分を分散担持させるに際し、第1の方式において用いる、触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液は、パラジウム塩のアンモニア水溶液またはパラジウム有機物を溶解した有機溶液のいずれかである。これらの溶液は、酸化物層の下に存在する、マグネシウム・ニッケル合金層40と反応して溶解させたり、酸化したりしないことが望ましい。
具体的には、触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液は、ジニトロジアンミンパラジウム(II)アンモニウム溶液、テトラアンミンパラジウム(II)ジクロライドアンモニウム溶液、酢酸パラジウム(II)アセトン溶液、酢酸パラジウム(II)クロロフォルム溶液、ビス〔(アセチルアセトナト)パラジウム(II)〕アセトン溶液、ビス〔(アセチルアセトナト)パラジウム(II)〕クロロフォルム溶液、プロピオン酸パラジウム(II)アセトン溶液、プロピオン酸パラジウム(II)クロロフォルム溶液からなる群より選ばれた少なくとも一種類を含むことが望ましい。これらの溶液のパラジウム濃度は、キャップ層50におけるパラジウム濃度および接触方法により適宜選ばれる。
触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液の酸化物の層との接触には、公知の方法を用いることができる。例えば、マグネシウム・ニッケル合金層40と酸化物の層とを形成した基板20に対して、浸漬、スプレーイング、またはスピンコーティングすることによって、触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液を酸化物と接触させることができる。前記溶液と酸化物との接触作業は、酸素、水分の少ない雰囲気内、例えばドライボックス内で実施することが望ましい。
触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液から、触媒成分の酸化物の層への堆積には、公知の方法を用いることができる。例えば、紫外線照射、および/または、還元剤による還元によって、触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液から、触媒成分を酸化物の層に堆積させることができる。これらの方法は堆積に際して加熱する必要がない方法である。このような方法によれば、マグネシウム・ニッケル合金層40を形成する基板20が樹脂フィルム製の場合のように、前駆体の分解温度まで加熱することが困難であるときであっても、触媒成分を酸化物の層へ容易に堆積させることができる。また、マグネシウム・ニッケル合金層40の結晶化が加熱によって劣化する虞もなく、この観点からも、堆積に際して加熱する必要がない方法を採用することが好ましい。紫外線照射は、触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液を接触させた前記酸化物の層に紫外線ランプの光照射を行うことで達成できる。還元剤としては、例えばヒドラジンなど公知のものを利用できる。
触媒成分を堆積させた後、残渣が残る場合がある。そこで、本発明の製造方法にあっては、触媒成分または触媒成分の前駆体を含む溶液から、触媒成分を酸化物の層に堆積させる工程と、触媒成分を堆積させた後の残渣を除去し、マグネシウム・ニッケル合金層40とキャップ層50とを乾燥させる工程と、をさらに含んでいる。
残渣の除去方法には、公知の方法を用いることができる。例えば、水溶液、有機溶剤による洗浄を用いることができる。水溶液としては、水、アンモニア水溶液を用い、有機溶剤としてはアセトン、クロロフォルムを用いることが好ましいが、これらに限定されないことは言うまでもない。この洗浄においては、超音波洗浄法を併用してもよい。
洗浄後、マグネシウム・ニッケル合金層40およびキャップ層50に残存する液体を乾燥して除去する。乾燥除去する方法として、減圧乾燥、通風乾燥などの公知の方法を用いることができる。
図2(A)(B)(C)は、キャップ層50にさらに無水の電解質層60、イオン蓄積層70、および透明導電性膜層31を積層してなる反射調光エレクトロクロミック素子10の構成を断面で示す模式図である。
図示する反射調光エレクトロクロミック素子10は、マグネシウム・ニッケル合金層40と、キャップ層50と、当該キャップ層50の上にさらに積層された無水の電解質層60と、イオン蓄積層70と、透明導電性膜層31とが積層されてなる積層構成体80を有している。当該積層構成体80は、基板22上に設けられている。マグネシウム・ニッケル合金層40およびキャップ層50は、上述した工程を経て基板22上に形成されている。
これらの層の作製順序としては、図2(A)に示すように、基板22上に好ましくは透明導電膜層32を設け、その上にマグネシウム・ニッケル合金層40およびキャップ層50を設け、当該キャップ層50の上にさらに、電解質層60、イオン蓄積層70、透明導電膜層31を設ける形態のほか、これとは逆に、図2(B)に示すように、透明導電膜層31を設けた基板21に、イオン蓄積層70、電解質層60を設けて、その上にキャップ層50、マグネシウム・ニッケル合金層40を設け、さらに好ましくは透明導電膜層32を設ける形態でもよい。
