JP4627863B2 - グラファイトナノファイバー薄膜形成用熱cvd装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上にグラファイトナノファイバー薄膜を形成するためのCVD装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
グラファイトナノファイバー薄膜は、例えば、平面ディスプレー(電界放出型ディスプレー)やCRTの電子管球の代用として電子発光素子を必要とする部品上に形成される。グラファイトナノファイバー薄膜を形成するには、例えば熱CVD(Chemical vapor deposition)装置が使用され、このような熱CVD装置は特願2000−89468号明細書から知られている。
【0003】
該熱CVD装置は真空雰囲気の形成を可能とする真空チャンバー(成膜室)を備えている。該真空チャンバーの内部には、ガラスやSiなどの基板であってFeやCoの薄膜が形成されたものが装着される基板ホルダーが配設されている。また、真空チャンバーの上部壁面には、基板ホルダーに装着される被処理基板に対向して石英ガラスなどの耐熱性ガラスからなる赤外線透過窓が設けられ、この透過窓の外側には加熱手段である赤外線ランプが配設されている。さらに、真空チャンバーには、例えば一酸化炭素ガスと水素ガスとの混合ガスを該真空チャンバー内に導入する混合ガス供給系が接続されている。そして、該赤外線ランプによって被処理基板を加熱しつつ、真空チャンバーの側壁に設けられた1箇所のガス導入口から真空チャンバーに常温の混合ガスを導入することで該基板上にグラファイトナノファイバー薄膜を成長させる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、真空チャンバーに導入される混合ガスは所定の温度(例えば、400℃)以上に加熱されることなく基板に到達させる必要がある。このため、上記装置では、真空チャンバー側壁に設け得るガス導入口の配設位置を適宜設計しているものの、このような混合ガスの導入ではグラファイトナノファイバー薄膜の膜厚分布を制御するのは困難である。この場合、真空チャンバーの側壁にガス導入口を複数設け、これらのガス導入口から混合ガスを真空チャンバー内に導入することが考えられるが、これでは200mm×200mm程度の略正方形基板やφ200mm程度の円形基板はともかく、例えば1m×1mサイズのような大きな被処理基板やA4サイズのような矩形の被処理基板に対してグラファイトナノファイバー薄膜の膜厚分布が均一になるようにガス導入口の配設位置を適切に設計することは困難である。また、上記装置では、常温の混合ガスを真空チャンバー内に導入しているが、これでは、被処理基板に到達した混合ガスがその反応温度(約450℃)まで上昇するのに時間がかかり、グラファイトナノファイバーの成長速度が遅いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、上記問題点に鑑み、グラファイトナノファイバー薄膜の高い成長速度を達成でき、その上、被処理基板のサイズや外形に関係なく、膜厚分布の均一なグラファイトナノファイバー薄膜の形成が可能な熱CVD装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明のCVD装置は、炭素含有ガスと水素ガスとの混合ガスを真空チャンバーに導入する混合ガス供給系を備え、基板加熱手段で被処理基板を加熱しつつ、真空チャンバー外部のガス源に接続された混合ガス供給系から混合ガスを導入することで被処理基板上にグラファイトナノファイバー薄膜を形成する熱CVD装置であって、真空チャンバー内における混合ガスの導入が、被処理基板の高さ位置より下側であって、被処理基板をその外周の近傍で囲繞するように設けた混合ガス供給系に接続されたガス噴射ノズル手段を介して行われ、ガス噴出ノズル手段はその内部にガス流路を有すると共に、その上面に、ガス流路に連通する複数のガス噴射口が列設され、該ガス供給系の真空チャンバーの外側に位置する個所に、真空チャンバーに導入する混合ガスを所定の温度に加熱する混合ガス加熱手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、混合ガス供給系に設けたガス加熱手段によって真空チャンバー内に導入する際の混合ガス温度を高くすることができ、被処理基板に到達した混合ガスは反応温度まで速く昇温するので、グラファイトナノファイバー薄膜の成長速度を高めることができる。