プロトン伝導性の電解質は液体、固体など種々の材料が存在するが、本発明の主用途である建築用窓ガラス、自動車用窓ガラスを考慮すると、固形物であることが望ましい。液体の電解質の場合には、長期間の使用途中で液漏れによる性能低下が懸念されるからである。固形物として有機物、無機物、あるいは両者の混合物を採用し得る。また、電解質としては無水であることが必要である。水分の存在はマグネシウム・ニッケル合金層40の酸化劣化の要因となり得るからである。好適な電解質としては、例えば、スルホン化ポリエーテルケトンからなるポリマーや酸化タンタルを挙げることができる。本発明では以下に説明するように、2枚の基板21、22によってエレクトロクロミック素子材料を挟み込む形態を採ることが望ましいため、電解質として柔軟な有機物が比較的好適である。但し、これに限定されるものではない。
透明導電性膜層31、32としては公知の材料が使用できる。例えば、ITO(インジウム−錫酸化物)、アンチモニー−錫酸化物、酸化錫、酸化亜鉛である。可能であれば、有機系高分子材料の適用も可能である。透明導電性膜層31、32の表面抵抗はエレクトロクロミック素子の応答性に関与し、その値が低いことが望ましく、50Ω/□以下が好適である。また、透明導電性膜層31、32を基板21、22に形成後の可視光透過率は高いほど良く、できれば70%以上であることが望ましい。
イオン蓄積層70は、マグネシウム・ニッケル合金層40の透明/鏡状の切り替えに必要なプロトンの貯蔵を行うための層である。イオン蓄積層70として好適なのは金属酸化物であり、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化バナジウムなどを用いることができる。このうち、特に好適なのが酸化タングステンである。
本発明の主用途は建築用窓ガラス、自動車用窓ガラスなどである。この点を考慮すると、積層構成体80が設けられる基板21、22は、透明部材から形成されていることが必要である。
前記透明部材としては、ガラス、樹脂フィルム、または樹脂シートが好適である。樹脂のフィルムやシートの場合、マグネシウム・ニッケル合金層40の成膜を減圧条件下で実施することから、アウトガスの少ないものが減圧を維持する点で好ましい。樹脂のフィルムやシートとしては、アウトガスが少なく、透明であればよく、種類を問わない。価格や透明性、耐熱性などの観点からみて、特に好適なものとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、アクリルなどを挙げることができる。
図2(B)に示される形態において、基板21に関してさらに望ましくは、透明導電性膜層31の側に配置される基板21は、その表面に、つまりエレクトロクロミック素子における各層を成膜していく側に、当該透明導電性膜層31が予め設けられていることが望ましい。予め透明導電性膜層31を付加しておくことにより、その後のマグネシウム・ニッケル合金層40およびキャップ層50を成膜する作業工程を簡便にできるからである。
エレクトロクロミック素子は、少なくとも1枚の基板21または22を必要とする。これまでに述べたように、本発明で必須のマグネシウム・ニッケル合金層40は水や酸素による酸化劣化を受け易いので、2枚の基板21、22にエレクトロクロミック素子が挟まれる構造が望ましい。基板21、22は、エレクトロクロミック層を載せる台として機能するだけでなく、水や酸素の浸入を抑制する障壁としても機能するからである。すなわち、図2(C)に示すように、反射調光エレクトロクロミック素子10は、積層構成体80を、基板21と、さらに他の基板22との2枚の基板21、22によって挟み込む形態を採ることができる。この形態にあっても、本発明の主用途を考慮すると、他の基板22は、前述した透明部材から形成されていることが必要である。2枚の基板21、22は、ガラスとガラス、ガラスと樹脂フィルム、樹脂フィルムと樹脂フィルム、樹脂シートと樹脂フィルムなどの任意の組み合わせを採り得る。
図2(A)(C)に示されるように、マグネシウム・ニッケル合金層40の側に配置される基板22にも、マグネシウム・ニッケル合金層40と基板22との間に他の透明導電性膜層32を設けることがさらに望ましい。この場合、マグネシウム・ニッケル合金層40の側に配置される基板22は、他の透明導電性膜層32が予め設けられていることが望ましい。予め透明導電性膜層32を付加しておくことにより、作業工程を簡便にできるからである。
以上の説明より望ましい構成の態様を挙げると以下のようになる。勿論、本発明はこれに限定されるものではない。望ましい構成態様は、マグネシウム・ニッケル合金層40と、キャップ層50と、無水の電解質層60、イオン蓄積層70および透明導電性膜層31がこの順に積層した積層構成体80が、2枚の基板21、22に挟まれている。透明導電性膜層31の側に配置される基板21は、当該透明導電性膜層31が予め設けられている。さらに望ましくは、マグネシウム・ニッケル合金層40の側に配置される基板22は、他の透明導電性膜層32が予め設けられている。
図3は、2枚の薄い樹脂製基板23、24により挟み込んだ反射調光エレクトロクロミック素子10を用いた反射調光ガラス10aの構成を断面で示す模式図である。
窓ガラスへの適用を考えた場合、ガラスを基板とし、反射調光エレクトロクロミック素子10を2枚のガラスに挟み込む態様、あるいは、2枚の薄い樹脂製基板によって反射調光エレクトロクロミック素子10を挟みこみ、それら樹脂製基板をさらに2枚のガラスによって挟みこむ態様のいずれかが好適である。
さらに詳しくは、2枚の基板21、22によって挟み込んだ反射調光エレクトロクロミック素子10を用いた反射調光ガラス(図2(C)を参照)は、透明導電性膜層31の側に配置される基板21は、当該透明導電性膜層31が予め設けられたガラスから構成され、マグネシウム・ニッケル合金層40の側に配置される基板22は、他の透明導電性膜層32が予め設けられたガラスから構成されている。
一方、図3に示すように、2枚の薄い樹脂製基板23、24によって挟み込んだ反射調光エレクトロクロミック素子10を用いた反射調光ガラス10aは、透明導電性膜層31の側に配置される基板23は、当該透明導電性膜層31が予め設けられた樹脂フィルムまたは樹脂シートから構成され、マグネシウム・ニッケル合金層40の側に配置される基板24は、他の透明導電性膜層32が予め設けられた樹脂フィルムまたは樹脂シートから構成され、この反射調光エレクトロクロミック素子10をさらに2枚のガラス91、92によって挟み込んで構成されている。2枚の薄い樹脂製基板23、24には、例えば、ポリビニルブチラール製のフィルムまたはシートが用いられる。2枚の薄い樹脂製基板23、24によって挟み込んだ反射調光エレクトロクロミック素子10をさらに2枚のガラス91、92によって挟み込む態様は、ガラスを直接基板とする態様に比べると水や酸素の侵入をより防止できることから、マグネシウム・ニッケル合金層40の酸化劣化をより防止できる点において好適なものである。
(実施例)
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
(共通部分)
各実施例において、マグネシウム・ニッケル合金層、キャップ層および基板以外の部分は共通である。基板は、透明導電成性膜層であるインジウム−錫酸化物層が予め成膜されたものを使用した。イオン蓄積層は、酸化タングステンよりなり、厚みが100nmである。固体電解質は、アクリルアミドスルホン酸とメトキシポリエチレングリコール(4)モノメタクリレートよりなり、厚みが100nmである。イオン蓄積層は、インジウム−錫酸化物層が予め成膜された基板に対してスパッタリングで成膜した。固体電解質は、シート状で、イオン蓄積層とインジウム−錫酸化物層が成膜された基板と、マグネシウム・ニッケル層、キャップ層との間に挟まれる。基板の種類は各実施例で同じものを用いた。
マグネシウム・ニッケル合金層およびアルミナ層の成膜を、それぞれスパッタリングで行った。3つのスパッタ銃に、ターゲットとしてそれぞれ、金属マグネシウム、金属ニッケル、それにアルミナを用いた。基板としては、厚さ1mmのガラス板を用い、これを洗浄後、真空装置の中にセットして真空排気を行った。最初に、マグネシウム・ニッケルをスパッタしてマグネシウム・ニッケル合金層を成膜した。スパッタ中のアルゴンガス圧は、0.4Paであり、直流スパッタ法によりマグネシウムに30W、ニッケルに11Wのパワーを加えてスパッタを行った。
次に、アルゴンガス圧を同様にして、300Wのパワーを加えてアルミナ層の高周波スパッタリングを行った。アルミナ層の厚みは50nmである。
本試料にジニトロジアンミンパラジウム(II)アンモニウム溶液をパラジウムがアルミナ層1mあたり60mg堆積するようにスプレーイングし、その後紫外線ランプを5分間照射した。
照射後、アンモニア水溶液および水とエタノール混合溶液で洗浄し、通風乾燥した。出来上がった試料を柔軟な固体電解質を介して酸化タングステン、インジウム−錫酸化物を成膜したガラス基板と重ねて反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、アルミナに替えてチタニアとする以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。チタニアはチタニウムターゲットを用い、反応性スパッタリング(酸素を雰囲気に導入、圧力は0.03Pa)で400Wのパワーを加えて作製した。アルゴンの厚力を調整して酸素とアルゴンの厚を0.4Paとした。
実施例1において、ターゲットをアルミナに替えてシリカとする以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。シリカはチタニウムターゲットを用い、反応性スパッタリング(酸素を雰囲気に導入、圧力は0.03Pa)で400Wのパワーを加えて作製した。アルゴンの厚力を調整して酸素とアルゴンの厚を0.4Paとした。
実施例1において、ジニトロジアンミンパラジウム(II)アンモニウム溶液をテトラアンミンパラジウム(II)ジクロライドアンモニウム溶液に替える以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、ジニトロジアンミンパラジウム(II)アンモニウム溶液を酢酸パラジウム(II)アセトン溶液に替え、残渣の洗浄にアセトンを用いる以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、ジニトロジアンミンパラジウム(II)アンモニウム溶液を酢酸パラジウム(II)クロロフォルム溶液に替え、残渣の洗浄にアセトンを用いる以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、ジニトロジアンミンパラジウム(II)アンモニウム溶液を酢酸パラジウム(II