他方で、被処理基板をその外周の近傍で囲繞するように設けたガス噴出ノズル手段の上面に列設された複数のガス噴射口から一旦上方に向かって噴出された混合ガスが、被処理基板の上方全体に亘って均一に拡散し、次いで、下方に向かって均等に下降し、被処理基板全体に亘って一様に到達するので、被処理基板が比較的大きな寸法を有していたり、矩形の外形を有していても、被処理基板のサイズや外形に関係なく該被処理基板上に膜厚分布の均一なグラファイトナノファイバー薄膜を形成できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1及び図2を参照して、例えば、A4サイズの矩形の被処理基板S上にグラファイトナノファイバー薄膜を形成する熱CVD装置1は、ロードロック室11と成膜室12とを備え、ロードロック室11と成膜室12とはゲートバルブ13を介して接続されている。ロードロック室11は、ガラスやSiなどの被処理基板Sであって、成膜面にFeやCoなどの金属薄膜が形成されたものを一旦真空雰囲気に曝すことで、被処理基板S表面の水分等を除去する役割を果たす。このため、該ロードロック室11には、真空ポンプ111が接続されていると共に、その真空度をモニターする真空計112が配設されている。また、該ロードロック室11には、被処理基板Sが装着された基板ホルダー16を搬送する搬送アーム15が設けられている。該搬送アーム15は、サーボモータ(図示せず)を備えた回転軸151の上端に固着された第1アーム152と、各第1アーム152の他端に枢支された第2アーム153と、該第2アーム153の他端に枢支されると共に、被処理基板Sが装着され得る基板ホルダー16を下側から支持するフォーク状の支持部を備えた第3アーム154とからなる。そして、第2及び第3の各アーム153、154を旋回させることで搬送アーム15は伸縮自在となる。また、被処理基板Sを装着した基板ホルダー16の受渡等のため回転軸151は短いストロークで昇降自在である。この搬送アーム15によって外部から、基板ホルダー16に装着された被処理基板Sをロードロック室11に収容し、所定の真空度(例えば、0.01Torr程度)まで真空排気した後、ゲートバルブ13を開けて、所定の真空度(例えば、0.01Torr程度)に真空排気した成膜室12に被処理基板Sを基板ホルダー16と共に搬送する。そして、搬送アーム15を再びロードロック室11に戻して、ゲートバルブ13を閉じる。
【0009】
成膜室12の底面には、搬送アーム15によって搬送されてきた被処理基板Sを装着した基板ホルダー16を載置する3本の支柱121が、該基板ホルダー16の面積に対応して略三角形を形成するように配設されている。そして、該支柱121のうち、ロードロック室11側に位置するものが第3アーム154のフォーク状の支持部相互の間隙に位置して該搬送アーム15のガイドとしての役割を果たす。尚、本実施の形態では、基板ホルダー16を搬送することとしたが、成膜室12内の支柱121上に基板ホルダー16を固定しておき、被処理基板Sを搬送するように構成することもできる。
【0010】
また、成膜室12の上部壁面には、基板ホルダー16に装着される被処理基板Sに対向して石英ガラスなどの耐熱性ガラスからなる赤外線透過窓122が設けられている。この透過窓122の外側には、所定の配列を有してなる加熱手段である複数本の赤外線ランプ17が配設され、被処理基板Sをその全面に亘って均等に加熱する。そして、該成膜室12にもまた、ロードロック室11と同様に、真空雰囲気の形成が可能であるように真空ポンプ123が設けられていると共に、その真空度をモニターする真空計124が配設されている。また、真空ポンプ123をバイパスする配管がバルブ123cを介在させて設けられている。