)クロロフォルム溶液に替え、残渣の洗浄にアセトンを用いる以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、ジニトロジアンミンパラジウム(II)アンモニウム溶液をビス〔(アセチルアセトナト)パラジウム(II)〕アセトン溶液に替える以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、ジニトロジアンミンパラジウム(II)アンモニウム溶液をビス〔(アセチルアセトナト)パラジウム(II)〕クロロフォルム溶液に替える以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、ジニトロジアンミンパラジウム(II)アンモニウム溶液をプロピオン酸パラジウム(II)アセトン溶液に替える以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、ジニトロジアンミンパラジウム(II)アンモニウム溶液をプロピオン酸パラジウム(II)クロロフォルム溶液に替える以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、アルミナ層の成膜方法を最初にアルミニウムを直流マグネトロンスパッタリングで成膜後、酸素プラズマにより、酸化させてアルミナとする以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。酸素プラズマは電力を100Wとし、導入ガスの割合として酸素を90%とし、残りのガスをアルゴンとし、ガス厚を0.2Paとした。
実施例1において、アルミナ層の成膜方法を最初にアルミニウムを直流マグネトロンスパッタリングで成膜後、酸素プラズマにより、酸化させてアルミナとする以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。酸素プラズマは電力を100Wとし、導入ガスの割合として酸素を90%とし、残りのガスをアルゴンとし、ガス厚を0.2Paとした。
実施例1において、アルミナの厚さを5nmとする以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、アルミナの厚さを100nmとする以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、パラジウムの1mあたりの量を120mgとする以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、パラジウムの1mあたりの量を5mgとする以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例1において、触媒成分をスパッタリングにより酸化物に接触させる方法を用いる以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。触媒成分のスパッタリング条件は以下の通り。パラジウムをターゲットとして用い、スパッタ中のアルゴンガス圧は0.4Paとし、6Wのパワーを加えた。
実施例12において、触媒成分をスパッタリングにより酸化物に接触させる方法を用いる以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。触媒成分のスパッタリング条件は実施例18と同じである。
実施例1において、基板を厚さ120μmのポリエチレンテレフタレートフィルムとする以外は同様にして反射調光エレクトロクロミック素子の試料とした。
実施例20の反射調光エレクトロクロミック素子を2枚のガラスにポリビニルブチラールを介して挟みこみ、反射調光エレクトロクロミックガラスを試作した。
以上詳述したように、本発明は、マグネシウム・ニッケル合金層40と、触媒成分および酸化物層よりなるキャップ層50とを含み、該キャップ層50は所定の工程を経て作製されることを特徴とした反射調光エレクトロクロミック素子10およびこれを用いた反射調光ガラス10aに係るものである。本発明により奏される格別の作用効果は以下のとおりである。
(1)本発明の反射調光エレクトロクロミック素子10は、キャップ層50に触媒成分と一体化した酸化物層を含むことにより、従来報告されているマグネシウム・ニッケル合金を用いた反射調光エレクトロクロミック素子よりもパラジウムを有効に利用しており、その使用量を低減できる。
(2)本発明の反射調光エレクトロクロミック素子10は、キャップ層50を触媒成分と一体化した酸化物層とすることにより、電解質層60、あるいはマグネシウム・ニッケル層のプロトンを従来の反射調光エレクトロクロミック素子よりも迅速に移動でき、結果として応答性が改善される。
(3)本発明の反射調光エレクトロクロミック素子10は、パラジウムが酸化物層と結合しており、プロトンの移動を繰り返すことによるマグネシウム・ニッケル層へのパラジウムの移動を抑制でき、結果として耐久性が向上する。
(4)本発明の反射調光エレクトロクロミック素子10は、基板20、21、22を従来専ら採用されてきたガラスに留まらず、連続的にスパッタリングなどの方法で成膜可能な樹脂のフィルムやシートに適用が可能である。連続生産を可能とすることにより、生産コストを低減することができる。
本発明の実施形態に係る反射調光エレクトロクロミック素子の要部を断面で示す模式図である。 図2(A)(B)(C)は、キャップ層にさらに無水の電解質層、イオン蓄積層、および透明導電性膜層を積層してなる反射調光エレクトロクロミック素子の構成を断面で示す模式図である。 2枚の薄い樹脂製基板により挟み込んだ反射調光エレクトロクロミック素子を用いた反射調光ガラスの構成を断面で示す模式図である。
符号の説明
10 反射調光エレクトロクロミック素子、
10a 反射調光ガラス、
20 基板、
21 基板(透明導電性膜層31の側に配置される基板)、
22 基板(マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層40の側に配置される基板)、
23 樹脂製基板(透明導電性膜層31の側に配置される基板)、
24 樹脂製基板(マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層40の側に配置される基板)、
30 透明導電性膜層、
31 透明導電性膜層、
32 他の透明導電性膜層、
40 マグネシウム・ニッケル合金層(マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層)、
50 キャップ層、
60 電解質層、
70 イオン蓄積層、
80 積層構成体、
91、92 ガラス。

Claims (25)

  1. マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層と、その上に実質的に被覆する形態で存在するキャップ層とを含み、反射調光特性を示す反射調光エレクトロクロミック素子において、
    前記キャップ層は、アルミナ、シリカ、チタニアからなる群より選ばれた少なくとも一種類の酸化物と、当該酸化物の表面に分散担持された触媒成分とを含んでいることを特徴とする反射調光エレクトロクロミック素子。
  2. 前記触媒成分が、パラジウム、または、パラジウムと金との混合物から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  3. 前記触媒成分が、パラジウムであることを特徴とする請求項1に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  4. 前記酸化物が、アルミナであることを特徴とする請求項1に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  5. 前記触媒成分の量が、キャップ層1mあたり、3mg−120mgであることを特徴とする請求項1に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  6. 前記酸化物の量が、キャップ層1mあたり、10mg−500mgであることを特徴とする請求項1に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  7. 前記マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層と、前記キャップ層と、前記キャップ層の上にさらに積層された無水の電解質層と、イオン蓄積層と、透明導電性膜層とが積層されてなる積層構成体を有し、
    前記積層構成体が基板上に設けられ、前記基板が透明部材から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  8. 前記積層構成体が、前記基板と、さらに他の基板との2枚の基板によって挟まれ、前記他の基板が透明部材から形成されていることを特徴とする請求項7に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  9. 前記透明部材が、ガラス、樹脂フィルム、または樹脂シートであることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  10. 前記透明導電性膜層の側に配置される基板は、前記透明導電性膜層が予め設けられていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  11. 前記マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層の側に配置される基板は、他の透明導電性膜層が予め設けられていることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の反射調光エレクトロクロミック素子。
  12. マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層と、その上に実質的に被覆する形態で存在するキャップ層とを含み、反射調光特性を示す反射調光エレクトロクロミック素子を製造する方法において、
    前記キャップ層は、アルミナ、シリカ、チタニアからなる群より選ばれた少なくとも一種類の酸化物と、触媒成分とを含み、