【0011】
さらに、成膜室12には混合ガス供給系18が接続されている。該混合ガス供給系18は、バルブ181aからガス流量調節器181b、圧力調整器181c及びバルブ181dを介して一酸化炭素などの炭素含有ガスボンベ181eにガス配管にて直列に連なっている炭素含有ガス供給系181と、バルブ182aからガス流量調節器182b、圧力調整器182c及びバルブ182dを介して水素ガスボンベ182eにガス配管にて直列に連なっている水素ガス供給系182とからなる。そして、炭素含有ガス供給系181と水素ガス供給系182とは、バルブ181a、182aと成膜室12との間で合流し、成膜室12内に炭素含有ガスと水素ガスとからなる混合ガスが導入される。ここで、グラファイトナノファイバー薄膜を形成するのに、炭素含有ガスの他に水素ガスを用いるのは、気相反応における希釈及び触媒作用のためである。
【0012】
また、混合ガス供給系18を介して混合ガスを成膜室12に導入する場合、従来の熱CVD装置のように、被処理基板Sの上方に位置して該成膜室12の側壁に設けた1箇所のガス導入口から混合ガスを導入するのでは、比較的大きな基板や矩形の基板に対してグラファイトナノファイバー薄膜の膜厚分布を均一にするのは困難である。そこで、本実施の形態では、混合ガスの導入を、被処理基板Sの高さ位置より下側であって、被処理基板Sをその外周の近傍で囲繞するように設けたガス噴射ノズル手段19を介して行なうこととした。
【0013】
図2及び図3を参照して、環状のガス噴射ノズル手段19はその内部に混合ガス流路191を備え、その上面には、該ガス流路191に連通する複数個のガス噴射口192が列設されている。また、ガス噴射ノズル手段19の上面には、ガス流路191に通じる継手を備えた混合ガス供給部193が開設され、該継手には混合ガス供給系18のガス配管の一端が接続されている。ここで、このようにガス噴射ノズル手段19を形成した場合、赤外線ランプ17によって被処理基板Sと共にガス噴射ノズル手段19自体も加熱され得る。そして、該ガス噴射ノズル手段19の表面温度が所定の温度以上になると、そこにグラファイトナノファイバー薄膜が成長し得る。グラファイトナノファイバー膜が成長するとコンタミネーションの原因になるので、ガス噴射ノズル手段19を頻繁にクリーニング或いは交換する必要が生じる。このため、本実施の形態では、ガス噴射ノズル手段19を、熱伝導率の高い金属材料である銅から形成し、冷却可能な成膜室12の底面に面接触させて配設した。なお、本実施の形態では、ガス噴射ノズル手段19を環状としたが、成膜室12内に混合ガスを均一に噴射し得るものであればその外形は問わない。また、基板ホルダー16が載置される支柱121の高さ寸法は、ガス噴射ノズル手段19の配設位置に対応して、ガス噴射ノズル手段19のガス噴射口192から上方に向かって噴出された混合ガスが赤外線ランプ17で所定温度以上に加熱されることなく、被処理基板Sに到達するように定寸されている。
【0014】
ところで、成膜室12に導入される混合ガスは所定の反応温度(450℃)以上に加熱されることなく基板に到達させる必要がある。一方で、グラファイトナノファイバーの成長速度を高くするには、被処理基板Sに到達した混合ガスの炭素含有ガスを直ちに解離させることが必要がある。このため、被処理基板Sに到達すると直ちに反応する温度まで、成膜室12に導入される混合ガスの温度を上昇させることが望ましい。そこで、本実施の形態では、混合ガス供給系18のうち、炭素含有ガス供給系181と水素ガス供給系182とが合流した個所に、混合ガスを加熱する混合ガス加熱手段21を介設した。
【0015】
図4を参照して、混合ガス加熱手段21は、混合ガスが流通するガス通路211を有し、該ガス通路内211には、複数本の抵抗加熱コイル212が配設され、該抵抗加熱コイル212への電流を制御することで該ガス通路211を流通する混合ガスを所定の温度に加熱できるように構成されている。尚、本実施の形態では、ガス通路に抵抗加熱コイル212を設けることとしたが、混合ガスを加熱できるものであれば特に限定はなく、例えば、ガス通路に沿って外部に赤外線ランプを設け、該赤外線ランプで混合ガスを所定の温度に加熱するように構成することもできる。
【0016】
次に、上記装置を使用したグラファイトナノファイバー薄膜形成プロセスについて説明する。
【0017】
被処理基板Sとして、EB蒸着法によりガラス基板上にFeを100nmの厚さで蒸着したものを使用する。このようにFeが蒸着された被処理基板Sを基板ホルダー16上に装着したものを、ロードロック室11の外側から搬送アーム15によって該ロードロック室11に一旦収納し、真空ポンプ111を起動して真空計112で測定しながら0.01Torr程度まで真空排気を行う。それに併せて、成膜室も、真空ポンプ123を起動して真空計124で測定しながら0.01Torr程度になるまで真空排気を行う。そして、ロードロック室11及び成膜室12が所定の真空度に達した後、所定の時間経過後にゲートバルブ13を開けて成膜室12の基板ホルダー用支柱121上に被処理基板Sが装着された基板ホルダー16を載置する。この状態で、一酸化炭素ガスボンベ181eと水素ガスボンベ182eとの元栓を開き、圧力調整器181c、182cにより約1気圧(絶対圧力)に調整し、そしてバルブ181a、182aを開き、ガス流量調節器181b、182bにより、一酸化炭素ガスと水素ガスとの混合ガス(CO:H2=30:70のガス比)を約1000sccm程度に調整し、ガス加熱手段21を介して350℃に加熱した混合ガスを被処理基板ホルダー16の下方から、ガス噴射ノズル手段19を介して成膜室12に導入し、ガス置換を行った。この時、真空ポンプ123を停止し、真空ポンプ123の前後に設けたバルブ123a、123bを閉状態にしてバイパス配管のバルブ123cを開状態にしておき、成膜室12がほぼ大気圧(760Torr)となるようにした。この場合、赤外線ランプ17を付勢して被処理基板Sを500℃に加熱した状態で混合ガスを導入した。
【0018】
そして、成膜室12内の圧力が大気圧になった後、500℃で10分間にわたって、熱CVD法により該基板上でグラファイトナノファイバーの成長反応を行った。一酸化炭素ガスが被処理基板S上に達すると、一酸化炭素が解離し、被処理基板上に蒸着されたFe薄膜上にのみグラファイトナノファイバー薄膜が形成された。ここで、予め加熱した混合ガスを導入してグラファイトナノファイバー薄膜を成長させた場合、常温の混合ガスを導入してグラファイトナノファイバー薄膜を成長させた場合に比べて、成長速度はほぼ4倍まで向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱CVD装置の構成を概略的に示す図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】ガス噴射ノズル手段の部分斜視図
【図4】図1のA部の拡大断面図
【符号の説明】
1 熱CVD装置 12 成膜室
17 赤外線ランプ 18 混合ガス供給系
19 ガス噴射ノズル手段 21 ガス加熱手段
S 被処理基板

Claims (1)

  1. 炭素含有ガスと水素ガスとの混合ガスを真空チャンバーに導入する混合ガス供給系を備え、基板加熱手段で被処理基板を加熱しつつ、真空チャンバー外部のガス源に接続された混合ガス供給系から混合ガスを導入することで被処理基板上にグラファイトナノファイバー薄膜を形成する熱CVD装置であって、
    真空チャンバー内における混合ガスの導入が、被処理基板の高さ位置より下側であって、被処理基板をその外周の近傍で囲繞するように設けた混合ガス供給系に接続されたガス噴射ノズル手段を介して行われ、ガス噴出ノズル手段はその内部にガス流路を有すると共に、その上面に、ガス流路に連通する複数のガス噴射口が列設され、
    該ガス供給系の真空チャンバーの外側に位置する個所に、真空チャンバーに導入する混合ガスを所定の温度に加熱する混合ガス加熱手段を設けたことを特徴とする熱CVD装置。
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