    前記触媒成分または前記触媒成分の前駆体を含む溶液を前記酸化物と接触させることによって、または、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着のいずれかにより前記触媒成分を前記酸化物と接触させることによって、前記酸化物の表面に前記触媒成分を分散担持させる工程を含むことを特徴とする反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  13. 前記触媒成分が、パラジウム、または、パラジウムと金との混合物から選ばれることを特徴とする請求項12に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  14. 前記触媒成分が、パラジウムであることを特徴とする請求項12に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  15. 前記酸化物が、アルミナであることを特徴とする請求項12に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  16. 前記マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層が、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングのいずれかにより成膜されることを特徴とする請求項12に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  17. 前記キャップ層の前記酸化物の層が、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングのいずれかにより成膜されることを特徴とする請求項12に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  18. 前記触媒成分または前記触媒成分の前駆体を含む溶液が、パラジウム塩のアンモニア水溶液またはパラジウム有機物を溶解した有機溶液のいずれかであることを特徴とする請求項12に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  19. 前記触媒成分または前記触媒成分の前駆体を含む溶液が、ジニトロジアンミンパラジウム(II)アンモニウム溶液、テトラアンミンパラジウム(II)ジクロライドアンモニウム溶液、酢酸パラジウム(II)アセトン溶液、酢酸パラジウム(II)クロロフォルム溶液、ビス〔(アセチルアセトナト)パラジウム(II)〕アセトン溶液、ビス〔(アセチルアセトナト)パラジウム(II)〕クロロフォルム溶液、プロピオン酸パラジウム(II)アセトン溶液、プロピオン酸パラジウム(II)クロロフォルム溶液からなる群より選ばれた少なくとも一種類を含むことを特徴とする請求項18に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  20. 前記マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層と前記酸化物の層とを形成した基板に対して、浸漬、スプレーイング、またはスピンコーティングすることによって、前記触媒成分または前記触媒成分の前駆体を含む溶液を前記酸化物と接触させることを特徴とする請求項12に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  21. 紫外線照射、および/または、還元剤による還元によって、前記触媒成分または前記触媒成分の前駆体を含む溶液から、触媒成分を前記酸化物の層に堆積させることを特徴とする請求項12に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  22. 前記触媒成分または前記触媒成分の前駆体を含む溶液から、触媒成分を前記酸化物の層に堆積させる工程と、
    前記触媒成分を堆積させた後の残渣を除去し、前記マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層と前記キャップ層とを乾燥させる工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項12に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  23. 前記触媒成分を堆積させた後の残渣の除去に、水溶液、有機溶剤による洗浄を用いることを特徴とする請求項22に記載の反射調光エレクトロクロミック素子の製造方法。
  24. 請求項8に記載の反射調光エレクトロクロミック素子を用いた反射調光ガラスであって、前記透明導電性膜層の側に配置される基板は、前記透明導電性膜層が予め設けられたガラスから構成され、前記マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層の側に配置される基板は、他の透明導電性膜層が予め設けられたガラスから構成されていることを特徴とする反射調光ガラス。
  25. 請求項8に記載の反射調光エレクトロクロミック素子を用いた反射調光ガラスであって、前記透明導電性膜層の側に配置される基板は、前記透明導電性膜層が予め設けられた樹脂フィルムまたは樹脂シートから構成され、前記マグネシウムおよびニッケルを含んでなる層の側に配置される基板は、他の透明導電性膜層が予め設けられた樹脂フィルムまたは樹脂シートから構成され、この反射調光エレクトロクロミック素子をさらに2枚のガラスによって挟み込んで構成されていることを特徴とする反射調光ガラス。
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